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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1343903
異議申立番号 異議2017-701186  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-14 
確定日 2018-08-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6148014号発明「ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6148014号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-12〕について訂正することを認める。 特許第6148014号の請求項2ないし5、7ないし10及び12に係る特許を維持する。 特許第6148014号の請求項1、6及び11に係る特許に対する本件異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6148014号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2012-557988号、以下「本願」という。)は、平成24年2月15日(優先権主張:平成23年2月17日、特願2011-32112号)に出願人JSR株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年5月26日に特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、平成29年6月14日に特許公報の発行がされたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成29年12月14日付けで特許異議申立人河原田 隆(以下「申立人」という。)により「特許第6148014号の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。

3.以降の手続の経緯
平成30年 3月16日付け 取消理由通知
平成30年 5月18日 訂正請求書・意見書(特許権者)
平成30年 5月23日付け 通知書(申立人あて)
平成30年 6月25日 意見書(申立人)
平成30年 7月 5日付け 手続補正指令(方式)(特許権者あて)
平成30年 7月17日 手続補正書(方式)
平成30年 7月19日付け 手続補正書副本送付(申立人あて)
同日付け 意見書(申立人)副本送付(特許権者あて)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第7号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし6が存するとしているものと認められる。

取消理由1:本件特許の請求項6の記載では、物に係る発明につき、いわゆる「プロダクトバイプロセスクレーム」で記載され、請求項7ないし12についても同様であるから、本件特許に係る請求項6及び同項を引用する請求項7ないし12の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、その解決課題を解決できない実施態様を含むものであり、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし12の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由3:本件発明1及び3ないし12は、いずれも、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由4:本件発明1、4ないし7及び9ないし12は、いずれも、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由5:本件発明1、4ないし7及び9ないし12は、いずれも、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由6:本件発明2及び7は、いずれも、甲第2号証及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:JSR TECHNICAL REVIEW、No.117、2010年JSR株式会社発行、p.16-21
甲第2号証:国際公開第2007/032209号
甲第3号証:日本ゴム協会誌、第78巻、第2号、2005年、第46?50頁
甲第4号証:国際公開第2010/104149号
甲第5号証:特開2003-171418号公報
甲第6号証:JSR TECHNICAL REVIEW、No.114、2007年JSR株式会社発行、p.1-8
甲第7号証:特開2011-38011号公報
(以下、上記甲第1号証ないし甲第7号証につき「甲1」ないし「甲7」と略していう。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が平成30年3月16日に通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。

「当審は、
申立人が主張する上記取消理由2ないし5により、本件発明1ないし12についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。・・(中略)・・

I.取消理由2について
・・(中略)・・
したがって、本件特許の請求項1、6又は12並びに同項を引用する請求項2ないし5及び7ないし11に記載された事項を具備する発明が、上記解決課題を解決できるであろうと当業者が認識できるものとはいえないから、本件発明1ないし12が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできない。
したがって、本件の請求項1ないし12の記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

II.取消理由3ないし5について
・・(中略)・・
(4)取消理由3ないし5に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1、3ないし12に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。」

第4 平成30年5月18日付け訂正請求の適否

1.訂正請求の内容
平成30年7月17日の手続補正書により補正された上記平成30年5月18日付け訂正請求では、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1ないし12について訂正することを求めるものであり、以下の(1)ないし(20)の訂正事項を含むものである。(なお、下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。」と記載されているのを、「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3乃至請求項5も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2」と記載されているのを、「請求項2」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?請求項3のいずれか」と記載されているのを、「請求項2または請求項3」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?請求項4」と記載されているのを、「請求項2?請求項4」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物。」と記載されているのを、「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることを特徴とするゴム組成物。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8乃至請求項10および請求項12も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項6または請求項7」と記載されているのを、「請求項7」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項6?請求項8のいずれか」と記載されているのを、「請求項7または請求項8」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「請求項6?請求項9」と記載されているのを、「請求項7?請求項9」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12に「請求項6?請求項11」と記載されているのを、「請求項7?請求項10」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0006】を削除する。

(14)訂正事項14
明細書の段落【0007】に「本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することが好ましい。」と記載されているのを、「本発明のゴム組成物の製造方法においては、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することが好ましい。」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の段落【0012】を削除する。

(16)訂正事項16
明細書の段落【0013】に「本発明のゴム組成物は、前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることが好ましい。」と記載されているのを、「本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることが好ましい。」に訂正する。

(17)訂正事項17
明細書の段落【0018】を削除する。

(18)訂正事項18
明細書の段落【0119】および段落【0123】の【表5】に「実施例10」と記載されているのを、「参考例1」に訂正する。

(19)訂正事項19
明細書の段落【0120】および段落【0123】の【表5】に「実施例11」と記載されているのを、「実施例10」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の段落【0121】および段落【0123】の【表5】に「実施例12」と記載されているのを、「実施例11」に訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし12を「旧請求項1」ないし「旧請求項12」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし12を「新請求項1」ないし「新請求項12」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1、訂正事項6及び訂正事項11に係る各訂正は、いずれも旧請求項1、旧請求項6及び旧請求項11の各項に記載された事項をそれぞれ全て削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記訂正事項2及び訂正事項7に係る各訂正は、いずれも、旧請求項2又は旧請求項7につき、各項で引用していた旧請求項1又は旧請求項6に記載された事項をそれぞれ単に書き下し、新請求項2又は新請求項7の独立項形式に改めたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
上記訂正事項3ないし5、訂正事項8ないし10及び訂正事項12に係る各訂正は、上記訂正事項1、訂正事項6及び訂正事項11に係る各訂正に伴い、引用関係が不明瞭となった旧請求項3ないし5、旧請求項8ないし10及び旧請求項12につき単に引用関係を正すものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項13ないし20に係る各訂正は、上記訂正事項1ないし12に係る各訂正により特許請求の範囲が訂正されたことに伴い、当該特許請求の範囲に記載された事項と対応関係が不明瞭となる明細書の記載を単に正すか(訂正事項13ないし17)、特許請求の範囲に記載された事項を具備しないものとなった「実施例」につき「参考例」とし、残る実施例につき番号を繰り上げたものである(訂正事項18ないし20)から、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項1ないし20による各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、上記訂正事項1、訂正事項6及び訂正事項11に係る各訂正により、旧請求項1、旧請求項6及び旧請求項11の各項に記載された事項がそれぞれ全て削除されており、訂正事項2及び訂正事項7に係る各訂正は、いずれも、旧請求項2又は旧請求項7につき、各項で引用していた旧請求項1又は旧請求項6に記載された事項をそれぞれ単に書き下したものであることが明らかである。
また、その余の各訂正事項に係る訂正は、引用関係が不明瞭となった請求項の記載を単に正すか、訂正された特許請求の範囲の記載との対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものである。
してみると、上記訂正事項1ないし20に係る各訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし20に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)一群の請求項等について
本件訂正前の旧請求項2ないし5は、いずれも旧請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、また、本件訂正前の旧請求項7ないし12は、いずれも旧請求項6を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし5及び請求項6ないし12は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、上記訂正事項13ないし20に係る明細書についての各訂正は、上記訂正事項1ないし12に係る各訂正により特許請求の範囲が上記2つの一群の請求項ごとに訂正されたことに伴い、不整合となった明細書の記載を上記2つの一群の請求項の全てについて訂正したものであるから、上記明細書についての各訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。

(4)独立特許要件
なお、本件異議の申立ては、旧請求項1ないし12、すなわち全ての請求項に係る特許に対するものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定の独立特許要件につき検討すべき請求項は存しない。

(5)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-12〕について訂正を認める。

第5 本件特許に係る請求項に記載された事項
本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし12には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることを特徴とする請求項2?請求項4のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることを特徴とするゴム組成物。
【請求項8】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることを特徴とする請求項7?請求項9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有することを特徴とするタイヤ。」
(以下、上記請求項1ないし12に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明12」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した取消理由及び申立人が主張する上記取消理由につきいずれも理由がなく、ほかに本件発明2ないし5、7ないし10及び12についての特許を取り消すべき理由を発見しないから、本件発明2ないし5、7ないし10及び12についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、
本件の請求項1、6及び11に係る特許に対する本件異議申立は、訂正により各項の記載事項が全て削除されたことによって、申立ての対象を欠く不適法なものとなり、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである、
と判断する。以下、詳述する。

I.当審が通知した取消理由について

I-1.取消理由2について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(【0005】等)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることのできるゴム組成物」、「その組成物の製造方法」及び「その組成物から得られるタイヤ」の提供にあるものといえる。
しかるに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載のうち実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】ないし【0082】)の記載を検討すると、「本発明のゴム組成物においては、フィラー(C)を構成するシリカと共に、・・共役ジエン系重合体(A)と、・・重合体(B)とが含有されており、これらの共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができ」、「ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点から、シリカの分散性を良好なものとすることができ」るとの作用機序をもって、「転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることができる」(【0020】)ものと理解され、「共役ジエン系重合体(A)」はシリカの分散性を大きくするよう作用する成分であり、「重合体(B)」はシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用する成分であるものとそれぞれ理解される。
それに対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載のうち実施例(比較例)に係る部分(【0083】ないし【0124】)の記載を検討すると、申立人が申立書第28頁ないし第29頁において主張するとおり、上記作用機序が正しいのであれば、「共役ジエン系重合体(A)」のみを使用し「重合体(B)」を使用しない比較例1の場合に、シリカの分散性が過度に大きくなり、もって、反発弾性は低下するであろうが、低ヒステリシスロス特性を表すtanδ(70℃)が最も良好である(低減化される)ものと解されるところ、当該実施例(比較例)に係る記載(特に【0110】及び【表5】)では、上記請求項2、7又は12に記載された事項を具備するものと認められる実施例1ないし11の場合に、比較例1の場合に比して、反発弾性とともに、低ヒステリシスロス特性についても良好であることが記載されている。
してみると、上記作用機序に係る事項と上記実施例(比較例)に係る記載との技術的対応関係は、当業者がたとえ技術常識に照らしても理解するのが困難であり、上記作用機序に係る事項は、上記請求項2、7又は12に記載された事項を具備する発明が、本件発明に係る上記課題を解決できると当業者が認識すべき根拠となる事項であるとはいえない。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載のうち実施例(比較例)に係る部分(【0083】ないし【0124】、特に【0110】及び【表5】)の記載を更に検討すると、訂正前の旧請求項1に記載された事項を具備し、訂正後の新請求項2に記載された事項を具備しない「参考例1(旧実施例10)」の場合に比して、実施例1ないし11の場合に、反発弾性、ウェットスキッド抵抗性及び低ヒステリシスロス特性のいずれもが更に改善されていることが看取できるから、その発現の作用機序は不明であるものの、上記請求項2、7又は12に記載された事項を具備する発明が、本件発明に係る上記課題を解決できると当業者が認識することができるものと解するのが自然である。
また、上記請求項2、7又は12に記載された事項を具備する発明が、本件発明に係る上記課題を解決できるものではないとすべき技術常識等が存するものでもない。
したがって、上記を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に基づいて、本件特許の請求項2、7又は12並びに同各項を引用する請求項3ないし5及び8ないし10に記載された事項を具備する発明が、上記解決課題を解決できるであろうと当業者が認識できるものということができるから、本件発明2ないし5、7ないし10及び12が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものと認められる。
したがって、本件の請求項2ないし5、7ないし10及び12の記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものである。

I-2.取消理由3ないし5について

1.甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明
以下、上記取消理由3ないし5につき検討するにあたり、当該各理由はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲2、甲4及び甲5に記載された事項を確認・摘示するとともに、各甲号証に記載された発明の認定を行う。

(1)甲2

ア.甲2に記載された事項
甲2には、申立人が申立書第34頁末?第38頁上段(「表2」)で主張するとおりの事項が記載され、特に以下の事項が記載されている。

(a-1)
「[0087]
(重合体C、E?Iの製造法)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3-ブタジエン40g、スチレン10g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.24mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.48mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に、変性剤として表1に示す変性剤を表1に示す量速やかに加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体C、E?Iを得た。
[0088]
(重合体Dの製造法)
重合開始剤として、インサイチューで調製したリチウムヘキサメチレンイミド[HMI-Li;ヘキサメチレンイミン(HMI)/リチウム(Li)モル比=0.9]をリチウム当量で0.48mmol用いる以外は、上記重合体Cと同様にして、重合体Dを得た。
・・(中略)・・
[0091]
(液状SBR C’、E’?I’の製造法)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロへキサン300g、1,3-ブタジエン40g、スチレン13g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.90mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.90mmolを加えた後、50℃で2時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に変性剤として表1に示す変性剤を表2に示す量速ややかに加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して液状SBR C’、E’?I’を得た。
[0092]
(液状SBR D’の製造法)
重合開始剤として、インサイチューで調製したリチウムヘキサメチレンイミド[HMI-Li;ヘキサメチレンイミン(HMI)/リチウム(Li)モル比=0.9]をリチウム当量で0.90mmol用いる以外は、上記液状SBR C’と同様にして、液状SBR D’を得た。
[0093]
上記のようにして製造した重合体A?Iの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ミクロ構造、結合スチレン量、ガラス転移点、及び液状SBR A’?I’の重量平均分子量(Mw)、ミクロ構造、結合スチレン量を下記の方法で測定した。重合体A?Iについての結果を表1に、液状SBR A’?I’についての結果を表2に示す。
・・(中略)・・
[0097]


[0098]


[0099]
*1 四塩化スズ.
*2 N,N’-ジエチルアミノベンゾフェノン.
*3 ジメチルイミダゾリジノン.
*4 N-メチルピロリドン.
*5 N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン.
*6 N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール.
[0100]
次に、上記重合体A?I、並びに液状SBR A’?I’又はアロマオイルを用いて、表3に示す配合処方のゴム組成物を調製し、更に、該ゴム組成物を160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得、該加硫ゴムの耐摩耗性及び損失正接(tanδ)を下記の方法で測定した。結果を表4?7に示す。
・・(中略)・・
[0102]
(5)損失正接(tanδ)
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度50℃、周波数15Hz、歪5%でtanδを測定し、未変性の重合体Aとアロマオイルを用いたゴム組成物の損失正接(tanδ)を100として指数表示した。指数値が小さい程、低発熱性に優れていることを示す。
[0103]


[0104]
*7 上記で製造した重合体A?I, 使用した重合体の種類を表4?表7に示す.
*8 ISAF,窒素吸着比表面積(N_(2)SA)=111m^(2)/g.
*9 日本シリカ工業(株)製,商標:ニプシルAQ.
*10 アロマオイル又は使用した液状SBR A’?I’の種類を表4?表7に示す.
*11 N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*12 デグサ社製,商標Si69,ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド.
*13 メルカプトベンゾチアジルジスルフィド.
*14 ジフェニルグアニジン.
*15 N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
・・(中略)・・
[0108]】


[0109]
表4?表7から、ゴム成分(A)として重合体B?I(変性共役ジエン系重合体)を用い、アロマオイルに代えて液状SBR B’?I’(低分子量変性芳香族共重合体(C))を用いたゴム組成物では、ゴム成分(A)として重合体B?Iを用い、アロマオイルを用いたゴム組成物よりも、低発熱性及び耐摩耗性が大幅に向上していることが分かる。
[0110]
一方、アロマオイルに代えて液状SBR A’(低分子量未変性芳香族共重合体(C))を用いたゴム組成物では、アロマオイルを用いたゴム組成物よりも低発熱性及び耐摩耗性が向上していたが、液状SBR B’?I’を用いたゴム組成物ほどは向上していなかった。」

イ.甲2に記載された発明
上記ア.の記載事項(特に上記「表1」、「表2」及び「表7」に係る記載)からみて、甲2には、
「ゴム成分としての変性共役ジエン系重合体H又はIの80質量部、低分子量変性芳香族共重合体としての液状SBR D’の30質量部及びシリカの70質量部を混練してなるゴム組成物の製造方法。」
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)、
「甲2発明1の製造方法により製造されたゴム組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明2」という。)及び
「甲2発明2のゴム組成物により接地面が構成されるタイヤ。」
に係る発明(以下「甲2発明3」という。)がぞれぞれ記載されているものといえる。

(2)甲4

ア.甲4に記載された事項
甲4には、申立人が申立書第41頁第8行?第44頁中段([表5])で主張するとおりの事項が記載され、特に以下の事項が記載されている。

(b-1)
「[0167]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
・・(中略)・・
[0180]
(合成例6)
窒素置換された内容積5Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン25g、スチレン100g、及び1,3-ブタジエン390gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウム375mg及びピペリジン473mgをシクロヘキサン溶剤中で予め反応させて調製した開始剤を添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた後、N-メチルピロリドン579mgを変性剤として加えて10分間反応を行った。その後、四塩化スズ85mgを更に加えて10分間反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレン-ブタジエン共重合体(SBR-F)を得た。得られたSBR-Fのビニル結合含有量、結合スチレン含有量、ガラス転移温度、ムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)、及び重量平均分子量(Mw)を表1及び表2に示す。
[0181]
(合成例11)
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2400g、及び1,3-ブタジエン300gを仕込んだ。バーサチック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(1.8mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(5.0mmol)、四塩化ケイ素(0.045mmol)のトルエン溶液、及び1,3-ブタジエン(4.5mmol)を、50℃で30分間反応熟成させて予め調製した触媒を添加し、80℃で60分間重合反応を行った。1,3-ブタジエンの重合転化率は、ほぼ100%であった。重合体溶液200gを抜き取り、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合反応を停止させた。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温されたロールにより乾燥して共役ジエン系重合体を得た。得られた共役ジエン系重合体(変性反応前)のシス-1,4-結合含有量は97%、1,2-ビニル結合含有量は1.1%、分子量分布(Mw/Mn)は2.2、及びムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)は18であった。
[0182]
60℃に保温した残りの重合体溶液に対して、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(4.5mmol)のトルエン溶液を添加し、変性反応を30分間行った。次いで、テトラ(2-エチルヘキシルオキシ)チタン(13.5mmol)のトルエン溶液を添加し、30分間混合した。その後、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、250gの変性共役ジエン系重合体溶液を得た。得られた変性共役ジエン系重合体溶液を、pH10に調整した水酸化ナトリウム水溶液20Lに添加し、110℃で2時間、脱溶媒するとともに縮合反応を行った。110℃の調温されたロールにより乾燥して変性共役ジエン系重合体(BR-Y)を得た。得られたBR-Yの分子量分布(Mw/Mn)は2.7、及びムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)は43であった。
[0183]
(合成例12)
表3に示す配合処方としたこと以外は、前述の合成例11の場合と同様の操作により変性共役ジエン系重合体(BR-Z)を得た。得られたBR-Zの分子量分布(Mw/Mn)、及びムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)を表3に示す。
・・(中略)・・
[0185]
(実施例1)
変性スチレン-ブタジエン共重合体(SBR-A)70部、変性共役ジエン系重合体(BR-Y)30部、伸展油(商品名「アロマックス#3」(富士興産社製))37.5部、シリカ(商品名「ニプシルAQ」(日本シリカ社製))70部、カーボンブラック(商品名「ダイアブラックN339」(三菱化学社製))5.6部、シランカップリング剤(商品名「Si69」(デグサ社製))5.6部、ステアリン酸2部、老化防止剤(商品名「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製))1部、酸化亜鉛3部、加硫促進剤NS(商品名「ノクセラーNS・F」(大内新興化学工業社製))1.5部、加硫促進剤CZ(商品名「ノクセラーCZ」(大内新興化学工業社製))1.8部、及び硫黄1.5部を配合して配合物を得た。なお、配合処方を表3に示す。250ccラボプラストミルを用いて得られた配合物を混練し、ゴム組成物(実施例1)を得た。得られたゴム組成物を145℃加硫して加硫ゴムを調製した。調製した加硫ゴムの引張強度(指数)は118、tanδ(0℃)(指数)は116、tanδ(50℃)(指数)は129、及び耐摩耗性(指数)は122であった。
[0186]
(実施例2?20、比較例1?9)
表5及び表6に示す種類の(変性)スチレン-ブタジエン共重合体、及び(変性)共役ジエン系重合体を使用したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様の操作により、ゴム組成物(実施例2?20、比較例1?9)を得た。また、得られたゴム組成物(実施例2?20、比較例1?9)を用いて、前述の実施例1の場合と同様の操作により、加硫ゴムを調製した。調製した加硫ゴムの引張強度(指数)、tanδ(0℃)(指数)、tanδ(50℃)(指数)、及び耐摩耗性(指数)を表5及び表6に示す。
[0187][表4]


[0188]
[表5]


[0189]
[表6]


[0190]
なお、表5及び表6中に略記した(変性)スチレン-ブタジエン共重合体、及び(変性)共役ジエン系重合体は以下に示す通りである。
[0191]
SL563:商品名「スチレンブタジエンゴムSL563」、JSR社製(ビニル結合含有量=55%、結合スチレン含有量=20%、ムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)=75)
BR01:商品名「ポリブタジエンゴムBR01」、JSR社製(シス-1,4-結合含有量=95%、1,2-ビニル結合含有量=2.5%、ムーニー粘度(ML_(1+4),100℃)=45)
[0192]
表5及び表6に示す結果から、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、3級アミノ基、又はヘテロ環がその末端に結合した変性スチレン-ブタジエン共重合体と、アルコキシシラン化合物で変性された変性共役ジエン系重合体を配合して得られた実施例1?20のゴム組成物を用いると、比較例1?9のゴム組成物を用いた場合に比して、引張強度、転がり抵抗(tanδ(50℃))、ウェッドスキッド抵抗性(tanδ(0℃))、及び耐摩耗性が顕著に改良された加硫ゴムを調製可能であることが明らかである。」

イ.甲4に記載された発明
上記ア.の記載事項(特に上記「表5」の「実施例11」又は「実施例12」に係る記載)からみて、甲4には、
「ゴム成分としての変性スチレン-ブタジエン共重合体「SBR-F」の70質量部、変性共役ジエン系重合体「BR-Y」又は「BR-Z」の30質量部及びシリカの70質量部を混練してなるゴム組成物の製造方法。」
に係る発明(以下「甲4発明1」という。)、
「甲4発明1の製造方法により製造されたゴム組成物。」
に係る発明(以下「甲4発明2」という。)及び
「甲4発明2のゴム組成物によりトレッドが構成されるタイヤ。」
に係る発明(以下「甲4発明3」という。)がぞれぞれ記載されているものといえる。

(3)甲5

ア.甲5に記載された事項
甲5には、申立人が申立書第47頁第8行?第50頁上段(表)で主張するとおりの事項が記載され、特に以下の事項が記載されている。

(c-1)
「【0141】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
・・(中略)・・
【0143】(6)第1級アミノ基含量(mmol/kg)
まず重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより(共)重合ゴムに結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した(共)重合ゴムを試料として、JIS K7237に記載された「全アミン価試験方法」により全アミノ基含有量を定量した。続けて、上記処理を施した(共)重合ゴムを試料として「アセチルアセトンブロックド法」により第2アミノ基および第3アミノ基の含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o-ニトロトルエンを使用、アセチルアセトンを添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。全アミノ基含有量から第2アミノ基および第3アミノ基の含有量を引いて第1アミノ基含有量(mmol)を求め、分析に使用したポリマー重量を割ることで重合体に結合した第1級アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
【0144】(7)第3級アミノ基含量(mmol/kg)
まず重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより(共)重合ゴムに結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した(共)重合ゴムを試料として、「アセチル化法」により第3アミノ基含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o-ニトロトルエン+酢酸を使用、ギ酸無水酢酸混合溶液を添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。定量値、第3アミノ基含有量(mmol)を分析に使用したポリマー重量を割り返すことで重合体に結合した第3級アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
・・(中略)・・
【0145】(9)アルコキシシリル基含量(mmol/kg)
赤外吸収スペクトルにより、Si-C結合に起因する1160cm^(-1)の吸収量により求めた。
【0146】(10)加硫ゴムの物性評価
(共)重合ゴムを用い、表5に示す配合処方に従って、250ccラボプラストミルで混練りしたのち、145℃で所定時間、加硫を行った加硫ゴムを用いて下記(イ)?(ニ)の各種測定を行った。
(イ)引張強度(300%モジュラス):JISK6301に従って測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、引張強度が大きく、良好である。
(ロ)tanδ(50℃)、tanδ(0℃):tanδ(50℃)は、米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、良好である。また、tanδ(0℃)は、同機器を使用し、引張動歪0.1%、周波数10Hz、0℃で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、ウエットスキッド抵抗性が大きく良好である。
(ハ)ランボーン摩耗指数:ランボーン型摩耗試験機を用い、スリップ率が25%の摩耗量で表し、また、測定温度は室温とした。指数が大きいほど、耐摩耗性は良好である。
(ニ)加工性:混練り後のダンプゴムのまとまりおよび光沢の外観を目視検査して、評価した。
【0147】実施例1〔(共)重合ゴムAの合成、およびその評価〕
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,750g、テトラヒドロフラン41.3g、スチレン125g、1,3-ブタジエン365gを仕込んだ。反応器内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウム325mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
【0148】重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン1560mgを加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した後、更に伸展油(冨士工興産株式会社製、商品名「フッコール・アロマックス#3」、V.G.C=0.963)を187.5g(重合体溶液に含有されるゴム成分100部に対して37.5部となる)添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、油展ゴムを得た。この油展ゴムを(共)重合ゴムAとする。得られた(共)重合ゴムAの組成および物性を表3に示す。(共)重合ゴムAを用いて、表5に示す配合処方Iにより調製した配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表6に実施例8として示す。
・・(中略)・・
【0150】実施例3〔(共)重合ゴムCの合成、およびその評価〕
実施例1において、重合開始末端に第3級アミノ基を導入する目的で開始剤を2級アミンとしてのピロリジンとn-ブチルリチウムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、(共)重合ゴムCを得た。得られた(共)重合ゴムCの組成および物性を表3に示す。(共)重合ゴムCを用いて、表5に示す配合処方Iにより調製した配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表6に実施例10として示す。
・・(中略)・・
【0160】実施例15?21
実施例1?7で合成した(共)重合ゴムA?Gを用い、各々、表5に示す配合処方IIにより調製した配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表8に示す。
・・(中略)・・
【0168】
【表1】


・・(中略)・・
【0172】
【表5】


・・(中略)・・
【0175】
【表8】


・・(中略)・・
【0179】表6?11の結果より、以下のことが分かる。表6?7のカーボンブラック系配合での評価結果より、本発明の共役ジオレフィン(共)重合ゴムを用いた実施例8?14の場合、良好な加工性を有し、破壊強度を損なうことなく、ウエットスキッド特性(0℃におけるtanδ)、低ヒステリシスロス性(50℃におけるtanδ)、および耐摩耗性が同時に高水準にバランスされている。このことは、表8?9シリカ配合(実施例15?21)、表10のカーボンブラックとシリカを併用した配合(実施例22?25)、カーボン-シリカデユアル・フェイズ・フィラー(二重相フィラー)配合(実施例26)、表11のシリカ低充填配合(実施例27)のいずれにおいても同様である。
・・(中略)・・
【0190】
【発明の効果】本発明によれば、配合する充填剤の種類および組合せによらず、加工性に優れるとともに、加硫処理を施して加硫ゴムとしたときに、ウエットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用材料やサイドウォール部材として有用な共役ジオレフィン(共)重合ゴムおよびその製造方法、ゴム組成物、タイヤを提供することができる。」

イ.甲5に記載された発明
上記ア.の記載事項(特に上記【表8】に係る記載)からみて、甲5には、
「ゴム成分としてのスチレン-ブタジエン共重合ゴム「C」の70質量部及びシリカの70質量部を混練してなるゴム組成物の製造方法。」
に係る発明(以下「甲5発明1」という。)、
「甲5発明1の製造方法により製造されたゴム組成物。」
に係る発明(以下「甲5発明2」という。)及び
「甲5発明2のゴム組成物によりトレッドが構成されるタイヤ。」
に係る発明(以下「甲5発明3」という。)がぞれぞれ記載されているものといえる。

2.各取消理由に係る検討

(1)取消理由3について
以下、取消理由3について、各本件発明につきそれぞれ検討を行う。
なお、申立人が主張する取消理由3は、請求項2に係る発明についての特許に対して異議申立の対象としていないが、請求項1が訂正により削除され、請求項3ないし請求項5が、請求項2を引用するよう訂正されたため、事案に鑑み、請求項2に係る発明についての特許につき、まず検討する。

ア.本件発明2について

(ア)対比
本件発明2と甲2発明1とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点a1:本件発明2では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られる」のに対して、甲2発明1では「ゴム成分としての変性共役ジエン系重合体H又はI・・、低分子量変性芳香族共重合体としての液状SBR D’・・及びシリカ・・を混練してなる」点

(イ)検討
上記相違点a1につき検討すると、甲2には、「混練」につき、「ゴム成分としての変性共役ジエン系重合体H又はI」と「シリカ」とを先に混練した上で、「低分子量変性芳香族共重合体としての液状SBR D’」を更に混練することに係る具体的開示がないとともに、上記I.でも示したとおり、当該混練順序に係る事項により、本件発明2では、当該製造方法に基づく製造物が発現する効果についても有意な差異が存するのであるから、上記相違点a1は、製造方法に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。

(ウ)小括
したがって、本件発明2は、甲2発明1、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

イ.本件発明3ないし5について
本件発明2を引用する本件発明3ないし5と甲2発明1とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ア.(ア)で示した相違点a1の点で相違するところ、上記ア.(イ)で示したとおりの理由により、製造方法に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明3ないし5についても、甲2発明1、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

ウ.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と甲2発明2とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点a1’:本件発明7では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られる」のに対して、甲2発明2では、「甲2発明1の製造方法により製造された」である点

(イ)検討
しかるに、甲2には、「混練」につき、「ゴム成分としての変性共役ジエン系重合体H又はI」と「シリカ」とを先に混練した上で、「低分子量変性芳香族共重合体としての液状SBR D’」を更に混練することに係る具体的開示がないとともに、上記I-1.でも示したとおり、当該混練順序に係る事項により、本件発明7では、組成物が発現する効果についても有意な差異が存するのであるから、上記相違点a1’は、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるものと理解するのが自然である。

(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲2発明2、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

エ.本件発明8ないし10について
本件発明7を引用する本件発明8ないし10と甲2発明2とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ウ.(ア)で示した相違点a1’の点で相違するところ、上記ウ.(イ)で示したとおりの理由により、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明8ないし10についても、甲2発明2、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

オ.本件発明12について

(ア)対比
本件発明12と甲2発明3とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致している。

相違点a2:本件発明12では「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有する」のに対して、甲2発明3では、「甲2発明2のゴム組成物により接地面が構成される」点

(イ)検討
しかるに、本件発明12における「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物」、すなわち本件発明7ないし10は、上記ウ.又はエ.でそれぞれ説示したとおりの理由により、いずれも甲2発明2であるとはいえないのであるから、その余につき検討するまでもなく、上記相違点a2は、実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって、本件発明12は、甲2発明3、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

カ.取消理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件発明2ないし5、7ないし10及び12は、いずれも甲2に記載された発明であるということはできないから、上記取消理由3は、いずれも理由がない。

(2)取消理由4について
以下、取消理由4について、各本件発明につきそれぞれ検討を行う。
なお、申立人が主張する取消理由4は、請求項2、3及び8に係る各発明についての特許に対して異議申立の対象としていないが、請求項1が削除され、請求項3ないし請求項5がそれぞれ請求項2を引用するように、また、請求項6及び11が削除され、請求項8ないし10及び請求項12がそれぞれ請求項7を引用するように、それぞれ訂正されたため、事案に鑑み、請求項2に係る発明についての特許につきまず検討し、さらに請求項3及び8についても検討する。

ア.本件発明2について

(ア)対比
本件発明2と甲4発明1とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点b1:本件発明2では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練する」のに対して、甲4発明1では、「ゴム成分としての変性スチレン-ブタジエン共重合体「SBR-F」・・、変性共役ジエン系重合体「BR-Y」又は「BR-Z」・・及びシリカ・・を混練してなる」点

(イ)検討
上記相違点b1につき検討すると、甲4には、「混練」につき、「変性共役ジエン系重合体「BR-Y」又は「BR-Z」」と「シリカ」とを先に混練した上で、「ゴム成分としての変性スチレン-ブタジエン共重合体「SBR-F」」を更に混練することに係る具体的開示がないとともに、上記I-1.でも示したとおり、当該混練順序に係る事項により、本件発明2では、当該製造方法に基づく製造物が発現する効果についても有意な差異が存するのであるから、上記相違点b1は、製造方法に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。

(ウ)小括
したがって、本件発明2は、甲4発明1、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

イ.本件発明3ないし5について
本件発明2を引用する本件発明3ないし5と甲4発明1とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ア.(ア)で示した相違点b1の点で相違するところ、上記ア.(イ)で示したとおりの理由により、製造方法に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明3ないし5についても、甲4発明1、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

ウ.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と甲4発明2とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点b1’:本件発明7では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られる」のに対して、甲4発明2では、「甲4発明1の製造方法により製造された」である点

(イ)検討
しかるに、甲4には、「混練」につき、「ゴム成分としての変性共役ジエン系重合体H又はI」と「シリカ」とを先に混練した上で、「低分子量変性芳香族共重合体としての液状SBR D’」を更に混練することに係る具体的開示がないとともに、上記I-1.でも示したとおり、当該混練順序に係る事項により、本件発明7では、組成物が発現する効果についても有意な差異が存するのであるから、上記相違点b1’は、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるものと理解するのが自然である。

(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲4発明2、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

エ.本件発明8ないし10について
本件発明7を引用する本件発明8ないし10と甲4発明2とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ウ.(ア)で示した相違点b1’の点で相違するところ、上記ウ.(イ)で示したとおりの理由により、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明8ないし10についても、甲4発明2、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

オ.本件発明12について

(ア)対比
本件発明12と甲4発明3とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致している。

相違点b2:本件発明12では「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有する」のに対して、甲4発明3では、「甲4発明2のゴム組成物により接地面が構成される」点

(イ)検討
しかるに、本件発明12における「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物」、すなわち本件発明7ないし10は、上記ウ.又はエ.でそれぞれ説示したとおりの理由により、いずれも甲4発明2であるとはいえないのであるから、その余につき検討するまでもなく、上記相違点b2は、実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって、本件発明12は、甲4発明3、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

カ.取消理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件発明2ないし5、7ないし10及び12は、いずれも甲4に記載された発明であるということはできないから、上記取消理由4は、いずれも理由がない。

(3)取消理由5について
以下、取消理由5について、各本件発明につきそれぞれ検討を行う。
なお、申立人が主張する取消理由5は、請求項2、3及び8に係る各発明についての特許に対して異議申立の対象としていないが、請求項1が削除され、請求項3ないし請求項5がそれぞれ請求項2を引用するように、また、請求項6及び11が削除され、請求項8ないし10及び請求項12がそれぞれ請求項7を引用するように、それぞれ訂正されたため、事案に鑑み、請求項2に係る発明についての特許につきまず検討し、さらに請求項3及び8についても検討する。

ア.本件発明2について

(ア)対比
本件発明2と甲5発明1とを対比すると、下記の点でのみ相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点c1:本件発明2では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練する」のに対して、甲5発明1では、「ゴム成分としてのスチレン-ブタジエン共重合ゴム「C」・・及びシリカ・・を混練してなる」点

(イ)検討
上記相違点c1につき検討すると、甲5発明1における「ゴム成分としてのスチレン-ブタジエン共重合ゴム「C」」は、化学量論的に多量のn-ブチルリチウムと少量のピペリジンとを共存させ、反応生成物であるリチウムペンタメチレンイミドと未反応のn-ブチルリチウムとが混在する系を重合開始剤とし、スチレン及びブタジエンからなるモノマーを重合した後、アミノ基含有アルコキシシラン化合物である変性剤で変性したものと認められるから、当該「ゴム成分としてのスチレン-ブタジエン共重合ゴム「C」」は、未反応のn-ブチルリチウム開始剤に由来する、一方の分子末端にはn-ブチル基が存在し、他方の分子末端には変性剤に由来するアルコキシシリル基、すなわち、ヒドロカルビルオキシシラン基が1個存在するものと、リチウムペンタメチレンイミド開始剤に由来する、一方の分子末端には第3級アミノ基(ペンタメチレンイミノ基)が存在し、他方の分子末端には変性剤に由来するアルコキシシリル基、すなわち、ヒドロカルビルオキシシラン基が存在するものとの混合物となっていると理解するのが自然であって、本件発明2における「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)」と「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)」とが共存したものであると認められる。
してみると、甲5発明1において、「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練する」態様とすることは、技術的に可能であるものとはいえないから、上記相違点c1は、実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって、本件発明2は、甲5発明1、すなわち甲5に記載された発明であるということはできない。

イ.本件発明3ないし5について
本件発明2を引用する本件発明3ないし5と甲5発明1とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ア.(ア)で示した相違点c1の点で相違するところ、上記ア.(イ)で示したとおりの理由により、製造方法に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明3ないし5についても、甲5発明1、すなわち甲5に記載された発明であるということはできない。

ウ.本件発明7について

(ア)対比
本件発明7と甲5発明2とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致しているものと認められる。

相違点c1’:本件発明7では「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られる」のに対して、甲5発明2では、「甲5発明1の製造方法により製造された」である点

(イ)検討
しかるに、甲5には、「混練」につき、本件発明でいう「シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)とシリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを」更に混練することに係る具体的開示がないとともに、上記I-1.でも示したとおり、当該混練順序に係る事項により、本件発明7では、組成物が発現する効果についても有意な差異が存するのであるから、上記相違点c1’は、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるものと理解するのが自然である。

(ウ)小括
したがって、本件発明7は、甲5発明2、すなわち甲5に記載された発明であるということはできない。

エ.本件発明8ないし10について
本件発明7を引用する本件発明8ないし10と甲5発明2とをそれぞれ対比すると、いずれも上記ウ.(ア)で示した相違点c1’の点で相違するところ、上記ウ.(イ)で示したとおりの理由により、ゴム組成物に係る発明についての実質的な相違点であるといえる。
してみると、他の点につき検討するまでもなく、本件発明8ないし10についても、甲5発明2、すなわち甲5に記載された発明であるということはできない。

オ.本件発明12について

(ア)対比
本件発明12と甲5発明3とを対比すると、下記の点で相違し、その余で一致している。

相違点c2:本件発明12では「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有する」のに対して、甲5発明3では、「甲5発明2のゴム組成物により接地面が構成される」点

(イ)検討
しかるに、本件発明12における「請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物」、すなわち本件発明7ないし10は、上記ウ.又はエ.でそれぞれ説示したとおりの理由により、いずれも甲5発明2であるとはいえないのであるから、その余につき検討するまでもなく、上記相違点c2は、実質的な相違点である。

(ウ)小括
したがって、本件発明12は、甲5発明3、すなわち甲5に記載された発明であるということはできない。

カ.取消理由5についてのまとめ
以上のとおり、本件発明2ないし5、7ないし10及び12は、いずれも甲5に記載された発明であるということはできないから、上記取消理由5は、いずれも理由がない。

I-3.当審が通知した取消理由2ないし5に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由2ないし5は、いずれも理由がない。

II.申立人が主張する取消理由について
申立人が、申立書で主張する取消理由は、上記第2で示した取消理由1ないし6であるところ、取消理由2ないし5は、当審が通知した上記I.で検討したものと同旨であるから、残る取消理由1及び6につき以下検討する。

1.取消理由1について
申立人が主張する取消理由1は、申立書第26頁第2行ないし第27頁第9行の記載からみて、本件特許に係る請求項6ないし12に記載されたゴム組成物又はタイヤに係る発明が、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであり、発明に係る物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか実際的ではないという事情もないから、同各項の記載では、発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合しないというものと認められる。
しかるに、訂正により削除された旧請求項6及び11を除く新請求項7ないし10及び12につき検討すると、請求項7ないし10に係るゴム組成物は、いずれも(A)ないし(C)の3種の各成分が含有されていることが明らかであり、請求項12に係るタイヤは、当該ゴム組成物によりトレッド部が構成されていることも明らかである。
そして、本件特許明細書(訂正後)の発明の詳細な説明を参酌すると、上記I-1でも説示したとおり、(A)成分と(C)成分とをまず混練し、更に(B)成分を混練するという製造方法を採ることにより、その作用機序は不明であるが、一括して混練した場合(参考例1)に比して更に効果上の改善がされていることが看取できるから、当該製造方法に係る事項により規定されたことによって、ゴム組成物又はタイヤに係る発明が明確でないということはできない。
してみると、本件の請求項7ないし10及び12の記載では、同各項記載の発明が明確でないということはできず、上記取消理由1は、理由がない。
(なお、この点、旧請求項6及び11についても同様であるから、先の取消理由通知において、請求項6ないし12に係る取消理由1につき通知しなかった。)

2.取消理由6について
申立人が主張する取消理由6は、申立書第53頁第2行ないし第55頁第24行(末行)の記載からみて、本件の請求項2及び7に係る発明は、甲2又は甲4に記載された発明を主たる引用発明とし、甲6及び甲7に開示された知見を組み合わせると、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の上記各請求項に記載された発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものと認められる。
(なお、申立書の上記部分において、甲5につき言及されていないから、甲5に記載された発明を主たる引用発明としての取消理由6に係る検討は行わない。)
しかるに、甲6及び甲7に開示された事項を検討すると、以下の(a)及び(b)の開示がそれぞれ存するものと認められるが、いずれにしても本件発明2又は7における「(A)成分と(C)成分とをまず混練し、更に(B)成分を混練する」という方法を採ることにより、シリカを含む充填剤の分散性を改善し、ヒステリシスロスを低減化せしめることを記載又は示唆したものとは認められない。

(a)甲6:ヒステリシスロス特性について、変性SBRにつき、官能基の種類及びその個数又は配置により、同特性の指標となるtanδの点で優劣があること(第5頁右欄ないし第6頁左欄「3.4.2ヒステリシスロス特性」の欄)及びΔtanδがシリカフィラーの分散性の指標となり当該Δtanδが小さい場合、転がり抵抗の指標である50℃tanδも低減化されること(第6頁右欄ないし第7頁右欄「3.5.2配合物におけるシリカの分散状態」の欄)
(b)甲7:「(方法I)
シリカの分散率を容易に向上できる(90%以上にできる)という点から、ゴム成分及びシリカを混練する工程は、ゴム成分の一部及びシリカの一部を混練し、混練物を得る第一混練工程と、ゴム成分の残部及びシリカの残部を該混練物とともに混練する第二混練工程とを含むことが好ましい。また、シリカの分散率をより容易に向上し、破壊エネルギー及び耐摩耗性を改善できるという点から、ENRは、第一混練工程では混練されず、第二混練工程でのみ混練されることが好ましい。更に、BR、NR等の第一ゴムは、第一混練工程で混練されることが好ましい。」(【0048】)

してみると、甲2又は甲4に記載された発明に対して、甲6及び甲7に開示された知見を組み合わせるべき動機が存するものとは認められないから、甲2又は甲4に記載された発明を主たる引用発明とし、甲6及び甲7に開示された知見を組み合わせて、本件発明2又は7につき、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、申立人が主張する取消理由6は、理由がない。
(よって、先の取消理由通知において、取消理由6につき通知しなかった。)

3.申立人が主張する取消理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由1ないし6は、いずれも理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項2ないし5、7ないし10及び12に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由並びに申立人が主張する取消理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、ほかに、本件の請求項2ないし5、7ないし10及び12に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見できない。
さらに、本件の請求項1、6及び11に係る特許に対する本件異議申立は、訂正により各項の記載事項が全て削除されたことによって、申立ての対象を欠く不適法なものとなり、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤに関し、更に詳しくは、例えばタイヤのトレッド用に用いられるゴム組成物およびその製造方法、並びに当該ゴム組成物よりなるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のタイヤのトレッド用に用いられるゴム組成物としては、共役ジエン系ゴムよりなるゴム成分と共に、補強剤としてカーボンブラックが配合されてなるものが知られている。
また、近年においては、自動車に対する低燃費化の要請が高まってきていることから、このような要請に応じるべく、タイヤの転がり抵抗を低減させることを目的として、シリカがフィラーとして用いられてきている。
そして、フィラーとしてシリカが配合されてなるゴム組成物においては、シリカ同士が凝集しやすく、組成物中において均一に分散させることが困難であることから、このような問題を解決すべく、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1?特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-350603号公報
【特許文献2】特開2006-063209号公報
【特許文献3】特開2010-254791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者らはフィラーとしてシリカが配合されてなるゴム組成物について研究を重ねた結果、組成物中におけるシリカの分散性が過度に大きくなることによっては、ゴム組成物よりなるゴム弾性体に十分な反発弾性が得られなくなってしまう、という問題が生じることが明らかとなった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることのできるゴム組成物およびその製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(削除)
【0007】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することが好ましい。
【0008】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることが好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることが好ましい。
【0012】
(削除)
【0013】
本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることが好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物においては、前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることが好ましい。
【0016】
本発明のゴム組成物においては、前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物においては、前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることが好ましい。
【0018】
(削除)
【0019】
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物から得られるトレッドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴム組成物においては、フィラー(C)を構成するシリカと共に、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)とが含有されており、これらの共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができることから、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点から、シリカの分散性を良好なものとすることができる。
従って、本発明に係るゴム組成物によれば、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることができる。
【0021】
本発明のゴム組成物の製造方法によれば、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)およびシリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)を含有するゴム成分と、フィラー(C)を構成するシリカとを混練するため、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができる。
また、本発明のゴム組成物の製造方法においては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)を混練することにより、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点からのシリカの分散性をより一層良好なものとすることができるため、得られるゴム弾性体が、より一層、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するものとなる。
【0022】
本発明のタイヤは、トレッドが本発明に係るゴム組成物よりなるものであるため、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基(以下、「特定官能基」ともいう。)を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基(特定官能基)を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)とを含有するゴム成分に、少なくとも、シリカを含有するフィラー(C)が添加されてなることを特徴とするものである。
ここに、「シリカに対して結合反応性を有する」とは、シリカと化学結合(共有結合、水素結合、分子極性による相互作用を含む)を形成する作用を有することを示す。
また、「重合体一分子の一箇所」の代表例としては、重合体一分子の末端のうちの1つ、すなわち重合体分子の片末端が挙げられる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、共役ジエン系重合体(A)と、重合体(B)と、フィラー(C)とを混練することにより得られる、具体的には当該ゴム組成物を構成する各要素を混練することによって得られる組成物(未加硫ゴム組成物)であり、例えば加硫などの架橋処理をすることにより、ゴム弾性体を形成するものである。
【0026】
本発明のゴム組成物において、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とはゴム成分を構成するものであるが、このゴム成分においては、必須成分としての共役ジエン系重合体(A)および重合体(B)の他、任意成分が含有されていてもよい。
【0027】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分を構成する、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/重合体(B))は、97/3?60/40であることが好ましく、より好ましくは96/4?65/35であり、特に好ましくは95/5?70/30である。
【0028】
質量比(共役ジエン系重合体(A)/重合体(B))において、共役ジエン系重合体(A)が過大、すなわち重合体(B)が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体が反発弾性の小さいものとなるおそれがある。一方、共役ジエン系重合体(A)が過小、すなわち重合体(B)が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の転がり抵抗が大きいものとなるおそれがある。
【0029】
(共役ジエン系重合体(A))
共役ジエン系重合体(A)は、重合体(B)と共にゴム成分を構成するものであり、共役ジエン系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーの重合体一分子の一箇所のみ、好ましくは分子片末端一箇所に特定官能基が導入されてなるものである。
この共役ジエン系重合体(A)は、重合体一分子の一箇所に、1個の特定官能基が導入されてなるものであってもよく、また2個以上の特定官能基が導入されてなるものであってもよい。
ここに、重合体一分子の一箇所に2個以上の特定官能基が導入されてなる共役ジエン系重合体とは、2個以上の特定官能基がそれぞれ独立に存在する構成のもの(具体的には、例えば一の特定官能基が他の特定官能基の置換基として存在する構成のもの、あるいは、一つの特定官能基が他の特定官能基と炭素数5以内の炭化水素化合物に由来の基を挟んで隣り合って存在する構成のもの)が挙げられる。
【0030】
共役ジエン系重合体(A)における特定官能基は、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0031】
共役ジエン系重合体(A)としては、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基から選ばれる少なくとも1種の官能基とが組み合わされて導入されてなるものが好ましい。
【0032】
共役ジエン系重合体(A)のベースポリマーとなる共役ジエン系重合体(以下、「ベース用重合体」ともいう。)は、共役ジエン化合物に由来の構造単位を有するものであり、この共役ジエン化合物に由来の構造単位と共に、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位が含有されてなるものであってもよい。
【0033】
ここに、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合においては、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合は10?40質量%であることが好ましい。
芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体がドライグリップ性能および耐摩耗性が小さいものとなるおそれがある。一方、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体が転がり抵抗の大きいものとなるおそれがある。
【0034】
ベース用重合体中の共役ジエン化合物に由来の構造単位を得るための共役ジエン化合物としては、脂肪族共役二重結合を有する直鎖状または分岐状の化合物が用いられ、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合においては、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物が用いられる。
具体的には、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどを好適に用いることができる。また、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンが好ましい。
【0035】
また、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合において、当該芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を得るための芳香族ビニル化合物としては、炭素環あるいは複素環を有する芳香族基に結合した1個以上のビニル基を有する化合物またはその誘導体が用いられる。
具体的には、例えばスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチレンスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレンなどを好適に用いることができる。また、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、スチレンが好ましい。
【0036】
このようなベース用重合体は、溶液重合法によって製造されたものであることが好ましい。また、溶液重合法としては、リビングアニオン重合法が好ましい。
ベース用重合体を溶液重合法によって製造することにより、後述する手法によるベース用重合体に対する特定官能基の導入が容易となる。
【0037】
ベースポリマーの重合体一分子の一箇所に特定官能基を導入する方法としては、種々の手法を用いることができるが、その一例としては、例えばベース用重合体をリビングアニオン重合法によって生成し、具体的にはn-ブチルリチウムなどの一官能性の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行い、重合停止剤として特定官能基を導入するための化合物(以下、「官能基導入用化合物」ともいう。)を用いる手法を挙げることができる。
【0038】
官能基導入用化合物としては、例えば、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、およびこれらの化合物のうちのアミノ部位が複数のトリアルキルシリル基で保護されている化合物において、複数のトリアルキルシリル基の一部がメチル基、エチル基、プロピル基あるいはブチル基で置換されてなる化合物;
【0039】
ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-エチルメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-エチルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジエチルメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジエチルメトキシシラン、3-エチルメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メチル-3-エチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、ビス-(3-ジメチルアミノプロピル)-ジメトキシシラン、ビス-(3-エチルメチルアミノプロピル)-ジエトキシシラン、ビス-[(3-ジメチルアミノ-3-メチル)プロピル]-ジメトキシシラン、ビス-[(3-エチルメチルアミノ-3-メチル)プロピル]-ジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジエチルエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジエチルエトキシシラン、3-エチルメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-エチルメチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、3-ジ(メトキシメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジ(メトキシエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジ(メトキシメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジ(メトキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジ(エトキシエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジ(エトキシメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジ(エトキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジ(エトキシメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリメトキシシリル)-2-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(メチルジエトキシシリル)-3-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(エチルジメトキシシリル)-4-プロパンアミン;
【0040】
N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびこれらの化合物のうちのアミノ部位が複数のトリアルキルシリル基で保護されている化合物において、複数のトリアルキルシリル基の一部がメチル基、エチル基、プロピル基あるいはブチル基で置換されてなる化合物;
【0041】
N-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(メチルジメトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(メチルジメトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-p-フェニレンジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-p-フェニレンジアミン、N-[3-(ジエトキシメチルシリル)-プロピル]-N-エチル-N’-(2-エトキシエチル)-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(トリプロポキシシリル)-プロピル]-N-プロピル-N’-(2-エトキシエチル)-N’-トリエチルシリル-p-フェニレンジアミン、N-[2-(ジエトキシメチルシリル)-1-メチルエチル]-N-エチル-N’-(2-ジエチルアミノ-エチル)-N’-トリエチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-N-エチル-N’-(2-ジエチルアミノエチル)-N’-トリエチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[2-(トリメトキシシリル)-エチル]-N,N’,N’-トリメチルエタン-1,2-ジアミン、N-[2-(ジメトキシメチルシリル)-エチル]-N-エチル-N’,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-N,N’,N’-トリメチルプロパン-1,3-ジアミン、N-[3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピル]-N-エチル-N’,N’-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-N,N’,N’-トリエチル-2-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N-[3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピル]-2,N,N’,N’-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミン、N-(2-ジメチルアミノエチル)-N’-[2-(トリメトキシシリル)-エチル]-N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N-[2-(ジエトキシプロピルシリル)-エチル]-N’-(3-エトキシプロピル)-N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N-[2-(トリメトキシシリル)-エチル]-N’-メトキシメチル-N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N-[2-(トリメトキシシリル)-エチル]-N,N’-ジメチル-N’-(2-トリメチルシリルエチル)-エタン-1,2-ジアミン、N-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-N,N’-ジエチル-N’-(2-ジブチルメトキシシリルエチル)-エタン-1,2-ジアミン、
【0042】
1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-(3-メチルジメトキシシリルプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、3-[3-(トリメチルシリルエチルアミノ)-1-ピロリジニル]-プロピル-メチルジエトキシシラン、3-[3-(トリメチルシリルプロピルアミノ)-1-ピロリジニル]-プロピル-トリエトキシシラン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリブトキシシラン、4-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジニル)ブチルトリエトキシシラン、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-4-メチルピペラジン、1-[3-(ジエトキシエチルシリル)-プロピル]-4-メチルピペラジン、2-(トリエトキシシリル)-1,4-ジエチルピペラジン、2-(ジメトキシメチルシリル)-1,4-ジメチルピペラジン、2-(3-トリエトキシシリル-プロピル)-1,4-ジエチルピペラジン、2-(3-ジメトキシメチルシリル-プロピル)-1,4-ジメチルピペラジン、3-ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3-ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ピペリジノプロピルエチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルエチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルトリエトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-3-メチルイミダゾリジン、1-[3-(ジエトキシエチルシリル)-プロピル]-3-エチルイミダゾリジン、1-(2-エトキシエチル)-3-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-イミダゾリジン、2-(トリメトキシシリル)-1,3-ジメチルイミダゾリジン、2-(3-トリメトキシシリル-プロピル)-1,3-ジメチルイミダゾリジン、2-(ジエトキシエチルシリル)-1,3-ジエチルイミダゾリジン、2-[3-(2-ジメチルアミノエチル)-2-(エチルジメトキシシリル)-イミダゾリジン-1-イル]-エチル-ジメチルアミン、2-(3-ジエトキシエチルシリル-プロピル)-1,3-ジエチルイミダゾリジン、2-[3-(2-ジメチルアミノエチル)-2-(3-エチルジメトキシシリル-プロピル)-イミダゾリジン-1-イル]-エチル-ジメチルアミン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、
【0043】
3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリエトキシシラン、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、1-[3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、3-[3-(トリブトキシシリル)-プロピル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン、3-[3-(ジメトキシメチルシリル)-プロピル]-1-エチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン、2-{3-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-テトラヒドロピリミジン-1-イル}-エチルジメチルアミン、5-(トリエトキシシリル)-1,3-ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5-(ジエトキシエチルシリル)-1,3-ジエチルヘキサヒドロピリミジン、5-(トリメトキシシリル)-1,3-ビス-(2-メトキシエチル)-ヘキサヒドロピリミジン、5-(エチルジメトキシシラニル)-1,3-ビス-トリメチルシラニルヘキサヒドロピリミジン、5-(3-トリエトキシシリル-プロピル)-1,3-ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5-(3-ジエトキシエチルシリル-プロピル)-1,3-ジエチルヘキサヒドロピリミジン、5-(3-トリメトキシシリル-プロピル)-1,3-ビス-(2-メトキシエチル)-ヘキサヒドロピリミジン、5-(3-エチルジメトキシシリル-プロピル)-1,3-ビス-(2-トリメチルシリルエチル)-ヘキサヒドロピリミジン、
【0044】
3-モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3-モルホリノプロピルトリエトキシシラン、3-モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3-モルホリノプロピルエチルジメトキシシラン、3-モルホリノプロピルメチルジエトキシシラン、3-モルホリノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジ(t-ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(メチルジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(エチルジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、[(3-メチル-3-エチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[(3-メチル-3-エチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリエトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルトリメトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルトリエトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルメチルジメトキシシラン、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルメチルジエトキシシラン、
【0045】
3-ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルジエチルメトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルジエチルメトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルジメチルエトキシシラン、3-ジメチルフォスフィノプロピルジエチルエトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルジメチルエトキシシラン、3-ジエチルフォスフィノプロピルジエチルエトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3-エチルメチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジメトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトエチルトリメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトエチルトリエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトエチルメチルジメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトエチルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
これらのうちでは、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-N,N’-ジエチル-N’-トリメチルシリル-エタン-1,2-ジアミン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N-[2-(トリメトキシシリル)-エチル]-N,N’,N’-トリメチルエタン-1,2-ジアミン、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-4-メチルピペラジン、2-(トリメトキシシリル)-1,3-ジメチルイミダゾリジン、2-(3-トリメトキシシリル-プロピル)-1,3-ジメチルイミダゾリジン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、ビス-(3-ジメチルアミノプロピル)-ジメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0047】
また、前述の官能基導入用化合物のうちのトリメチルシリル基を有するものについては、そのトリメチルシリル基の全てあるいは一部が、得られるヒドロカルビルオキシシリル基において水素置換されていてもよい。また、水素置換されたもののうちのオニウム生成剤の作用によってオニウムになりうる基(以下、「オニウム形成基」ともいう。)については、オニウム塩構造を形成していてもよい。オニウム形成基としては、例えばアミノ基に代表される窒素含有官能基、ホスフィノ基に代表されるリン含有基、チオール基に代表される硫黄含有基などが挙げられる。
【0048】
ここに、オニウム生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物、ハロゲン化ガリウム化合物等のハロゲン化金属、硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム等の無機酸塩、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸などが用いられる。
【0049】
オニウム生成剤の具体例としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、四塩化チタン、チタノセンジクロライド、四塩化ジルコニウム、ジルコノセンジクロライド、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、塩化亜鉛、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、ラウレス硫酸マグネシウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸2-エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ニトロセルロース、ニトログリセリン、ニトログリコール、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、アクリル酸、クロトン酸、コハク酸、グルタル酸、イタコン酸、酒石酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、β-メルカプトプロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0050】
共役ジエン系重合体(A)は、ゴム組成物から得られるゴム弾性体のコールドフロー性の観点から、多官能変性剤(以下、「カップリング用多官能化合物」ともいう。)によってカップリングされてなるものであってもよい。
共役ジエン系重合体(A)をカップリング用多官能化合物によってカップリングされたものとするカップリング反応は、ベースポリマーに特定官能基を導入する以前あるいは導入した後に行ってもよく、また特定官能基を導入するための反応と同時に行ってもよい。
【0051】
カップリング用多官能化合物としては、(a)イソシアナート化合物および/またはイソチオシアナート化合物、(b)アミド化合物および/またはイミド化合物、(c)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物、(d)ケイ素化合物、(e)エステル化合物、(f)ケトン化合物、および(g)スズ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0052】
上記(a)のイソシアナート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C-MDI)、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,3,5-ベンゼントリイソシアナートなどが好適例として挙げられる。
また、上記(a)のイソチオシアナート化合物としては、フェニル-1,4-ジイソチオシアナートなどが好適例として挙げられる。
上記(b)のアミド化合物としては、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’-テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’-テトラメチルオキサミドなどが好適例として挙げられる。
また、上記(b)のイミド化合物としては、コハク酸イミド、N-メチルコハクイミド、マレイミド、N-メチルマレイミド、フタルイミド、N-メチルフタルイミドなどが好適例として挙げられる。
上記(c)のピリジル置換ケトン化合物としては、ジベンゾイルピリジン、ジアセチルピリジンなどが好適例として挙げられる。
また、上記(c)のピリジル置換ビニル化合物としては、ジビニルピリジンなどが好適例として挙げられる。
上記(d)のケイ素化合物としては、ジブチルジクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素、メチルジクロロケイ素、テトラクロロケイ素、トリエトキシメチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、4,5-エポキシヘプチルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイドなどが好適例として挙げられる。
上記(e)のエステル化合物としては、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチルなどが好適例として挙げられる。
上記(f)のケトン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル(4,4’-ジアミノ)-ベンゾフェノン、N,N-ジメチル-1-アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノベンゾキノン、N,N-ジメチル-1-アミノアントラキノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノアントラキノンなどが好適例として挙げられる。
上記(g)のスズ化合物としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロメチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、ジクロロジオクチルスズ、1,2-ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2-ビス(メチルジクロロスタニルエタン)、1,4-ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4-ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリスオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリスラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート、ジブチルスズビスステアレート、ジブチルスズビスラウレートなどが好適例として挙げられる。
これらの化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
このような共役ジエン系重合体(A)においては、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2-ビニル結合の含有量が30?70mol%であることが好ましい。
1,2-ビニル結合の含有量が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体におけるウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
一方、1,2-ビニル結合の含有量が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の耐摩耗性が著しく小さいものとなるおそれがある。
【0054】
ここに、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2-ビニル結合の含有量は、500MHz、^(1)H-NMRスペクトルから算出することができる。
【0055】
共役ジエン系重合体(A)の含有割合は、ゴム成分100質量%において、30?95質量%であることが好ましい。
【0056】
(重合体(B))
重合体(B)は、共役ジエン系重合体(A)と共にゴム成分を構成するものであり、特定官能基を重合体一分子の複数箇所、すなわち分子中における複数箇所に有するものである。
この重合体(B)は、重合体一分子の複数箇所において、各々、1個の特定官能基が導入されてなるものであってもよく、また2個以上の特定官能基が導入されてなるものであってもよい。
ここに、重合体一分子の一箇所に2個以上の特定官能基が導入されてなる重合体とは、2個以上の特定官能基がそれぞれ独立に存在する構成のもの(具体的には、例えば一つの特定官能基が他の特定官能基の置換基として存在する構成のもの、あるいは、一つの特定官能基が他の特定官能基と炭素数5以内の炭化水素化合物に由来の基を挟んで隣り合って存在する構成のもの)が挙げられる。
【0057】
重合体(B)における特定官能基は、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。これらのうちでは、ヒドロカルビルオキシシリル基が好ましい。
【0058】
この重合体(B)は、ベースポリマーに複数個の特定官能基が導入されてなるものであるが、重合体一分子中の複数箇所に特定官能基が導入されていれば、その導入箇所はいずれであってもよく、複数の特定官能基は、分子末端、分子側鎖あるいは分子内のいずれに導入されていてもよいが、少なくとも一方の分子末端に導入されていることが好ましく、特に両方の分子末端に導入されていることが好ましい。
【0059】
重合体(B)のベースポリマーとしては、共役ジエン化合物に由来の構造単位を含有する共役ジエン系重合体が好ましい。
重合体(B)のベースポリマーとなる共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体(A)のベースポリマーとして用いることのできる共役ジエン系重合体として例示した重合体を用いることができる。
【0060】
ここに、重合体(B)のベースポリマーが共役ジエン系重合体である場合には、当該重合体(B)においては、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2-ビニル結合の含有量が30?70mol%であることが好ましい。
1,2-ビニル結合の含有量が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体におけるウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
一方、1,2-ビニル結合の含有量が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の耐摩耗性が著しく小さいものとなるおそれがある。
【0061】
重合体(B)の好ましい具体例としては、共役ジエン系重合体(A)におけるベースポリマーと同一種類のベースポリマーを有し、かつ当該共役ジエン系重合体(A)を構成する特定官能基と同一種類の特定官能基が導入されてなる構成のものが挙げられる。
【0062】
ベースポリマーの重合体一分子の複数箇所に特定官能基を導入する方法としては、種々の手法を用いることができるが、その一例としては、例えばベース用重合体をリビングアニオン重合法によって生成し、具体的には多官能性の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行い、重合停止剤として特定官能基を導入するための化合物官能基導入用化合物を用いる手法を挙げることができる。
【0063】
リビング重合に用いる多官能性の重合開始剤としては、例えばトリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤(ジリチウム系多官能開始剤)などが挙げられる。
【0064】
特定官能基を導入するための化合物としては、共役ジエン系重合体(A)に係るベースポリマーに特定官能基を導入するための官能基導入用化合物として用いることのできる化合物として例示した化合物を用いることができる。
【0065】
また、特定官能基を導入するための化合物としては、共役ジエン系重合体(A)に係る官能基導入用化合物として例示した化合物の他、例えば1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジエチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジプロピルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジブチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジメトキシアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジエトキシアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジプロポキシアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、1-(4-N,N-ジブトキシアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、tert-ブトキシジメチルシリルスチレンおよびイソプロポキシジメチルシリルスチレンなどを用いることもできる。これらのうちでは、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において省燃費性を著しく改良できるという観点から、1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレンが好ましい。
【0066】
重合体(B)は、ゴム組成物から得られるゴム弾性体のコールドフロー性の観点から、カップリング用多官能化合物によってカップリングされてなるものであってもよい。
重合体(B)をカップリング用多官能化合物によってカップリングされたものとするカップリング反応は、特定官能基を導入する以前あるいは導入した後に行ってもよく、また特定官能基を導入するための反応と同時に行ってもよい。
【0067】
カップリング用多官能化合物としては、共役ジエン系重合体(A)をカップリングするためのカップリング用多官能化合物として用いることのできる化合物として例示した化合物を用いることができる。
【0068】
重合体(B)の含有割合は、ゴム成分100質量%において、1?40質量%であることが好ましい。
【0069】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分には、必須成分である共役ジエン系重合体(A)および重合体(B)の他、任意成分が含有されていてもよいが、任意成分としては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、合成イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、エチレン-α-オレフィン共重合ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴム、並びにこれらの混合物などの、タイヤ用ゴム組成物として使用可能な公知の他のゴム成分などが挙げられる。これらのうちでは、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において、耐摩耗性を維持しつつ、ウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスを高次に達成できるという理由から、天然ゴムあるいはブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0070】
ゴム成分における任意成分の含有割合は、ゴム成分100質量%において、45質量%以下であることが好ましい。
【0071】
(フィラー(C))
フィラー(C)は、シリカを必須成分として含有するものであり、この必須成分としてのシリカと共に、任意成分が含有されていてもよい。
【0072】
フィラー(C)を構成するシリカとしては、一般的に充填剤として用いられているシリカを用いることができるが、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の転がり抵抗および反発弾性の観点から、一次粒子径が50nm以下である合成ケイ酸が好ましい。
【0073】
フィラー(C)を構成するシリカの含有割合は、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して、10?120質量部であることが好ましく、より好ましくは20?100質量部である。
シリカ(C)の含有割合が過小である場合および過小である場合には、いずれの場合においても、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において、硬度と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
【0074】
フィラー(C)においては、必須成分であるシリカの他、任意成分が含有されていてもよいが、任意成分としては、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物、炭酸マグネシウム等の炭酸塩類などが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
本発明のゴム組成物においては、必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)の他、必要に応じて、任意成分が含有されていてもよい。
任意成分の具体例としては、前述のゴム成分に係る任意成分に加え、例えばカーボンブラックなどの補強剤、オイルなどの軟化剤、シランカップリング剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤または架橋剤、加硫促進剤などが挙げられる。
【0076】
以上のような本発明のゴム組成物は、未加硫ゴム組成物であり、例えば加硫などの架橋処理をすることによってゴム弾性体が形成されるものであるが、シリカを含有するフィラー(C)と共に、ゴム成分として、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが含有されており、これらの共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができる。そのため、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点から、シリカの分散性を良好なものとすることができる。
従って、本発明のゴム組成物によれば、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることができる。
【0077】
このような本発明のゴム組成物は、例えばプラストミルを用い、必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)と共に、必要に応じて任意成分を混合して混練することによって製造することができる。
【0078】
本発明のゴム組成物の製造方法は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することを特徴とするものであるが、この混練に際しては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することが好ましい。
具体的には、先ず、共役ジエン系重合体(A)、フィラー(C)および必要に応じて任意成分とを混練した後、その混練物に重合体(B)を添加して更に混練する。
【0079】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することにより、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点からのシリカの分散性をより一層良好なものとすることができるため、得られるゴム弾性体が、より一層、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するものとなる。
【0080】
また、本発明のゴム組成物の製造方法は、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練する手法に限定されず、例えば必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)と共に、必要に応じて任意成分を一斉に混練する手法であってもよい。
【0081】
また、本発明に係るゴム組組成物から得られるゴム弾性体は、タイヤ(具体的にはタイヤのトレッド)として好適に用いられる。
このような本発明に係るゴム組成物から得られるトレッドを有するタイヤ、すなわち本発明のタイヤには、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性が得られる。
【0082】
ここに、本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。
すなわち、例えば本発明のゴム組成物(未加硫ゴム組成物)を、形成すべきタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)に応じて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未架橋(未加硫)タイヤを形成する。この未架橋(未加硫)タイヤを加硫機中で加熱加圧することによって本発明に係るゴム組成物よりなるタイヤが製造される。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各種物性値の測定法は以下の通りである。
【0084】
(1)共役ジエン系重合体における芳香族ビニル化合物としてのスチレンに由来の構造単位の含有割合(以下、「結合スチレン含量」ともいう。):
重クロロホルムを溶媒として用い、500MHz、^(1)H-NMRスペクトルから算出した。
【0085】
(2)共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2-ビニル結合の含有量(以下、「ビニル結合含量」ともいう。):
500MHz、^(1)H-NMRスペクトルから算出した。
【0086】
(3)共役ジエン系重合体におけるガラス転移温度(Tg):
ASTM D3418に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0087】
(4)共役ジエン系重合体に係るベース用重合体の分子量:
下記の条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)によって測定を行い、得られたGPC曲線の最大ピーク頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0088】
(GPC条件)
・カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製)2本
・カラム温度;40℃
・移動相;テトラヒドロフラン
・流速;1.0ml/分
・サンプル濃度;10mg/20ml
【0089】
(5)共役ジエン系重合体におけるムーニー粘度:
JIS K6300に準拠し、Lローターを用い、予熱1分間、ローター作動時間4分間、温度100℃の条件で測定した。
【0090】
(共役ジエン系重合体の合成例1;共役ジエン系重合体(A)の合成)
先ず、窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2750g、ビニル結合含量調整剤としてテトラヒドロフラン50g、単量体としてスチレン125gおよび1,3-ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤としてn-ブチルリチウム5.8mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加することによって重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したことを確認した後、重合転化率が99%に達した時点から更に5分間重合させた後、得られた反応溶液、すなわち共役ジエン化合物(1,3-ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)とからなる共重合体(ベース用重合体)を含有するポリマー溶液から、分子量測定用(ベース用重合体の分子量測定用)として10gをサンプリングした。
【0091】
次いで、サンプリングをした後のポリマー溶液に、官能基導入剤(官能基導入用化合物)としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間かけて反応させた。その後、得られたポリマー溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2gを添加し、更に水酸化ナトリウムでpHを9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことによって脱溶媒処理した後、110℃に調温された熱ロールによって乾燥処理することにより、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A1)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A1)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0092】
(共役ジエン系重合体の合成例2;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-4-メチルピペラジン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と3級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A2)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A2)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0093】
(共役ジエン系重合体の合成例3;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と2級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A3)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A3)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0094】
(共役ジエン系重合体の合成例4;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基と2級アミノ基を一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A4)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A4)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0095】
(共役ジエン系重合体の合成例5;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と3級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A5)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A5)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0096】
(共役ジエン系重合体の合成例6;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基とチオール基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A6)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A6)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0097】
(共役ジエン系重合体の合成例7;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体、およびヒドロカルビルオキシシリル基と2級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体との混合物(以下、「共役ジエン系重合体(A7)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A7)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0098】
(共役ジエン系重合体の合成例8;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、テトラエトキシシラン4.96mmolおよびN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール4.96mmolを用い、これらをテトラエトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールの順で添加したこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A8)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A8)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0099】
(共役ジエン系重合体の合成例9;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する前に、四塩化ケイ素2.69mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間かけて混合したこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有すると共に、オニウム塩構造が形成されてなる共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A9)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A9)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1において、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(1)」はN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(2)」は1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-4-メチルピペラジンであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(3)」は3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(4)」はN,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(5)」は[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(6)」はS-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(7)」はN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(8)」はテトラエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(9)」はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールである。
【0102】
【表2】

【0103】
(共役ジエン系重合体の合成例10;共役ジエン系重合体(B)の合成)
先ず、窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2750g、ビニル結合含量調整剤としてテトラヒドロフラン50g、単量体としてスチレン125gおよび1,3-ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤(ジリチウム系多官能開始剤)として、トリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤2.9mmolを添加することによって重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したことを確認した後、重合転化率が99%に達した時点から更に5分間重合させた後、得られた反応溶液、すなわち共役ジエン化合物(1,3-ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)とからなる共重合体(ベース用重合体)を含有するポリマー溶液から、分子量測定用(ベース用重合体の分子量測定用)として10gをサンプリングした。
【0104】
次いで、サンプリングをした後のポリマー溶液に、官能基導入剤(官能基導入用化合物)としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間かけて反応させた。その後、得られたポリマー溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2gを添加し、更に水酸化ナトリウムでpHを9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことによって脱溶媒処理した後、110℃に調温された熱ロールによって乾燥処理することにより、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを分子末端の各々に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(B1)」ともいう。)を得た。
【0105】
得られた共役ジエン系重合体(B1)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量およびガラス転移温度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表4に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
表3において、「ジリチウム系多官能開始剤」はトリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤を示す。また、同表において、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(1)」はN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを示す。
【0108】
【表4】

【0109】
〔実施例1〕
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を用い、充填率72%、回転数60rpm、温度120℃の混練条件により、共役ジエン系重合体(A1)80質量部、ブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)20質量部、伸展油「SNH46」(三共油化工業社製)45質量部、カーボンブラック6.7質量部、シリカ「ニプシルAQ」(東ソー・シリカ社製,一次平均粒子径15nm)84質量部、シランカップリング剤「Si-69」(デグサ社製)10質量部、ステアリン酸2.4質量部、老化防止剤「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製)1.2質量部および酸化亜鉛(亜鉛華)3.6質量部を混練した後、トルクがピークを超えたところで共役ジエン系重合体(B1)20質量部を混練(第1段目の混練)した。その後、第1段目の混練によって得られた混練物を室温まで冷却した後、更に、加硫促進剤「ノクセラ-CZ」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、加硫促進剤「ノクセラ-D」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、イオウ1.8質量部を添加し、回転数60rpm、温度80℃の混練条件によって混練(第2段目の混練)することにより、ゴム組成物(以下、「ゴム組成物(1)」ともいう。)を得た。
得られたゴム組成物(1)を成型し、加硫プレスによって温度条件160℃で所定時間加硫することにより、ゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(1)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(1)について、下記の特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(1)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0110】
(1)反発弾性:
トリプソ式反発弾性試験(東洋精機製作所製)を用い、50℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほど反発弾性が大きく良好であることが示される。
(2)ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を用い、引張動歪0.14%、角速度100ラジアン毎秒、温度0℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好であることが示される。
(3)低ヒステリシスロス特性(70℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.7%、角速度100ラジアン毎秒、温度70℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほど低ヒステリシスロス特性が大きく良好であることが示される。
【0111】
〔実施例2〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(2)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(2)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(2)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(2)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(2)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0112】
〔実施例3〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A3)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(3)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(3)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(3)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(3)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(3)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0113】
〔実施例4〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A4)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(4)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(4)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(4)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(4)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(4)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0114】
〔実施例5〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A5)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(5)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(5)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(5)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(5)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(5)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0115】
〔実施例6〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A6)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(6)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(6)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(6)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(6)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(6)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0116】
〔実施例7〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A7)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(7)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(7)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(7)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(7)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(7)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0117】
〔実施例8〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A8)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「混練ゴム組成物(8)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(8)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(8)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(8)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(8)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0118】
〔実施例9〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A9)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(9)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(9)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(9)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(9)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(9)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0119】
〔参考例1〕
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を用い、充填率72%、回転数60rpm、温度120℃の混練条件により、官能基導入共役ジエン系重合体(A1)80質量部、ブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)20質量部、共役ジエン系重合体(B1)20質量部、伸展油「SNH46」(三共油化工業社製)45質量部、カーボンブラック6.7質量部、シリカ「ニプシルAQ」(東ソー・シリカ社製,一次平均粒子径15nm)84質量部、シランカップリング剤「Si-69」(デグサ社製)10質量部、ステアリン酸2.4質量部、老化防止剤「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製)1.2質量部および酸化亜鉛(亜鉛華)3.6質量部を混練(第1段目の混練)した。その後、第1段目の混練によって得られた混練物を室温まで冷却した後、更に、加硫促進剤「ノクセラ-CZ」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、加硫促進剤「ノクセラ-D」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、イオウ1.8質量部を添加し、回転数60rpm、温度80℃の混練条件によって混練(第2段目の混練)することにより、ゴム組成物(以下、「ゴム組成物(10)」ともいう。)を得た。
得られたゴム組成物(10)を成型し、加硫プレスによって温度条件160℃で所定時間加硫することにより、ゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(10)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(10)について、下記の特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(10)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0120】
〔実施例10〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を97質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)の配合量を3質量部としたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(11)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(11)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(11)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(11)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(11)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0121】
〔実施例11〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を65質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)の配合量を35質量部としたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(12)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(12)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(12)」)ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(12)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(12)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0122】
〔比較例1〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を100質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)を用いなかったこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「比較用ゴム組成物(1)」ともいう。)を得、その比較用ゴム組成物(1)からゴム弾性体(以下、「比較用ゴム弾性体(1)」ともいう。)を得た。
得られた比較用ゴム弾性体(1)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
【0123】
【表5】

【0124】
表5において、「製造方法」に係る「a」は、共役ジエン系重合体(A)とフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することによってゴム組成物を製造する手法を示し、また「b」は、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とフィラー(C)とを一同に混練することによってゴム組成物を製造する手法を示す。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることを特徴とする請求項2?請求項4のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることを特徴とするゴム組成物。
【請求項8】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3?60/40であることを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10?120質量部であることを特徴とする請求項7?請求項9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
請求項7?請求項10のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有することを特徴とするタイヤ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-30 
出願番号 特願2012-557988(P2012-557988)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 井上 猛
橋本 栄和
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6148014号(P6148014)
権利者 JSR株式会社
発明の名称 ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤ  
代理人 大井 正彦  
代理人 大井 正彦  

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