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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1344331
審判番号 不服2017-13339  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-10-02 
事件の表示 特願2013- 91679「車両用情報提示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-215771、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月24日に出願されたものであって、平成28年11月25日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年6月26日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成29年9月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

・理由(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・引用文献等1-3
請求項1に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
引用文献1には、「他車両地点情報(お気に入り地点の情報)を他車両から車車間通信で受信する(共有する)他車両地点情報受信部と、前記他車両地点情報受信部が受信した前記他車両地点情報を蓄積する他車両情報蓄積部(お気に入り地点情報メモリ17)と、前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報に基づいて情報を共有する点が記載されており、前提となる発明が記載されている(段落0037-0039、0041、0054、0058、0063-0064、0070-0072、0082、0085等を参照されたい)。
そして、請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明は下記の点で、一応、相違している。
相違点1
請求項1に係る発明が、生成した提示情報を自車両の乗員に提示するものであるのに対して、引用文献1記載の発明は、共有した情報に基づいて、提示情報を生成し、生成した前記提示情報を自車両の乗員に提示する点が明確でない点。
相違点2
請求項1に係る発明が、他車両情報蓄積部が蓄積している他車両地点情報のうちから、蓄積してから設定期間が経過した前記他車両地点情報を消去するものであるのに対して、引用文献1記載の発明では、そのような構成が開示されていない点。
上記相違点について検討する。
相違点1に対して、
引用文献2には、他車両地点情報(お気に入り地点の目的地情報)に基づいて、提示情報を生成し、生成した前記提示情報を自車両の乗員に提示する点が記載されている(段落0035-0038、0047、0050-0055、0058等を参照されたい)。そして、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用して、相違点1に係る発明の構成のようにすることは、当業者にとって容易である。
相違点2に対して、
引用文献3には、蓄積してから設定期間が経過した他車両地点情報(運行情報)を消去する点が記載されている(段落0044、0052等を参照されたい)。そして、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用して、相違点2に係る発明の構成のようにすることは、当業者にとって容易である。

・請求項2に係る発明は、引用文献1-4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項3に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項4に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項5に係る発明は、引用文献1-7に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-133182号公報
2.特開2007-121006号公報
3.特開2004-30450号公報
4.特開2004-257825号公報
5.特開2012-18175号公報
6.特開2010-39952号公報
7.特開2009-175610号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、出願当初の明細書及び平成29年1月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1にないし5記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)。

「【請求項1】
自車両の乗員に情報を提示する車両用情報提示装置であって、
他車両が立ち寄った地点に関する情報および他車両がナビゲーション装置に設定した目的地に関する情報の少なくともいずれかである他車両地点情報を他車両から車車間通信で受信する他車両地点情報受信部と、
前記他車両地点情報受信部が受信した前記他車両地点情報を蓄積する他車両情報蓄積部と、
前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報に基づいて提示情報を生成する提示情報生成部と、
前記提示情報生成部が生成した前記提示情報を自車両の乗員に提示する情報提示部と、
前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報のうちから、蓄積してから設定期間が経過した前記他車両地点情報を消去する他車両地点情報消去部と、
を備えたことを特徴とする車両用情報提示装置。
【請求項2】
自車両が立ち寄った地点および自車両がナビゲーション装置に設定した目的地の少なくともいずれかに関する情報である自車両地点情報を取得する地点情報取得部と、
前記地点情報取得部が取得した前記自車両地点情報を蓄積する自車両情報蓄積部と、
前記自車両情報蓄積部が蓄積している前記自車両地点情報を他車両に車車間通信で送信する自車両地点情報送信部と、
前記自車両情報蓄積部が蓄積している前記自車両地点情報のうちから、蓄積してから設定期間が経過した前記自車両地点情報を消去する自車両地点情報消去部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用情報提示装置。
【請求項3】
自車両が停車しているか否かを判定する停車判定部と、
自車両の現在位置を取得する位置取得部と、
前記位置取得部が取得した前記現在位置から設定距離以内に予め定めた地点情報に対応付けられている地点である設定地点があるか否かを判定する設定距離内判定部とを備え、
前記地点情報取得部は、
前記停車判定部が自車両が停車していると判定し、且つ、前記設定距離内判定部が前記現在位置から設定距離以内に前記設定地点があると判定した場合には、前記現在位置から設定距離以内にあると判定した前記設定地点に自車両が立ち寄ったと判定する立寄判定部と、
前記立寄判定部が自車両が立ち寄ったと判定した前記設定地点に関する情報を前記自車両地点情報として取得する自車両地点情報取得部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の車両用情報提示装置。
【請求項4】
前記立寄判定部は、前記停車判定部が自車両が停車していると判定し、且つ、前記設定距離内判定部が前記現在位置から設定距離以内に前記設定地点があると判定した状態が設定時間以上継続した場合には、前記設定地点に自車両が立ち寄ったと判定するとともに、前記現在位置から設定距離以内にあると判定した前記設定地点のジャンルに基づいて前記設定時間を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両用情報提示装置。
【請求項5】
前記提示情報生成部は、前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報を順に配置した情報を前記提示情報として生成するとともに、前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報に基づいて前記他車両地点情報の配置順を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用情報提示装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1(特開2006-133182号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献1には、「移動体用ナビゲーション装置及びそのための情報支援サーバ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)引用文献1の記載事項
1a)「【0005】
ところで、上述のように利用者間でお気に入り地点情報を共有する場合、嗜好の類似した利用者間で情報を共有できるように、利用者間の嗜好性の類似を考慮するのが好ましい。そのような利用者間の嗜好性の類似を考慮した情報共有システムとしては、例えば、該各利用者の設定した目的地が同じ場合に利用者同士の嗜好が類似しているものとして利用者間で情報共有させるものなどが考えられる。
【0006】
しかしながら、このように利用者の行う目的地設定に基づいて情報共有を行う場合、目的地を設定していなければ情報共有ができなかったり、逆に、目的地を設定しているために、情報共有したくない場合でも強制的に情報共有させられる可能性もあり、利用者にとって利便性の良いシステムであるとは言えない。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、他のナビゲーション装置と通信可能に構成された移動体用ナビゲーション装置において、目的地を設定していない場合でも自らの意思により他の利用者とお気に入り地点情報を共有できるようにして、利用者の利便性を向上することにある。」

1b)「【0037】
(実施形態1)
-ナビゲーションシステムの全体構成-
図1は、本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムAの全体構成を示し、このナビゲーションシステムAは、少なくとも、車両V,V’にそれぞれ搭載された車載ナビゲーション装置1,2を備えていて、該車載ナビゲーション装置1,2同士の間で近距離無線通信機18,38によって通信可能なように構成されている。そして、前記ナビゲーションシステムAでは、詳しくは後述するが、図2及び図3に示すように、車載ナビゲーション装置1,2にそれぞれ記憶されたお気に入り地点の情報を、該車載ナビゲーション装置1,2間で共有できるようになっている。
【0038】
前記車載ナビゲーション装置1,2は、それぞれ、車両Vに搭載され、予め設定された目的地まで経路誘導を行うナビゲーション機能を有するものであり、両者の構成は同じであるため、以下では車載ナビゲーション装置1についてのみ説明する。
【0039】
前記車載ナビゲーション装置1は、各種信号の制御処理を行うコントローラとしての車載ナビCPU11を備えている。この車載ナビCPU11には、GPS信号やジャイロセンサからの出力信号等に基づいて車両Vの現在地を検出する現在地検出センサ12と、地図情報が記憶された地図メモリ13と、各種施設の位置等の情報がジャンルと共に記憶された施設情報メモリ14(施設情報記憶手段)と、車両Vの現在地や周辺地図等の各種情報を画面上に表示するディスプレイ15と、各種設定操作等を行うための操作スイッチ16とが接続されている。なお、前記車載ナビCPU11は、ナビゲーション専用のものに限らず、汎用性のあるものであってもよい。」

1c)「【0041】
また、前記車載ナビCPU11には、利用者が気に入った地点(例えばラーメン店)の情報を記憶するためのお気に入り地点情報メモリ17(お気に入り情報記憶手段)と、そのお気に入り地点情報を他の車載ナビゲーション装置2と共有する場合などに該車載ナビゲーション装置2と近距離通信を行うための通信手段としての近距離無線通信機18とが接続されている。この近距離無線通信機18は、例えば携帯電話やPDAなどのような携帯端末19とも送受信可能に構成されていて、利用者が車外にいる場合でも携帯端末19によって車載ナビゲーション装置1を操作することができるようになっている。
【0042】
以上のような構成において、前記車載ナビCPU11は、現在地検出センサ12によって車両V(車載ナビゲーション装置1)の移動停止を検出すると、利用者がその周辺の施設に立ち寄ったものとして、周辺施設を施設情報メモリ14から検索するようになっている。そして、検索された周辺施設のジャンル(種別)の中から、利用者がお気に入り地点の情報をお気に入り地点情報メモリ17に記憶しているジャンルと一致するもののみを選別し、その選別されたジャンルに記憶されたお気に入り地点情報が所定距離以上、遠くの地点のものであれば、操作者に情報共有するかどうかを選択させて、情報共有可能と選択されたジャンルのお気に入り地点情報のみを他の車載ナビゲーション装置2と共有するようになっている。ここで、お気に入り地点情報が所定距離以上、遠くの地点のものであるとは、利用者が立ち寄っていると思われる範囲(所定距離の範囲)よりも外側の地点についてお気に入り地点情報が登録されていて、該お気に入り地点情報が他の利用者にとって有益な情報であることを意味している。」

1d)「【0044】
ここで、お気に入り地点情報を共有することのできる相手は、共有しようとしているジャンルについてお気に入り地点情報を記憶しているものであって、自分との情報共有を認めたものに限られる。そのため、車載ナビゲーション装置2のお気に入り地点情報メモリ37に情報共有しようとしているジャンルのお気に入り地点情報が記憶されているかどうか、記憶されている場合には、該車載ナビゲーション装置2の利用者が情報共有を認めているかどうかを、前記近距離無線通信機18を介した通信によって確認したうえで情報共有するようにしている。したがって、上述のように情報共有するジャンルを利用者に選択させる場合には、無駄な選択操作をさせないように、選択操作の前に、情報共有可能な相手が周辺にいるかどうかを判定するのが好ましい。
【0045】
このように、現在位置周辺の施設のジャンルを読み出して、その中から利用者がお気に入り地点情報を登録しているジャンルのみを選別することで、利用者の嗜好を推測することができるとともに、前記お気に入り地点情報が所定距離の範囲内にある場合には、その選別されたジャンルに属する周辺施設のいずれかに利用者が立ち寄っているものと推測することができる。そして、車載ナビゲーション装置1と近距離通信できるような範囲に位置している車載ナビゲーション装置2に同じジャンルのお気に入り地点情報が記憶されている場合には、その利用者も同じようなジャンルの施設に立ち寄っていると推測することで、両者の嗜好性の類似を判断することができる。したがって、嗜好性の類似している両者が同じように立ち寄っていると思われる施設のジャンルに関するお気に入り地点情報を共有することで、両者にとって有益な情報を共有することができ、利用者の利便性を向上することができる。
【0046】
しかも、情報共有する際に、利用者に情報共有をするかどうかの意思確認を行うようにすることで、利用者の意に反した情報共有が行われるのを防止することができ、利用者の利便性をより向上することができる。」

1e)「【0054】
前記お気に入り地点情報メモリ17は、図4(a)に示すようなお気に入り地点情報を記憶するためのものであり、施設名、ディスプレイ15に表示するアイコンの種別、その施設のジャンル(施設種別)、その施設の位置情報(緯度、経度など)、その他の詳細情報などが記憶される。また、前記お気に入り地点情報メモリ17には、他の車載ナビゲーション装置2と情報共有してもよいかどうか(紹介可否)や、そのお気に入り地点情報のステータスなども記憶される。そして、お気に入り地点情報が前記車載ナビゲーション装置1のディスプレイ15に表示される場合には、図5に示すように、地図データ上にお気に入り地点の名称(施設名)や、施設種別等を示すアイコン、詳細情報を表示させるためのアイコン等が表示される。なお、前記図5は、車載ナビゲーション装置1のディスプレイ15に表示される画面の一例を示しており、該車載ナビゲーション装置1の現在位置は車両の形状をしたアイコンによって表示されている。
【0055】
そして、前記お気に入り地点情報メモリ17では、図4(b)に示すように、お気に入り地点情報についての共有設定を予め設定できるようになっている。詳しくは、操作スイッチ16によって所定の操作を行うことで、ディスプレイ15に前記図4(b)に示すような情報共有設定という画面が表示され、その画面上で、各お気に入り地点の紹介可否、すなわち他の車載ナビゲーション装置2と情報共有してもよいかどうかを選択できるようになっている。また、他の車載ナビゲーション装置2と情報共有を開始する前に利用者に共有開始の可否を確認する、図12に示すような事前案内の要否も設定できるようになっている。」

1f)「【0057】
上述の情報共有設定について以下で詳細に説明すると、同じジャンル内で、2箇所以上の地点の情報を共有可に設定した場合、他のナビゲーション装置2との間で情報共有可能なジャンルとして認識され、共有可に設定された地点のうち、2箇所以上の地点に利用者が行ったことがある場合には、情報共有可能ジャンルとして登録される。一方、情報共有可能と設定した地点が2箇所以上ある場合でも、利用者の行ったことのある地点が2箇所以上ない場合には、情報共有準備中のジャンルとして登録される(例えば、図4(b)に示す「飲食→中華」)。
【0058】
ここで、図4に示すように、利用者が行ったことがあると判断される(例えば、目的地設定をしたことがある場合やその周囲近辺で車両Vの停止が検出され、利用者が立ち寄ったと判断される場合など)地点は、ステータスが正式と表示される一方、利用者が行ったことのない地点であれば、ステータスは仮と表示される。なお、各施設のステータスは、前記図4(b)に示す情報共有設定画面において、変更することもできる。こうすれば、他の利用者に紹介したいと思っている場所に実際に行ったことがなくても、ステータスを正式に変更することで、情報提供が可能となる。」

1g)「【0061】
このように、他の利用者と情報共有が可能と設定され、且つ利用者が行ったことのある地点のお気に入り地点情報のみを、他のナビゲーション装置と情報共有させることで、各利用者の嗜好性を反映した確かな情報だけを情報共有の対象とすることが可能になる。
【0062】
-ナビゲーションシステムの動作-
前記ナビゲーションシステムAの動作フローの一例を図6及び図7に示し、以下で詳しく説明する。なお、以下の説明では車載ナビゲーション装置1の動作フローについてのみ説明するが、情報共有する相手である車載ナビゲーション装置2でも同様の制御が行われているものとする。また、以下の動作は情報センター3で行われるようにしてもよい。
【0063】
図6のフローがスタートすると、まず、ステップSA1において、お気に入り地点情報メモリ17にお気に入り地点情報を登録する操作があったかどうかを判定する。このステップSA1において、お気に入り地点情報登録の操作がないと判定された場合(NOの場合)は、続くステップSA3へ進んでお気に入り地点の読み出し操作があったかどうかを判定する一方、登録操作があったと判定された場合(YESの場合)には、ステップSA2へ進んで、図4(a)に示すようなお気に入り地点情報をお気に入り地点情報メモリ17に登録した後、前記ステップSA3へと進む。ここで、前記ステップSA2におけるお気に入り地点情報の登録は、車載ナビゲーション装置1において施設一覧から検索して該当する施設を選択するか、お気に入り地点が現在位置周辺の場合には周辺施設を検索して該当する施設を選択することによって行われる。
【0064】
前記ステップSA3において、お気に入り地点の読み出し操作が行われなかったと判定された場合(NOの場合)には、続くステップSA5へ進んで、情報共有の設定操作が行われたかどうかを判定する。一方、前記ステップSA3でお気に入り地点の読み出し操作が行われたと判定された場合(YESの場合)には、ステップSA4へ進み、お気に入り地点の情報を読み出すとともに、ディスプレイ15に表示する。ここで、お気に入り地点の表示は、利用者の操作に応じて、お気に入り地点の情報を一覧表示する場合や地図データ上に重畳表示することによって行われ、そのお気に入り地点を目的地として設定することもできるようになっている。
【0065】
前記ステップSA5は、図4(b)に示すような情報共有設定画面をディスプレイ14に表示させる操作が行われたかどうかを判定するもので、該ステップSA5で情報共有の設定操作が行われたと判定された場合(YESの場合)には、ステップSA6に進み、前記情報共有設定画面で各お気に入り地点の情報について情報共有するかどうかや、後述するステップSA10において情報共有前の事前案内を行うかどうかなどの各種設定を行う。
【0066】
前記ステップSA6で情報共有設定した後、及び前記ステップSA5で情報共有の設定操作が行われなかったと判定された場合(NOの場合)には、図7に示すステップSA7以降に進んで、現在位置周辺の施設のジャンルの中から情報共有するジャンルを選別し、他のナビゲーション装置2との間でお気に入り地点情報の共有を行う。
【0067】
ステップSA7以降のフローについて以下で詳しく説明すると、まず、ステップSA7において、車両Vが停車した、すなわち利用者が周辺施設に立ち寄ったと判断されるような所定操作があったかどうかを判定する。具体的には、車両Vが停車したか、イグニッションキーがオフの位置になったか、ドアロックの操作が行われたかなどによって判断される。このステップSA7において、所定操作が行われなかったと判定された場合(NOの場合)には、利用者は周辺施設に立ち寄っていないものと判断し、スタートに戻って(リターン)、再びこのフローを開始する。一方、前記ステップSA7で所定操作が行われたと判定された場合(YESの場合)には、ステップSA8に進んで、現在位置周辺の施設のジャンルを読み出す。具体的には、車載ナビゲーション装置1の現在地検出センサ12によって検出された現在位置に基づいて、施設情報メモリ14から周辺施設のジャンルをすべて読み出す。
【0068】
続くステップSA9では、前記ステップSA8で読み出された周辺施設のジャンルのうち、少なくとも一つのジャンルでお気に入り地点情報が登録されていて、且つそのお気に入り地点情報の登録されている地点が所定距離以上、遠方(所定距離の範囲より外側)に位置しているかどうかを判定する。すなわち、このステップSA9では、利用者が立ち寄っていると思われる周辺施設の中に、お気に入り地点情報の登録されているジャンルに属するものがあるかどうかを判定するとともに、そのような周辺施設が存在しているのであれば、そのジャンルに登録されているお気に入り地点情報のうち、他のナビゲーション装置2に提供できるような情報があるかどうかを判定している。なお、所定距離以上、遠方とは、車載ナビゲーション装置1の利用者が、周辺施設に立ち寄っていると思われる範囲よりも遠方であることを意味している。
【0069】
前記ステップSA9において、周辺施設のジャンルと同じジャンルで、所定距離以上、遠方に位置する地点のお気に入り地点情報が登録されていないと判定された場合(NOの場合)には、スタートに戻って(リターン)、再度このフローを開始する一方、そのようなお気に入り地点情報が登録されていると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA10に進んで、図12に示すようなお気に入り地点情報の共有を確認するための案内表示を行う。このステップSA10では、前記ステップSA9において該当すると判断されたすべてのジャンルが利用者(操作者)に提示されるようになっていて、利利用者は、それぞれのジャンルでお気に入り地点情報を共有するか否かを選択できるようになっている。
【0070】
なお、前記ステップSA10で行われる情報共有可否の案内は、上述のステップSA6での情報共有設定において事前案内を要に設定した場合にのみ行われ、一旦、共有可と選択されたジャンルについては、次回から利用者に案内することなく情報共有が行われるものとする。これにより、毎回、同じジャンルを選択する手間がなくなり、利用者の利便性を向上することができる。
【0071】
続いてステップSA11では、前記ステップSA10において利用者に案内される画面(図12参照)で、情報共有する旨の選択があったかどうかを判定する。このステップSA11で情報共有する旨の選択がなかった場合(NOの場合)には、スタートに戻って(リターン)、再びこのフローを開始する一方、一つのジャンルでも情報共有する旨の選択があった場合には、ステップSA12に進み、他の車載ナビゲーション装置2との間で、情報共有する旨の選択がされたジャンルのお気に入り地点情報を共有する。
【0072】
詳しくは、前記ステップSA12では、同様に停車状態にある他の車載ナビゲーション装置2との間で近距離通信無線機18を介して通信を行うことで、車載ナビゲーション装置1の利用者によって情報共有する旨の選択がされたジャンルについて、前記他の車載ナビゲーション装置2にお気に入り地点情報が記憶されているか、記憶されている場合には情報共有可能なジャンルとして設定されているかの確認を行う。すなわち、車載ナビゲーション装置1の利用者が共有を希望しているジャンルに関して、他の車載ナビゲーション装置2の利用者も情報共有を可とするかどうかの確認を行って、該他の車載ナビゲーション装置2の利用者も共有可の選択をしている場合にのみ情報共有が行われるようになっている。このように情報共有によって取得したお気に入り地点情報は、ステータスが仮の状態で前記お気に入り地点情報メモリ17に記憶される。
【0073】
このように、情報共有する前に各利用者の意思を確認することで、情報共有を希望しない場合でも強制的に情報共有が行われるのを防止することができ、利用者の利便性を向上することができる。」

1h)上記1b)の特に段落【0039】及び上記1e)の特に段落【0054】の記載から、引用文献1には、情報を提示する車載ナビゲーション装置1に関する発明が記載されることが分かる。

1i)上記1d)の特に段落【0044】の記載及び上記1g)の特に段落【0063】の記載から、引用文献1には、お気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報は、車両Vの利用者が登録したお気に入り地点情報、及び、車両Vのお気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報のジャンルと一致するとともに他の車両V’と情報共有を可としたお気に入り地点情報であることが記載されることが分かる。

1j)上記1e)の特に段落【0054】、上記1g)の特に段落【0072】及び図5の記載から、引用文献1には、お気に入り地点情報メモリ17が記憶している他の車両V’のお気に入り地点情報に基づいて提示情報を生成する提示情報生成部と、前記提示情報生成部が生成した前記提示情報を車両Vの乗員に提示するディスプレイ15とが記載されることが分かる。

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「車両Vの利用者に情報を提示する車載ナビゲーション装置1であって、
他の車両V’のお気に入り地点情報を他の車両V’から近距離通信で受信する近距離無線通信機18と、
前記近距離無線通信機18が受信した前記他の車両V’のお気に入り地点情報を記憶するお気に入り地点情報メモリ17と、
前記お気に入り地点情報メモリ17が記憶している前記他の車両V’のお気に入り地点情報に基づいて提示情報を生成する提示情報生成部と、
前記提示情報生成部が生成した前記提示情報を車両Vの利用者に提示するディスプレイ15と、
を備えており、
前記お気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報は、車両Vの利用者が登録したお気に入り地点情報、及び、車両Vのお気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報のジャンルと一致するとともに他の車両V’と情報共有を可としたお気に入り地点情報である
車載ナビゲーション装置1。」

2.引用文献2(特開2007-121006号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献2には、「ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、ナビゲーションシステム及びプログラム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献2の記載事項
2a)「【0003】
ところで、従来のナビゲーション装置においては、過去の目的地や予め記憶した観光地情報を用いての案内や提案であり、画一的になりがちであった。
【0004】
そこで本発明の課題は、異なる装置間で情報を共有させ、その情報を基にドライバーに新たな提案を行うことで、ドライバーの興趣性を高めることである。」

2b)「【0035】
図1はカーナビゲーション装置1の主制御構成を表すブロック図である。この図1に示すようにカーナビゲーション装置1には、外部装置と通信する本発明の通信手段としての通信部2と、地図データを記憶する本発明の地図データ用記憶手段としての地図データ用記憶部3と、目的地情報を記憶する本発明の目的地用記憶手段としての目的地用記憶部4と、走行履歴を記憶する本発明の走行履歴用記憶手段としての走行履歴用記憶部5と、現在地を検出する本発明の現在地検出手段としての現在地検出部6と、各種指示入力される本発明の入力手段としての入力部7と、複数種類のエージェントのエージェント情報及びID情報を記憶する本発明のエージェント情報記憶手段としてのエージェント用記憶部8と、エージェント情報に基づいた情報(提案や経路案内など)が出力される本発明の情報出力手段としての情報出力部9とが設けられている。
【0036】
通信部2の通信方式としては、走行中に他車両のカーナビゲーション装置と通信できる方式であれば如何なる通信方式であってもよく、例えば無線LAN、DSRC、赤外線通信方式等が挙げられる。
現在地検出部6は、例えばGPS等の位置検出システムであり、走行時における検出結果を走行履歴として走行履歴用記憶部5に出力している。
【0037】
走行履歴用記憶部5は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成されていて、現在地検出部6の検出結果を基にした自車両の走行履歴を記憶するようになっている。一方、地図データ用記憶部3や、目的地用記憶部4、エージェント用記憶部8は、例えばハードディスクドライブや、CD、DVD等から構成されている。ここで、エージェント用記憶部8に記憶されている複数種類のエージェント情報のうち、1つのエージェント情報が予め標準態様として指定されている。
【0038】
入力部7は、各種指示が入力される例えばタッチパネルや、リモートコントローラ、各種スイッチ等から構成されている。入力部7に入力される各種指示には、目的地の設定や、通信部2に対する通信開始指示、通信部2による通信情報の出力条件を設定するための条件設定指示等が含まれている。出力条件には、出力自体が可能か否か、走行履歴の終点地点や始点地点のカテゴリー毎(例えば宿泊施設、飲食店、ガソリンスタンド、住宅等)で出力が可能か否か、特定の地点で出力が可能か否か、走行履歴の取得日時で出力が可能か否かなどの条件が挙げられる。なお、終点地点は、例えば走行後に所定の時間以上滞在していた地点や、目的地に設定された地点、エンジンが停止された地点等のことである。一方、始点地点は、所定時間以上の滞在後に再走行を開始した地点や、エンジンが始動された地点等のことである。
【0039】
情報出力部9には、地図や経路、エージェント、目的地情報等の画像が表示される表示部10と、音声データを基に案内音声を作成する音声処理部11と、音声処理部11で作成された案内音声を出力する音声出力部12とが設けられている。」

2c)「【0043】
そして、制御部13は、入力部7から通信開始指示が入力されると、通信部2を制御して他車両のカーナビゲーション装置や、ナビゲーション機能を搭載した携帯機器等の外部装置に対する通信開始信号を出力させることで、外部装置の走行履歴を収集して、当該走行履歴の終点地点(他人のお気に入り地点)が現在地、検索経路、若しくは目的地のいずれかの付近に存在している場合には、情報出力部9を制御して終点地点を提案するようになっている。なお、現在地、検索経路若しくは目的地のいずれかの付近とは、現在地、検索経路若しくは目的地のいずれかから所定範囲内に収まる範囲のことであり、ドライバーが入力部7を操作することにより所定範囲を変更できるようになっていることが好ましい。」

2d)「【0050】
図3に示すように、自車通信部2からの通信開始信号及び検索経路を他車カーナビゲーション装置1の他車通信部2が受信すると(ステップS21)、他車制御部13は他車走行履歴用記憶部5中の走行履歴中に、自車カーナビゲーション装置1の検索経路付近に終点地点が存在する走行履歴があるかを検索して(ステップS22)、その検索結果を他車通信部2から出力させることで、通信出力工程を実行させる(ステップS23:通信出力ステップ)。
具体的には、自車カーナビゲーション装置1の現在地、検索経路若しくは目的地のいずれかの付近に終点地点が存在する走行履歴があった場合には、他車制御部13は、その終点地点にかかる目的地情報を他車目的地用記憶部4から読み出し、その目的地情報が出力条件内に収まるものであれば検索結果として他車通信部2から出力させる。この際、他車制御部13は、検索結果とともに、他車カーナビゲーション装置1の他車指定エージェントBのID情報も出力させている。
一方、自車カーナビゲーション装置1の検索経路付近に終点地点が存在する走行履歴がない場合には、他車制御部13は、検索結果を該当なしとして他車通信部2から出力させる。
【0051】
図2に示すように、自車制御部13は、他車カーナビゲーション装置1からの検索結果を受信すると(ステップS4)、その検索結果に目的地情報があるか否かを判断する(ステップS5)。そして、自車制御部13は、目的地情報がないと判断した場合には通信範囲内に存在する次の車両への問い合わせを行って(ステップS6)、ステップS4に移行する。
一方、目的地情報があると判断した場合には自車制御部13は、自車指定エージェントAのエージェント情報を基に情報出力部9を制御して、表示部10に自車指定エージェントAを表示させる(ステップS7)。ステップS3?ステップS7までが本発明の収集工程であり、収集ステップである。
【0052】
その後、自車制御部13は、取得したID情報に対応するエージェント情報を自車エージェント用記憶部8から読み出して、それを基に情報出力部9を制御することで、他車指定エージェントBを表示部10に表示させる(ステップS8:図4(c)参照)。ここで、取得したID情報が、自車指定エージェントAのID情報と同じであった場合には、自車制御部13は、エージェント用記憶部8中の予備エージェントのうちいずれか1つのエージェント情報を適宜選択して、選択したエージェント情報を基に情報出力部9を制御することで、予備エージェントを他車指定エージェントBとして表示部10に表示させる。
【0053】
そして、自車制御部13は、取得した目的地情報及び地図データを基にして情報出力部9を制御することで、他人のお気に入り地点と検索経路とを合成した地図画像を表示部10に表示させる(ステップS9)。
【0054】
この表示に関連して、自車制御部13は、他車指定エージェントのエージェント情報に含まれる画像データを基に他車指定エージェントのキャラクタを自車表示部10に表示させて、なおかつ音声データを基にした案内音声によって他人のお気に入り地点を案内させることで、地点出力工程を実行させる(ステップS10:地点出力ステップ)。案内する内容は、他人のお気に入り地点の目的地情報に見合ったものにする。例えば、お気に入り地点が飲食店であれば「○○(目的地)の周辺の△△(飲食店名)がお勧めです。寄ってみませんか?」とし(図4(d)参照)、サービスエリア、パーキングエリアのような休憩所の場合は、「途中の△△(SA・PA名)で休憩してはどうですか?」と案内させる。
【0055】
自車制御部13は、案内された地点の採用・不採用がドライバーにより自車入力部7に入力されると、その入力内容が採用か不採用かを判断する(ステップS11)。採用と判断した場合、自車制御部13は、そのお気に入り地点を立ち寄り地点として設定し(ステップS12)、その後、他車両から取得した目的地情報を削除し(ステップS13)、通常のナビゲーション案内に戻る。なお、採用とされた場合には、立ち寄り地点と設定する以外にも、お気に入り地点の目的地情報を一旦記憶させて、別の機会に立ち寄るようにしてもよい。
一方、不採用と判断した場合、自車制御部13は他車両から取得した目的地情報を削除し(ステップS13)、通常のナビゲーション案内に戻る。
【0056】
また、ステップS6で通信範囲内にある全ての他車両に対して同様の問い合わせを行ったにも関わらず、検索経路付近に終点地点が存在する走行履歴がない場合には、自車制御部13は、情報出力部9を制御してその旨をドライバーに報告する。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、通信により他車カーナビゲーション装置1の走行履歴が収集されるので、異なる装置間で走行履歴が共有されることになる。そして、収集された走行履歴の終点地点が検索経路付近に存在している場合にはその終点地点が提案されるために、ドライバーの嗜好に関連しない他人の情報を用いた案内が可能となる。これにより、あたかもエージェント自身が思考を働かせて案内を行っているかのように見え、ドライバーの興趣性が高められることになる。」

(2)引用文献2技術
上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献2には以下の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。

「自車両のドライバーに情報を提示するナビゲーション装置であって、他車の走行履歴の終点地点(他人のお気に入り地点)を他車両から受信する自車通信部2と、前記自車通信部2が受信した他人のお気に入り地点を案内する自車表示部10とを備えることで、ドライバーの嗜好に関連しない他人の情報を用いた案内を可能とし、ドライバーの興趣性を高めるようにした技術。」

3.引用文献3(特開2004-30450号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献3には、「交通情報案内装置、交通情報案内方法及びそのシステム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献3の記載事項
3a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の交通情報システムでは、中央の交通管制センタ等で交通状態を集中管理しているため、交通管制センタ等の情報処理負荷が大きく、交通状態に変化が生じてから情報を更新するのに時間がかかり、各車両がリアルタイムにこれら交通状態に係る情報を入手することが困難であるという問題がある。例えば、100m先に数十秒後に到達する時点での交通状態を予測するための情報を入手することは、上記従来の交通情報システムでは対応できない。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、交通状態の変化に即応可能な交通情報案内装置、交通情報案内方法及びそのシステムを提供することを目的とする。」

3b)「【0019】
図1に、本発明に係る交通情報案内装置を車両に搭載した概略構成図を示す。車両1には交通情報案内装置2が設置され、この交通情報案内装置2は、操作部4、表示部5及びアンテナ6を備える。操作部4は運転者3が操作可能に配設され、表示部5は運転者3が観察可能な位置に配設されている。また、本装置を複数台数の車両1に搭載して、お互いに情報の送受信を行うことにより、道路での効率的な通行を支援する交通情報案内システムとして機能する。」

3c)「【0027】
通信部10は、例えば無線通信装置を用いて構成され、自車の周辺に存在する車両1に搭載されている交通情報案内装置2との間で無線通信によるデータの送受信を周期的に行う。そして、通信部10は、情報テーブル生成部101によって生成された交通情報テーブルAに含まれる車両識別符号、現在位置情報等の車両の運行に関わる運行情報、及び既に取得している他の車両1の運行情報等を周辺の車両1へ送信する。」

3d)「【0044】
また、情報テーブル生成部101は、取得した各種運行情報から、自車両1及び他の車両1の運行情報を記録した交通情報テーブルA、前記ノードに関する交通情報を記録したノード情報テーブルB及び前記リンクに関する交通情報を記録したリンク情報テーブルCを、通行路に関する交通情報として生成する。
【0045】
図3は、交通情報テーブルAの一例を示す図である。自車情報A1は一行分に記録され、自車両1に関する運行情報である。他車情報A2は各行に記録され、他の車両1に関する運行情報である。また、各行の運行情報には、それぞれ情報の新旧を判別するための時刻情報が含まれている(図示せず)。当該時刻情報としては、例えば各運行情報が生成された時刻が用いられる。
【0046】
自車情報A1と他車情報A2には、それぞれ別方向に識別符号a1、現在地a2、目的地a3、予測経路a4、現在速度a5、リンク上の平均速度a6、運転状態a7及び故障情報a8の各内容(項目)が含まれる。」

3e)「【0051】
他車情報A2には、運行情報を受信した他の車両1から見みてさらに他の車両1の情報が他車情報A2として含まれるので、複数の他の車両1から運行情報を受信すると、他車情報A2には、同一の車両1、つまり識別符号a1が同一の情報が含まれることが考えられる。この場合は、識別符号a1が同一の他車情報A2について、時刻情報を比較し、最新の運行情報のみを残すように、交通情報テーブルAを更新する。
【0052】
また、情報テーブル生成部101は、更新された交通情報テーブルAに対して各運行情報内の時刻情報を参照し、現在時刻との差を計算して各運行情報が生成されてからの経過時間を算出する。そして、情報テーブル生成部101は、経過時間が所定の時間を越える運行情報は、古い情報であると判断して消去する。なお、古い情報であると判断するための所定の時間としては、例えば、20台程度の周辺の車両1との間で運行情報の送受信を行うことが可能な時間等を目安として用いる。これにより、古くなった情報は交通情報テーブルAから削除されるため、各車両間で送受信される運行情報の無用の増大が回避できる。」

(2)引用文献3技術
上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献3には以下の技術(以下、「引用文献3技術」という。)が記載されている。

「自車両1の運転者3に情報を提示する交通情報案内装置であって、他の車両1の運行情報を受信する通信部10と、前記通信部10が受信した前記他の車両の運行情報を記録する交通情報テーブルAと、を備え、生成されてから所定の時間を越える運行情報を消去することで、交通状態の変化に即応可能な交通情報案内装置を提供する技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「車両V」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「自車両」に相当し、以下同様に、「利用者」は「乗員」に、「車載ナビゲーション装置1」は「車両用情報提示装置」に、「他の車両V’のお気に入り地点情報」は「他車両地点情報」に、「他の車両V’」は「他車両」に、「近距離通信」は他の車両V’の情報を車両Vが受信するものであるから「車車間通信」に、「近距離無線通信機18」は「他車両地点情報受信部」に、「記憶」は「蓄積」に、「お気に入り地点情報メモリ17」は「他車両情報蓄積部」に、「ディスプレイ15」は「情報提示部」にそれぞれ相当する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「自車両の乗員に情報を提示する車両用情報提示装置であって、
他車両地点情報を他車両から車車間通信で受信する他車両地点情報受信部と、
前記他車両地点情報受信部が受信した前記他車両地点情報を蓄積する他車両情報蓄積部と、
前記他車両情報蓄積部が蓄積している前記他車両地点情報に基づいて提示情報を生成する提示情報生成部と、
前記提示情報生成部が生成した前記提示情報を自車両の乗員に提示する情報提示部と、
を備えた車両用情報提示装置。」

[相違点1]
本願発明1においては、他車両地点情報受信部が受信する他車両地点情報は「他車両が立ち寄った地点に関する情報および他車両がナビゲーション装置に設定した目的地に関する情報の少なくともいずれか」であるのに対し、引用発明においては、近距離無線通信機18が受信する他の車両V’のお気に入り地点情報がどのようなものであるか、引用文献1には明示的な記載がない一方で、お気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報は、車両Vの利用者が登録したお気に入り地点情報、及び、車両Vのお気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報のジャンルと一致し他の車両V’と情報共有を可としたお気に入り地点情報ではある点。

[相違点2]
本願発明1においては、「他車両情報蓄積部が蓄積している他車両地点情報のうちから、蓄積してから設定期間が経過した前記他車両地点情報を消去する他車両地点情報消去部」を備えるのに対し、引用発明においては、かかる構成を備えるか否か明らかではない点。

まず、上記相違点1について検討する。
引用発明のお気に入り地点情報は、車両Vの利用者が登録したお気に入り地点情報、及び、車両Vのお気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報のジャンルと一致し他の車両V’と情報共有を可としたお気に入り地点情報であり、引用発明は、このようなお気に入り地点情報をお気に入り地点情報メモリ17に記憶させておくことにより、嗜好の類似した利用者間で互いに有益な情報を共有する(段落【0045】)ものである。
一方、引用文献2技術は、他車の走行履歴の終点地点(他人のお気に入り地点)を自車両のドライバーに案内することで、ドライバーの嗜好に関連しない他人の情報を用いた案内を可能とし、ドライバーの興趣性を高めるようにするものである。
そうすると、引用発明と引用文献2技術とは、他の車両のお気に入り地点情報に基づく情報を提示する点で共通するものの、引用発明は、ジャンルの一致した情報を共有して利用者の嗜好を反映させるものであるのに対し、引用文献2技術は、ドライバーの嗜好に関連しない他人の情報を用いた案内を可能とするものであるから、両者の技術課題や作用・機能は異なるものといえ、引用文献2技術を引用発明の他車両地点情報に適用する動機が見当たらない。
さらに、引用文献3においても、本願発明1の相違点1に係る発明特定事項は開示も示唆もない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、他車両が利用した地点もしくは他車両が利用する可能性の高い地点等実際に利用されている地点に関する提示情報を自車両の乗員に提示できる(段落【0006】)という格別な効果を奏するものである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

次に、上記相違点2について検討する。
引用発明は、車両Vの利用者が登録したお気に入り地点情報、及び、車両Vのお気に入り地点情報メモリ17に記憶されたお気に入り地点情報のジャンルと一致し他の車両V’と情報共有を可としたお気に入り地点情報をお気に入り地点情報メモリ17に記憶させるとともに、お気に入り地点情報メモリ17が記憶している他の車両V’のお気に入り地点情報に基づいて提示情報を生成して利用者に提示するものである。
一方、引用文献3技術は、他の車両1の運行情報を記録した交通情報テーブルAを生成し、生成されてから所定の時間を越える運行情報を消去することで、交通状態の変化に即応可能な交通情報案内装置を提供するものである。
そうすると、引用発明はお気に入り地点情報に基づく提示情報を提示するものであるのに対し、引用文献3技術は交通情報を案内するものであるから、両者はそもそも前提とする他の車両から受信する情報及びその情報に基づいて利用者に案内する情報が異なっており、技術分野のみならず技術課題や作用・機能も異とするものであるから、引用文献3技術を引用発明の車両用情報提示装置に適用する動機が見当たらない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることにより、設定期間内に取得した他車両POI情報、つまり、フレッシュな他車両POI情報を基に提示情報を生成できるとともに、対象車両の周辺を走行している他車両の最新の人気スポットを提示できる(段落【0052】)という格別な効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1の「他車両が立ち寄った地点に関する情報および他車両がナビゲーション装置に設定した目的地に関する情報の少なくともいずれかである他車両地点情報」及び「他車両情報蓄積部が蓄積している他車両地点情報のうちから、蓄積してから設定期間が経過した前記他車両地点情報を消去する他車両地点情報消去部」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、引用文献4ないし7に記載された事項を検討しても、本願発明1と同一の上記発明特定事項については記載されていないから、本願発明2ないし5は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本願の請求項2ないし5に係る発明は、引用発明、引用文献2技術、引用文献3技術及び引用文献4ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2013-91679(P2013-91679)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 東 勝之  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 佐々木 芳枝
永田 和彦
発明の名称 車両用情報提示装置  
代理人 鈴木 壯兵衞  
代理人 小林 龍  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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