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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J |
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管理番号 | 1343772 |
審判番号 | 不服2017-51 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-04 |
確定日 | 2018-09-05 |
事件の表示 | 特願2014-167147「レガシーコンパチビリティのある802.11ベリーハイスループットプリアンブルシグナリングフィールド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-241630〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年11月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月22日 米国)を国際出願日とする特願2012-545953号の一部を平成26年8月20日に新たな出願としたものであって、平成27年4月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月28日に手続補正がされ、同年11月26日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年4月8日に手続補正がされ、同年8月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年1月4日に、拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされ、同年8月30日付けで当審において拒絶理由通知がされ、平成30年1月5日に手続補正がされたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年1月5日提出の手続補正書の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 フレームのデータ部分が変調及び符号化されている変調符号化方式を示す情報を含むように構成された前記フレームを生成するように構成された無線通信コントローラと、 前記フレームをレガシー局(STA)、ハイスループット(HT)STA、及びベリーハイスループット(VHT)STAに送信するように構成された送信器と を有し、 前記フレームはレガシー信号フィールドと前記レガシー信号フィールドに直接続くVHT信号フィールドとを有し、 前記フレームはミクストフォーマットフレームである、 装置。」 2.引用発明 平成29年8月30日付けの当審における拒絶理由通知において引用された『Hongyuan Zhang et al.、"802.11ac Preamble Discussions"、doc.:IEEE 802.11-09/1174r0、その他、2009.11.16発行』(以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。 (1)「802.11ac Preamble Discussions」(第1スライド第1行(引用文献の文献名)) [合議体訳] 「802.11acのプリアンブルの議論」 (2)「・Reliable auto-detection among 11a, 11n(MM and GF), and VHT preambles.」(第3スライド第5行から第6行) [合議体訳] 「・11a、11n(MM及びGF)及びVHTのプリアンブルにわたっての確実な自動検出。」 (3)「・Receiver design flow close to 11n.」(第3スライド最終行) [合議体訳] 「・受信器の設計フローは11nに近い。」 (4)「・Use L-SIG spoofing for both 11a and 11n receivers: - As 11n spoofing for 11a/g receivers.」(第4スライド第2行から第3行まで) [合議体訳] 「・11a及び11n双方の受信器のためのL-SIGスプーフィングの使用。 - 11a/g受信器のための11nスプーフィングと同様に。 (5)「・Use 90-deg rotated BPSK (QBPSK) on VHT-SIG symbol(s) for VHT auto-detection. - 11n receiver will treat the packet as 11a packet (L-SIG spoofing).」(第4スライド第5行から第7行まで) [合議体訳] 「・VHT自動検出のためのVHT-SIGシンボルでの90度回転されたBPSK(QBPSK)の使用。 - 11n受信器は11aパケットとしてパケットを取り扱うであろう(L-SIGスプーフィング)。」 (6)「 」(第5スライド上部) [合議体訳] 「 」 (7)「In DL-MU packet, VHTSIGA contains the same bits for all clients, VHTSIGB contains user-specific information (e.g. MCS) and is spatially multiplexed for different clients.」(第6スライド第5行から第7行まで) [合議体訳] 「DL-MUパケットにおいて、VHTSIGAは、全クライアントに対して同じビットを含み、VHTSIGBは、ユーザ特有の情報(例えばMCS)を含み、異なるクライアントに対して空間多重されている。」 ア.(1)によれば、引用文献は、802.11acのプリアンブルについて議論したものであり、(7)には、「パケット」と記載されているから、ここでいう「802.11ac」は「802.11ac規格に準拠したパケット」を意味しているものと解される。つまり、引用文献には、「802.11ac規格に準拠したパケット」(以下、「802.11acパケット」という。)が記載されているといえる。 イ.上記ア.における検討に加えて、(2)によれば、802.11acパケットは、「11a、11n(MM及びGF)及びVHTのプリアンブルにわたっての確実な自動検出」を行うことを目的としている。技術常識を鑑みれば、ここでいう「11a」、「11n」はそれぞれ、「802.11a」、「802.11n」を指すものといえる。 したがって、引用文献には、「802.11a、802.11n(MM及びGF)及びVHTのプリアンブルにわたっての確実な自動検出のための、802.11acパケット」が記載されているといえる。 ウ.上記ア.における検討に加えて、802.11acパケットが、802.11ac規格に準拠した受信器(以下、「802.11ac受信器」という。)に送信されることは技術常識であるから、引用文献には、「802.11ac受信器に送信される802.11acパケット」が記載されているといえる。 エ.上記ア.における検討に加えて、(6)によれば、802.11acパケットはL-SIGを有するものであるから、(4)における、「11a及び11n双方の受信器のためのL-SIGスプーフィングの使用」は、802.11acパケットが、11a受信器、11n受信器に送信されることを前提としていると解される。技術常識を鑑みれば、上記イ.と同様に、ここでいう「11a」、「11n」もそれぞれ、「802.11a」、「802.11n」を指すものといえる。 したがって、引用文献には、「802.11a受信器及び802.11n受信器に送信される802.11acパケット」が記載されているといえる。 オ.上記ア.における検討に加えて、(6)によれば、引用文献には、「802.11acパケットが、L-SIGと、L-SIGに直接続くVHTSIGAを有すること」が記載されている。 カ.(7)における「MCS」が「Modulation and Coding Scheme」(変調符号化方式)の略語であり、情報としての「MCS」が、パケットのデータ部分が変調及び符号化されている変調符号化方式を示す情報であることは、無線通信技術分野における技術常識である。 したがって、引用文献には、「802.11acパケットが、前記802.11acパケットのデータ部分が変調及び符号化されている変調符号化方式を示す情報を含むように構成されていること」が記載されているといえる。 以上によれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「802.11acパケットのデータ部分が変調及び符号化されている変調符号化方式を示す情報を含むように構成されている前記802.11acパケットであって、 前記802.11acパケットは、802.11a、802.11n(MM及びGF)及びVHTのプリアンブルにわたっての確実な自動検出のためのものであり、 L-SIGと、L-SIGに直接続くVHTSIGAを有しており、 さらに、802.11ac受信器のみならず802.11a受信器及び802.11n受信器に送信される、802.11acパケット。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「L-SIG」、「L-SIGに直接続くVHTSIGA」はそれぞれ、本願発明の「レガシー信号フィールド」、「レガシー信号フィールドに直接続くVHT信号フィールド」に含まれる。 (2)引用発明の「802.11acパケット」と、本願発明の「フレーム」、「ミクストフォーマットフレーム」を対比する。 ア.引用発明の「802.11acパケット」は、「L-SIGと、L-SIGに直接続くVHTSIGAを有」するパケットであり、上記(1)において検討したとおり、引用発明の「L-SIG」、「VHTSIGA」はそれぞれ、本願発明の「レガシー信号フィールド」、「VHT信号フィールド」に含まれる。 また、「パケット」という用語が、プロトコルスタックの全レベルのデータユニットに対して使用される用語であることや、「フレーム」という用語が、データリンク層の「パケット」を意味することは技術常識である。(下記の備考に示したRFC1983を参照。) したがって、引用発明の「802.11acパケット」は、本願発明における、レガシー信号フィールドと前記レガシー信号フィールドに直接続くVHT信号フィールドとを有する「フレーム」に含まれる。 (備考)RFC1983、Internet Users' Glossary、1996年8月、には、以下のとおり記載されている。 「frame A frame is a datalink layer packet which contains the header and trailer information required by the physical medium. That is, network layer packets are encapsulated to become frames.」 [合議体訳] 「フレーム フレームは、物理メディアによって必要とされるヘッダとトレーラ情報を含むデータリンク層の「パケット」である。つまり、ネットワーク層のパケットが、フレームになるためにカプセル化される。」 「packet The unit of data sent across a network. Packet a generic term used to describe unit of data at all levels of the protocol stack, but it is most correctly used to describe application data units.」 [合議体訳] 「ネットワークを介して送られるデータユニット。「パケット」は、プロトコル階層の全レベルのデータユニットを述べるために使用されるが、最も正確には、アプリケーションデータユニットを述べるために使用される。」 イ.上記ア.における検討に加えて、引用発明の「802.11acパケット」は、「802.11a、802.11n(MM及びGF)及びVHTのプリアンブルにわたっての確実な自動検出のためのものであ」るから、802.11ac受信器のみならず802.11a受信器、802.11n受信器も混在するような無線環境を対象として、各受信器に送信されるものといえるので、引用発明の「802.11acパケット」は、本願発明の「ミクストフォーマットフレーム」に含まれる。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「フレームのデータ部分が変調及び符号化されている変調符号化方式を示す情報を含むように構成された前記フレームであって、 前記フレームはレガシー信号フィールドと前記レガシー信号フィールドに直接続くVHT信号フィールドとを有し、 前記フレームはミクストフォーマットフレームである、フレームを有する点。」 (相違点1)本願発明は、「フレームを生成するように構成された無線通信コントローラ」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点。 (相違点2)本願発明は、「フレームをレガシー局(STA)、ハイスループット(HT)STA、及びベリーハイスループット(VHT)STAに送信するように構成された送信器」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点。 4.判断 初めに、本願発明の「レガシー局(STA)」、「ハイスループット(HT)STA」、「ベリーハイスループット(VHT)STA」について検討する。 本願明細書段落【0029】には、「レガシーフレームとレガシーSTAはそれぞれ802.11a/g標準に準拠したフレームとSTAである。」と記載されているから、本願発明における「レガシー局(STA)」は、「802.11a/g標準に準拠したSTA」といえる。 本願明細書段落【0012】には「ハイスループット(HT):IEEE802.11n標準に準拠した局(STA)である。」と記載されており、同【0029】には、「HTフレームとHT_STAはそれぞれ802.11n標準に準拠したフレームとSTAである。」と記載されているから、本願発明における「ハイスループット(HT)STA」は、「802.11n標準に準拠したSTA」といえる。 本願明細書段落【0016】には「ベリーハイスループット局(VHT_STA):IEEE802.11ac標準に準拠した局(STA)である。」と記載されており、同段落【0029】には、「本開示のいろいろな態様によるVHTフレームとVHT_STAは、それぞれ、802.11ワーキンググループ内のTGacタスクグループにより開発されている802.11標準に準拠したフレームとSTAである。」と記載されているから、本願発明における「ベリーハイスループット(VHT)STA」は、「IEEE802.11ac標準に準拠したSTA」といえる。 次に、相違点について検討する。 初めに、相違点2について検討すると、引用発明は、802.11ac受信器、802.11a受信器、802.11n受信器に送信される802.11acパケットであるから、引用発明が、802.11acパケットを802.11ac受信器、802.11a受信器、802.11n受信器に送信する送信器の存在を前提としていることは明らかである。 そして、「802.11ac受信器」が「802.11ac標準に準拠したSTA」に設けられること、「802.11a受信器」が「802.11a標準に準拠したSTA」に設けられること、「802.11n受信器」が「802.11n標準に準拠したSTA」に設けられることは技術常識である。 以上のことから、引用発明において、802.11acパケット、すなわち、「フレーム」を、送信器によって、「802.11ac標準に準拠したSTA」(本願発明における「ベリーハイスループット(VHT)STA」に相当)、「802.11a標準に準拠したSTA」(同「レガシー局(STA)」)、「802.11n標準に準拠したSTA」(同「ハイスループット(VHT)STA」)に送信するように構成することは、当業者であれば適宜成し得た事項である。 次に、相違点1について検討すると、パケットを送信する装置において、無線通信コントローラにより各種パケットを生成することは周知の技術であるから、引用発明において、802.11acパケット、すなわち、「フレーム」を無線通信コントローラにより生成するように構成することも、当業者であれば適宜成し得た事項である。 また、本願発明が奏する効果は、引用発明から容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測する範囲内のものである。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者であれば、引用発明、及び、周知の技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-03-29 |
結審通知日 | 2018-04-03 |
審決日 | 2018-04-16 |
出願番号 | 特願2014-167147(P2014-167147) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽岡 さやか |
特許庁審判長 |
吉田 隆之 |
特許庁審判官 |
玉木 宏治 大塚 良平 |
発明の名称 | レガシーコンパチビリティのある802.11ベリーハイスループットプリアンブルシグナリングフィールド |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |