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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1344477
審判番号 不服2017-7979  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-02 
確定日 2018-09-19 
事件の表示 特願2014-526550「メタマテリアル及びアンテナシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日国際公開、WO2013/027029、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-527366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年8月16日(パリ条約による優先権主張 平成23年8月24日、英国(GB))を国際出願日とする出願であって、平成29年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年6月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成28年10月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「ユニットセルのアレイを有するメタマテリアルであって、前記ユニットセルの各々は少なくとも1つの導電性トラックにより形成され、前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの導電性トラックは、他のユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有し、前記ユニットセルのアレイは、誘電体基板上の領域であってグランドプレーンが設けられていない領域に設けられている、メタマテリアル。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、
「ユニットセルのアレイを有するメタマテリアルであって、
前記ユニットセルの各々は少なくとも1つの導電性トラックにより形成され、前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの導電性トラックは、他のユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有し、前記ユニットセルのアレイは、誘電体基板上の領域であってグランドプレーンが設けられていない領域に設けられており、
前記メタマテリアルは、第1形状のユニットセルの第1の二次元アレイのスタックと、第2形状のユニットセルの第2の二次元アレイのスタックとを有し、前記第1及び第2の二次元アレイのスタックは上下の位置関係にあり、前記第2形状は近接して接続された複数のユニット形状を含み、前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である、メタマテリアル。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。(下線(補正箇所)は、当審で付与。)

2.新規事項の有無について
(1) 本件補正のうち、「前記メタマテリアルは、第1形状のユニットセルの第1の二次元アレイのスタックと、第2形状のユニットセルの第2の二次元アレイのスタックとを有し、前記第1及び第2の二次元アレイのスタックは上下の位置関係にあり、前記第2形状は近接して接続された複数のユニット形状を含み、前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である」なる事項において、「第1形状」、「第2形状」、「近接して接続された」、「ユニット形状」、及び「前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である」という用語ないし構成が出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載されていないことから、これらが新規事項に該当するか、以下で検討する。

(2) まず、本件補正の「第1形状」及び「第2形状」に関して、「第1形状」及び「第2形状」は「ユニットセル」の形状であり、それぞれの形状を有する複数のユニットセルが第1及び第2の二次元アレイのスタックを構成し、前記第1及び第2の二次元アレイのスタックは図3?図5に示されているような上下の位置関係にあるのであるから、当該「第1の二次元アレイのスタック」は図3に開示されているような複数の「要素8」からなるアレイ構造を指し、上記「第1形状」は前記「要素8」単独の形状(即ち、ユニットセルの形状)を指し、上記「第2の二次元アレイのスタック」は図4に開示されているような複数の「要素8’」からなるアレイ構造を指し、上記「第2形状」は前記「要素8’」単独の形状を指すものと解し得る。
そして、図3の「要素8」と図4の「要素8’」とではその大きさが異なっており、図5及び図6の2つの異なるメタマテリアル基板に設けられるそれぞれの要素も大きさが異なっていることが少なくとも読み取れ、大きさが異なればユニットセルを構成する導電性トラックの長さ又は幅又は厚みが異なったものとなることは明らかであるから、本願発明や補正後の発明の他の構成要件である「前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの導電性トラックは、他のユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有し」との要件とも合致する。


(3) 本件補正の「前記第2形状は近接して接続された複数のユニット形状を含み」に関して、「近接して接続された」とは、当初明細書等の段落39及び図4の記載によれば、前記「第2形状」である「要素8’」が「導電するように互いに連結され、密集した列のペア(一群の列)として形成されている」構成を指していると解される。
また、「複数のユニット形状」とは、「ユニット形状」が「ユニットセルの形状」を単に略して表現したものと解されるとともに、異なる形状のユニットが複数ある場合は複数の形状といい得るのに対して、同一形状のユニットが複数ある場合は形状として1種類のみで複数の形状とはいい得ないことに鑑みると、ユニットセルの異なる複数の形状を指すものと解される。なお、当初明細書等の図11や段落50の記載には、異なる形状を有するスプリットリング共振器が開示されており、上記の解釈は明細書等の記載に矛盾しない。
しかしながら、上記「前記第2形状は近接して接続された複数のユニット形状を含み」なる事項について検討すると、段落39及び図4乃至図6には「近接して接続された」「ユニット形状」のものが記載されているものの、その形状は1つのみであって、「複数のユニット形状」を含んでいない。対して、段落50及び図11には、「複数のユニット形状」を含んだものが記載されているものの、ユニット同士は「近接して接続された」ものではない。
このため、本件補正にかかる「前記第2形状は近接して接続された複数のユニット形状を含み」という構成は当初明細書等に記載されていない新たな実施態様(以下、「実施態様1」という。)であり、また、当該新たな実施態様1が当初明細書等の記載から自明な構成であるとも認められない。

(4) 本件補正の「前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である」に関して、「前記複数のユニット形状」は、前後の文脈からして、「近接して接続された、前記複数のユニット形状を含み」という構成を備えた「第2形状」を指す表現と解される。
「近接して接続された複数のユニット形状」なる事項が当初明細書等に開示されていないことはさておき、当初明細書等には、「相似」或いは「相似形」なる文言は記載されていない。
「相似」は「互いに似ていること。一つの図形が一様に拡大または縮小すると他の図形と完全に重ね合わせられること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)と解釈され、「相似形」は「互いに相似の関係にある二つ以上の図形。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)と解釈されるのが一般的であるところ、少なくとも、「第1形状」は「近接して接続された」構成を備えていないのに対して、「第2の形状」は「近接して接続された、前記複数のユニット形状を含み」という構成を備えていることから、「第1形状」又は「第2形状」の一方を拡大又は縮小しても他方と重ね合わされず、「一つの図形が一様に拡大または縮小すると他の図形と完全に重ね合わせられること。」の関係に当たらない。
そして、「互いに似ている」かどうかの判断は判断する個人の感性に依存するものであって、「互いに似ている」との判断で許容される形状の違いは明確でないところ、当初明細書の
「該少なくとも1つの導電性トラックは、少なくとも1つの他の二次元アレイのユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有する。」(請求項7)、
「少なくとも1つの2Dアレイにおける前記ユニットセルの各々は少なくとも1つの導電性トラックにより形成されてもよく、該少なくとも1つの導電性トラックは、少なくとも1つの他の2Dアレイのユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有する。」(段落17)、
「所与の何れのアレイに属する要素も一般に同一の形状及びサイズであってよい。代替的に、所与の任意のアレイに属する1つ以上の要素が僅かに異なるサイズ又は形状を有し、それらの要素が僅かに異なる周波数で共振してもよい。代替的又は追加的に、少なくとも1つの要素における何れかのL字状の導電性部材は、他のL字状の導電性部材とは異なるサイズ及び/又は形状であってもよい。これらの配置又は構成は帯域幅を改善することに寄与するかもしれない。」(段落25)、
「実際のデュアルバンド装置を実現するために、2つの異なるメタマテリアル基板を組み合わせることが可能である。例えば、図5に示されているように、図4の形態の5GHz用の面が、図3の形態の2.4GHz用の面より上位において適切に適合又は整合するように設けられ、デュアルバンドメタマテリアル14を提供することが可能である。」(段落40)(「5GHz要」は「5GHz用」の誤記であるため、当審で読み替えた)
などの記載や、
図3及び図4から読み取れる、「要素8」と「要素8’」との大きさを異ならせるとともに、複数の要素を互いに導通する接続の有無及び周囲の導電性トラックの2つのL字状の部材の間の切れ目(又は裂け目)を有無の違いで形状を異ならせること、
或いは、図5及び図6から読み取れる、2つの異なるメタマテリアル基板のそれぞれに設けられる要素の大きさを異ならせるとともに、複数の要素を互いに導通する接続の有無、周囲の導電性トラックが要素毎に独立しているか共有しているか、及び、周囲の導電性トラックの2つのL字状の部材の間の切れ目(又は裂け目)の有無の違いで形状を異ならせること
などを参酌しても、要素の形状の違いが共振周波数の違いに必ず結び付くとはいえず、「相似形」であっても共振周波数が同じとなることも有り得ることからすると、「相似形」とする技術的意義や作用効果が当初明細書等に記載されているとは認められない。
このため、当初明細書等から読み取れる「要素8」と「要素8’」の違いは、導電性トラヒックにおける長さ又は幅又は厚み、或いは、L字状導電性部材のサイズ及び/又は形状、並びに、複数の要素を導電するように互いに連結する接続の有無、2つのL字状の導電性部材の間の切れ目の有無、或いは、隣接する要素同士での導電性トラックの共有化の有無の違いにとどまると解するのが妥当である。
これに対して、「相似」或いは「互いに似ている」との表現では、上記の違いの他にも、導電性トラックのギャップの数やL字状の導電部材の数の変更、導電性トラックのギャップに設ける導電性部材をL字状の導電性部材から他の文字形状の導電性部材(例えば、I字状やπ字状など)への変更による違いも包含されるようになり、「要素8」と「要素8’」の違いとして許容される範囲において、「前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である」との事項は当初明細書等の記載の範囲を超える。
よって、本件補正にかかる「前記複数のユニット形状の各々は前記第1形状と相似形である」という構成は当初明細書等に記載されていない新たな実施態様(以下、「実施態様2」という。)を含むものであり、また、当該新たな実施態様2が当初明細書等の記載から自明な構成であるとも認められない。

(5) 以上のとおり、本件補正は、新たな実施態様1及び2を追加する補正であり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。

3.結語
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成28年10月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載された発明であるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。

2.引用発明及び周知技術
(1)引用発明
原審の拒絶理由に引用された「SU H-L,Dual-band insulator design by stacking capacitively loaded loops for MIMO antennas,ELECTRONICS LETTERS,THE INSTITUTION OF ENGINEERING AND TECHNOLOGY,2010年9月30日,V46 N20,P1364-1365」(以下、「引用文献」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「A compact dual-band insulator for multiple-input, multiple-output (MIMO) antennas is presented. The capacitively loaded loops are designed for different operating frequencies and printed on both sides of the substrate of the MIMO antenna of the portable devices. When the proposed insulators are inserted in between MIMO antennas, the isolation shows good improvement at both 2.6 and 3.5 GHz bands. The isolation is suppressed under -20 dB at the lower band of 2550-2730 MHz and at the upper band of 3390-3820 MHz. The proposed insulators are also validated through measurements. 」(1頁、要約の項)
(合議体仮訳)
「複数入力、複数出力(MIMO)アンテナのためのコンパクトなデュアルバンドインシュレータが開示される。 容量性負荷ループが異なる動作周波数のために設計され、ポータブル機器のMIMOアンテナの基板の両面に印刷される。 提案されたインシュレータがMIMOアンテナ間に挿入されると、2.6と3.5GHzの周波数帯の両方において分離度が改善される。 分離は2550-2730MHzの低い周波数帯および3390-3820MHzの高い周波数帯において-20dB以下に低減される。 提案されたインシュレータは計測を通して実証される。」

イ.「Introduction:
(・・・中略・・・)
A capacitively loaded loop (CLL), based on Pendry's split ring resonators [3], is proposed by Erentok et al. [4]. The structure possesses negative μ property and attenuates the incident EM waves. Based on the CLL structure, a dual-band insulator is proposed and applied in the MIMO antenna system, capable of suppressing the coupling of the antenna at two bands.」(1頁、Introduction の項)
(合議体仮訳)
「イントロダクション:
(中略)
Pendry のスプリットリング共振器[3]に基づいて、 容量性負荷ループ(CLL)が、 Erentok 他によって提案されている[4]。CLL構造はネガティブなμ特性を有し、EM波(電磁エネルギ)を減少させる。当該CLL構造に基づいて、デュアルバンドインシュレータが提案され、MIMOアンテナシステムに適用され、二つの周波数帯におけるアンテナ間の結合を減少させることが可能となった。」

ウ.「Dual-band monopoles and proposed dual-band insulator design: The proposed MIMO antenna is designed for 2.6/3.5 GHz WiMAX applications, as shown in Fig.1a. The MIMO antenna is printed on an FR-4 substrate (εr = 4.4) the dimensions of which are 50×80×0.8mm^(3) Microstrip lines of 50 Ω feed the antennas. The separation distance between the two antennas is 22 mm, about 0.18 wavelength of 2.6 GHz. In Fig.1b, the upper branch of the antenna provides the 2.6 GHz resonant path, while the lower one is the 3.5 GHz resonant path. The designed dual-band insulator is shown in Fig.2. CLLs are stacked and printed on the front and the rear surfaces of the sibstrate. The dual-band insulator on the front surface operates at 2.6 GHz, as shown in Fig.2b. The geometry of the 2.6 GHz CLL element is shown in Fig.2c. Fig.2d shows the geometry of the 3.5 GHz CLL element. Each column of CLLs is set to different but close oprating frequencies to broaden its operating bandwidth. The total spiral length variations of the unit cell of each column of each surface are 0.4 and 0.8 mm, respectively. In this design, one of the centred resonators on the front surface, which is operated at 2.6 GHz to obtain a more flat S21 response, is removed [5].」(1頁、Dual-band monopoles and proposed dual-band insulator design の項)
(合議体仮訳)
「デュアルバンドモノポールと提案されたデュアルバンドインシュレータデザイン:提案されたMIMOアンテナは、Fig.1aに示されるように、2.6/3.5GHzのWiMAXアプリケーション用に設計された。MIMOアンテナはその諸元が50×80×0.8mm^(3)であるFR - 4基板(εr= 4.4)にプリントされる。50Ωのマイクロストリップラインがアンテナの給電に用いられる。2本のアンテナの間の距離は22ミリ、2.6GHzのおよそ0.18波長である。Fig.1bにおいて、アンテナの上側ブランチは2.6GHzで共振する長さであり、下側ブランチは3.5GHzで共振する長さである。設計されたデュアルバンドインシュレータをFig.2に示す。複数のCLLがスタックされ、基板の表面および裏面にプリントされる。Fig.2bに示される表面上のデュアルバンドインシュレータは2.6GHzで動作する。2.6GHzのCLLの寸法をFig.2cに示す。Fig.2dに3.5GHzのCLLの寸法を示す。複数のCLLはその列ごとにその動作帯域幅を広げるために近接した異なる周波数に設定されている。それぞれの表面の列毎のユニットセルのらせん部の全長の可変量は、それぞれ、0.4と0.8ミリである。この設計において、表面の中央に置かれた2.6GHz用の共振器の1つが、より平坦なS21特性を得るために、取り除かれる[5]。」

エ.「Results: The proposed dual-band MIMO antenna with an insulator was fabricated and measured. Measured S-parameters of the original MIMO antenna and the MIMO antenna with CLLs are shown in Figs.3a and b, respectively. Both antennas' operating frequencies cover the 2.6/3.5 GHzWiMAX bands. The crossline represents the isolation(S21) of the antenna. The isolation below - 20 dB is at 2.55-2.73 and 3.39-3.82 GHz. The radiation efficiency of the proposed dual-band MIMO antennas is around 50 %. The measured antenna gain is shown in Fig.4. The antenna gains are 0-2 dBi at 2.6 GHz band and 3-5 dBi at 3.5 GHz band.」(1-2頁、Resultの項)
(合議体仮訳)
「結果:提案されたインシュレータ付きデュアルバンドMIMOアンテナを作成し、計測した。オリジナルのMIMOアンテナと複数のCLLを配置したMIMOアンテナのSパラメータ特性をそれぞれFig.3aと3bに示す。アンテナの動作周波数は2.6/3.5GHzWiMAX用周波数帯をカバーしている。x印の線はアンテナの分離度(S21)を表している。-20dB以下の分離度が2.55-2.73と3.39-3.82GHz帯で得られる。提案されたデュアルバンドMIMOアンテナの放射効率はおよそ50%である。測定されたアンテナの利得特性をFig.4に示す。アンテナの利得は2.6GHz帯で0-2dBi、3.5GHz帯で3-5dBiである。」

オ.


カ.


引用文献の記載及び関連する図面(特に図3?図5)からみて、引用文献の「MIMOアンテナ」は
(A)インシュレータ付きデュアルバンドMIMOアンテナであって、(摘記事項エ)
(B)インシュレータは複数のスプリットリング共振器を基にした容量性負荷ループ(CLL)がスタックされ、基板の表面および裏面にプリントされ、(摘記事項イ)
(C)CLL構造はネガティブなμ特性を有し、EM波(電磁エネルギ)を減少させるものであり、(摘記事項イ)
(D)表面用のCLLと裏面用のCLLは長さを含むその大きさ又は形状が異なっており、(摘記事項ウ及びオ)
(E)複数のCLLは基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間に配置されている、(摘記事項ア、エ及びカ)
構成を備えていると認められる。

このため、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認める。

「複数のCLL(スプリットリング共振器を基にした容量性負荷ループ)がスタックされて基板にプリントされたCLL構造であって、
前記CLL構造はネガティブなμ特性を有し、EM波(電磁エネルギ)を減少させるものであり、
表面用のCLLと裏面用のCLLは、長さを含むその大きさ又は形状が異なっており、
前記複数のCLLは基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間に配置されている、
CLL構造。」

(2)周知技術
ア.米国特許公開第2010/295739号明細書(以下、「周知例1」という。)の段落33、43?47及び図1?図2には以下の事項が記載されている。

(ア) 「[0033] Referring to FIG.1, FIG.1 is a schematic representation of the architecture of the multiple antennae system 100 according to an exemplary example of the present disclosure. The multiple antennae system 100 is capable of being applied on a communication device adopting a multiple input multiple output transmission technology, or on a communication device having a plurality of high frequency antenna units. The multiple antennae system 100 comprises a conductor ground surface 111, a radiation pattern insulator 112, a first microstrip conductive line 121, a second microstrip conductive line 122, a first radiation conductor 131, a second radiation conductor 132, a first feed-in end 141, and a second feed-in end 142.」(2頁右欄、段落33)
(合議体仮訳)
「【0033】図1を参照するに、図1は、本発明の好適な実施例に基づく、マルチアンテナシステム100のアーキテクチャを示す。マルチアンテナシステム100はマルチ入力マルチアウトプット送信技術を採用している通信装置、あるいは複数の周波数で動作する高周波アンテナユニットに適用される。マルチアンテナシステム100はグラウンド導体111、放射パターンインシュレータ112、第1マイクロストリップ導体121、第2マイクロストリップ導体112、第1放射導体131、第2放射導体132、第1給電端子141、第2給電端子142からなる。」

(イ) 「[0043] Referring to FIG.2, FIG.2 is a schematic representation of the architecture of the radiation pattern insulator according to the exemplary example of the present disclosure. FIG.2 is also an enlarging schematic representation showing the radiation pattern insulator 112 of FIG.1.
[0044] Please see FIG.2. The radiation pattern insulator 200 comprises a dielectric substrate 231, a first radiation pattern insulation element 241, a second radiation pattern insulation element 242, a third radiation pattern insulation element 251, a fourth radiation pattern insulation element 261 and a fifth radiation pattern insulation element 262.
[0045] Referring to FIG.1 and FIG.2, the dielectric substrate 231 is allocated on a path for propagating radiation energy of the electromagnetic waves to be insulated by the first radiation conductor 131 and a second radiation conductor 132 of the multiple antennae system 100. The dielectric substrate 231 comprises a top surface and a bottom surface, and a normal direction (shown in FIG.2) of the dielectric substrate 231 is substantially perpendicular to one of the propagation directions of electromagnetic waves radiated from the first radiation conductor 131 and the second radiation conductor 132. For example, the propagation directions of the electromagnetic waves radiated from the first radiation conductor 131 and the second radiation conductor 132 comprises a propagation direction from the first radiation conductor 131 to the second radiation conductor 132, and another propagation direction from the second radiation conductor 132 to the first radiation conductor 131. The normal direction of the dielectric substrate 231 is substantially perpendicular to the two propagation direction mentioned above.
[0046] Referring to FIG.2, the first radiation pattern insulation element 241, the second radiation pattern insulation element 242, the third radiation pattern insulation element 251, the fourth radiation pattern insulation element 261, and the fifth radiation pattern insulation element 262 are the radiation pattern insulation elements of the radiation pattern insulator 200. The first radiation pattern insulation element 241, the second radiation pattern insulation element 242, the third radiation pattern insulation element 251, the fourth radiation pattern insulation element 261, and the fifth radiation pattern insulation element 262 can be allocated on the top surface or the bottom surface of the dielectric substrate 231, or alternatively, all allocated on the top surface and the bottom surface.
[0047] Please see FIG.1 and FIG.2. Each radiation pattern insulation element is formed by a meandering line or a wiggling line, and meandering line or the wiggling line is non-closed. In each of the following exemplary examples, the meandering line is made of conductive material, such as metal and so on. Besides, in the other exemplary example, each radiation pattern insulation element is formed by a spiral line, and the spiral line is non-closed. A total length of each meandering line of radiation pattern insulation element is 0.1 to 0.5 times the wavelength of the electromagnetic wave to be insulated by the antennae (i.e. the first radiation conductor 131 and the second radiation conductor 132) in a free space, so that a resonating frequency of each radiation pattern insulation element is approximate to a frequency of the electromagnetic wave. Furthermore, geometric patterns of the meandering lines of the radiation pattern insulation elements are similar to each other but not necessary the same, so that the resonating frequencies of the radiation pattern insulation elements may have little differences from each other, and the radiation pattern insulation elements are arranged to match an arrangement shape so as to insulate the electromagnetic waves. In addition, a distance of any two of the adjacent radiation pattern insulation elements (such as the first radiation pattern insulation element 241 and the second radiation pattern insulation element 242) is less than 0.1 times the wavelength of the electromagnetic wave to be insulated in free space.」(3頁右欄?4頁左欄、段落43?47)
(合議体仮訳)
「【0043】図2を参照するに、図2は、開示された本願発明にかかる放射パターンインシュレータのアーキテクチャの概念的構成である。図2は図1の放射パターンインシュレータ112を拡大して示す図である。
【0044】図2に示すように、放射パターンインシュレータ200は誘電体基板231、第1放射パターン隔離要素241、第2放射パターン隔離要素242、第3放射パターン隔離要素251、第4放射パターン隔離要素261、及び第5放射パターン隔離要素262からなる。
【0045】図1と図2に示すように、 マルチアンテナシステム100の第1放射導体131と第2放射導体132から放射される電磁エネルギーを隔離するために電磁波の伝播経路上に誘電体基板231が配置される。誘電体基板231は上面と底面を有し、(図2に示された)誘電体の分極方向が第1放射導体131と第2放射導体132から放射される電磁波の伝播方向とほぼ垂直に交わる。例えば、第1放射導体131と第2放射導体132から放射した電磁波の伝播方向は第1放射導体131から第2放射導体132に至る1つの伝播方向と第2放射導体132から第1放射導体131に至るもう1つの伝播方向である。誘電体基板231の分極方向は前記2つの伝播方向と垂直に交わる。
【0046】図2に示すように、第1放射パターン隔離要素241、第2放射パターン隔離要素242、第3放射パターン隔離要素251、第4放射パターン隔離要素261及び第5放射パターン隔離要素262は放射パターンインシュレータ200の放射パターン隔離要素である。第1放射パターン隔離要素241、第2放射隔離要素242、第3放射パターン隔離要素251、第4放射パターン隔離要素261及び第5放射パターン隔離要素262は誘電体基板231の上面又は底面に配置される。あるいは、すべての隔離要素が上面及び底面に配置されてもよい。
【0047】図1と図2に示すように、それぞれの放射パターン隔離要素は先端開放の屈曲状ライン又は湾曲状ラインとして形成される。以下の実施例では、これらの線は金属などの導電性材料から形成される。更に他の実施例では、それぞれの放射パターン隔離要素は先端開放のらせん状の線によって形成される。放射パターン隔離要素のそれぞれの屈曲状ラインの全体の長さはアンテナ(第1の放射導体131と第2の放射導体132)によって放射される電磁波の真空中の波長の0.1から0.5倍であり、それぞれの放射パターン隔離要素の共振周波数は前記電磁波の周波数に略一致する。更に、放射パターン隔離要素の屈曲状ラインの幾何学的なパターンは互いに類似しているが、同一である必要はない。その場合、放射パターン隔離要素の共振周波数が互いにわずかに異なるように、即ち、隔離すべき電磁波の周波数にマッチングできるようにその形状を修正する。加えるに、隣接した2つの放射パターン隔離要素間の距離(例えば、第1の放射パターン隔離要素241と第2の放射パターン隔離要素242)は隔離すべき電磁波の真空中の波長の0.1倍未満である。」

イ.特開2008-28010号公報(以下、「周知例2」という。)の段落2?3及び図1には以下の事項が記載されている。

「【0002】
自然界の媒質と同様の誘電体あるいは磁性体としての特性を有する人工媒質についての研究、開発が近年なされており、このような人工媒質のうち特に単位粒子がマイクロ波やミリ波の波長よりも小さく分子よりも大きくなるような粒子の形状・配置として自然界の媒質にはない特性を有する人工媒質の設計・製作が可能であり、注目を集めている。この中で、正の透磁率および負の透磁率を実現するものとしてスプリットリング共振器が知られている。
【0003】
図1は、導体で形成された多数のスプリットリング共振器が格子状に配置された人工媒質を示している。この共振器は薄い導体板で作られた帯状リングの一箇所を切除したスプリットリングの切除した部分を互い違いにして2個重ねた状態にし、これを格子状に配置したものである。このような人工媒質は強い異方性をもっており、特定の方向の磁界に対して透磁率が大きく、他の方向の磁界に対しては空気の透磁率と大差がないというようになっている。この点は、このような異方性をもつ人工媒質を利用する場合に、磁界に対してどのような向きに媒質を置けば効果が得られるかということと関わっており重要である。図1の構造ではy方向の磁界に対する透磁率が空気の透磁率と比べて変化する。以降においては、磁界の向きをy方向に固定し、この方向を基準にして媒質の構造を説明する。これは単なる座標軸の選択の問題であり、一般性を失うものではない。」(2?3頁、段落2?3)

ウ.特開2011-109547号公報(以下、「周知例3」という。)の段落23?24、30及び図2には以下の事項が記載されている。

(ア) 「【0023】
マルチアンテナ装置10は、複数のアンテナ素子を用いて所定の周波数において多重の入出力が可能なMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信用に構成されている。また、マルチアンテナ装置10は、2.5GHz帯の高速無線通信ネットワークのWiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)に対応している。
【0024】
マルチアンテナ装置10は、図2に示すように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12と、2つのアンテナ素子11および12の間に配置される無給電素子13と、接地面14と、第1アンテナ素子11に高周波電力を供給するための第1給電点15および第2アンテナ素子12に高周波電力を供給するための第2給電点16とを含んでいる。」(6頁、段落23?24)

(イ) 「【0030】
第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11に対向して配置される第1対向部131と、第2アンテナ素子12に対向して配置される第2対向部132と、第1対向部131と第2対向部132とを連結する連結部133とを含む無給電素子13を設けることによって、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との間に、無給電素子13を介さない直接的な結合と、無給電素子13を介した間接的な結合とを形成することができる。すなわち、第1アンテナ素子11に電流が流れた場合、第1アンテナ素子11との直接的な結合により第2アンテナ素子12に流れる電流と、第1アンテナ素子11との間接的な結合により無給電素子13の第1対向部131、連結部133および第2対向部132を介して第2アンテナ素子12に流れる電流とが生成される。本発明の第1実施形態の構成では、第1アンテナ素子11を流れる電流の向きと、無給電素子13の第2対向部132を流れる電流の向きとが反対方向になるように無給電素子13が配置されているので、第1アンテナ素子11との直接的な結合に起因して第2アンテナ素子12に流れる電流の向きと、無給電素子13の第2対向部132の電流による間接的な結合に起因して第2アンテナ素子12に流れる電流の向きとを反対方向にすることができる。これにより、直接的な結合に起因する電流と間接的な結合に起因する電流とが互いに相殺されるので、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との相互結合を小さくすることができる。また、無給電素子13を非接地にすることによって、無給電素子13を接地面14に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。したがって、この携帯電話機100では、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるので、アンテナ素子間の相互結合を小さくするためにアンテナ素子間の距離を大きくする必要がなく、その分、マルチアンテナ装置10を小型化することができる。その結果、携帯電話機100を小型化することができる。」(7?8頁、段落30)

エ.周知技術
周知例1の段落47又は周知例2の段落3の開示に見られるように、「メタマテリアルを構成するスプリットリング共振器のパターンを導体により形成すること。」は周知技術(以下、「周知技術1」という。)であるとともに、周知例1の段落33又は周知例3の全摘記事項の開示に見られるように、「MIMOアンテナ間を減結合するためのインシュレータを基板のグランドプレーンが設けられていない領域に配置すること。」は周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。

3.対比・判断
(1) 一致点と相違点
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「CLL構造」は摘記事項ウに記載されているように「ユニットセル」と呼称され、複数のスタックされた「CLL構造」はいわゆる「アレイ」を構成しており、ネガティブなμ特性を有する「CLL構造」はいわゆる「メタマテリアル」である。
したがって、本願発明の「ユニットセル」、「アレイ」及び「メタマテリアル」と引用発明の「CLL」、「スタック」及び「CLL構造」のそれぞれの間に差異はない。
また、本願発明の「前記ユニットセルの各々は少なくとも1つの導電性トラックにより形成され」という構成に関し、引用発明の「表面用のCLLと裏面用のCLL」の各「CELL」の「形状」がFig.2a?Fig.2d(摘記事項オ参照)に記載されているように表面用、裏面用それぞれのパターンを有していることは明らかであるから、当該パターンが「導電性トラックにより形成され」ていることは特定されていないものの、本願発明と引用発明は「前記ユニットセルの各々は少なくとも1つのパターンにより形成され」る構成の点で一致している。
また、引用発明の「表面用のCLLと裏面用のCLLは長さを含むその大きさ又は形状が異なっており」という構成は、「表面用のCLLと裏面用のCLL」が「異なる長さ」を有する場合が含まれるものである。一方、本願発明は導電性トラックの長さ又は幅又は厚みであり、本願発明として前記導電性トラックの長さ又は幅又は厚みの中から導電性トラックの長さを選択した場合、本願発明の「前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの導電性トラックは、他のユニットセルにおける少なくとも1つの導電性トラックとは異なる長さ又は幅又は厚みを有し」という構成と引用発明の上記構成は「前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つのパターンは、他のユニットセルにおける少なくとも1つのパターンとは異なる長さを有し」という構成の点で一致している。
さらに、引用発明の「前記複数のCLLは基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間に配置されている」構成と本願発明の「前記ユニットセルのアレイは、誘電体基板上の領域であってグランドプレーンが設けられていない領域に設けられている」構成は本願発明の配置場所が引用発明と同じ「基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間」であることは明らかであるから、引用発明の「CLL構造」が「グランドプレーンが設けられていない領域」に配置されているか否かは不明であるものの、両者はいずれも「前記ユニットセルのアレイは、誘電体基板上の領域であって、基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間に配置されている」点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「ユニットセルのアレイを有するメタマテリアルであって、
前記ユニットセルの各々は少なくとも1つのパターンにより形成され、
前記ユニットセルのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つのパターンは、他のユニットセルにおける少なくとも1つのパターンとは異なる長さを有し、
前記ユニットセルのアレイは、誘電体基板上の領域であって、基板上部の左右両端に配置されたアンテナの間に配置されている、
メタマテリアル。」

(相違点1)
一致点である「パターン」に関し、本願発明のパターンは「導電性トラックにより形成され」ている構成であるのに対し、引用発明の「CLL」のパターンが「導電性トラックにより形成され」ていることが特定されていない点。

(相違点2)
一致点である「アレイ」の「配置」に関し、本願発明は「グランドプレーンが設けられていない領域」であるのに対し、引用発明は「グランドプレーンが設けられていない領域」であることが特定されていない点。

(2) 新規性の検討及び判断
最初に、本願発明の新規性について検討する。

ア.相違点1について検討するに、「メタマテリアルを構成するスプリットリング共振器のパターンを導体により形成すること。」(周知技術1)は周知技術であって、引用文献のFig.2a?Fig.2d(摘記事項オ参照)に記載されているCLLエレメントはスプリットリング共振器であるから、当業者にとって当該CLLエレメント(即ち、パターン)が導体により形成されていることは自明のことである。
してみると、引用発明の「CLL」のパターンを「導電性トラックにより形成され」ることが引用文献に記載されているのに等しく、当該パターンに関して、本願発明と引用発明との間に差異はない。

イ.相違点2について検討するに、「MIMOアンテナ間を減結合するためのインシュレータを基板のグランドプレーンが設けられていない領域に配置すること。」(周知技術2)も周知技術であるところ、引用文献のFig.1に記載されている長方形の黒い部分がFR-4基板を覆うグランドプレーンであり、引用発明のものも、実際には二つのアンテナ間のグランドプレーンが設けられていない領域に配置されていることは明らかである。
してみると、「アレイの配置場所」を「グランドプレーンが設けられていない領域」とすることが引用文献に記載されているのに等しく、「アレイの配置場所」に関して、本願発明と引用発明との間に差異はない。

ウ.以上のとおり、相違点1及び2はいずれも本願発明と引用発明との間に差異はなく、本願発明は引用発明と同一である。

(3)進歩性の検討及び判断
本願発明の進歩性について検討する。

ア.相違点1について検討するに、相違点1の「パターン」を実質的な相違点であるとして捉えたとしても、「メタマテリアルを構成するスプリットリング共振器のパターンを導体により形成すること。」(周知技術1)は周知技術である。そして、引用文献のFig.2a?Fig.2d(摘記事項オ参照)に記載されているCLLエレメントはスプリットリング共振器であるから、当業者にとって当該CLLエレメント(即ち、パターン)が導体により形成されていることは自明のことである。
したがって、当該CLLエレメントが導体により形成されていることは当業者が引用文献に接したときに自然に想起される事項であるから、これらの周知技術ないしは自明な事項に基づいて、引用発明の「CLL」のパターンを「導電性トラックにより形成」することは当業者であれば容易になし得ることである。

イ.相違点2について検討するに、相違点2の「アレイ」の「配置」を実質的な相違点であるとして捉えたとしても、「MIMOアンテナ間を減結合するためのインシュレータを基板のグランドプレーンが設けられていない領域に配置すること。」(周知技術2)も周知技術である。そして、引用文献のFig.1に記載されている長方形の黒い部分がFR-4基板を覆うグランドプレーンであることは当業者であれば自明のことである。
したがって、引用発明のものも、実際には二つのアンテナ間のグランドプレーンが設けられていない領域に配置されているものであることは当業者が引用文献に接したときに自然に想起される事項であるから、これらの周知技術ないしは自明な事項に基づいて、引用発明のアレイの配置場所を「グランドプレーンが設けられていない領域」とすることも当業者であれば容易になし得ることである。

ウ.以上のとおりであるから、本願発明は引用発明及び周知技術ないしは自明の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明及び周知技術ないしは自明の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-23 
結審通知日 2018-04-24 
審決日 2018-05-09 
出願番号 特願2014-526550(P2014-526550)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 561- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 佐藤 聡史
中野 浩昌
発明の名称 メタマテリアル及びアンテナシステム  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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