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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1344301
審判番号 不服2017-10282  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-10 
確定日 2018-10-03 
事件の表示 特願2016- 91102「定着装置および画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月28日出願公開、特開2016-136287、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月11日に出願した特願2012-3264号の一部を平成28年4月28日に特願2016-91102号として出願したものであって、平成29年1月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月31日付けで手続補正がされ、同年4月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年5月15日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年7月17日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月10日付け拒絶査定)の拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3、10、11、14に係る発明は、その出願日前の下記の出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

特願2011-178227号(特許第5773151号公報)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1)本願請求項1-3、6-14に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2)本願請求項1-3、6-7、10-12、14に係る発明は、以下の先願4に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

3)本件出願は、特許請求の範囲(請求項3-10、12-14について)の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たしていない。

4)平成29年7月10日付け手続補正書でした補正(請求項3-10、12-14について)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

引用文献等一覧
1.特開2006-65250号公報
2.特開2005-92080号公報
3.特開2006-201370号公報
4.特願2011-178227号(特許第5773151号公報)

第4 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年7月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-14は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部材と、
前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しないベルト保持部材とを有し、
前記加熱部材は、前記定着ベルトとニップ形成部材とが当接する以外の前記定着ベルトの内側を直接加熱する定着装置において、
前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部と、筒部の外径側に張り出したフランジ部とを有し、
前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に、前記筒部の外周に嵌められた保護部材を設け、軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあり、
前記対向回転体と前記ベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置され、
前記保護部材は、前記ベルト保持部材のフランジ部に対して回転可能であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記フランジ部が、前記定着ベルトの軸方向移動時にその軸方向移動を規制可能な形状を有する請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルト保持部材の筒部の外周に嵌められた前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記筒部の先端と、これに対向する対向回転体の端部とを軸方向に離間させた請求項1?3何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記軸方向の離間距離を5mm以上にした請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着ベルトに、前記対向回転体および前記ベルト保持部材の双方と接触しない軸方向領域を設けた請求項1?5何れか1項記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトに、前記対向回転体、前記ベルト保持部材、および前記ニップ形成部材の何れとも接触しない軸方向領域を設けた請求項1?5何れか1項記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ形成部材の端部は前記対向回転体の端部よりも軸方向中央側にある請求項1?7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ニップ形成部材を支持する支持部材を有し、前記ニップ形成部材の端部は前記支持部材の端部よりも軸方向中央側にある請求項1?7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記定着ベルトを、前記対向回転体に対して従動回転させる請求項1?9何れか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記筒部の外周面形状を非真円形状にした請求項1記載の定着装置。
【請求項12】
前記ニップ部の下流端で前記ニップ形成部材を前記対向回転体側に突出させた請求項1?11何れか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記フランジ部の端面と前記対向回転体の端部との間の軸方向距離から前記保護部材の厚さを差し引いた値が10mm以上である請求項1?12何れか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
請求項1?13の何れかに記載した定着装置を備える画像形成装置。」

第5 特許法第29条第2項について
1 引用文献、引用発明等
(1) 引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決が付した。以下同じ。)

ア「【0055】
[実施の形態2]
実施の形態1では、加熱手段として発熱源を有する定着ロール61を用い、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0056】
図6は、本実施の形態における定着装置90の構成を示す側断面図である。図6に示すように、本実施の形態の定着装置90では、ベルト部材の一例としての定着ベルト92が用紙Pのトナー像担持面側に配置されている。定着ベルト92の内側に発熱源の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
【0057】
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0058】
一方、回動部材の一例としての加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転により定着ベルト92が従動回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成されている。
また、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等からなるベース層と、このベース層の加圧ロール91側の面(外周面)または両面に被覆された、フッ素樹脂等からなる離型層とで構成されている。
さらに、剥離の補助手段として、定着ベルト92のニップ部Nの下流側に、剥離補助部材70を配設することも可能である。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
【0059】
そして、図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって定着装置90のニップ部Nに導かれる。用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙P上のトナー像は、ニップ部Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータ82から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置90でも、加圧ロール91とセラミックヒータ82との間でニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
【0060】
ここで、定着ベルト92が支持される構成を説明する。図7は定着ベルト92の端部が支持される構成を説明する構成図であり、用紙Pの搬送方向下流側から見た定着装置90の一方の端部領域を示している。
図7に示したように、本実施の形態のエッジガイド部材80も、実施の形態1と同様に構成され、ベルト走行ガイド部801の外周面が、定着ベルト92の幅方向両端部の内周面を支持している。そして、定着ベルト92はベルト走行ガイド部801の外周面に沿って回動する。その際に、定着ベルト92には幅方向へ移動する力(スラスト力)が加わり、いずれかの端部に片寄る所謂ベルトウォークが生じる。そこで、内側面側にCリング804が配置されたフランジ部802によって定着ベルト92のベルトウォークを制限して、定着ベルト92に片寄りが生じるのを規制している。
【0061】
かかる構成のエッジガイド部材80においても、定着ベルト92のエッジ面は、直接フランジ部802に当接することなく、まずCリング804に当接して、このCリング804を介してフランジ部802によって片寄りが規制される。その際、フランジ部802とCリング804との間のニップ部N側にはくさび形状の間隙(切り欠き部)が形成されているので、定着ベルト92のエッジ面がCリング804に当接すると、定着ベルト92のスラスト力によって、Cリング804はフランジ部802側にバイメタル状の弾性変形をすることが可能である。そのため、定着ベルト92のスラスト力によってCリング804が押圧力を受けた場合には、Cリング804がバイメタル状の弾性変形することでスラスト力を吸収する緩衝体となり、定着ベルト92のエッジ面がCリング804から受ける反力が緩和される。そのため、定着ベルト92のエッジ面に対して作用する力(ダメージ)は低減され、定着ベルト92のエッジ面に亀裂や破断等が生じるのを抑制することが可能となる。
また、エンドレスベルト62のエッジ面と、Cリング804の内側面との摺擦は、それぞれの当接圧が緩和された状態で生じるので、摺擦音(異音)をユーザが不快に感じない程度まで低減することもできる。」

イ 引用文献1の図7を参照すると、エッジガイド部材のフランジ部はベルト走行ガイド部の外径側に張り出しており、更に、Cリングは、定着ベルトの、加圧ローラ側以外の部分において、片寄りを規制している点が示されている。

上記「ア」及び「イ」を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置であって、
原形が円筒形状に形成された無端ベルトである定着ベルトが用紙のトナー像担持面側に配置され、
定着ベルトの内側に発熱源の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータが配設され、セラミックヒータからニップ部に熱を供給するように構成され、セラミックヒータは、加圧ロール側の面がほぼフラットに形成され、定着ベルトを介して加圧ロールに押圧される状態で配置されニップ部を形成し、
加圧ロールは定着ベルトに対向するように配置され、加圧ロールとセラミックヒータとの間でニップ部を構成し、
定着ベルト内周面とセラミックヒータとの間には、定着ベルトの内周面とセラミックヒータとの摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シートが配設されており、
エッジガイド部材のベルト走行ガイド部の外周面が、定着ベルトの幅方向両端部の内周面を支持し、定着ベルトはベルト走行ガイド部の外周面に沿って回動し、
エッジガイド部材のフランジ部はベルト走行ガイド部の外径側に張り出しており、
内側面側にCリングが配置されたフランジ部によって定着ベルトのベルトウォークを制限して、加圧ローラ側以外の部分において、定着ベルトに片寄りが生じるのを規制しており、
定着ベルトのエッジ面は、直接フランジ部に当接することなく、まずCリングに当接して、このCリングを介してフランジ部によって片寄りが規制され、定着ベルトのエッジ面に対して作用する力(ダメージ)は低減され、定着ベルトのエッジ面に亀裂や破断等が生じるのを抑制することが可能となる、
定着装置。」

(2) 引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0032】
図2に示す例の定着装置2は、上記定着ベルト21の内部に上記加熱手段としてのハロゲンヒータ24を設けており、このハロゲンヒータ24よりなる輻射熱源で定着ベルト21を直接加熱する。また、本画像形成装置は定着装置2の予熱を行わず、記録時に定着ベルト21を瞬時に立ち上げるように構成するため、ハロゲンヒータ24の加熱効率を最大限に高めることが要求される。」

してみると、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「定着ベルトの内部に加熱手段としてのハロゲンヒータを設けて、このハロゲンヒータよりなる輻射熱源で定着ベルトを直接加熱する定着装置。」

(3) 引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【0027】
(2)加熱定着装置6
本実施例の画像加熱装置である加熱定着装置6は、加熱部材として円筒状の金属ベルト(記録材上の画像をニップ部にて加熱するエンドレスベルト)を用いた、ベルト(フィルム)加熱方式、加圧部材駆動方式の装置である。」

イ「【0031】
加熱ユニット9は、
a:耐熱性・剛性を有する横長の断熱ステイホルダー12
b:この断熱ステイホルダー12の下面に、該部材の幅方向に沿って設けた凹溝部12a(図4)に嵌め入れて固定支持させた、通電により発熱するヒータ(加熱体)11
c:ヒータ11を固定支持させた断熱ステイホルダー12にルーズに外嵌させた、加熱部材としての可撓性を有する円筒状(エンドレス)の定着ベルト10
d:断熱ステイホルダー12の左右両端側の外方延長部12bにそれぞれ装着した、定着ベルト10の幅方向(母線方向)への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材15
等の組み立て体(アセンブリ)である。」

ウ「【0035】
そして、左右の固定フランジ15Bの加圧部15dと不動のバネ受け部材40との間に加圧バネ17を縮設することで加熱ユニット9を所定の加圧力をもって加圧ローラ20の上面に対して定着ベルト10の弾性と加圧ローラ20の弾性に抗して押圧させて所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。定着ニップ部Nにおいては加熱ユニット9の加圧ローラ20に対する加圧により定着ベルト10がヒータ11を保持させた断熱ステイホルダー12の下面と弾性加圧ローラ20の上面との間に挟まれて、断熱ステイホルダー12の下面に倣って撓み、定着ベルト10の内面が断熱ステイホルダー12の下面およびヒータ11の下面の扁平面に密着した状態になる。」

エ「【0053】
d)フランジ部材15
断熱ステイホルダー12の左右両端部側にそれぞれ装着されて、記録材上の画像をニップ部にて加熱するエンドレスベルトである定着ベルト10の幅方向への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材15は、定着ベルト10と所定距離隔てて設けられ定着ベルト10の寄りに伴い定着ベルト10の端面と突き当たることにより従動回転自在な平板状の回転体としての無端のリング形状または円盤形状である第1の規制部材(以下、従動リング(摺動フランジ)と記す)15Aと、定着ベルト10による従動リング15Aの幅方向への移動を規制する実質的に回転不可に固定された固定体である第2の規制部材(以下、固定フランジ(と記す)15Bとからなっている。」

オ「【0059】
b:従動リング15A
第1の規制部材としての従動リング15Aは、PPS、液晶ポリマー、フェノール樹脂等の耐熱樹脂より形成されている。
【0060】
その形状は、図9・図10に示すとおりに、リング型の円盤であり、外径Loは固定フランジ15の挿入部15aの内径よりも小さく、切り欠き部15bよりも大きい。また内径Liはヒータ11に干渉しないような大きさである。この内径Li内に断熱ステイホルダー12の外方延長部12bが貫通位置して従動リング15Aと断熱ステイホルダー12の外方延長部12bとは干渉しない。
【0061】
この無端のリング形状または円盤形状の第1の規制部材としての従動リング15Aは回転体である定着ベルト10の母線方向端部に対向する面が平面のみである。
【0062】
従動リング15Aは定着ベルト10の幅方向の端部を規制すると共に、定着ベルト10が幅方向の力を受けて寄り、従動リング15Aに突き当たると同時に従動リング15Aは定着ベルト10から駆動力を受け、定着ベルト10と共に回転することで、定着ベルト10の端部が摺擦することを防止し、且つ定着ベルト10の回転形状を拘束しないため、定着ベルト10に負荷を与えず定着ベルト10の端部の破損を防止する。」

カ 引用文献3の図3を参照すると、従動リングの外周は、定着ベルトと当接する断熱ステイホルダーの下面よりも加圧ローラ側にある点が示されている。

上記「ア」?「カ」を総合すると、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「耐熱性・剛性を有する横長の断熱ステイホルダー、ヒータを固定支持させた断熱ステイホルダーにルーズに外嵌させた、加熱部材としての可撓性を有する円筒状(エンドレス)の定着ベルト、断熱ステイホルダーの左右両端側の外方延長部にそれぞれ装着した、定着ベルトの幅方向(母線方向)への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材等の組み立て体である加熱ユニットを有し、
定着ニップ部においては加熱ユニットの加圧ローラに対する加圧により定着ベルトがヒータを保持させた断熱ステイホルダーの下面と弾性加圧ローラの上面との間に挟まれて、断熱ステイホルダーの下面に倣って撓み、定着ベルトの内面が断熱ステイホルダーの下面およびヒータの下面の扁平面に密着した状態になり、
定着ベルトの幅方向への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材は、定着ベルトと所定距離隔てて設けられ定着ベルトの寄りに伴い定着ベルトの端面と突き当たることにより従動回転自在な平板状の回転体としての無端のリング形状または円盤形状である従動リングと、定着ベルトによる従動リングの幅方向への移動を規制する実質的に回転不可に固定された固定体である固定フランジとからなり、
従動リングの外周は、定着ベルトと当接する断熱ステイホルダーの下面よりも加圧ローラ側にあり、
従動リングは定着ベルトの幅方向の端部を規制すると共に、定着ベルトが幅方向の力を受けて寄り、従動リングに突き当たると同時に従動リングは定着ベルトから駆動力を受け、定着ベルトと共に回転することで、定着ベルトの端部が摺擦することを防止し、且つ定着ベルトの回転形状を拘束しないため、定着ベルトに負荷を与えず定着ベルトの端部の破損を防止する、
加熱定着装置。」

2 対比・判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1における「原形が円筒形状に形成された無端ベルトである定着ベルト」は、本願発明1の「回転可能な無端状の定着ベルト」に相当する。
(イ)引用発明1の「定着ベルトの内側」に「配設され」た「セラミックヒータ」は、本願発明1の「前記定着ベルトを加熱する加熱部材」に相当する。
(ウ)引用発明1の「セラミックヒータ」及び「低摩擦シート」により、本願発明1の「前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材」に相当するものを構成している。
(エ)引用発明1の「加圧ロール」は、「定着ベルトに対向するように配置され、加圧ロールとセラミックヒータとの間でニップ部を構成し」ており、更に、「定着ベルト内周面とセラミックヒータとの間には」、「低摩擦シートが配設されて」いることから、当該「加圧ロール」は、定着ベルトを介して「セラミックヒータ」及び「低摩擦シート」から成るものに当接し、定着ベルトとの間にニップ部を形成していることは明らかである。したがって、引用発明1の「加圧ロール」は、本願発明1の、「前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体」に相当する。
(オ)引用発明1においては、「エッジガイド部材のベルト走行ガイド部の外周面が、定着ベルトの幅方向両端部の内周面を支持し」ているから、当該「エッジガイド部材」は、本願発明1の「前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しないベルト保持部材」に相当する。
(カ)引用発明1の「ベルト走行ガイド部」は、「外周面が、定着ベルトの幅方向両端部の内周面を支持し」ているから、当該「ベルト走行ガイド部」と、本願発明1の「前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部」とは、「定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される部材」との概念で共通する。また、引用発明1の「フランジ部」は、本願発明1の「フランジ部」に相当する。
してみると、引用発明1において「エッジガイド部材」が「ベルト走行ガイド部」と「フランジ部」とを有している点と、本願発明1の「前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部と、筒部の外径側に張り出したフランジ部とを有し」ている点とは、「前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される部材と、前記部材の外径側に張り出したフランジ部とを有し」ている点で共通する。
(キ)引用発明1の「Cリング」は、「フランジ部」の「内側面側」に配置されており、更に、「定着ベルトのエッジ面は、直接フランジ部に当接することなく、まずCリングに当接」するから、引用発明1において当該「Cリング」を配置した構成と、本願発明1の「前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に、前記筒部の外周に嵌められた保護部材を設け」た構成とは、「前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に保護部材を設け」た点で共通する。
(ク)引用発明1の「定着装置」は、本願発明1の「定着装置」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部材と、
前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しないベルト保持部材
とを有した定着装置において、
前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される部材と、前記部材の外径側に張り出したフランジ部とを有し、
前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に保護部材を設けた、
定着装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「加熱部材」は、「前記定着ベルトとニップ形成部材とが当接する以外の前記定着ベルトの内側を直接加熱する」のに対し、引用発明1の「セラミックヒータ」はそのようなものではない点。
(相違点2)「定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される部材」について、本願発明1は「筒部」であるのに対し、引用発明1の「ベルト走行ガイド部」は、筒であるのか明らかでない点。
(相違点3)本願発明1の「保護部材」は、「筒部の外周に嵌められた」ものであるのに対し、引用発明1の「Cリング」はそのようなものといえるのか明らかでない点。
(相違点4)本願発明1は、「前記対向回転体と前記ベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置され」ているのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。
(相違点5)本願発明1の「保護部材」は、「前記ベルト保持部材のフランジ部に対して回転可能である」のに対し、引用発明1の「Cリング」はそのようなものではない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点4について先に検討すると、引用発明2あるいは3のいずれも、「前記対向回転体と前記ベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置され」た構成を有していないことは明らかである。
また、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は上記相違点4に係る発明特定事項を備えることによって、「定着ベルト21の端部での亀裂や筋の発生を防止できる」(段落【0061】参照。)という作用効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本願発明2-14について
本願発明2-14は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 特許法第39条第1項について
1 先願発明
当審拒絶理由に引用された先願4であり、本願の出願日とみなされる平成24年1月11日前に出願されたものである特願2011-178227号(特許第5773151号公報)の請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「先願発明1」-「先願発明9」という。)は、その掲載公報の特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
回転可能な無端状ベルトの定着部材と、
前記定着部材の外周側に該定着部材と圧接可能に配置される加圧部材と、
前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着部材を直接または間接的に加熱する加熱手段と、
当該定着装置のフレームに固設されるフランジ部、及び該フランジ部のフランジ面に立設され前記定着部材の軸方向端部の内周部に挿入されて該定着部材を直接または間接的に回転可能に保持する円筒部を有するフランジ部材と、
を備え、
前記フランジ部材における円筒部は、その外周面の円周方向に溝が形成されてなり、
ドーナツ盤形状であって、前記溝にその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に前記定着部材の軸方向端部が当接するスリップリングを有しており、
前記スリップリングの回転軸を中心として、次式(1)を満足することを特徴とする定着装置。
前記スリップリングの内径<前記フランジ部材の円筒部の最小外寸<前記定着部材の走行軌跡における最大外寸<前記スリップリングの外径 ・・・(1)
【請求項2】
前記フランジ部におけるフランジ面の最大外寸が前記スリップリングの外径よりも小であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の走行軌跡が真円でないことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記スリップリングにおける前記フランジ面側の盤面はその外周に向かうにつれて軸方向において前記定着部材から離れる側に傾斜する傾斜面となっており、
前記フランジ面は、前記スリップリングの盤面の傾斜に沿った傾斜面となっていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記スリップリングと前記フランジ面との間に、該スリップリングから発生する磨耗粉を貯蔵するスペースを有することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記スリップリングは、盤面に外周から内径部に連通したスリットを有することを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記円筒部は、前記定着部材の軸方向端部の内径部に挿入される部分が別部材で形成されており、該別部材が前記フランジ部材のフランジ面に立設された小径円筒部に装着されることにより前記溝が形成されることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着部材の内周側に配置され、外周面が該定着部材の回転を支持する略円筒状の支持部材を備え、
前記フランジ部材は、前記円筒部を前記支持部材の軸方向端部の内周部に挿入してその外周面で前記支持部材を保持することを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1?8のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。」

2 対比・判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と先願発明1とを対比する。
(ア)先願発明1における「回転可能な無端状ベルトの定着部材」は、本願発明1における「回転可能な無端状の定着ベルト」に相当する。
(イ)先願発明1における「前記定着部材を直接または間接的に加熱する加熱手段」は、本願発明1における「前記定着ベルトを加熱する加熱部材」に相当する。
(ウ)先願発明1における「ニップ形成部材」は、「前記定着部材の内周側に配置され」ているから、当該「ニップ形成部材」は、本願発明1の「前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材」に相当する。
(エ)先願発明1における「加圧部材」は、「前記定着部材の外周側に該定着部材と圧接可能に配置され」ており、更に、「ニップ形成部材」は「前記定着部材を介して前記加圧部材と圧接してニップ部を形成」していることからすると、「加圧部材」は、(無端状ベルトである)定着部材を介してニップ形成部材に当接することにより定着部材との間にニップ部を形成していることは明らかである。
してみると、先願発明1における、「無端状ベルトの定着部材を介してニップ形成部材に当接することにより無端状ベルトの定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材」と、本願発明1の「前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体」とは、「前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向部材」との概念で共通する。
(オ)先願発明1の「フランジ部材」は、本願発明1の「ベルト保持部材」に相当する。
(カ)先願発明1の「加熱部材」は、「前記定着部材を直接または間接的に加熱する」ものであり、定着部材を直接的に加熱する点と、定着部材を間接的に加熱する点とが選択肢となっているが、先願発明1が、(無端状ベルトである)定着部材を直接的に加熱するものであるとした場合、そのような構成と、本願発明1の「前記加熱部材は、前記定着ベルトとニップ形成部材とが当接する以外の前記定着ベルトの内側を直接加熱する」点とは、「前記加熱部材は、前記定着ベルトを直接加熱する」との概念で共通する。
(キ)先願発明1の「円筒部」は、「(無端状ベルトである)定着部材の軸方向端部の内周部に挿入されて該定着部材を直接または間接的に回転可能に保持する」ことから、本願発明1の「前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部」に相当する。また、先願発明1の「フランジ部」について、「円筒部」が「フランジ部のフランジ面に立設され」ていることから、フランジ部が円筒部の外径側に張り出していることは明らかである。よって、先願発明1の「フランジ部」は、本願発明1の「筒部の外径側に張り出したフランジ部」に相当する。したがって、先願発明1は、本願発明1と同様、「前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部と、筒部の外径側に張り出したフランジ部とを有し」ているといえる。
(ク)先願発明1において、「前記フランジ部材における円筒部は、その外周面の円周方向に溝が形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝にその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に前記定着部材の軸方向端部が当接するスリップリングを有して」おり、当該「スリップリング」は、本願発明1の、「前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に、前記筒部の外周に嵌められた保護部材」に相当し、また、本願発明1と同様に、「前記ベルト保持部材のフランジ部に対して回転可能である」といえる。
(ケ)先願発明1において、「前記スリップリングの回転軸を中心として」、「前記スリップリングの内径<前記フランジ部材の円筒部の最小外寸<前記定着部材の走行軌跡における最大外寸<前記スリップリングの外径」という式を満足しており、この式によれば、スリップリングの外径は定着部材の走行軌跡における最大外寸よりも大きいから、軸方向から見たときにスリップリングの外周は、(無端状ベルトである)定着部材と当接するニップ形成部材の面よりも加圧部材側にあることは明らかである。したがって、先願発明1のそのような構成と、本願発明1の「軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあ」る構成とは、「軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向部材体側にあ」る点で共通する。
(コ)先願発明1の「定着装置」は、本願発明1の「定着装置」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明1とは、
「回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部材と、
前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向部材と、
ベルト保持部材とを有し、
前記加熱部材は、前記定着ベルトを直接加熱する定着装置において、
前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部と、筒部の外径側に張り出したフランジ部とを有し、
前記定着ベルトの軸方向端部と前記ベルト保持部材のフランジ部の端面との間に、前記筒部の外周に嵌められた保護部材を設け、軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向部材側にあり、
前記保護部材は、前記ベルト保持部材のフランジ部に対して回転可能である、
定着装置。」
で一致するといえるが、下記の相違点があるので、両者は同一であるとはいえない。

(相違点)
(相違点1)
「前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向部材」について、本願発明1は「対向回転体」であるのに対し、先願発明1は「加圧部材」であって、「回転体」であるのか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明1の「ベルト保持部材」では、「前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しない」ものであるのに対し、先願発明1の「フランジ部材」は、回転可能な無端状ベルトの定着部材を軸方向「両端部」で「保持」しているのか明らかでなく、「軸方向両端部間で保持しない」のかも明らかでない点。
(相違点3)
本願発明1の「加熱部材」は、「前記定着ベルトとニップ形成部材とが当接する以外の前記定着ベルトの内側」を直接加熱するのに対し、先願発明1の「加熱手段」は、定着部材を直接的に加熱するものではあるが、「定着ベルトとニップ形成部材とが当接する以外の定着ベルトの内側」を直接加熱するのか明らかでない点。
(相違点4)
本願発明1の「保護部材」は、「軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあ」るのに対し、先願発明1においては、「加圧部材」が「回転体」であるのか明らかでないので、軸方向から見たときにスリップリングの外周は、無端状ベルトの定着部材と当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にあるといえるのか明らかでない点。
(相違点5)
本願発明1は、「前記対向回転体と前記ベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置され」ているのに対し、先願発明1は、そのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断(実質同一か否かの検討)
事案に鑑みて、上記相違点5について先に検討すると、定着装置の技術分野において、定着ベルトの端部での亀裂や筋の発生を防止できるように、対向回転体とベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置された点は、本願出願前において周知技術であるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1と先願発明1とは、実質同一であるとはいえない。

また、先願発明2-9は、上記「1」のとおりであって、先願発明2-9のいずれも、「前記対向回転体と前記ベルト保持部材とが、軸方向でオーバーラップすることなく軸方向にずれた状態で配置され」た点を有していないことは明らかであり、本願発明1と先願発明1とが同一ではなく、また、実質同一でもないのと同様の理由により、本願発明1と先願発明2-9とは、いずれも同一ではなく、また、実質同一でもない。

(2) 本願発明2-14について
本願発明2-14は、それぞれ、本願発明1の構成を全て引用するものであるから、本願発明1と先願発明1-9とがいずれも同一ではなく、また、実質同一でもないのと同様の理由により、本願発明2-14と先願発明1-9とはいずれも同一ではなく、また、実質同一でもない。

第7 原査定について
上記「第2」のとおり、原査定は、本願請求項1-3、10、11、14に係る発明は、先願4に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないというものであるが、上記「第6」のとおりであるから、本願発明1-3、10、11、14は、先願4に係る発明と同一とはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由通知について
当審で通知した拒絶の理由のうち、特許法第29条第2項及び特許法第39条第1項についての拒絶の理由は、それぞれ「第5」及び「第6」で検討済みであるから、ここでは他の理由について検討する。

1 特許法第36条第6項第1号および第2号について
本件出願は、特許請求の範囲(請求項3-10、12-14について)の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。

具体的には以下のとおりである。

・請求項3-10、12-14
請求項3には、
「保護部材の内周面と、ベルト保持部材の筒部の外周面との間に隙間を設けた」
とあるが、この記載では、「保護部材の内周面と、ベルト保持部材の筒部の外周面との間」の「隙間」の設け方によって「保護部材」が「ベルト保持部材の筒部」の外周に嵌められた状態が大きく異なることから、「隙間」の技術的意味が不明確である。
また、明細書の段落【0058】では、
「スリップリング41は、ベルト保持部材40の円筒部40aの外周に余裕を持って嵌められているため、定着ベルト21の端部がスリップリング41に接触した際に、スリップリング41は定着ベルト21と連れ回り可能となっている。」
とあるが、この記載では、スリップリングが連れ回り可能な程度に円筒部の外周に嵌められている状態を、「余裕を持って嵌められている」と表現しているとも考えられ、スリップリングの内周の径と、円筒部の外周の径とが同程度となっていることを意味しているとすれば、隙間は必ずしも存在せず、請求項3の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものといえない。
請求項3を直接的または間接的に引用する請求項4-10、12-14についても同様である。

・請求項8、10、12-14
請求項8には、
「前記ニップ形成部材の端部は前記加圧部材の端部よりも軸方向中央側にある請求項1?7の何れか1項に記載の定着装置。」
とあるが、「加圧部材」は前出されておらず、「前記加圧部材」とは何を指すのか不明確である。
請求項8を直接的または間接的に引用する請求項10、12-14についても同様に不明確となる。

・請求項13-14
請求項13には、
「フランジ部の端面と加圧部材の端部との間の軸方向距離から保護部材の厚さを差し引いた値が10mm以上である請求項1?12何れか1項に記載の定着装置。」
とあるが、「加圧部材」とはいかなるものか不明である。
請求項13を引用する請求項14についても同様に不明確となる。

しかしながら、平成30年7月17日付けの手続補正で、請求項3の「保護部材の内周面と、ベルト保持部材の筒部の外周面との間に隙間を設けた」は、「前記ベルト保持部材の筒部の外周に嵌められた前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である」と補正され、この補正により請求項3及び請求項3を引用する請求項に係る発明は明確なものとなり、また、「前記ベルト保持部材の筒部の外周に嵌められた前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である」点は、発明の詳細な説明(段落【0058】)に記載されたものであるから、請求項3及び請求項3を引用する請求項に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、平成30年7月17日付けの手続補正で、請求項8、13の「加圧
部材」は「対向回転体」と補正されており、請求項8、13及びそれらの請求項を引用する請求項に係る発明は明確なものとなった。
したがって、この拒絶理由は解消した。

2 特許法第17条の2第3項について
当審は、平成29年7月10日付け手続補正書でした補正(請求項3-10、12-14について)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。

具体的には以下のとおりである。

・請求項3-10、12-14
請求項3には、
「保護部材の内周面と、ベルト保持部材の筒部の外周面との間に隙間を設けた」
とあるが、当初明細書の段落【0058】では、
「スリップリング41は、ベルト保持部材40の円筒部40aの外周に余裕を持って嵌められているため、定着ベルト21の端部がスリップリング41に接触した際に、スリップリング41は定着ベルト21と連れ回り可能となっている。」
と記載されており、この記載では、スリップリングが連れ回り可能な程度に円筒部の外周に嵌められている状態を、「余裕を持って嵌められている」と表現しているとも考えられ、スリップリングの内周の径と、円筒部の外周の径とが同程度となっていることを意味しているとすれば、隙間は存在しないことになるから、上記請求項3に記載されたものは新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項を追加するものであるといえる。
請求項3を直接的または間接的に引用する請求項4-10、12-14についても同様である。

しかしながら、平成30年7月17日付けの手続補正で、請求項3の「保護部材の内周面と、ベルト保持部材の筒部の外周面との間に隙間を設けた」は、「前記ベルト保持部材の筒部の外周に嵌められた前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である」と補正されており、この記載事項は当初明細書の段落【0058】の記載内容と対応するものであり、当初明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえず、新規事項を追加するものであるとはいえないから、この拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-20 
出願番号 特願2016-91102(P2016-91102)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 55- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 4- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
荒井 隆一
発明の名称 定着装置および画像形成装置  
代理人 城村 邦彦  
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