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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1344386
審判番号 不服2017-16874  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-14 
確定日 2018-09-13 
事件の表示 特願2016- 4604号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-124001号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月13日の出願であって、平成28年8月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年10月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月1日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成29年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年8月17日付け(発送日:平成29年8月22日)で、平成29年4月27日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年11月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、平成28年10月21日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。

(補正前:平成28年10月21日付け手続補正)
「【請求項1】

移動可能な移動部を有して演出を行う演出部と、

第1の状態から回転して第2の状態になることが可能であって、演出に関わる画像を表示する画像表示部と、を備え、

前記演出部の前記移動部が移動した後の状態にて前記移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の前記画像表示部が補完することを特徴とする

遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年11月14日付け手続補正)
「【請求項1】

移動可能な移動部を有して演出を行う演出部と、

第1の状態から回転して第2の状態になることが可能であって、演出に関わる画像を表示する画像表示部と、を備え、

前記演出部の前記移動部が移動する際に前記画像表示部が移動し、当該移動部が移動した後の状態にて当該移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の当該画像表示部が補完することを特徴とする

遊技機。」

2.補正の適否
補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「移動部」と「画像表示部」の移動のタイミングについて、「前記演出部の前記移動部が移動する際に前記画像表示部が移動」することを特定することにより、補正前の請求項1に記載された「遊技機」を限定するものである。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、【0298】、【0312】、【0313】、図39、図42等の記載に基いており、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次に特定されるとおりのものである(A?Dについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 移動可能な移動部を有して演出を行う演出部と、

B 第1の状態から回転して第2の状態になることが可能であって、演出に関わる画像を表示する画像表示部と、を備え、

C 前記演出部の前記移動部が移動する際に前記画像表示部が移動し、当該移動部が移動した後の状態にて当該移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の当該画像表示部が補完することを特徴とする

D 遊技機。」

(2-1)引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-208308号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

(ア)「【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の構成例を示した全体正面図であり、図2は各種部品を搭載した遊技盤の正面図であり、図3乃至図7は遊技盤面上における各演出用可動装置の動作を示す説明図である。」

(イ)「【0035】
図8乃至図20に示すように、第1の演出用可動装置Aは、サブ画像表示装置30、動作機構60を主構成要素としている。
即ち、メイン画像表示装置7の前面にあるメイン表示画面7aの前方にはサブ画像表示装置30が配置されており、サブ画像表示装置30は、動作機構(サブ画像表示装置動作機構)60によって図1、図2、図8、図18等に示した下降位置(第1の位置)と図3、図4、図8乃至図10、図19、図20等に示した上昇位置(第2の位置)との間を進退自在に構成されている。
【0036】
サブ画像表示装置30は、表示装置基部33と、表示装置基部33の前面に配置された長方形状の表示画面(第2表示画面)31と、表示装置基部33の後面に配置されたギミック等の役物演出部50と、を備えている。
表示装置基部33は、前面及び後面を除いた4つの側端部のうちの対向する2つの側端部、本例では長手方向両側端部に夫々設けた被軸支部34aを夫々各ホルダ部材40に設けた軸支部34によって軸支されることにより回転(自転)自在に構成されており、サブ表示画面31と役物演出部50を交互に前面側に方向転換して遊技者に視認させるように構成されている。
各ホルダ部材40は、表示装置基部33の長手方向両側端縁の各中間部に設けた各被軸支部34aを回転自在に軸支することにより各被軸支部34a(軸支部34)間を結ぶ回転軸線(第1の回転軸)34Aを中心として表示装置基部33を正逆回転させる。」

(ウ)【0057】
次に、図1乃至図7に示すように飾り部材6の上縁部の裏側であってメイン画像表示装置7のメイン表示画面7aの前方には、図24、図25に示した第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100が表示画面の前方に出没自在に構成されている。半環状部材100は、サブ画像表示装置30が最上昇位置に達してから第3の回転軸46を中心として90度回転して縦姿勢になると共に、第1の回転軸34Aを中心として180度回転することにより、役物演出部50を前面側に移動させた状態となった時に、役物演出部50を包囲するように端縁同士を近接させて環状体101を構成する。」

(エ)「【0058】
図24(a)及び(b)は第2の演出用可動装置Bの開放状態を示す正面図、及び背面図であり、図25(a)及び(b)は第2の演出用可動装置Bの閉止状態を示す正面図、及び背面図である。
第2の演出用可動装置Bは、2つの開閉軸105を中心として夫々メイン画像表示装置の表示画面と並行な平面に沿って回動(開閉)する2つのアーム部材107と、各開閉軸105に一体化されて各開閉軸を中心として回動する開閉ギヤ108と、各アーム部材107の先端に一体化された半環状部材100と、各アーム107の開閉軸105を回動させる駆動機構110と、を概略備えている。」

(オ)「【0120】
図45、図46は、本実施形態の遊技機における遊技演出の一例を示した図である。
本実施形態の遊技機1では、例えば図45(a)?(c)に示すようにメイン表示画面7aに表示されている変動中の演出図柄8のうち、第1図柄8aと第3図柄8bが同一図柄(例えば「7」)で停止してリーチ状態に移行したときに、図46に示すような遊技演出に移行するように構成されている。
また、図45(a)?(c)に示すような演出図柄8がリーチ状態に移行するまでの図柄変動期間では、メイン表示画面7aの前部下方に配置されている第1の演出用可動装置Aは、サブ表示画面31が横長状態で且つ遊技者から視認し易いように斜め上方に約45度傾斜させた状態で停止している。なお、このときサブ表示画面31にはリーチや大当たりの期待度を表す画像を表示するといったことが考えられる。
また、同様に図45(a)?(c)に示すような演出図柄8がリーチ状態に移行するまでの図柄変動期間では、飾り部材6の上縁部の裏側であってメイン表示画面7aの前方に配置されている第2の演出用可動装置Bも飾り部材6の裏側に退避した状態のままとなる。」

(カ)「【0123】
次に、第2の演出用可動装置Bの動作について説明する。
第2の演出用可動装置Bは、図46(a)?図46(c)に示した期間では、飾り部材6の上縁部の裏側に退避した状態を継続する。そして、図46(c)に示すように、第1の演出用可動装置Aの役物演出部50が視認不能な態様から視認可能な態様となるように可動し、さらに図46(d)に示すように、役物演出部50の背面に隠蔽されている可動部54が可動した際には、可動部54の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動するようにしている。つまり、役物演出部50を包囲するような環状体101を構成するようにしている。」

(キ)
図24(a)


図25(a)


図24(a)には、半環状部材100は、半環状の外側でアーム部材107に接して設けられる外側部分と、外側部分の内側に設けられる内側部分とからなり、外側部分は内側部分より弧の長さが短いことが図示され、図25(a)には、2つの半環状部材100の内側部分の端縁が接することにより円が形成されること、その際、半環状部材100の外側部分の端縁は離れていることが図示されている。

(ク)
図46(c)


図46(d)


図46(c)には、役物演出部50の上部には、半環状部材100の外側部分と内側部分に対応する部分があるように見える部分があることが図示され、図46(d)には、2つの半環状部材100の前面に役物演出部50が配置され、正面から見て上部に、2つの半環状部材100と、役物演出部50とで、半環状部材100の外側部分と内側部分が連続した円弧に見える部分があることが図示されている。

上記(ア)?(カ)の記載事項、上記(キ)、(ク)の図示内容から、以下の事項が導かれる。

(a)上記(ウ)【0057】には、「メイン表示画面7aの前方には、・・・第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100が表示画面の前方に出没自在に構成されている。半環状部材100は、・・・役物演出部50を包囲するように端縁同士を近接させて環状体101を構成する」と記載されている。
よって、引用文献1には、メイン表示画面7aの前方に出没自在に構成されている2つの半環状部材が端縁同志を近接させて環状体101を構成する第2の演出用可動装置Bが記載されているといえる。

(b)上記(イ)【0035】、【0036】には、「第1の演出用可動装置Aは、サブ画像表示装置30、動作機構60を主構成要素としている。・・・サブ画像表示装置30は、表示装置基部33と、表示装置基部33の前面に配置された長方形状の表示画面(第2表示画面)31と、表示装置基部33の後面に配置されたギミック等の役物演出部50と、を備えている。表示装置基部33は、・・・回転(自転)自在に構成されており、サブ表示画面31と役物演出部50を交互に前面側に方向転換して遊技者に視認させるように構成されている」と、上記(オ)【0120】には、「サブ表示画面31にはリーチや大当たりの期待度を表す画像を表示する」と、それぞれ、記載されている。
よって、引用文献1には、サブ表示画面31が遊技者から視認できる状態から回転して役物演出部50が遊技者から視認できる状態となるように構成され、リーチや大当たりの期待度を表す画像を表示する第1の演出用可動装置Aが記載されているといえる。

(c)上記(カ)【0123】には、「第1の演出用可動装置Aの役物演出部50・・・の背面に隠蔽されている可動部54・・・の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動する」と記載されている。
また、上記(ウ)【0057】の「半環状部材100は、・・・端縁同士を近接させて環状体101を構成する」の記載、上記(エ)【0058】の「図24(a)・・・は第2の演出用可動装置Bの開放状態を示す正面図・・・であり、図25(a)・・・は第2の演出用可動装置Bの閉止状態を示す正面図・・・である。」の記載、及び、上記(キ)の図24(a)、図25(a)の図示内容から見て、2つの半環状部材100で構成する環状体101は、内側部分の端縁は接しているが、外側部分の端縁は離れているといえる。
そして、上記(カ)【0123】の「図46(d)に示すように、役物演出部50の背面に隠蔽されている可動部54が可動した際には、可動部54の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動するようにしている。つまり、役物演出部50を包囲するような環状体101を構成するようにしている。」の記載、及び、上記(ク)の図46(c)、(d)の図示内容から見て、2つの半環状部材100を可動して構成される、外側部分と内側部分のうち、外側部分の端縁が離れている環状体101と、半環状部材100の外側部分と内側部分に対応する部分があるように見える役物演出部50の上部とで、半環状部材100の外側部分と内側部分が連続した円弧に見えるように構成されているといえる。
よって、引用文献1には、第1の演出用可動装置Aの役物演出部50の背面に隠蔽されている可動部54の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動し、2つの半環状部材100を可動して構成される、外側部分と内側部分のうち、外側部分の端縁が離れている環状体101と、半環状部材100の外側部分と内側部分に対応する部分があるように見える役物演出部50の上部とで、半環状部材100の外側部分と内側部分が連続した円弧に見えるように構成されていることが記載されているといえる。

(d)上記(ア)【0010】には、「パチンコ遊技機」と記載されている。

以上(ア)?(カ)の記載事項、上記(キ)、(ク)の図示内容、及び上記(a)?(d)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(a?dは発明の構成を分説するため当審で付した。)。

「a メイン表示画面7aの前方に出没自在に構成されている2つの半環状部材が端縁同志を近接させて環状体101を構成する第2の演出用可動装置Bと、

b サブ表示画面31が遊技者から視認できる状態から回転して役物演出部50が遊技者から視認できる状態となるように構成され、リーチや大当たりの期待度を表す画像を表示する第1の演出用可動装置Aと、を備え、

c 第1の演出用可動装置Aの役物演出部50の背面に隠蔽されている可動部54の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動し、2つの半環状部材100を可動して構成される、外側部分と内側部分のうち、外側部分の端縁が離れている環状体101と、半環状部材100の外側部分と内側部分に対応する部分があるように見える役物演出部50の上部とで、半環状部材100の外側部分と内側部分が連続した円弧に見えるように構成されている

d パチンコ遊技機。」

(2-2)引用文献2に記載された技術事項
本願の出願前に頒布され、平成28年8月26日付け拒絶理由通知書にて提示された特開2015-80648号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

(ケ)「【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。尚、本実施例におけるフローチャートの各ステップの説明において、例えば「ステップS1」と記載する箇所を「S1」と略記する場合がある。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。・・・」

(コ)「【0034】
画像表示装置5の下方であって、遊技盤2の背面側には副画像表示装置51が設けられている。副画像表示装置51は、例えば画像表示装置5よりも小型のLCD(液晶表示装置)等から構成され、各種の演出画像を表示する表示領域を形成している。副画像表示装置51の表示領域では、画像表示装置5における可変表示や始動入賞と関連する各種演出(例えば予告演出)が実行される。この実施の形態では、副画像表示装置51は、図1に示す初期位置(待機位置)から画像表示装置5の前面側に重畳する位置(重畳位置)に動作(水平動作)可能になっている。また、副画像表示装置51は、画像表示装置5に対して表示面を傾斜させる傾斜動作や表示面を前面から視認可能な状態で回転する回転動作が可能になっている。このような構成により、副画像表示装置51の表示領域における演出表示や、副画像表示装置51の動作を伴う予告演出を実行できるようになっている。尚、画像表示装置5をメイン液晶、副画像表示装置51をサブ液晶ともいう。
【0035】
遊技盤2の開口の内側には、演出の実行時等に動作する可動部材52が設けられている。この実施の形態では、8個の可動部材52が設けられており、副画像表示装置51が動作するときに、その動作と連動した動作が実行される。可動部材52は、図1に示すように遊技盤2の開口部の内側に収納された状態から、突出する動作が可能になっている。尚、ここでいう「連動」とは、同時に動作することや対応して動作することをいう。対応した動作とは、一方の動作中に他方が動作を停止する互い違いの動作等をいう。」

(サ)「【0315】
図32は、この実施の形態における変動中予告パターンの一覧を示す図である。この実施の形態では、副画像表示装置51を用いた変動中予告演出が実行されるようになっている。図32に示す、予告パターンYP1は、副画像表示装置51(サブ液晶)に予告画像を表示して、サブ液晶を待機位置から重畳位置に水平(鉛直)動作(図4?図5に示す動作)させる変動中予告演出に対応している。予告パターンYP2は、予告パターンYP1の演出動作に加えてサブ液晶を傾斜動作(図7に示す動作)させる変動中予告演出に対応している。予告パターンYP3は、予告パターンYP2の演出動作に加えて、可動部材52をサブ液晶の動作と連動するように第1の態様で動作させる(例えば8つ設けられた可動部材52の一部を動作させる)変動中予告演出に対応している。予告パターンYP4は、予告パターンYP1の演出動作に加えてサブ液晶を回転動作(図6に示す動作)させるとともに、可動部材52をサブ液晶の動作と連動するように第2の態様で動作させる(例えば8つ設けられた可動部材52の全てを動作させる)変動中予告演出に対応している。
・・・
【0318】
図35は、予告パターンYP4に決定された場合の演出動作例を示している。予告パターンYP4に決定された場合には、まず、副画像表示装置51に予告画像が表示され、予告画像が表示された状態で副画像表示装置51が待機位置から重畳位置に水平動作(図4?図5に示す動作)する。その後、図35(A)及び図35(B)に示すように、副画像表示装置51が回転動作するとともに、可動部材52が連動して動作する。尚、回転動作とは、必ずしも1回転する必要はなく、図35(A)及び図35(B)に示すような動作を繰り返すものも含まれる。」

以上(ケ)?(サ)の記載事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「副画像表示装置51を回転動作させるとともに、可動部材52を同時に動作させるパチンコ遊技機1。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(d)とし、本件補正発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「2つの半環状部材」は、「メイン表示画面7aの前方に出没自在に構成されている」ものであるから、本件補正発明の「移動可能な」「移動部」に相当する。
そして、引用発明の「2つの半環状部材が端縁同士を近接させて環状体101を構成する」ことは、演出を行うことであるといえるから、引用発明の「第2の演出用可動装置B」は、本件補正発明の「演出部」に相当する。
よって、引用発明の「メイン表示画面7aの前方に出没自在に構成されている2つの半環状部材が端縁同志を近接させて環状体101を構成する第2の演出用可動装置B」は、本件補正発明の「移動可能な移動部を有して演出を行う演出部」に相当する。

(b)引用発明の「第1の演出用可動装置A」が「サブ表示画面31が遊技者から視認できる状態から回転して役物演出部50が遊技者から視認できる状態となるように構成され」ることは、本件補正発明の「第1の状態から回転して第2の状態」になることが可能であ」ることに相当する。
そして、引用発明の「第1の演出用可動装置A」は、「リーチや大当たりの期待度を表す画像を表示する」ものであるから、本件補正発明の「演出に関わる画像を表示する」「画像表示部」に相当する。
よって、引用発明の「サブ表示画面31が遊技者から視認できる状態から回転して役物演出部50が遊技者から視認できる状態となるように構成され、リーチや大当たりの期待度を表す画像を表示する第1の演出用可動装置A」は、本件補正発明の「第1の状態から回転して第2の状態になることが可能であって、演出に関わる画像を表示する画像表示部」に相当する。

(c)上記(a)より、引用発明の「2つの半環状部材」は、本件補正発明の「移動部」に相当する。
そうすると、引用発明の「2つの半環状部材100を可動」した後の状態は、本件補正発明の「移動部が移動した後の状態」に相当するから、引用発明の「2つの半環状部材100を可動して構成される」形状である「環状体101」は、本件補正発明の「当該移動部が移動した後の状態にて当該移動部が形成する所定の形状」に相当する。
また、上記(b)の検討を踏まえると、引用発明の「役物演出部50」は、本件補正発明の「回転後の前記第2の状態の当該画像表示部」に相当する。
そして、引用発明の「2つの半環状部材100を可動して構成される」「環状体101」は、「半環状部材100」の「外側部分と内側部分のうち、外側部分の端縁が離れている」ものであり、「半環状部材100の外側部分と内側部分に対応する部分があるように見える役物演出部50の上部とで、半環状部材100の外側部分と内側部分が連続した円弧に見えるように構成されている」ことから、「半環状部材100」の「外側部分と内側部分のうち、外側部分の端縁が離れている」部分、すなわち、「移動部が形成する所定の形状の一部」を、「役物演出部50」、すなわち、「回転後の前記第2の状態の当該画像表示部」が「補完」しているといえる。
よって、引用発明の構成cは、本件補正発明の構成Cと、当該移動部が移動した後の状態にて当該移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の当該画像表示部が補完する点で共通する。

(d)引用発明の「パチンコ遊技機」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(d)の対比により、本願補正発明と引用発明とは、

「A 移動可能な移動部を有して演出を行う演出部と、

B 第1の状態から回転して第2の状態になることが可能であって、演出に関わる画像を表示する画像表示部と、を備え、

C’ 当該移動部が移動した後の状態にて当該移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の当該画像表示部が補完する

D 遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件補正発明は、演出部の移動部が移動する際に画像表示部が移動するのに対し、引用発明では、第1の演出用可動装置Aの役物演出部50の背面に隠蔽されている可動部54の可動タイミングに合わせて、第2の演出用可動装置Bを構成する2つの半環状部材100を可動する点(構成C)。

(4)判断
上記相違点について検討する。
上記(2-2)より、引用文献2には、「副画像表示装置51を回転動作させるとともに、可動部材52を同時に動作させるパチンコ遊技機1」が記載されている。
ここで、引用文献2に記載の技術事項の「可動部材52」、「副画像表示装置51」は、それぞれ、本件補正発明の「演出部の移動部」、「画像表示部」に相当する。
そうすると、引用文献2に記載の技術事項と、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、表現上の差違はあるものの、演出部の移動部と画像表示部が同時に移動する点で一致する。
引用発明も引用文献2に記載の技術事項もいずれも遊技機の技術分野に属するものであるから、引用発明において、引用文献2に記載のタイミングで第1の演出用可動装置Aと第2の演出用可動装置Bを移動させることにより、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書3.(4)において、「本願発明は、・演出部の移動部が移動する際に画像表示部が移動し、移動部が移動した後の状態にて移動部が形成する所定の形状の一部を、回転後の前記第2の状態の画像表示部が補完するという特徴的な構成を有する。これにより、移動部および画像表示部のうちの一方が先に移動し他方が後に移動する場合に比べて、一体感がある演出であって、且つ、移動部が形成する所定の形状の一部を画像表示部が補完することを遊技者が予想し難くなるため意外性のある演出を実現することができる、という顕著な効果を奏する。」と主張している。
この主張について検討すると、上記(4)で検討したとおり、演出部の移動部が移動する際に画像表示部が移動することは、引用文献2に記載されており、上記請求人が主張する効果は、引用文献2に記載の技術事項から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年10月21日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.原査定における拒理の理由
原査定の拒絶の理由である理由1は、本願は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
引用文献1 特開2013-208308号公報

3.引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の3.(2-1)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、「移動部」と「画像表示部」の移動のタイミングについて、「前記演出部の前記移動部が移動する際に前記画像表示部が移動」するという限定を付加した部分を削除し、「当該移動部」及び「当該画像表示部」とあったところを、「前記移動部」及び「前記画像表示部」と表現を変えたものである。
そうすると、上記第2の3.(3)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明の相違点は、本件補正発明は、演出部の移動部が移動する際に画像表示部が移動するという構成のみであるから、この構成を省いた本願発明と引用発明とに相違点は存在しない。
したがって、本願発明は、引用発明と同一であり、引用文献1に記載された発明であるといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-12 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-30 
出願番号 特願2016-4604(P2016-4604)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光眞壁 隆一松平 佳巳河本 明彦  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 蔵野 いづみ
赤穂 州一郎
発明の名称 遊技機  
代理人 古部 次郎  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 尾形 文雄  

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