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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23B
管理番号 1343679
審判番号 不服2016-950  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-21 
確定日 2018-08-29 
事件の表示 特願2013-540325「回転ドリル用ビット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年5月31日国際公開,WO2012/069465,平成26年1月16日国内公表,特表2014-500804〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年(平成23年)11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年11月25日 (GB)英国(グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国))を国際出願日とする特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成26年 4月24日付け:拒絶理由通知
平成26年 7月28日 :意見書及び手続補正書の提出
平成27年 1月15日付け:拒絶理由通知
平成27年 4月20日 :意見書の提出
平成27年 9月16日付け:拒絶査定
平成28年 1月21日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
平成28年 6月14日 :上申書の提出
平成29年 6月12日付け:拒絶理由通知
平成29年12月19日 :意見書及び手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成29年12月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
回転ドリル用のビットであって,前記ビットは,少なくとも2本の溝が設けられている円筒形本体を有し,前記円筒形本体は,切削端で終端しており,前記ビットは,隣り合う溝相互間で前記円筒形本体の周面によって画定された円筒形ランドを更に有し,前記円筒形ランドは,前記円筒形ランドの残部に対して半径方向に高くされたマージンを有し,前記マージンは,前記円筒形ランドの長さに沿って変化する幅を有すると共に,広幅ゾーン及び細幅ゾーンを含み,前記広幅ゾーンは,前記ドリルの前記切削端寄りに配置されており,前記ドリルの先端部は,PCD層の形態をなすPCD塊によって覆われており,前記マージンの前記広幅ゾーンは,前記PCD塊の一部をなしており,
前記マージンの前記広幅ゾーンは,前記ドリルの切れ刃に隣接して配置されている,ビット。」

第3 当審における拒絶の理由

平成29年6月12日付けの当審における拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,その出願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.米国特許公開第2005/0249562号明細書
引用文献2.特表平6-508566号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1
(1)本願優先日前に頒布された引用文献1には,図面と共に以下の事項が記載されている(括弧内は当審仮訳)。
ア「[0018]・・・The drill tip 10 is made in hard material, preferably cemented carbide and most preferably in injection molded cemented carbide and comprises two upper clearance surfaces 15 , a support surface 16 and them uniting first 17 and second 18 curved surfaces. All these surfaces and appending edges are made in the same material, which is preferably in injection molded cemented carbide.・・・」(ドリルチップ10は硬い材料,好ましくは超硬合金,最も好ましくは射出成形された超硬合金でできていて,2つの上部クリアランス面15と,支持表面16と,それらをつなぐ第1の曲面17及び第2の曲面18とを備えている。全てのこれらの面と付加縁部は同一材料で形成されており,射出成形された超硬合金であることが好ましい。)」

イ「[0019]Each guide member 40 consists of at least two surface portions 41 and 42 . The first surface portion 41 situated closest to the cutting edge 19 has a circumferential extension that coincides with an imaginary cylinder C, which is concentric with the center axis CL, whereby the first surface portion 41 can be said to constitute a part-cylindrical guide member. ・・・」(各々のガイド部材40は,少なくとも2つの面部分41及び42から構成されている。切れ刃19に最も近い第1の面部41は,仮想円筒面Cに一致して,中心軸CLと同心の円周方向延長部を有しており,第1の面部41は,部分的に円筒状のガイド部材を構成しているといえる。)

ウ「[0021]As it appears foremost from FIG. 1D a third surface portion 43 could be provided in front of the second surface portion in the direction of rotation. The third surface portion 43 has a circumferential extension that coincides with the first surface portion 41 and thereby with the imaginary cylinder C. The third surface portion 43 has the same axial extension as the second surface portion 42 but is narrower in tangential direction.」(図1Dにおいて,最も前側の第3の面部43は,その回転方向において,第2の面部の前に配設することも可能である。第3の面部43は,第1の面部41と,仮想円筒面Cに一致する周方向延長部を有している。第3の面部43は,第2の面部42と同じ軸方向延長部を有しているが接線方向に狭い。)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)アの「2つの上部クリアランス面15」との記載,及び図1Aから1Cを参照すると,「第2の曲面18」は,「上部クリアランス面15」と同様に2つあることが理解できる。
したがって,引用文献1には,以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)
「ドリルチップ10であって,前記ドリルチップ10は,2つの第2の曲面18が設けられている,仮想円筒面Cからなる円筒形の本体を有し,前記円筒形の本体は,上部クリアランス面15で終端しており,前記ドリルチップ10は,2つの第2の曲面18間で前記円筒形の本体の周面によって画定された第1の曲面17を更に有し,前記第1の曲面17は,前記第1の曲面17の残部に対して半径方向に高くされた第1の面部41及び第3の面部43を有し,前記第1の面部41及び第3の面部43は,前記第1の曲面17の長さに沿って変化する幅を有すると共に,広幅の第1の面部41及び細幅の第3の面部43を含み,前記広幅の第1の面部41は,前記ドリルチップ10の前記上部クリアランス面15寄りに配置されており,前記ドリルチップ10は,射出成形された超硬合金によって形成されており,前記広幅の第1の面部41は,前記射出成形された超硬合金の一部をなしており,
前記広幅の第1の面部41は,前記ドリルチップ10の切れ刃19に隣接して配置されている,ドリルチップ10。」

2 引用文献2
本願優先日前に頒布された引用文献2には,第1図,第2図と共に以下の事項が記載されている。
「第1図は,PCDまたはPCBNからなる刃先を持つ直径5mmまたはそれ以下のツイストドリルビットを製作する上記した本発明方法に従って製造されたツイストドリルビットである。PCDまたはPCBNからなるツイストドリルビットの部分は斜線によって表わされている。
第2図は,第1図のツイストドリルビットに機械加工されるドリル未工作体の1つの断面である。」(第4ページ左上欄第15-21行)

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
技術常識を踏まえれば,引用発明の「ドリルチップ10」は,本願発明の「回転ドリル用のビット」に相当する。同様に,「2つの第2の曲面18」は「少なくとも2本の溝」に,「仮想円筒面Cからなる円筒形の本体」は「円筒形本体」に,「第1の曲面17」は「円筒形ランド」に,「第1の面部41及び第3の面部43」は「マージン」に,「第1の面部41」は「広幅ゾーン」に,「第3の面部43」は「細幅ゾーン」に,「切れ刃19」は「切れ刃」にそれぞれ相当する。
また,本願発明の「ドリルの先端部」については,本願の第1図を参照すると,「ドリルビット10」が「PCD構造体40」及び「超硬合金基体50」とからなり,「ドリルビット10」の一部が「ドリルの先端部」であることが理解できる。そうすると,引用発明の「ドリルチップ10」の一部が,本願発明の「ドリルの先端部」に相当する。
さらに,引用発明の「射出成形された超硬合金」は,超硬合金の塊と言えるから,本願発明の「塊」に相当する。

以上より,本件補正発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「回転ドリル用のビットであって,前記ビットは,少なくとも2本の溝が設けられている円筒形本体を有し,前記円筒形本体は,切削端で終端しており,前記ビットは,隣り合う溝相互間で前記円筒形本体の周面によって画定された円筒形ランドを更に有し,前記円筒形ランドは,前記円筒形ランドの残部に対して半径方向に高くされたマージンを有し,前記マージンは,前記円筒形ランドの長さに沿って変化する幅を有すると共に,広幅ゾーン及び細幅ゾーンを含み,前記広幅ゾーンは,前記ドリルの前記切削端寄りに配置されており,前記ドリルの先端部は,塊によって覆われており,前記マージンの前記広幅ゾーンは,前記塊の一部をなしており,
前記マージンの前記広幅ゾーンは,前記ドリルの切れ刃に隣接して配置されている,ビット。」

してみると,本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。
<相違点>
ドリルの先端部の「塊」について,その材質が,本願発明はPCDであるのに対して,引用発明は「超硬合金」である点。

第6 判断
1 相違点について
引用文献2において,第2図は加工前の断面図であり,斜線で示された部分がPCDであることが理解できる。そうすると,引用文献2においては,ドリルの先端部分をPCDの塊とする技術が記載されていると認識できる。
そして,引用文献2は,本願発明の優先日よりも15年以上前に公知となった文献であり,引用文献1の段落0031にも「PCD」と記載されていることからして,ドリルの材料としてのPCD自体は,本願発明の時点では通常知られた材料にすぎないものと認められる。また,ドリルの材料として,対象とする被加工物の材質等に応じて適宜選択することも通常行われていることにすぎない。
してみると,引用発明に接した当業者であれば,超硬合金からなる「ドリルチップ10」を,他のドリルに用いられる材料から適宜選択して「ドリルチップ10」とすることは,十分に想到しうる事項にすぎず,当業者に知られたPCDとすることにも困難性は認められない。
そして,効果においても,選択された材料によって想定される効果以上の格別の効果は認められない。

2 請求人の主張について
請求人は,平成29年12月19日提出の意見書において次の(1)-(3)の点を主張する。
(1)「しかしながら,引用例1の段落0031には,PCDをカッティングエッジ及び/又はガイド部材上に使用することが記載されているものの,係るPCDの部分は,鑞付を使用してドリルチップに取り付けられている。ここで,鑞付は(円周方向に延びる)側面のみにおいて行われているので,これは比較的簡単な加工である。」

(2)「一方,引用例2には(例えば請求項1),チップの頂部表面の実質的に全体に,実質的に均一な厚さのPCD層を適用することが記載されている。これについても,適用される層が(半径方向に延びる)頂面のみに亘っているので,比較的簡単な加工である。このように,引用例1においても,引用例2においても,ドリルビットの一つの側だけにPCDが設けられている。」

(3)「これに対して,本願発明においては,PCD層は,両方の面に,即ち,ドリルビットの頂部及び側部の両方に設けられている。このことは,実際上,途方もなく実現が難しいことなのである。即ち,PCD層は,「ドリルの先端部」及び「マージンの幅広ゾーン」の両方を一体的に覆っているのである。換言すれば,当業者が引用例1及び2の開示を組み合わせたとしても,2つの別々の部分(「ドリルの先端部」,「マージンの幅広ゾーン」)が,その界面で結合したものになることは決してないのである。」

しかしながら,(1)に関しては,平成29年6月12日付けの拒絶理由通知において,引用文献1を引用したのは,図1に関する形状であり,段落31のPCDに係る記載を引用したものではないので,係る主張は採用することはできない。
また,(2)に関しては,引用文献2は,図1,2を引用しており,ドリルの先端部の全体をPCDの塊とする技術が示されているのであるから,(2)の主張も採用することはできない。
さらに,(3)についても,引用文献1に示された「ドリルチップ10」の全体をPCDとすれば,「ドリルの先端部」及び「マージンの幅広ゾーン」の両方がPCDとなるのは明らかであるから,この主張も採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-02 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2013-540325(P2013-540325)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 俊彦五十嵐 康弘  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 平岩 正一
中川 隆司
発明の名称 回転ドリル用ビット  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
代理人 渡邊 誠  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 西島 孝喜  
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