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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01P
管理番号 1343914
異議申立番号 異議2018-700465  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-06 
確定日 2018-08-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第6244373号発明「車両の制動設備を制御する制御機器、回転数センサ装置、制動設備、これらを備えた車両、及びこれらを用いて実行可能な回転数検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6244373号の請求項1-15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6244373号の請求項1-15に係る特許についての出願は、平成25年10月31日(パリ条約に基づく優先権主張 2013年1月8日、独国)に国際出願され、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、平成30年6月6日に、特許異議申立人 クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファー ルツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
特許第6244373号の請求項1-15に係る発明(以下、「本件発明1-15」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特許請求の範囲の請求項1、5、8、9、10の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
車両(1)の車輪(2)で回転数を測定する能動的な回転数センサ(18)から提供されるデジタル信号(30)を受信して処理する受信回路(36)を備えた車両(1)の制動設備(4)を制御する制御機器(14)であって、このデジタル信号が、回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)と、多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成る、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である実際の空隙値(32)とを含む制御機器において、
実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する比較回路(44)と、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、事前警戒情報(64)を生成して提供する情報回路(52)とを備えていることを特徴とする制御機器。」

「 【請求項5】
a)回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転を能動的に走査して、磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)と、多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成る、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である実際の空隙値(32)とを含むデジタル信号(30)を提供する能動的な回転数センサ(18)と、
b)車両(1)の制動設備(4)を制御する制御機器(14)であって、このデジタル信号(30)を受信して処理する受信回路(36)を備えた制御機器(14)と、
c)回転数センサ(18)からのデジタル信号(30)を制御機器(14)に伝送するためのデータインタフェース(16)と、
を備えた回転数センサ装置において、
制御機器(14)が、請求項1から4までのいずれか一つの通り構成されていることを特徴とする回転数センサ装置。」

「【請求項8】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の制御機器(14)又は請求項5から7までのいずれか一つに記載の回転数センサ装置(20)を備えた、車両(1)用の制動設備。
【請求項9】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の制御機器(14)、請求項5から7までのいずれか一つに記載の回転数センサ装置(20)又は請求項8に記載の制動設備(4)を備えた車両、特に、自動車。
【請求項10】
能動的な回転数センサ(18)が、回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転を走査し、
この回転数センサ(18)が、データインタフェース(16)を介して、磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)と、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である、多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成る実際の空隙値(32)とを含むデジタル信号(30)を制御機器(14)に提供し、
この制御機器(14)の受信回路(36)が、このデジタル信号(30)を受信して処理する、
車両(1)の車輪(2)で回転数を検知する方法において、
空隙監視のために、この制御機器(14)の比較回路(44)が、実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定し、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、制御機器(14)の情報回路(52)が事前警戒情報(64)を生成して提供することを特徴とする方法。」

なお、本件発明2-4、6-7、11-15の概要は、次のとおりである。
本件発明2-4は、本件発明1を減縮した発明である。
本件発明6-7は、本件発明5を減縮した発明である。
本件発明11-15は、本件発明10を減縮した発明である。

第3 申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として特開平10-70524号公報(以下、「刊行物1」という。)、特表2004-525469号公報(以下、「刊行物2」という。)、特表平10-510629号公報(以下、「刊行物3」という。)、特表2002-507751号公報(以下、「刊行物4」という。)を提出し、本件発明1-4、10-15は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2-4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明5-9は、刊行物1に記載された発明、刊行物2及び刊行物4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、請求項1-15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1-15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

第4 刊行物の記載
1 刊行物1について
刊行物1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は情報の重ね合わせ方法に関するものである。」

「【0025】
【発明の実施の形態】本発明を以下に図面に示す実施態様により詳細に説明する。
【0026】図1は自動車におけるブレーキライニング摩耗および車輪回転速度を測定するための装置を全体ブロック回路図で示している。
【0027】ここで、自動車の車輪ユニットが符号11a-dで示されている。これらの車輪ユニットには、とくにその回転速度(車輪回転速度)が測定されるべき車輪および各車輪ユニットの付属ブレーキ装置(摩擦ブレーキ)が付属している。各車輪に付属する回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサが符号102a-dで示され、これらのうちの本発明に関連する部分が図2ないし図3に詳細に示されている。本発明に関連するこれらのセンサの構造を理解するために、冒頭記載の従来技術を詳細に説明する。
【0028】回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dの出力信号は制御装置103と結合され、ここで伝送ラインが105a-dで示されている。次に、制御装置103において、伝送ライン105a-dを介して伝送されたすべての車輪ユニットに対する情報が中央で評価される。ブレーキライニングの状態が制御装置103の評価結果としてライン18a-dを介して指示器110に供給される。このために、一般に、1つまたは複数のブレーキライニングがある摩耗度に到達したときドライバに対応情報が与えられるように設計がなされている。
【0029】完全を期すために、制御装置103から操作可能な個々の車輪ユニット11a-dのブレーキ装置がさらに符号14a-dで示されている。
【0030】図2および図3は種々の実施態様の一例を1つの車輪ユニットについて示している。
【0031】ここで、図2は能動回転速度センサとブレーキライニング摩耗測定との簡単な組合せを示す。冒頭記載のように、「能動」回転速度センサ102として、既知のホール回転速度センサまたは既知の磁気抵抗回転速度センサを設けてもよい。これに関して、図2の略図から、センサ要素1021が磁気受動タイプの離散形ロータ101を走査していることがわかる。走査されたロータ101の離散数の関数として、センサ要素1021により2つの電流レベルi1およびi2が設定される。これが図2において2つの電源1022および1023の投入ないし遮断により示されている。
【0032】回転速度センサ102はライン105ないし差込コネクタ1021aおよびbと1031aおよびbを介して制御装置103と結合されている。入力回路(増幅器)1036は入力抵抗Rを用いて回転速度センサ102の電流レベルに対応する電圧値
ULow = R*i1
UHigh = R*(i1+i2)
を検出する。車輪回転速度がほぼ一定のときの典型的な時間線図が図4の下側の信号列301に示されている。この信号の周波数を評価することにより、希望の車輪回転速度に到達することができる。」

「【0035】図3aは、回転速度を測定すべき車両車輪の前記の歯付リムに対するホールセンサないし磁気抵抗センサの過大な間隔の測定装置を示す。センサ要素1021として、図2において同じ符号で示されているセンサ要素が使用される。要素1021は一般に、抵抗を典型的なリング形状に配置した既知のホイートストンブリッジとして形成されている。図示されていない歯付リム(101、図2)の個々のセグメントがそばを通過することによりこのホイートストンブリッジ内にブリッジ電圧UBが発生され、ブリッジ電圧UBは比較器(K1)5031および(K2)5101に供給される。比較器K1は車輪回転速度の評価のために使用される。比較器(K2)5101においては、ブリッジ電圧が比較的高いしきい値UHと比較されるようにブリッジ電圧の他の評価が行われる。これら2つのしきい値比較の背景については、以下に図3bにより説明する。
【0036】図3bはブリッジ電圧の典型的な信号時間線図を示す。そばを通過する歯付リムの個々のセグメントに応じてそれぞれ、ブリッジ電圧は周期的に上昇し、周期的に低下する。歯付リムとホイートストンブリッジ1021との間の間隔、空隙が一定のままである場合、ブリッジ電圧は一定の振幅を有している。しかしながら、この間隔が大きくなった場合、ブリッジ電圧の振幅は低下する。この例が図3bに示されている。
【0037】比較器(K1)5031における第1のしきい値比較はブリッジ電圧信号を比較的小さいしきい値たとえば40mVと比較する。このとき、比較器5031は、出力側に、図3bの下部信号線図K1に示す電源i1およびi2(図2参照)に対する操作信号を供給する。信号K1は空隙が増大したときにおいても車輪回転速度を示している。比較器(K2)5101は、この比較器においてたとえば60mVの比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査する。歯付リムとホイートストンブリッジとの間の間隔、空隙が十分に小さい場合、ブリッジ電圧信号の振幅は比較器5101のしきい値の上側に存在する。比較器5101の出力信号は、図3bにおける下部信号線図K2に示すように、正常の場合には信号K1に対する信号K2の時間遅れを示している。しかしながら、比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出される。
【0038】信号K2が現れないことは過大空隙検出ユニット5102において検出され、信号K2が現れないことにより信号LSが発生される。
【0039】要約すると、空隙の検出のために、能動センサたとえばホールセンサまたは磁気抵抗センサにより車輪の回転速度信号が測定されるということができる。センサはホイートストンブリッジを含み、ホイートストンブリッジは変化する磁界により離調される。この離調から回転速度に対する信号が得られる。離調の値は両方のハーフブリッジ間の磁界差の大きさに対し一定の比率を有している。磁界差はとくにセンサと磁気車との間の間隔の関数である。ブリッジ離調の値を評価することにより、センサと磁気車との間の空隙を検出することができる。この評価は比較器(K2)5101により行われ、比較器5101は通常の有効信号の比較器5031(UH=40mV)より大きいヒステリシス(UH=60mV)を有している。空隙が小さい場合には両方の比較器が作動するが、空隙が大きい場合には有効信号の比較器5031のみが作動する。このようにして、車輪回転速度情報を失うことなく、大きい空隙に対する予備警告装置が形成される。この情報は、たとえば自動車の製作におけるコンベヤ最終検査として、修理工場においてまたは走行中に利用することができる。」

「【符号の説明】
・・・(中略)・・・
101 離散形ロータ(歯付リム、磁気車、伝送車)」(第9頁第15欄第6-11行)

したがって、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「各車輪に、回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dが付属し(段落【0027】より。以下、同様。)、回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dの出力信号は制御装置103と結合され、制御装置103において、伝送ライン105a-dを介して伝送されたすべての車輪ユニットに対する情報が中央で評価され(【0028】)、個々の車輪ユニット11a-dのブレーキ装置14a-dは、制御装置103から操作可能(【0029】)であり、
能動回転速度センサ102として、既知のホール回転速度センサまたは既知の磁気抵抗回転速度センサを設けてもよく(【0031】)、
空隙の検出のために、能動センサたとえばホールセンサまたは磁気抵抗センサにより車輪の回転速度信号が測定されるということができ、センサはホイートストンブリッジを含み、ホイートストンブリッジは変化する磁界により離調され(【0039】)、
回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リム(【0035】)とホイートストンブリッジ1021との間の間隔、空隙が大きくなった場合、ブリッジ電圧の振幅は低下し(【0036】)、
比較器(K2)5101は、この比較器において、比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査し、比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出され(【0037】)、信号K2が現れないことにより信号LSが発生され(【0038】)、
このようにして、大きい空隙に対する予備警告装置が形成され、この情報は、たとえば自動車の製作におけるコンベヤ最終検査として、修理工場においてまたは走行中に利用することができる(【0039】)、
制御装置103(【0028】)。」

2 刊行物2について
刊行物2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0005】
本発明の課題は、所定の走行状況において追加情報の一部を省略する必要のない、車輪回転速度センサを備えた装置を提供することである。」

「【0009】
本発明による装置は、車両において、いわゆるアクティブセンサ、すなわち運転のために電気的エネルギーを供給しなければならないセンサを使用して、車輪回転速度情報と変化する追加情報を同時に伝送する働きをする。このセンサは好ましくは自動車、特にABS、ESP等のような電子制御式ブレーキシステムを備えた自動車で使用される。本発明によるセンサは、例えば角度センサまたは変位センサにおけるように、追加情報を伝送する角度または位置シフトを測定するためにも使用可能である。
【0010】
本発明では、所定の状態判断基準および/または制御判断基準に従って、追加情報の符号化フォーマットおよび/またはビッド長さが切り換えられ、それによって、走行速度(車輪回転速度)と共に変化する伝送可能な追加情報のチャンネルの数を、制御システムの一時的な情報要求に適合せることができる。
【0011】
切り換えは本発明による1つまたは複数の次の有利な判断基準に依存して行われる。この場合、複数の判断基準を同時に許容してもよい。
A)自動車の選択された走行状態、特に車輪回転速度センサによって導き出すことができる、車輪回転速度、車両の停止、回転角度の大きさまたはエンコーダホイールのパルス の数、回転方向のような走行状態、
B)特にセンサの自動切り換えに関連してあるいは制御機器によって開始される切り換えに関連して、タイマーで制御され、例えば時間パターン(例えばタイマーおよび/また はカレンダー)によって生じ、
C)制御装置のよる切り換え要求、
D)例えば追加情報のビットまたはビット組合せの変更時の、追加情報のための1つまたは複数の伝送チャンネルの値変化
E)特に車両の横方向加速の際の動的変形を受けて空隙変化が限界値を上回る際に、例えば空隙変化または磁気欠陥によって生じる、車輪回転速度センサの磁界強さの変更、
F)連続的に伝送すべきデータ語または語列が車輪回転速度センサの入力部に供給されるときあるいは信号周波数またはボーレイトの変化の際、状態ビットが変化するときに、車輪回転速度センサの1つまたは複数の状態信号入力の信号変化、
G)例えば初期モードを制御モードに切り換えるときあるいは供給電圧を下回ることを認識するときの、車輪回転速度センサの内部の電気的動作モードの変更。
【0012】
従って、前述の判断基準により、車輪回転速度センサの伝送モードを切り換えることができる。最も簡単な場合、例えば2つ以上の伝送モードが設けられている。この伝送モードは追加情報をその都度の信号チャンネルに割り当てることによってのみ互いに区別することができる。
【0013】
信号チャンネルを介して、例えば空隙内の場の強さのようなデジタル符号化されたアナログ量を伝送するとき、標準分解能よりも高い分解能を有する他のモードに切り換えた後で、アナログ測定値を伝送すると合目的である。」

「【0015】
本発明の他の有利な実施の形態は図に基づく次の説明から明らかになる。
【0016】
次に、冒頭で既に述べ国際出願WO98/09173(P8775)の作用について、図1に基づいて説明する。自動車ブレーキ装置を制御するためのセンサモジュール1と電子制御装置9(ECU)は、二線式線路7,8を介して互いに接続されている。この線路はセンサモジュール1のデータ伝送と給電を同時に行う。制御装置の端子K1 ,K2 に供給される動作電圧VB は、線路7,8を経て信号電流Is を生じる。この信号電流は変調器5と電源4によって伝送すべき情報に応じて変調される。車輪回転速度を伝送するために、磁化されたリング状の永久磁石エンコーダ3が車輪に連結されている。このエンコーダはセンサ要素2によって走査される。磁気電気式トランスデューサ2によって検出された磁界の極方向の交替の際に、電流パルスが発生する。それによって、所定の回転速度の際に、周期的な方形波信号(図2)が発生する。この信号の場合、パルスの間隔は回転速度に依存する。車輪回転速度パルスの間のパルスポーズにおいて、車輪回転速度(追加情報)の他に1つまたは複数の付加的な情報を伝送するための他の電流変調が行われる。
【0017】
エンコーダ3は鋼製の歯車であってもよいし、磁化されたパルスホイールであってもよい。このパルスホイールは空隙を介してセンサ1内の本来の磁気電気式トランスデューサ2(例えば磁気抵抗ブリッジ)に磁気的に結合されている。
【0018】
追加情報を重ね合わせるために、センサモジュール1は観察回路(オブザーバ回路)6を備えている。この観察回路は信号線路7,8に接続されている。観察回路6は線路7,8を経て情報信号を受け取り、この信号に依存して、追加端子K5 から供給された情報、パルスまたは信号の受け取りまたは処理について決定する。そのために、観察回路6は同様に変調器5と電源4に作用する。
【0019】
センサデータを制御装置に伝送するための公知のプロトコルは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19911774号公報(P9354)から明らかである。次に、この公知のプロトコルを図2に基づいて説明する。時間t0 内で、エンコーダ転移を示す信号パルスが振幅IH で発生する。時間t0 が経過した後で、時間t1 の間に電流IL >0が流れる。それに続いて、上記の追加信号がセンサ信号に変調される。この追加信号は好ましくは個々のビットの形でデジタル符号化されている。図示した例では、9ビットが伝送される。例えば“オン/オフ”、“ブレーキパッド摩耗/非摩耗”等のような状況ビット情報だけが伝送されるときには、9個の伝送チャンネルが供される。伝送される個々のビットはt2 ?t10と呼ばれる。個々の追加情報のパルスは、状態“1”であるか“0”であるかに応じて、振幅IM またはIL を有する。しかし、それ自体公知のマンチェスターコードに従ってデータを符号化することもでき、これは本発明では有利である。このマンチェスターコードでは、“1”と“0”が振幅によってではなく、パルスエッジの立ち上がりまたは立ち下がりによって区別される。
【0020】
既に述べたように、車輪回転速度パルスのポーズで伝達される情報は、異なる種類のものであってもよい。公知のごとく、各々のビットに、個々の状態情報を割り当てることができる。例えばt2 で示した位置における“1”は、最大許容空隙を上回っていることを示す。その際、車両産業では、所定の情報への個々のビットの割り当てを標準化し、例えば異なるメーカーの車輪センサを互いに交換できるようにすることが一般的である。今日の一般的な標準では、実際に例えば最大で9ビットに制限されて供される伝送範囲のうち、例えば5ビット(t2?t6)の第1の部分が個々の状況信号を伝送するために使用される。残りのビットt7 ?t10は、アナログ/デジタル変換された、4ビットの語長のアナログ量を伝送する働きをする。このアナログ量は例えばセンサ内で測定された空隙の磁界の強さである。このようなセンサは情報のために7つのチャンネルを有する。」

「【0027】
他の実施の形態では、追加情報の供されるすべてのビットを、1つのアナログ量に割り当てる動作モードが設けられている。この割り当てにより、アナログ量は高い分解能で制御装置に伝送される。これは特に、アナログ量が空隙内の磁界の相対的な強さであるときに重要である。変更された現在のアナログ量を絶えず伝送することにより、空隙の動的な変化を検出し、ブレーキコントローおよび/またはドライビングダイナミクスコントロールにおいて走行状態を決定するために使用可能である。実際の空隙の観察は、車輪に作用する横方向加速度または車輪軸受け温度を示すものとして使用可能である。更に、本発明による車輪センサを、それ自体公知のサイドウォールねじれセンサとして使用することができる(Side-Wall-Torsion-Sensor、SWT)。このセンサの場合、空気タイヤのサイドウォール上または中に取付けられた磁気的な符号化部が、タイヤねじれおよび/または横方向加速度を測定するために、車輪回転速度センサによって走査される。」

したがって、刊行物2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「自動車ブレーキ装置を制御するためのセンサモジュール1と電子制御装置9(ECU)であって、車輪回転速度を伝送するために、磁化されたリング状の永久磁石エンコーダ3が車輪に連結され、所定の回転速度の際に、周期的な方形波信号が発生し、この信号のパルスの間隔は回転速度に依存し、車輪回転速度パルスの間のパルスポーズにおいて、車輪回転速度(追加情報)の他に1つまたは複数の付加的な情報を伝送し(段落【0016】より。以下、同様。)、
エンコーダ3は、磁化されたパルスホイールであって、空隙を介してセンサ1内の本来の磁気電気式トランスデューサ2(例えば磁気抵抗ブリッジ)に磁気的に結合され(【0017】)、
車輪回転速度パルスのポーズで伝達される情報は、最大で9ビットに制限されて供され(【0020】)、伝送される個々のビットはt2 ?t10と呼ばれ(【0019】)、例えば5ビット(t2?t6)の第1の部分が個々の状況信号を伝送するために使用され、例えばt2 で示した位置における“1”は、最大許容空隙を上回っていることを示し、残りのビットt7 ?t10は、アナログ/デジタル変換された、4ビットの語長のアナログ量を伝送する働きをし、このアナログ量は例えばセンサ内で測定された空隙の磁界の強さであり(【0020】)、
次の E)を含む、1つまたは複数の判断基準に依存して(【0011】)、車輪回転速度センサの伝送モードを切り換えることができ(【0012】)、
E)特に車両の横方向加速の際の動的変形を受けて空隙変化が限界値を上回る際に、例えば空隙変化または磁気欠陥によって生じる、車輪回転速度センサの磁界強さの変更(【0011】)、
例えば空隙内の場の強さのようなデジタル符号化されたアナログ量を伝送するとき、標準分解能よりも高い分解能を有する他のモードに切り換えた後で、アナログ測定値を伝送すると合目的であり(【0013】)、
現在のアナログ量を絶えず伝送することにより、空隙の動的な変化を検出し、ブレーキコントローおよび/またはドライビングダイナミクスコントロールにおいて走行状態を決定するために使用可能である(【0027】)、
自動車ブレーキ装置を制御するためのセンサモジュール1と電子制御装置9(ECU)(【0016】)。」

3 刊行物3について
刊行物3には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。なお、空白行は行数に算入していない。)。
ア 「回転速度信号およびその他の情報をできるだけ簡単かつ確実に伝送することが本発明の課題である。」(第8頁第17-18行)

イ 「制御装置に供給された信号を評価するために、評価手段内に少なくとも1つのしきい値比較が設けられ、このしきい値比較により電流値または対応の電圧値が少なくとも1つのしきい値と比較されるように設計してもよい。過大な空隙および/または過大なブレーキライニング摩耗が存在するときに比較結果の関数として指示手段が作動されてもよい。」(第12頁第10-14行)

ウ 「図11は図5の拡張を示す。図5は車輪回転速度信号およびブレーキライニング摩耗信号の制御ユニット103への伝送を対象としているが、ここで図11に示す拡張により、回転方向信号DR、空隙信号LSおよびブレーキライニング摩耗信号BBVの伝送を説明する。このために、ユニット5022(図5)の出力信号として、過大なブレーキライニング摩耗を示すブレーキライニング摩耗信号BBVがカウンタ5023′ないし5024′に供給される。空隙検出5102の出力信号LSはカウンタ5023″および5024″に供給され、一方回転方向検出5201の出力信号DRは入力信号としてカウンタ5023′′′ないし5024′′′に供給される。3つのカウンタは比較器5031(図5)の出力信号により同期化される。車輪回転速度との同期も行われる。
図11に示した3つのカウンタは、それらが8分割、4分割および2分割されていることにおいて異なっている。3つのカウンタはすべてその出力側が論理ORゲート1101に接続されている。追加の電源i3(図5)はORゲート1101の出力により操作される。図11に示した回路の機能を説明するために、まず図13を説明する。」(第25頁第26行-第26頁第12行)

エ 「図13の上部(信号列1)に、通常すなわち追加の情報の重ね合わせなしにセンサ要素の出力5052(図5)に存在する車輪回転速度信号が示されている。ここで、たとえば図5に示すように、過大なブレーキライニング摩耗が検出された場合(ユニット5022)、信号BBVは、カウンタないし除算器5023′および5024′を介して車輪回転速度信号のそれぞれ8番目のハイレベルを上昇させる。これが図13において2番目の信号線図に示されている。過大な空隙が存在する場合、対応するカウンタないし除算器によりそれぞれ4番目のハイレベルが上昇され、これが図13の3番目の信号線図に示されている。同様に検出された逆方向走行が車輪回転速度信号のそれぞれ2番目のハイレベルを上昇させる(図13の4番目の信号列)。車輪回転速度信号(図13における信号列1)ないし修正車輪回転速度信号(図13の信号列2、3および4)がセンサ要素502の出力5052(図5)に存在する。この信号は制御ユニット103に供給され、制御ユニット103において図12に示す評価が行われる。」(第26頁第13-25行)

オ 「入力プラグ1031bを介して供給された入力信号は、測定抵抗Rを介して対応する電圧値に変換される。第1の比較器K10において、信号は比較的低いしきい値SW1と比較される。このしきい値は、図13に示すように、そのしきい値が正常な(ハイレベル上昇のない)回転速度信号(i1+i2)のハイレベルないし対応する電圧値により超えられるように低く選択される。このとき出力Aに、本発明によるハイレベルの上昇とは無関係に車輪回転速度信号が存在し、この車輪回転速度信号は周波数評価fにおいて車輪回転速度Nに変換することができる。同時に電圧値が比較器K11に供給され、比較器K11において電圧信号が比較的高いしきい値SW2と比較される。図13に示すように、この高いしきい値SW2は、本発明による上昇されたハイレベルのみが超えることができる。情報(逆方向走行、過大な空隙、過大なブレーキライニング摩耗)の存在に応じてそれぞれ、比較器K11の出力に、図13に示す信号2B(2番目の信号線図の評価)、3B(3番目の信号線図の評価)および4B(4番目の信号線図の評価)が得られる。信号線図Bは評価ユニット1039において評価される。」(第26頁第26行-第27頁第11行)

カ 「一方、信号3Bが発生した場合、同様に周波数比較により空隙の存在を検出することが可能である。」(第28頁第5-6行)

したがって、引用文献3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

「回転方向信号DR、空隙信号LSおよびブレーキライニング摩耗信号BBVが伝送される制御ユニット103であって(「ウ」より)、
通常すなわち追加の情報の重ね合わせなしにセンサ要素の出力5052に存在する車輪回転速度信号は、過大なブレーキライニング摩耗が検出された場合(ユニット5022)、車輪回転速度信号のそれぞれ8番目のハイレベルを上昇させ(2番目の信号線図)、過大な空隙が存在する場合、それぞれ4番目のハイレベルが上昇され(3番目の信号線図)、同様に検出された逆方向走行が車輪回転速度信号のそれぞれ2番目のハイレベルを上昇させ(4番目の信号列)、車輪回転速度信号(信号列1)ないし修正車輪回転速度信号(信号列2、3および4)がセンサ要素502の出力5052に存在し、この信号は制御ユニット103に供給され(「エ」より)、
供給された入力信号は、測定抵抗Rを介して対応する電圧値に変換され、電圧値が比較器K11に供給され、比較器K11において電圧信号が比較的高いしきい値SW2と比較され、この高いしきい値SW2は、上昇されたハイレベルのみが超えることができ、情報(逆方向走行、過大な空隙、過大なブレーキライニング摩耗)の存在に応じてそれぞれ、比較器K11の出力に、信号2B(2番目の信号線図の評価)、3B(3番目の信号線図の評価)および4B(4番目の信号線図の評価)が得られ、信号線図Bは評価ユニット1039において評価され(「オ」より)、
信号3Bが発生した場合、空隙の存在を検出することが可能である(「カ」より)、
制御ユニット103(「ウ」より)。」

4 刊行物4について
刊行物4には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、センサ信号がアクティブセンサ内の、運動によって付勢されるエンコーダによって発生し、第1の装置によってセンサ信号が追加情報と共に、評価装置に伝送可能な出力信号に変換される、運動を検出するためのセンサ装置に関する。」

「【0004】
そこで、本発明の根底をなす課題は、センサ信号の障害が起きる前に適時に、対応するステータス信号を発生するかまたは他の対策を講じることができるようにするために、アクティブセンサとエンーダの間の空隙の大きさ、特に空隙の許容されない変化を検出することができる、冒頭に述べた種類のセンサ装置を提供することである。」

「【0005】
この課題は冒頭に述べたセンサ装置において、請求項1に従い、第2の装置が設けられ、この第2の装置によって、アクティブセンサとエンコーダの間の空隙に依存する信号電圧が検出され、追加情報として伝送するために第1の装置に供給されることによって解決される。
【0006】
この解決策は特に、第1の装置を用いて2進センサ信号をパルス信号に変換することと関連して、空隙の大きさの比較的に簡単な評価、決定またはチェックを可能にする。これはセンサ装置の組み込みの後で定期的な保守整備のときに行うことができる。」

「【0011】
センサ装置は図1に従ってアクティブセンサ1を備えている。このアクティブセンサでは、運動によって付勢されるエンコーダEによってセンサ信号が発生させられる。このセンサ信号は第1の装置2,3,4,5によって複数の追加情報と共に評価装置(図示していない)に伝送可能な出力信号5cに変換される。
【0012】
エンコーダEはパルス発生器を備えている。このパルス発生器は測定すべき運動、一般的には回転運動を行う。冒頭で述べたように、パルス発生器は例えば鋼製歯車または永久磁石構造体を備え、この鋼製歯車または永久磁石構造体の運動によって、センサ内にある測定値ピックアップM(ホール素子または磁気抵抗ブリッジ)内で、適当な信号電圧が発生させられる。この信号電圧は公知のごとく、センサ内部の増幅回路/トリガ回路(図示していない)によって、一定の2つの振幅値を有するセンサ信号60(図2)に変換される。
【0013】
追加情報を検出するために、アクティブセンサ1は第2の装置1aと第3の装置1bを備えている。この第2の装置によって、アクティブセンサ1とエンコーダEの間の空隙dに依存する信号電圧が測定される。第3の装置はセンサ温度を測定するために役立つ。
【0014】
センサ1の出力は信号処理装置2の入力に接続されている。更に、シフトレジスタ3が設けられている。このシフトレジスタの入力は信号処置装置2の出力に接している。信号処理装置2とシフトレジスタ3に接続された状態ジェネレータ4は、後続の電源5に作用する。この電源の出力5cには、伝送すべきパルス信号が供給される。
【0015】
測定された信号電圧の大きさはエンコーダに対するそのときの空隙dの大きさに依存する。この信号電圧はアナログ値として信号処理装置2に伝送される。そこで、アナログ信号は3ビッド符号化によってデジタル化され、ビット列40(図5?7)に変換される。
【0016】
更に、測定された信号電圧は信号処理装置内で最小値と比較され、最小値よりも小さい場合には、第1の1ビットステータス信号(ビット0)が発生する。」(なお、段落【0015】の「3ビッド符号化」は「3ビット符号化」の誤記と認められる。)

「【0027】
図3に示した実施の形態の場合、この第1のビット列は次のように割り当てられたビット0?4を含んでいる。
【0028】
ビット0は許容空隙限界値を上回ることを示す状態信号である。この空隙限界値は、測定値ピックアップにおける信号電圧の測定と、それから生じる、エンコーダのパルス発生器と測定値ピックアップの間の空隙の場の強さとから導き出される。ここで説明した、車輪回転速度を検出するためのセンサ装置の好ましい用途において、アクティブセンサ1の測定値ピックアップ1a(磁気抵抗ブリッジまたはホール素子)が後続配置の上述のトリガ回路のヒステリシスの2倍を下回る信号電圧を発生するときに、許容空隙限界値を上回ると考えられる。
【0029】
ビット1は付加的な要素のために残してある。
【0030】
ビット2は例えば温度のような付加的な測定量の、車輪回転速度に依存する限界値を上回ることを示すステータス信号である。この付加的な測定量は第3の装置1bによって測定される。
【0031】
ビット3はビット4によって示された回転方向の妥当性を確認するためのステータス信号である。
【0032】
ビット4は固定された基準回転方向に対するパルス発生器の回転方向のためのステータス信号である。
【0033】
これらのビットに続く第2のビット列40はその全体が数値を符号化するために役立つので、ビット(n+1)?(p-1)によってアナログ信号の測定値を伝送することができる。このアナログ信号はエンコーダEのパルス発生器とアクティブセンサ1の間の(磁気的な)インターフェースから得られる。」

「【0035】
好ましい用途の場合、第2のビット列は3つのビット5?7を備えている。このビットは空隙の場の強さを示す数値の3ビット符号化のために役立つ。この数値はアクティブセンサの測定値ピックアップによって検出される。この場合、ビット5,6,7は上昇する重み(最下位のビット?最上位のビット)を有する。この数値は特に、センサの測定値ピックアップ1aの信号電圧である。」

よって、刊行物4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「センサ信号の障害が起きる前に適時に、対応するステータス信号を発生するかまたは他の対策を講じることができるようにするために、アクティブセンサとエンーダの間の空隙の大きさ、特に空隙の許容されない変化を検出することができるセンサ装置を提供することを課題とし(段落【0004】より。以下、同様。)、追加情報を検出するために、アクティブセンサ1とエンコーダEの間の空隙dに依存する信号電圧が測定され(【0013】)、測定された信号電圧の大きさはエンコーダに対するそのときの空隙dの大きさに依存し、この信号電圧はアナログ値として信号処理装置2に伝送され、そこで、アナログ信号は3ビット符号化によってデジタル化され、ビット列40に変換され(【0015】)、第1のビット列はビット0?4を含み(【0027】)、測定された信号電圧は信号処理装置内で最小値と比較され、最小値よりも小さい場合には、第1の1ビットステータス信号(ビット0)が発生し(【0016】)、ビット0は許容空隙限界値を上回ることを示す状態信号であり(【0028】)、
これらのビットに続く第2のビット列40(【0033】)は、3つのビット5?7を備え、このビットは空隙の場の強さを示す数値の3ビット符号化のために役立つ(【0035】)、
センサ装置(【0004】)」

第5 本件発明1-15の進歩性について
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「車輪」は、「自動車」の「車輪」であるから、引用発明1における「各車輪」の「能動回転速度センサ102」が、本件発明1における「車両(1)の車輪(2)で回転数を測定する能動的な回転数センサ(18)」に相当する。

イ 引用発明1における「制御装置103」には「回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dの出力信号」が「結合され」、「伝送ライン105a-dを介して伝送されたすべての車輪ユニットに対する情報が中央で評価され」るから、引用発明1における「制御装置103」が、「回転速度センサ」からの「信号」を受信して処理する受信回路を備えていることは明らかである。
そして、引用発明1における「制御装置103」は、「個々の車輪ユニット11a-dのブレーキ装置14a-d」を「操作可能であ」るから、上記「ア」を踏まえると、引用発明1における「制御装置103」と、本件発明1における「車両(1)の車輪(2)で回転数を測定する能動的な回転数センサ(18)から提供されるデジタル信号(30)を受信して処理する受信回路(36)を備えた車両(1)の制動設備(4)を制御する制御機器(14)」とは、「車両(1)の車輪(2)で回転数を測定する能動的な回転数センサ(18)から提供される信号(30)を受信して処理する受信回路(36)を備えた車両(1)の制動設備(4)を制御する制御機器(14)」の点で共通する。

ウ 刊行物1の図2の「101 離散形ロータ(歯付リム)」のそれぞれの歯に「N」、「S」が交互に記載されていること、及び刊行物1の【符号の説明】に「101 離散形ロータ(歯付リム、磁気車、伝送車)」と記載されていることから、引用発明1における「回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リム」が磁化されていることは明らかである。
よって、引用発明1における「回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リム」が、本件発明1における「車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)」に相当する。

エ (ア)引用発明1における「センサ」は「ホイートストンブリッジを含」むものである。すると、引用発明1における、「回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リム」と「ホイートストンブリッジ1021との間」に「間隔、空隙」があることは、「センサ」が「車両車輪の歯付リム」と「間隔、空隙」を隔てて配置されていることを意味する。

(イ)そして、引用発明1では、「回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dの出力信号は制御装置103と結合され」ているから、引用発明1における「回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リム」の「車輪回転速度」に関する「情報」が、「伝送ライン105a-dを介して」「制御装置103」に「伝送」されていることは明らかである。

(ウ)よって、引用発明1における、「センサ」と「間隔、空隙」を隔てて配置された「車両車輪の歯付リム」の「車輪回転速度」に関する「情報」と、本件発明1における「このデジタル信号が、回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)」を「含む」こととは、「この信号が、回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)」を「含む」点で共通する。

オ 引用発明1では、「センサ」と「車両車輪の歯付リム」との「間隔、空隙」が「大きくなった場合、ブリッジ電圧の振幅は低下し」、「比較器(K2)5101は、この比較器において、比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査し、比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出され、信号K2が現れないことにより信号LSが発生され」ている。
そして、引用発明1では、「制御装置103において、伝送ライン105a-dを介して伝送されたすべての車輪ユニットに対する情報が中央で評価される」のであるから、上記「信号LS」が「制御装置103」に「伝送され」、「制御装置103」が「大きい空隙に対する予備警告」を行なう回路を備えていることは明らかである。
よって、
(ア)引用発明1における「ブリッジ電圧の振幅」と、本件発明1における「磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である実際の空隙値(32)」とは、「磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)より変化する値」の点で共通する。

(イ)引用発明1において、「比較器(K2)5101」において、「比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査し、比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出され、信号K2が現れないことにより信号LSが発生され」、「信号LS」が「制御装置103」に「伝送され」ることと、本願発明1における「このデジタル信号」が、「多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成る、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である実際の空隙値(32)とを含む」こととは、「この信号」が、「磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する情報とを含む」点で共通する。

(ウ)引用発明1において、上記「信号LS」が「制御装置103」に「伝送され」、「制御装置103」が「大きい空隙に対する予備警告」を行なう回路と、本件発明1における「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する比較回路(44)と、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、事前警戒情報(64)を生成して提供する情報回路(52)」とは、「空隙に関して、事前警戒情報を提供する情報回路(52)」の点で共通する。

カ 引用発明1における「制御装置103」が、本件発明1における「制御機器」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「車両(1)の車輪(2)で回転数を測定する能動的な回転数センサ(18)から提供される信号(30)を受信して処理する受信回路(36)を備えた車両(1)の制動設備(4)を制御する制御機器(14)であって、この信号が、回転数センサ(18)の前に空隙(24)を隔てて配置された、車輪(2)と一緒に回転する磁気ホイール(22)の回転数に関する回転数情報(34)と、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する情報とを含む制御機器において、
空隙に関して、事前警戒情報を提供する情報回路(52)を備えていることを特徴とする制御機器。」

(相違点1)
本件発明1では、回転数センサ(18)から制御機器(14)に提供される信号が「デジタル信号(30)」であって、「このデジタル信号」が、「多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成る、磁気ホイール(22)と回転数センサ(18)の間のその時々の空隙(24)に関する測度である実際の空隙値(32)」とを含むのに対し、
引用発明1において回転速度センサから制御装置103へ伝送される信号に含まれる信号は、「信号LS」であって、これの信号は、「多段ステップによりデジタル化された複数ビットから成るデジタル信号」ではなく、「回転速度を測定すべき車両車輪の歯付リムとホイートストンブリッジ1021との間の間隔、空隙が大きくなった場合、ブリッジ電圧の振幅は低下し、比較器(K2)5101は、この比較器において、比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査し、比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出され」たことにより「発生する」信号である点。

(相違点2)
本件発明1では、「制御機器において」、「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する比較回路(44)と、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、事前警戒情報(64)を生成して提供する情報回路(52)」とを備えているのに対し、
引用発明1では、「制御機器」に伝送される「信号LS」により、「予備警告」がなされていることは明らかであるものの、「ブリッジ電圧信号の振幅」と「比較的高いしきい値との比較」が、(「制御装置103」ではなく)、「回転速度センサ」で行われており、しかも、比較も、「ブリッジ電圧信号の振幅」と「比較的高いしきい値」との比較であって、本件発明1のように「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する」比較ではない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 刊行物2について
刊行物2には、「自動車ブレーキ装置を制御するためのセンサモジュール1」から「電子制御装置9(ECU)」に「伝送」される「車輪回転速度パルスの間のパルスポーズにおいて」、「最大で9ビット」の「付加的な情報を伝送し」、「伝送される個々のビットはt2 ?t10と呼ばれ」「例えばt2 で示した位置における“1”は、最大許容空隙を上回っていることを示し、残りのビットt7 ?t10は、アナログ/デジタル変換された、4ビットの語長のアナログ量を伝送する働きをし、このアナログ量は例えばセンサ内で測定された空隙の磁界の強さであ」ることが示されている。
しかし、刊行物2に記載された「アナログ/デジタル変換された、4ビットの語長」の「センサ内で測定された空隙の磁界の強さ」は、「車両の横方向加速の際の動的変形」による「空隙の動的な変化を検出し、ブレーキコントローおよび/またはドライビングダイナミクスコントロールにおいて走行状態を決定するために使用」されるものであって、上記相違点2に係る本件発明1のように、「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して」、「実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、事前警戒情報(64)を生成」するための情報ではない。

イ 刊行物3について
刊行物3には、「制御ユニット103」に「空隙信号LS」が「供給」され、「供給された入力信号は、測定抵抗Rを介して対応する電圧値に変換され、電圧値が比較器K11に供給され、比較器K11において電圧信号が比較的高いしきい値SW2と比較され」ているが、該比較は、(例えば、「空隙信号LS」のビットが「1」であって「過大な空隙が存在し」、車輪回転速度信号における「それぞれ4番目のハイレベルが上昇」しているか否かを評価する前処理として)車輪回転速度信号が「ハイレベル」であるか否かの識別を行っているに過ぎず、上記相違点2に係る本件発明1の構成を開示も示唆もしていない。

ウ 刊行物4について
刊行物4には、「センサ信号の障害が起きる前に適時に、対応するステータス信号を発生するかまたは他の対策を講じることができるようにするために、アクティブセンサとエンーダの間の空隙の大きさ、特に空隙の許容されない変化を検出することができるセンサ装置を提供する」との課題と、「アクティブセンサ1とエンコーダEの間の空隙dに依存する信号電圧が測定され、測定された信号電圧の大きさはエンコーダに対するそのときの空隙dの大きさに依存し、この信号電圧はアナログ値として信号処理装置2に伝送され、そこで、アナログ信号は3ビッド符号化によってデジタル化され、ビット列40に変換され」、「第1のビット列はビット0?4を含み」、「第2のビット列40は、3つのビット5?7を備え、このビットは空隙の場の強さを示す数値の3ビット符号化のために役立つ」ことが記載されている。
しかし、「空隙の許容されない変化を検出する」との課題のみから、「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する比較回路(44)と、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、事前警戒情報(64)を生成して提供する情報回路(52)」という、上記相違点2に係る本件発明1の具体的構成が導き出されるものでもない。

(3)まとめ
以上のとおり、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、刊行物2-4に記載も示唆もされていないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び刊行物2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本件発明2-4について
本件発明2-4は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、引用発明1及び刊行物2-4に記載された技術的事項から、当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件発明2-4は、引用発明1及び刊行物2-4に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることがではきたものではない。

3.本件発明5について
本件発明5は、「制御機器(14)が、請求項1から4までのいずれか一つの通り構成されていることを特徴とする回転数センサ装置」についての発明であるから、本件発明1-4の構成を備えた発明である。
よって、本件発明1-4についての上記判断(但し、刊行物3について言及した箇所を除く)と同様の理由により、本件発明5は、引用発明1、刊行物2及び刊行物4に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.本件発明6-7について
本件発明6-7は、本件発明5を減縮した発明であるから、上記本件発明5についての判断と同様の理由により、引用発明1、刊行物2及び刊行物4に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.本件発明8について
本件発明8は、「請求項1から4までのいずれか一つに記載の制御機器(14)又は請求項5から7までのいずれか一つに記載の回転数センサ装置(20)を備えた、車両(1)用の制動設備」の発明であるから、本件発明1-7の構成を備えた発明である。
よって、本件発明8は、上記本件発明1-7についての判断と同様の理由(但し、刊行物3について言及した箇所を除く)により、引用発明1、刊行物2及び刊行物4に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.本件発明9について
本件発明9は、「請求項1から4までのいずれか一つに記載の制御機器(14)、請求項5から7までのいずれか一つに記載の回転数センサ装置(20)又は請求項8に記載の制動設備(4)を備えた車両、特に、自動車。」の発明であるから、本件発明1-8の構成を備えた発明である。
よって、本件発明9は、上記本件発明1-8についての判断と同様の理由(但し、刊行物3について言及した箇所を除く)により、引用発明1、刊行物2及び刊行物4に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7.本件発明10について
本件発明10は、本件発明1に係る「制御機器」の発明を、「方法」として表現したものであって、上記相違点2に係る本件発明1の構成と同様の、「空隙監視のために、この制御機器(14)の比較回路(44)が、実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定し、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回ることを比較回路(44)が決定した場合に、制御機器(14)の情報回路(52)が事前警戒情報(64)を生成して提供する」構成を備えた発明である。
よって、本件発明10は、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、引用発明1及び刊行物2-4に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

8.本件発明11-15について
本件発明11-15は、本件発明10を減縮した発明であるから、上記本件発明10についての判断と同様の理由により、引用発明1及び刊行物2-4に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 特許異議申立人の主張について
1.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、「本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項を適用することによって容易に想到し得るものである。」とし、次のように主張している。
なお、「甲第1号証」ないし「甲第4号証」は、それぞれ上記「刊行物1」ないし「刊行物4」に対応するものである。

(1)甲第1号証に記載された発明、及び本件発明1との一致点、相違点について(異議申立書第13頁第第22行-第15頁第5行、第16頁第19行-第17頁第8行。なお、空白行は行数に算入しない。以下、同様。)
特許異議申立人は、次の「ア」、「イ」の点は、甲第1号証に記載されているから、本件発明1との一致点であって、相違点ではないと主張している。
ア 甲第1号証に記載された発明において、「制御機器」が「受信する」「回転数センサから提供される信号」には、「磁気ホイールと回転数センサの間のその時々の空隙に関する測度である実際の空隙値」が含まれている。

イ 甲第1号証に記載された発明における「制御機器」は、「実際の空隙値を目標空隙値と比較して、実際の空隙値が目標空隙値を上回るかを決定する比較回路と、実際の空隙値が目標空隙値を上回ることを比較回路が決定した場合に、事前警戒情報を生成して提供する情報回路」を備えている。

(2)上記相違点2(「第5」「1.」「(1)」参照。)に係る本件発明1の構成について(異議申立書第17頁第16-26行)
特許異議申立人は、甲第3号証第12頁第10-14行(「第4」「3」「イ」に摘記した箇所)の記載を根拠に、「実際の空隙値を何らかのしきい値と比較して警報等を出すことは、甲第1号証以外に甲第3号証にも記載されているとおり周知技術である。そして、実際の空隙値が目標空隙値を所定の許容値以上上回るかを決定することは、「目標空隙値+所定の許容値」を「しきい値」と置き換えれば、上記周知技術と何ら変わるところはない。さらに、本件の段落0010には、「有利な変化形態では、この所定の許容値は0であり、」とも記載されていることから明らかなように、所定の許容値に有利な作用効果が認められるものでもない。
また、このような比較を、回転数センサ側で行うか、制御機器側で行うかは、単なる設計事項に過ぎないし、甲第3号証には、制御機器に供給された信号を評価するために、評価手段内に少なくとも1つのしきい値比較を設けることが記載されている。」と述べている。

2.当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明、及び本件発明1との一致点、相違点について
ア 甲第1号証には、次のとおり記載されている。
(ア) 「歯付リムとホイートストンブリッジ1021との間の間隔、空隙が一定のままである場合、ブリッジ電圧は一定の振幅を有している。しかしながら、この間隔が大きくなった場合、ブリッジ電圧の振幅は低下する。」(【0036】)
(イ)「比較器(K2)5101は、この比較器においてたとえば60mVの比較的高いしきい値が設定されることによりブリッジ電圧信号の振幅を検査する。」、「比較信号K2が現れてこない場合、ブリッジ電圧信号の振幅は低下し、これにより過大な空隙が検出される。」( 【0037】)
(ウ)「回転速度センサおよびブレーキライニング摩耗センサ102a-dの出力信号は制御装置103と結合され、ここで伝送ラインが105a-dで示されている。次に、制御装置103において、伝送ライン105a-dを介して伝送されたすべての車輪ユニットに対する情報が中央で評価される。」(【0028】)
(エ)「信号K2が現れないことは過大空隙検出ユニット5102において検出され、信号K2が現れないことにより信号LSが発生される。」(【0038】)
(オ)「ブリッジ離調の値を評価することにより、センサと磁気車との間の空隙を検出することができる。この評価は比較器(K2)5101により行われ、比較器5101は通常の有効信号の比較器5031(UH=40mV)より大きいヒステリシス(UH=60mV)を有している。空隙が小さい場合には両方の比較器が作動するが、空隙が大きい場合には有効信号の比較器5031のみが作動する。このようにして、車輪回転速度情報を失うことなく、大きい空隙に対する予備警告装置が形成される。この情報は、たとえば自動車の製作におけるコンベヤ最終検査として、修理工場においてまたは走行中に利用することができる。」(【0039】)

イ 以上より、甲第1号証には、「回転速度センサ」において、「車両車輪の歯付リムに対するホールセンサないし磁気抵抗センサの間隔」が「過大」であるか否かを測定し、「過大」である場合に、「信号LSが発生され」、「伝送ライン105a-dを介して」「制御装置103」に「伝送され」、「この情報」は、「大きい空隙に対する予備警告」として「たとえば自動車の製作におけるコンベヤ最終検査として、修理工場においてまたは走行中に利用することができる。」ことが開示されているに過ぎない。

ウ したがって、甲第1号証に記載された発明についての、特許異議申立人の上記「1」「(1)」「ア」、「イ」の主張は、刊行物1の記載に基づくものではないから、採用することはできない。
よって、これらを前提としてなされた、本件発明1と甲第1号証に記載された発明との一致点、相違点についての主張も採用できない。

(2)上記相違点2(「第5」「1.」「(1)」参照。)に係る本件発明1の構成について
ア 甲第3号証の記載について
特許異議申立人の引用する、甲第3号証第12頁第10-14行(「第4」「3」「イ」に摘記した箇所)の記載は、「センサ要素502の出力5052(図5)」から「制御ユニット103に供給され」た「車輪回転速度信号」における、「ハイレベル」の出現を、「制御ユニット103」内の「比較器K11において」「比較的高いしきい値SW2と比較」することで検出し、「ハイレベル」の出現パターンから、「情報(逆方向走行、過大な空隙、過大なブレーキライニング摩耗)の存在」、つまり、「センサ要素502」において「過大なブレーキライニング摩耗が検出された」か否か、「過大な空隙が存在する」ことが検出されたか否か、あるいは「逆方向走行」であることが検出されたか否かを、「制御ユニット103」が評価することを要約して述べた記載である。
したがって、甲第3号証には、「実際の空隙値を何らかのしきい値と比較して警報等を出すこと」は記載されていない。

イ 有利な作用効果について
本件発明1のように、「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する」場合には「目標空隙値」と「許容値」とを別々に設定できることになるから、例えば本件明細書の段落【0020】に「有利な実施構成では、制御機器は、特に、回転数センサの正しいと検知された取付に対応して、その時々の実際の空隙値を目標空隙値として規定する初期化回路と、この目標空隙値を保存するメモリ回路とを備えている。この初期化回路のお蔭で、製造時に、或いは製造ラインのライン終端での診断に対応して、目標空隙値を規定でき、このメモリ回路のお蔭で、特に、データメモリに保存できる。従って、この比較回路は、その後、正しいと検知された目標空隙値に対して相対的な比較を実施する。」(下線は、強調のため、当審で付加した。)と記載されているとおり、製造誤差等に基づいて、製造された回転数センサにおける空隙値がばらついたとしても、「許容値」を変更することなく、個々の製品における実際の空隙値を検知し、「目標空隙値」としてすれば足りることになる。
これに対し、「しきい値」と比較する場合には、空隙値がばらつくことに対し、「しきい値」をどのように設定すれば良いかを検討することが必要になる。
したがって、「目標空隙値+所定の許容値」を「しきい値」と置き換えることは技術的に意味のあることであるから、「「目標空隙値+所定の許容値」を「しきい値」と置き換えれば、上記周知技術と何ら変わるところはない。」とする特許異議申立人の主張は、「置き換え」ることの技術的意義を見落としており、採用できない。

ウ 本件明細書の段落【0010】の記載について
本件明細書の段落【0010】における「有利な変化形態では、この所定の許容値は0であり、その結果、目標空隙値からの実際の空隙値の検知された如何なる偏差も事前警戒情報を生成させる。しかし、それに代わる変化形態では、許容値は0と異なる値であり、その結果、事前警戒情報を生成させること無く、目標空隙値からの実際の空隙値の僅かな偏差が許容される。」との記載は、許容値が0でも、0と異なる値でもよいこと、つまり、許容値は、当業者が本件発明1を実施するにあたり、適宜決定すべきことを示しているに過ぎず、該記載があるからといって、上記「イ」で述べた本件発明1における有利な作用効果が否定されることにはならない。

エ 比較を行う箇所について
特許異議申立人は、「このような比較を、回転数センサで行うか、制御機器側で行うかは、単なる設計的事項に過ぎない」と主張しているが、具体的根拠は何ら示されていない。
また、甲第3号証の制御ユニット内で行われている「しきい値比較」は、上記「ア」で述べとおりの技術内容であって、「実際の空隙値(32)を目標空隙値(60)と比較して、実際の空隙値(32)が目標空隙値(60)を所定の許容値(62)以上上回るかを決定する」ための比較ではない。

3 まとめ
以上のとおり、特許異議申立人の上記主張は、何れも理由がなく、採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-21 
出願番号 特願2015-551131(P2015-551131)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森 雅之  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
中村 説志
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6244373号(P6244373)
権利者 ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
発明の名称 車両の制動設備を制御する制御機器、回転数センサ装置、制動設備、これらを備えた車両、及びこれらを用いて実行可能な回転数検出方法  
代理人 篠原 淳司  
代理人 中村 真介  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 永島 秀郎  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 江崎 光史  
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