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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1343921
異議申立番号 異議2018-700355  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-27 
確定日 2018-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6224286号発明「ゴマ含有トッピング剤、米飯及び麺類の喫食性、風味及び見映えの改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6224286号の請求項1?16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6224286号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成29年4月13日に特許出願され、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ(特許公報掲載日:平成29年11月1日)、その後、その特許に対し平成30年4月27日に特許異議申立人角田朗(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明16」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、
前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、95:5?5:95であり、
トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、10質量%以上90質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、30質量%以上100質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物は、厚さが0.025mm以上0.6mm以下の範囲であり、扁平状である
ことを特徴とするゴマ含有トッピング剤。
【請求項2】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、
前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、70:30?20:80であり、
トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、10質量%以上90質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、30質量%以上100質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物は、厚さが0.025mm以上0.6mm以下の範囲であり、扁平状である
ことを特徴とするゴマ含有トッピング剤。
【請求項3】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、
前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、70:30?20:80であり、
トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、40質量%以上60質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、30質量%以上100質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物は、厚さが0.025mm以上0.6mm以下の範囲であり、扁平状である
ことを特徴とするゴマ含有トッピング剤。
【請求項4】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、
前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、70:30?20:80であり、
トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、40質量%以上60質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、40質量%以上90質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物は、厚さが0.025mm以上0.6mm以下の範囲であり、扁平状である
ことを特徴とするゴマ含有トッピング剤。
【請求項5】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、
前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、70:30?20:80であり、
トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、40質量%以上60質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、40質量%以上90質量%以下であり、
前記ゴマ破砕物は、厚さが0.075mm以上0.2mm以下の範囲であり、扁平状である
ことを特徴とするゴマ含有トッピング剤。
【請求項6】
前記全粒ゴマ及び前記ゴマ破砕物の水分含有量が1質量%以上7質量%以下であり、油脂含有量が40質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項7】
前記全粒ゴマ及び前記ゴマ破砕物の種類が、白ゴマ、金ゴマ及び黒ゴマから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項8】
前記全粒ゴマのサイズが、5.5メッシュパスかつ26メッシュオンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項9】
前記ゴマ破砕物は、油脂が外表面まで浸潤しているとともに、前記外表面に凹凸を有する形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項10】
前記全粒ゴマが炒りゴマであって、前記ゴマ破砕物が炒りゴマの破砕物である擂りゴマであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項11】
前記トッピング剤が米飯用トッピング剤であり、米飯に対する適用割合が0.94質量%以上8.6質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項12】
前記トッピング剤が、ふりかけ、おにぎりの素、赤飯の素またはお茶漬けの素であることを特徴とする請求項11に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項13】
前記トッピング剤が麺類用トッピング剤であり、茹で麺に対する適用割合が1.2質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項14】
前記トッピング剤が、うどん、そば、ひやむぎ、素麺及び冷やし中華から選択される1種の麺類用、麺料理類のスープ用、またはつけ汁用のトッピング剤であることを特徴とする請求項13に記載のゴマ含有トッピング剤。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤を、炊飯米にふりかけて混ぜるか、炊飯米に混ぜた後に成型するか、炊飯米の成型後にふりかけることによって、米飯の喫食性、風味及び見映えを改善する方法。
【請求項16】
請求項1乃至10、13乃至14のいずれか1項に記載のゴマ含有トッピング剤を、茹で麺にかけるか、麺料理類のスープ、またはつけ汁に混ぜることによって、麺類の喫食性、風味及び見映えを改善する方法。

第3 申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。

1.理由1
本件発明1?7,9?12,14?16は、本件特許の出願日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献(甲第1,6,9号証)に掲載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.理由2
本件発明1?16は、本件特許の出願日前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献(甲第1?18号証)に掲載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.理由3
本件発明6及び8について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
すなわち、本件明細書の実施例においては、ゴマの水分含有量及び油脂含有量について何ら検討されておらず、また、全粒ゴマのサイズに関して、本件明細書中に効果及びその作用機序等について一切の記載がないから、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

4.理由4
本件の請求項6及び8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
すなわち、本件明細書の記載では、ゴマの水分含有量及び油脂含有量並びに全粒ゴマのサイズについて、請求項6及び8記載の範囲内であるがゆえに、発明の課題が解決できると認識できない。

5.理由5
本件の請求項1?16の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
すなわち、本件明細書にはゴマ破砕物の厚さ及びゴマ破砕物が扁平状であることについて、明確な基準が示されておらず、不明確である。

[引用文献]
甲第1号証:「へんこ山田のぶろぐ 鯛飯?春の食卓に」
http://blog.henko.co.jp/2017/04/09/8809845/
甲第2号証:グラムのわかる写真館 鯛(たい)のカロリー
http://web.archive.org/web/20160721033715/http://www.eiyoukeisan.com/calorie/gramphoto/sakana/tai.html
甲第3号証:ピントル お米1合は何グラム?何カロリー?
http://web.archive.org/web/20161104152238/https://food-drink.pintoru.com/rice/one-go/
甲第4号証:AJINOMOTO PARK 食材の目安量
http://web.archive.org/web/20170403154427/http://park.ajinomoto.co.jp:80/recipe/corner/basic/ingredients_bunryou
甲第5号証:AJINOMOTO PARK 調味料の目安量
http://web.archive.org/web/20161230051723/http://park.ajinomoto.co.jp:80/recipe/corner/basic/chomiryo_bunryou
甲第6号証:「cookpad 梅・ごま・鮭・こんぶのおにぎり」
http://cookpad.com/recipe/2151884
甲第7号証:グラムのわかる写真館 梅干しのカロリー
http://web.archive.org/web/20170325124247/http://www.eiyoukeisan.com/calorie/gramphoto/tukemono/umebosi.html
甲第8号証:小名屋 切り身魚の専門店 商品カタログ
http://web.archive.org/web/20161205091626/http://www.onaya.co.jp/catalog/fish_a/001/index.html
甲第9号証:金ごま本舗BLOG シーチキンとピーマンとごまのペンネパスタ
http://kingoma.co.jp/mt3/archives/2246
甲第10号証:Amazon 金ごま本舗 金ごますりごま 60g×5袋
https://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E3%81%94%E3%81%BE%E6%9C%AC%E8%88%97-%E9%87%91%E3%81%94%E3%81%BE%E3%81%99%E3%82%8A%E3%81%94%E3%81%BE-60g%C3%975%E8%A2%8B/dp/B01D2M2JK6
甲第11号証:コトブキ物産オンラインショップ≪新春キャンペーン≫白和えの素4箱+すりごま3袋プレゼント
https://www.e-kotobuki.co.jp/detail.cgi?id=545
甲第12号証:ファミリーマート 煎りごまをブレンドした香るすりゴマ
http://www.family.co.jp/goods/processed_foods/3744154.html
甲第13号証:日本アクセス 新プライベートブランド「miwabi」から27商品が初登場
https://www.nippon-access.co.jp/news/2016/pdf/news160829.pdf
甲第14号証:ゴマ豆腐のテクスチャーに及ぼすゴマ材料の種類の影響,佐藤恵美子,日本調理科学会,日本調理科学会誌34巻(2001)3号p.295-300
甲第15号証:粉砕方法の異なる抹茶の物性と形状,沢村信一ほか3名,社団法人日本食品科学工学会,日本食品科学工学会誌57巻(2010)7号p.304-309
甲第16号証:特開2000-93115号公報
甲第17号証:特開2014-233251号公報
甲第18号証:特開2012-135294号公報

以下、「甲第1号証」等を、それぞれ番号に従って「甲1」等という。

第4 引用文献の記載
1.甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1)「鯛をほぐして、さわやかな青み(ねぎ、三つ葉など)と、香ばしいごまを混ぜ込んで、お茶碗によそうと、何杯でも食べられそうな美味しさ。」

(2)「◆鯛飯
【材料】
鯛 小1匹(23?25cmくらい、うろこと内臓、えらを取ったもの)
塩 約大さじ1、米2合(といでザルにあげておく)
昆布 5×10cmくらい、A【うす口醤油・酒 各大さじ1】
白炒りごま・白すりごま 各大さじ2、細ねぎ 3?4本」

(3)「【作り方】
1.米と昆布を水(2カップ弱)に浸けておく。
2.鯛は全体に塩をまぶして20分程おいて両面焼く。
(グリルや焼き網で。あるいは、フライパンにごま油を熱して、両面こ んがり焼く。頭が左になる方の面をきれいに焼く)
3.炊飯器、または土鍋に、1とAを入れて混ぜ、上に2の鯛をのせ、炊 く。
4.炊き上がると、鯛の骨をはずしながら身をほぐして混ぜ、仕上げに、 炒りごま、すりごま、細ネギの小口切りを混ぜる。」

以上の記載によれば、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「鯛飯に対して、白炒りごま、白すりごま、細ネギを混ぜる。」

2.甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
(1)「野菜類(50音順)
食品名 単位 重量
・・・
万能ねぎ 1本 7g
ピーマン 1個 35g
・・・」

3.甲5の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。
(1)「一般調味料(単位:g)
食品名 小さじ 大さじ カップ
(5ml) (15ml) (200ml)
・・・
しょうゆ 6 18 230
・・・
ごま 3 9 120
・・・
すりごま 2.5 7 100
・・・」

4.甲6の記載
甲6には、以下の事項が記載されている。
(1)「たっぷり入れたごまが香ばしく、梅の酸味、鮭の風味、昆布の塩味が相まって大人気のおにぎりです。」

(2)「材料
ご飯 400g
梅干し 2個
焼き鮭 小1切
白いりごま 大さじ4
白すりごま 大さじ4
細切り塩昆布 適宜
ごま油 少々
海苔 4切」

(3)「1
熱いご飯に、細かくたたいた梅干し、ほぐした鮭、ごま、塩昆布を混 ぜる。
2
手にごま油を少し取り、○に1を三角に(好みの形に)にぎる。
3
海苔で巻く。」

以上の記載によれば、甲6には以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「ご飯に対して、細かくたたいた梅干し、ほぐした鮭、白いりごま、白すりごま、塩昆布をまぜる。」

5.甲7の記載
甲7には、以下の事項が記載されている。
(1)「中位の梅干し、1個、12g。
可食部:10g カロリー:3kcal」

6.甲8の記載
甲8には、以下の事項が記載されている。
(1)「商品名 商品規格/一切重量
さけ照焼 3*/30g」

7.甲9の記載
甲9には、以下の事項が記載されている。
(1)「材料(1人分)
・ペンネパスタ100g
・シーチキン缶80g
・ピーマン1個
・追い鰹つゆ大さじ1
・金ごまいりごま小さじ1
・金ごますりごま大さじ3」

(2)「<作り方>
○に1 パスタを半分に折る。たくさんのお湯を沸かしてパスタを
入れて湯がく。
○に2 ピーマンを細い千切りにきる。パスタを茹でた後にピーマ
ンを入れて1分ほど火を入れて火を通す。
○に3 パスタは柔らかい方が良いので茹で時間よりも長くなって
良い。
○に4 パスタとピーマンをざるにあげる。
○に5 金胡麻すりごまを追い鰹つゆとシーチキン(缶の油も)を
ボウルにいれて混ぜ合わせる。
○に6 ボウルにパスタとピーマンを入れて全て混ぜ合わせる。
○に7 お皿に盛り上に金胡麻いりごまを乗せる。」

以上の記載によれば、甲9には以下の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されている。
「パスタに対して、ピーマン、金胡麻すりごま、追い鰹つゆ、シーチキンを混ぜ、金胡麻いりごまを乗せる。」

8.甲10の記載
甲10には、以下の事項が記載されている。
(1)「香り高い遠赤焙煎の金ごまいりごまを使い最もおいしいすりごまを求めてすり加減を究めました。ごま油がにじみでるほどよくすった超しっとりごまを極めました。」(商品包装)

9.甲11の記載
甲11には、以下の事項が記載されている。
(1)「寿の「すりごま」は、「むきごま」「いりごま」「すりごま」の3種を独自にブレンドし、しっとりと香り良く仕上げておりますので、「ふりかける」・「混ぜる」だけで料理が一層おいしくなります!!」

10.甲12の記載
甲12には、以下の事項が記載されている。
(1)「煎りごまをブレンドした
香るすりごま
甘みのあるすりごまと、直火焙煎した煎りごま。」(商品包装)

11.甲13の記載
甲13には、以下の事項が記載されている。
(1)「金ごまの香ばしさをより味わって頂けるように粒のごまをブレンドしました。」(商品包装)

12.甲14の記載
甲14には、以下の事項が記載されている。
(1)「粉末脱脂ゴマ(油を圧搾した後熱風約220℃の下で粉砕乾燥した脱脂ゴマ粕であり、粒度は50mesh以上60.3%,50?100mesh27.9%,100mesh以上12.1%)」

13.甲15の記載
甲15には、以下の事項が記載されている。
(1)「抹茶の粒度については、大西らと我々が報告している。大西らは、電子顕微鏡写真から200粒子について粒度を計測し、石臼やボールミルで粉砕した抹茶の粒度を数μmとしている^(1))。我々は、レーザー回析散乱光式粒度分布測定装置で測定し、同じく石臼やボールミルで粉砕した抹茶の中位径が15?20μmとした^(2))。この両者の違いは大西らの測定法が個数基準による表記であるのに対して、我々の測定法が体積基準であることによる。」

14.甲16の記載
甲16には、以下の事項が記載されている。
(1)「・・・好ましくは、黒ゴマ粉砕物全体の70重量%以上が粒径0.2mm?1.0mmである粉砕物であり、これを用いた場合には、特に黒ゴマ特有の色調が鮮明であり、かつ黒ゴマの風味が良好であり、しかも黒ゴマ特有の食感や具材感を有するゴマ含有液状調味料が得られる。」(段落【0005】)
(2)「本発明の黒ゴマの粉砕物を得る方法は、植物の種子などを粉砕できるものであればいずれでもよく、例えばハンマミル、ロ-ルミル、ロッドミルなどで粉砕して、所望の粒径に調製することが好適な方法として挙げられる。・・・」(段落【0006】)
(3)「・・・黒ゴマ粉砕物(黒ゴマの粉砕物全体の74重量%が粒径0.2mm?1.0mm)・・・」(段落【0017】)

15.甲17の記載
甲17には、以下の事項が記載されている。
(1)「ここで、上記のごまペーストは、通常、原料となるごま種子を精選、洗浄、焙煎した後、一般的に知られているコロイドミル、ロールミル、ボールミルなどと呼ばれる粉砕機を用いて擂り潰し加工をすることにより製造される(例えば、特許文献1参照)。そして、このような加工法によると、50%積算径(d50;メジアン径)が数百μm程度のごま粒子を含有するごまペーストが得られることが知られている(例えば、特許文献2(審決注:甲第16号証)参照)。・・・」(段落【0003】)

16.甲18の記載
甲18には、以下の事項が記載されている。
(1)「また、本発明で用いる焙煎ゴマ粉砕物は、焙煎ゴマを粉砕したものであり、粉砕処理方法は特に制限はなく、常法により、石臼、コロイドミル、フードカッター、マイルダー、ロール粉砕器等により粉砕処理されたものであればよい。・・・」(段落【0019】)
(2)「・・・本発明で用いる焙煎ゴマは、粉砕の程度を調整している。まず、焙煎ゴマをあまり粉砕しないで用いると良好なゴマの焙煎風味を乳化液状調味料に付与し難くなることから、本発明で用いる焙煎ゴマは、焙煎ゴマ全量に対して、14メッシュ(Tyler規格、目開き0.5mm)パスの焙煎ゴマの含有量が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。一方、必要以上に微細に粉砕された焙煎ゴマを用いると、乳化状調味料が懸濁し、乳化状調味料の全光線透過率が前記範囲を満たし難くなることから、本発明で用いる焙煎ゴマは、製品に含有する焙煎ゴマ全量に対して、32メッシュ(Tyler規格、目開き1.18mm)オンの焙煎ゴマの含有量が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。」(段落【0025】)
(3)「・・・製品に含有する焙煎ゴマ全量に対して、14メッシュパスの焙煎ゴマの含有量が93%であり、32メッシュオンの焙煎ゴマの含有量が76%であった。」(段落【0043】)

なお、上記記載中「・・・」は省略を示す。

第5 判断
事案に鑑み、まず理由5について検討する。

1.理由5(明確性)について
(1)ゴマ破砕物の厚さについて
申立人は、「本件明細書において、厚さの具体的な測定方法については一切の記載がなく、厚さを完全に均一にする方法等についても全く説明されていない。」(特許異議申立書45頁23?24行)と主張している。
しかし、請求項1では、ゴマ破砕物の厚さについて、0.025mm以上0.6mm以下の範囲と一定の幅を持って厚さを規定しており、本件発明は厚さを完全に均一にすることを意図しているとはいえないから、申立人の主張は失当である。
また、申立人は、「測定方法及び計算方法、たとえば個数基準か、体積基準か等によって、算出される数値は変動しうるものであり、測定方法等を明らかにしない限り、「厚さ」という文言の意味は明確とならない。」(特許異議申立書46頁16?18行)と主張している。
しかし、本件明細書の段落【0036】の記載からすれば、ゴマ破砕物の「扁平形状」は、ロールミル、ハンマーミルによる破砕処理により生じるものであるから、「厚さ」とは、当該ロールミル、ハンマーミルによる押圧作用により潰されたゴマの上面と下面の間の距離をいうものとして「厚さ」の文言の意味は明確である。
また、請求項1では、ゴマ破砕物の厚さについて、0.025mm以上0.6mm以下の範囲と上限と下限で20倍以上の範囲をもって、「厚さ」を規定しているのであるから、測定方法による誤差は許容され、申立人が主張するような厳格な測定方法の特定がないことをもって「厚さ」の文言の意味が不明確であるとはいえない。

(2)ゴマ破砕物の形状について
申立人は、「本件明細書中には、扁平形状の具体的な定義、若しくは判断基準について記載されていないため、当該文言は不明確である。」(特許異議申立書47頁3?4行)と主張している。
しかし、本件明細書の段落【0035】の記載からすれば、扁平形状とは、「薄く、平たい形状」であり、「薄く、平たい形状」とは、上面下面の大きさに比べて厚さが十分に薄い形状として、技術常識に照らして理解できるから、「扁平形状」の文言の意味が不明確であるとはいえない。
また、申立人は、「本件明細書の記載から第三者は破砕物が『略扁平状』か『扁平状』かを、区別することができない。」(特許異議申立書47頁13?15行)とも主張するが、両者を相対的に比較すれば、上面下面の大きさに対する厚さが相対的に厚い形状が「略扁平状」であり、厚さが相対的に薄い形状が「扁平状」であるとして区別することができるから、「扁平形状」の文言の意味が不明確であるとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件の請求項1?16の記載は明確でないとはいえず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないということはできない。

2.理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)甲1を主引例とする申立理由について
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「白炒りごま」、「白すりごま」及び「鯛飯」は、それぞれ本件発明1の「全粒ゴマ」、「ゴマ破砕物」及び「米飯」に相当する。
また、本件明細書の段落【0024】の記載によれば、本件発明1における「トッピング剤」とは、「食材にふりかけたり、ふりかけた後に食材に混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させたりして、食材に対して、具材の見映えや風味、調味料の風味を与えて、食材の嗜好性を高めたり、食品に味付けをすることを目的とした食品素材を総称する概念」であるから、甲1発明において、鯛飯に混ぜられる「白炒りごま、白すりごま、細ネギ」は、「米飯用のトッピング剤」であると共に、「ゴマ含有トッピング剤」にあたる。
そして、甲5によれば、ごま大さじ一杯は9gであり、すりごま大さじ一杯は7gであるから、甲1発明における、白炒りごま(全粒ゴマ)と白すりごま(ゴマ破砕物)との質量配合比は56:44である。
また、甲4によれば、万能ネギ(細ネギ)1本は7gであるから、白炒りごま、白すりごま、細ネギがトッピング剤を構成するとすれば、トッピング剤全量に対する白炒りごま(全粒ゴマ)と白すりごま(ゴマ破砕物)との合計含有量は、56質量%又は63質量%となる。
してみると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有する米飯用及び/又は麺類用のトッピング剤であって、前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との質量配合比が、95:5?5:95であり、トッピング剤全量に対する前記全粒ゴマと前記ゴマ破砕物との合計含有量が、10質量%以上90質量%以下であるゴマ含有トッピング剤。

【相違点】
1.本件発明1は、ゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合が、30質量%以上100質量%以下であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えているのか不明である点。
2.本件発明1は、ゴマ破砕物は、厚さが0.025mm以上0.6mm以下の範囲であり、扁平状であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えているのか不明である点。

以下、上記相違点について検討する。
相違点1について:
本件発明1に係るトッピング剤は、相違点1に係る構成を備えたゴマ破砕物と全粒ゴマを所定割合で含有することにより、付着剤あるいは結着剤を用いることなく、米飯や麺類に対して適用したときの喫食性、風味、見栄えを食感への影響なく改善するものであり(段落【0011】?【0016】参照。)、そのために、ゴマ破砕物の至適サイズ及び当該至適サイズのゴマ破砕物の含有割合を、評価試験3及び4(段落【0083】?【0098】参照。)により求め、相違点1に係る構成を採用するに至ったものである。
してみれば、相違点1は、全粒ゴマと共にトッピング剤を構成するゴマ破砕物の構成として、作用効果を伴った実質的な相違点と認められる。
また、甲14,16?18にはゴマ破砕物単独での構成として相違点1に係る数値範囲の開示があるが、本件発明1は、ゴマ破砕物と全粒ゴマを含有するトッピング剤におけるゴマ破砕物の数値範囲を、相違点1に係る数値範囲に限定することにより、付着剤あるいは結着剤を用いることなく、米飯や麺類に対して適用したときの喫食性、風味、見栄えを食感への影響なく改善するものであるから、ゴマ破砕物単独での構成として当該数値範囲に含まれるものが存在するとしても、これを甲1発明のゴマ粉砕物に採用する動機付けは存在しない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成を、甲14,16?18の記載に基いて、当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
なお、申立人は、「甲1発明は「香ばしいごまを混ぜ込んで、お茶碗によそうと、何杯でも食べられそうな美味しさ。」(甲1-1)と、香味の改善効果を有することが記載されている。食品用トッピング剤としてゴマを用いる際に、適用食品の喫食性、風味及び見栄えを良好なものにすることは当然であり、本件特許発明1(審決注:本件発明1に相当。)が甲1発明と比較して顕著な効果を有するとは考えられない。」(特許異議申立書33頁2?7行)と主張している。
しかし、本件発明1の喫食性、風味及び見栄えを良好なものにするという効果は、全粒ゴマにゴマ粉砕物を加えることにより米飯等への付着性を向上させたことによる効果であり、甲1発明の香味改善効果や一般的な適用食品の喫食性、風味及び見栄え向上という効果と同視することはできないから、当該主張は採用できない。

相違点2について:
本件発明1に係るトッピング剤は、相違点2に係る構成を備えたゴマ破砕物と全粒ゴマを所定割合で含有することにより、付着剤あるいは結着剤を用いることなく、米飯や麺類に対して適用したときの喫食性、風味、見栄えを食感への影響なく改善するものであり(段落【0011】?【0016】参照。)、そのために、ゴマ破砕物の至適形状及び厚さを、評価試験5(段落【0099】?【0112】参照。)により求め、相違点2に係る構成を採用するに至ったものである。
してみれば、相違点2は、全粒ゴマと共にトッピング剤を構成するゴマ破砕物の構成として、作用効果を伴った実質的な相違点と認められる。
また、本件発明1の相違点2に係る構成の「扁平状」とは、上記1.(2)で指摘したように、「薄く、平たい形状」である。そして、「厚さ」とは、上記1.(1)で指摘したように、当該ロールミル、ハンマーミルによる押圧作用により潰されたゴマの上面と下面の間の距離をいうものと認められる。
してみると、甲16?18にロールミルによる粉砕に係る記載があり、当該記載からゴマ破砕物が扁平状であることが導き出せるとしても、甲14,16?18には「厚さ」に着目してゴマ破砕物の寸法を特定する点については記載されていないから、本件発明1の相違点2に係る構成が、甲14,16?18に記載されているということはできず、当該構成を、甲14,16?18の記載に基いて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
以上のとおりであるから、相違点1及び2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

そして、請求項2は、請求項1の全粒ゴマとゴマ破砕物との質量配合比に係る数値範囲を限定したものであり、請求項3は、更にトッピング剤全量に対する全粒ゴマとゴマ破砕物との合計含有量に係る数値範囲を限定したものであり、請求項4は、更にゴマ破砕物が、14メッシュパス119メッシュオンのサイズ画分を含むとともに、当該サイズであるゴマ破砕物画分のゴマ破砕物全量に対する割合に係る数値範囲を限定したものであり、請求項5は、更にゴマ破砕物の厚さの数値範囲を限定したものであるから、本件発明2ないし5は、請求項1と同様の理由により、甲1発明と同一又は甲1発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
また、請求項6?12,15は、直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項1と同様の理由により、本件発明6,7,9?12,15が、甲1発明であるとはいえないし、また、本件発明6?12,15が、甲1発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

(2)甲6を主引例とする申立理由について
本件発明と甲6発明を対比すると、甲6発明の「白いりごま」、「白すりごま」及び「ご飯」は、それぞれ本件発明1の「全粒ゴマ」、「ゴマ破砕物」及び「米飯」に相当する。
また、本件明細書の段落【0024】の記載によれば、本件発明における「トッピング剤」とは、「食材にふりかけたり、ふりかけた後に食材に混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させたりして、食材に対して、具材の見映えや風味、調味料の風味を与えて、食材の嗜好性を高めたり、食品に味付けをすることを目的とした食品素材を総称する概念」であるから、甲6発明において、ご飯に混ぜられる「白いりごま、白すりごま、梅干し、焼き鮭及び塩昆布」は、「米飯用のトッピング剤」であると共に、「ゴマ含有トッピング剤」にあたる。
そして、甲5によれば、ごま大さじ一杯は9gであり、すりごま大さじ一杯は7gであるから、甲6発明における、白いりごま(全粒ゴマ)と白すりごま(ゴマ破砕物)との質量配合比は56:44である。
また、甲7によれば、梅干し1切の可食部は10gであり、焼き鮭小1切は30gであるから、白いりごま、白すりごま、梅干し、焼き鮭及び塩昆布がトッピング剤を構成するとすれば、トッピング剤全量に対する、白いりごま(全粒ゴマ)と白すりごま(ゴマ破砕物)の合計含有量は約56質量%となる。
よって、本件発明1と甲6発明の一致点、相違点は、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点と同様であり、上記(1)で指摘した相違点1及び2と同様な相違点となる。
してみれば、上記(1)で検討したように、本件発明1は、甲6発明であるとはいえず、また、甲6発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。

(3)甲9を主引例とする申立理由について
本件発明1と甲9発明を対比すると、甲10の記載事項を考慮すると、甲9発明の「金ごまいりごま」、「金ごますりごま」及び「ペンネパスタ」は、それぞれ本件発明1の「全粒ゴマ」、「ゴマ破砕物」及び「麺類」に相当する。
また、本件明細書の段落【0024】の記載によれば、本件発明1における「トッピング剤」とは、「食材にふりかけたり、ふりかけた後に食材に混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させたりして、食材に対して、具材の見映えや風味、調味料の風味を与えて、食材の嗜好性を高めたり、食品に味付けをすることを目的とした食品素材を総称する概念」であるから、甲9発明において、ペンネパスタに混ぜられる「金ごますりごま、ピーマン、追い鰹つゆ及びシーチキン」及び「金ごまいりごま」は、「麺類用のトッピング剤」であると共に、「ゴマ含有トッピング剤」にあたる。
そして、甲5によれば、ごま小さじ一杯は3gであり、すりごま大さじ一杯は7gであるから、甲9発明における、金ごまいりごま(全粒ゴマ)と金ごますりごま(ゴマ破砕物)との質量配合比は13:87である。
また、甲4によれば、ピーマン1個は35gであり、また、甲5によればしょうゆ(追い鰹つゆ)大さじ1杯は18gであるから、金ごまいりごま、金ごますりごま、ピーマン、追い鰹つゆ及びシーチキンがトッピング剤を構成するとすれば、トッピング剤全量に対する、金ごまいりごま(全粒ゴマ)と金ごますりごま(ゴマ破砕物)の合計含有量は15質量%となる。
よって、本件発明1と甲9発明の一致点、相違点は、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点と同様であり、上記(1)で指摘した相違点1及び2も同様な相違点となる。
してみれば、上記(1)で検討したように、本件発明1は、甲9発明であるとはいえず、また、甲9発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
また、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明9,10,14,16が、甲9発明であるとはいえず、また、本件発明1,9,10,13,14,16が、甲9発明及び甲14,16?18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

(4)甲11?13を夫々主引例とする申立理由について
甲11記載の「むきごま」及び「いりごま」、甲12記載の「煎りごま」並びに甲13記載の「粒のゴマ」は、いずれも本件発明1の「全粒ゴマ」であり、また、甲11ないし13記載の「すりごま」は、本件発明1の「ゴマ破砕物」に相当する。
また、本件明細書の段落【0024】の記載によれば、本件発明における「トッピング剤」とは、「食材にふりかけたり、ふりかけた後に食材に混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させたりして、食材に対して、具材の見映えや風味、調味料の風味を与えて、食材の嗜好性を高めたり、食品に味付けをすることを目的とした食品素材を総称する概念」であるから、全粒ゴマ及びゴマ破砕物自体もトッピング剤に該当する。
してみれば、上記第4の9.?11.の記載によれば、甲11?13には、いずれにも「全粒ゴマとゴマ破砕物とを含有するトッピング剤」が記載されているといえる。
しかし、本件発明1と甲11?13に記載された発明を夫々対比すると、少なくとも上記(1)で指摘した相違点1及び2の点で相違する。
また、相違点1及び2に係る構成は、平成29年6月2日付け拒絶理由通知の引用文献1?6に記載されたものでもない。
したがって、本件発明1は、甲11?13に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?7,9?12,14?16を、理由1により、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するということはできない。
また、本件発明1?16を、理由2により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることもできない。

3.理由3(実施可能要件)及び理由4(サポート要件)について
(1)ゴマの水分含有量及び油脂含有量について
申立人は、「本件発明16では、本特許発明の利用形態として麺類の付け汁に混ぜることが想定されているが、調味液中には当然水分及び油脂が含有されているのであり、このような環境下で、いかなる作用機序をもって、ゴマの水分含量及び油脂含有量が調整されることによってトッピング在中の粒子の凝集を防止できるのか、とうてい理解することができない。」(特許異議申立書43頁24行?44頁2行)と主張している。
しかし、本件明細書の段落【0036】?【0037】の記載からすれば、本件発明は、ゴマの水分含有量及び油脂含有量を請求項6に記載したように特定することにより、トッピング剤中において、ゴマが一粒ずつ分離した態様で分散し、凝集しないという作用効果が生じることを意図したものであり、「麺類のつけ汁に混ぜ」た後の作用機序が不明であるからといって、当業者が発明を実施することができないとはいえない。
また、請求項6にはゴマの水分含有量及び油脂含有量の具体数値が特定されており、当該数値範囲において、上記作用効果が生じると発明の詳細な説明に記載されている(段落【0038】参照。)のであるから、請求項6に係る発明が発明の詳細な説明に記載されていないともいえない。
(2)全粒ゴマのサイズについて
申立人は、「全粒ゴマのサイズに関しては、本件明細書中に効果及びその作用機序等について一切の記載がなく、実施例中においても、範囲内外の比較等は一切行われていない。」(特許異議申立書45頁2?4行)と主張している。
しかし、本件明細書の段落【0032】には、全粒ゴマのサイズについて、「通常のゴマの大きさである」と記載され、加えて通常のゴマの大きさの範囲である請求項8記載のサイズが特定されているのであるから、当業者が本件発明を実施することができる程度に明細書が記載されているといえると共に、請求項8に特定する内容は発明の詳細な説明に記載されたものである。

(3)小括
以上のとおり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明6及び8について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていないということはできない。
また、請求項6及び8に記載された特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないということもできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-22 
出願番号 特願2017-80108(P2017-80108)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
槙原 進
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6224286号(P6224286)
権利者 株式会社Mizkan 株式会社Mizkan Holdings
発明の名称 ゴマ含有トッピング剤、米飯及び麺類の喫食性、風味及び見映えの改善方法  
代理人 渥美 久彦  
代理人 渥美 久彦  

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