ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L |
---|---|
管理番号 | 1343874 |
異議申立番号 | 異議2017-700768 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-07 |
確定日 | 2018-08-02 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6076531号発明「飲料またはアルコール飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6076531号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第6076531号の請求項1、3、5ないし8、10ないし13に係る特許を維持する。 特許第6076531号の請求項2、4、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6076531号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成28年4月25日の特許出願であって、平成29年1月20日に特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月7日に特許異議申立人森收平及び豊田英徳よりそれぞれ特許異議の申立てがされ、平成29年10月18日付けで取消理由が通知され、平成29年12月14日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その後、特許異議申立人両名に、特許法第120条の5第5項の規定により期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、何ら応答のなかったところ、その後、平成30年3月12日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年5月9日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その後、特許異議申立人両名に、特許法第120条の5第5項の規定により期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、何ら応答のなかったものである。 第2 訂正の請求についての判断 1 訂正の内容 平成30年5月9日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6076531号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?13について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 なお、平成29年12月14日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「酸度が0より大きく、1.0以下であり、」とあるのを、「酸度が0.3以上0.8以下であり、」に訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項1に「糖質が0.1(w/v)%以上3.0(w/v)%以下であり、」とあるのを、「糖質が0.3(w/v)%以上2.0(w/v)%以下であり、」に訂正する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項1の「アントシアニンを含有することを特徴とする」とあるのを、「510nmにおける吸光度が0.1以上であり、フィチン酸、アントシアニン及びアルコールを含有することを特徴とする」に訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項1の「飲料。」とあるのを、「アルコール度数15%?30%の飲料。」に訂正する。 (訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項3に「糖質が0.1(w/v)%以上1.5(w/v)%以下であることを特徴とする請求項1または2」とあるのを、「糖質が0.5(w/v)%以上1.5(w/v)%以下であることを特徴とする請求項1」に訂正する。 (訂正事項7) 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (訂正事項8) 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項」とあるのを、「請求項1又は3」に訂正する。 (訂正事項9) 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5」とあるのを、「請求項1、3及び5」に訂正する。 (訂正事項10) 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (訂正事項11) 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれか一項に記載の飲料が、さらにアルコールを含有することを特徴とするアルコール飲料。」とあるのを、「アルコール度数が15%?25%である請求項1、3、5?8、10及び11のいずれか一項に記載の飲料。」に訂正する。 (訂正事項12) 特許請求の範囲の請求項13に「請求項1?11のいずれか一項に記載の飲料または請求項12に記載のアルコール飲料が、さらに炭酸を含有することを特徴とする炭酸飲料または炭酸アルコール飲料。」とあるのを、「さらに炭酸を含有することを特徴とする請求項1、3、5?8、10、11及び12のいずれか一項に記載の飲料。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、酸度について、訂正前の「0より大きく、1.0以下」から、訂正後の「0.3以上0.8以下」へと、その範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0014】に「飲料中の酸度の上限値は0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。酸度の下限値は0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、糖質の含有量について、訂正前の「0.1(w/v)%以上3.0(w/v)%以下」から、訂正後の「0.3(w/v)%以上2.0(w/v)%以下」へと、その範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0017】に「飲料中の糖質の上限値は2.0(w/v)%以下であることが好ましく、1.5(w/v)%以下であることがより好ましく、1.0(w/v)%以下であることがさらに好ましい。・・・。具体的には、飲料中に天然物等由来の糖質を0.1(w/v)%以上含むことが好ましく、0.3(w/v)%以上含むことがより好ましく、0.5(w/v)%以上含むことがさらに好ましい。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 上記訂正事項3は、アントシアニンを含有する飲料について、「510nmにおける吸光度が0.1以上」であり、「フィチン酸」と「アルコール」を含有することを限定するものであるから、 特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3は、訂正前の請求項4に「フィチン酸を含有する」、訂正前の請求項9に「510nmにおける吸光度が0.1以上である」、訂正前の請求項12に「さらにアルコールを含有する」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 上記訂正事項4は、飲料について、「アルコール度数15%?30%」であることを限定するものであるから、 特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0022】に「アルコール濃度は1.0%?30%であることが好ましく」、段落【0023】に「本発明は主にアルコール度数が3%以上の飲料に好ましく使用することができ、15%以上の飲料により好ましく使用することができる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 上記訂正事項5は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 上記訂正事項6は、糖質の含有量について、訂正前の「0.1(w/v)%以上1.5(w/v)%以下」から、訂正後の「0.5(w/v)%以上1.5(w/v)%以下」へと、その範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0017】に「飲料中の糖質の上限値は2.0(w/v)%以下であることが好ましく、1.5(w/v)%以下であることがより好ましく、1.0(w/v)%以下であることがさらに好ましい。・・・。具体的には、飲料中に天然物等由来の糖質を0.1(w/v)%以上含むことが好ましく、0.3(w/v)%以上含むことがより好ましく、0.5(w/v)%以上含むことがさらに好ましい。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 上記訂正事項7は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項7は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項7は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (8)訂正事項8及び9について ア 訂正の目的 上記訂正事項8及び9は、上記訂正事項5及び7に伴い、訂正前の請求項5及び6から請求項2及び4を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項8及び9は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項8及び9は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (9)訂正事項10について ア 訂正の目的 上記訂正事項10は、請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項10は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項10は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (10)訂正事項11について ア 訂正の目的 上記訂正事項11は、上記訂正事項5、7及び10に伴い、訂正前の請求項12から請求項2、4及び9を引用するものを削除し、飲料について、「アルコール度数15%?25%」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項11は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項11は、本件特許明細書の段落【0022】に「アルコール濃度は1.0%?30%であることが好ましく、3.0?25%であることがより好ましい。」、段落【0023】に「本発明は主にアルコール度数が3%以上の飲料に好ましく使用することができ、15%以上の飲料により好ましく使用することができる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (11)訂正事項12について ア 訂正の目的 上記訂正事項12は、上記訂正事項5、7及び10に伴い、訂正前の請求項13から請求項2、4及び9を引用するものを削除するとともに、上記訂正事項3、4及び11に伴い、記載の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項12は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項12は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (12)一群の請求項について 訂正前の請求項1?13は、請求項2?13が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?13〕についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1、3、5?8、10?13に係る発明(以下「本件発明1、3、5?8、10?13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3、5?8、10?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 酸度が0.3以上0.8以下であり、 糖質が0.3(w/v)%以上2.0(w/v)%以下であり、 510nmにおける吸光度が0.1以上であり、 フィチン酸、アントシアニン及びアルコールを含有することを特徴とするアルコール度数15%?30%の飲料。 【請求項3】 酸度が0.3以上0.7以下であり、 糖質が0.5(w/v)%以上1.5(w/v)%以下であることを特徴とする請求項1に記載の飲料。 【請求項5】 前記糖質を前記酸度で除した値が、0.2以上4.0以下であることを特徴とする請求項1又は3に記載の飲料。 【請求項6】 食物繊維を含むことを特徴とする請求項1、3及び5のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項7】 前記食物繊維を0.1?10.0(w/v)%含むことを特徴とする請求項6に記載の飲料。 【請求項8】 前記アントシアニンが、520nm?530nmにおいて極大吸収波長を有することを特徴とする請求項1に記載の飲料。 【請求項10】 前記アントシアニンが天然物由来であることを特徴とする請求項1または8に記載の飲料。 【請求項11】 前記アントシアニンが、ブドウ、紫トウモロコシ、ベリー、ハイビスカス、紫サボテン、赤キャベツ、ムラサキイモ、紫蘇から選択される少なくとも一種の天然物に由来することを特徴とする請求項1、8または10に記載の飲料。 【請求項12】 アルコール度数が15%?25%である請求項1、3、5?8、10及び11のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項13】 さらに炭酸を含有することを特徴とする請求項1、3、5?8,10、11及び12のいずれか一項に記載の飲料。」 第4 当審の判断 1 取消理由の概要 取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 (1)特許法第36条第6項第2号について 請求項1、3、5?8、10?13に係る発明は、不明確であるから、その特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第36条第4項第1号について 本件特許明細書は、当業者が、請求項1、3、5?8、10?13に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。 (3)特許法第36条第6項第1号について 請求項1、3、5?8、10?13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。 (4)特許法第29条第1項第3号、第2項について (4-1)本件発明1、3、5に係る発明は、下記の引用例1に記載された発明であるか、又は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するか、又は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4-2)本件発明4、6?8、10?13に係る発明は、下記の引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用例1:特開2015-8711号公報(特許異議申立人 森收平による特許異議申立(以下「異議申立A]という。)の甲第1号証) 引用例2:国際公開01/48091号(異議申立Aの甲第2号証) 引用例3:香川芳子監修、「七訂 食品成分表 2016 本表編」、女子栄養大学出版部、2016年4月1日発行、p.82、83(異議申立Aの甲第3号証) 引用例4:中川祐子 他3名、「生理活性植物因子アントシアニンの色と構造」、色材協会誌、2006年、No.3、Vol.79、p.113?119(異議申立Aの甲第4号証) 引用例5:最新・ソフトドリンクス編集委員会編纂、「最新・ソフトドリンクス」、株式会社 光琳、平成15年9月30日発行、p.112?116(特許異議申立人 豊田英徳による特許異議申立(以下「異議申立B]という。)の甲第1号証) 引用例6:成瀬 治己、「アジピン酸の利用方法」、月刊フードケミカル、株式会社 食品化学新聞社、平成9年2月1日発行、No.2、Vol.13、p.84-89(異議申立Bの甲第2号証) 引用例7:三浦 隆志、「お米由来の有機酸“フィチン酸”による酸味を付与しないpH調整」、月刊フードケミカル、株式会社 食品化学新聞社、平成24年9月1日発行、No.9、Vol.28、p.39-41(異議申立Bの甲第3号証) 引用例8:特開平5-317013号公報(異議申立Bの甲第4号証) 引用例9:FFI Reports 「低アルコール飲料における着色料について」、FFIジャーナル編集委員会、2008年11月1日発行、No.11、Vol.213、p.1057-1060(異議申立Bの甲第5号証) 2 取消理由についての判断 (1)特許法第36条第6項1号について ア 発明の課題 本件発明の課題は、「アントシアニンの赤色を保持しつつ、甘味を抑えながらも酸味をほとんど感じない、食用として好ましい飲料を提供すること」(【0009】)である。 イ 発明の詳細な説明に記載された範囲 発明の詳細な説明には、本件発明に関し、具体的に「赤色発色」、「酸味」及び「甘味」を確認した飲料として試験区1?10が記載されており、その中で本件発明の課題を解決できたものといえるのは、各項目の評価が許容範囲であったものを意味する「○」以上の評価である試験区2、3、7及び8のみ(【0051】の【表2】)である。 そして、「飲料に含まれるアルコールが増えることにより、アルコール自体の刺激が強くなり、酸味、甘味、エグ味、香りが相対的に感じにくくなる。アルコール度数が15%以上になると、このような傾向を感じやすくなる。他方、アルコール度数が3%未満であれば、アルコール自体の刺激が少ないため、清涼飲料と実質的な差は少ない。アルコール度数が3%以上15%未満である場合、個人差が大きく一概にはいえないが、アルコール度数が増えるにつれ、酸味等を相対的に感じにくくなる傾向にある。」(【0023】)と記載されており、アルコール度数が15%以上になると、アルコール自体の刺激が強くなり、酸味、甘味、エグ味、香りが相対的に感じにくくなることが記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明には、本件発明1のアルコール度数が20%である試験区2、3、7及び8の飲料が本件発明の課題を解決し得ること(【0044】?【0052】)が示されており、アルコール度数が15%以上になると、酸味、甘味が相対的に感じにくくなるのであるから、アルコール度数が20%である試験区2、3、7及び8の飲料とアルコール度数を20%以外の15%?30%の範囲とした試験区2、3、7及び8の飲料とは、同程度の酸味及び甘味を有するといえるから、本件発明1の範囲内にあるアルコール度数が15%?30%の範囲の飲料は、「甘味を抑えながらも酸味をほとんど感じない」という課題を解決できると理解できる。 したがって、本件発明1の飲料が、その特定する数値の全ての範囲で、上記課題を解決できると理解できるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものである。 また、本件発明1を引用する本件発明3、5?8、10?13も、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものである。 ウ 小括 したがって、本件発明1、3、5?8、10?13は、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえないから、その特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 (2)特許法第36条第4項1号について 上記(1)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、本件発明1の飲料が、その特定する数値の全ての範囲で、本件発明の課題を解決できることが記載されている。 したがって、本件特許明細書には、本件発明1を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件発明1を引用する本件発明3、5?8、10?13についても、同様の理由により、本件特許明細書は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものとはいえない。 (3)特許法第36条第6項2号について 本件発明1、3、5?8、10?13は、本件訂正によりそれぞれ訂正されたので、不明確であるとする理由はない。 (4)特許法第29条第1項第3号及び第2項について ア 引用発明 引用例1の「比較例1」(【0017】?【0022】)には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「5倍濃縮梅果汁 0.007質量%、濃縮梅酢A 0.033質量%、梅塩B 0.213質量%とその他イオン交換水とからなる糖度0.23、酸度0.02である容器詰果汁飲料。」 イ 対比 本件発明1と引用発明とを比較すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「510nmにおける吸光度が0.1以上」であるのに対して、引用発明は、510nmにおける吸光度が不明である点。 <相違点2> 本件発明1は、「フィチン酸」を含有するのに対して、引用発明は、フィチン酸について特定していない点。 <相違点3> 本件発明1は、「アルコール度数15%?30%」であるのに対して、引用発明は、アルコールを含有しない点。 ウ 判断 <相違点1について> 引用発明は、「ウメが本来有する爽やかな酸味とほのかな甘味の絶妙な呈味バランスを楽しむことができる容器詰果汁含有飲料を提供すること」(【0004】)を課題とするものであって、容器詰果汁飲料のアントシアニンの赤色、すなわち510nmにおける吸光度が0.1以上とすることに着目するものでない。 そうすると、引用発明において色を調整する動機付けはないのであるから、引用発明において、「510nmにおける吸光度が0.1以上」とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。 <相違点2について> 引用発明は、5倍濃縮梅果汁、濃縮梅酢、梅塩を原料としていることから、アントシアニンを含む蓋然性が高く、引用例2にアントシアニン含有組成物の安定化させるためにフィチン酸を用いることが記載されているとしても、上記<相違点1について>に示したように、そもそも引用発明において色を調整する動機付けはないのだから、アントシアニンを安定化させるという動機もまた認められない。 <相違点3について> 引用発明は、アルコールを含有しない飲料であるところ、本願明細書の「飲料に含まれるアルコールが増えることにより、アルコール自体の刺激が強くなり、酸味、甘味、エグ味、香りが相対的に感じにくくなる。アルコール度数が15%以上になると、このような傾向を感じやすくなる。他方、アルコール度数が3%未満であれば、アルコール自体の刺激が少ないため、清涼飲料と実質的な差は少ない。アルコール度数が3%以上15%未満である場合、個人差が大きく一概にはいえないが、アルコール度数が増えるにつれ、酸味等を相対的に感じにくくなる傾向にある。」(【0023】)との記載を参酌すると、引用発明の当該飲料をアルコール度数15%?30%とすることは、アルコール自体の刺激により、当該飲料の味及び香りが大きく変わることとなるから、引用発明において、アルコール度数15%?30%とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、また、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、その特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。 エ 本件発明3、5?8、10?13について 本件発明3、5?8、10?13は、本件発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定を付加したものであるから、上記ア?ウと同様の理由で、引用例1に記載された発明であるとはいえず、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、その特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1、3、5?8、10?13は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1、3、5?8、10?13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3、5?8、10?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2、4、9に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、4、9に対して特許異議申立人両名がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸度が0.3以上0.8以下であり、 糖質が0.3(w/v)%以上2.0(w/v)%以下であり、 510nmにおける吸光度が0.1以上であり、 フィチン酸、アントシアニン及びアルコールを含有することを特徴とするアルコール度数15%?30%の飲料。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 酸度が0.3以上0.7以下であり、 糖質が0.5(w/v)%以上1.5(w/v)%以下であることを特徴とする請求項1に記載の飲料。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記糖質を前記酸度で除した値が、0.2以上4.0以下であることを特徴とする請求項1又は3に記載の飲料。 【請求項6】 食物繊維を含むことを特徴とする請求項1、3及び5のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項7】 前記食物繊維を0.1?10.0(w/v)%含むことを特徴とする請求項6に記載の飲料。 【請求項8】 前記アントシアニンが、520nm?530nmにおいて極大吸収波長を有することを特徴とする請求項1に記載の飲料。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 前記アントシアニンが天然物由来であることを特徴とする請求項1または8に記載の飲料。 【請求項11】 前記アントシアニンが、ブドウ、紫トウモロコシ、ベリー、ハイビスカス、紫サボテン、赤キャベツ、ムラサキイモ、紫蘇から選択される少なくとも一種の天然物に由来することを特徴とする請求項1、8または10に記載の飲料。 【請求項12】 アルコール度数が15%?25%である請求項1、3、5?8、10及び11のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項13】 さらに炭酸を含有することを特徴とする請求項1、3、5?8、10、11及び12のいずれか一項に記載の飲料。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-07-23 |
出願番号 | 特願2016-87107(P2016-87107) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L) P 1 651・ 121- YAA (A23L) P 1 651・ 113- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 伊達 利奈 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 藤原 直欣 |
登録日 | 2017-01-20 |
登録番号 | 特許第6076531号(P6076531) |
権利者 | 合同酒精株式会社 |
発明の名称 | 飲料またはアルコール飲料 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |