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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C10M
管理番号 1343798
審判番号 不服2017-15678  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-23 
確定日 2018-09-28 
事件の表示 特願2015-517735「潤滑組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/189951、平成27年 7月16日国内公表、特表2015-520285、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月18日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年6月21日(EP)欧州特許庁〕を国際出願日とする出願であって、
平成29年2月20日付けの拒絶理由通知に対して、平成29年6月2日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成29年6月21日付けの拒絶査定に対して、平成29年10月23日に審判請求と同時に手続補正がなされ、平成29年11月9日付けで前置報告がなされ、
平成30年4月3日付けの当審よりの拒絶理由通知に対して、平成30年8月6日に意見書及び手続補足書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成30年8月6日に提出の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】高温付着物形成の低下を達成し、且つ持続的な燃費特性を改善するための、エンジンのクランク室における改善されたピストン清浄特性を有する潤滑組成物の使用であって、前記潤滑組成物が、基油と一種以上の添加剤とを含み、前記基油はフィシャー-トロプシュ誘導基油を含み、且つ前記潤滑組成物は全組成物量に対して1?8.5%の櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201を含む、前記潤滑組成物の使用。
【請求項2】前記フィッシャー-トロプシュ誘導基油が、100℃において、2mm^(2)/s?10mm^(2)/sの範囲の動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑組成物の使用。」

第3 通知された拒絶理由の概要
平成30年4月3日付けの拒絶理由通知には、次の理由1?4の拒絶の理由が示されている。
◆理由1:本願の請求項1?18に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
◆理由2:本願の請求項1?18に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
◆理由3:本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
◆理由4:本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

また、上記拒絶理由通知の「記」には、次の旨の指摘がなされている。
◆理由1及び2について
刊行物1:特表2010-532805号公報
刊行物2:特表2010-509423号公報
刊行物3:特表2008-502761号公報
刊行物4:国際公開第2012/025901号
刊行物5:特開2009-197245号公報

◆理由3及び4について
『(1)本願請求項1に記載された「改善されたピストン清浄特性と高温付着物形成の低下とを達成しつつ、持続的な燃費特性を改善するために、エンジンのクランク室における潤滑組成物の使用であって」という機能・特性等によって記載された発明特定事項については「出願時の技術常識を考慮すると、機能、特性等によって記載された発明特定事項が技術的に十分特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を考慮しても、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できない場合」に該当するから、本願請求項1?18の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
(2)本願請求項1?18に係る発明は「機能・特性等」によって特定される「潤滑組成物の使用」に関するものであるところ、その潤滑組成物を構成する化合物質の化学構造や組成比などを予測し、その使用のための方法や手順などを予測することは困難であるから、どのようにすれば実施できるかを見いだすために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
(3)本願請求項1?18に係る発明の解決しようとする課題は「改善されたピストン清浄特性と高温付着物形成の低下とを達成しつつ、持続的な燃費特性を改善することができる、エンジンのクランク室における潤滑組成物の使用の提供」にあるものと認められるのに対して、実施例1のものは、その「持続的な燃費特性を改善」と関係する「業界標準M111燃費試験法」の試験結果について「測定せず」とされており、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められないから、本願請求項1?18の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
(4)本願明細書の発明の詳細な説明には、本願請求項1?18に係る発明の櫛形ポリマーとして、本願明細書の実施例1及び2で用いられた「Viscoples 3-201」という製品名の櫛形ポリマーの化学構造などの詳細が明らかにされていないので、当該製品名の櫛形ポリマーの試験結果に基づいて各種の化学構造を有する櫛形ポリマーの有効性を類推することができず、当該製品名以外の櫛形ポリマーの全てが本願請求項1?18に係る発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとは認められないから、本願請求項1?18の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。』

第4 当審の判断
1.理由1及び2について
(1)刊行物1?5の記載事項
上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項3、22、23、25及び28
「【請求項3】主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、前記櫛形ポリマーは、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、前記櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8?30質量%を有することと、前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%?1.1%の範囲内であることとを特徴とする、櫛形ポリマー。…
【請求項22】請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーを含む、潤滑油配合物。
【請求項23】前記潤滑油配合物が、APIのI、II、III、IV、および/またはV群のベースオイルを含むことを特徴とする、請求項22に記載の潤滑油配合物。…
【請求項25】前記潤滑油配合物が、請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーではない少なくとも1つの付加的添加剤を含むことを特徴とする、請求項22から24までのいずれか1項に記載の潤滑油配合物。…
【請求項28】自動車における燃料消費量を減少させるための、請求項3から20までのいずれか1項に記載の櫛形ポリマーの使用。」

摘記1b:達成される有利な特性
「【0001】
本発明は、燃料消費量を減少させるための櫛形ポリマーの使用に関する。本発明は、さらに、特性が改善された櫛形ポリマーと、その製造および使用も記載している。…
【0053】
本実施形態によって、とりわけ、煤煙蓄積、ピストン清浄性、および摩耗保護に関して有利な特性を達成することが可能である。」

摘記1c:合成油を含む潤滑油組成物での櫛形ポリマーの使用
「【0100】本発明の櫛形ポリマーは、好ましくは、潤滑油組成物中に使用することができる。潤滑油組成物は、少なくとも1つの潤滑油を含む。潤滑油には、特に鉱物油、合成油、および天然油が含まれる。」

摘記1d:合成ベースオイル
「【0107】合成油には、有機エステル、例えばジエステルおよびポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、特にポリオレフィンが含まれるが、中でもポリアルファオレフィン(PAO)、シリコン油、およびペルフルオロアルキルエーテルが好ましい。さらに、ガス・トゥー・リキッド(GTL)、コール・トゥー・リキッド(CTL)、またはバイオマス・トゥー・リキッド(BTL)方法に由来する合成ベースオイルを使用することも可能である。これらは通常は鉱物油よりもやや高価であるが、その性能に関して利点を有する。…
【0109】潤滑油配合物用のベースオイルは、API…(米国石油協会)…により、いくつかの群に分類される。鉱物油は、I群…III群…に分類される。PAOは、IV群に相当する。その他全てのベースオイルは、V群に含まれる。」

摘記1e:燃料消費量の改善
「【0129】上述のとおりのテストベンチでの試験後、車両での実際の燃料消費量は、典型的には実地試験の形で、例えば、規定の期間(例えば、6ヶ月間)にわたり、規定のkm数(例えば、10000km)走行する10車両のタクシーを用いて測定する。…
【0158】さらに、本発明の櫛形ポリマーを使用した場合、VISCOPLEX(登録商標)6-950と比較して、驚くほど高い燃料節約を達成することができることがわかった。さらに、実施例5と実施例6との比較は、請求項3に詳述する櫛形ポリマーを用いると、燃料消費量のさらなる著しい減少が生じることを示した。」

上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:発明のポイント
「【0001】…本発明は潤滑油組成物に関し、また該組成物を内燃機関でのピストンリング堆積物の低下に使用する方法に関する。…
【0006】出願人は、今回、炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?35である)の連続系列イソパラフィンを含む、フィッシャー・トロプシュ法から誘導した高級パラフィン系基油をベースとする潤滑油組成物を圧縮点火内燃機関の潤滑に用いると、日産TD25ピストン洗浄性試験におけるピストン及びピストンリング溝の堆積物が鉱物油ベースの潤滑油に比べて著しく減縮することを意外にも見出した。…
【0008】…前述のように、出願人はフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含む潤滑剤を使用すると、ピストン清浄性に顕著な予測し得ない相乗的向上が得られることを見出した。いかなる特定の理論にも束縛されたくないが、この相乗的向上は、基油の特性が潤滑油組成物の好適な粘度作用を達成するために、また熱拡散係数のような物性のために必要な添加剤の量を鉱物油誘導基油に比べて低下させるという事実に関連する可能性があると考えられる。」

摘記2b:技術常識に関して
「【0009】本発明のパッケージを採用するエンジンは潤滑される。即ち、潤滑油は、互いに移動する部品間の直接接触を最小化するように、これら部品の表面間に油膜を形成する。この潤滑膜は摩擦、磨耗及び移動する部品間の過熱の生成を減少させる。また潤滑油は、移動性流体として、互いに移動する部品又は油膜から摩擦による潤滑部品の表面の熱を入れ替える。内燃機関は、通常、クランクケース、シリンダーヘッド、及びシリンダーを有する。潤滑油は、通常、クランクケース内に存在し、ここではクランクシャフト、ベアリング、及びピストンをクランクシャフトに連結するロッドの底部が潤滑油中に浸漬されている。これら部品の急速運動は、潤滑油を飛散させ、ピストンリングとシリンダー内面間の接触表面を潤滑する。この潤滑油膜は、ピストンリングと、シリンダーの燃焼容積をクランクケースの空隙から分離するためのシリンダー壁との間のシールとしても役立つ。…
【0011】“フィッシャー・トロプシュ誘導”とは、フィッシャー・トロプシュ縮合法の合成生成物から誘導した燃料成分又は基油を意味する。“非フィッシャー・トロプシュ誘導”とは、これに従って解釈してよい。フィッシャー・トロプシュ反応は、GTL(Gas-To-Liquid)(ガスから液体までの)燃料とも言える。」

摘記2c:潤滑油組成物の基本組成
「【0016】潤滑油組成物は、(a)好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、なお更に好ましくは70重量%以上、再び更に好ましくは80重量%以上、なお更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%のフィッシャー・トロプシュ誘導基油からなる、潤滑油粘度を有する基油を主要量、並びに
(b)無灰分分散剤のような分散剤、
(c)カルシウム及び/又はマグネシウム洗浄剤のような金属洗浄剤、
(e)酸化防止剤、耐摩耗剤及び摩擦調整剤から選ばれた1種以上の他の潤滑添加剤成分、及び
(f)粘度調整剤、
を少量含有するマルチグレードのクランクケース潤滑油組成物、或いは前記主要量の基油と前記少量の成分を添加混合して製造した該マルチグレードのクランクケース潤滑油組成物である。」

摘記2d:式Iの化合物の例
「【0050】…式Iの化合物の例としては、US-B1-6331510、US-B1-6204224及びUS-B1-6372696に記載の化合物が挙げられる。式Iの化合物としては、Rohmaxから商品名“Acryloid 985”、“Viscoplex 6-054”、“ Viscoplex 6-954”及び“Viscoplex 6-565”で得られる化合物、及びLubrizol Corporationから商品名“LZ 7720C”で得られる化合物が挙げられる。式Iの化合物は、従来法で都合良く製造できる。特に該化合物は、US-A-3506574及びEP-A2-0750031に記載の方法に従って製造できる。」

摘記2e:実施例1
「【0061】実施例1…本発明の潤滑油配合物は、表1に示す特性を有する2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を用いて配合した。…
【0063】【表1】



上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:エンジンの清浄性を向上させるViscopolexの化学構造
「【0031】…本発明は、鉱物基油及び/又は合成基油、及び式I【化1】

(式中、Rは、任意に置換した炭素原子数3?50の分岐鎖又は直鎖アルキル基であり、R1は、水素又は任意に置換した炭素原子数1?50の分岐鎖又は直鎖アルキル基であり、nは1以上の整数であり、mも1以上の整数であり、xは2?10,000の整数である)
の1種以上の化合物を含有する…潤滑油組成物を提供する。…
【0036】…式Iの化合物としては…商品名…“Viscoplex 6-054”…が挙げられる。…
【0079】本発明の潤滑油組成物は、良好な洗浄性を示すと共に、ピストンの清浄性のように有益なエンジンの清浄性をもたらす。…
【0080】したがって、本発明は、本発明の潤滑油組成物をジーゼルエンジン、ガス燃料エンジン及び/又はガソリンエンジンに適用して、エンジンの清浄性を向上するため、クランクケース潤滑剤として、該潤滑油組成物を使用する方法を更に提供する。」

上記刊行物4には、和訳にして、次の記載がある。
摘記4a:第1頁第25?31行(公表公報の段落0006)
「省燃費を実現することのできるエンジン用潤滑剤組成物(いわゆる「燃料エコ」組成物)は、GTL(ガストゥリキッド)由来の基油と;…有機摩擦調整剤と;…ABブロック共重合体に由来するVI向上ポリマーと;を組み合せることによって処方することができる。」

摘記4b:第8頁第1?34行(公表公報の段落0056?0061)
「VI向上ポリマー(b):…米国特許第5565130号明細書…には、VI向上ポリマーとして、アクリレート系またはメタクリレート系のマクロモノマーと、アクリレート系またはメタクリレート系のモノマーとの共重合で得られた櫛型構造のポリマー(櫛型ポリマー)が記載されている。…IUPAC…によると、櫛型ポリマーとは、線状側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多く持つ高分子である複数の櫛型高分子によって構成されたポリマーのことを指す。…本発明にかかる潤滑剤組成物は、VI向上ポリマーとして、ポリアルキル(メタ)アクリレート系の主鎖と炭素数が少なくとも50の長い炭化水素側鎖とで形成された櫛型ポリマーである櫛型ポリアクリレート(櫛型PA)または櫛型ポリメタクリレート(櫛型PMA)を含む。」

摘記4c:第16頁第15?18行(公表公報の段落0113)
「本発明にかかる潤滑剤組成物は、基油として、…フィッシャートロプシュワックスの水素化異性化で得られた基油のみを含み、かつ、その基油の含有量は、65?95質量%である。」

上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:燃費を向上させるためのViscopolexの使用
「【0001】本発明は、潤滑油組成物に関するものであり、…ピストンリング…におけるディーゼルエンジンの潤滑に使用可能な耐摩耗性に優れた低燃費型潤滑油組成物に関するものである。…
【0002】…燃費向上を達成するためには内燃機関の摺動部分の摩擦を可能な限り低減させる必要があり、潤滑油品質面の対応としては潤滑油基油の粘度を低下させることにより流体摩擦を低減させようとする取組みが一般化されつつある。…
【0007】…本発明は、…合成油…からなる基油に、…下記の添加剤Iを1?15質量%配合してな…る潤滑油組成物に関するものである。
I.…(i)分散型ポリメタアクリレート…
【0024】かかる分散型ポリメタアクリレートは、通常、メタアクリル酸とC_(1)?C_(18)脂肪族アルコールとのエステル混合物に極性モノマーを添加し共重合することにより得ることができる。市販品としては、例えば、Viscoplex^(TM) 6-054…が提供されており…使用することができる。」

(2)刊行物に記載された発明
ア.刊1発明
摘記1aの「請求項3…主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、前記櫛形ポリマーは、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、前記櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8?30質量%を有することと、前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%?1.1%の範囲内であることとを特徴とする、櫛形ポリマー。…請求項22…請求項3…に記載の櫛形ポリマーを含む、潤滑油配合物。…請求項23…前記潤滑油配合物が、APIのI、II、III、IV、および/またはV群のベースオイルを含む…請求項22に記載の潤滑油配合物。…請求項25…前記潤滑油配合物が、請求項3…に記載の櫛形ポリマーではない少なくとも1つの付加的添加剤を含むことを特徴とする、請求項22から24までのいずれか1項に記載の潤滑油配合物。…請求項28…自動車における燃料消費量を減少させるための、請求項3…に記載の櫛形ポリマーの使用。」との記載、
摘記1bの「本発明は、燃料消費量を減少させるための櫛形ポリマーの使用に関する。…本実施形態によって、とりわけ、煤煙蓄積、ピストン清浄性、および摩耗保護に関して有利な特性を達成することが可能である。」との記載、
摘記1cの「本発明の櫛形ポリマーは…潤滑油組成物中に使用することができ…潤滑油には、特に…合成油…が含まれる。」との記載、及び
摘記1dの「合成油には、…合成炭化水素…が含まれるが、…ガス・トゥー・リキッド(GTL)…に由来する合成ベースオイルを使用することも可能である。これらは通常は鉱物油よりもやや高価であるが、その性能に関して利点を有する。…API…鉱物油は、I群…III群…に分類される。PAOは、IV群に相当する。その他全てのベースオイルは、V群に含まれる。」との記載からみて、刊行物1には、
『煤煙蓄積、ピストン清浄性、および摩耗保護に関して有利な特性を達成し、自動車における燃料消費量を減少させるための櫛形ポリマーを含む潤滑油配合物の使用であって、
前記櫛形ポリマーが、主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、前記櫛形ポリマーは、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、前記櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8?30質量%を有することと、前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%?1.1%の範囲内であることとを特徴とし、
前記潤滑油配合物が、櫛形ポリマーと、APIのI、II、III群のベースオイル(鉱物油)、IV群のベースオイル(PAO)、および/またはV群のベースオイル〔鉱物油よりもやや高価であるが、その性能に関して利点を有するガス・トゥー・リキッド(GTL)に由来する合成ベースオイル〕と、櫛形ポリマーではない少なくとも1つの付加的添加剤を含む、潤滑油配合物の使用。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

イ.刊2発明
摘記2aの「本発明は潤滑油組成物…を内燃機関でのピストンリング堆積物の低下に使用する方法に関する。…出願人は、フィッシャー・トロプシュ法から誘導した高級パラフィン系基油をベースとする潤滑油組成物を圧縮点火内燃機関の潤滑に用いると、日産TD25ピストン洗浄性試験におけるピストン及びピストンリング溝の堆積物が鉱物油ベースの潤滑油に比べて著しく減縮することを意外にも見出した。…フィッシャー・トロプシュ誘導基油を含む潤滑剤を使用すると、ピストン清浄性に顕著な予測し得ない相乗的向上が得られることを見出した。」との記載、
摘記2bの「本発明のパッケージを採用するエンジンは潤滑される。…内燃機関は、通常、クランクケース…を有する。潤滑油は、通常、クランクケース内に存在し、ここではクランクシャフト…が潤滑油中に浸漬されている」との記載、
摘記2cの「潤滑油組成物は、(a)…フィッシャー・トロプシュ誘導基油からなる、潤滑油粘度を有する基油を主要量、並びに(b)…分散剤、(c)…金属洗浄剤、(e)…他の潤滑添加剤成分、及び(f)粘度調整剤、を少量含有するマルチグレードのクランクケース潤滑油組成物」との記載、及び
摘記2eの「実施例1…本発明の潤滑油配合物は、表1に示す特性を有する2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を用いて配合した。…表1:日産TD25ピストン清浄性試験用ブレンド…実施例1…GTL基油1…GTL基油2…無灰分分散剤…過剰塩基洗浄剤…粘度調整剤Viscoples 6-054…粘度調整剤…消泡剤」との記載からみて、刊行物2には、
『ピストン清浄性に顕著な向上が得られ、ピストン及びピストンリング溝の堆積物が著しく減縮するための、エンジンを潤滑するクランクケース潤滑油組成物の使用であって、潤滑油組成物は、フィッシャー・トロプシュ誘導基油(GTL基油1及びGTL基油2)、粘度調整剤Viscoples 6-054(商品名)、並びに分散剤(無灰分分散剤)、金属洗浄剤(過剰塩基洗浄剤)、及び他の潤滑添加剤成分(消泡剤など)を含む、クランクケース潤滑油組成物の使用。』についての発明(以下「刊2発明」という。)が記載されているといえる。

(3)刊行物1を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本願請求項1に係る発明と刊1発明とを対比すると、少なくとも次の〔相違点α〕の点において相違する。

〔相違点α〕潤滑組成物が、前者においては「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を「全組成物量に対して1?8.5%」の範囲の配合量で含むのに対して、後者においては「主鎖中に、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む櫛形ポリマーであって、前記櫛形ポリマーは、前記繰り返し単位の質量に対して、ポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位と、8?17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、アシル基中に1?11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基中に1?10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、およびこれらのモノマーの混合物からなる群から選択される低分子モノマーに由来する繰り返し単位と、を合計少なくとも80質量%含み、前記櫛形ポリマーがポリオレフィンベースのマクロモノマーに由来する繰り返し単位8?30質量%を有することと、前記櫛形ポリマーのモル分岐度が0.3%?1.1%の範囲内であることとを特徴」とする「櫛形ポリマー」を含むものであって、刊1発明の「櫛形ポリマー」の範囲に「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」に合致するものが含まれるか否か不明であり、なおかつ、その配合量が特定されていない点。

イ.判断
上記〔相違点α〕について検討する。

先ず、刊1発明の「櫛形ポリマー」の広範な範囲に、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」に合致するものがあるといえる具体的な根拠は見当たらないから、本願請求項1に係る発明が、刊1発明と同一であるとはいえない。
したがって、本願請求項1に係る発明が、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。

次に、刊行物1?5には、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」について示唆を含めて記載がない。
また、平成30年8月6日付けの手続補足書に添付された参考資料3のパンフレットの記載事項を斟酌しても、本願優先日前の技術水準において、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」が当業者にとって周知慣用の添加剤となっていたと認めるに至らない。
このため、刊行物1?5に記載の技術事項及び本願優先日前の技術常識を参酌しても、刊1発明の「櫛形ポリマー」の種類を、本願請求項1に係る発明の「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」に置き換えることに「動機付け」があるとはいえず、本願請求項1に係る発明の「構成」を導き出すことが、当業者にとって容易であると認めるに至らない。

そして、本願明細書の段落0107?0108及び段落0112の表2には、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を本願請求項1に特定される「1?8.5%」の範囲内の配合量で配合した「実施例2」の具体例の潤滑組成物の燃費特性を示すための「業界標準M111燃費試験法」及びピストン清浄特性を示すための「業界標準VW TDI試験法」の試験結果が、これを所定の配合量で配合しない比較例1?3及び参考例1のものに比して、顕著に優れたものとなることが示されている。

してみると、本願請求項1に係る発明は、上記〔相違点α〕に係る事項を発明特定事項として備えることにより「高温付着物形成の低下を達成し、且つ持続的な燃費特性を改善するための、エンジンのクランク室における改善されたピストン清浄特性を有する潤滑組成物の使用」が可能になるという作用効果を奏するに至ったものといえるものであって、この作用効果を当業者が容易に予測できるとはいえる根拠は見当たらない。

したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願請求項1に係る発明が、刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

また、本願請求項2に係る発明は本願請求項1を引用するものであるところ、本願請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を否定できないことは上記のとおりであるから、同様の理由により、本願請求項2に係る発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。

(4)刊行物2を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本願請求項1に係る発明と刊2発明とを対比すると、少なくとも次の〔相違点β〕の点において相違する。

〔相違点β〕潤滑組成物が、前者においては「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を「全組成物量に対して1?8.5%」の範囲の配合量で含むのに対して、後者においては「粘度調整剤Viscoples 6-054(商品名)」を含むものであって、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を含むものではない点。

イ.判断
上記〔相違点β〕について検討するに、刊行物1?5には、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」について示唆を含めて記載がなく、平成30年8月6日付けの手続補足書に添付された参考資料3のパンフレットの記載事項を斟酌しても、本願優先日前の技術水準において、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」が当業者にとって周知慣用の添加剤となっていたと認めるに至らない。
このため、刊行物1?5に記載の技術事項及び本願優先日前の技術常識を参酌しても、刊2発明の「粘度調整剤Viscoples 6-054(商品名)」に代えて、又は、これに加えて更に当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を配合することに「動機付け」があるとはいえず、本願請求項1に係る発明の「構成」を導き出すことが、当業者にとって容易であると認めるに至らない。

そして、本願明細書の段落0107?0108及び段落0112の表2には、当該「櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201」を本願請求項1に特定される「1?8.5%」の範囲内の配合量で配合した「実施例2」の具体例の潤滑組成物の燃費特性を示すための「業界標準M111燃費試験法」及びピストン清浄特性を示すための「業界標準VW TDI試験法」の試験結果が、これを所定の配合量で配合しない比較例1?3及び参考例1のものに比して、顕著に優れたものとなることが示されている。

してみると、本願請求項1に係る発明は、上記〔相違点β〕に係る事項を発明特定事項として備えることにより「高温付着物形成の低下を達成し、且つ持続的な燃費特性を改善するための、エンジンのクランク室における改善されたピストン清浄特性を有する潤滑組成物の使用」が可能になるという作用効果を奏するに至ったものといえるものであって、この作用効果を当業者が容易に予測できるとはいえる根拠は見当たらない。

したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願請求項1に係る発明が、刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

また、本願請求項2に係る発明は本願請求項1を引用するものであるところ、本願請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を否定できないことは上記のとおりであるから、同様の理由により、本願請求項2に係る発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。

2.理由3及び4について
(1)本願請求項1?2の記載の明確性
上記第3(1)の記載不備に関して、補正前の「改善されたピストン清浄特性と高温付着物形成の低下とを達成しつつ、持続的な燃費特性を改善するために、エンジンのクランク室における潤滑組成物の使用であって」という発明特定事項は、補正により「高温付着物形成の低下を達成し、且つ持続的な燃費特性を改善するための、エンジンのクランク室における改善されたピストン清浄特性を有する潤滑組成物の使用であって」という発明特定事項に改められており、補正後の「潤滑組成物は全組成物量に対して1?8.5%の櫛形ポリマーViscoplex(登録商標)3-201を含む」という発明特定事項によって特許を受けようとする発明の範囲が技術的に十分特定されているといえるから、機能・特性等によって記載された発明特定事項があったとしても、補正後の本願請求項1及びその従属項の記載に不明確な点があるとはいえない。
また、当該「Viscoplex(登録商標)3-201」という製品名による発明特定事項について、自動車メーカーにとって一般に承認された潤滑油・グリースは一定の性状であることが求められ、その製品仕様が変動することはあり得ないというのが当業者の技術常識であるといえるから、当該製品名を発明特定事項とすることによって、特許を受けようとする発明の範囲が不明確になるとはいえず、補正後の本願請求項1及びその従属項の記載に不明確な点があるとはいえない。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
上記第3(2)の記載不備に関して、補正後の「櫛形ポリマー」は「Viscoplex(登録商標)3-201」に限定されており、その機能・特性等によって特定される「潤滑組成物の使用」について、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるとはいえないので、補正後の本願請求項1及びその従属項に係る発明に関して、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があるとはいえない。

(3)本願請求項1?2の記載の範囲
上記第3(3)及び(4)の記載不備に関して、補正後の請求項1の「櫛形ポリマー」の種類は「Viscoplex(登録商標)3-201」に限定され、その配合量は「全組成物量に対して1?8.5%」に限定されたところ、補正後の請求項1に特定される「櫛形ポリマー」の範囲が不当に広すぎるとはいえない。
そして、本願明細書の段落0112の表2には、本願発明の具体例に相当する「実施例2」のものが、高温付着物形成の傾向を示すためのMCT法の試験結果において最良の結果を示し、燃費特性を示すためのM111試験法の試験結果において比較例1及び2のものより卓越した結果を示し、ピストン清浄特性を住めるためのVW TDI試験法の試験結果において比較例3のものより卓越した結果を示すことが裏付けられている。
また、ディーゼル煤煙分散性特性を示すためのDV4試験法の試験結果について、実施例2の試験結果は「測定せず」となっているが、比較例1?3及び参考例1の試験結果では、当該「Viscoplex(登録商標)3-201」の配合量が0重量%の比較例1(9.5%)に比して、その配合量が9.5重量%の比較例3(1.08%)、同11.5重量%の比較例2(2.14%)及び同11.5重量%の参考例1(2.22%)のものが良好な結果になっているので、同8.5重量%の実施例2(測定せず)の結果も同様に良好なものになると自然には類推される。
してみると、本願請求項1及びその従属項の記載は、本願明細書の段落0005の「改善された分散性とピストン清浄性という利点並びに持続的な燃費という利点を提供する」との記載にあるとおりの課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるといえるから、補正後の本願請求項1及びその従属項の記載にサポート要件の不備があるとはいえない。

3.まとめ
以上総括するに、本願については、平成30年4月3日付けの拒絶理由通知に示した拒絶の理由及び原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2015-517735(P2015-517735)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C10M)
P 1 8・ 113- WY (C10M)
P 1 8・ 536- WY (C10M)
P 1 8・ 537- WY (C10M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 牟田 博一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 日比野 隆治
木村 敏康
発明の名称 潤滑組成物  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中田 隆  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  

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