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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04G
審判 一部申し立て 1項2号公然実施  E04G
審判 一部申し立て 1項1号公知  E04G
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857  E04G
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E04G
審判 一部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1343854
異議申立番号 異議2017-701077  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-15 
確定日 2018-07-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6148375号発明「外壁仕上げ材の補修工法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6148375号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、8-11〕について、訂正することを認める。 特許第6148375号の請求項2、7、8に係る特許を維持する。 特許第6148375号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6148375号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年6月21日に出願したものであって、平成29年5月26日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年11月15日に特許異議申立人アサヒボンド工業株式会社(以下「申立人」という。)より、請求項1、2、7、8に対して特許異議の申立てがされ、平成30年2月7日付けで取消理由(発送日同年2月15日)が通知され、その指定期間内である同年4月13日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年6月6日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(8)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、
「建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記孔の開口端に位置する前記目地の部分に座掘りを形成する工程を含む、外壁仕上げ材の補修工法。」
と訂正する。
請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3,4,8も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、
「前記接着材を注入する前に、前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記躯体に達する空気抜き孔を形成する工程を含む、請求項2に記載の外壁仕上げ材の補修工法。」
と訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について、
「前記接着材を注入する前に、
前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から他の所定の深さに達する他の孔を形成する工程と、
タッピングビスを前記他の孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と
を含む、請求項2に記載の外壁仕上げ材の補修工法。」
と訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8について、
「前記孔を形成する工程では、前記所定の深さは20mm以上とされる、請求項2?7のいずれか1項に記載の外壁仕上げ材の補修工法。」
と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項1を引用するものについて、
「建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記接着材を注入する前に、前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記躯体に達する空気抜き孔を形成する工程を含む、外壁仕上げ材の補修工法。」
とし、新たに請求項9とする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4のうち、請求項1を引用するものについて、
「建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記接着材を注入する前に、
前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から他の所定の深さに達する他の孔を形成する工程と、
タッピングビスを前記他の孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と
を含む、外壁仕上げ材の補修工法。」
とし、新たに請求項10とする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものと、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて、
「前記孔を形成する工程では、前記所定の深さは20mm以上とされる、請求項9または請求項10に記載の外壁仕上げ材の補修工法。」
とし、新たに請求項11とする。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、引用関係を解消して、請求項1を引用しないものとするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項3?5について
訂正事項3?5は、上記訂正事項1の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3?5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)訂正事項6、7について
訂正事項6、7は、それぞれ訂正前の請求項3、4が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、引用関係を解消して、新たにそれぞれ請求項9、10として、請求項1を引用しないものとするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項6、7は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(5)訂正事項8について
訂正事項8は、上記訂正事項1、6、7の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1?4、8は、請求項2?4、8が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?4、8は、それぞれ訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
よって、上記訂正請求による訂正事項1?8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4、8-11〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項2、7、8に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項2、7、8に係る発明(以下「本件発明2」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

本件発明2
「【請求項2】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記孔の開口端に位置する前記目地の部分に座掘りを形成する工程を含む、外壁仕上げ材の補修工法。」

本件発明7
「【請求項7】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材と前記建築物の躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としての外壁仕上げモルタルに、前記外壁仕上げモルタルを貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔に座掘りを形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記外壁仕上げモルタルを前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記外壁仕上げモルタルを前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記外壁仕上げモルタルおよび前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記外壁仕上げモルタルのそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記外壁仕上げモルタルがかしめられて、前記外壁仕上げモルタルが前記躯体に固定される、外壁仕上げ材の補修工法。」

本件発明8
「【請求項8】
前記孔を形成する工程では、前記所定の深さは20mm以上とされる、請求項2?7のいずれか1項に記載の外壁仕上げ材の補修工法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、7、8に係る特許に対して平成30年2月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証、又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(4)本件特許の請求項1、2、7、8に係る発明は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然知られた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(5)本件特許の請求項1、2、7、8に係る発明は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(6)本件特許の請求項1、2、7、8に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証-1?甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3 刊行物の記載
甲第1号証-1:竹内桂、証明願、平成29年6月26日
甲第1号証-2:星野良道、証明願、平成29年6月23日
甲第1号証-3:北島晃、証明願、平成29年6月22日
甲第2号証:原田憲明、「直張りタイル仕上げの浮き補修対応工法」、建材フォーラム、株式会社工文社、2015年6月、No.466、表紙、p.16-17、奥付
甲第3号証:「平成27年度プレスダウングラウト工法施工技能士認定講習会開催のご案内」、アサヒボンド工業会、平成27年5月7日
甲第4号証:「プレスダウングラウト工法施工技能士認定講習会テキスト」、アサヒボンド工業会、平成27年6月、表紙、p.1-11
甲第5号証:「新製品情報PDピン」、会報、アサヒボンド工業会、平成28年1月、第28号、表紙、p.14-15、裏表紙
甲第6号証:「ホーム用電動工具カタログ2017-04」、株式会社マキタ、2017年4月、表紙、p.6、11、12、裏表紙
甲第7号証:特許5127945号公報
甲第8号証:特許6092924号公報(本件出願後に公開)

(1)取消理由通知において引用した甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第4号証の「プレスダウングラウト工法施工技能士認定講習会テキスト」(以下「テキスト」という。)には図面とともに次の記載がある。(下線は当決定で付した。以下同じ。)
ア 「補修範囲の確認 - 打診により浮きの状況を確認し、補修範囲を決定する。必要に応じタイルを除去し、内部を確認する。」(テキスト5頁2行?3行)

イ 「注入孔穿孔 - 注入孔の穿孔を行う。PDピンを使用する場合はφ3.6mm、ステンレス製アンカーピン(3mm)の場合はφ4.0mmのコンクリート用ビットを用い、壁面に対し垂直に穿孔する。アンカーピン部分の穿孔深さは35mmとする。その他注入のみの部分は、浮き部に到達する深さまでとする。」(テキスト6頁下から10行?下から3行)

ウ 「注入・ピンニング - アサヒボンド576の主剤・硬化剤を、質量比2:1となるよう計量し、均一になるまで混合する。充填は手動式注入器を用い、打診により適切な拡がりを確認しながら行う。
・内圧による注入材の戻りを防止するため、手動式注入器のノズルを抜いたら即時に釘等で栓をする。暫く放置しておくと、内圧で注入材は更に拡がる。PDフレームの外側まで拡がり、共浮きを生じる場合もある。
・1箇所から大量に注入を行うと、目地破壊や注入材の戻りが長時間止まらない等の弊害が起こるので、充分注意しなければならない。
・僅かな注入で目地破壊を起こす等、適切な注入ができない場合は、当該箇所または近隣に穿孔して新たな注入孔を設け、再注入する。
・PDアンカーの場合は、釘栓を抜き、注入材の戻りが穏やかになったことを確認し、インパクトドライバで挿入する。ステンレス製アンカーピンの場合は、釘栓を抜き、注入材の戻りがないことを確認してからアンカーピンの挿入を行う。」(テキスト7頁2行?末行)

エ 「PDフレームの取外し・仕上げ養生・清掃 - 注入したエポキシ樹脂の戻りが完全に解消した後、フレームを取り外す。PDピンを使用した場合は直後に取り外せる。取外し時は、座付きPレスアンカーを先に5mm程度緩めた後、押え金具の落下に注意しながら取外し、再度緩めて座付Pレスアンカーを外す。必要に応じて落下防止対策をする。取外し後は、タイル用目地材等で仕上げる。適切な養生を取り、注入部以外及びPDフレームに付着した材料を、適切な方法で除去する。」(テキスト8頁1行?末行)

オ テキスト6頁上部左の写真及び上記イの記載から、タイルの目地の位置に目地を貫通するように注入孔の穿孔を行っていると解される。

カ 上記ウの「アサヒボンド576の主剤・硬化剤」は注入材(接着材)であることは明らかである。

キ 上記ウ、エの記載及びテキスト8頁の写真から、「注入材の戻りが穏やかになったことを確認し、インパクトドライバで挿入」されるのはPDピンであると解される。

ク 上記エの「注入したエポキシ樹脂の戻りが完全に解消した後、フレームを取り外す」の記載から、注入した注入材(接着材)を硬化させていることは明らかである。

ケ テキスト8頁のPDピンの写真から、PDピンは、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されていることが看て取れる。

コ テキスト6頁の写真及び上記アの浮きの状況を確認する等の記載から見て、タイルの下には接着層が存在していることは明らかである。そして、上記イの「壁面に対し垂直に穿孔する。アンカーピン部分の穿孔深さは35mmとする。その他注入のみの部分は、浮き部に到達する深さまでとする」、の記載から、アンカーピン部分に穿孔される孔は接着層を貫通して躯体の表面から所定の深さに達する孔と解される。また、上記エの「PDピンを使用した場合は直後に取り外せる」の記載から、PDピンにより接着層が躯体に固定されると共に、注入材(接着材)が注入された孔に、PDピンを差し込み、PDピンのネジ山によって、接着層および躯体を切り込みながらPDピンを締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定されていると解される。

(2)上記(1)を踏まえると、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第4号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。また、甲第2号証においても、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第4号証と概ね同じ記載があるから、実質的に甲1発明と同様の発明が記載されていると認める。

甲1発明
「タイルを補修するタイルの補修工法であって、
浮きの状況を確認し、補修範囲を決定し、
前記補修範囲のタイルの目地の位置に目地を貫通するように壁面に対し垂直に注入孔の穿孔を行い、穿孔される孔は接着層を貫通して躯体の表面から所定の深さに達する孔であり、
注入孔から接着材を充填し、
接着材の充填後、PDピンを、注入材(接着材)の戻りが穏やかになったことを確認し、インパクトドライバで注入孔に挿入し、PDピンにより接着層が躯体に固定され、
注入した注入材(接着材)を硬化させ、
タイル用目地材等で仕上げ、
PDピンは、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されており、
注入材(接着材)が注入された孔に、PDピンを差し込み、PDピンのネジ山によって、接着層および躯体を切り込みながらPDピンを締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定されている、
タイルの補修工法」

4 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第1項第1号?第3号、第29条第2項)について
(1)本件発明2について(第29条第2項)
ア 本件発明2と甲1発明の対比
本件発明2と、甲1発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明2が「孔の開口端に位置する前記目地の部分に座掘りを形成する工程を含む」のに対し、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。

イ 判断
相違点1について検討するに、「孔の開口端に位置する前記目地の部分に座掘りを形成する」ことについて、本件明細書には「【0038】さらに、注入孔13の開口端の目地7の部分に座掘り16(溝)を形成することで、注入孔13にエポキシ樹脂19を注入してタッピングビス17を締め付ける際に、溢れたエポキシ樹脂19が座掘り16に溜めることができる。これにより、タイル5の表面がエポキシ樹脂19によって汚染されるのを防止することができる」との効果が記載されている。
一方、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第2号証、甲第4号証には座堀りを形成することやその効果について何ら記載されておらず、そのような手段を備えることを示唆する記載もない。また、甲第3号証、甲第5号証?甲第7号証にも同様に上記相違点1についての記載はない。
申立人は、平成30年6月6日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において「この点に関し、「接着剤の充填、アンカーピンの埋め込みを行うべく穿設した孔の開口部に座掘りを形成すること」が本件特許の出願当時、この技術分野において周知技術であったことを立証する証拠を提出する。・・・「孔の開口端に位置する部分に座堀りを形成する」ことは、本件特許の出願当時、この技術分野の当業者に周知の技術であった。そこで、「接着剤の充填、アンカーピンの埋め込みを行うべく穿設した孔の開口部に座掘りを形成する」ことは、本件特許の出願当時の当業者にとって設計変更程度の事項に過ぎないと認められる」(申立人意見書1頁下から9行?2頁23行)旨主張するが、申立人意見書に添付された参考資料1、2には座堀りが形成された事例が記載されているものの、タイルに穿設した孔に座堀りが形成されたものであり、目地に穿設した孔に座堀りが形成されたものではないから、上記相違点1に係る構成が周知技術とまでいえるものではない。また、本件発明2おける上記相違点1に係る効果についても、参考資料1、2からは参酌することはできない。
したがって、甲1発明において相違点1に係る本件発明2の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
なお、甲1発明は、甲第1号証-1?甲第5号証の記載から見て、本件特許の出願前に公然知られた発明、公然実施をされた発明及び頒布された刊行物に記載された発明であると認める。

(2)本件発明7について(第29条第2項)
ア 本件発明7と甲1発明の対比
本件発明7と、甲1発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明7が「外壁仕上げ材としての外壁仕上げモルタル」の補修工法であるのに対し、甲1発明では、外壁仕上げ材としてのタイルの補修工法である点。

イ 判断
相違点2について検討するに、外壁仕上げモルタルの補修工法について、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第2号証、甲第4号証、さらには甲第3号証、甲第5号証?甲第7号証にも記載及び示唆はない。
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、「・・・また、甲第2号証には、「アサヒボンド576は、タイル張り仕上げ、モルタル塗り仕上げ等の浮き補修用注入材として開発され、揺変性を付与した注入材のパイオニアとして45年の販売実績がある。」(17頁左欄第23行?右欄6行)という記載が存在している。そこで、甲第1号証-1乃至甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証で公知、公用、刊行物公知になっている発明、甲第2号証、甲第5号証記載の発明を、「外壁仕上げ材としての外壁仕上げモルタル」が躯体から浮いている浮き部の補修に適用することを当業者が発想することに困難はない。」(申立書23頁5行?13行)旨主張するが、甲第2号証の「モルタル塗り仕上げ等の浮き補修用注入材として開発され」等の記載は、アサヒボンド576の用途についての記載までであって、甲1発明の補修工法をそのままモルタル塗り仕上げに適用する動機付けとなるものではない。
したがって、甲1発明の補修工法を外壁仕上げモルタルに適用する動機付けも見受けられないことから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明7の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(3)本件発明8について(第29条第2項)
本件発明8は、本件発明2又は本件発明7に従属し、本件発明2又は本件発明7の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2又は本件発明7と同様の理由(上記(1)、(2)参照)により、甲1発明において、相違点1又は相違点2に係る本件発明8の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(4)まとめ
したがって、本件発明2、7、8は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然知られた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明2、7、8は、甲第1号証-1?甲第1号証-3、甲第3号証、甲第4号証において立証される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
さらに、本件発明2、7、8は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証-1?甲第7号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 請求項1に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項1を削除する本件訂正が認められたので、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成30年2月7日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項2、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2、7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記孔の開口端に位置する前記目地の部分に座掘りを形成する工程を含む、外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項3】
前記接着材を注入する前に、前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記躯体に達する空気抜き孔を形成する工程を含む、請求項2に記載の外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項4】
前記接着材を注入する前に、
前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から他の所定の深さに達する他の孔を形成する工程と、
タッピングビスを前記他の孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と
を含む、請求項2に記載の外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項5】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記外壁仕上げ材との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記接着層から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルに、前記タイルを貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔に座掘りを形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記タイルを前記接着層に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記タイル、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体、前記接着層および前記タイルのそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層と前記タイルとがかしめられて、前記接着層が前記タイルとともに前記躯体に固定される、外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項6】
前記孔を形成する工程では、前記孔は前記タイルの中央に形成される、請求項5記載の外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項7】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材と前記建築物の躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としての外壁仕上げモルタルに、前記外壁仕上げモルタルを貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔に座掘りを形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記外壁仕上げモルタルを前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記外壁仕上げモルタルを前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記外壁仕上げモルタルおよび前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記外壁仕上げモルタルのそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記外壁仕上げモルタルがかしめられて、前記外壁仕上げモルタルが前記躯体に固定される、外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項8】
前記孔を形成する工程では、前記所定の深さは20mm以上とされる、請求項2?7のいずれか1項に記載の外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項9】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記接着材を注入する前に、前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記躯体に達する空気抜き孔を形成する工程を含む、外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項10】
建築物の外壁仕上げ材を補修する外壁仕上げ材の補修工法であって、
前記外壁仕上げ材を前記建築物の躯体に接着する接着層と前記躯体との間に隙間が生じ、前記外壁仕上げ材が前記躯体から浮いている浮き部を特定する工程と、
前記浮き部の領域内に位置する前記外壁仕上げ材としてのタイルの目地における第1の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から所定の深さに達する孔を形成する工程と、
前記孔から接着材を注入することにより、前記隙間に前記接着材を充填する工程と、
前記接着材が充填された後、ビスアンカー部材を前記孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と、
前記ビスアンカー部材を孔埋め材によって覆う工程と、
充填された前記接着材を硬化させる工程と
を備え、
前記接着層を前記躯体に固定する工程では、
前記ビスアンカー部材として、一端側に頭部が形成され、前記頭部から他端側の先端部にわたりネジ山が形成されたビスアンカー部材を用い、
前記接着材が注入された前記孔に、前記ビスアンカー部材を差し込み、前記ネジ山によって、前記接着層および前記躯体を切り込みながら前記ビスアンカー部材を締め付けることにより、前記ネジ山が、前記躯体および前記接着層のそれぞれに食い込む態様で、前記頭部と前記躯体との間に前記接着層がかしめられて、前記接着層が前記躯体に固定され、
前記接着材を注入する前に、
前記浮き部の前記領域内に位置する前記タイルの前記目地における、前記第1の位置から距離を隔てられた第2の位置に、前記目地を貫通するとともに、前記接着層を貫通して、前記躯体の表面から他の所定の深さに達する他の孔を形成する工程と、
タッピングビスを前記他の孔に挿入して締め付けることにより、前記接着層を前記躯体に固定する工程と
を含む、外壁仕上げ材の補修工法。
【請求項11】
前記孔を形成する工程では、前記所定の深さは20mm以上とされる、請求項9または請求項10に記載の外壁仕上げ材の補修工法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-10 
出願番号 特願2016-122529(P2016-122529)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (E04G)
P 1 652・ 851- YAA (E04G)
P 1 652・ 857- YAA (E04G)
P 1 652・ 113- YAA (E04G)
P 1 652・ 112- YAA (E04G)
P 1 652・ 111- YAA (E04G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 敏行油原 博  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
井上 博之
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6148375号(P6148375)
権利者 株式会社ダイニチ
発明の名称 外壁仕上げ材の補修工法  
代理人 工藤 貴宏  
代理人 三井 直人  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 涌井 謙一  
代理人 山本 典弘  
代理人 鈴木 一永  

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