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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1344173
審判番号 不服2016-13236  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-05 
確定日 2018-09-11 
事件の表示 特願2013-548865号「製品を最速で冷却または冷凍する、産業用にも適用できる家電製品」拒絶査定不服審判事件〔2012年7月26日国際公開、WO2012/098276、平成26年3月6日国内公表、特表2014-505852号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年1月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年1月17日、スペイン、2011年11月25日、スペイン)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年9月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において、平成29年7月18日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である平成29年11月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。

2.本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
製品を最速で冷却または冷凍する、産業用にも適用できる家電製品(1)であって、
断湿性で耐火性の、またはその他の絶縁材からなる絶縁パネル(2)を覆う金属板の支持材(3)からなる閉鎖用の壁(4)で囲まれて、
前記壁(4)は、蛇管(13)を覆う容器または内部空間(6)を形成し、前記壁(4)は前記家電製品(1)の後部に固定された三角材(5)を介して、互いに組み立てられて、常に開口を備えて、前記開口に、蝶番の付いたドアまたはスライドによって引き出すことができるドア(7)が設置され、
前記壁(4)の全部または一部の内面に、全空気(9)を内部空間(6)の方へ繰り返し誘導するタービン(8)、ならびに、一端が第2の脱水フィルタ(26b)を介して圧縮機モータ(15)に接続され、他端がキャピラリ管(9)に接続される前記蛇管(13)が内蔵され、前記タービン(8)と全内部空間(6)の境界を規定する多孔板(11)との間に前記蛇管(13)が収容され、前記内部空間(6)内にある回転台(25)の上に、最高実行速度で冷却または冷凍したい食品または飲料(24)が配置され、
一端を前記圧縮機モータ(15)に接続された凝縮器(27)の他端と前記キャピラリ管(9)の間に配置された第1の脱水フィルタ(26a)に加えて、蒸発用の前記蛇管(13)と前記圧縮機モータ(15)との間に前記第2の脱水フィルタ(26b)が配置されており、前記第2の脱水フィルタ(26b)と前記蛇管(13)、及び前記第2の脱水フィルタ(26b)と前記圧縮機モータ(15)は直接接続されていることを特徴とする家電製品(1)。」

3.拒絶の理由
平成29年7月18日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1の概略は次のとおりのものである。

(進歩性)本願発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1に記載された発明、引用文献3及び周知の手段に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平2-71016号公報
引用文献2:特開2008-267005号公報
引用文献3:特開平9-236363号公報

4.引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、図面(第1,2図)とともに、次の事項が記載されている。

ア.「第1図および第2図はそれぞれ本発明の一実施例を示す冷蔵機能付電子レンジおよび冷蔵装置の部分切欠き図で、第1図は加熱時、第2図は冷蔵時を示すものである。第1図に示すように、冷蔵機能付電子レンジは、従来の電子レンジと同じ構造のマグネトロン1、導波口2、モータ4、ギア5,6,7、回転軸8、ターンテーブル9、滑車10が備えられ、また、庫内29に対してマグネトロン1が配置されている側と反対側に、蒸発器21が配設された蒸発器室30が設けられている。蒸発器室30は、冷気送入口22を介して庫内29に連通されて蒸発器室30の冷気を庫内29に取入れるようになっているとともに、冷気戻り口23および冷気戻り通路37とを介しても庫内29に連通されて庫内29の冷気がこの冷気戻り口23および冷気戻り通路37を通して蒸発器室30に戻されるようになっている。蒸発器21には蒸発器室30から側方に突出した凝縮器19、キャピラリーチューブ20に接続され、さらに冷蔵庫本体40に接続された外部圧縮器ユニット41にその往復路にそれぞれ設けられた切替弁33,34を介して接続されている。そして、適当箇所に設けられた切替えスイッチ(図示せず)を押すことにより切替弁43,44が冷蔵機能付電子レンジまたは冷蔵庫側に切替わるようになっている。ここで、24は蒸発器室30を形成する側壁に取付けられたモータ、25は凝縮器19を冷却するファン、26は蒸発器室30の中に設けられて、蒸発器21の近傍の冷気を冷気送入口22を介して庫内29に送るファン、38,39は冷蔵庫の外部圧縮器ユニット41を切換弁43,44を介して冷蔵機能付電子レンジのキャピラリーチューブ20および蒸発器21につなぐ接続部材である。」(2頁右上欄12行?同右下欄3行。審決注:上記「切替弁33,34」とあるのは、「切替弁43,44」の誤記と認められる。)

イ.「また、この冷蔵機能付電子レンジに冷蔵機能と加熱機能とを有せしめるために、導波口2の開口部には高周波を通すが冷気は通さない材料で構成されたカバー31が設けられている一方、高周波が蒸発器室30の側に侵入しないように冷気送入口22および冷気戻り口23には高周波侵入防止用のパンチング板32,33が設けられ、蒸発器21における内部系路中の熱媒体(フロンガス)の過熱が防止されている。庫内29を形成する内面材34は高周波および冷気を通さない材料で作られているとともに、内面材34と外面材35との間にはウレタン材などの断熱材36が設けられている。また、回転軸8の近傍より高周波および冷気がギア7の方に洩れないように、回転軸8が貫通している庫内底面部29aは回転軸8に接近して隙間の少ない構成にされている。
なお、冷蔵庫本体40にも冷蔵機能付電子レンジの冷蔵機能構成と同様に冷気送入口22、冷気戻り口23、冷気戻り通路37、蒸発器21、凝縮器19、キャピラリーチューブ20、モータ24、ファン25,26が設けられており、切替弁43,44を介して外部圧縮器ユニット41に接続されている。」(2頁右下欄4行?3頁左上欄5行)

ウ.「次に、冷蔵機能付電子レンジを冷蔵装置として使用する場合は、まず、冷蔵機能付電子レンジに設けられた切替えスイッチを押して切替弁43,44を冷蔵機能付電子レンジ側に切替える。冷蔵機能付電子レンジの冷却回路内の冷却されたフロンガスは蒸発器21の部分にて庫内29より冷気戻り口23、冷気戻り通路37をへて戻ってくる冷気と熱交換される。これにより一層低温化された冷気は冷気送入口22より庫内29に送られ、順次、庫内29を循環して冷却する。これにより、ターンテーブル9の上に載せられた被冷却体Bが冷却される。この際、冷却時も、ターンテ-ブル9を回転させることにより被冷却体Bの均一な冷却ができるとともに、冷気により凍ってしまうことがない。」(3頁左上欄13行?同右上欄6行)

エ.「なお、冷蔵庫本体40を作動させる場合には上記切替スイッチを押して切替弁43,44を冷蔵庫本体40の側に切換えることによっても冷蔵可能となるが、外部圧縮器ユニット41は通常冷蔵庫本体40に接続されており、冷蔵機能付電子レンジの冷蔵が終ると冷蔵庫本体40の側に切替弁43,44が切換わり、一般の冷蔵は冷蔵庫本体40による。つまり、冷蔵機能付電子レンジの冷蔵機能として使用される場合は、冷調理および急速冷蔵が主体とされる。」(3頁右上欄9?17行)

上記記載された事項及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「庫内を形成する内面材は高周波および冷気を通さない材料で作られているとともに、内面材と外面材との間にはウレタン材などの断熱材が設けられており、また、庫内に蒸発器が配設された蒸発器室が設けられ、蒸発器の近傍の冷気を冷気送入口を介して庫内に送るファンが蒸発器室の中に設けられ、ならびに、ファンと高周波が蒸発器室の側に進入しないように冷気送入口および冷気戻り口に設けられた高周波侵入防止用のパンチング板との間に蒸発器が収容され、庫内のターンテーブルの上に、被冷却物が配置され、蒸発器には、蒸発器室から側方に突出した凝縮器、キャピラリーチューブに接続され、さらに冷蔵庫本体に接続された外部圧縮機ユニットが設けられた、冷蔵機能付き電子レンジ」

(2)引用文献2
引用文献2には、図面(図5,10)とともに、次の事項が記載されている。

ア.「このような本発明に従う構造とされた建築物の耐震補強構造においては、引戸枠の四隅部に補強用隅金具が固定されていることに基づき引戸枠が有利に補強される。ここで、引戸が引戸枠内の端部に移動せしめられた際に、補強用隅金具が引戸のスリットに差し入れられて収容状態となることで、引戸が補強用隅金具を備えた引戸枠を介して構造材に連結されることとなり、特に地震等の大きな外力作用によって引戸枠が変形しても、引戸に安定して当接する。即ち、引戸枠の変形が補強用隅金具を介して引戸に効率良く伝達されることとなり、その結果、引戸の剛性を好適に利用して、引戸枠延いては建築物の剛性が効果的に向上されるのである。」(段落【0010】)

イ.「このような内外障子14,16の上側の各角部には、一対の補助金具としての一対の上角金具62,62が設けられている。上角金具62は、略直角三角形状の平板形状を有している。上角金具62の上下方向に延びる外周縁部と左右方向に延びる外周縁部には、幅方向外方に突出するようにして補強リブ64が一体形成されている。」(段落【0041】)

(3)引用文献3
引用文献3には、図面(図15)とともに、次の事項が記載されている。

ア.「(実施例14)次に実施例14について、図15を参照しながら説明する。図15において、59はアキュムレータ17の入口近傍に設置したドライヤ、60は試運転を制御する試運転制御手段である。」(段落【0139】)

イ.「以上の様に構成されたシステムについてその動作を説明する。本実施例14の空気調和機1の制御装置22中の試運転スイッチ20により試運転制御手段60を作動させると、試運転制御手段60の信号が試運転手段21に伝わり圧縮機2が動く。」(段落【0140】)

ウ.「冷媒が圧縮機2によって高温高圧状態に圧縮され室外熱交換器4にて液化されドライヤ9にて水分,ゴミ,金属粉,加工油等のコンタミ物質が取り除かれ室内側キャピラリーチューブ15を通って室内熱交換器12に至る。そして室内熱交換器12にて冷媒が周囲の空気から熱を奪って気化した後、アキュムレータ17を通って圧縮機2に戻るという循環を行うことにより冷房による空気調和を行うようになっている。」(段落【0141】)

エ.「冷媒にR407Cを使用した場合、圧縮機2あるいはシステム内の水分,ゴミ,金属粉,加工油等のコンタミ物質がシステム内の高温部にて潤滑用として使用されるエステルオイルと化学反応を起こし、カルボン酸金属塩やエステルオイルの分解物等の異物が生成され、その異物がシステム内を循環して特に室外側キャピラリーチューブ11に析出し室外側キャピラリーチューブ11が詰まり冷媒流量が減少し冷凍能力が低下する問題がある。」(段落【0142】)

オ.「しかし、本実施例14によれば、本システムは試運転モードにおいて、ドライヤ9は試運転期間中に水分を吸着するモレキュラシーブ6以外に、ゴミ,金属粉,加工油等のコンタミ物質を捕捉するフィルター7,8を取り付けたため、カルボン酸金属塩は非常に発生しにくくなると共に、ゴミ,金属粉,加工油等のコンタミ物質が室外側キャピラリーチューブ11内を流れる量が少なくなり室外側キャピラリーチューブ11の詰まりが生じることを防止することができる。」(段落【0143】)

カ.「この異物を捕獲したドライヤ9の流量抵抗は初期に比較して大きくなるため冷媒循環量が少なくなりその能力が低下するが、その時には試運転制御手段60が試運転の終了を判定し、信号を出し試運転を終了させる。さらに、圧縮機2の吸入口近傍にドライヤ59を設置しているため、室内熱交換器12からアキュムレータ17近傍までの水分を試運転の際にも吸着できるため圧縮機2に導入され圧縮機2中のエステル油と反応する水分の量を低減することができる効果が得られ、圧縮機2内での冷凍機油の加水分解を抑制することができる。また、ドライヤ59はアキュムレータ17の入口近傍に設置されているため、振動等によってドライヤ59中のモレキュラシーブ6が粉化してもこれがアキュムレータ17に溜り、圧縮機2に導入されることがない効果が得られる。」(段落【0144】)

キ.「また、試運転終了後は、バルブ5,10を締めて冷媒をシステム内に閉じこめ、ドライヤ9をモレキュラシーブ6のみが充填されているドライヤに交換することにより冷媒循環量を初期の値に確保することができ信頼性の高い空気調和機が得られる。」(段落【0145】)

ク.「その後、この試運転の後に制御装置22中の運転スイッチ18を入れることにより、冷暖房運転手段19が圧縮機2を駆動し、通常の冷暖房運転を行うことができる。」(段落【0146】)

5.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ウレタン材」、「蒸発器」、「ターンテーブル」、「被冷却物」、「外部圧縮機ユニット」、「凝縮器」及び「キャピラリチューブ」は、機能、構造等から見て、それぞれ本願発明の「絶縁パネル」、「蛇管」、「回転台」、「冷却したい食品または飲料」、「圧縮機モータ」、「凝縮器」及び「キャピラリ管」に相当する。

(2)上記4.(1)エ.の「冷蔵機能付電子レンジの冷蔵機能として使用される場合は、冷調理および急速冷蔵が主体とされる。」の記載からすれば、引用発明の冷蔵機能付き電子レンジも急速冷蔵を行うものであり、一般に電子レンジは家電製品である一方、店舗等において産業用にも適用できるものであるから、引用発明の「冷蔵機能付き電子レンジ」は、本願発明の「製品を最速で冷却する、産業用にも適用できる家電製品」に相当する。

(3)引用発明の「庫内を形成する内面材」と「外面材との間にはウレタン材などの断熱材が設けられ」たものは、その配置から見て(第1,2図参照)、ウレタン材を覆う内面材と外面材がウレタン材を支持する支持材をなし、庫内の閉鎖用の壁を構成するものといえる。
また、引用発明の「ウレタン材」を支持する「庫内を形成する内面材」は、図面(第1,2図参照)から見てパネル状に配置されており、引用発明の「ウレタン材」は、本願発明の「その他の絶縁材から成る絶縁パネル」に相当する。
よって、引用発明の「庫内を形成する内面材」と「外面材との間にはウレタン材などの断熱材が設けられ」たものは、本願発明の「耐湿性で耐火性の、またはその他の絶縁材から成る絶縁パネルを覆う」「支持材からなる閉鎖用の壁」に相当する。

(4)上記(1)のとおり、引用発明の「蒸発器」は、本願発明の「蛇管」に相当するから、引用発明の「蒸発器室」は、本願発明の「蛇管を覆う容器または内部空間」に相当する。

(5)引用発明の「ファン」は、庫内の壁の一部に設けられた蒸発器室に設けられており、設置位置からして全空気を庫内の内部空間の方へ繰り返し誘導するものと認められるから、本願発明の「壁の全部または一部の内面に、全空気を内部空間の方へ繰り返し誘導するタービン」に相当する。

(6)引用発明の「パンチング板」は、「冷気送入口および冷気戻り口に」設けられ、ファンと庫内の境界を規定するものであり、パンチング板とファンとの間に蒸発器が収容されているから、本願発明の「タービンと全内部空間の境界を規定する多孔板」に相当する。

(7)上記(1)のとおり、引用発明の冷蔵機能付き電子レンジは急速冷蔵を行うものであるから、被冷却物(冷却したい食品または飲料)を最高実行速度で冷却するものと認められる。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

【一致点】
製品を最速で冷却または冷凍する、産業用にも適用できる家電製品であって、
断湿性で耐火性の、またはその他の絶縁材からなる絶縁パネルを覆う支持材からなる閉鎖用の壁で囲まれて、
前記壁は、蛇管を覆う容器または内部空間を形成し、
前記壁の全部または一部の内面に、全空気を内部空間の方へ繰り返し誘導するタービン、ならびに、前記蛇管が内蔵され、前記タービンと全内部空間の境界を規定する多孔板との間に配備される空間またはチャンバに前記蛇管が収容され、前記内部空間内にある回転台の上に、最高実行速度で冷却または冷凍したい食品または飲料が配置された家電製品。

【相違点1】
本願発明は、閉鎖用の壁について、金属板の支持材から構成されているのに対して、引用発明はそのような限定がなされていない点

【相違点2】
本願発明は、閉鎖用の壁について、家電製品の後部に固定された三角材を介して、互いに組み立てられているのに対して、引用発明はそのような限定がなされていない点

【相違点3】
本願発明は、閉鎖用の壁について、常に開口を備えて、前記開口に、蝶番の付いたドアまたはスライドによって引き出すことができるドアが設置されているのに対して、引用発明はこのように特定されていない点

【相違点4】
本願発明は、一端を圧縮機モータに接続された凝縮器の他端とキャピラリ管の間に配置された第1の脱水フィルタに加えて、蒸発用の蛇管と前記圧縮機モータとの間に第2の脱水フィルタが配置されており、前記第2の脱水フィルタと前記蛇管、及び前記第2の脱水フィルタと前記圧縮機モータは直接接続されているのに対し、引用発明は第1及び第2の脱水フィルタを備えていない点

6.判断
以下、上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明のウレタン材(絶縁パネル)を覆う内面材34は高周波を通さない材料で作られており(上記4.(1)イ.参照)、また、電子レンジの筐体の内面材及び外面材を金属の支持材とすることは技術常識といえる。
そうすると、閉鎖用の壁を高周波を通さない金属板で構成することは引用発明に実質的に記載されているか、または当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
筐体を構成するに際して、筐体を構成する板の角部に三角材からなる補強を行って組み立てることは、例えば引用文献2(上記4.(2)参照)に記載されているように周知の手段であり、引用発明の電子レンジの筐体を組み立てるに際して、上記周知の手段を採用して、後部の角部に当該三角材からなる補強を行って組み立てて相違点2に係る本願発明のごとくすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
引用文献1には、引用発明が開口及び当該開口に設置されたドアを有する旨の明記はない。しかし、引用発明に係る冷蔵機能付き電子レンジは庫内に被冷却体を入れて冷却するものであるから、当該被冷却体を入れるための開口及び当該開口に設置されたドアが存在することは実質的に記載されているといえる。
よって、相違点3は実質的な相違点ではない。

(4)相違点4について
冷却装置の冷却回路における、凝縮器とキャピラリーチューブ(キャピラリー管)の間に水分を吸着するドライヤ(第1の脱水フィルタ)を、また熱交換器(蛇管)と圧縮機(圧縮機モータ)との間に水分を吸着するドライヤ(第2の脱水フィルタ)を設けて、冷却能力を向上させる構成は引用文献3(上記4.(3)参照)に記載されており、当該構成を同じく圧縮機(圧縮機モータ)とキャピラリーチューブ(キャピラリー管)を備えた引用発明の冷却回路に適用することは当業者にとって容易である。
もっとも、引用文献3記載のものはドライヤ(第2の脱水フィルタ)と圧縮機(圧縮機モータ)の間にアキュムレータが配置されており、ドライヤ(第2の脱水フィルタ)と圧縮機(圧縮機モータ)が直接接続されているとはいえない。
しかし、冷媒の気液分離を行うアキュムレータと冷媒の脱水を行うドライヤ(第2の脱水フィルタ)は、異なる作用により冷却能力を向上させるものであるから、択一的に採用することに困難性は認められず、引用発明に引用文献3記載の技術を適用するにあたって、ドライヤ(第2の脱水フィルタ)のみを採用し、ドライヤ(第2の脱水フィルタ)と圧縮機(圧縮機モータ)が直接接続するようにすることは当業者にとって容易に想到し得たことである。
なお、本願明細書の段落【0009】には、「熱状態と冷気状態のサイクルを3倍まで加速する」と記載されており、また、出願人は、平成29年11月27日付け意見書において、「第2の脱水フィルタの主な機能は蒸発用蛇管を通過した冷却材を気体状態で通過させることにあります。そして、第2の脱水フィルタの上記機能によって、液冷媒がコンプレッサーで液圧縮しないように、冷媒を気体と液体に分離させてコンプレッサーに気体の冷媒だけを吸い込ませ、圧縮機モータが液圧縮を起こさないようにするためのアキュムレータ、あるいは、圧縮機モータの爆発を防ぐ降圧バルブを配置する必要がなくなることにより、熱状態と冷気状態のサイクルを3倍まで加速することができます。」と主張している。
しかし、当該意見書にも記載されているように、本願発明の熱状態と冷気状態のサイクルを3倍まで加速するという効果は、第2の脱水フィルタにより、液冷媒がコンプレッサーで液圧縮しないように、冷媒を気体と液体に分離したことにより生じる効果にすぎず、引用文献3記載の冷却回路を採用することにより予測できる範囲の効果以上のものとは認められない。
また、冷媒の気液分離は冷却回路の性能向上のための手段であることからすれば、アキュムレータは冷却回路において必須の構成ではなく、アキュムレータの省略によりスペースや費用の低減という効果が生じることは自明である。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献3及び周知の手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-17 
出願番号 特願2013-548865(P2013-548865)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 勇横溝 顕範  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 井上 哲男
窪田 治彦
発明の名称 製品を最速で冷却または冷凍する、産業用にも適用できる家電製品  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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