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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A23K |
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管理番号 | 1344340 |
審判番号 | 不服2017-8667 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-14 |
確定日 | 2018-10-02 |
事件の表示 | 特願2015-546441「動物用食品組成物および製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日国際公開、WO2014/196948、平成28年 2月25日国内公表、特表2016-505252、請求項の数(45)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)12月19日を国際出願日とする出願であって、平成28年6月17日付けで拒絶理由が通知され、同年9月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月6日付けで拒絶査定されたところ、同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成30年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1-45に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明45」という。)は、平成30年7月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-45に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 タンパク源およびでんぷんとしてコーンスターチのみを含み、天然のハイアミロースコーンスターチが該コーンスターチの少なくとも50重量%を構成し、前記タンパク源は加水分解タンパクであり、乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて、該コーンスターチを50?70重量%の量で含み、かつ乾燥物質ベースで、前記天然のハイアミロースコーンスターチは50?70重量%の量でアミロースを含む、動物用食品組成物。」 なお、本願発明2-45の概要は以下のとおりである。 本願発明2-21は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明22は、本願発明20の動物用食品組成物を、食物アレルギーを処置または予防するのに有効な量で動物に与えることをより、処置を必要とする動物における食物アレルギーを処置または予防する方法の発明である。 本願発明23は、本願発明1を生産する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明24-45は、本願発明23を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-095174号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。) (引1a)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、これらのペットフードには特殊な物質が配合されていることからペットの摂取性が低下する、便のニオイが変化する等の問題がある。また、アミロースは難消化性のためペットフードに高含有されると便が軟化し、処理に不都合を生ずる場合がある。 【0005】 本発明の目的は、抗肥満効果に優れるとともに、摂取性が低下せず、かつ便の状態に影響を与えないペットフードを提供することにある。」 (引1b)「【0008】 本発明のペットフードに用いられる高アミロースデンプンとしては、アミロース含量が40?99重量%であるデンプンであり、特にハイアミロースコーンスターチ、6条皮麦のGlacier AC38、su2トウモロコシ等が挙げられる。市販品としては、ハイアミロースコーンスターチアミロメイズV(アミロース含量が50?60重量%)、アミロメイズVI(アミロース含量が60?70重量%)、アミロメイズVII(アミロース含量が70?80重量%)以上日本食品加工社製、ファイボーズ(同約70%)日澱化学社製、等のハイアミロースコーンスターチが挙げられる。 【0009】 これらの高アミロースデンプンは、炭水化物中に3質量%以上、さらに3?30質量%、特に3?20質量%含有するのが、経済性、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から、好ましい。 【0010】 高アミロースデンプン以外の炭水化物としては、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、食物繊維、デンプン類等が含まれる。デンプン類としては、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、甘露デンプン、タピオカデンプン等が挙げられる。また炭水化物は、穀物類として含有させてもよく、穀物類としては、小麦、大麦、ライ麦、マイカ、トウモロコシ、米、ひえ、あわ、アマランサス、キヌア等が挙げられる。炭水化物は、ペットフード中に10?70質量%、さらに20?60質量%、特に30?50質量%含有するのが好ましい。」 (引1c)「【0013】 本発明ペットフード中に動物性又は植物性タンパク質は、乾燥減量で5?70質量%、さらに10?60質量%、特に15?40質量%含有するのが好ましい。」 (引1d)「【0020】 実施例1 表1に示す組成の試験食をC57BL/6Jマウス(食餌依存性肥満・糖尿病モデル動物)に自由摂食で24週間給餌した時の体重変化を測定した。試験デンプンとして、ハイアミロースコーンスターチ(ファイボーズ)を用いた場合と、ワキシーコーン、コーン及びタピオカデンプンを用いた場合の体重変化を図1に示す。 【0021】 【表1】 【0022】 図1に示すように、動物性タンパク質に高アミロースデンプンを5質量%(炭水化物中に12質量%)配合したペットフードは、通常のデンプンを用いたペットフードに比べて顕著に体重増加を抑制した。 【0023】 実施例2?4 表2に示す処方のペットフードを調製した。 【表2】 【0024】 実施例2?4のペットフードは、優れた体重増加抑制効果を有するとともに、摂取性も良好であり、また便のニオイも良好である。 【0025】 実施例5、6、及び比較例1 表3に示す処方のペットフードを調製した。当該ペットフードから油脂を抽出しその油脂組成の分析を行った(表4)。これらのペットフードを用いて肥満した犬24頭を体重、肥満度、年齢において偏らないように3群に分けて給餌試験を行なった。まずコンデショニングを4週とり、その後3群に分け、それぞれのフードを5週間食させた。その時の体重変化、及び便の状態、皮膚の状態、毛艶について下記基準により評価を行なった。結果を図2及び3に示す。」 (引1e)「【0027】 【表3】 」 (2)引用文献1に記載された発明 上記(引1a)?(引1e)より、上記引用文献1には、実施例2及び3として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「鶏肉(皮なし胸肉)を60.5質量%、ハイアミロースコーンスターチであるアミロメイズVI(アミロース含量が60?70重量%)を25質量%、油脂を10質量%、犬用ミネラル混合物を3.5質量%及び犬用ビタミン混合物1質量%含有する ペットフード。」 2 引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平08-336373号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引2a)「【請求項1】 木酢液を飼育中に投与して得た鶏肉の摺身と、魚肉の摺身との混合物を原料とすることを特徴とする鶏肉を混合した水産練製品。」 (引2b)「【0005】そこで、原料となる魚肉摺身の使用量を減じながら、かつ、従来の食感を保持する練製品の開発が進められているが、原料に代わるものとしては添加物等の使用が考えらており、これも、先の理由により問題を残すものである。 【0006】一方、鶏肉業界では、鶏肉の部位によって人気が極端に異なり、もも肉等の需要が多いものの、胸肉やササミなどは商品価値が低く、その需要の掘り起こしが課題となっている。 【0007】本発明は、上記した魚肉摺身における水産業界、及び、鶏肉業界の課題を同時に解決することのできる鶏肉を混合した水産練製品を提供することを目的としている。」 したがって、上記引用文献2には、「木酢液を飼育中に投与して得た鶏肉の摺身と、魚肉の摺身との混合物を原料とすることを特徴とする鶏肉を混合した水産練製品」という技術的事項が記載されていると認められる。 3 引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2003-532394号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引3a)「【請求項1】 愛玩動物用の低アレルゲン性食餌組成物であって、乾燥物質基準で、タンパク質源、脂肪源、および炭水化物源を含有し、上記タンパク質源が加水分解されたタンパク質を約20?30重量%の量で含有する低アレルゲン性食餌組成物。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「鶏肉」(皮なし胸肉)」、「アミロメイズIV」及び「ペットフード」は、それぞれ、本願発明1の「タンパク源」、「でんぷん」及び「動物用食品組成物」に相当する。 イ 引用発明の「ペットフード」はデンプンとして、「ハイアミロースコーンスターチであるアミロメイズVI」のみを含み、「ハイアミロースコーンスターチであるアミロメイズVI」は「(アミロース含量が60?70重量%)」であるから、引用発明の「アミロメイズVI(アミロース含量が60?70重量%)を25質量%」「含有する」ことは、本願発明の「でんぷんとしてコーンスターチのみを含み」、「ハイアミロースコーンスターチが該コーンスターチの少なくとも50重量%を構成し」、「乾燥物質ベース」で、「ハイアミロースコーンスターチは50?70重量%の量でアミロースを含む」ことに相当する。 ウ 上記ア及びイより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点)「タンパク源およびでんぷんとしてコーンスターチのみを含み、ハイアミロースコーンスターチが該コーンスターチの少なくとも50重量%を構成し、乾燥物質ベースで、前記ハイアミロースコーンスターチは50?70重量%の量でアミロースを含む、動物用食品組成物。」 (相違点1)本願発明1は、「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて、該コーンスターチを50?70重量%の量で含」んでいるのに対し、引用発明は、「ハイアミロースコーンスターチであるアミロメイズVI」を25質量%含有する点。 (相違点2)ハイアミロースコーンスターチが、本願発明1は、「天然のハイアミロースコーンスターチ」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点3)タンパク源が、本願発明1は、「加水分解タンパク」であるのに対し、引用発明は「鶏肉(皮なし胸肉)」であって「加水分解タンパク」であるか特定されていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 本願明細書の発明の詳細な説明には、 「【0002】 [0002] 製造工程における加熱工程は組成物の粘度に変化を引き起こし、これは制御することが困難であり、製品のバラツキにつながる。本発明は、食品組成物製品における、およびその製造方法における改善を提供することを目的とする。」 「【0005】 [0005] コーンスターチの少なくとも50重量%を天然のハイアミロースコーンスターチで置き換えた場合、製品の高温に対する感受性が低下または無視されるということが、驚くべきことに見出された。加えて、食品の最終的な粘度は顕著に高い。結果的に、より消費者に許容されるテクスチャーを有し、かつこれまでにこの種の変形物でも遭遇したことがない、本発明に係る動物用食品組成物が造り出され得る。 【0006】 [0006] デンプンの主要な構成要素は、アミロースおよびアミロペクチンである。慣用のデンプンでは、アミロースよりアミロペクチンがより多く存在する。慣用のコーンスターチは、約25重量%のアミロース含有量を有する。これは小麦デンプンのアミロース含有量に相当し、約17%のアミロース含有量を有するタピオカデンプンより高い。アミロペクチンは体重のバランスを整える。ハイアミロースコーンスターチは、乾燥物質ベースで組成物の総重量に基づいて、約50?約70重量%のアミロース含有量を典型的に有する。対応するアミロペクチン含有量は、乾燥物質ベースで組成物の総重量に基づいて、約30?約50重量%である。ハイアミロースコーンスターチは、多くの異なる方法にて調製することができる。例えば、デンプン調製物の化学処理、例えば化学架橋反応または酸化反応または誘導体化の他の形式のいくつかによりデンプンを誘導体化することが可能である。これらの処置は、天然のハイアミロースコーンスターチを産生するものではない。本発明の目的に関して、天然のハイアミロースコーンスターチは、化学的または酵素的手法により誘導体化していないものであり、かつ乾燥物質ベースで組成物の総重量に基づいて、約50重量%?約70重量%のアミロース含有量を典型的に有する。誘導体化されたコーンスターチは本発明にはあまり好ましくなく、なぜならば、それが不十分な消化性を有し、結果的に、動物において下痢を潜在的に引き起こし得るからである。」 と記載されていることから、相違点1に係る本願発明1の「ハイアミロースコーンスターチが該コーンスターチの少なくとも50重量%を構成」する「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという構成は、製造工程における加熱工程での組成物の粘度に変化に起因する製品のバラツキを防止するために、粘度の変化への影響の少ないアミロースを多く含むコーンスターチである「ハイアミロースコーンスターチ」の含有量を高くしたものであると解されるものであるところ、引用文献1には、「アミロースは難消化性のためペットフードに高含有されると便が軟化し、処理に不都合を生ずる場合」(引1a)があると記載されていることから、引用発明の「ペットフード」の、「アミロース」を多く含む「ハイアミロースコーンスターチであるアミロメイズVI」の含有量を高くすることに阻害要因があるといえるから、引用発明において「ハイアミロースコーンスターチが該コーンスターチの少なくとも50重量%を構成」する「コーンスターチ」を多く含有させることの動機付けがあるといえない。また、引用文献1の他の実施例や、引用文献2及び3に、アミロースの含有量を高くするために「ハイアミロースコーンスターチ」を多く含む「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという構成は記載されていないし、アミロースを多く含有させるための動機となる課題等の記載も認められない。そうすると、本願発明1は、引用発明、引用文献1、2及び3に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1、2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?22について 本願発明2?22も、本願発明1の「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明23について 本願発明23は、本願発明1を生産する方法の発明であり、本願発明1の「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明24?45について 本願発明24?45は、本願発明23を直接または間接的に引用する発明であり、本願発明23と同様に本願発明1の「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1?45について上記引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年7月20日付けの手続補正により補正された請求項1及び23は、それぞれ「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むという事項、「コーンスターチ」を「乾燥物質ベースの組成物の総重量に基づいて」、「50?70重量%の量で含」むに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1?45は、上記引用文献1に記載された発明、上記引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第1号について 当審では、請求項1及び23の「コーンスターチを含み」との記載は、でんぷんとしてコーンスターチ以外のデンプンを含有する構成を含んでいるので、でんぷんとしてコーンスターチ以外のデンプンを含有する点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年7月20日付けの補正において、「でんぷんとしてコーンスターチのみを含み」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?45は、当業者が引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-09-18 |
出願番号 | 特願2015-546441(P2015-546441) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(A23K)
P 1 8・ 121- WY (A23K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 隆一 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
福島 浩司 渡戸 正義 |
発明の名称 | 動物用食品組成物および製造方法 |
代理人 | 村井 康司 |
代理人 | 堀川 かおり |