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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S |
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管理番号 | 1344253 |
審判番号 | 不服2017-18946 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-21 |
確定日 | 2018-10-09 |
事件の表示 | 特願2015-233637「モード切替可能航法無線機に用いる方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月2日出願公開、特開2016-102796、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2008年(平成20年)6月27日(以下、「優先日」という。)にアメリカ合衆国でされた特許出願及び2009年(平成21年)3月9日にアメリカ合衆国でされた特許出願に基づくパリ条約の規定による優先権を主張して平成21年6月26日にされた国際特許出願(特願2011-516706)の一部を平成26年4月10日に新たな特許出願(特願2014-81383)とし、さらにその一部を平成27年11月30日に新たな特許出願である外国語書面出願としたものである。そして、同年12月24日に翻訳文が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲についての補正がされ、平成29年3月21日に特許請求の範囲についての補正がされた。その後、同年8月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同22日に査定の謄本が送達された。 これに対して、同年12月21日に拒絶査定不服審判が請求された。 第2 本願に係る発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 モード切替テストが満たされるかを決定するために組み合わせの決定プロセスを実行することと、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え、前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える、 前記モード切替テストが満たされたときに、位置決め回路を第1のモードから第2のモードに切り替えることと、 を備え、前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得し、 前記第2のモードで動作している前記位置決め回路は、前記SPSに関連付けられたクロックにより実質的に較正されるローカルクロック情報を維持する、 方法。 【請求項2】 前記位置決め回路は、前記第2のモードでデューティサイクルの期間中に無線信号を取得しない、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記無線信号は衛星測位信号を備える、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記複数のテスト条件は、前記1つのテスト条件に加えて、さらに、 少なくとも第1の閾値信号強度の無線信号が第1の組の位置決めソースから取得されているという第1のテスト条件、 少なくとも前記第1の閾値信号強度の無線信号が少なくとも第1の閾値数の位置決めソースから取得されているという第2のテスト条件、 少なくとも第2の閾値信号強度の無線信号が少なくとも第2の閾値数の位置決めソースから取得されているという第3のテスト条件、 位置情報が少なくとも前記第1の組の位置決めソースについてアクセス可能であるという第4のテスト条件、 前記第1の組の位置決めソースのいずれについても追加的位置情報が現在受信されていないという第5のテスト条件、 位置決めソースからのどの無線信号も取得されていないという第6のテスト条件、 前記衛星測位システム(SPS)に関連付けられた前記無線信号の少なくとも一部分に少なくとも部分的に基づいて決定される現在位置の定位に関連した誤差が、位置定位誤差閾値を超えないという第7のテスト条件、および、 ヘルス情報が、少なくとも前記第1の組の位置決めソースのいずれについても現在受信されていないという第8のテスト条件のうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 位置決め回路に、少なくとも1つのモード切替テストが満たされたことに少なくとも部分的に応答して、第1のモードから第2のモードに切り替えさせることを作用的に可能にされたコントローラを備え、前記少なくとも1つのモード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え、 前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備え、 前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)と関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得し、 前記第2のモードで動作している前記位置決め回路は、前記SPSに関連付けられたクロックにより実質的に較正されるローカルクロック情報を維持する、 装置。 【請求項6】 前記位置決め回路は、前記第2のモードでデューティサイクルの期間中に無線信号を取得しない、請求項5に記載の装置。 【請求項7】 前記無線信号は、衛星測位信号を備える、請求項5に記載の装置。 【請求項8】 前記複数のテスト条件は、前記1つのテスト条件に加えて、さらに、 少なくとも第1の閾値信号強度の無線信号が第1の組の位置決めソースから取得されているという第1のテスト条件、 少なくとも前記第1の閾値信号強度の無線信号が少なくとも第1の閾値数の位置決めソースから取得されているという第2のテスト条件、 少なくとも第2の閾値信号強度の無線信号が少なくとも第2の閾値数の位置決めソースから取得されているという第3のテスト条件、 位置情報が少なくとも前記第1の組の位置決めソースについてアクセス可能であるという第4のテスト条件、 前記第1の組の位置決めソースのいずれについても追加的位置情報が現在受信されていないという第5のテスト条件、 位置決めソースからのどの無線信号も取得されていないという第6のテスト条件、 前記衛星測位システム(SPS)に関連付けられた前記無線信号の少なくとも一部分に少なくとも部分的に基づいて決定される現在位置の定位に関連した誤差が、位置定位誤差閾値を超えないという第7のテスト条件、および、 ヘルス情報が、少なくとも前記第1の組の位置決めソースのいずれについても現在受信されていないという第8のテスト条件のうちの1つまたは複数を備える、請求項5に記載の装置。 【請求項9】 前記第2のモードは低電力モードを備える、請求項5に記載の装置。 【請求項10】 モード切替テストが満たされるかを決定するために組み合わせの決定プロセスを実行するための手段と、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え、前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える、 前記モード切替テストが満たされたときに、位置決め回路を第1のモードから第2のモードに切り替えるための手段と、 を備え、前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得し、 前記第2のモードで動作している前記位置決め回路は、前記SPSに関連付けられたクロックにより実質的に較正されるローカルクロック情報を維持する、 デバイス。 【請求項11】 1つまたは複数の処理装置によって実行された場合に、前記1つまたは複数の処理装置が、 モード切替テストが満たされるかを決定するために組み合わせの決定プロセスを実行し、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え、前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える、 前記モード切替テストが満たされたときに、位置決め回路を第1のモードから第2のモードに切り替える ように適合させるコンピュータ実行可能命令を記憶し、 前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得し、 前記第2のモードで動作している前記位置決め回路は、前記SPSに関連付けられたクロックにより実質的に較正されるローカルクロック情報を維持する、 コンピュータ読取可能な非一時的な記憶媒体。」 なお、本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の構成を全て含む。 本願発明5は、本願発明1に係る方法を実行する装置の発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。そして、本願発明6ないし本願発明9は、本願発明5の構成を全て含む。 本願発明10は、本願発明1に係る方法の発明を実行するデバイスの発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 本願発明11は、本願発明1に係る方法を処理装置に実行させるコンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ読取可能な非一時的な記憶媒体の発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 第3 原査定の概要 本願発明1ないし本願発明11は、後記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特表2002-524002号公報 引用文献2:特開2002-156438号公報 引用文献3:特表2008-511817号公報 第4 引用文献に記載された発明等 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の記載がある。 「【請求項13】 電池によって駆動される無線電話であって、複数の事象に応じて通信を確立し維持する無線通信トランシーバと、短期情報および長期情報を取得して該短期情報および該長期情報に部分的に基づいて位置計算する全地球測位システム(GPS)受信機とを有し、前記GPS受信機が、電池電力を消費する「オン」状態と電池電力を消費しない「オフ」状態とを有する、無線電話において、迅速かつ正確な位置決定を行うために短期情報および長期情報を維持しながら、前記無線電話が待機モードにあるとき電池エネルギーを節約する方法であって、 (a)前記GPS受信機を前記「オン」状態に変え、 (b)一組の短期情報測定値を取得し、 (c)前記GPS受信機を前記「オフ」状態に変え、 (d)ステップ(a)からステップ(d)を定期的に繰り返す ことによって、短期情報を捕捉することと、 前記無線電話の事象に基づいて短期情報の捕捉を適合することと、 を含む、方法。」 「【請求項18】 前記無線通信トランシーバが前記無線ネットワークからの信号の信号強度測定を行い、短期情報が、前記信号強度がしきい値よりも低いままであることに応じてより少ない頻度で捕捉される、請求項13記載の方法。」 「【0027】 図3は、信号強度事象に関する短期データ収集を示す流れ図である。処理はボックス300で始まり、そこでは、信号強度が無線通信トランシーバ16によって収集され記憶される。処理は決定ステップ302に進み、そこでは、信号強度が安定でかつしきい値よりも高いかどうかが判定される。そうであれば、処理はボックス300に戻り、通常のスケジュールが維持される。 【0028】 決定ステップ302で信号強度が安定でないかしきい値よりも高い場合には、処理は決定ステップ304に進み、そこでは、信号強度が安定でかつしきい値よりも低いかどうかが判定される。信号強度が安定でしきい値よりも低い場合には、短期情報収集が成功しないか許容できないほど長い時間がかかる可能性がある。したがって、処理はボックス306に進み、そこでは、短期情報収集の速度が下げられる。その後、処理はボックス300に戻る。」 【図3】 (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の前記(1)の記載のうち、請求項13及び請求項18の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「電池によって駆動される無線電話であって、複数の事象に応じて通信を確立し維持する無線通信トランシーバと、短期情報および長期情報を取得して該短期情報および該長期情報に部分的に基づいて位置計算する全地球測位システム(GPS)受信機とを有し、前記GPS受信機が、電池電力を消費する「オン」状態と電池電力を消費しない「オフ」状態とを有する、無線電話において、迅速かつ正確な位置決定を行うために短期情報および長期情報を維持しながら、前記無線電話が待機モードにあるとき電池エネルギーを節約する方法であって、 (a)前記GPS受信機を前記「オン」状態に変え、 (b)一組の短期情報測定値を取得し、 (c)前記GPS受信機を前記「オフ」状態に変え、 (d)ステップ(a)からステップ(d)を定期的に繰り返す ことによって、短期情報を捕捉することと、 前記無線電話の事象に基づいて短期情報の捕捉を適合することと、 を含み、 前記無線通信トランシーバが前記無線ネットワークからの信号の信号強度測定を行い、短期情報が、前記信号強度がしきい値よりも低いままであることに応じてより少ない頻度で捕捉される、方法。」 2 引用文献2 引用文献2の【0019】ないし【0021】、図1及び図2には、衛星受信装置において、アンテナを備え、記憶手段と時計手段とを有する衛星受信手段に、タイマと、通信手段と、電源と、衛星受信手段及びタイマの電源をオン又はオフにする電源スイッチング手段と、制御手段とを設け、衛星受信手段の記憶手段が保持しているエフェメリスの数に関する情報によって活動時間を変えるようにするという技術事項が記載されている。 3 引用文献3 引用文献3の【0027】ないし【0039】及び図2ないし図5には、GPSモバイル装置において、その予測位置とそのGPSによって報告された実際の位置との間の誤差や、GPS捕捉時間に基づいて、GPSの電源をオンにする次の時刻を予測して電源投入期間を設定するという技術事項が記載されている。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明の「短期情報が、前記信号強度がしきい値よりも低いままであることに応じてより少ない頻度で捕捉される」は、「前記信号強度がしきい値よりも低いままで」ないときは「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉されることを含意するから、「前記信号強度がしきい値よりも低いままである」かを判定し、そのように判定されると、「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態から「より少ない頻度で捕捉される」状態へ切り替えることを意味すると認められる。 ここで、「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態から「より少ない頻度で捕捉される」状態への切り替えは、本願発明1の「モード切替」に相当し、したがって、「前記信号強度がしきい値よりも低いままである」かを判定することは、本願発明1の「モード切替テストが満たされるかを決定するために」「決定プロセスを実行すること」に相当する。 また、引用発明の「前記信号強度がしきい値よりも低いままである」かの判定は、引用文献1の【0028】に「処理は決定ステップ304に進み、そこでは、信号強度が安定でかつしきい値よりも低いかどうかが判定される。」と記載されているとおり、具体的には「信号強度が安定であるか」という条件と「信号強度がしきい値よりも低いか」という条件の組み合わせであると認められるから、本願発明1の「組み合わせの決定プロセスを実行することと、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え」に相当する。 以上のことをまとめると、引用発明と本願発明1とは、「モード切替テストが満たされるかを決定するために組み合わせの決定プロセスを実行することと、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備え」るものである点で一致する。 イ 引用発明の「位置計算する全地球測位システム(GPS)受信機」は、本願発明1の「位置決め回路」に相当する。 また、引用発明の「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態は、本願発明1の「第1のモード」に相当し、引用発明の「短期情報が」「より少ない頻度で捕捉される」状態は、本願発明1の「第2のモード」に相当する。 そして、引用発明は、「前記信号強度がしきい値よりも低いままである」と判定されると「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態から「より少ない頻度で捕捉される」状態へ切り替えるものであるから、引用発明と本願発明1とは、「前記モード切替テストが満たされたときに、位置決め回路を第1のモードから第2のモードに切り替えること」を備えるものである点で一致する。 ウ 引用発明は、「(b)一組の短期情報測定値を取得し、」「位置計算する全地球測位システム(GPS)受信機」が「短期情報および長期情報を取得して該短期情報および該長期情報に部分的に基づいて位置計算する」ものであるから、引用発明の「一組の短期情報測定値」は、本願発明1の「衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号」に相当する。 そして、引用発明は、「前記信号強度がしきい値よりも低いままである」と判定されると「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態から「より少ない頻度で捕捉される」状態へ切り替えるものであるから、本願発明1とは、「前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得」するものである点で一致する。 (2)一致点及び相違点 前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「モード切替テストが満たされるかを決定するために組み合わせの決定プロセスを実行することと、前記モード切替テストは複数のテスト条件の組み合わせを備える、 前記モード切替テストが満たされたときに、位置決め回路を第1のモードから第2のモードに切り替えることと、 を備え、前記位置決め回路は、前記第1のモードで衛星測位システム(SPS)に関連した無線信号を取得し、前記第1のモードにおいてよりも少ない頻度で前記第2のモードで前記無線信号を取得する、 方法。」 イ 相違点 (ア)相違点1 本願発明1は、「前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える」のに対し、 引用発明は、そのようなものでない点。 (イ)相違点2 本願発明1は、「前記第2のモードで動作している前記位置決め回路は、前記SPSに関連付けられたクロックにより実質的に較正されるローカルクロック情報を維持する」のに対し、 引用発明は、そのようなものか不明な点。 (3)相違点1についての判断 本願発明1の「軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える」「1つのテスト条件」について、本願の明細書には次の記載がある。 「【0053】 他の例では、データの有効期限が切れる前かつ/または他の必要に応じて、軌道データ(軌道暦(Ephemeris))の受信および/または復号を可能にするために、遷移210および/または遷移動作212のうちの1つまたは複数が発生するのを阻止するように、第3および/または第4のモードを実装することができる。ここでは、例えば、そのような受信および/または復号は、(例えば、SV軌道パラメータ、データ精度、データ寿命等に応じて、)およそ2、4、または6時間ごとに発生しうるものであり、データを復号するために失効時の30分前にランダムタイムスロットを選択することができる。このようにして、デバイス102は、軌道データの変更を通して、動作を継続し定期的な位置決定を生成することが可能にされうる。」 この記載によれば、本願発明1の「軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える」「1つのテスト条件」とは、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にする手段(例えば、有効期限が切れる30分前にランダムタイムスロットを選択すること)を設けておき、当該手段が作動中でないことを条件として(例えば、当該手段の作動中は第3のモードとしておき、現在動作中のモードが第3のモードではなく第1のモードであることを条件として)、第1モードから第2モードへのモード切替を行うことであると認められる。 しかし、引用文献1には、「短期情報が」もっと多い頻度で捕捉される状態から「より少ない頻度で捕捉される」状態へ切り替える条件として、「軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にする」ものは、記載されていないし、示唆されてもいない。引用文献2及び引用文献3も、同様である。 そうすると、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くことであるということはできない。 (4)本願発明1についてのまとめ 前記(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 本願発明2ないし本願発明4について 本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点1及び相違点2(前記1(2)イ(ア)及び(イ))で引用発明と相違する。 そして、前記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点1に係る本願発明2ないし本願発明4の構成も同様である。 したがって、本願発明2ないし本願発明4は、いずれも、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3 本願発明5ないし本願発明9について 本願発明5は、本願発明1に係る方法を実行する装置の発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。また、本願発明6ないし本願発明9は、本願発明5の構成を全て含む。したがって、本願発明5ないし本願発明9は、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成、すなわち、「前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備え」るものである。 そして、前記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、これに対応する本願発明5ないし本願発明9の構成も同様である。 したがって、本願発明5ないし本願発明9は、いずれも、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4 本願発明10及び本願発明11について 本願発明10は、本願発明1に係る方法の発明を実行するデバイスの発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明であるから、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成、すなわち、「前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える」ものである。 また、本願発明11は、本願発明1に係る方法を処理装置に実行させるコンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ読取可能な非一時的な記憶媒体の発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明であるから、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成、すなわち、「前記複数のテスト条件の中の1つのテスト条件は、軌道データの有効期限が切れる前に前記軌道データの受信および/または復号を可能にすることを備える」ものである。 そして、前記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、これに対応する本願発明10及び本願発明11の構成も同様である。 したがって、本願発明10及び本願発明11は、いずれも、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。 また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-09-25 |
出願番号 | 特願2015-233637(P2015-233637) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01S)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 神谷 健一 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 小林 紀史 |
発明の名称 | モード切替可能航法無線機に用いる方法および装置 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |