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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01G
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
管理番号 1343908
異議申立番号 異議2018-700402  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-15 
確定日 2018-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6230839号発明「ポリオレフィン系農業用フィルムおよび農園芸用施設」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6230839号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6230839号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成25年7月19日(優先日 平成24年12月3日)に特許出願され、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月15日に特許公報が掲載され、その後、その特許に対し、平成30年5月15日に特許異議申立人 古郡 裕介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
特許第6230839号の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりものである(以下、特許第6230839号の請求項1ないし3に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件発明1」等といい、これらを合わせて「本件発明」と総称することもある。)。

「【請求項1】
二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、
下記式(4)で表される化合物と、下記式(1)または下記式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有し、下記式(4)における(1-x)/xが2.5以上であり、前記ヒンダードアミン化合物の含有量は、前記層のポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.29?2重量部であるポリオレフィン系農業用フィルム。

(式(1)中、Rは炭素原子数1?30のアルキル基、炭素原子数1?30のヒドロキシアルキル基、または炭素原子数2?30のアルケニル基であり、
nは1?6の整数である。
n=1のとき、R^(1)は、炭素原子数1?22のアルキル基、炭素原子数2?22のアルケニル基、または以下の一般式(2)で表される基であり、
n=2?6のとき、R^(1)は、n価の炭素原子数2?20の有機基である。)

(式(2)中、Rは炭素原子数1?30のアルキル基、炭素原子数1?30のヒドロキシアルキル基、または炭素原子数2?30のアルケニル基である。)

(式(3)中、Rは炭素原子数1?30のアルキル基または炭素原子数2?30のアルケニル基であり、
R^(2)は水素原子、炭素原子数1?22のアルキル基または炭素原子数2?22のアルケニル基であり、
Aは単結合、炭素原子数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、またはエーテル結合を有するアルキレン基である。
nは2?6の整数である。
Xは-C(=O)O-を末端に有する炭素原子数4?40の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、炭酸エステル結合を有する炭素原子数4?40の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、3?6個の-C(=O)O-を末端に有する炭素原子数6?30の有機基、または-C(=O)-である。)
M^(2+)_(1-x)Al^(3+)_(x)(OH^(-))_(2)・(A^(n-))_(x/n)・mH_(2)O (4)
(式(4)中、M^(2+)は、Mg^(2+)またはCa^(2+)であり、A^(n-)はn価のアニオンである。
xは0より大きく、0.5未満の数であり、
mは、0以上2未満の数である。)
【請求項2】
少なくとも一方の表層として防曇層を有する請求項1に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリオレフィン系農業用フィルムが農園芸用施設フレームに展張された農園芸用施設。」


第3.申立理由の概要及び提出した証拠
1.申立理由の概要
申立人は、甲第1?7号証を提出し、下記の申立理由を挙げ、本件発明1ないし3は、取り消されるべきものである旨主張している。

(1)申立理由1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
ア 本件発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3ないし5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 本件発明1ないし3は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1号証及び甲第3ないし7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2 特許法第36条第6項第1号(同条第113条第4号)
本件発明1ないし3は、本件発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に記載されておらず、これらの特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3 特許法第36条第6項第2号(同条第113条第4号)
本件発明1ないし3は、特許請求の範囲の記載が明確ではなく、これらの特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(4) 証拠方法
甲第1号証:特開2008-202005号公報
甲第2号証:特開2011-245857号公報
甲第3号証:特開2012-25789号公報
甲第4号証:特開2007-289147号公報
甲第5号証:特開平11-58646号公報
甲第6号証:国際公開第2005/082852号
甲第7号証:アデガスタブLA-81の技術資料
(https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/pro116c.html)(検索日2018年3月28日)
(以下、各甲号証を甲1号証から順に「甲1」等と略記する。)


第4 当審の判断
当審は、申立人の申立理由1ないし3は、いずれも理由がないと判断し、これらの申立てにより本件発明1ないし3は取り消すことができない。
以下、詳述する。

1 申立理由1について(特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
(1)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
(ア) 「【請求項1】
樹脂成分として酸性基を有する合成樹脂を含む樹脂組成物において、前記樹脂成分100質量部に対し、下記一般式(I)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物0.005?30質量部が配合されてなることを特徴とする樹脂組成物。

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は各々独立に炭素原子数1?4の低級アルキル基を、Rは炭素原子数1?18のアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基または炭素原子数5?8のシクロアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記酸性基を有する合成樹脂がマレイン酸変性ポリオレフィンである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1又は2記載の樹脂組成物。

(式中、R^(5)は炭素原子数1?18のアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基または炭素原子数5?8のシクロアルキル基を表す。)」(請求項1ないし3)
(イ) 「【0005】
これらの低塩基性ヒンダードアミン化合物は、酸による抽出に優れた耐性を示すので、特許文献5などにポリオレフィン製農業用フィルムへの活用が提案されている。」
(ウ) 「【0016】
本発明において酸性基を有する合成樹脂としては、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリブタジエン、ジメチロールプロピオン酸で水溶性を付与されたウレタン、(メタ)アクリル酸をモノマーの一部に用いた共重合体などが挙げられる。特にマレイン酸変性ポリプロピレンは本発明の特定の部分構造を有するヒンダードアミンが顕著に耐候性付与に効果があるので好ましい。これらは単独でまたは他の樹脂と混合して用いられる。
【0017】
上記他の樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリ-3-メチルペンテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体等のα-オレフィンの単重合体または共重合体、これらのα-オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体、・・・シリコン樹脂等であってもよく、これら樹脂及び/又はエラストマーをアロイ化又はブレンドしたものであってもよい。」
(エ) 「【0031】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、通常各々の樹脂に用いられる各種の配合剤が用いられる。例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、他のヒンダードアミン化合物、造核剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、充填剤、繊維状充填剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、帯電防止剤、顔料、染料などが挙げられる。」
(オ) 「【0039】
ハイドロタルサイト類としては、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式(III)で表される塩基性炭酸塩が挙げられる。
【0040】
M_(x) Mg_(y) Al_(z) CO_(3)(OH)_(xp+2y+3z-2)・nH_(2)O (III)
(式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を、xは0?6の数を、yは0?6の数、zは0.1?4の数を、pはMの価数を、nは0?100の結晶水の数を表す。)」
(カ) 「【0046】
【表1】



イ 甲2に記載された事項
(ア-2)「【請求項1】
シリカ微粒子からなる層と、シリカ微粒子および樹脂からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層とを有する積層フィルムであって、前記シリカ微粒子からなる層と前記熱可塑性樹脂からなる層との間に前記シリカ微粒子および樹脂からなる層が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
シリカ微粒子および樹脂からなる層に含まれるシリカ微粒子および樹脂の合計を100重量%とするとき、該シリカ微粒子および樹脂からなる層におけるシリカ微粒子の含有量が30?70重量%であり、樹脂の含有量が30?70重量%であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる層がポリエチレン系樹脂からなる請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
植物栽培用構造物であって、該構造物はフレームとこれを覆って前記構造物の外形を形成している被覆材とで構成されており、該被覆材が請求項1?3のいずれかに記載された積層フィルムであり、該積層フィルムのシリカ微粒子からなる層が構造物の内面である植物栽培用構造物。
【請求項5】
植物栽培用構造物であって、該構造物はフレームとこれを覆って前記構造物の外形を形成している被覆材とで構成されており、該被覆材が請求項1?3のいずれかに記載された積層フィルムであり、該積層フィルムのシリカ微粒子からなる層が構造物の外面である植物栽培用構造物。」
(イ-2) 「【0036】
熱可塑性樹脂からなる層を形成する熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、オレフィン系樹脂・・・ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂からなる層は、単一種の熱可塑性樹脂から形成されていてもよく、2種以上の熱可塑性樹脂の混合物から形成されていてもよい。熱可塑性樹脂からなる層をインフレーション成形にて製造する場合には、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
オレフィン系樹脂とは、オレフィン、またはオレフィンとオレフィン以外の単量体とを重合して得られる樹脂であり、具体的には、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体等のオレフィン単独重合体;エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン/ノルボルネン共重合体などのエチレンと重合性環状単量体との共重合体など、エチレンとエチレンとは異なる単量体との共重合体であって、エチレン由来の構成単位を50重量%以上含む共重合体が挙げられる(ただし該共重合体の重量を100重量%とする)。なかでも、エチレン単独重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体等のポリエチレン系樹脂が、加工性、価格などの観点から特に好ましい。
【0038】
前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレン由来の構成単位と、α-オレフィン由来の構成単位とからなる。・・・。
【0039】
本発明におけるエチレン/α-オレフィン共重合体として好ましくは、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン-1共重合体、エチレン/1?オクテン共重合体、エチレン/1-ブテン/1-ヘキセン共重合体、エチレン/1-ブテン/1-オクテン共重合体が挙げられる。」
(ウ-2) 「【0042】
熱可塑性樹脂からなる層は、単層フィルムに限定されるものではなく、多層フィルムでもよい。熱可塑性樹脂からなる層が多層フィルムである場合、その層構成は、特に限定されず、例えば、2種2層、2種3層、3種3層、3種4層、4種4層、4種5層、5種5層等が例示できる。
【0043】
熱可塑性樹脂には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、無機フィラー、ワックス、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料などを含有させることができる。これらの添加剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもかまわない。これらの添加剤については、例えば「プラスチック及びゴム用添加剤実用便覧」化学工業(1970年)に記載されている。」
(エ-2) 「【0045】
光安定剤としては、例えば、特開平8-73667号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン系化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビン622-LD、キマソーブ944-LD(以BASF社製)、ホスタビンN30、VP Sanduvor PR-31(以上クラリアント社製)、サイヤソーブUV3529、サイヤソーブUV3346(以上サイテック社製)などが挙げられる。さらには、特開平11-315067号公報に記載の構造を有する立体障害性アミンエーテル化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビンNOR371(BASF社製)が挙げられる。熱可塑性樹脂からなる層に含まれる光安定剤の量は、該層を形成する各層の重量を100重量%とするとき、それぞれの層に0.01?3重量%が好ましく、0.05?2重量%がより好ましく、特に0.1?1重量%が好ましい。」
(オ-2) 「【0047】
無機フィラーは、熱可塑性樹脂からなる層の剛性、保温性、耐農薬性、燃焼特性などのさまざまな性能を改良する目的で用いることができる。特に、輻射線吸収性の高い無機フィラーを熱可塑性樹脂からなる層に含有させることにより、該熱可塑性樹脂からなる層の保温性を向上させることができる。
【0048】
無機フィラーの例としては、Mg_(6)Al_(2)(OH)_(16)(CO_(3))・4H_(2)Oの化学式で表されるハイドロタルサイトおよびその類縁化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物などの複合水酸化物が挙げられる。
ハイドロタルサイトおよびその類縁化合物の具体例としては、例えば、天然ハイドロタルサイトやスタビエース-P(堺化学工業株式会社製)、DHT-4A(協和化学工業株式会社製)、マグクリア(戸田工業株式会社製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
リチウムアルミニウム複合水酸化物の具体例としては、例えば、OPTIMA?SS(戸田工業株式会社製)、ミズカラック(水澤化学工業株式会社製)などが挙げられる。」
(カ-2) 「【0066】
次に、実施例、比較例に用いた熱可塑性樹脂からなる層(C層)の作製方法について説明する。
【0067】
<C層の作製>
共押出インフレーション成形法(加工温度160℃)により、外層、中間層及び内層がこの順に積層されている厚さ100μmの熱可塑性樹脂からなる層を作製した。なお、外層、中間層、内層の押出量の重量比は、外層/中間層/内層=2/6/2とした。各層の組成は、以下のとおりである。
【0068】
前記外層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH CB0004、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 926kg/m^(3);住友化学株式会社製)79.3重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m^(3)、住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0069】
前記中間層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m^(3);住友化学株式会社製)85.6重量%、無機フィラーとして合成ハイドロタルサイト13重量%、防曇剤としてグリセリン系脂肪酸エステル0.6重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.7重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0070】
前記内層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m^(3);住友化学株式会社製)41.9重量%、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH051、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 921kg/m^(3);住友化学株式会社製)37.4重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m^(3);住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。」
(キ-2) 「 【0077】
次に、実施例1?実施例2、比較例1?比較例4について説明する。
【0078】
[実施例1]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ア)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(オ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。」

ウ 甲3に記載された事項
(ア-3) 「【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に添加される保温剤であって、過塩素酸イオン型ハイドロタルサイト類化合物を含有することを特徴としてなるポリオレフィン系樹脂用保温剤
【請求項2】
過塩素酸イオン型ハイドロタルサイト類化合物が下記式(1)
【化1】

(式中、3<x<10、0≦y<1、0.1<z≦1、0<m<10、0.5≦n≦20を示す。ただし、mH_(2)Oは層間水、nH_(2)Oは自由水を示す。)
である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤
【請求項3】
過塩素酸イオン型ハイドロタルサイト類化合物を除くハイドロタルサイト類化合物の1種または2種以上を含有する請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤
【請求項4】
過塩素酸イオン型ハイドロタルサイト類化合物を除くハイドロタルサイト類化合物の1種または2種以上を含有する請求項2記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤
【請求項5】
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤を用いた農業用フィルム
【請求項6】
請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤を用いた農業用フィルム
【請求項7】
請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤を用いた農業用フィルム
【請求項8】
請求項4に記載のポリオレフィン系樹脂用保温剤を用いた農業用フィルム」
(イ-3)
「【0009】
また本発明の過塩素酸イオン型ハイドロタルサイト類化合物と併用するハイドロタルサイト類化合物としては、代表例としてDHT-4A(Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(12)(CO_(3))・_(3.5)H_(2)O)、アルカマイザ-2(Mg_(4)Al_(2)(OH)_(12)CO3)、アルカマイザー1、アルカマイザー4、アルカマイザー7(いずれも協和化学工業株式会社製)HT-7(Mg_(3.5)Zn_(0.5)Al_(2)(OH)_(12)CO_(3)・_(3)H_(2)O)、HT-1、HT-P(いずれも協和化学工業株式会社製)や、NAOX-33、NAOX-71、NAOX-54、NAOX-57、NAOX-55、NAOX-56、NAOX-72、OPTIMA-LSA、OPTIMA-XT、MAGGOLD、MAGCLEAR、NAOX-19、NAOX-19T、NAOX-81、NAOX-91(いずれも戸田工業株式会社)などがあげられる。」
(ウ-3) 「【0022】
光安定剤は、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ドデシルスクシンイミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4,4′-セバコイルジオキシ-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、4,4′-セバコイルジオキシ-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン)、4,4′-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-ブチルマロニルジオキシ-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン)、4,4′-ヘキサメチレンジイミノ-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、4,4′,4″,47-1,2,3,4-ブタンテトラカルボニルテトラオキシ-テトラ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、4,4′,4″,4′′′-1,2,3,4-ブタンテトラカルボニルテトラオキシ-テトラ(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン)、4,4′-(ジトリデシルオキシカルボニルブタンジカルボニルジオキシ)-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、トリス[2-ヒドロキシ-3-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)プロピル]イソシアヌレート、ポリ[エチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ-ヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、ポリ[1-エチレン-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-マロニルオキシ]、ポリ{(4-モルホリノ-1,3,5-トリアジン-2,6-ジイル)[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ-ヘキサメチレン-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]}、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(ブチル(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-6-1,3,5-トリアジニル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、4,4′,4″-ニトリロトリ(メチレンカルボニルオキシ)-トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]などをあげることができる。上記光安定剤の添加量はポリオレフィン系樹脂に対して、その100重量部当り、0.01?2重量部、好ましくは0.02?1重量部である。」

エ 甲4に記載された事項
(ア-4) 「【請求項1】
2層以上からなる農業用フィルムであって、第一層が熱可塑性樹脂を含む層であり、第二層が、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20?900重量部含有し、さらに該第二層における成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01?5重量%含有する層である農業用フィルム。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3?20のα-オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01?5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B):エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、メルトフローレートが0.01?5g/10分であり、酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3?20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ただし成分(B)の重量を100%とする)
成分(C):非イオン系界面活性剤
【請求項2】
前記第一層が前記成分(A)、(B)、(C)に加えてさらに下記成分(D)を含む層であって、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20?900重量部含有し、さらに該第一層における成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01?5重量%、成分(D)を0.01?3重量%含有する層である請求項1に記載の農業用フィルム。
成分(D):フッ素系界面活性剤および/またはシリコン系界面活性剤
【請求項3】
さらに熱可塑性樹脂を含む第三層を有し、該第三層と前記第一層とがともに外層である請求項1または2に記載の農業用フィルム。」
(イ-4) 「【0002】
施設園芸用ハウス、トンネル等の被覆に用いられる農業用フィルムとしては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムや、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムが汎用的に使用されている。中でも最近では、軽量で、焼却時に有毒ガスが発生し難いポリオレフィン系樹脂フィルムが施設園芸用に広く普及している。施設園芸において良好な作物生育性を発現するため、これら農業用フィルムに要求される性能としては、透明性、流滴性等が挙げられる。」
(ウ-4) 「【0006】
本発明者らは、透明性の持続性と流滴性能の持続性に優れる農業用フィルムを開発するため鋭意検討した結果、本発明を完成した。」
(エ-4) 「【0045】
光安定剤としては、例えば、特開平8-73667号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン系化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビン622-LD、キマソーブ944-LD(以上チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ホスタビンN30、VP Sanduvor PR-31(以上クラリアント社製)、サイヤソーブUV3529、サイヤソーブUV3346(以上サイテック社製)などが挙げられる。さらには、特開平11-315067号公報に記載の構造を有する立体障害性アミンエーテル化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビンNOR371(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。各層に含まれる光安定剤の量は、0.01?3重量%が好ましく、0.05?2重量%がより好ましく、特に0.1?1重量%が好ましい。」
(オ-4) 「【0047】
無機フィラーとしては、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物などの複合水酸化物が挙げられる。ハイドロタルサイト類化合物の具体例としては、例えば、天然ハイドロタルサイトや商品名:DHT-4A(協和化学工業製)、マグクリスタ(協和化学工業製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。リチウムアルミニウム複合水酸化物の具体例としては、例えば、ミズカラック(水澤化学工業製)、フジレイン(富士化学工業製)などが挙げられる。さらには、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタンなどの金属酸化物;・・・などが挙げられる。」

オ 甲5に記載された事項
(ア-5) 「【請求項1】
表面層と裏面層、または表面層と中間層と裏面層とがこの順序で積層されてなる多層フィルムであって、
[I]上記表面層が、
エチレンと炭素原子数4?12のα- オレフィンとを共重合して得られ、密度が0.880?0.940g/cm^(3)であり、メルトフローレートが0.01?10g/10分の範囲にあるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)、または 該エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、40重量%以下の量の高圧法低密度ポリエチレン(B-1)またはエチレン・酢酸ビニル共重合体(B-2)との混合物(AB)からなり、
該高圧法低密度ポリエチレン(B-1)のメルトフローレートが0.01?100g/10分で、密度が0.915?0.935g/cm^(3)であり、
該エチレン・酢酸ビニル共重合体(B-2)のメルトフローレートが0.1?500g/10分で、密度が0.915?0.980g/cm^(3)であり、
上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)または上記混合物(AB)は、(i) GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5?3.5の範囲にあり、
(ii)23℃におけるn-デカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが、
W<80×exp(-100(d-0.88))+0.1
で示される関係を満たし、
(iii)GPC-IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB_(1) 、低分子量側の分岐数の平均値をB_(2) とするとき、
B_(1) ≧ B_(2)
であり、
[II]上記裏面層、または上記裏面層および中間層は、酢酸ビニル含有量が2.0?35重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)からなることを特徴とする農業用多層フィルム。
【請求項7】前記表面層、裏面層および必要により設けられる中間層のうちの少なくとも1層が、耐候安定剤を含有していることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
【請求項8】前記表面層、裏面層および必要により設けられる中間層のうちの少なくとも1層が、Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を含有していることを特徴とする請求項1?7の何れかに記載の農業用多層フィルム。
【請求項11】上記農業用多層フィルムの表面および裏面の少なくとも何れか一方の面上には、さらに、シリカゾルおよび/またはアルミナゾルからなるバインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる被覆層が積層されていることを特徴とする請求項1?10の何れかに記載の農業用多層フィルム。
【請求項12】前記表面層[I]の厚みが3?100μmであり、裏面層の厚みが10?150μmであり、必要により設けられる中間層の厚みが10?150μmであり、かつこれらの層全体の厚みが30?250μmであることを特徴とする請求項1?11の何れかに記載の農業用多層フィルム。」(請求項1、7、8、11、12)
(イ-5) 「【0001】
【発明の技術分野】本発明は、農業用多層フィルムに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】農業上の促成栽培を目的としたハウス栽培、トンネル栽培およびマルチ栽培などでは、一般に被覆材として各種熱可塑性樹脂からなる農業用フィルムが多量に使用されている。このような農業用フィルムとしては、たとえばポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあり、中でも、ポリ塩化ビニルフィルムは、保温性、透明性、強靱性(機械的強度特性)等に優れているため最も多く使用されている。
【0003】しかしながら、ポリ塩化ビニルフィルムは、防塵性および展張作業性が若干劣る上、焼却廃棄時に有毒ガスを発生する等の問題がある。ここに、「保温性」とは、昼間に太陽熱を吸収して温度の上昇した大地から、夜間に放出される輻射線を吸収、反射してハウス、トンネル等の内部の温度(気温および地温)を保持する性能をいう。」
(ウ-5) 「【0100】保温剤(H)
保温剤としては、Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類などの無機化合物が挙げられる。
【0101】
具体的には、SiO_(2) 、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO等の無機酸化物;Al(OH)_(3) 、Mg(OH)_(2) 、Ca(OH)_(2) 等の無機水酸化物;
式 M^(2+)_(1-x)Al_(x)(OH)_(2)(A^(n-))_(x/n)・mH_(2)O
[式中、M^(2+)は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、 A^(n-)はCl^(-) 、Br^(-) 、I^(-) 、NO_(3)^(2-) 、ClO^(4-)、SO_(4)^(2-) 、CO_(2)^(2-) 、SiO_(3)^(2-) 、HPO_(4)^(2-) 、HBO_(3)^(2-) 、PO_(4)^(2- )等のアニオンであり、xは、0<x<0.5 の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦2 の条件を満足する数値である]で表わされる無機複合化合物、その焼成物等のハイドロタルサイト類などが挙げられる。これらの中でも、ハイドロタルサイト類が好ましく、特に上記式で表わされる無機複合化合物の焼成物が好ましい。」
(エ-5) 「【0106】光安定剤としては、従来公知の光安定剤を用いることができ、中でもヒンダードアミン系光安定剤(HALS;Hindered Amine Light Stabilizers)が好ましく用いられる。
【0107】ヒンダードアミン系安定剤としては、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
(1)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)セバケート、
(2)コハク酸ジメチル-1- (2-ヒドロキシエチル)-4- ヒドロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン重縮合物、
(3)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(4)2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニルベンゾエート、
(5)ビス- (1,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニル)-2- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシベンジル)-2-n- ブチルマロネート、
(6)ビス(N-メチル-2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジニル)セバケート、
(7)1,1'-(1,2- エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、
(8)(ミックスト2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(9)(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(10)ミックスト{2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(11)ミックスト{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(12)N,N'- ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2-4- ビス[N-ブチル-N- (1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル)アミノ]-6- クロロ-1,3,5- トリアジン縮合物、
(13)N,N'- ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2-ジブロモエタンとの縮合物、
(14)[N-(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル)-2-メチル-2- (2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなど。
【0108】これらのヒンダードアミン系光安定剤は、単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。このような光安定剤は、農業用多層フィルムの各層に、通常0.005?5重量%、好ましくは0.005?2重量%、さらに好ましくは0.01?1重量%の量で含まれていることが望ましい。」

カ 甲6に記載された事項
(ア-6) 「1.一般式(I)又は(II)で表されるヒンダードアミン化合物。

(式中、Rは炭素原子数1?30のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数2?30のアルケニル基を、nは1?6の整数を表し、n=1のときR^(1)は炭素原子数1?22のアルキル基、炭素原子数2?22のアルケニル基、又は以下の一般式(III)の基を、

(Rは上記Rと同じ炭素原子数1?30のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数2?30のアルケニル基を表す。)、
n=2?6のときR^(1)はn価の炭素原子数2?20の有機基を表す。)

(式中、Rは炭素原子数1?30のアルキル基、炭素原子数2?30のアルケニル基を、R^(2)は水素原子、炭素原子数1?22のアルキル基又は炭素原子数2?22のアルケニル基を、Aは単結合、炭素原子数1?12の直鎖または分岐のアルキレン基、エーテル結合を有するアルキレン基;nは2?6の整数;Xは-C(=O)-を表すか、-C(=O)O-を末端に有する炭素原子数4?40の直鎖または分岐のアルキレン基を表すか、炭酸エステル結合を有する炭素原子数4?40の直鎖または分岐のアルキレン基を表すか、又は3?6個の-O-C(=O)-を末端に有する炭素原子数6?30の有機基を表す。)
3.一般式(I)におけるnが1を、R^(1)が下記の一般式(III)の基

(Rは炭素原子数10?22のアルキル基である。)
である請求項1記載のヒンダードアミン化合物。
4.合成樹脂100重量部に、請求項1?3のいずれかに記載のヒンダードアミン化合物を0.01?10重量部を配合した合成樹脂組成物。
5.ポリオレフィン樹脂100重量部に、請求項1?3のいずれかに記載のヒンダードアミン化合物0.05?5重量部を配合したポリオレフィン樹脂組成物。
6.請求項5に記載のポリオレフィン樹脂組成物からなる農業用ポリオレフィンフィルム。」(請求の範囲の請求項1、3ないし6)
(イ-6) 「一般式(I)で表される化合物としては、より具体的には、化合物No.1?No.6及び化合物No.13の化合物が挙げられ、一般式(II)で表される化合物としては、化合物No.7?No.12の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物によりなんら制限を受けるものではない。

」(第8頁下から第4行?第12頁第2行)

キ 甲7に記載された事項


ク 甲1に記載された発明
摘記事項(ア)ないし(カ)、特に(ア)の記載からみて、甲1には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。

「樹脂成分として酸性基を有する合成樹脂を含む樹脂組成物において、前記樹脂成分100質量部に対し、下記一般式(I)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物0.005?30質量部が配合されてなることを特徴とする樹脂組成物であって、


(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は各々独立に炭素原子数1?4の低級アルキル基を、Rは炭素原子数1?18のアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基または炭素原子数5?8のシクロアルキル基を表す。)
前記酸性基を有する合成樹脂がマレイン酸変性ポリオレフィンであり、
前記一般式(I)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である樹脂組成物。

(式中、R^(5)は炭素原子数1?18のアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基または炭素原子数5?8のシクロアルキル基を表す。)」

ケ 甲2に記載された発明
摘記事項(ア-2)ないし(キ-2)、特に、(ア-2)、(カ-2)、(キ-2)の記載からみて、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。

「共押出インフレーション成形法(加工温度160℃)により、外層、中間層及び内層がこの順に積層されている厚さ100μmの熱可塑性樹脂からなるC層を作製し、外層、中間層、内層の押出量の重量比は、外層/中間層/内層=2/6/2であり、C層の各層の組成は、以下のとおりであり、該熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された農業用積層フィルム。

外層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH CB0004、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 926kg/m^(3);住友化学株式会社製)79.3重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m^(3)、住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
中間層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m^(3);住友化学株式会社製)85.6重量%、無機フィラーとして合成ハイドロタルサイト13重量%、防曇剤としてグリセリン系脂肪酸エステル0.6重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.7重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
内層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m^(3);住友化学株式会社製)41.9重量%、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH051、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 921kg/m^(3);住友化学株式会社製)37.4重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m^(3);住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。」

(2) 甲1を主引用例とした場合(申立理由1ア)
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「酸性基を有する合成樹脂」である「マレイン酸変性ポリオレフィン」、「一般式(I)で表される部分構造を有するヒンダードアミン化合物」である「下記一般式(II)で表される化合物」は、それぞれ本件発明1の2つのポリオレフィン層の間に存在する(中間)層が含有する「ポリオレフィン樹脂」、「下記式(1)で表されるヒンダードアミン化合物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、材料である組成物の限りにおいて、
「下記式(1)または下記式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、
ポリオレフィン系樹脂とを含有する」組成物の点で一致し、以下の3点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、上記組成物が、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、上記組成物を含む(中間)層を有する農業用フィルムの発明であるのに対し、甲1発明は、組成物の発明であって、層の構造及び農業用フィルムに関する特定がない点。
<相違点2>
本件発明1は、上記組成物において、さらに特定のハイドロタルサイトを含むことを特定するのに対し、甲1発明にはその特定がない点。
<相違点3>
本件発明1は、上記組成物において、オレフィン樹脂100重量部に対するヒンダードアミン化合物の含有量が0.29?2重量部であるのに対し、甲1発明では、酸性基を有する合成樹脂を含む樹脂成分100質量部に対し、 ヒンダードアミン化合物0.005?30質量部が配合されるとの特定であって、特定が異なる点。

上記相違点1について検討する。
甲1の摘記事項(イ)には、確かに、「これらの低塩基性ヒンダードアミン化合物は、酸による抽出に優れた耐性を示すので、特許文献5などにポリオレフィン製農業用フィルムへの活用が提案されている。」との記載はあるものの、この記載は、甲1発明である組成物の用途を直接示すものではない。また、その他の甲1の記載をみても、甲1発明の組成物を、二つのポリオレフィン層の間の中間層を構成した農業用フィルムとすることについて、記載ないし示唆はない。
そして、甲3には、特定の保温剤をポリオレフィン系樹脂に配合した農業用フィルムの記載はあるが(摘示事項(ア-3)ないし(ウ-3))、多層の農業用フィルムについての記載はなく、また、甲4及び5には、農業用フィルムにつき、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、ポリオレフィン系樹脂に由来した中間層を有する多層ポリオレフィン農業用フィルムについての記載があるが(摘示事項(ア-4)ないし(オ-4)、(ア-5)ないし(エ-5))、甲1発明の組成物を、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に有する農業用フィルムに用いることは甲3ないし5に何ら記載されておらず、それを動機付ける記載も見当たらない。
そうすると、甲1発明において、甲3ないし5に記載された事項に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、他の相違点2及び3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲3ないし5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることはできたものではないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、甲1発明に対して、農業用フィルムに関して、本件発明1と同様の相違点1ないし3を有しているから、これらの相違点については、上記アと同様の判断がされる。
したがって、本件発明2、3は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲3ないし5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。

ウ 小括
よって、本件発明1ないし3に係る特許に対してなされた、甲1を主引例とする申立理由1(申立理由1ア)は、その理由がない。

(2) 甲2を主引用例とした場合(申立理由1イ)
ア 本件発明1について
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の外層及び内層は、ポリエチレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により形成されており、これらの層は、本件発明1の「二つのポリオレフィン系樹脂層」に相当する。
甲2発明の中間層を構成する熱可塑性樹脂組成物の「ポリエチレン樹脂」は、本件発明1の二つのポリオレフィン系樹脂層の間に存在する層が含有する「ポリオレフィン系樹脂」に相当し、同様に、甲2発明の「ヒンダードアミン系化合物」は、ヒンダードアミン化合物との限りにおいて、本件発明1の「ヒンダードアミン化合物」に相当する。そして、甲2発明の中間層の熱可塑性樹脂組成物において「ヒンダードアミン化合物」は0.7重量%、「ポリエチレン樹脂」は85.6重量%の割合で含まれているから、ポリエチレン樹脂100重量部に換算して計算すると、ヒンダードアミン化合物は約0.817重量部で含まれることとなり、この場合に、本件発明1のポリオレフィン樹脂に対するヒンダードアミン化合物の配合量と一部重複する。
甲2発明の中間層のハイドロタルサイトは、本件発明1の式(4)の化合物がハイドロタルサイト系の化合物に対応するものであることを考慮すれば(本件明細書【0050】)、ハイドロタルサイトの限りにおいて、これに相当する。
また、甲2発明の「農業用積層フィルム」は、外層、中間層、内層のいずれもポリエチレン樹脂をベースとするものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系農業用フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、
ハイドロタルサイトと、ヒンダードアミン化合物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有し、前記ヒンダードアミン化合物の含有量は、前記層のポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.29?2重量部であるポリオレフィン系農業用フィルム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点4>
ヒンダードアミン化合物について、本件発明1は、式(1)又は式(3)により特定されるものであるのに対し、甲2発明ではそのような特定はない点。
<相違点5>
本件発明1の(中間)層には、式(4)で表され、かつ、式中の(1-x)/xが2.5以上である化合物が含まれることが特定されるのに対し、甲2発明では、ハイドロタルサイトは含まれるものの、その構造について前記のような特定がない点。

上記相違点4、5について検討する。
本件特許明細書の記載(【0005】、【0049】、実施例、比較例)をみると、本件発明1は、式(1)又は式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、式(4)で表され、式中の(1-x)/xが2.5以上である特定の化合物とを組み合わせることにより、酸性雨や農薬による酸性条件下に長期間さらされた後の破断強度の低下と、高温高湿下における変色を抑制されたポリオレフィン系農業用フィルムを提供するとの課題を解決し、その効果を発揮するものであることが理解できる。
一方、甲2には、農業用フィルムに配合できる光安定剤であるヒンダードアミン化合物が、商品名等により具体的に挙げられているものの(摘記事項(エ-2))、これらの化合物が本件発明1の式(1)又は(3)の化合物であることの記載はないし、実施例で用いたヒンダードアミン化合物の種類も不明である。また、甲2には、農業用フィルムに配合される無機フィラーの例としてハイドロタルサイトが挙げられ、そのハイドロタルサイトの具体例として、天然ハイドロタルサイトやスタピエ-ス-P、DHT-4A、マグクリアが挙げられるものの(摘記事項(オー2))、これらが、式(4)の化合物であることの記載はなく、実施例で用いたハイドロタルサイトの種類も不明であるし、本件発明1の特定の化合物(例えば、本件発明1の実施例で用いたマグクリア)を用いることについての示唆はない。
そして、他の甲号証の記載をみても(1(1)ア?キ)、ポリオレフィン系農業用フィルムにおける酸性雨や農薬による酸性条件下に長期間さらされた後の破断強度の低下と、高温高湿下における変色を抑制のために、本件発明1における特定のヒンダードアミン化合物と特定のハイドロタルサイトとを組み合わせることについて、記載ないし示唆はない。
そうすると、甲2発明において、相違点4、5に係る本件発明1の構成とすることは、甲1及び甲3ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
なお、この点について、申立人は、甲2にハイドロタルサイトとしてマグクリアも記載されており、甲3に記載の周知事項を加味すれば、当業者に容易になし得たことであるし(特許異議申立書第27頁「9)周知事項1」)、また、ヒンダードアミンについても、甲2には記載がないが、甲1、6、7に記載があり、アデカスタブLA-81等を配合することは周知技術である旨主張している(特許異議申立書第27?28頁「11)周知技術3」)。
しかしながら、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに、特定のハイドロタルサイト、あるいは特定のヒンダードアミン化合物を配合することがそれぞれ知られているとしても、これらを組み合わせて用いる動機付けは、各甲号証をみても記載も示唆もないから、甲2発明において、これらを組み合わせて用いることは、当業者であっても容易なし得たものではない。
(なお、申立書には甲7の公知日について何ら説明されておらず、本件特許出願の優先日時点で公知の情報であったかは不明である。)
そして、本件発明1は、その目的とする課題を達成し、格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3ないし7に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2項に該当するものではなく、取り消されるべきものではない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、甲1発明に対して、農業用フィルムに関して、本件発明1と同様の相違点4、5を有しているから、これらの相違点については、上記アと同様の判断がされる。
したがって、本件発明2、3は、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではく、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

ウ 小括
よって、本件発明1ないし3に係る特許についてなされた、甲2を主引例とする申立理由1(申立理由1イ)は、その理由がない。


2 申立理由2について(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))
(1) 申立人の主張
申立人は、以下のア、イについて、主張をしている。

ア 本件発明1において、式(1)及び式(3)で表される2種類のヒンダードアミン化合物を限定しているものの、実施例で用いられているのは、本件特許明細書の段落【0033】に記載された化合物No.1の構造を有する、アデカスタブLA-81の1種のみであり、【0034】ないし【0042】に記載された化合物は、構造がそれぞれ異なるので、アデカスタブLA-81と同等の効果を発揮するとは限らない。
よって、本件発明1ないし3は、実施例におけるアデカスタブLA-81の1種の使用によって、他の式(1)及び(3)の化合物の全範囲についてまで、明細書に記載した発明とすることはできない(いわゆる、サポート要件を満たさない。)。

イ 本件発明1において、赤外線吸収剤として、式(4)で表される化合物については、必須構成要件とするものの、実施例では式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物を併用して相当量配合されており、式(4)で表される化合物のみを配合した実施例はない。
よって、式(4)で表される化合物のみについて言及されている本件発明1ないし3は、明細書に記載された範囲を超えており、いわゆるサポート要件を満たさない。

(2) 判断
ア 主張アについて
式(1)及び(3)で表されるヒンダードアミン化合物は、甲6に記載があるように、カーボネート構造を有し、かつ、特定のヒンダードアミン構造を有する低塩基性ヒンダードアミン化合物するものであって、オレフィン樹脂等の合成樹脂に長期の安定効果を付与し、酸性雨や薬品による抽出に優れた耐性を示すものとして知られているものである(甲6第2頁下から7行?第5頁第2行、第8頁下から第4行?第12頁化合物No.13、実施例、請求の範囲)。
そして、本件明細書の実施例で用いられたアデカスタブLA-81とその他の化合物とは、特徴となるカーボネート構造及びヒンダードアミン構造を共に有しており、また、甲6において、これらの化合物は同等あるいは類似の効果を奏するものとして認識されているものでもあるから、式(1)及び(3)の化合物がアデカスタブLA-81と上記特徴となる構造以外の構造で多少異なることは、本件発明の課題を解決できないとすべき十分な根拠にはならない。
また、申立人も、各化合物の構造の違い以外に、アデカスタブLA-81と他の化合物が同等の効果を発揮しない(サポート要件を満たさない)とする具体的な理由を述べていない。
よって、上記アの申立人の主張は採用できない。

イ 主張イについて
実施例において、式(5)で表される化合物も併用されているものの、実施例では式(5)で表される化合物(MB3に含まれるB3)は一定量で配合されている。一方、特定の式(4)で表される化合物については、(1-x)/xを2.5以上とする効果、配合量の違いによる効果、また、特定のヒンダードアミン化合物との組合せの効果が実施例(例えば、実施例1と実施例4の比較)から理解でき、これらの効果の理解において、式(5)の化合物による寄与は見当たらない。
一般に、組成物において成分を配合する以上、何らかの効果を有するものではあるが、式(5)で表される化合物の配合がなければ、式(4)で表される化合物の奏する効果が全く発揮されないとする根拠も今のところ見当たらず、また、実施例から特定の式(4)で表される化合物の効果における寄与・有用性が明らかであるから、上記イの申立人の主張は採用できない。

(3) 小括
よって、特許法第36条第6項第1号に対する申立理由2には理由がない。


3 申立理由3について(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))
(1) 申立人の主張
申立人は、以下のア、イについて主張している。

ア 本件の請求項1ないし3において、式(4)で表される化合物の配合量について、何ら言及されていない。そして、本件特許明細書の段落【0054】(合議体注:特許異議申立書第30頁17行の【0053】は誤記と思われる。)の記載は、式(5)及び式(4)で表される赤外線吸収剤の合計量を意味しており、式(4)で表される化合物の単独の配合量について明確に言及されていない。したがって、式(4)で表される化合物の配合量がない請求項1ないし3に係る発明は、発明の構成が不明瞭である。

イ 式(4)で表される化合物単独で所定効果を得られるのか、式(5)で表される化合物を併用しないと所定の効果が得られないのか明らかではないから、式(4)で表わされる化合物のみについて言及されている請求項1ないし3に係る発明は、所定の効果を得る上で、発明の構成が不明瞭である。

(2) 判断
ア 主張アについて
まず、組成物に係る発明において、構成する成分(化合物)の配合量が特定されていないことのみを根拠に、当該発明が直ちに明確でないとはいえない。
そして、式(4)で表される化合物の配合量がなくても、本件の請求項1ないし3に係る農業用フィルムの発明において、構成に係る記載が不明瞭な点は見当たらず、発明の記載自体は明瞭である。
また、本件特許明明細書の段落【0053】ないし【0054】には、
「【0053】
本発明においては、式(4)で表される赤外線吸収剤を単独で用いてもよいし、式(5)で表される赤外線吸収剤を単独で用いてもよい。あるいは、両者を併用しても良い。
【0054】
本発明の農業用フィルムの中間層に含有される式(4)で表される化合物および式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる赤外線吸収剤の含有量は、5?20重量%が好ましく、9?16重量%がより好ましい(ただし、中間層の重量を100重量%とする)。5重量%以上であると、酸性雨や農薬による酸性条件下に長期間さらされた後の破断強度の低下、および高温高湿下における変色の抑制の点で好ましく、20重量%以下であると、透明性の点で好ましい。」
との記載がある。この記載をみれば、式(4)で表される化合物の配合量は、単独の場合には、「5?20重量%が好ましく、9?16重量%がより好ましい(ただし、中間層の重量を100重量%とする)」との量になり、また、式(5)と併用する場合であっても、合計した量が上記と同じ「5?20重量%が好ましく、9?16重量%がより好ましい(ただし、中間層の重量を100重量%とする)」となるから、その範囲から式(5)の量を除けばよいので、前記範囲内のものであることは明らかである。
さらに、本件の請求項1ないし3に係る発明は、農業用フィルム用途に係るものであって、それに配合する赤外線吸収剤の量はその分野の技術常識を考慮すれば、請求項に配合量の記載がなくともある程度の範囲となることは理解できるし、本件特許明細書中に上記のような記載もあるから、請求項1ないし3の記載が不明瞭なことはない。

イ 主張イについて
式(4)で表される化合物のみにより所定効果が得られるかどうかわらかないからといって、本件発明1ないし3が不明瞭という理由の根拠にはならない。なお、式(4)で表される化合物の効果については、上記2(2)で述べたとおりである。
したがって、上記イの申立人の主張は採用できない。

(3) 小括
よって、特許法第36条第6項第2号に対する申立理由3には理由がない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-21 
出願番号 特願2013-150284(P2013-150284)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A01G)
P 1 651・ 537- Y (A01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 岡崎 美穂
海老原 えい子
登録日 2017-10-27 
登録番号 特許第6230839号(P6230839)
権利者 サンテーラ株式会社 住友化学株式会社
発明の名称 ポリオレフィン系農業用フィルムおよび農園芸用施設  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  
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