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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1344449
審判番号 不服2017-17187  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2018-10-15 
事件の表示 特願2015-516182「ドキュメントのインテリジェントな提示」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/184840、平成27年 8月27日国内公表、特表2015-524958、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年6月5日(パリ条約による優先権主張2012年6月7日、米国、2013年3月15日、米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月22日付け:拒絶理由の通知
平成28年 7月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月27日付け:拒絶理由の通知(最後の拒絶理由通知)
平成29年 7月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月12日付け:平成29年7月5日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定
平成29年11月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 1月10日付け:前置報告
平成30年 4月12日 :上申書の提出


第2 平成29年11月20日付けの手続補正の補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年11月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、平成28年7月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「拒絶査定時の請求項1」という。)を平成29年11月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)のとおりに補正することを含むものである。

<拒絶査定時の請求項1>

「各ステップがコンピュータ装置によって実行される方法であって、
ディスプレイと1つ以上の入力デバイスとを有する前記コンピュータ装置において、
複数のドキュメントを前記コンピュータ装置上に記憶することと、
前記複数のドキュメントを前記コンピュータ装置上に記憶した後であって、前記コンピュータ装置が、前記コンピュータ装置の1つ以上の機能にアクセスするためにユーザ認証が要求されるロック状態である間に、
前記コンピュータ装置のコンテクストを判定することと、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストを判定することに応じて、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストが第1のコンテクスト基準のセットを満たすとの判定に従って、前記複数のドキュメントの第1のドキュメントの第1の表示を、前記ディスプレイのロック画面のユーザインターフェースに表示することと、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストが、前記第1のコンテクスト基準のセットと異なる第2のコンテクスト基準のセットを満たすとの判定に従って、前記複数のドキュメントの、前記第1のドキュメントと異なる第2のドキュメントの第2の表示を、前記ディスプレイのロック画面のユーザインターフェースに表示することと、
前記ロック画面のユーザインターフェース上の前記第1の表示を表示する間に、前記1つ以上の入力デバイスを介して、前記第1の表示を選択するユーザ入力を受け取ることと、
前記第1の表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することと、
を含む方法。」

<補正後の請求項1>(なお、下線は請求人により付されたものである。)

「各ステップがコンピュータ装置によって実行される方法であって、
ディスプレイと1つ以上の入力デバイスとを有する前記コンピュータ装置において、
複数のドキュメントを前記コンピュータ装置上に記憶することと、
前記複数のドキュメントを前記コンピュータ装置上に記憶した後に、前記複数のドキュメントのそれぞれの表示を前記ディスプレイのコンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示し、前記複数のドキュメントの第1のドキュメントの表示を選択するユーザ入力を前記1つ以上の入力デバイスを介して受け取ることであって、前記複数のドキュメントの前記それぞれの表示が、前記コンピュータ装置のコンテクストと独立した前記コンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示される、ことと、
前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた1つ以上の入力のシーケンスに応じて前記第1のドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にする、ことと、
前記複数のドキュメントを前記コンピュータ装置上に記憶した後に、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストを判定することと、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストを判定することに応じて、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストが第1のコンテクスト基準のセットを満たすとの判定に従って、前記複数のドキュメントの第1のドキュメントの第1の表示を、前記ディスプレイのコンテクスト依存のユーザインタフェースに表示することと、
前記コンピュータ装置の前記コンテクストが、前記第1のコンテクスト基準のセットと異なる第2のコンテクスト基準のセットを満たすとの判定に従って、前記複数のドキュメントの、前記第1のドキュメントと異なる第2のドキュメントの第2の表示を、前記ディスプレイの前記コンテクスト依存のユーザインタフェースに表示することであって、前記コンテクスト依存のユーザインタフェースは、前記コンピュータ装置の前記コンテクストに基づいて前記複数のドキュメントの1つ以上の表示を表示する、ことと、
前記コンテクスト依存のユーザインタフェース上の前記第1の表示を表示する間に、前記1つ以上の入力デバイスを介して、前記第1の表示を選択するユーザ入力を受け取ることと、
前記第1の表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト依存のユーザインタフェースの前記第1の表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた前記それぞれの操作の実行を可能にしない、ことと
を含む方法。」

2 新規事項の追加の有無について

(1)補正後の請求項1には、「前記複数のドキュメントのそれぞれの表示を前記ディスプレイのコンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示し、前記複数のドキュメントの第1のドキュメントの表示を選択するユーザ入力を前記1つ以上の入力デバイスを介して受け取ることであって、前記複数のドキュメントの前記それぞれの表示が、前記コンピュータ装置のコンテクストと独立した前記コンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示される、こと」が記載されている。

上記記載によれば、複数のドキュメントのそれぞれの表示を、コンピュータ装置のコンテクストと独立したコンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示し、複数のドキュメントの第1のドキュメントの表示を選択するユーザ入力を受け取るという処理を行うものである。

(2)これに対して、本願の出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース」について、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア 「【0047】
関連ドキュメントの表示
図7は、多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース700の実施例を示す。例えば、多数の搭乗券ドキュメントは、便名、出発地、到着時刻に基づいて関係付けることができる。イベントのチケットは、イベントと時刻により関係付けることができる。ドキュメントは、ドキュメントがどのように受信されたかに基づいて関係付けることができる。例えば、同じトランザクションの結果として受信したドキュメント、同じ通信(例えば、eメール)で受信したドキュメント、又は同時に(又は、殆ど同時に)受信したドキュメントは、関連ドキュメントとして識別することができる。ユーザが持っているモバイル装置上に記憶された関係付けられたチケットが多数あれば、1つのドキュメント概要502と、ドキュメントの概要に関係付けられたドキュメントが多数存在することをユーザに知らせる標識702により、これらのチケットをグラフィカルインタフェース700上で表現することができる。例えば、ドキュメントの概要502は、モバイル装置上で入手できる搭乗券が3枚あることを示すテキストを含むことができる。」

イ 「【0048】
図8は、多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース800の実施例を示す。例えば、ドキュメントの概要502上に標識703を提示する代わりに、多数の関連ドキュメントのために、表示802を積み重ねて提示することにより、インタフェース800は多数の関連ドキュメントを示すことができる。積み重ねた提示内のアイテム数は、ドキュメントの概要502に関係付けられたドキュメント数に対応することができる。積み重ねた提示802は、例えば各ドキュメントの一番上は可視の、多数の積み重ねたドキュメントの外観を持つことができる。」

ウ 「【0049】
図9は、多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース900の実施例を示す。例えば、ドキュメント902は3枚の関係付けられた搭乗券の1枚であってもよい。搭乗券は、例えば便名、出発時刻、及び/又は出発地に基づいて関連付けることができる。ある実施では、この3枚の関連ドキュメントのうちの1つのみが1度に提示される。例えば、ユーザが図7、又は図8の概要502を選択すると、ドキュメントの概要502に対応するドキュメント(例えば、ドキュメント902)を1つ表示することができる。ある実施では、ユーザがドキュメント902に入力を行い、次の、又は1つ前の関連ドキュメントを見ることができる。例えば、関連ドキュメントが3つあれば、ドキュメントの概要502を選択すると第1のドキュメント(例えば、3枚中の1番目)を表示させることができる。ユーザはドキュメント902に入力(例えば、タッチ入力、タッピング、又はスワイプ)を行い、2番目の関連ドキュメント(例えば、3枚中の2番目)を表示させることができる。ユーザが更に入力を行うと、3番目の関連ドキュメント(例えば、3枚中の3番目)を表示させることができる。例えば、ユーザは(例えば、1つ前のドキュメントを表示するために)左向きにスワイプする形で、又は(例えば、次のドキュメントを表示するために)右向きにスワイプする形でタッチ入力904を行い関連ドキュメント間をナビゲートすることができる。」

エ 「【0050】
図10は、多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース1000の実施例を示す。ある実施では、関連ドキュメントのためのドキュメントの概要がグラフィカルインタフェース1000上でグルーピングできる。例えば、ドキュメントの概要1002、1004、1006が、同じフライトの搭乗券ドキュメントに対応することができるとする。図7のように、1つのドキュメントの概要を提供して、多数のドキュメント標識を提供する代わりに、又は図8のように、重ね合わせ表示を提示する代わりに、グラフィカルインタフェース1000上に関連ドキュメントの概要1002、1004、1006を個別に表示してグルーピングすることができる。ある実施では、多数の関連ドキュメントの概要が表示されると、モバイル装置が、ドキュメントの概要上に表示する関連ドキュメント各々のための特徴的な特性(例えば、最も重要な相違点)を自動的に判定することができる。例えば、搭乗券各々は異なる乗客に関連付けられている。したがって、各搭乗券の乗客名を、対応するドキュメントの概要上に提示して、関連ドキュメントの概要1002、1004、1006間で区別するのにユーザを支援することができる。対応するドキュメントを見るために、ユーザはドキュメントの概要1002、1004、又は1006を選択して、対応するドキュメントを表示することができる。この場合、ドキュメントの概要1002、1004、又は1006を選択すると、対応する搭乗券ドキュメントを表示させる。」

オ 「【0051】
ある実施では、ユーザがグルーピングしたドキュメントの概要1002、1004、又は1006のうちの1つを選択すると、動画が提示されて選択したドキュメントを示すことができる。例えば、この動画は、図5を参照して説明した動画と類似したものでもよい。ユーザがドキュメントの概要1004を選択すると、ドキュメントの概要1004はディスプレイの一番上に移動することができる。選択されなかったドキュメントの概要1002、1006、504、506、508、510は、ディスプレイの一番下に移動することができる。図10の破線矢印は、ドキュメントの概要の移動を示す。動画(例えば、ドキュメントの概要の移動)が発生中は、図11に示すようにドキュメントの概要1004に対応するドキュメントのフルビューを示すことができる。」

前記「ア」?「オ」によれば、多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェースにおいて、ユーザがドキュメントのうちの1つを選択すると、対応するドキュメントが表示されることが記載されているといえる。しかしながら、当該「多数の関連ドキュメントを提示するためのグラフィカルインタフェース」が「コンピュータ装置のコンテクストと独立した」「コンテクスト非依存のユーザインタフェース」であることは記載されていない。

したがって、補正後の請求項1に記載された「前記複数のドキュメントのそれぞれの表示を前記ディスプレイのコンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示し、前記複数のドキュメントの第1のドキュメントの表示を選択するユーザ入力を前記1つ以上の入力デバイスを介して受け取ることであって、前記複数のドキュメントの前記それぞれの表示が、前記コンピュータ装置のコンテクストと独立した前記コンテクスト非依存のユーザインタフェースに表示される、こと」は、当初明細書等に記載されておらず、示唆もされていない。

(3)また、補正後の請求項1には、「前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた1つ以上の入力のシーケンスに応じて前記第1のドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にする、こと」と、「前記コンテクスト依存のユーザインタフェース上の前記第1の表示を表示する間に、前記1つ以上の入力デバイスを介して、前記第1の表示を選択するユーザ入力を受け取ることと、前記第1の表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト依存のユーザインタフェースの前記第1の表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた前記それぞれの操作の実行を可能にしない、こと」が記載されている。

上記記載によれば、コンテクスト非依存のユーザインタフェース上でユーザが選択したドキュメントが表示される場合、当該ドキュメントに関連付けられた1つ以上の入力のシーケンスに応じて当該ドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にし、他方、コンテクスト依存のユーザインタフェース上でユーザが選択したドキュメントが表示される場合、当該ドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にしないという処理を行うものである。

(4)これに対して、当初明細書等には、「ドキュメントのオプションを指定するためのグラフィカルインタフェース」について、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

カ 「【0060】
図12は、イベントチケットテンプレート1200の実施例を示す。ある実施では、イベントチケットテンプレートが、イベントチケットドキュメントの外観を規定することができる。例えば、イベントチケットドキュメントは、映画のチケット、コンサートのチケット、又は任意の他の種類のイベントに入場するためのチケットに対応することができる。イベントチケットテンプレートは外観には、例えばドキュメントの一番上に切り欠き1202を含むことができる。イベントチケットテンプレート上に表示されるデータフィールドは、イベント名称、イベントの主催者名又はベンダー名、開催地、場所、イベントの日時を含むことができる。座席が指定されている場合は、イベントのチケットは座席情報を指定することができる。イベントチケットテンプレート1200は、画像1204を提示するための領域を含むことができる。例えば、画像1204は、そのイベントに関連付けられた画像、又はそのベンダー又は主催者に関連付けられた画像を表示することができる。イベントチケット1200は、スキャン可能な対象物1206を含むことができる。例えば、スキャン可能な対象物1206は、上記のように、ドキュメント情報で符号化した光学的機械可読なグラフィックでもよい。イベントチケットのテンプレート1200は、構成オプションを提示するためのグラフィカル要素1208を含むことができる。例えば、ユーザはグラフィカル要素1208を選択して、図18のグラフィカルインタフェース1800を提示することができる。」

キ 「【0061】
図13は、身分証明書テンプレート1300の実施例を示す。ある実施では、身分証明書テンプレート1300は、グラフィカルインタ要素1302を含んでいるので、目で見て他のドキュメントと区別することができる。例えば、グラフィカル要素1302の外観は、身分証明書ドキュメントの上部付近にある穴の形をしているので、身分証明書書類は、我々が首から下げたり、又は衣服に付けたりする物理的身分証明書(例えば、社員証)に似ている。身分証明書テンプレート1300は、氏名、識別番号、身分証明書発行者(例えば、雇用主、政府機関の)を提示するためのデータフィールドを含むことができる。身分証明書テンプレート1300は、身分証明書ドキュメントに関連付けられた人物に関連付けられた画像1304を含むことができる。例えば、画像1304は人物の顔写真でもよい。」

ク 「【0062】
図14は、顧客ポイントカードテンプレート1400の実施例を示す。例えば、顧客ポイントカードテンプレートは、ベンダー/店舗名、顧客名、顧客認証番号、及び/又は最寄りの店舗の位置を含むことができる。ある実施では、顧客ポイントカードが、店用のクレジットカード、又は店用の買い物カードとして機能することができる。例えば、顧客は店用の買い物カードに関連付けられた口座に送金して、そのお金を使用してそのカードに関連付けられた店で品物を購入できる。ある実施では、顧客ポイントカードテンプレート1400が、口座残高データフィールド1402を含むことができる。例えば、口座残高データフィールド1402は、店用のクレジットカード、又は店用の買い物カード用の口座残高(例えば、利用可能な資金)を表示することができる。ある実施では、顧客ポイントカード上に表示される口座残高が、動的に更新することができる。例えば、ユーザがお金を使ったり、顧客ポイントカードに関連付けられた口座に入金したり、又は口座で支払いしたりすると、口座残高フィールド内に表示される残高を更新することができる。」

ケ 「【0063】
例えば、ユーザの口座に変化があったことを、ベンダーのサーバがユーザのモバイル装置に通知することができ、モバイル装置はその変更通知に反応してデータの更新を要求することができ、顧客ポイントカード上に提示されるデータは、その変更情報を反映するように更新することができる。ある実施では、更新された、又は最近変更された情報が、顧客ポイントカードドキュメント上に表示された他のデータ用に使用されたテキストの色(例えば、黒)とは異なるテキストの色(例えば、赤)を使用して、情報を提示して強調することができる。ある実施では、更新された、又は最近変更された情報を、その情報が変更されたことを示すグラフィカル要素(図示せず)を提示することにより、強調することができる。例えば、線を引いて変更情報を囲んだり、又は変更情報にユーザの注意を引きつけるように、アイコン、若しくは他のグラフィカル要素を提示したりすることにより、変更情報、若しくはデータを強調することができる。」

コ 「【0064】
図15は、割引クーポンテンプレート1500の実施例を示す。ある実施では、割引クーポンテンプレート1500が、割引クーポンドキュメントの外観を規定することができる。例えば、割引クーポンドキュメントは、ベンダー又は店舗から購入した品物を割引してもらうためのクーポンに対応することができる。イベントチケットテンプレートの外観は、例えばドキュメントの一番上にでこぼこの、ギザギザの、又は穴があいた端部1502を含み、その割引クーポンドキュメントを他のドキュメントと差別化することができる。割引クーポンテンプレート1500は、ベンダー/店舗名、最寄りの店舗の場所、及び/又はその割引クーポンに関連付けられた期限及び条件を提示するためのデータフィールドを含むことができる。」

サ 「【0065】
割引クーポンテンプレート1500は、割引情報を提示するためのデータフィールド1504を含むことができる。例えば、割引情報は、ベンダー又は店舗を介して品物を購入することによりユーザが得ることができる、特別料金割引(例えば、5ドル割引)、又はパーセント割引(25%オフ)を含むことができる。ある実施では、割引情報をベンダーが動的に更新することができる。例えば、割引クーポンは、最初は10%割引を提供できる。1週間が経つと、20%割引を提供することができる。ベンダーが提供する割引が増えると(又は、減ると)、ベンダーはユーザのモバイル装置に、割引クーポンドキュメントに関連付けられた情報が変わったことを通知することでき、モバイル装置はドキュメント情報を更新して、更新された、又は変更された割引を提示することができる。上記のように、変更情報を、ユーザの注意を引きつけるようにするために、強調することができる。」

シ 「【0066】
図16は、搭乗券テンプレート1600の実施例を示す。例えば、搭乗券テンプレート1600は、搭乗券ドキュメント情報を提示するためのデータフィールドを提供することができる。搭乗券ドキュメント情報は、航空会社名、フライト番号、ゲート番号、座席番号、出発地、出発時刻、搭乗時刻、到着地、及び/又は到着時刻等を含むことができる。搭乗券テンプレート1600は、搭乗券ドキュメントを提示する時に、ドキュメント情報を表示する位置を指定することができる。ある実施では、搭乗券ドキュメント情報を動的に更新することができる。例えば、フライトの変更(例えば、定期便が遅れたり、欠航する)があると、搭乗券上に表示される情報は自動的に更新されて変更情報を反映する。例えば、便名、出発時刻、搭乗時刻、ゲート番号、シート番号、到着時刻等が変更されると、搭乗券テンプレート1600のそれぞれのフィールド内に提示されるデータが更新させる。」

ス 「【0067】
搭乗券テンプレート1600は、動的な情報領域1602及び1604を含むことができる。例えば、情報領域1602はフライトの出発地に関連付けられた情報(例えば、交通、天候)を提示することができる。情報領域1604は、到着地に関連付けられた情報(例えば交通、天候等)を提示することができる。動的情報領域1602及び1604内の情報は、様々なネットワーク(例えばインターネット)リソース(例えば、天候、交通のためのウェブサイト等)から入手することができる。動的情報領域1602及び1604は、例えば情報が変更されると、動的に更新することができる。」

セ 「【0068】
図17は、一般ドキュメントのテンプレート1700の実施例を示す。例えば、一般ドキュメントのテンプレート1700は、図12?図18について上記で説明したドキュメントのカテゴリーの1つに適合しないドキュメントの提示を判定するために使用することができる。ベンダーは、一般ドキュメントのテンプレート1700により提供される、様々なデータフィールドに挿入することができるドキュメント情報を提供することができる。ある実施では、ベンダーが、自分自身のドキュメントフォーマットを指定することができる。例えば、ドキュメントフォーマットは、HTML(ハイパーマークアップ言語)を使用して指定することができる。こうして、ドキュメントベンダーはカスタマイズしたルック&フィールを持つベンダー固有のドキュメントのレイアウトを提供することができる。」

ソ 「【0069】
図18は、ドキュメントのオプションを指定するためのグラフィカルインタフェース1800の実施例を示す。例えば、ユーザが図12?図17のグラフィカル要素1208を選択すると、グラフィカルインタフェース1800を呼び出して表示することができる。グラフィカルインタフェース1800は、自動ドキュメント更新オン・オフするためのグラフィカル要素1802を含むことができる。例えば、ユーザが自動ドキュメント更新をオンにした場合、関連するドキュメントに関連付けられた情報が変更されると、モバイル装置はベンダーからの通知を受信する。すると、モバイル装置は、ドキュメントに関連付けられたドキュメント情報を更新して、上述のユーザインタフェースの1つに関する情報を提示することができる。例えば、どの情報が変更されたかを反映させるために、更新された情報を強調することができる。ユーザが自動ドキュメント更新をオフにした場合、ドキュメントは自動受信できなくなる。例えば、ドキュメント更新を受信するため、ユーザはドキュメントに対して、何らかの行動(例えば、ドキュメントを表示させる)をとらなければならなくなる。」

タ 「【0070】
グラフィカルインタフェース1800は、モバイル装置のロック画面(例えば、グラフィカルインタフェース300)上にドキュメントを提示するべきか否かを指定するためのグラフィカル要素1804を含むことができる。例えば、ユーザはグラフィカル要素1804を選択して、ロック画面ドキュメント通知をオフすることができる。ユーザがロック画面通知をオフすると、ドキュメント通知がモバイル装置のロック画面上に表示されなくなる。ユーザは、グラフィカル要素1804を選択して、ロック画面ドキュメント通知をオンすることができる。ユーザがロック画面通知をオンすると、図3を参照して説明したように、ドキュメント通知がモバイル装置上に表示される。」

前記「カ」?「タ」によれば、「イベントチケット」等のテンプレートに含まれる「グラフィカル要素1208」をユーザが選択すると表示される「グラフィカルインタフェース1800」で「自動ドキュメント更新オン・オフする」ことや「モバイル装置のロック画面上にドキュメントを提示するべきか否かを指定する」ことができることが記載されているといえる。しかしながら、コンテクスト非依存のユーザインタフェース上でユーザが選択したドキュメントを表示するか、コンテクスト依存のユーザインタフェース上でユーザが選択したドキュメントを表示するかによって、当該ドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にするか否かを異ならせることは記載されていない。

したがって、補正後の請求項1に記載された「前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト非依存のユーザインタフェース上の前記第1のドキュメントの前記表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた1つ以上の入力のシーケンスに応じて前記第1のドキュメントに関連付けられたそれぞれの操作の実行を可能にする、こと」と、「前記コンテクスト依存のユーザインタフェース上の前記第1の表示を表示する間に、前記1つ以上の入力デバイスを介して、前記第1の表示を選択するユーザ入力を受け取ることと、前記第1の表示を選択する前記ユーザ入力を受け取ったことに応じて、前記第1のドキュメントを前記ディスプレイに表示することであって、前記コンピュータ装置は、前記コンテクスト依存のユーザインタフェースの前記第1の表示に対する前記選択に応じて前記第1のドキュメントが表示される場合に、前記第1のドキュメントに関連付けられた前記それぞれの操作の実行を可能にしない、こと」は、当初明細書等に記載されておらず、示唆もされていない。

(5)よって、請求項1に係る補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3 むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

平成29年11月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1から18に係る発明は、平成28年7月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から18に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-01 
出願番号 特願2015-516182(P2015-516182)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 561- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 貴孝  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 上嶋 裕樹
相崎 裕恒
発明の名称 ドキュメントのインテリジェントな提示  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  

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