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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1343826 |
審判番号 | 不服2017-9785 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-03 |
確定日 | 2018-09-06 |
事件の表示 | 特願2013- 37895「通信装置、制御方法及び制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-164716〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成25年2月27日の出願であって、平成28年10月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月27日に手続補正がなされ、平成29年1月17日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月23日に手続補正がなされ、同年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月3日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年6月21日に手続補正がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年6月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ディスプレイと、 電子メールを受信する通信ユニットと、 前記電子メールの送信先に含まれているメールアドレスがアドレス帳データに登録されていないと、受信した前記電子メールのメール画面に、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報を前記ディスプレイに表示させ、前記メール画面において、受信した前記電子メールを返信する操作がなされた場合に、前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を含む、未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための情報を前記ディスプレイに表示させるコントローラとを備え、 前記コントローラは、前記メール画面および未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための前記情報を表示する画面の少なくとも一方において、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を、前記メールアドレスの前または後に表示させる 通信装置。」 第2 引用文献、引用発明等 1.引用文献1 当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された、特開2011-175322号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 (1)「【0027】 図1を参照して、この実施例の電子機器としての携帯電話機10は、CPUないしコンピュータと呼ばれるプロセッサ12を含む。このプロセッサ12には、バスを介して、RAM14、ROM16、フラッシュメモリ18、キー入力装置20、表示ドライバ22、A/D変換器24、D/A変換器26、無線通信回路28およびRTC38が接続される。また、表示ドライバ22には、ディスプレイ30が接続される。A/D変換器24にはマイク32が接続され、D/A変換器26にはアンプ(図示せず)を介してスピーカ34が接続される。そして、無線通信回路28には、アンテナ36が接続される。 【0028】 プロセッサ12は、携帯電話機10の全体制御を司る。RAM14は、プロセッサ12の作業領域(描画領域を含む)ないしバッファ領域として用いられる。ROM16は、たとえばEEPROMのような電気的に書き換え可能なメモリであり、プロセッサ12によって実行される各種のプログラムやこれらのプログラムで利用される種々のデータを記憶する。フラッシュメモリ18は、携帯電話機10の所有者のプロフィール、アドレス帳およびスケジュール帳などのデータの他に、文字、画像、音声、音および映像のようなコンテンツのデータなどを記録する。」(下線は当審で付与。以下、同様。) (2)「【0039】 このような構成の携帯電話機10では、電子メールの送受信が可能である。たとえば、図3(A)に示すように、ディスプレイ30は、表示領域30aと表示領域30bとを有している。表示領域30aには、たとえば、電波強度を示す画像、電池残量を示す画像および現在時刻(西暦および日付を含む場合もある)を示す画像が表示される。図示は省略するが、表示領域30bには、待ち受け画面が表示されたり、メニュー画面が表示されたり、アドレス帳、電卓、電子メール(以下、単に「メール」ということがある)などの各種の機能を実行する際に必要な画面が表示されたりする。 【0040】 図3(B)には、受信した同報メール(受信メール)の確認画面100の例が示される。図3(B)では、簡単のため、表示領域30bのみを示してあるが、表示領域30aは、図3(A)と同様である。以下、画面の図について同様である。受信メールの確認画面100では、表示領域30bに、表示欄102、104、106および108が設けられる。 【0041】 表示欄102には、差出人の名称やメールアドレスが表示される。この名称は、メールアドレスに対応してアドレス帳に登録されたものである。後述する表示欄に表示される名称について同様である。ただし、アドレス帳は、携帯電話機10の内部に記憶されるアドレス帳データに対応するものである。名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄102に表示される。この実施例では、アドレス帳にメールアドレス等が登録されていることを前提として、各種の画面において、差出人(From)、宛先(To)、Cc(Carbon copy)の表示欄に、名称(たとえば、Aさん、Bさん、Cさん、…)を記載してある。ただし、実際に、差出人、宛先、Ccとしてメールに設定されるのは、メールアドレスである。 【0042】 表示欄104には、Ccの送り先の名称が表示される。ただし、この表示欄104には、携帯電話機10自身の利用者の名称は表示されない。表示欄106には、件名(Sub:subject)の内容が表示される。そして、表示欄108には、本文(body)の内容が表示される。また、表示欄108の左下部には、ボタン画像108aが設けられる。このボタン画像108aは、受信メールに対して返信することを選択するためのGUIである。ただし、メールキー20jが操作(オン)されると、ボタン画像108aが選択(オン)される。 【0043】 図3(B)に示すような受信メールの確認画面100において、ボタン画像108aがオンされると、図示は省略するが、全員へ返信(以下、「全返信」という)するか、差出人のみへ返信するかを選択するための画面が、たとえば、確認画面100の前面に表示される。ここで、全返信が選択されると、図4(A)に示すような返信メールの作成画面120がディスプレイ30に表示される。図示は省略するが、差出人のみへ返信することが選択された場合には、図4(A)に示す返信メールの作成画面120において、表示欄124に名称が記入されていない作成画面がディスプレイ30に表示される。 【0044】 図4(A)に示す返信メールの作成画面120では、表示領域30bに、表示欄122、124、126、128が設けられる。表示欄122には、宛先の名称が表示される。表示欄124には、Ccの名称が表示される。表示欄126には、件名の内容が表示される。ここでは、受信メールに対する返信メールを作成するため、表示欄122には、受信メールの差出人の表示欄102に記載の名称が表示される。また、表示欄124には、受信メールのCcの表示欄104に記載の名称が記載される。さらに、表示欄126には、受信メールの件名の表示欄106に記載の内容に、返信メールであることを意味する文字列(Re:)が追加された内容の件名が表示される。 【0045】 また、図4(A)では空白にしてあるが、表示欄128には、本文(返信する内容)が記載される。また、表示欄128の下部には、ボタン画像128aおよび128bが設けられる。ボタン画像128aは、メールを送信するためのGUIである。ボタン画像128bは、メールの送り先(この実施例では、宛先やCcの送り先)を編集するためのGUIである。ただし、メールキー20jがオンされると、ボタン画像128aがオンされる。また、センターキー20eがオンされると、ボタン画像128bがオンされる。 【0046】 図4(A)に示すような返信メールの作成画面120では、表示欄122や表示欄124に表示された送り先を追加したり、削除したりすることができる。ただし、表示欄122には少なくとも1つの送り先すなわち宛先を設定する必要がある。 【0047】 通常、送り先を追加する場合には、送り先を追加する表示欄122または表示欄124を指定して、ボタン画像128bをオンすることにより、宛先やCcの編集画面(図示せず)を開き、さらに、アドレス帳を用いて名称を入力したり、メールアドレスを直接入力したりする。また、送り先を削除する場合には、削除する送り先が表示された表示欄122、124を指定して、ボタン画像128bをオンすることにより、編集画面(図示せず)を開き、左キー20gや右キー20iを用いてカーソル(図示せず)を所望の位置(削除する名称やメールアドレスの位置)に移動させ、クリア/メモキー20dを操作して、名称やメールアドレスの文字列を消去する。 【0048】 しかし、一旦送り先を消去した後に、再度その送り先にメールを送信したいと思い直した場合には、受信メールの確認画面100を再度開いて、初めから返信メールを作成し直すか、上記のような編集画面を開いて、アドレス帳を用いて名称を入力したり、メールアドレスを直接入力したりしてその送り先を追加する必要がある。これでは、操作が面倒である。また、たとえば、受信メールの確認画面100と返信メールの作成画面120とを比較して、削除したり追加したりした送り先を確認する必要があるので、そのような確認も面倒であり、分かり難い。 【0049】 そこで、この実施例では、宛先やCcのリストを作成するとともにディスプレイ30に表示して、当該リストを用いて、返信メールを送信するか否かを個別に設定可能にしてある。 【0050】 図4(B)には、ディスプレイ30に表示されるCcの編集画面140の例が示される。この編集画面140は、図4(A)に示した返信メールの作成画面120において、表示欄124を指示(選択)した状態で、ボタン画像128bをオンすると、表示される。図4(B)に示すCcの編集画面140では、表示領域30bに、表示欄142および表示欄144が設けられる。表示欄142には、Ccについてのリストである旨が表示される。表示欄144には、Ccの送り先が表示されるとともに、その下部にボタン画像144a、144b、144cが設けられる。 【0051】 図4(B)から分かるように、表示欄144では、チェックボックス1440、1442、1444、1446の各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)においてCcの表示欄104(124)に表示された名称が表示される。」 (3)「【0053】 ボタン画像144bは、チェックボックス1440、1442、1444、1446の状態を変化(この実施例では、反転)させるためのGUIである。チェックボックス1440-1446は、黒色で塗りつぶした状態が真の状態であり、送り先として(返信メールの送信を実施することを)選択していることが設定される。図4(B)では図示していないが、チェックボックス1440-1446は、空白の状態(図5(B)参照)が偽の状態であり、送り先として選択されていないことが設定される。たとえば、ボタン画像144bがオンされると、表示欄144に表示された名称のうち、カーソル(図示せず)によって指定された名称に対応して表示されたチェックボックス1440、1442、1444、1446の状態が反転される。したがって、図5(A)に示す状態において、「Cさん」の表示にカーソルを合わせて、ボタン画像144bをオンすると、チェックボックス1442の状態が反転され、空白にされる。つまり、返信メールの送り先から除外される。」 (4)図4(A)には、表示欄122及び表示欄124に名称が記入された、返信メールの作成画面120が示されている。 上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、入力装置として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「携帯電話機10は、CPUないしコンピュータと呼ばれるプロセッサ12を含み、 このプロセッサ12には、バスを介して、フラッシュメモリ18、表示ドライバ22、無線通信回路28が接続され、また、表示ドライバ22には、ディスプレイ30が接続され、 プロセッサ12は、携帯電話機10の全体制御を司り、 フラッシュメモリ18は、アドレス帳などを記録し、 このような構成の携帯電話機10では、電子メールの送受信が可能であり、電子メール(以下、単に「メール」ということがある)などの各種の機能を実行する際に必要な画面が表示され、 受信メールの確認画面100では、表示領域30bに、表示欄102、104が設けられ、 表示欄102には、差出人の名称やメールアドレスが表示され、この名称は、メールアドレスに対応してアドレス帳に登録されたものであり、後述する表示欄に表示される名称について同様であり、ただし、アドレス帳は、携帯電話機10の内部に記憶されるアドレス帳データに対応するものであり、名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄102に表示され、 表示欄104には、Ccの送り先の名称が表示され、 受信メールの確認画面100において、ボタン画像108aがオンされると、全員へ返信(以下、「全返信」という)するか、差出人のみへ返信するかを選択するための画面が、たとえば、確認画面100の前面に表示され、 全返信が選択されると、表示欄122及び表示欄124に名称が記入された、返信メールの作成画面120がディスプレイ30に表示され、差出人のみへ返信することが選択された場合には、返信メールの作成画面120において、表示欄124に名称が記入されていない作成画面がディスプレイ30に表示され、 返信メールの作成画面120では、表示領域30bに、表示欄122、124、128が設けられ、表示欄122には、宛先の名称が表示され、表示欄124には、Ccの名称が表示され、受信メールに対する返信メールを作成するため、表示欄122には、受信メールの差出人の表示欄102に記載の名称が表示され、また、表示欄124には、受信メールのCcの表示欄104に記載の名称が記載され、 表示欄128の下部には、ボタン画像128aおよび128bが設けられ、ボタン画像128bは、メールの送り先(宛先やCcの送り先)を編集するためのGUIであり、 通常、送り先を追加する場合には、送り先を追加する表示欄122または表示欄124を指定して、ボタン画像128bをオンすることにより、宛先やCcの編集画面を開くが、この実施例では、宛先やCcのリストを作成するとともにディスプレイ30に表示して、当該リストを用いて、返信メールを送信するか否かを個別に設定可能にしてあり、 Ccの編集画面140の例では、この編集画面140は、返信メールの作成画面120において、表示欄124を指示(選択)した状態で、ボタン画像128bをオンすると、表示され、 Ccの編集画面140では、表示領域30bに、表示欄144が設けられ、 表示欄144では、チェックボックス1440、1442、1444、1446の各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)においてCcの表示欄104(124)に表示された名称が表示され、 チェックボックス1440-1446は、黒色で塗りつぶした状態が真の状態であり、送り先として(返信メールの送信を実施することを)選択していることが設定され、チェックボックス1440-1446は、空白の状態が偽の状態であり、送り先として選択されていないことが設定される 携帯電話機10。」 2.引用文献2 当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された、特開2001-125844号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。 (1)「【0037】このメール編集画面60において、利用者が「返信(R)」コマンド欄63をマウスクリックすると、CPU11はメールヘッダ61から返信先のメールアドレスとして、送信者欄(情報提供者Sankaku)のメールアドレス「sankaku@sample.fujitsu.co.jp」及び宛先欄(社内メーリングリスト)のメールアドレス「Mlist@sample.fujitsu.co.jp」を抽出する(図5中のS502)。 【0038】次に、CPU11は抽出した上記返信先メールアドレスとメールアドレス帳9に登録されているアドレスとを比較する(図5中のS503)。CPU11は、S503の比較結果に基づいて、返信先メールアドレスがメーリングリスト8のアドレスとして登録されているか否かを判定し(図5中のS504)、登録されている場合は、返信メール原文62中(メール本文62中)に含まれるメールアドレスを全て抽出する。厳密には、メールアドレスと推定できる文字列を抽出することになる(図5中のS505)。この結果、メールアドレス「marux@sample.fujitsu.co.jp」及び「sankaku@sample.fujitsu.co.jp」が抽出される。 【0039】CPU11は抽出したこれら全てのメールアドレス「Mlist@sample.fujitsu.co.jp」、「marux@sample.fujitsu.co.jp」及び「sankaku@sample.fujitsu.co.jp」とメールアドレス帳9の登録内容(メールアドレス)とを比較する(図5中のS506)。 【0040】この場合、メールアドレス「Mlist@sample.fujitsu.co.jp」及び「sankaku@sample.fujitsu.co.jp」はメールアドレス帳9に登録されているメールアドレスと一致するが、メールアドレス「marux@sample.fujitsu.co.jp」はメールアドレス帳9に登録されていないために一致しない(図5中のS507)。 【0041】次に、CPU11は一致アドレスについてメールアドレス帳9から関連付けられている名前(この場合、「社内メーリングリスト」及び「Sankaku(△)さん)を取得し(図5中のS508)、名前とメールアドレスとを対応付けてメールアドレス帳9の配列に格納する(図5中のS509)。また、CPU11はS507の処理において得られた不一致アドレスについては、メールアドレス帳9に「Marux(○×)」さんが登録されていないので、「名称不明」として取り扱い(図5中のS510)、S509の処理において、名前「名称不明」と対応メールアドレスとをメールアドレス帳9の配列に格納する。 【0042】CPU11は、抽出した全てのメールアドレスとメールアドレス帳9の登録内容との比較が終了した場合(図5中のS511)、抽出したこれらのメールアドレスを返信先候補リストとして表示装置16に表示し、受信側の利用者がこのリストの一覧から返信先を選択できるようにする(図5中のS512)。この処理により、表示装置16には、図7に示す返信先選択・確認画面70が表示される。 【0043】この場合、一覧の先頭に返信先の社内メーリングリストのメールアドレスが表示され、以下に抽出順に残りのメールアドレスが一覧表示される。返信の電子メールはメールアドレス「marux@sample.fujitsu.co.jp」の「Marux(○×)」さんだけに送信すべきであるので、利用者は入力装置15のマウス操作により、返信先選択・確認画面70における対応の欄、更に「OK」のコマンドボタンをクリックする(図5中のS513)。 【0044】この操作により、CPU11はメールエディタを起動し、図8に示す返信メール編集画面80を表示装置16に表示させる。この画面80が表示されたとき、アドレス欄の宛先(O)81には、メールアドレス「marux@sample.fujitsu.co.jp」が表示される。利用者は、この画面80において、返信用のメール本文82を作成した後、返信メールの送信コマンドを入力する(図5中のS514)。 【0045】この結果、返信先選択・確認画面70の返信先候補リストの一覧から返信先の個人「Marux(○×)」さんのメールアドレスを選択でき、メーリングリスト8への誤送信(返信)が防止できる。」 (2)図7には、「アドレス」が「marux@sample.fujitsu.co.jp」の「名前」として「<名称不明>」と、「marux@sample.fujitsu.co.jp」の左側に表示することが示されている。 3.引用文献3 当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された、特開2012-182707号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。 (1)「【0019】 第1通信端末10は、振り込め詐欺の相手からの電話やメール等を受ける通信端末である。第1通信端末10は、少なくとも、電話(通話)機能と、データ送受信機能を有する。」 (2)「【0079】 第1通信端末10の制御部17は、電話通信機能部11を介して電話を着信した際、第1アプリ162を実行/起動し、着信した送信元の電話番号と、記憶部16に記憶している電話帳データ161の電話番号とを比較する。なお、第1通信端末10の制御部17は、事前に(予め)第1アプリ162を実行/起動しておき、常駐させていても良い。 【0080】 第1通信端末10の制御部17は、送信元の電話番号が善良な相手の電話番号として電話帳データ161に既に登録されている場合、電話帳データ161に基づいて、表示部13にその電話番号に対応付けられた名前を表示し、入力部15でのユーザ操作(通話開始ボタンの押下等)があれば、通話を開始する。 【0081】 第1通信端末10の制御部17は、送信元の電話番号が善良な相手の電話番号として電話帳データ161に未だ登録されていない場合(電話番号が未登録である場合や、登録されていても善悪が不明である場合)、表示部13にその電話番号が未登録である旨を表示する。また、第1通信端末10の制御部17は、送信元の電話番号が悪意ある相手の電話番号として電話帳データ161に既に登録されている場合、電話帳データ161に基づいて、表示部13にその電話番号が悪意ある相手の電話番号である旨を表示する。制御部17は、入力部15でのユーザ操作(通話開始ボタンの押下等)があれば、通話を開始すると同時に、ネットワーク通信機能部12を介して、第2通信端末20に注意情報(着信した電話番号を含んでいても良い)を送信する。」 (3)「【0095】 また、ここでは、悪意ある相手との通話を防止することを例に説明しているが、悪意ある相手とのメール送受信を防止することについても同様の処理で対応可能である。すなわち、転用可能である。この場合、上記の説明において、「電話」を「メール」、「電話の着信」を「メールの着信」、「電話番号」を「メールアドレス」、「通話」を「メールの送受信」、「通話中の相手及びユーザの音声」を「通話中の相手及びユーザのメールデータ」と読み替える。また、「音声入出力部に音声を出力」を「表示部にメールの内容を表示」と読み替えても良いし、受診したメールの内容を音声データ化して出力する場合は、読み替えなくても良い。なお、メールは、デジタルデータの一種である。したがって、メール以外のデジタルデータについても同様の処理で対応可能である。また、電話やメールは一例に過ぎず、電話やメール以外の通信についても同様の処理で対応可能である。」 第3 対比・判断 1.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ディスプレイ30」、「無線通信回路28」はそれぞれ、本願発明の「ディスプレイ」、「電子メールを受信する通信ユニット」に相当する。 (2)引用発明の「受信メールの確認画面100では、表示領域30bに、表示欄102、104が設けられ、表示欄102には、差出人の名称やメールアドレスが表示され、この名称は、メールアドレスに対応してアドレス帳に登録されたものであり、後述する表示欄に表示される名称について同様であり、ただし、アドレス帳は、携帯電話機10の内部に記憶されるアドレス帳データに対応するものであり、名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄102に表示され」るものである。 そして、引用発明の「名称がアドレス帳に登録されていない場合」は、本願発明の「前記電子メールの送信先に含まれているメールアドレスがアドレス帳データに登録されていない」ことに、引用発明の「受信メールの確認画面100」は、本願発明の「受信した前記メールのメール画面」にそれぞれ相当し、引用発明の「メールアドレスがそのまま表示欄102に表示され」ることは、本願発明の「前記メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報を前記ディスプレイに表示させ」ることと、「名称以外の情報を前記ディスプレイに表示させ」る点で共通するから、引用発明は、本願発明の「前記電子メールの送信先に含まれているメールアドレスがアドレス帳データに登録されていないと、受信した前記電子メールのメール画面に、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報を前記ディスプレイに表示させ」ることと、「前記電子メールの送信先に含まれているメールアドレスがアドレス帳データに登録されていないと、受信した前記電子メールのメール画面に、名称以外の情報を前記ディスプレイに表示させ」る点では共通するといえる。 (3)引用発明は、「受信メールの確認画面100において、ボタン画像108aがオン」され、また、「全員へ返信(以下、「全返信」という)するか、差出人のみへ返信するかを選択するための画面」への操作を行うことにより、「返信メールの作成画面120」が表示されるものである。 そして、引用発明は、「返信メールの作成画面120」には、「表示欄122、124」が設けられ、「表示欄122には、受信メールの差出人の表示欄102に記載の名称が表示され、また、表示欄124には、受信メールのCcの表示欄104に記載の名称が記載され」、さらに、「ボタン画像128aおよび128b」が設けられ、「ボタン画像128b」は、「メールの送り先(宛先やCcの送り先)を編集するためのGUI」であり、「送り先を追加する場合には、送り先を追加する表示欄122または表示欄124を指定して、ボタン画像128bをオンすることにより、宛先やCcの編集画面を開く」ものである。 ここで、引用発明は、「Ccの編集画面140は、返信メールの作成画面120において、表示欄124を指示(選択)した状態で、ボタン画像128bをオンすると、表示され」、「Ccの編集画面140では、表示領域30bに、表示欄144が設けられ、表示欄144では、チェックボックス1440、1442、1444、1446の各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)においてCcの表示欄104(124)に表示された名称が表示される」ものであるから、宛先の編集画面は、返信メールの作成画面120において、表示欄122を指示(選択)した状態で、ボタン画像128bをオンすると、表示され、宛先の編集画面では、表示領域に、表示欄が設けられ、表示欄では、チェックボックスの各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)において差出人の表示欄102(122)に表示された名称が表示されるものと認められる。 したがって、上記(2)述べたように、「名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄102に表示され」ることを考慮すれば、引用発明は、受信メールの確認画面100において、ボタン画像108aがオンされ、また、全員へ返信(以下、「全返信」という)するか、差出人のみへ返信するかを選択するための画面への操作を行うことにより、返信メールの作成画面120が表示され、返信メールの作成画面120において、表示欄122を指定して、ボタン画像128bをオンすることにより、宛先の編集画面を開き、宛先の編集画面では、表示領域に、表示欄が設けられ、表示欄では、チェックボックスの各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)において差出人の表示欄102(122)に表示された名称が表示され、名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄に表示されるものと認められる。 そして、引用発明の受信メールの確認画面100において、ボタン画像108aがオンされ、また、全員へ返信(以下、「全返信」という)するか、差出人のみへ返信するかを選択するための画面への操作を行うことにより、返信メールの作成画面120が表示され、返信メールの作成画面120において、表示欄122を指定して、ボタン画像128bをオンすることは、本願発明の「前記メール画面において、受信した前記電子メールを返信する操作がなされた場合に」相当し、引用発明の宛先の編集画面の表示欄に、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)において差出人の表示欄102(122)に表示された名称が表示され、名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄に表示されることは、本願発明の「前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を含む」「情報を前記ディスプレイに表示させる」ことと、「前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、名称以外の情報を含む」「情報を前記ディスプレイに表示させる」点で共通し、引用発明の宛先の編集画面の表示欄では、チェックボックスが表示されることは、チェックボックスは、黒色で塗りつぶした状態が真の状態であり、送り先として(返信メールの送信を実施することを)選択していることが設定され、空白の状態が偽の状態であり、送り先として選択されていないことが設定されるものであることを考慮すれば、本願発明の「返信するか否かを指示させるための情報を前記ディスプレイに表示させる」ことに相当するから、引用発明は、本願発明の「前記メール画面において、受信した前記電子メールを返信する操作がなされた場合に、前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を含む、未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための情報を前記ディスプレイに表示させる」ことと、「前記メール画面において、受信した前記電子メールを返信する操作がなされた場合に、前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、名称以外の情報を含む、未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための情報を前記ディスプレイに表示させる」点では共通する構成を有するといえる。 (4)引用発明の「携帯電話機10の全体制御を司」る「プロセッサ12」、「携帯電話機10」は、以下の相違点を除き、本願発明の「コントローラ」、「通信装置」にそれぞれ相当する。 (5)引用発明の「プロセッサ12」は「携帯電話機10の全体制御を司」るものである。 引用発明の「受信メールの確認画面100では、表示領域30bに、表示欄102が設けられ、・・・名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄102に表示され」る。 また、上記(3)で述べたように、引用発明は、宛先の編集画面では、表示領域に、表示欄が設けられ、表示欄では、チェックボックスの各々に対応して、受信メールの確認画面100(返信メールの作成画面120)において差出人の表示欄102(122)に表示された名称が表示され、名称がアドレス帳に登録されていない場合には、メールアドレスがそのまま表示欄に表示されるものと認められる。 したがって、引用発明の「プロセッサ12」が上記「受信メールの確認画面100」および上記宛先の編集画面を表示させることは、本願発明の「前記コントローラは、前記メール画面および未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための前記情報を表示する画面の少なくとも一方において、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を、前記メールアドレスの前または後に表示させる」ことと「前記コントローラは、前記メール画面および未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための前記情報を表示する画面の少なくとも一方において、名称以外の情報を表示させる」点では共通するといえる。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 〈一致点〉 「ディスプレイと、 電子メールを受信する通信ユニットと、 前記電子メールの送信先に含まれているメールアドレスがアドレス帳データに登録されていないと、受信した前記電子メールのメール画面に、名称以外の情報を前記ディスプレイに表示させ、前記メール画面において、受信した前記電子メールを返信する操作がなされた場合に、前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、名称以外の情報を含む、未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための情報を前記ディスプレイに表示させるコントローラとを備え、 前記コントローラは、前記メール画面および未登録の前記メールアドレスに返信するか否かを指示させるための前記情報を表示する画面の少なくとも一方において、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、名称以外の情報を表示させる 通信装置。」 〈相違点1〉 「前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていない」と表示される「名称以外の情報」が、本願発明は、「前記メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報」であるのに対し、引用発明は、「メールアドレス」である点。 〈相違点2〉 本願発明は、「前記メールアドレスが未登録であることを示すための、前記メールアドレスとは異なる情報を、前記メールアドレスの前または後に表示させる」ものであるのに対し、引用発明は、「名称以外の情報」である「メールアドレス」を表示するのみである点。 2.判断 〈相違点1〉について 引用文献2の【0039】-【0042】には、「CPU11は抽出したこれら全てのメールアドレス」「とメールアドレス帳9の登録内容(メールアドレス)とを比較」し、「不一致アドレスについては、」「「名称不明」として取り扱い」、「「<名称不明>」と表示する」ことが記載され、引用文献3の【0079】-【0081】、【0095】には、「送信元のメールアドレスが善良な相手の電話番号として電話帳データ161に既に登録されている場合、電話帳データ161に基づいて、表示部13にそのメールアドレスに対応付けられた名前を表示し」、「送信元のメールアドレスが善良な相手の電話番号として電話帳データ161に未だ登録されていない場合、表示部13にそのメールアドレスが未登録である旨を表示する」ことが記載されるように、メールアドレスがアドレス帳に登録されていない場合、メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報を表示することは、本願の出願日前周知技術であったものと認められ、引用発明に上記周知技術を適用し、「前記電子メールの送信先に含まれている前記メールアドレスが前記アドレス帳データに登録されていないと、前記メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報」を表示する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 〈相違点2〉について 引用文献2の図7に、「アドレス」が「marux@sample.fujitsu.co.jp」の「名前」として「<名称不明>」と、「marux@sample.fujitsu.co.jp」の左側に表示することが示されるように、引用文献2には、メールアドレスがアドレス帳に登録されていない場合、メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報である「<名称不明>」の表示を、メールアドレスの左側、すなわち、メールアドレスの前に表示する構成(以下、「引用文献2記載の構成」という。)が記載されており、アドレス帳に登録されていない場合、メールアドレスが表示されるものである引用発明に、引用文献2記載の構成を適用して、メールアドレスの前に、メールアドレスが未登録であることを示すための、メールアドレスとは異なる情報である「<名称不明>」と表示する形態となるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予想できる程度のものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-07-03 |
結審通知日 | 2018-07-10 |
審決日 | 2018-07-23 |
出願番号 | 特願2013-37895(P2013-37895) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新田 亮、北川 純次 |
特許庁審判長 |
安久 司郎 |
特許庁審判官 |
山田 正文 松田 岳士 |
発明の名称 | 通信装置、制御方法及び制御プログラム |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |