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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
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管理番号 | 1343824 |
審判番号 | 不服2017-9193 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-23 |
確定日 | 2018-09-06 |
事件の表示 | 特願2016- 83127「写真シール作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月29日出願公開、特開2016-173578〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 (1)手続の経緯 本願は、平成25年6月14日に出願された特願2013-125799号の一部を平成25年12月24日に新たな特許出願(特願2013-266095号)とし、さらにその一部を平成28年4月18日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年 6月30日:拒絶理由通知 平成28年 9月 5日:意見書 平成28年 9月 5日:手続補正書 平成28年11月 7日:拒絶理由通知 平成29年 1月10日:意見書 平成29年 1月10日:手続補正書 平成29年 3月17日:拒絶査定 平成29年 6月23日:審判請求書 平成29年 6月23日:手続補正書 平成30年 3月23日:拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。) 平成30年 5月28日:意見書(以下単に「意見書」という。) 平成30年 5月28日:手続補正書(以下、該手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) (2)本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。 「撮影空間を形成し、利用者を被写体とした撮影処理を行う装置である撮影部 を備え、 前記撮影部の正面には、照明装置として、 カメラが設けられるカメラユニットにおいて、前記カメラの上に設けられる正面ストロボと、 前記カメラユニットの真上で、かつ、前記撮影部の正面の左右方向中央に設置され、略円形状で曲面の発光面を有する上ストロボと、 前記カメラユニットの下方に設置された下ストロボ の3つのストロボのみが配置され、 前記撮影部において、前記カメラユニット内にはいかなる表示部も設けられず、かつ、前記カメラユニットの左右にはいかなる照明装置も表示部も配置されず、 前記カメラは、異なる画角での撮影を行い、 前記カメラによる撮影の画角に応じて、前記照明装置の発光を制御する照明制御部をさらに備える 写真シール作成装置。」(以下「本願発明」という。) 2 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は概ね次のとおりである。 (進歩性)この出願の本件補正前の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1-5 ・引用文献 引用例1.特開2010-54924号公報 引用例2.特開2007-279285号公報 引用例3.特開2009-169208号公報 引用例4.特開2003-280084号公報 引用例5.特開2002-311495号公報 引用例6.特開2004-341329号公報 引用例7.特開2006-254214号公報 引用例8.特開2005-70737号公報 引用例9.特開2006-106523号公報 引用例10.特開2007-212727号公報 特に請求項1に係るもののうち、引用例1を主引例とする進歩性欠如を拒絶の理由は、以下のとおりである。 引用例1に記載された発明において、カメラ25と顔照明装置23eとは隣接して配置されており、いずれの装置を組み合わせてユニット化するかは当業者が必要に応じ適宜なし得た単なる設計的事項にすぎない。また、引用例1に記載された発明において、コストダウン等の観点から、照明装置を必要最低限の配置となし、顔照明装置23eと中央上照明装置23bと下照明装置23gの3つのストロボのみの配置となすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。この点について、例えば、引用例2(特に【0069】、【0070】、図8参照。)参照。 3 引用例の記載事項 (1)本願の出願前に頒布された刊行物であり、当審拒絶理由で引用例1として引用された特開2010-54924号公報には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 この発明は、例えば利用者を撮影して撮影画像を取得し、この撮影画像に編集許容して編集画像を取得し、この編集画像を出力するような写真撮影編集装置に関する。」 イ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。 図1は前方から見た写真シール作成機1の斜視図を示し、図2は後方から見た写真シール作成機1の斜視図を示し、図3は、撮影筐体3の正面図を示し、図4は撮影台22および背景カーテン8のカメラ25側から見た正面図を示し、図5は撮影台22の説明図を示し、図6は背景照明装置23iの説明図を示し、図7は天井照明装置23hの斜視図を示し、図8は全体筐体2の縦断側面図を示す。 【0027】 写真シール作成機1は、全体が略直方体形状の全体筐体2内に主に撮影筐体3と撮影空間5と背景カーテン8とが設けられ、全体筐体2の撮影筐体3側に隣接して編集筐体4が設けられている。 【0034】 図3に示すように、撮影筐体3は、正面中央に設けられたカメラ25と、カメラ25の直下に設けられたライブビューモニタ26と、カメラ25およびライブビューモニタ26の周囲(上下左右)に配置された複数の照明装置23a?23gとで主に構成されている。 【0035】 また、上記照明装置23a?23g以外にも、全体筐体2内には、天井照明装置23h(図1参照)、および背景照明装置23i(図5参照)が設けられている。 【0036】 照明装置23は、撮影筐体3の左上に配置された左上照明装置23a、撮影筐体3の中央上に配置された中央上照明装置23b、撮影筐体3の右上に配置された右上照明装置23c、撮影筐体3の左横に配置された左照明装置23d、撮影筐体3のカメラ25の直上に配置された顔照明装置23e、撮影筐体3の右横に配置された右照明装置23f、撮影筐体3のライブビューモニタ26の下方位置に配置された下照明装置23g、撮影空間5の天井に配置された天井照明装置23h(図1参照)、および、撮影台22に設けられた背景照明装置23i(図5参照)で構成されている。 【0037】 このうち、左上照明装置23a、中央上照明装置23b、右上照明装置23c、左照明装置23d、顔照明装置23e、右照明装置23f、および下照明装置23gは、図3に示すように撮影筐体3に設けられ、乳白色の半透明素材で略半球状に形成された球面拡散板の内側に、ストロボ照明装置と、該ストロボ照明装置の直接光を近接位置で拡散する乳白色の半透明素材で板状に形成された平面拡散板とで構成されている。これらの左上照明装置23a、中央上照明装置23b、右上照明装置23c、左照明装置23d、顔照明装置23e、右照明装置23f、および下照明装置23gは、撮影空間5内のユーザを上下左右から面光で全体的に照明する。 ・・・略・・・ 【0054】 図9は、写真シール作成機1のブロック図を示す。 写真シール作成機1は、制御装置12に接続して、記憶部11、通信部13、ドライブ14、ROM16、RAM17、撮影部20、編集部30、およびプリンタ38が設けられている。 ・・・略・・・ 【0061】 照明装置23は、制御装置12から受信した照明制御信号に従い、上述した各照明装置23(23a?23i)のストロボ照明装置から閃光を照射する。 カメラ25は、制御装置12から受信したシャッタ信号に従って撮影を実行し、取得した撮影画像や動画映像の画像データを制御装置12に送信する。 ・・・略・・・ 【0096】 また、上述した写真シール作成機1は、少人数から多人数まで対応できる撮影空間5を有しているため、ステップS2の撮影処理の際にユーザに撮影人数をタッチパネルモニタ27で選択させ、この撮影人数に応じて各照明装置23a?23iの明るさを変更させてもよい。この場合、撮影人数と各照明装置23a?23i内のストロボ照明装置の明るさ設定とを対応づけた設定データを記憶部11に記憶しておくとよい。 【0097】 設定データは、例えば撮影人数が5人であれば全ての照明装置23a?23iのストロボ照明装置を強い光で発光させ、撮影人数が2人であれば照明装置23a?23iの全てまたは一部を弱い光で発光させるデータとすることができる。 ・・・略・・・ 【0099】 この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、 この発明の写真撮影編集装置は、実施形態の写真シール作成機1に対応し、 以下同様に、 背景部材は、背景カーテン8に対応し、 一方は、背景カーテン8側に対応し、 利用者照明手段は、照明装置23a?23hに対応し、 背景照明手段は、背景照明装置23iに対応し、 撮影手段は、カメラ25に対応し、 他方は、カメラ25側に対応し、 編集手段は、タブレット内蔵モニタ31に対応し、 出力手段は、プリンタ38に対応し、 発光体は、ストロボ照明装置231iに対応するが、 この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。」 ウ 「【図3】 」 エ 上記アないしウからみて、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。なお、引用箇所の段落番号を併記した。 「全体が略直方体形状の全体筐体2内に主に撮影筐体3と撮影空間5と背景カーテン8とが設けられ、利用者を撮影して撮影画像を取得する写真シール作成機1であって(【0001】、【0027】、【0099】)、 撮影筐体3は、正面中央に設けられたカメラ25と、カメラ25の直下に設けられたライブビューモニタ26と、カメラ25およびライブビューモニタ26の周囲(上下左右)に配置された複数の照明装置23a?23gとで構成され(【0034】)、 該照明装置23a?23gは、撮影筐体3の左上に配置された左上照明装置23a、撮影筐体3の中央上に配置された中央上照明装置23b、撮影筐体3の右上に配置された右上照明装置23c、撮影筐体3の左横に配置された左照明装置23d、撮影筐体3のカメラ25の直上に配置された顔照明装置23e、撮影筐体3の右横に配置された右照明装置23f、撮影筐体3のライブビューモニタ26の下方位置に配置された下照明装置23gであり(【0036】)、各照明装置は、乳白色の半透明素材で略半球状に形成された球面拡散板の内側に、ストロボ照明装置と、該ストロボ照明装置の直接光を近接位置で拡散する乳白色の半透明素材で板状に形成された平面拡散板とで構成され(【0037】)、 撮影人数に応じて各照明装置の明るさを変更させる制御装置12をさらに備える(【0096】)、 写真シール作成機1。」(以下「引用発明」という。) (2)本願の出願前に頒布された刊行物であり、当審拒絶理由で引用例2として引用された特開2005-96231号公報には、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「【実施例1】 【0020】 図1は写真シール作成装置1の平面図を示し、図2は写真シール作成装置1の右側面図を示し、図3は本体10の正面図を示し、図4は写真シール作成装置1を左背面上方から見た斜視図を示す。 【0021】 写真シール作成装置1は、図示省略するフレームにより全体が略直方体に構成されており、このフレーム内の手前側に撮影空間Zが備えられ、フレーム内の奥側の左右に2つの編集空間A,Bが配設されている。この撮影空間Zは、自然人2人が横並びに並べる幅より広い幅に構成されている。 【0022】 編集空間A,Bの間となる写真シール作成装置1の奥側中央には、前後に長い本体10が備えられている。また、本体10の手前側の左右両横には、中央のデジタルカメラ23から手前に向かって左右に広がるように仕切り体7A,7Bが左右対称に設けられている。この仕切り体7A,7Bは、本体10の手前側の左右両横から写真シール作成装置1の左右端まで一直線に続く奥行き方向の厚みが一定の略板状の部材であり、写真シール作成装置1の上下左右全面に渡って設けられている。従って、左側の仕切り体7Aは、左側の編集空間Aと撮影空間Zとを完全に分離し、右側の仕切り体7Bは、右側の編集空間Bと撮影空間Zとを完全に分離している。 【0023】 また、左側の仕切り体7Aは、デジタルカメラ23の画角の境界線である左側画角境界線23aに沿って、左側画角境界線23aより撮影空間Zの外側(向こう側)で左側画角境界線23a近傍に配置されている。 【0024】 同様に、右側の仕切り体7Bは、デジタルカメラ23の画角の境界線である右側画角境界線23bに沿って、右側画角境界線23bより撮影空間Zの外側(向こう側)で右側画角境界線23b近傍に配置されている。 【0025】 従って撮影空間Zは、平面視すると中央のデジタルカメラ23から手前に向かって末広がりとなる略三角形状の部分を有しており、デジタルカメラ23の画角の外側空間が削られた形状に構成されている。 【0026】 また編集空間Aは、仕切り体7Aとの境界部分が左右方向外側へ行くほど撮影空間Zに向かって突出する逆三角部分を有しており、デジタルカメラ23の左右真横より撮影空間Z側に向かって拡張されている。同様に、編集空間Bは、仕切り体7Bとの境界部分が左右方向外側へ行くほど撮影空間Zに向かって突出する逆三角部分を有しており、デジタルカメラ23の左右真横より撮影空間Z側に向かって拡張されている。 【0027】 撮影空間Zの手前側には、背景部材9が設けられている。この背景部材9は、撮影空間Z側の面が白色などの背景色に塗装された壁である。撮影空間Zの左右には、出入り口カーテン8a,8bがそれぞれ配設されている。利用者は、この出入り口カーテン8a,8bをめくって撮影空間Zに出入りすることができる。 【0028】 撮影空間Zの上部である天井部分には、図2に示すように天井照明装置22Eが設けられている。この天井照明装置22Eは、内部にストロボ発光体が設けられ下面に拡散板が傾斜配置されており、ストロボ発光体の閃光を拡散板で拡散しつつ本体10の正面に向けて斜め下方に照射する。 【0029】 本体10は、図3に示すように、正面に上方から正面上部照明装置22C、デジタルカメラ23、画像表示部24、撮影表示部25、および正面下部照明装置22Dがこの順で備えられている。 【0030】 また仕切り体7Aには、撮影空間Z側の表面の全面に渡って正面左照明装置22Aが設けられており、仕切り体7Bには、撮影空間Z側の表面の全面に渡って正面右照明装置22Bが設けられている。 【0031】 これらの正面左照明装置22A、正面右照明装置22B、正面上部照明装置22Cおよび正面下部照明装置22Dは、天井照明装置22Eから照射された光を撮影空間Z側へ向けて拡散し反射する平面状の拡散反射板(例えば表面の荒い白色板など)により構成されている。この拡散反射板は、利用者を綺麗に照明するために、正面を斜め上方に向けるなど適宜の角度を持たせて備えられている。 【0032】 正面下部照明装置22Dの拡散板の一部には、硬貨処理部の硬貨投入口21aおよび硬貨払い出し口21bが設けられている。 また、本体10の手前側の左右側方には、音声出力を行うスピーカ26(図2参照)が備えられている。」 イ 「【実施例3】 【0069】 図8は、実施例3の写真シール作成装置3の本体10の正面図を示す。 この写真シール作成装置3は、仕切り体7A,7Bの撮影空間Z側を単に壁面としたものである。従って、正面左照明装置22Aおよび正面右照明装置22Bを備えていない。それ以外の構成および動作は実施例1の写真シール作成装置1と同一である。 【0070】 以上の写真シール作成装置3により、照明効果を除いて上述した写真シール作成装置1と同一の効果を奏することができる。また、正面左照明装置22Aおよび正面右照明装置22Bを備えていない分、仕切り体7A,7Bを薄型化することができる。」 ウ 「【図8】 」 エ 上記アないしウからみて、引用例2には、実施例3として、次の事項が記載されているものと認められる。 「正面に上方から正面上部照明装置22C、デジタルカメラ23、画像表示部24、撮影表示部25、および正面下部照明装置22Dがこの順で備えられている本体10と、 該本体10の手前側の左右両横には、中央のデジタルカメラ23から手前に向かって左右に広がるように左右対称に設けられている仕切り体7A,7Bと、を備えた写真シール作成装置3であって、 仕切り体7A,7Bの撮影空間Z側を単に壁面としたこと。」(以下「引用例2の記載事項」という。) 4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「撮影空間5」、「利用者」及び「写真シール作成機1」は、それぞれ本願発明の「撮影空間」、「利用者」及び「写真シール作成装置」に相当する。また、引用発明の「写真シール作成機1」(写真シール作成装置)は、「利用者」をカメラ25で撮影して撮影画像を取得するものであり、該カメラ25が撮影筐体3に備えられているものである。そして、引用発明の撮影筐体3は撮影空間5を構成していることは明らかである。そうすると、引用発明の「撮影筐体3」が、本願発明の「撮影空間を形成し、利用者を被写体とした撮影処理を行う装置である撮影部」に相当することは明らかである。 (2)引用発明において、「撮影筐体3」(撮影部)は、正面中央に設けられたカメラ25と、カメラ25の直下に設けられたライブビューモニタ26と、カメラ25およびライブビューモニタ26の周囲(上下左右)に配置された複数の照明装置23a?23gとで構成され、該照明装置23a?23gは、撮影筐体3の中央上に配置された中央上照明装置23b、撮影筐体3のカメラ25の直上に配置された顔照明装置23e、撮影筐体3のライブビューモニタ26の下方位置に配置された下照明装置23gを含み、各照明装置は、乳白色の半透明素材で略半球状に形成された球面拡散板の内側に、ストロボ照明装置と、該ストロボ照明装置の直接光を近接位置で拡散する乳白色の半透明素材で板状に形成された平面拡散板とで構成されているものである。 そうすると、引用発明の「顔照明装置23e」、「中央上照明装置23b」及び「下照明装置23g」は、それぞれ本願発明の「カメラの上に設けられる正面ストロボ」、「カメラの真上で、かつ、撮影部の正面の左右方向中央に設置され、略円形状で曲面の発光面を有する上ストロボ」及び「カメラの下方に設置された下ストロボ」に相当することは明らかである。そして、引用発明の「顔照明装置23e」(正面ストロボ)、「中央上照明装置23b」(上ストロボ)及び「下照明装置23g」(下ストロボ)が「撮影筐体3」(撮影部)の正面に設けられていることも明らかである。 してみると、引用発明の「撮影筐体3は、正面中央に設けられたカメラ25と、カメラ25の直下に設けられたライブビューモニタ26と、カメラ25およびライブビューモニタ26の周囲(上下左右)に配置された複数の照明装置23a?23gとで構成され、該照明装置23a?23gは、撮影筐体3の左上に配置された左上照明装置23a、撮影筐体3の中央上に配置された中央上照明装置23b、撮影筐体3の右上に配置された右上照明装置23c、撮影筐体3の左横に配置された左照明装置23d、撮影筐体3のカメラ25の直上に配置された顔照明装置23e、撮影筐体3の右横に配置された右照明装置23f、撮影筐体3のライブビューモニタ26の下方位置に配置された下照明装置23gであり、各照明装置は、乳白色の半透明素材で略半球状に形成された球面拡散板の内側に、ストロボ照明装置と、該ストロボ照明装置の直接光を近接位置で拡散する乳白色の半透明素材で板状に形成された平面拡散板とで構成され」と、本願発明の「前記撮影部の正面には、照明装置として、カメラが設けられるカメラユニットにおいて、前記カメラの上に設けられる正面ストロボと、前記カメラユニットの真上で、かつ、前記撮影部の正面の左右方向中央に設置され、略円形状で曲面の発光面を有する上ストロボと、前記カメラユニットの下方に設置された下ストロボの3つのストロボのみが配置され、前記撮影部において、前記カメラユニット内にはいかなる表示部も設けられず、かつ、前記カメラユニットの左右にはいかなる照明装置も表示部も配置されず」とは、「前記撮影部の正面には、照明装置として、カメラの上に設けられる正面ストロボと、前記カメラの真上で、かつ、前記撮影部の正面の左右方向中央に設置され、略円形状で曲面の発光面を有する上ストロボと、前記カメラの下方に設置された下ストロボの3つのストロボが配置され」ている点で一致する。 (3)引用発明は、撮影人数に応じて各照明装置の明るさを変更させる制御装置12を備えるものであるから、引用発明と、本願発明とは、「照明装置の発光を制御する照明制御部をさらに備える」点で一致する。 (4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、 「撮影空間を形成し、利用者を被写体とした撮影処理を行う装置である撮影部 を備え、 前記撮影部の正面には、照明装置として、 カメラの上に設けられる正面ストロボと、 前記カメラの真上で、かつ、前記撮影部の正面の左右方向中央に設置され、略円形状で曲面の発光面を有する上ストロボと、 前記カメラの下方に設置された下ストロボ の3つのストロボが配置され、 前記照明装置の発光を制御する照明制御部をさらに備える 写真シール作成装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1 本願発明では、「カメラユニットにおいて」、「カメラ」と「カメラの上に正面ストロボ」が設けられ、「前記カメラユニット内にはいかなる表示部も設けられ」ないのに対し、 引用発明では、カメラ25の直上に顔照明装置23e(正面ストロボ)が配置されているものの、ライブビューモニタ26(表示部)を含まずに、カメラ25と顔照明装置23e(正面ストロボ)とをユニット化してカメラユニットとなっていることは特定されていない点。 ・相違点2 本願発明では、「撮影部の正面には、照明装置として」、「正面ストロボ」と「上ストロボ」と「下ストロボ」の「3つのストロボのみが配置され」るとともに、「前記撮影部において」、「前記カメラユニットの左右にはいかなる照明装置も表示部も配置されない」のに対し、 引用発明では、撮影筐体3に、顔照明装置23eと中央上照明装置23bと下照明装置23gを配置しているものの、これらの照明装置以外の照明装置もカメラ25の左右に配置されている点。 ・相違点3 本願発明では、「前記カメラは、異なる画角での撮影を行い」、「照明制御部」が、「前記カメラによる撮影の画角に応じて、前記照明装置の発光を制御する」のに対し、 引用発明では、カメラが異なる画角での撮影を行うことは特定されておらず、また、制御装置12(照明制御部)が、撮影人数に応じて各照明装置の明るさを変更させるものの、カメラによる撮影の画角に応じて各照明装置の明るさを変更させるものではない点。 5 判断 (1)上記相違点1について検討する。 引用発明において、カメラ25と顔照明装置23e(正面ストロボ)とは上下方向に近接して配置されているところ、一般的に、いずれの装置を一の構成単位、すなわちユニットとなすかは、組立作業性や機能的関連性等を考慮して適宜なされるものであり、このような事情を考慮すれば、いずれの装置を組み合わせてユニット化するかは当業者が必要に応じ適宜なし得た単なる設計的事項にすぎない。そうすると、引用発明において、ライブビューモニタ26を含まずにカメラ25と顔照明装置23e(正面ストロボ)とをユニットとなすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。 (2)上記相違点2について検討する。 ア 上記3(2)エのとおり、引用例2の記載事項は、正面に上方から正面上部照明装置22C、デジタルカメラ23、画像表示部24、撮影表示部25、および正面下部照明装置22Dがこの順で備えられている本体10と、該本体10の手前側の左右両横には、中央のデジタルカメラ23から手前に向かって左右に広がるように左右対称に設けられている仕切り体7A,7Bと、を備えた写真シール作成装置3であって、仕切り体7A,7Bの撮影空間Z側を単に壁面としたものである。要するに、引用例2の記載事項は、本体10(撮影部)の正面には、照明装置として、正面下部照明装置22D(正面ストロボ)と正面上部照明装置22C(上ストロボ)と正面下部照明装置22D(下ストロボ)の3つの照明装置(ストロボ)のみが配置されるとともに、前記本体10において、デジタルカメラ23の左右にはいかなる照明装置も表示部も配置されていないものである。 イ 写真シール作成装置に関する当業者であれば、引用例2の記載事項を心得ているところ、引用発明において、コストダウン等の観点から、照明装置を必要最低限の配置となし、顔照明装置23eと中央上照明装置23bと下照明装置23gの3つのストロボのみの配置となすこと、引用例2の記載事項に接した当業者であれば適宜なし得た事項である。そして、引用発明のカメラを近隣の装置とともにユニット化した際にも、当該カメラユニットの左右にいかなる照明装置および表示部も設けられないことは自明である。 ウ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。 (3)上記相違点3について検討する。 ア 写真シール作成装置において、アップ撮影か全身撮影かによって、照明装置の発光を制御することは周知(以下「周知技術1」という。例.当審拒絶理由で引用例9として引用した特開2006-106523号公報(【0049】、【0238】ないし【0267】等参照。)、特開2006-10933号公報(【0001】、【0051】、【0103】、【0104】等参照。)、特開2000-32249号公報(【0001】、【0046】ないし【0048】、【0108】等参照。))である。 イ 写真シール作成装置において、アップ撮影と全身撮影とを異なる画角で撮影するとともに、種々の撮影条件に応じて発光を制御する機能を有する照明装置を備えることは周知(以下「周知技術2」という。例.特開2006-292789号公報(【0051】、【0057】、【0075】、【0095】、【0136】、図7等参照。)、上記特開2000-32249号公報(【0001】、【0046】ないし【0048】、【0108】、図7,8等参照。))である。 ウ 引用発明は、撮影人数に応じて各照明装置の明るさを変更させる制御装置12を備えるものであるところ、撮影人数が多い場合には、被写体全員を撮影するために少人数に比べて広範囲に撮影されるものであり、被写体1人に着目すると、全身撮影のように比較的に広角的に撮影されるものであることが想定される。ここで、上記アで示した周知技術1を考慮すれば、引用発明において、アップ撮影及び全身撮影を撮影可能とするとともに、アップ撮影か全身撮影かによって、照明装置の発光を制御するようになすことは当業者が適宜なし得たことである。 エ 上記ウのように、アップ撮影及び全身撮影を撮影するには、技術常識からみて、利用者である被写体自身がカメラに接近あるいは後退するか、レンズによる撮影画角を変更するかのいずれかが想定できるが、上記イで周知技術2として示したように、アップ撮影と全身撮影とを異なる画角で撮影することは周知であり、当該周知技術2に基づけば、アップ撮影及び全身撮影を撮影する際に、撮影画角の変更により対応することは当業者が適宜なし得たことである。そして、上記ウのとおり、アップ撮影と全身撮影とでは、照明装置における、求められる発光態様が異なることは自明である。 オ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者が周知技術1及び2に基づいて適宜なし得たことである。、 (4)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果、周知技術1及び2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。 (5)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (6)審判請求人の主張について ア 審判請求人は、意見書において、概略、以下のとおり主張している。 「(2)本願発明と引用発明との対比 ・・・略・・・ しかしながら、引用例1乃至10において、“カメラが、異なる画角での撮影を行い、照明制御部が、カメラによる撮影の画角に応じて照明装置の発光を制御する”ことについては、開示も示唆もされていません。 これに対して、請求項1に記載の本願発明は、“カメラが、異なる画角での撮影を行い、照明制御部が、カメラによる撮影の画角に応じて照明装置の発光を制御する”という技術的特徴を有しています。 これにより、請求項1に記載の本願発明によれば、撮影の範囲に適した発光量を確保することができるようになるので、利用者が所望する仕上がりの画像を提供することが可能となるという顕著な作用効果を奏することができます。」 イ 審判請求人の主張について検討する。 上記(3)で述べたとおり、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことが当業者にとって容易であり、作用効果も予測可能であるから、請求人の主張は、採用することができない。 6 むすび 本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-07-11 |
結審通知日 | 2018-07-12 |
審決日 | 2018-07-24 |
出願番号 | 特願2016-83127(P2016-83127) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小倉 宏之 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 清水 康司 |
発明の名称 | 写真シール作成装置 |
代理人 | 三浦 勇介 |
代理人 | 稲本 義雄 |
代理人 | 西川 孝 |