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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D
管理番号 1344380
審判番号 不服2017-2510  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-21 
確定日 2018-09-13 
事件の表示 特願2013- 20481「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-152627〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年2月5日の出願であって、平成28年6月6日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年8月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年2月21日に審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成30年2月8日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成30年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部とを備え、室内の天井に設置される照明器具であって、
前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであり、前記照明部の中心部に形成された空間に配置され、且つ、鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され、かつ前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置し、
前記照明器具には、前記羽根よりも上方から前記空間に空気を導入させる吸込口と、前記空間に連続するように前記空間の下方に位置し、且つ、前記空間の外部に空気を導出させる吹出口とが形成され、
前記照明部は、上面を有し、
前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあり、
全風量が8m^(3)/min以上の空気が前記吹出口から吹き出されるように、前記吹出口の直径および前記羽根の直径を設定してあり、且つ、前記送風機の前記モータ回転軸が回転する速度を設定してある、照明器具。」

第3 拒絶の理由

平成30年2月8日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用例1に記載された発明に基いて、また以下の引用例2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1.実公昭36-22251号公報
引用例2.実願昭55-127404号(実開昭57-51188号)のマイクロフィルム
引用例3.特開2002-130186号公報
引用例4.天井扇(シーリングファン)F-M131H詳細(スペック),日本,パナソニック株式会社,
引用例5.グッドデザイン・ロングライフデザイン賞,日本,1985年,

第4 引用例の記載及び引用発明

1.引用例1の記載及び引用発明1
(1)引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「本案は天井より吊り下げる扇風機付蛍光灯に係るものである。図において、1は電動機、2はこの電動機に取付けた扇風機翼、3は電動機および翼を保持する取付脚でその先端部には扇風機取付用ねじ孔11を有する。4は上記ねじ孔11に螺入するねじ12によつて上記取付脚を着脱自在に取付ける環状取付板である。しかして上記取付板4は重量軽減のため特に穴9をあけ、またその縁部を曲げて強度の補強を計つている。5は上記取付板に取付けた蛍光灯反射笠、7は蛍光灯取付金具、6は蛍光灯である。8はこの蛍光灯6のカバーで、図示されていないが上記蛍光灯反射笠に対し取外し自在に取り付けられている。10は吊金具である。」(第1ページ左欄第6?18行)
イ.「扇風機による空気の移動は一般に、その翼の回転によつて、翼後方即ちBの方向より空気は吸入されDの方向に放出するが、本案はこの流れによつて、即ちB→Dの流れによつて、その外周部分Cの方向よりも空気を吸入し合せてDの方向に放出するものである。」(第1ページ左欄第19行?右欄第5行)
ウ.「本案は上記のごとく取付板上部に扇風機本体をまた下部に蛍光灯をつけたので、蛍光灯による照度、扇風機による風を同時に求められることは勿論であるが、本案はさらに上記作用によつて送風量が極めて大きいこと、構造が簡単で製作が容易であり、・・・(中略)・・・等の諸効果を有している。」(第1ページ右欄第6?13行)
エ.「登録請求の範囲
図に示すように、天井面より吊下された環状取付体4の下面に沿つて環状蛍光灯6を吊持し、上記取付体4の上面に、上記蛍光灯とほぼ同心に扇風機1を着脱自在に取付けた扇風機付蛍光灯の構造。」(第1ページ右欄第14?19行)
そして、記載事項ア及びウから、次の事項が理解できる。
オ.扇風機は、電動機1及びこの電動機に取付けた扇風機翼2を備える。
記載事項アないしエ及び第2図の記載から、次の事項が理解できる。
カ.蛍光灯は、環状取付板4、該取付板に取付けた蛍光灯反射笠5、環状蛍光灯6、蛍光灯取付金具7及び前記蛍光灯反射笠5に取り付けられているカバー8を備え、全体として環状をなす。
記載事項ア、事項オ及びカ並びに第1ないし3図の記載から、次の事項が理解できる。
キ.扇風機は、環状取付板4に取付られる取付脚3により、蛍光灯の内側に保持される。
記載事項イ及び第1ないし3図の記載、さらに引用例1に記載された扇風機付蛍光灯は天井より吊り下げられるものであることから、次の事項が理解できる。
ク.扇風機翼2は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンである。
事項カ及び第1ないし3図の記載、さらに引用例1に記載された扇風機付蛍光灯は天井より吊り下げられるものであることから、次の事項が理解できる。
ケ.扇風機翼2は、全体として環状をなす蛍光灯の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記蛍光灯の上端の位置に前記扇風機翼2の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ前記扇風機翼2の上端は前記蛍光灯の上端よりも上方に位置する。
記載事項イ、事項カ及び第2図の記載、さらに引用例1に記載された扇風機付蛍光灯は天井より吊り下げられるものであることから、以下の事項が理解できる。
サ.Dの方向は、蛍光灯の中心部の空間の下方の方向である。
シ.蛍光灯反射笠5の上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜しており、扇風機翼2の外周部分C→Dの流れは前記上面に沿って流れる。
(2)そうすると、これらの事項からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「電動機1及びこの電動機に取付けた扇風機翼2を備える扇風機と、
環状取付板4、該取付板に取付けた蛍光灯反射笠5、環状蛍光灯6、蛍光灯取付金具7及び前記蛍光灯反射笠5に取り付けられているカバー8を備え、全体として環状をなす蛍光灯と、
扇風機を蛍光灯の内側に保持する取付脚3と、を備え、天井より吊り下げる扇風機付蛍光灯であって、
扇風機翼2は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであり、前記蛍光灯の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記蛍光灯の上端の位置に前記扇風機翼2の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ前記扇風機翼2の上端は前記蛍光灯の上端よりも上方に位置し、
扇風機翼2後方Bの方向より及び扇風機翼2の外周方向Cより空気を吸入し、前記蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの方向に放出し、
蛍光灯反射笠5の上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜しており、扇風機翼2の外周部分C→前記蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの流れは前記上面に沿って流れる、
扇風機付蛍光灯。」

2.引用例2の記載及び引用発明2
(1)引用例2には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「実用新案登録請求の範囲
(1) 送風用羽根車(1)の正面に設けた円形螢光ランプ(15)の点灯用安定器(8)を,上記羽根車(1)の駆動用電動機(2)の支承用支持板(3)で後半ガード(4)内の後部に形成され吸気口(24)を有する安定器室(A)内に中吊り状態に設け,上記羽根車(1)の回動による吸入空気により強制冷却させるようにしたことを特徴とする円形螢光ランプ付扇風機。
(2) 送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)と安定器室(A)内の安定器(8)との間に,上記電動機(2)の支持板(3)から安定器室(A)内に突出させた当該安定器の取り付け支脚(9)により冷却空気の流通空間を形成させるようにした実用新案登録請求の範囲第1項記載の円形螢光ランプ付扇風機。」(明細書第1ページ第4?19行)
イ.「第1図において(1)は送風用羽根車,(2)はその駆動用電動機,(3)はこの電動機の支持板,(4)は下部に風の吸込口(5)を開設した後半ガード,(6)は上記支持板(3)の正面に取り付けた常夜灯用豆電球,(7)は支持板(3)の背面に取り付けたグロースターター,(8)は上記支持板(3)の背部に形成された後半ガード(4)内の安定器室(A)に突出させた支脚(9)に両端を取り付けられた安定器,(10)は扇風機の例えば天井吊り金具で上記支持板(3)に取り付けられている。」(明細書第2ページ第4?13行)
ウ.「(11)は上記羽根車(1)の正面に対設させた風向き変更用回転グリル(12)の駆動用電動機(13)の取付け板で,外周縁部には吐出風案内用ベルマウス部(14)が一連に形成されている。(15)はこのベルマウス部(14)の正面に支持板(16)を介して取り付けられた円形螢光ランプ,(17)は着脱自在のその正面カバーで上記ベルマウス部(14)に係止されている。(18)はこのベルマウス部(14)の正面(反導風面)に形成された反射面,(19)はベルマウス部(14)の頂部と後半ガード(4)の頂部とに跨って設けたこれら両者の係着部,(20)はこの係着部(19)の反対側に設けた両者の結合用ヒンジ部,(21)は上記係着部(19)での双方の結合を解き,取付け板(11)を下方に倒して羽根車(1)を着脱する時に上記取付け板(11)の回動支点の役目をさせるための肉薄部,(22)は係止爪,(23)は上記支持板(16)の嵌挿部,(24)は安定器室(A)内への吸気口を示す。」(明細書第2ページ第13行?第3ページ第10行)
エ.「第2図は風向き変更用回転グリル(12)の駆動用電動機(13)を取り付けたその取付け板(11)の外周縁部を示す該部の拡大断面図で,この取付け板の外周縁部には吐出風案内用ベルマウス部(14)が一連に設けられ,かつその正面には円形螢光ランプ(15)の反射面(18)が形成され,さらにこの螢光ランプ(15)の正面カバー(17)が該部に着脱自在に係着されている。
上記構成において送風用羽根車(1)を回転させると風は後半ガード(4)の下部吸込口(5)より吸込まれ,第2図で示すように取付け板(11)のベルマウス部(14)で実線矢印のように案内され正面の風向き変更用回転グリル(12)の回転で広域にわたって拡散される。」(明細書第3ページ第11行?第4ページ第4行)
オ.「そして夜間は上記円形螢光ランプ(15)の点灯によりその正面カバー(17)からの直接投光の他に上記ベルマウス部(14)の正面に形成した反射面(18)で図示矢印のように反射される。」(明細書第4ページ第5?8行)
カ.「この考案の扇風機は以上のように円形螢光ランプ点灯用安定器を後半ガード内の後部に形成した安定器室内に中吊り状態に設けているので,その冷却効果が向上されるばかりでなく,この安定器により羽根車駆動用電動機の冷却も阻害されることがない等の利点を有するものである。」(明細書第4ページ第18行?第5ページ第4号)
そして、記載事項イ及び第1図の記載から、次の事項が理解できる。
キ.送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)は、支持板(3)に取り付けられ、支持板(3)は、天井吊り金具(10)により天井から吊り下げられており、後半ガード(4)は、支持板(3)に取り付けられている。
記載事項ウ及び第1図の記載から、以下の事項が理解できる。
ク.取付け板(11)は、外周縁部に一連に形成されているベルマウス部(14)で後半ガード(4)に取り付けられている。
ケ.ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなる部分は、全体として環状をなし、中心部に空間を形成する。
記載事項エ、事項ケ及び第1図の記載、さらに引用例2に記載された円形螢光ランプ付扇風機は天井より吊り下げられるものであることから、次の事項が理解できる。
コ.送風用羽根車(1)は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであり、ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記部分の上端の位置に送風用羽根車(1)の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ送風用羽根車(1)の上端は前記部分の上端よりも上方に位置する。
事項ケ及び第1図の記載、さらに引用例2に記載された円形螢光ランプ付扇風機は天井より吊り下げられるものであることから、次の事項が理解できる。
サ.風向き変更用回転グリル(12)は、ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分の中心部に形成された空間の下方に配置されている。
(2)そうすると、これらの事項からみて、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「送風用羽根車(1)と、送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)と、電動機(2)が取り付けられた支持板(3)と、支持板(3)に取り付けられた後半ガード(4)と、後半ガード(4)に取り付けられ、外周縁部に吐出風案内用ベルマウス部(14)が形成されている取付け板(11)と、送風用羽根車(1)の正面に対設させた風向き変更用回転グリル(12)と、ベルマウス部(14)の正面に支持板(16)を介して取り付けられた円形螢光ランプ(15)と、ベルマウス部(14)に係止されている正面カバー(17)と、ベルマウス部(14)の正面(反導風面)に形成された反射面(18)と、を備え、支持板(3)が天井吊り金具(10)により天井から吊り下げられている、円形螢光ランプ付扇風機であって、
送風用羽根車(1)は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであり、ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分(以下、「環状部分」という。)の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記環状部分の上端の位置に送風用羽根車(1)の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ送風用羽根車(1)の上端は前記環状部分の上端よりも上方に位置し、
後半ガード(4)の下部に吸込口(5)が開設され、風向き変更用回転グリル(12)は前記空間の下方に配置され、送風用羽根車(1)を回転させると、風は、吸込口(5)より吸込まれ、ベルマウス部(14)で案内され、風向き変更用回転グリル(12)の回転で広域にわたって拡散される、円形螢光ランプ付扇風機。」

3.引用例3の記載
引用例3には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「【0060】図4は実験装置の環境を示す概念図である。図において、2℃に冷却された室外部分の内部に図4で示すような8畳間(3.6m×3.6m×高さ2.4m)の室内部屋が設置されている。エアコンは上記部屋の一壁面のほぼ中央に設置し、循環送風機は部屋の天井面のほぼ中央に設置した。エアコンは冬場を想定し暖房運転を行なった。エアコンの設定温度は21℃とした。部屋の中には、温度センサーが上下水平方向に400mm間隔毎に設置され、室内を9点×9点×上下6点の合計486点に分割して温度分布を最新の計測室において測定した。2方向吹出しの場合は、サーキュレーターの吹出し方向がエアコンの吹出し方向に対して直角方向で1方向吹出しの場合はサーキュレーターの吹出し方向がエアコンの吹出し方向に対して直角方向と同一方向の2種類とした。室内の上下温度差は床上5cmの点と床上200cmの点の室温温度差で表わした。」
イ.「【0064】図5は、横軸に循環送風機の風量を縦軸に前記上下温度差を示したもので、各送風形態での効果の相違を表わしている。循環送風機を運転しない場合の上下温度差は7.4℃であった。ここで1方向吹出しとは、図1で示す循環送風機の形態で、全周吹出しとは従来の技術6に示す図17の送風機の形態を示し、2方向吹出しとは前記全方向吹出しの場合の吹出口を周方向に4等分して開口部と閉鎖部を交互にし、直線状の2方向に吹出す送風機の形態を示している。また、吹出口の上下幅寸法とは、図17の吹出口22の高さ寸法すなわちベルマウス128とガイドプレート109の間隔寸法を示す。
【0065】この結果、例えばサーキュレーションにより、上下温度差を運転しない場合の1/2以下の約3℃にする循環風量は1方向吹出しの場合では約160m^(3)/h、2方向吹出しでは約280m^(3)/h、全周吹出しでは320m^(3)/h以上必要なことがわかった。また、1方向吹出しの場合では吹出方向の相違による上下温度差即ちサーキュレーション効果の差はほとんどなかった。全周吹出しでは、吹出口の上下幅寸法を15mm、20mm、30mmと変化させた結果、上下幅寸法は15mm、20mm、30mmの順に良好であった。全周吹出しと2方向吹出しで2方向吹出しの方が風量が少なくすんだ理由は、風量が同一の場合には2方向吹出しは全周吹出しに比べ吹出風速が約2倍になるためと思われる。サーキュレーション効果は風量と吹出風速の積に関係すると思われる。」(第8ページ右下欄第15行?第9ページ左下欄第3行)
そして、記載事項ア及びイ並びに図5の記載から、次の事項が理解できる。
ウ.循環送風機の形態が1方向吹出し、2方向吹出しまたは全周吹出しのいずれの場合でも、風量が多い程室内の上下温度差は小さい。

4.引用例4の記載
引用例4の記載から、次の事項が理解できる。
ア.パナソニック株式会社の天井扇(シーリングファン)F-M131Hの風量は、羽根の正回転(50/60Hz)時において、最小70/73m^(3)/min、最大169/201m^(3)/minである。

5.引用例5の記載
引用例5の記載から、次の事項が理解できる。
ア.松下電器産業株式会社(当審注:平成20年10月に会社名を「パナソニック株式会社」に変更)の天井扇風機(シーリングファン)F-M131Hは、1985年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞している。

第5 対比及び判断

1.引用発明1について
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
a.引用発明1の「電動機1」、「扇風機翼2」及び「扇風機」は、それぞれ、本願発明の「モータ」、「羽根」及び「送風機」に相当する。そして、引用発明1は、扇風機翼2を電動機1に取付けたものであるが、電動機1が回転軸を有し、扇風機翼2が該回転軸に取付けられていることは、当業者にとって明らかである。そして、引用発明1の扇風機付蛍光灯は天井より吊り下げられるものであるから、引用例1の第2図の記載からみて、電動機1の回転軸は略鉛直方向に延びているといえる。そうすると、引用発明1の「電動機1及びこの電動機に取付けた扇風機翼2を備える扇風機」は、本願発明の「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機」に相当する。
引用発明1の「環状蛍光灯6」は、本願発明の「発光体」に相当するから、引用発明1の「環状取付板4、該取付板に取付けた蛍光灯反射笠5、環状蛍光灯6、蛍光灯取付金具7及び前記蛍光灯反射笠5に取り付けられているカバー8を備え、全体として環状をなす蛍光灯」は、本願発明の「発光体を含む照明部」に相当する。
引用発明1の「扇風機を蛍光灯の内側に保持する取付脚3」は、本願発明の「前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部」と、「送風機の外側に照明部を位置させて両者を固定する固定手段」である点で一致する。
引用発明1の「天井より吊り下げる」態様は、本願発明の「室内の天井に設置される」態様に相当し、引用発明1の「扇風機付蛍光灯」は、本願発明の「照明器具」に相当する。
そうすると、引用発明1の「電動機1及びこの電動機に取付けた扇風機翼2を備える扇風機と、環状取付板4、該取付板に取付けた蛍光灯反射笠5、環状蛍光灯6、蛍光灯取付金具7及び前記蛍光灯反射笠5に取り付けられているカバー8を備え、全体として環状をなす蛍光灯と、扇風機を蛍光灯の内側に保持する取付脚3と、を備え、天井より吊り下げる扇風機付蛍光灯」は、本願発明の「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部とを備え、室内の天井に設置される照明器具」と、「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を位置させて両者を固定する固定手段とを備え、室内の天井に設置される照明器具」である点で一致する。
b.引用発明1の扇風機付蛍光灯は、天井より吊り下げられるものであるから、室内に設置されるものであって、その扇風機翼2が上方の空気を下方へ送れば、当然、室内に気流が発生する。してみれば、引用発明1の「扇風機翼2は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであ」ることは、本願発明の「前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであ」ることに相当する。
引用発明1の「前記蛍光灯の中心部に形成された空間」は、本願発明の「前記照明部の中心部に形成された空間」に相当する。
引用発明1の「扇風機翼2は、」「鉛直方向に沿う方向について、前記蛍光灯の上端の位置に前記扇風機翼2の下端の位置が略一致する位置に配置され」る態様は、本願発明の「前記羽根は、」「鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され」る態様に相当する。
引用発明1の「前記扇風機翼2の上端は前記蛍光灯の上端よりも上方に位置」する態様は、本願発明の「前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置」する態様に相当する。
そうすると、引用発明1の「扇風機翼2は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであり、前記蛍光灯の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記蛍光灯の上端の位置に前記扇風機翼2の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ前記扇風機翼2の上端は前記蛍光灯の上端よりも上方に位置」することは、本願発明の「前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであり、前記照明部の中心部に形成された空間に配置され、且つ、鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され、かつ前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置」することに相当する。
c.引用例1の第2図の記載からみて、引用発明1において、扇風機翼2後方Bの方向より及び扇風機翼2の外周方向Cより吸入された空気は、前記蛍光灯の中心部に形成された空間に導入され、当該空間の下方Dの方向に放出されている。引用発明1において、扇風機付蛍光灯の扇風機翼2の後方の空間は、前記空間に導入される空気の吸込口として機能し、前記空間の下方の開口部は、前記空間から当該空間の下方Dの方向の外部に空気を放出する吹出口として機能しており、引用発明1は、前記空間に導入される空気の吸込口及び前記空間から当該空間の下方Dの方向の外部に空気を放出する吹出口を備えているといえる。
そうすると、引用発明1の「扇風機翼2後方Bの方向より及び扇風機翼2の外周方向Cより空気を吸入し、前記蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの方向に放出」する態様は、本願発明の「前記照明器具には、前記羽根よりも上方から前記空間に空気を導入させる吸込口と、前記空間に連続するように前記空間の下方に位置し、且つ、前記空間の外部に空気を導出させる吹出口とが形成され」る態様に相当する。
d.引用発明1の「蛍光灯反射笠5の上面」は、本願発明の照明部の「上面」に相当するから、引用発明1の「蛍光灯反射笠5の上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して」いる態様は、本願発明の「前記照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して」いる態様に相当する。
引用発明1において、扇風機翼2の外周部分C→蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの流れは蛍光灯反射笠5の上面に沿って流れているから、前記上面は、前記C→Dの流れを案内しているといえる。さらに、引用例1の第2図の記載からみて、前記C→Dに流れる空気は、前記蛍光灯の外部から取付脚3よりも内側の空間に流れている。すなわち、前記上面は、前記蛍光灯の外部の空気を取付脚3よりも内側の空間に案内しているといえ、引用発明1の「扇風機翼2の外周部分C→前記蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの流れは前記上面に沿って流れる」態様は、本願発明の「前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する」態様と、「前記照明部の外部の空気を送風機の外側に前記照明部を位置させて両者を固定する固定手段よりも内側の空間へ案内する」点で一致する。
そうすると、引用発明1の「蛍光灯反射笠5の上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜しており、扇風機翼2の外周部分C→前記蛍光灯の中心部に形成された空間の下方Dの流れは前記上面に沿って流れる」態様は、本願発明の「前記照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあ」る態様と、「照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を送風機の外側に前記照明部を位置させて両者を固定する固定手段よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあ」る点で一致する。
e.以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
【一致点】
「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を位置させて両者を固定する固定手段とを備え、室内の天井に設置される照明器具であって、
前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであり、前記照明部の中心部に形成された空間に配置され、且つ、鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され、かつ前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置し、
前記照明器具には、前記羽根よりも上方から前記空間に空気を導入させる吸込口と、前記空間に連続するように前記空間の下方に位置し、且つ、前記空間の外部に空気を導出させる吹出口とが形成され、
前記照明部は、上面を有し、
前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記固定手段よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してある、照明器具。」
【相違点1】
前記固定手段について、本願発明は、前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部であるのに対し、引用発明は、扇風機を蛍光灯の内側に保持する取付脚3である点。
【相違点2】
本願発明は、全風量が8m^(3)/min以上の空気が前記吹出口から吹き出されるように、前記吹出口の直径および前記羽根の直径を設定してあり、且つ、前記送風機の前記モータ回転軸が回転する速度を設定してあるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。
(2)判断
相違点について検討する。
a.相違点1について、引用発明1は、天井より吊り下げられるものであって、そのどの部位を吊金具10により天井から吊り下げるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。すなわち、引用発明1において、吊金具10により扇風機を天井から吊り下げるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項であって、そのようにした場合、取付脚3は、おのずと、扇風機に対して前記蛍光灯を吊り下げるものとなる。
したがって、引用発明1において、相違点1に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。
b.相違点2について検討すると、室内全体において空気を循環させる送風機において、全風量の多寡により当該室内の上下の温度分布が異なることは、技術常識であり(例えば引用例3参照)、また同送風機として、8m^(3)/min以上の全風量は特別なものではない(例えば引用例4参照。なお、引用例5は,引用例4に記載された天井扇(F-M131H)の公開時期を示すための文献である。)。
また、本件出願明細書及び図面を参照すると、「全風量が8m^(3)/min以上」は、送風機を床面積が13.0m^(2)、室内の床面から天井までの高さが2400mmである室内の天井の略中心に設置した場合に、ISO7330:2005に定められた上下の温度分布の基準を満たすために必要となる全風量である。しかしながら、前記基準を満たすために必要な全風量が、送風機が設置される室内の床面積や床面から天井までの高さによって変化することは明らかであるから、本願発明において全風量を8m^(3)/min以上とした点に臨界的意義は認められない。
更に、国際規格を満たすように全風量を設定し、当該全風量が得られるように、吹出口の直径、羽根の直径及び送風機のモータ回転軸の回転速度を設定することは、当業者が容易に想到し得る事項であって、その具体的な数値をどのようにするかは、当業者が実験的に適宜定め得る事項である。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。
c.そして、本願発明の奏する効果に、引用例1に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせない。
d.以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

これに対し、請求人は、平成30年度4月6日付けの意見書(以下、単に「意見書」という。)において、本願発明は、「前記照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあり」という発明特定事項を備えており、照明部の上面と天井との間に形成される流路の面積が次第に拡大するので、照明部の上面に沿って流れる空気は吊部よりも内側の空間を通ってプロペラファンの周囲まで容易に流れ、送風性能を向上させることができるという効果を奏するのに対し、引用例1に開示されている扇風機付蛍光灯は、照明部の上側に環状取付板4が設けられており、環状取付板4に設けた穴9を通じて照明部の外側の空気を取込む構成としたものであり、引用例1には前記発明特定事項は記載されておらず、示唆もされていない旨主張している(意見書【意見の内容】(3)(3-1-1),(3-1-2)参照)。
請求人の主張について検討すると、引用例1の実用新案の説明には、穴9について、「上記取付板4に重量軽減のため特に穴9を開け」としか記載されていない。さらに、図面の記載を参照しても、請求人が主張するような穴9を通じて照明部の外側の空気を取込むことが記載されているとはいえない。むしろ、前記「第4 1.(1)」において検討したとおり、引用例1に開示されている扇風機付蛍光灯は、扇風機翼2の外周部分C→Dの流れが蛍光灯反射笠5の上面に沿って流れるものであって、前記「第5 1.(1)」において、検討したとおり、引用発明1は、前記発明特定事項に「照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を送風機の外側に前記照明部を位置させて両者を固定する固定手段よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してある」点で一致する事項を備えている。そして、引用発明1において、取付脚3を送風機の外側に照明部を吊り下げる吊部とすることが当業者が容易になし得る事項であることは、先に検討したとおりである。
以上のとおりであるから、請求人の主張は、採用することができない。

2.引用発明2について
(1)対比
本願発明と引用発明2を対比する。
a.引用発明2の「送風用羽根車(1)」、「送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)」は、それぞれ、本願発明の「羽根」、「モータ」に相当する。そして、引用発明2は、送風用羽根車(1)を電動機(2)により駆動するものであるが、電動機(2)が回転軸を有し、送風用羽根車(1)が該回転軸に連結されて駆動されることは、当業者にとって明らかである。そして、引用発明2は天井から吊り下げられるものであるから、引用例2の第1図の記載からみて、電動機(2)の回転軸は略鉛直方向に延びているといえる。そうすると、引用発明2の「送風用羽根車(1)と、送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)」は、合わせて、本願発明の「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機」に相当する。
引用発明2の「円形螢光ランプ(15)」は、本願発明の「発光体」に相当し、さらに引用発明2は、円形螢光ランプ(15)が支持板(16)を介してベルマウス部(14)に取り付けられ、円形螢光ランプ(15)の点灯により、正面カバー(17)からの直接投光の他にベルマウス部(14)の正面に形成された反射面(18)で反射される光によっても照明を行うものであるから、引用発明2の「ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分」は、本願発明の「発光体を含む照明部」に相当する。
引用発明2は、支持板(3)が天井吊り金具(10)により天井から吊り下げられ、後半ガード(4)が支持板(3)に取り付けられ、ベルマウス部(14)が形成されている取付け板(11)が後半ガード(4)に取り付けられ、円形螢光ランプ(15)が支持板(16)を介してベルマウス部(14)に取り付けられ、正面カバー(17)がベルマウス部(14)に係止されているから、引用発明2の「後半ガード(4)」は、前記環状部分を吊り下げているといえ、本願発明の「前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部」に相当する。
引用発明2の「天井吊り金具(10)により天井から吊り下げられている」態様は、本願発明の「室内の天井に設置される」態様に相当し、引用発明2の「円形螢光ランプ付扇風機」は、本願発明の「照明器具」に相当する。
そうすると、引用発明2の「送風用羽根車(1)と、送風用羽根車(1)の駆動用電動機(2)と、電動機(2)が取り付けられた支持板(3)と、支持板(3)に取り付けられた後半ガード(4)と、後半ガード(4)に取り付けられ、外周縁部に吐出風案内用ベルマウス部(14)が形成されている取付け板(11)と、送風用羽根車(1)の正面に対設させた風向き変更用回転グリル(12)と、ベルマウス部(14)の正面に支持板(16)を介して取り付けられた円形螢光ランプ(15)と、ベルマウス部(14)に係止されている正面カバー(17)と、ベルマウス部(14)の正面(反導風面)に形成された反射面(18)と、を備え、支持板(3)が天井吊り金具(10)により天井から吊り下げられている、円形螢光ランプ付扇風機」は、本願発明の「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部とを備え、室内の天井に設置される照明器具」に相当する。
b.引用発明2は、天井から吊り下げられるものであるから、室内に設置されるものであって、その送風用羽根車(1)が上方の空気を下方へ送れば、当然、室内に気流が発生する。してみれば、引用発明2の「送風用羽根車(1)は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであ」ることは、本願発明の「前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであ」ることに相当する。
引用発明2の「ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分(以下、「環状部分」という。)の中心部に形成された空間」は、本願発明の「前記照明部の中心部に形成された空間」に相当する。
引用発明2の「送風用羽根車(1)は、」「鉛直方向に沿う方向について、前記環状部分の上端の位置に送風用羽根車(1)の下端の位置が略一致する位置に配置され」る態様は、本願発明の「前記羽根は、」「鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され」る態様に相当する。
引用発明2の「送風用羽根車(1)の上端は前記環状部分の上端よりも上方に位置」する態様は、本願発明の「前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置」する態様に相当する。
そうすると、引用発明2の「送風用羽根車(1)は、上方の空気を下方へ送るプロペラファンであり、ベルマウス部(14)、円形螢光ランプ(15)及び正面カバー(17)からなり、全体として環状をなす部分(以下、「環状部分」という。)の中心部に形成された空間に配置され、鉛直方向に沿う方向について、前記環状部分の上端の位置に送風用羽根車(1)の下端の位置が略一致する位置に配置され、かつ送風用羽根車(1)の上端は前記環状部分の上端よりも上方に位置」することは、本願発明の「前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであり、前記照明部の中心部に形成された空間に配置され、且つ、鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され、かつ前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置」することに相当する。
c.引用例2の第1図の記載からみて、引用発明2において、吸込口(5)より吸込まれる風は、円形螢光ランプ付扇風機の外部から吸込まれ、ベルマウス部(14)で案内されて前記環状部分の中心部に形成された空間に導入され、風向き変更用回転グリル(12)により拡散されつつ当該空間の下方に放出されている。引用発明2の「吸込口(5)」は、本願発明の「前記羽根よりも上方から前記空間に導入させる空気の吸込口」に相当する。引用発明2において、風向き変更用回転グリル(12)が配置される前記空間の下方の開口部は、前記空間の外部に空気を放出する吹出口として機能しており、引用発明2は、前記空間から当該空間の下方Dの方向の外部に空気を放出する吹出口を備えているといえる。
そして、引用発明2は、天井から吊り下げられているものであり、引用例2の第1図の記載からみて、ベルマウス部(14)の前記風を案内する面は、ベルマウス部(14)の上面といえ、本願発明の照明部の「上面」に相当し、更に斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜しているといえる。
さらに、更に、先に検討したとおり、吸込口(5)より吸込まれる風は、円形螢光ランプ付扇風機の外部から吸込まれ、ベルマウス部(14)で案内されて前記環状部分の中心部に形成された空間に導入されており、当該空間は後半ガード(4)よりも内側にある。すなわち、ベルマウス部(14)の前記上面は、前記環状部分の外部の空気を後半ガード(4)よりも内側の空間に案内しているといえ、引用発明2の「風は、吸込口(5)より吸込まれ、ベルマウス部(14)で案内され」る態様は、本願発明の「前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する」態様に相当する。
そうすると、引用発明2の「後半ガード(4)の下部には吸込口(5)が開設され、風向き変更用回転グリル(12)は前記空間の下方に配置され、送風用羽根車(1)を回転させると、風は、吸込口(5)より吸込まれ、ベルマウス部(14)で案内され、風向き変更用回転グリル(12)の回転で広域にわたって拡散される」態様は、本願発明の「前記照明器具には、前記羽根よりも上方から前記空間に空気を導入させる吸込口と、前記空間に連続するように前記空間の下方に位置し、且つ、前記空間の外部に空気を導出させる吹出口とが形成され、前記照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあ」る態様に相当する。
d.以上のことから、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
【一致点】
「モータ回転軸に連結された羽根を含み且つ略鉛直方向に延びる回転軸線を有する送風機と、発光体を含む照明部と、前記送風機の外側に前記照明部を吊り下げる吊部とを備え、室内の天井に設置される照明器具であって、
前記羽根は、上方の空気を下方へ送り、前記室内の空間に気流を発生させるプロペラファンであり、前記照明部の中心部に形成された空間に配置され、且つ、鉛直方向に沿う方向について、前記照明部の上端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置と、前記照明部の下端の位置に前記羽根の下端の位置が略一致する位置との間に配置され、かつ前記羽根の上端は前記照明部の上端よりも上方に位置し、
前記照明器具には、前記羽根よりも上方から前記空間に空気を導入させる吸込口と、前記空間に連続するように前記空間の下方に位置し、且つ、前記空間の外部に空気を導出させる吹出口とが形成され、
前記照明部は、上面を有し、
前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してある、照明器具。」
【相違点】
本願発明は、全風量が8m3/min以上の空気が前記吹出口から吹き出されるように、前記吹出口の直径および前記羽根の直径を設定してあり、且つ、前記送風機の前記モータ回転軸が回転する速度を設定してあるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。
(2)判断
a.相違点について検討すると、前記「第5 1.(2)」において検討したとおり、室内全体において空気を循環させる送風機において、全風量の多寡により当該室内の上下の温度分布が異なることは、技術常識であり、また同送風機として、8m^(3)/min以上の全風量は特別なものではない。
また、本願発明において全風量を8m^(3)/min以上とした点に臨界的意義は認められず、更に、国際規格を満たすように全風量を設定し、当該全風量が得られるように、吹出口の直径、羽根の直径及び送風機のモータ回転軸の回転速度を設定することは、当業者が容易に想到し得る事項であって、その具体的な数値をどのようにするかは、当業者が実験的に適宜定め得る事項であることも、前記「第5 1.(2)」において検討したとおりである。
したがって、引用発明2において、相違点に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。
b.そして、本願発明の奏する効果に、引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせない。
c.以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

これに対し、請求人は、意見書において、本願発明は、「前記照明部は、上面を有し、前記上面は、斜め上方に向かって外側へ延びるように水平方向から傾斜して、前記照明部の外部の空気を前記吊部よりも内側の空間へ案内する案内面を形成してあり」という発明特定事項を備えており、照明部の上面と天井との間に形成される流路の面積が次第に拡大するので、照明部の上面に沿って流れる空気は吊部よりも内側の空間を通ってプロペラファンの周囲まで容易に流れ、送風性能を向上させることができるという効果を奏するのに対し、引用例2に開示されている円形蛍光ランプ付扇風機は、送風用羽根車1よりも上側に配置される後半ガード4の吸気口5を通じて、照明部の外部の空気を取込む構成としたものであり、引用例2には前記発明特定事項は記載されておらず、示唆もされていない旨主張している(意見書【意見の内容】(3)(3-1-1),(3-1-2)参照)。
しかしながら、引用例2に前記発明特定事項に相当する事項が記載されていることは、先に検討したとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基いて、また引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-12 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-30 
出願番号 特願2013-20481(P2013-20481)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 達朗  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 山村 和人
久保 竜一
発明の名称 照明器具  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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