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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1343839
審判番号 不服2017-7897  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-31 
確定日 2018-09-26 
事件の表示 特願2014-131510「ドットパターン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日出願公開、特開2014-209374、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月6日(優先権主張 平成24年10月1日)に出願した特願2012-244923号の一部を平成25年6月18日に新たな特許出願とした特願2013-127191号の一部を平成26年6月26日に新たな特許出願(特願2014-131510号)としたものであって、平成28年9月1日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月10日付けで手続補正がされ、平成29年2月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月31日に審判の請求がされ、平成30年3月28日付けで当審より拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年6月11日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献A-Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2011-141705号公報
B.特開2007-011890号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-318507号公報

第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成30年6月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備えたドットパターンであって、
前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え、
前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置され、
前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化されたドットパターン。

【請求項2】
前記コードは、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値の、長短の順位の順列、長短の順位の組み合わせ、比率の順列、比率の組み合わせ、または絶対値、絶対値の順列、絶対値の組み合わせ、の少なくともいずれかにより符号化された、請求項1記載のドットパターン。

【請求項3】
ドットパターンを撮像する撮像手段と、
前記撮像した画像からコードに復号化する復号化手段と、
前記コードを送信する送信手段とからなる光学読み取り装置であって、
前記ドットパターンは、
複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備え、
前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え、
前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置され、
前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化されたドットパターンである、
光学読み取り装置。

【請求項4】
前記コードは、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値の、長短の順位の順列、長短の順位の組み合わせ、比率の順列、比率の組み合わせ、または絶対値、絶対値の順列、絶対値の組み合わせ、の少なくともいずれかにより符号化された、請求項3記載の光学読み取り装置。

【請求項5】
撮像手段により撮像された画像からドットパターンを検出する処理と、
前記ドットパターンにより符号化されたコードを復号する処理と、
を実行させるドットパターン読み取りプログラムであって、
前記ドットパターンは、
複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備え、
前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え、
前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置され、
前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化されたドットパターンである、
ドットパターン読み取りプログラム。

【請求項6】
前記コードは、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値の、長短の順位の順列、長短の順位の組み合わせ、比率の順列、比率の組み合わせ、または絶対値、絶対値の順列、絶対値の組み合わせ、の少なくともいずれかにより符号化された、請求項5記載のドットパターン読み取りプログラム。

【請求項7】
撮像手段により撮像された画像からドットパターンを検出する処理と、
前記ドットパターンにより符号化されたコードを復号する処理と、
を備えるドットパターン読み取り方法であって、
前記ドットパターンは、
複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備え、
前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え、
前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置され、
前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化されたドットパターンである、
ドットパターン読み取り方法。

【請求項8】
前記コードは、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値の、長短の順位の順列、長短の順位の組み合わせ、比率の順列、比率の組み合わせ、または絶対値、絶対値の順列、絶対値の組み合わせ、の少なくともいずれかにより符号化された、請求項7記載のドットパターン読み取り方法。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3-4、5-6、7-8は、本願発明1-2にそれぞれ対応する「光学読み取り装置」、「ドットパターン読み取りプログラム」、「ドットパターン読み取り方法」の発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(1) 段落【0024】-【0059】
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
(ドットパターンの基本原理)
本実施形態のドットパターンの基本原理について図1を用いて説明する。
【0025】
まず、図1に示すように、xy方向に所定間隔毎に格子線(y1?y7、x1?x5)を仮定する。この格子線の交点を格子点と呼ぶことにする。そして、本実施形態ではこの4つの格子点で囲まれた最小ブロック(1グリッド)としてxy方向に4ブロック(4グリッド)ずつ、すなわち4×4=16ブロック(16グリッド)を1つの情報ブロックとする。なお、この情報ブロックの単位を16ブロックとしたのはあくまでも一例であり、任意のブロック数で情報ブロックを構成することが可能であることはいうまでもない。
【0026】
そしてこの情報ブロックの矩形領域を構成する4つの角点をコーナードット(x1y1,x1y5,x5y1,x5y5)とする(図中、円形で囲んだドット)。この4つのコーナードットは格子点と一致させる。
【0027】
このように、格子点と一致する4個のコーナードットを発見することにより、情報ブロックを認識することができるようになっている。ただし、このコーナードットだけだと情報ブロックは認識できても、その向きがわからない。たとえば情報ブロックの方向が認識できないと同じ情報ブロックであっても±90度または180度回転させたものをスキャンしてしまうと全く別の情報となってしまうためである。
【0028】
そこで、情報ブロックの矩形領域の内部または隣接した矩形領域内の格子点にベクトルドット(キードット)を配置している。同図では、三角形で囲まれたドット(x0y3)がそれであり、情報ブロックの上辺を構成する格子線の中点の鉛直上方の1つ目の格子点にキードット(ベクトルドット)が配置されている。これと同様に、当該情報ブロック内において下辺を構成する格子線の中点の鉛直上の1つ目の格子点(x4y3)に下の情報ブロックのキードットが配置されている。
【0029】
なお、本実施形態では、格子間(グリッド間)距離を0.25mmとした。したがって、情報ブロックの一辺は0.25mm×4グリッド=1mmとなる。そしてこの面積は1mm×1mm=1mm^(2)となる。この範囲内に14ビットの情報が格納可能であり、この内2ビットをコントロールデータとして使った場合、12ビット分の情報が格納できることになる。なお、格子間(グリッド間)距離を0.25mmとしたのはあくまでも一例であり、たとえば0.25?0.5mm超の範囲で自由に変更してもよい。
(情報ドットの配置原則)
情報ドットは1つおきに格子点からx方向、y方向にずらした位置に配置されている。情報ドットの直径は好ましくは0.03?0.05mm超であり、格子点からのずれ量は格子間距離の15?25%程度とすることが好ましい。このずれ量も一例であるため必ずしもこの範囲でなくてもよいが、一般に25%よりも大きなずれ量とした場合には目視したときにドットパターンが模様となって表れやすい傾向がある。
【0030】
つまり格子点からのずれ方が、上下(y方向)のずれと左右(x方向)へのずれとが交互となっているため、ドットの配置分布の偏在がなくなり、紙面上にモアレや模様となって見えることがなくなり、印刷紙面の美観が保てる。
【0031】
このような配置原則を採用することにより、情報ドットは1つおきに必ずy方向(図2参照)の格子線上に配置されることになる。このことは、ドットパターンを読み取る際には、1つおきにy方向またはx方向に直線上に配置された格子線を発見すればよいこととなり、認識の際の情報処理装置における計算アルゴリズムを単純かつ高速化できる利点がある。
【0032】
また、たとえドットパターンが紙面の弯曲等により変形していた場合、格子線は正確な直線とならない場合があるが、直線に近似した緩やかな曲線であるため、格子線の発見は比較的容易であるため、紙面の変形や読取光学系のずれや歪みに強いアルゴリズムであるということがいえる。
【0033】
情報ドットの意味について説明したものが図3である。同図中において+は格子点、●はドット(情報ドット)を示している。格子点に対して-y方向に情報ドットを配置した場合を0、+y方向に情報ドットを配置した場合を1、同じく格子点に対して-x方向に情報ドットを配置した場合を0、+x方向に情報ドットを配置した場合を1とする。

・・・(中略)・・・

なお、本実施形態では上記情報ビット(当審注:「上記情報ドット」の誤記と認める。)に対して、さらに以下に説明する差分法による情報取得アルゴリズムを用いて値を算出するようにしたが、この情報ドットをそのまま情報ビットとして出力してもよい。また、この情報ビットに対して後述するセキュリティテーブルの値を演算処理して真値を算出するようにしてもよい。
(差分法による情報取得アルゴリズム)
次に、図4を用いて本実施形態のドットパターンに基づいて差分法を適用した情報取得方法を説明する。
【0038】
なお、本実施形態の説明において、()で囲まれた数字は図における円形で囲まれた数字(丸付き数字)、[]で囲まれた数字は図で四角形状で囲まれた数字を意味している。
【0039】
本実施形態において、情報ブロック内の14ビットそれぞれの値は隣接した情報ドットの差分によって表現されている。たとえば、第1ビットは情報ドット(1)に対してx方向に+1格子分の位置にある情報ドット(5)との差分によって求められる。すなわち、[1]=(5)-(1)となる。ここで情報ドット(5)は”1”を、情報ドット(1)は”0”を意味しているので第1ビット[1]は1-0、すなわち”1”を意味している。同様に第2ビット[2]は[2]=(6)-(2)、第3ビット[3]=(7)-(3)で表される。第1ビット?第3ビットは以下のようになる。
【0040】
なお、下記の差分式において、値は絶対値をとることにする。

・・・(中略)・・・

【0059】
このように、本実施形態では、格子線yn上のドットの配置を格子線y(n-1)上のドット配置に基づいて決定し、それを順次繰り返すことにより全体の情報ドットの配置が決定される。」

(2) 段落【0066】-【0069】
「【0066】
また、実施形態において、ベクトルドット(図16参照)は4×4格子ブロック(グリッド)の情報ブロックの方向を示すものであるが、このベクトルドットを用いることによって光学読取装置の読取方向を認識することができるため、同じ情報ブロックのドットパターンであっても、読取方向によって異なった意味を持たせることも可能である。すなわち、同一のドットパターンに対して、読取光軸を中心に光学読取装置を90度、180度または270度回転させて読み取ることにより、ベクトルドットの位置も画像メモリ上で情報ブロックに対して左右、または下方向となるため、情報ブロック内のドットパターンを読み取った後に、ベクトルドットの位置から得られた向き情報に応じて出力(音声等)を変化させてもよい。たとえばクロスワードパズルの各マスに本発明のドットパターンを印刷しておき、光学読取装置の読取面を光学軸を中心に90度回転させることにより縦方向のワードのヒント、横方向のワードのヒントをそれぞれわけて表示出力(音声出力)させるようにしてもよい。さらに、ベクトルドットを用いて光学読取装置の読み取りの際の回転角度を認識する技術について、上記では90度単位で回転させた場合で説明したが、最小回転角度として5度程度でもその角度認識が可能である。
【0067】
また、図16ではベクトルドットを単独で設けているが、情報ドットそのものを一つのベクトルドットとしてもよい。すなわち、差分法によるドットパターンの生成に際しては、初期値を制御することによってドットの位置(たとえば図17の丸付き数字8のドット)の配置位置を制御することができるため、このような特定の位置の情報ドットをベクトルドットとして使うことができる。
【0068】
このようにすれば、ベクトルドットと情報ドットを共用できるため、情報量を増やすことができる。
【0069】
そして、図4や図16では、ベクトルドットが単独で存在しているために、その読み取り順を[4]?[9](図4、図16参照)のように斜め方向でその差分を検出しなければならなかったが、情報ドットとベクトルドットを共有する場合には図17に示すように、略水平方向に差分を読み取っていけばよいため、探索アルゴリズムが簡易となる。」

以上、特に下線部の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「xy方向に所定間隔毎に格子線(y1?y7、x1?x5)を仮定し、この格子線の交点を格子点と呼ぶことにし、4つの格子点で囲まれた最小ブロック(1グリッド)としてxy方向に4ブロック(4グリッド)ずつ、すなわち4×4=16ブロック(16グリッド)を1つの情報ブロックとし、
この情報ブロックの矩形領域を構成する4つの角点をコーナードットとし、この4つのコーナードットは格子点と一致させ、
情報ブロックの矩形領域の内部または隣接した矩形領域内の格子点にベクトルドット(キードット)を配置し、
情報ドットは1つおきに格子点からx方向、y方向にずらした位置に配置され、
格子点に対して-y方向に情報ドットを配置した場合を0、+y方向に情報ドットを配置した場合を1、同じく格子点に対して-x方向に情報ドットを配置した場合を0、+x方向に情報ドットを配置した場合を1とし、
上記情報ドットに対して、さらに、差分法による情報取得アルゴリズムを用いて値を算出し、
情報ブロック内の14ビットそれぞれの値は隣接した情報ドットの差分によって表現され、たとえば、第1ビットは情報ドット(1)に対してx方向に+1格子分の位置にある情報ドット(5)との差分によって求められ、すなわち、[1]=(5)-(1)となり、ここで情報ドット(5)は”1”を、情報ドット(1)は”0”を意味しているので第1ビット[1]は1-0、すなわち”1”を意味し、
格子線yn上のドットの配置を格子線y(n-1)上のドット配置に基づいて決定し、それを順次繰り返すことにより全体の情報ドットの配置が決定され、
情報ドットとベクトルドットを共有する場合には、略水平方向に差分を読み取っていけばよいため、探索アルゴリズムが簡易となる、
ドットパターン。」

2.対比・判断
(1) 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における、「xy方向に4ブロック(4グリッド)ずつ、すなわち4×4=16ブロック(16グリッド)を1つの情報ブロックとし」、「情報ドットは1つおきに格子点からx方向、y方向にずらした位置に配置され」ている「ドットパターン」は、本願発明の「複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備えたドットパターン」に相当する。

イ 引用発明が「情報ブロックの矩形領域を構成する4つの角点」である「コーナードット」、及び、「情報ブロックの矩形領域」の上下左右の各境界線上にある各「情報ドット」を備えることは、本願発明が「前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え」ることに相当する。

ウ 引用発明は、「情報ブロック内の14ビットそれぞれの値は隣接した情報ドットの差分によって表現され、たとえば、第1ビットは情報ドット(1)に対してx方向に+1格子分の位置にある情報ドット(5)との差分によって求められ、すなわち、[1]=(5)-(1)となり、ここで情報ドット(5)は”1”を、情報ドット(1)は”0”を意味しているので第1ビット[1]は1-0、すなわち”1”を意味し、格子線yn上のドットの配置を格子線y(n-1)上のドット配置に基づいて決定し、それを順次繰り返すことにより全体の情報ドットの配置が決定され」るもの、すなわち、各情報ドットの格子点からのずれによって数値を表し、さらに、水平方向に隣接する情報ドットが表す2つの数値の差分によって、情報の値を表すものであって、引用発明は、本願発明1のように、隣接する情報ドット間の距離の値または所定方向間の所定の距離の値によって情報の値を表すように情報ドットを配列したものではない。
しかしながら、引用発明も、結果として得られた情報ドットの配列それ自体は、「前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置され」たものといえる。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点・相違点があるといえる。

[一致点]
複数の行と複数の列とに配置された複数の情報ドットを備えたドットパターンであって、
前記複数の行と複数の列とに、それぞれ1組の始点となる情報ドットである始点情報ドットと終点となる情報ドットである終点情報ドットを備え、
前記複数の情報ドットは、該始点情報ドットから所定の順番で、隣り合う情報ドット間が所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値を有して帯状に配置された、
ドットパターン。

[相違点1]
本願発明の情報ドットの配列は、「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」ものであるのに対して、引用発明の情報ドットの配列は、「略水平方向」である「x方向」(本願発明1の「行」方向に相当する。)のみに対して、各情報ドットの格子点からのずれによって数値を表し、さらに、水平方向に隣接する情報ドットが表す2つの数値の差分によって、情報の値を表すという情報ドットの配列であって、「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」情報ドットの配列ではない点。

3.当審の判断
上記[相違点1]について検討すると、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」情報ドットの配列を決定するという技術事項は、上記引用文献1には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

引用文献1及び引用発明における「差分法による情報取得アルゴリズム」は、あくまで、各「情報ドット」の格子点からのずれによって数値を表してから、その後さらに、水平方向に隣接する情報ドットが表す2つの数値の「差分」によって、情報の値を表すというものであって、本願発明のように情報ドット間の「距離」、すなわち、情報ドット間の「差分」によって直接的に、情報の値を表すことについては開示がなく、また、そのような構成を採用すべき起因や、動機付けも見いだし難い。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 請求項2-8について
本願発明2-8も、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」情報ドットの配列と、同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
上記のとおり、本願発明1-8は、いずれも「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」情報ドットの配列という技術事項を備えている。
原査定における引用文献Aには、各情報ドットの「仮想基準点」からの距離と方向によって情報の値を表すという情報ドットの配置方法が記載されており(特に、段落【0066】の記載を参照。)、引用文献Bには、各情報ドットの「仮想格子点」からのずれによって数値を表し、さらに、所定の方向に隣接する情報ドットが表す2つの数値の差分によって、情報の値を表すという情報ドットの配列方法が記載されている(特に、図20、段落【0113】-【0119】の記載を参照。)。
しかしながら、「前記複数の行と複数の列のそれぞれにおいて、前記所定の距離の値または所定方向間の所定の距離の値に基づいてコードが符号化された」情報ドットの配列という技術事項は、原査定における引用文献A-Bには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-8は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-11 
出願番号 特願2014-131510(P2014-131510)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 ドットパターン  

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