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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1344500
審判番号 不服2018-1273  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-30 
確定日 2018-10-10 
事件の表示 特願2016-537168「自動車用のカメラモジュール、及びカメラモジュールを取り付ける方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日国際公開、WO2015/032512、平成28年11月 4日国内公表、特表2016-534403、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)9月3日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月13日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月15日付けで手続補正がされ、同年9月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月28日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-13に係る発明は、下記の引用文献1-2に記載された発明、及び、引用文献3-4に記載された技術常識に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.独国特許出願公開第102008047277号明細書
2.特開2003-185904号公報
3.特開2008-304641号公報
4.特開2002-14269号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、以下に検討するように、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、補正前の請求項4を削除して請求項5-13を請求項4-12に繰り上げるとともに、請求項1に対して、
「前記チューブ(26)の前記レンズ組立体(20)及び前記レンズホルダ(53)と連結されていない自由な部分の高さをh_(T)とし、前記チューブ(26)の前記熱膨張係数をC_(T)とし、前記レンズホルダ(53)の高さをh_(H)とし、前記レンズホルダ(53)の前記熱膨張係数をC_(H)とし、温度変化ΔTに伴う前記レンズ組立体(20)と前記画像平面(A)との間の距離の変化をΔd_(2)としたときに、方程式
h_(T)・C_(T)=h_(H)・C_(H)-Δd_(2)/ΔT
が、
成立するように構成した」
という事項が追加されている。
請求項1に対する上記補正は、補正前の請求項4に記載されていた事項を組み込むとともに、「h_(T)」について、「前記チューブ(26)の前記レンズ組立体(20)及び前記レンズホルダ(53)と連結されていない自由な部分の高さをh_(T)とし」と、具体的に限定するものである。
したがって、審判請求時の補正は、請求項の削除、及び、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるといえる。
また、「h_(T)」について、「前記チューブ(26)の前記レンズ組立体(20)及び前記レンズホルダ(53)と連結されていない自由な部分の高さをh_(T)」とする点は、当初明細書の段落【0018】、【0034】、【0041】の記載と対応するものであり、新規事項を追加するものであるとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-12に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、平成30年1月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?12は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
レンズ組立体(20)と;背壁(32)、及び開口(28)を囲む前端(50)を有するハウジング(22)と;前記背壁(32)によって保持され、かつ前記レンズ組立体(20)の画像平面(A)内、又は画像平面(A)の近くで、前記ハウジング(22)内に配置された画像センサ(24)と;を備える自動車用のカメラモジュール(12)であって、
前記前端(50)と前記背壁(32)との間に延びるレンズホルダ(53)と;
前記開口(28)を囲み、かつ前記開口(28)から前記ハウジング(22)内に延びるように、前記前端(50)で前記レンズホルダ(53)に固定されたチューブ(26)とを備え、
前記レンズ組立体(20)が、接続手段(71、72)により、前記チューブ(26)の底端部(57)に接続され、
前記チューブ(26)の熱膨張係数が、前記レンズホルダ(53)の熱膨張係数より高く、
前記接続手段(71、72)が、前記レンズ組立体(20)の軸方向長さ(h_(L))の1/2未満にわたって延び、
前記チューブ(26)の前記レンズ組立体(20)及び前記レンズホルダ(53)と連結されていない自由な部分の高さをh_(T)とし、前記チューブ(26)の前記熱膨張係数をC_(T)とし、前記レンズホルダ(53)の高さをh_(H)とし、前記レンズホルダ(53)の前記熱膨張係数をC_(H)とし、温度変化ΔTに伴う前記レンズ組立体(20)と前記画像平面(A)との間の距離の変化をΔd_(2)としたときに、方程式
h_(T)・C_(T)=h_(H)・C_(H)-Δd_(2)/ΔT
が、
成立するように構成したことを特徴とするカメラモジュール(12)。
【請求項2】
前記レンズホルダ(53)の熱膨張係数、及び前記チューブ(26)の熱膨張係数が、前記画像平面(A)を、前記センサ(24)に対する所定の関係に保持するように適合させられていることを特徴とする、請求項1に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項3】
前記チューブ(26)の前記熱膨張係数が、前記チューブ(26)の熱膨張が、前記レンズホルダ(53)の熱膨張と、前記レンズ組立体(20)の変化により前記レンズ組立体(20)内で引き起こされた、前記画像平面のずれとを補償することができるように適合させられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項4】
前記レンズホルダ(53)の材料が、前記チューブ(26)の材料とは異なることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項5】
前記レンズホルダ(53)が、ガラス繊維強化プラスチックから作られていることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項6】
前記チューブ(26)が、ガラスビーズ強化プラスチックから作られていることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項7】
前記レンズ組立体(20)が、金属、好ましくは黄銅から作られたレンズ鏡筒(63)を備えることを特徴とする、請求項1?6のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項8】
前記レンズ組立体(20)が、金属、好ましくは黄銅から作られたレンズスペーサ(70)を備えることを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項9】
前記レンズ組立体(20)が、前記レンズ組立体(20)を前記チューブ(26)に当接させるためのフランジ(61)を備えることを特徴とする、請求項1?8のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項10】
前記チューブ(26)が、前記チューブ(26)を前記レンズホルダ(53)に当接させるためのフランジ(59)を備えることを特徴とする、請求項1?9のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項11】
前記チューブ(26)が、外側ねじ山(60)を備え、前記レンズホルダ(53)が、協働する内側ねじ山(58)を備えることを特徴とする、請求項1?10のいずれか一項に記載のカメラモジュール(12)。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか一項に記載のカメラモジュールを取り付ける方法であって、前記レンズ組立体(20)が、下から前記チューブ(26)内に螺合され、レンズ組立体(20)とチューブ(26)とによるユニットが、上から前記レンズホルダ(53)内に螺合される方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、ウムラウト記号は省略し、エスツェットは「s」に置き換えている。また、摘示箇所の後に当審訳文を付した。(下線は審決が付した。以下同じ。)

(1)「[0002]Eine derartige optische Einrichtung kann als Kamerasystem aufgebautsein, wobei das Objektiv der Kamera eine Fokalebene aufweist, die zur Oberflachedes optischen Bauteils ortsfest angeordnet ist, sodass das System als Fixfokuskamerasystem bezeichnet werden kann. Die Kamera kann beispielsweise als Bilderfassungskamerain einem Kraftfahrzeug zum Einsatz kommen. Wird die Kamera im Kraftfahrzeug beispielsweise im Frontbereich installiert, erfasst diese durch eine elektronisch gestutzte Bildauswertung einzelne Merkmale im erfassten Bild wie beispielsweise Verkehrszeichen,vorausfahrende Fahrzeuge und so weiter.」

「[0002]このような光学装置は、カメラシステムとして構成することができ、カメラの対物レンズは、光学部品の表面に対して固定して配置された焦点面を有し、その結果、システムは、固定焦点カメラシステムと呼ぶことができる。カメラは、例えば、自動車における撮像カメラとして使用することができる。カメラが自動車内に例えば前方領域に設置されると、このカメラは、電子的に支援された画像評価によって、検出された画像内の個々の特徴、例えば交通標識、先行車両等を検出する。」

(2)「[0019]Gemas einer weiteren vorteilhaften Ausfuhrungsform ist der Kompensationskorper aus einem Rohrabschnitt mit einem ersten Ende und einem gegenuberliegenden zweiten Ende gebildet. Ferner ist ein Fassungskorper vorgesehen, in dem wenigstens das erste optische Element und das zweite optische Element gemeinsam eingefasst sind. Der Fassungskorper kann mit dem ersten optischen Element und mit dem zweiten optischen Element innenseitig im ersten Ende des Rohrabschnittes eingefasst sein. Der Kompensationskorper kann ferner uber das gegenuberliegende zweite Ende in der Trageranordnung eingebracht sein, so dass sich zwischen dem Objektiv und der Verbindung des Kompensationskorpers zur Trageranordnung eine freie Lange des Rohrabschnittes ergibt, wobei sich der Kompensationskorper in einer in die Trageranordnung hinein gestulpten Anordnung befindet.」

「[0019]別の有利な実施形態によれば、補償体は、第1の端部と反対側の第2の端部とを有する管部分から形成されている。さらに、少なくとも第1の光学素子と第2の光学素子とが一緒に閉じ込められているソケット本体が設けられている。ソケット本体は、第1の光学要素と、第2の光学要素とともに、管セクションの第1の端部の内側に閉じ込められていてもよい。補償体は、さらに、反対側の第2の端部を介して支持構造体に設けられていてよいので、対物レンズと補償体の結合部との間には、支持体構造体に対する管区分の自由な長さが生じる。この場合、補償体は、支持装置内に被せ嵌められた配置状態にある。」


(3)「[0028]Fig.1 zeigt eine mogliche Ausfuhrungsform einer optischen Einrichtung 1 gemas dem Stand der Technik. Diese besitzt ein Objektiv 2, das beispielhaft wenigstens ein erstes optisches Element 3 und ein zweites optisches Element 4 aufweist, wobei das Objektiv 2 auch aus einem oder aus mehr als zwei optischen Elementen 3 und 4 aufgebaut sein kann. Das Objektiv 2 umfasst ferner einen Fassungskorper 9 zur Aufnahme der optischen Elemente 3 und 4. Ferner dient der Fassungskorper 9 dazu, das Objektiv 2 in einer Trageranordnung 5 aufzunehmen. Die Trageranordnung 5 kann topfartig oder tubusartig ausgefuhrt sein, so dass sowohl das Objektiv 2 mit dem Fassungskorper 9 und der Trageranordnung 5 um eine Rotationsachse ausgebildet ist, die als optische Achse 10 bezeichnet ist.
[0029]Durch die Trageranordnung 5 wird das Objektiv 2 in einem gegeben Abstand uber einem optischen Bauteil 6 gehalten. Das optische Bauteil 6 kann beispielsweise einen CCD-Chip darstellen, der zur Bilderfassung dienen kann. Folglich ist ein Strahlengang 12 vorhanden, der durch das Objektiv 2 in einer Fokalebene 11 fokussiert wird. Um eine storungsfreie Funktion der optischen Einrichtung 1 zu gewahrleisten, muss sich die Fokalebene 11 auf der Oberflacheoder aquidistant zum optischen Bauteil 6 befinden. Dieser Abstand darf sich auch bei einer Anderung der Temperatur der optischen Einrichtung 1 nicht andern.
[0030]Jedoch kann sich durch eine Temperaturanderung der Trageranordnung 5 der Abstand zwischen dem Objektiv 2 und dem optischen Bauteil 6 andern, so dass die Fokalebene 11 aus der Oberflache des optischen Bauteils 6 herauswandert. Hierzu ist aus dem Stand der Technik keine einfach ausgebildete Kompensationsmoglichkeit bekannt, die eine thermisch bedingte Anderung des Abstandes des Objektivs zum optischen Bauteil 6 ausgleichen kann. Ferner kann die Fokalebene 11 die Oberflache des optischen Bauteils 6 dadurch verlassen, dass sich die Temperatur der optischen Elemente 3 und 4 derart andert, dass durch dieVeranderung des Brechungsindizes die Fokalebene 11 in ihrem Abstand zum Objektiv 2 verandert werden kann.
[0031]Diese Anderung des Abstandes kann sich mit der Anderungdes Abstandes durch eine Landendehnung der Trageranordnung 5 uberlagern, so dass der auszugleichende Abstand zwischen der Fokalebene 11 und dem optischen Bauteil 6 uberwunden werden muss. Sowohl die Trageranordnung 5 als auch das optische Bauteil 6 sind auf einer Aufnahmeeinrichtung 8 aufgenommen, die plan ausgefuhrt ist und eine mechanische Kopplung des optischen Bauteils 6 mit der Trageranordnung 5 bildet.」

「[0028]図1は、従来技術による光学装置1の可能な実施形態を示す。これは、対物レンズ2を有し、この対物レンズは、例として少なくとも一つの第1光学素子3および第2光学素子4を有し、対物レンズ2は、一つまたは2以上の光学素子3および4から構成することもできる。対物レンズ2は、さらに、光学素子3および4を収容するためのソケット本体9を含み、ソケット本体9は、対物レンズ2を支持装置5に収容するために使用される。支持装置5は、カップ状又は管状に形成することができ、その結果、対物レンズ2とソケット本体9との両方、及び支持装置5は、光軸10と呼ばれる回転軸の周りに形成される。
[0029]支持装置5によって、対物レンズ2は、光学部品6の上方に所定の距離に保持される。光学部品6は、例えば、画像取得のために使用することができるCCDチップであってよい。したがって、対物レンズ2によって焦点平面11内に集束される光路12が存在する。光学装置1の支障のない機能を保証するために、焦点平面11は、光学部品6に対して等間隔に配置されていなければならない。この間隔は、光学装置1の温度の変化の際にも変化してはならない。
[0030]しかしながら、支持装置5の温度変化によって、対物レンズ2と光学部材6との間の距離が変化し、焦点面11が光学部品6の表面から離れる。このために、従来技術から、対物レンズと光学部品6との間の距離の熱による変化を補償することができる簡単に形成された補償手段が知られていない。さらに、焦点面11は、屈折率の変化によって焦点面11が対物レンズ2からの距離を変化させることができるように、光学素子3および4の温度が変化することにより、光学素子6の表面を離れることとなる。
[0031]距離のこの変化は、支持装置5の伸びによる距離の変化によるもので、その結果、焦点面11と光学部品6との間の補償されるべき距離を克服する必要がある。支持装置5および光学部品6の両方は、平面的に設計され、光学部品6と支持装置5との機械的結合を形成する、記録デバイス8上に収容される。」

(4)「[0032]Fig.2 zeigt ein Ausfuhrungsbeispiel einer optischen Einrichtung 1 mit einer Thermokompensation gemas der vorliegenden Erfindung. Der Aufbau zur Aufnahme des Objektives 2 ist mit einem Kompensationskorper 7 versehen, uber den das Objektiv 2 mit den optischen Elementen 3 und 4 in der Trageranordnung 5 aufgenommen ist. Der Kompensationskorper 7 kann dabei ein Material mit einem WarmeausdehnungskoeffizientenαK aufweisen, der derart bemessen ist, dass eine temperaturbedingte Anderung des Abstandes zwischen dem Objektiv 2 und dem optischen Bauteil 6 ausgleichbar ist. Der Ausdehnungskoeffizient αK des Kompensationskorpers 7 ist dabei groser als der Warmeausdehnungskoeffizient αT der Trageranordnung 5, da der Kompensationskorper 7eine geringere Lange besitzt als die Trageranordnung 5.
[0033]Folglich kann die Trageranordnung 5 langer ausgefuhrt sein als der Kompensationskorper 7, so dass aufgrund des groseren Warmeausdehnungskoeffizienten αK der Kompensationskorper 7 dennoch die gesamte Langenanderung der Trageranordnung 5 ausgleichen kann. Im Ergebnis bleibt die Fokalebene 11 des Strahlenganges 12 in der Ebene des optischen Bauteiles 6 bzw. aquidistantzu diesem erhalten.
[0034]Gemas der Darstellung ist erkennbar, dass das Objektiv 2 einen Fassungskorper 9 besitzt, uber den das Objektiv 2 im Kompensationskorper 7 an einem ersten unteren Ende aufgenommen ist. Hingegen ist der Kompensationskorper 7 uber das zweite,gegenuberliegende Ende im oberen Bereich der Trageranordnung 5 eingefasst, so dass sich die Langenanderung des Kompensationskorpers 7 als Abstandsanderung zwischen dem Objektiv 2 und der Aufnahmestelle des Kompensationskorpers 7 in der Trageranordnung 5 bemerkbar macht. Nimmt die Lange der Trageranordnung 5 in Richtung zur optischen Achse 10 zu, so wurde sich zunachst der Abstand des Objektivs 2 uber dem optischen Bauteil 6 vergrosern. Aufgrund der Vergroserung der Lange des Kompensationskorpers 7 bei gleicher Temperaturanderung wird jedoch der Abstand zwischendem Objektiv 2 und dem optischen Bauteil wieder kleiner. Durch die Uberlagerung beider Langeanderungen ergibt sich bei korrekter Wahl der Materialien und folglich der Warmeausdehnungskoeffizienten αT und αK keine Anderung des Abstandes des Objektives 2 relativ zum optischen Bauteil 6.」

「[0032]図2は、本発明による熱補償を有する光学装置1の実施例を示す。対物レンズ2を収容するための構成は補償体7を備えており、この補償体を介して光学素子3および4を有する対物レンズ2を支持装置5内に収容する。補償体7は、熱膨張係数αKを有する材料を有することができ、この材料は、対物レンズ2と光学部品6との間の間隔の温度に起因する変化が補償可能であるように寸法設定されている。補償体7の膨張係数αKは、支持装置5の熱膨張係数αTよりも大きい。なぜなら、補償体7は、支持装置5よりも短い長さを有しているからである。
[0033]したがって、支持装置5は、補償体7よりも長く構成することができ、それによって、比較的大きな熱膨張係数αKにより、補償体7は、それにもかかわらず、支持装置5の全体を補償することができる。結果として、光路12の焦点平面11は、光学部品6の平面内に、または、光学部品に対して等距離に維持される。
[0034]図示のように、対物レンズ2がソケット本体9を有し、このソケット本体を介して対物レンズ2が補償体7内で第1の下端部に収容されている。一方、補償体7は、第2の対向する端部を介して支持体構造体5の上側領域に閉じ込められているので、補償体7は、対物レンズ2と補償体7の収容箇所との間の距離変化として、支持装置5内で認められる。支持装置5の長さが光軸10の方向に増加すると、まず、対物レンズ2の光学部品6に対する距離が増加する。しかし、同じ温度変化の際の補償体7の長さの増大に基づいて、対物レンズ2と光学素子との間の間隔は再び小さくなる。両長さの重ね合わせによって、材料の正確な選択と、従って熱膨張係数αTおよびαKとによって、光学部品6に対する対物レンズ2の間隔の変化は生じない。」


(5)ここで、段落[0028]?[0031]及びFig.1で説明されている「光学装置」と、段落[0032]?[0034]及びFig.2で説明されている「光学装置」とは別の装置であるが、同じ符号が付されたものは同じ部材(部品)を意味していることは明らかである。
したがって、以下の点が分かる。
ア Fig.2の「8」の符号を付したものは、上記段落[0031]を参照すると「記録デバイス8」である。
イ Fig.2の「6」の符号を付したものは上記段落[0032]?[0034]によれば「光学部品」であるが、これは、上記段落[0029]を参照すると、「例えば、画像取得のために使用することができるCCDチップ」である。
ウ Fig.2の「11」及び「12」の符号を付したものは上記段落[0033]によれば、それぞれ「焦点平面」及び「光路」であるが、これらは、上記段落[0029]を参照すると、「対物レンズ2によって焦点平面11内に集束される光路12が存在する」と記載されていることから、焦点平面は対物レンズによって光路が収束される平面である。

(6)上記「(5)ア」を踏まえ、引用文献1のFig.2を参照すると、以下の点が分かる。
ア 「支持装置5」は開口を囲む前端を有し、後端には「記録デバイス8」が結合されており、前端と後端との間で延びている。
イ 「記録デバイス8」は、その形状からみて壁となっているといえる。
ウ 「記録デバイス8」によって「光学部品6」が保持されている。
エ 「光学部品6」は「支持装置5」内に配置されている。
オ 「補償体」は、開口を囲み、支持装置の前端で固定され、開口から支持装置内に延びている。

上記(1)?(6)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「支持装置は開口を囲む前端を有し、後端には記録デバイスが結合されており、前端と後端との間で延びており、
記録デバイスは、その形状が壁となっており、
光学部品は、例えば、画像取得のために使用することができるCCDチップであり、記録デバイスによって保持され、支持装置内に配置されており、
補償体は、第1の端部と反対側の第2の端部とを有する管部分から形成され、支持装置の開口を囲み、支持装置の前端で固定され、支持装置の開口から支持装置内に延びており、
光学素子3および4を有する対物レンズはソケット本体を有し、補償体内の第1の端部に収容され、一方、補償体は第2の端部を介して支持装置の上側領域に閉じ込められ、
補償体は、熱膨張係数αKを有する材料であり、αKは、支持装置の熱膨張係数αTよりも大きく、
支持装置の長さが光軸の方向に増加すると、まず、対物レンズの光学部品に対する距離が増加するが、同じ温度変化の際の補償体の長さの増大に基づいて、対物レンズと光学素子との間の間隔は再び小さくなり、対物レンズによって光路が収束される平面である焦点平面は、光学部品の平面内に、または、光学部品に対して等距離に維持される、
例えば、自動車における撮像カメラとして使用することができるカメラシステムとして構成することができる、光学装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撮影レンズの温度変化により伸縮するバックフォーカスを簡単な手段で補正したカメラに関する。」

(2)「【0013】図1は温度変化による撮影レンズの焦点位置の変化を補正する機構の図である。
【0014】図1において、撮影レンズ1は第1レンズ11及び第2レンズ12により構成され、被写体光は撮像素子2の結像面に結像する。第1レンズ11及び第2レンズ12はプラスチックより形成され、レンズ鏡枠15に保持されている。そして、レンズ鏡枠15は、その外周に位置するレンズ鏡筒21の被写体側の前端部21a(レンズ鏡枠固定部)に固定されている。
【0015】また、撮影レンズ1はピント位置を過焦点距離に設定した固定焦点方式になっている。
【0016】22は撮影レンズ1の焦点位置の変化を補正するために温度変化によって伸縮する伸縮筒(伸縮部材)であり、撮影レンズ1による結像面側の根本部22a(固定部)が固定部材23に固定されている。24は接続筒(接続部材)であって、撮影レンズ1による結像面側における後端部24aがレンズ鏡筒21の後端部21bに接続され、被写体側の前端部24bが伸縮筒22の前端部22bに接続されている。そして、接続筒24はレンズ鏡筒21を支持している。
【0017】なお、レンズ鏡枠15とレンズ鏡筒21との固定、レンズ鏡筒21と接続筒24との接続、接続筒24と伸縮筒22との接続、及び伸縮筒22と固定部材23との固定は、ネジ止めや、一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌合させる係合等の機械的結合でもよいし、接着剤を用いた接着でもよい。
【0018】また、標準温度(例えば20℃)にてレンズ鏡枠15を光軸方向に移動させて、被写体光が撮影レンズ1によって撮像素子2へ正確に合焦するようにピント調整を行う。
【0019】ここで、撮影レンズ1のバックフォーカスfbは、例えば温度が上昇すると延長する。即ち、被写体光が撮像素子2の結像面より後方に結像してしまう。この問題を解消するためには、バックフォーカスfbが延長した分だけ、撮影レンズ1を被写体側に移動させてやればよい。
【0020】そこで、レンズ鏡筒21及び伸縮筒22を線膨張係数の大きい材料によって形成し、レンズ鏡枠15及び接続筒24を線膨張係数の小さい材料によって形成すれば、温度上昇によってレンズ鏡筒21及び伸縮筒22が大きく伸長する反面、レンズ鏡枠15及び接続筒24はあまり伸長しない。レンズ鏡筒21及び伸縮筒22の全長を略同一に形成すれば、温度上昇によってレンズ鏡筒21の前端部21aはそれ自体の熱膨張量の略2倍の量で光軸方向前方に移動する。従って、撮影レンズ1を保持したレンズ鏡枠15も同様に前方に移動する。
【0021】従って、このときのレンズ鏡枠15の移動量が撮影レンズ1のバックフォーカスfbの変化量に等しくなるように設定すれば、温度変化による撮影レンズ1の焦点位置の変化を補正することができる。
【0022】レンズ鏡枠15の移動量をΔd(mm)とし、レンズ鏡筒21の全長をL1(mm)、線膨張係数をα1(1/℃)とし、接続筒24の全長をL2(mm)、線膨張係数をα2(1/℃)とし、伸縮筒22の全長をL3(mm)、線膨張係数をα3(1/℃)とし、基準温度に対する温度変化をΔh(℃)とすれば、下記の式で表せる。
【0023】Δd=Δh×{(L1×α1)-(L2×α2)+(L3×α3)}
ここで、レンズ鏡筒21及び伸縮筒22は温度変化によって伸縮し易いプラスチックより形成されることが望ましく、その線膨張係数は7×10^(-5)以上が望ましいが、レンズ鏡枠15及び接続筒24は温度変化によって伸縮し難い金属若しくはグラス入りプラスチックより形成されることが望ましく、その線膨張係数は3×10^(-5)以下が望ましい。」


(3)図1を参照すると、レンズ鏡筒21と接続筒24との接続長さは、レンズ鏡筒の長さの1/2未満である点が示されている。

上記(1)?(3)を総合すると、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「撮影レンズは第1レンズ及び第2レンズにより構成され、第1レンズ及び第2レンズはプラスチックより形成され、レンズ鏡枠に保持されており、
レンズ鏡枠は、その外周に位置するレンズ鏡筒の被写体側の前端部に固定されており、
撮影レンズ1の焦点位置の変化を補正するために温度変化によって伸縮する伸縮筒は、撮影レンズ1による結像面側の根本部(固定部)が固定部材に固定されており、
接続筒は、撮影レンズによる結像面側における後端部がレンズ鏡筒の後端部に接続され、被写体側の前端部が伸縮筒の前端部に接続されており、接続筒はレンズ鏡筒を支持しており、
レンズ鏡筒と接続筒との接続は、ネジ止めや、一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌合させる係合等の機械的結合でもよいし、接着剤を用いた接着でもよく、
レンズ鏡筒と接続筒との接続長さは、レンズ鏡筒の長さの1/2未満であり、
レンズ鏡筒及び伸縮筒を線膨張係数の大きい材料によって形成し、レンズ鏡枠及び接続筒を線膨張係数の小さい材料によって形成することで、温度上昇によってレンズ鏡筒及び伸縮筒が大きく伸長する反面、レンズ鏡枠及び接続筒はあまり伸長せず、
レンズ鏡筒及び伸縮筒の全長を略同一に形成することで、温度上昇によってレンズ鏡筒の前端部はそれ自体の熱膨張量の略2倍の量で光軸方向前方に移動し、従って、撮影レンズを保持したレンズ鏡枠も同様に前方に移動し、
レンズ鏡枠の移動量が撮影レンズのバックフォーカスの変化量に等しくなるように設定して、温度変化による撮影レンズの焦点位置の変化を補正することができ、
レンズ鏡枠の移動量をΔd(mm)、レンズ鏡筒の全長をL1(mm)、線膨張係数をα1(1/℃)、接続筒の全長をL2(mm)、線膨張係数をα2(1/℃)、伸縮筒の全長をL3(mm)、線膨張係数をα3(1/℃)、基準温度に対する温度変化をΔh(℃)としたとき、
Δd=Δh×{(L1×α1)-(L2×α2)+(L3×α3)}
が成立する、
撮影レンズの温度変化により伸縮するバックフォーカスを簡単な手段で補正したカメラ。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズのピントを温度補償することができるレンズユニット、該レンズユニットを備えた撮像装置、及び画像処理システムに関する。」

(2)「【0016】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る遠赤外線撮像装置を模式的に示す概略断面図である。図中Aは、本実施の形態1に係る遠赤外線撮像装置Aであり、遠赤外線撮像装置Aは、レンズユニット1と、撮像部2と、レンズユニット1及び撮像部2を支持した基台3とを備えている。
【0017】
基台3は、有底筒状の撮像部支持体3aと、円環板状をなし、中心線が一致するように撮像部支持体3aの開放端に固定されたレンズユニット支持体3bとを備えている。
【0018】
撮像部2は、波長が7?14μmの赤外線を電気信号に変換するサーモパイル、焦電素子、ボロメータ等の撮像素子2a、及び撮像素子2aを収容した収容体2bを備えており、収容体2bは、撮像部支持体3aの底部の略中心部分に配設されている。また、収容体2bの開口部には、撮像素子2aを保護する保護板2cが設けられている。
【0019】
レンズユニット1は、赤外線レンズ11を保持したレンズ鏡筒13(内筒)と、レンズ鏡筒13を内側に保持する鏡筒保持筒12(外筒)とから構成されており、レンズユニット1は赤外線レンズ11の光軸Lが撮像素子2aの中心に一致するような姿勢でレンズユニット支持体3bに固定されている。
【0020】
鏡筒保持筒12は、アルミニウム製であり、レンズユニット支持体3bに固定されるべき固定部12aを撮像素子2a側(図1の紙面において右側)に有している。また、鏡筒保持筒12は固定部12aよりも反撮像素子2a側(図1の紙面において左側)に位置する他端部12bの内周面に、レンズ鏡筒13を固定するための雌ねじを有している。
【0021】
レンズ鏡筒13は、鏡筒保持筒12の内径よりも小径のアルミニウム製であり、外筒の内側に配されている。レンズ鏡筒13は、内嵌した赤外線レンズ11を保持するための段状のレンズ保持部13aを撮像素子2a側に有している。レンズ鏡筒13に内嵌してレンズ保持部13aに保持された赤外線レンズ11は、環状のレンズ押さえ14にて固定されている。また、レンズ鏡筒13の他端部13bの外周面に、鏡筒保持筒12の雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。」

(3)「【0047】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る遠赤外線撮像装置Bを模式的に示す概略断面図である。実施の形態2に係る遠赤外線撮像装置Bは、実施の形態1に係る遠赤外線撮像装置Bと同様のレンズユニット201、撮像部2及び基台3を備えている。レンズ鏡筒213及び鏡筒保持筒212を異なる線膨張係数を有する材質で形成することによって、ピントを温度補償するように構成されている点が実施の形態1に係る遠赤外線撮像装置B及びレンズユニット201と異なるため、以下では主に上記相違点について説明する。
【0048】
鏡筒保持筒212及びレンズ鏡筒213は、レンズ鏡筒213の方が熱膨張量が大きくなるように、α1<α2の関係を満たしている。α1は、鏡筒保持筒212の線膨張係数、α2は、レンズ鏡筒213の線膨張係数である。
なお、α1<α2の関係は、L1×α1<L2×α2においてL1=L2の関係を満たす場合に該当する。但し、L1は、光軸L方向における鏡筒保持筒212の幅、より詳細には他端部212bと、固定部212aとの距離であり、L2は、光軸L方向におけるレンズ鏡筒213の幅、より詳細には他端部213bと、レンズ保持部213aとの距離である。
本実施の形態2では、鏡筒保持筒212及びレンズ鏡筒213の光軸L方向における幅L1、L2は略等しく、線膨張係数が異なる。例えば、鏡筒保持筒212は線膨張係数α1=24×10^(-6)(K-1)のアルミニウムで形成され、レンズ鏡筒213は、線膨張係数α2=65×10^(-6)(K-1)のポリカーボネートにて形成されており、α1<α2の関係を満たしている。
【0049】
レンズ鏡筒213の線膨張係数α2の方が鏡筒保持筒212の線膨張係数α1よりも大きいため、レンズユニット201の温度が上昇するとレンズは撮像素子2a側に移動する。
【0050】
本実施の形態2に係るレンズユニット201、遠赤外線撮像装置B及び画像処理システムにあっては、温度変化によってレンズ鏡筒213が膨張及び収縮し、屈折率が変化した場合であっても、効果的にピントを温度補償することができる。」

(4)ここで、上記段落【0016】?【0021】は「実施の形態1」に関するもので、上記段落【0047】?【0052】は「実施の形態2」に関するものであるが、「実施の形態2」は、上記(3)のとおり、「レンズ鏡筒213及び鏡筒保持筒212を異なる線膨張係数を有する材質で形成することによって、ピントを温度補償するように構成されている点が実施の形態1に係る遠赤外線撮像装置B及びレンズユニット201と異なる」のであり、そうすると、その余の点においては実施の形態1と同様であるから、実施の形態2は、レンズ鏡筒213に内嵌してレンズ保持部213aに保持された赤外線レンズ11は、環状のレンズ押さえ14にて固定されていることが分かる。

上記(1)?(5)を総合すると、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「レンズユニット、撮像部及び基台を備え、レンズ鏡筒及び鏡筒保持筒を異なる線膨張係数を有する材質で形成することによって、ピントを温度補償するように構成されており、
レンズ鏡筒に内嵌してレンズ保持部に保持された赤外線レンズは、環状のレンズ押さえにて固定され、
鏡筒保持筒及びレンズ鏡筒は、レンズ鏡筒の方が熱膨張量が大きくなるように、α1<α2の関係を満たしており、ここでα1は、鏡筒保持筒の線膨張係数、α2は、レンズ鏡筒の線膨張係数であり、
α1<α2の関係は、L1×α1<L2×α2においてL1=L2の関係を満たしており、但し、L1は、光軸L方向における鏡筒保持筒の幅であり、L2は、光軸L方向におけるレンズ鏡筒の幅であり、
レンズ鏡筒の線膨張係数α2の方が鏡筒保持筒の線膨張係数α1よりも大きいため、レンズユニットの温度が上昇するとレンズは撮像素子側に移動し、
温度変化によってレンズ鏡筒が膨張及び収縮し、屈折率が変化した場合であっても、効果的にピントを温度補償することができる、
レンズユニットを備えた撮像装置。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。

「【0023】次に、他の実施形態について説明する。図2は、他の実施形態に係る光学装置を説明する概略断面図である。すなわち、図2に示す他の実施形態に係る光学装置は、機能素子1、ホルダー2、鏡筒3、レンズ4を備える点で図1に示す実施形態と同様であるが、ホルダー2の一端が基板10に直接取り付けられている点で相違する。
【0024】このような光学装置でも、ホルダー2の他端に鏡筒3がねじ込み式で取り付けられ、鏡筒3の機能素子1側の端部にレンズ4が組み込まれている。これにより、ホルダー2の固定端(一端)から自由端(他端)に向かう方向と、鏡筒3の固定端(取り付け部3a)から自由端(レンズ4側)に向かう方向とが反対になっていることから、温度変化によるホルダー2の伸縮方向と鏡筒3の伸縮方向とが反対となり、互いの伸縮分を相殺して、機能素子1とレンズ4との距離を一定に保つことができるようになる。
【0025】ここで、図2に示す光学装置では、ホルダー2が直接基板10に取り付けられている(図1に示す基台11がない)ため、鏡筒3のレンズ4の位置から取り付け部3aまでの距離Aと、ホルダー2の一端から鏡筒3の取り付け部3aまでの距離Bとが一致しないことになる(A≠B)。
【0026】そこで、鏡筒3の線膨張係数をa、ホルダー2の線膨張係数をbとした場合、A×a=B×bが成り立つように、ホルダー2および鏡筒3の材質や寸法を設定する。ここで、A×a=B×bとは、ホルダー2および鏡筒3の熱伸縮があってもレンズ4によるピントずれが実用上問題にならない程度を含むものとする。
【0027】ホルダー2や鏡筒3はプラスチックによって成形されることが多いが、このプラスチック素材に混合するフィラー(ガラス繊維等)の比率を変えることで線膨張係数の調整を施す。なお、ホルダー2、鏡筒3の一方を金属、他方をプラスチックという組み合わせにして両者の線膨張係数を設定するようにしてもよい。
【0028】このような光学装置において、温度変化Δtがあった場合を考えると、ホルダー2の変化は、B×b×Δtとなる。一方、鏡筒4の変化は、A×a×Δtとなる。そこで、A×a=B×bに設定することで、両者の変化量は等しくなり、熱伸縮量を互いに打ち消してレンズ4と機能素子1との距離を一定に保つことができるようになる。」

上記記載を総合すると、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「機能素子、ホルダー、鏡筒、レンズを備え、
ホルダーの他端に鏡筒がねじ込み式で取り付けられ、鏡筒の機能素子側の端部にレンズが組み込まれ、これにより、ホルダーの固定端(一端)から自由端(他端)に向かう方向と、鏡筒の固定端(取り付け部)から自由端(レンズ側)に向かう方向とが反対になっていることから、温度変化によるホルダーの伸縮方向と鏡筒の伸縮方向とが反対となり、互いの伸縮分を相殺して、機能素子とレンズとの距離を一定に保つことができるようになり、
鏡筒のレンズの位置から取り付け部までの距離Aと、ホルダーの一端から鏡筒の取り付け部までの距離Bとは一致しておらず、
鏡筒の線膨張係数をa、ホルダーの線膨張係数をbとした場合、A×a=B×bが成り立ち、
温度変化Δtがあった場合、ホルダーの変化と鏡筒の変化は等しくなり、熱伸縮量を互いに打ち消してレンズと機能素子との距離を一定に保つことができるようになる、
光学装置。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「光学素子3および4を有する対物レンズ」及び「ソケット本体」は、レンズが組み立てられたものといえるから、本願発明1の「レンズ組立体(20)」に相当する。
イ 引用発明1においては、「支持装置は開口を囲む前端を有し、後端には記録デバイスが結合されており、記録デバイスは、その形状が壁となって」いるから、引用発明1の「記録デバイス」及び「開口を囲む前端」は、本願発明1の「背壁(32)」及び「開口(28)を囲む前端(50)」にそれぞれ相当し、引用発明1の「支持装置」及び「記録デバイス」によって、本願発明1の「背壁(32)、及び開口(28)を囲む前端(50)を有するハウジング(22)」に相当するものを構成している。
ウ 引用発明1の「対物レンズによって光路が収束される平面である焦点平面」は、本願発明1の「画像平面」に相当する。そして、引用発明1の「光学部品」は、「例えば、画像取得のために使用することができるCCDチップであり、記録デバイスによって保持され、支持装置内に配置されて」おり、「対物レンズによって光路が収束される平面である焦点平面は、光学部品の平面内に」「維持される」ものとなっているから、当該「光学部品」は、本願発明1の、「前記背壁(32)によって保持され、かつ前記レンズ組立体(20)の画像平面(A)内、又は画像平面(A)の近くで、前記ハウジング(22)内に配置された画像センサ(24)」のうち、「前記背壁(32)によって保持され、かつ前記レンズ組立体(20)の画像平面(A)内で、前記ハウジング(22)内に配置された画像センサ(24)」に相当する。
エ 引用発明1において、「支持装置」は、「開口を囲む前端を有し、後端には記録デバイスが結合されており、前端と後端との間で延びて」いる。また、引用発明1において、「光学素子3および4を有する対物レンズはソケット本体を有し、補償体内の第1の端部に収容され、一方、補償体は第2の端部を介して支持装置の上側領域に閉じ込められ」ていることから、「支持装置」は、「対物レンズ」を(間接的に)保持するレンズホルダであるといえる。
してみると、引用発明1の「支持装置」は、本願発明1の「前記前端(50)と前記背壁(32)との間に延びるレンズホルダ(53)」に相当する。
オ 引用発明1の「補償体は、第1の端部と反対側の第2の端部とを有する管部分から形成され、支持装置の開口を囲み、支持装置の前端で固定され、支持装置の開口から支持装置内に延びて」いるから、当該「補償体」は、本願発明1の「前記開口(28)を囲み、かつ前記開口(28)から前記ハウジング(22)内に延びるように、前記前端(50)で前記レンズホルダ(53)に固定されたチューブ(26)」に相当する。
カ 引用発明1において、「光学素子3および4を有する対物レンズはソケット本体を有し、補償体内の第1の端部に収容され」ていることから、「対物レンズ」及び「ソケット本体」からなるものと「補償体」とは、固定されているといえる。また、引用発明1の補償体内の「第1の端部」は、本願発明1の「前記チューブ(26)の底端部(57)」に相当する。
してみると、引用発明1のそのような構成と、本願発明1の、「前記レンズ組立体(20)が、接続手段(71、72)により、前記チューブ(26)の底端部(57)に接続され、」とは、「前記レンズ組立体(20)が、前記チューブ(26)の底端部(57)に固定され、」との概念で共通する。
キ 引用発明1において、「補償体の膨張係数αKは、支持装置の熱膨張係数αTよりも大き」いものとなっており、本願発明1と同様、「前記チューブ(26)の熱膨張係数が、前記レンズホルダ(53)の熱膨張係数より高」いといえる。
ク 引用発明1の「例えば、自動車における撮像カメラとして使用することができるカメラシステムとして構成することができる、光学装置」は、本願発明1の「自動車用のカメラモジュール(12)」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「レンズ組立体(20)と;背壁(32)、及び開口(28)を囲む前端(50)を有するハウジング(22)と;前記背壁(32)によって保持され、かつ前記背壁(32)によって保持され、かつ前記レンズ組立体(20)の画像平面(A)内で、前記ハウジング(22)内に配置された画像センサ(24)と;を備える自動車用のカメラモジュール(12)であって、
前記前端(50)と前記背壁(32)との間に延びるレンズホルダ(53)と;
前記開口(28)を囲み、かつ前記開口(28)から前記ハウジング(22)内に延びるように、前記前端(50)で前記レンズホルダ(53)に固定されたチューブ(26)とを備え、
前記レンズ組立体(20)が、前記チューブ(26)の底端部(57)に固定され、
前記チューブ(26)の熱膨張係数が、前記レンズホルダ(53)の熱膨張係数より高い、
カメラモジュール(12)。」

(相違点)
(相違点1)
レンズ組立体とチューブの固定に関し、本願発明1は、「前記レンズ組立体(20)が、接続手段(71、72)により、前記チューブ(26)の底端部(57)に接続され」ているのに対し、引用発明1は、対物レンズ及びソケット本体からなるものが、「接続手段により」、補償体の第1の端部に接続されているのか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記接続手段(71、72)が、前記レンズ組立体(20)の軸方向長さ(h_(L))の1/2未満にわたって延び」ているのに対し、引用発明1は、そのようなものであるのか明らかでない点。
(相違点3)
本願発明1は「前記チューブ(26)の前記レンズ組立体(20)及び前記レンズホルダ(53)と連結されていない自由な部分の高さをh_(T)とし、前記チューブ(26)の前記熱膨張係数をC_(T)とし、前記レンズホルダ(53)の高さをh_(H)とし、前記レンズホルダ(53)の前記熱膨張係数をC_(H)とし、温度変化ΔTに伴う前記レンズ組立体(20)と前記画像平面(A)との間の距離の変化をΔd_(2)としたときに、方程式
h_(T)・C_(T)=h_(H)・C_(H)-Δd_(2)/ΔT
が、成立するように構成」されているのに対し、引用発明1は、そのような構成を有しない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1?3について検討する。

ア まず、上記相違点1?3のうち、相違点2及び3に係る発明特定事項を備えることによる、本願発明1の作用効果(相違点2及び3に係る発明特定事項の意義)について検討する。

この点について、本願明細書には以下の記載がある。

(ア)「【0032】
画像とセンサ24との間の温度に依存する距離a(T)は、2つのパラメータによって決定される。図2を参照されたい。第1のパラメータは、レンズ組立体20とセンサ24との間の温度に依存する距離d_(1)(T)である。これに加えて、レンズ組立体20と画像平面Aとの間の距離d_(2)(T)が、レンズ組立体20の機械的変位、レンズ組立体20の光学素子又はレンズにおける屈折率の変化、レンズ組立体20内の寸法変化等により、温度にわたって変動する。このため、センサ24に対する画像位置Aは、a(T)=d_(1)(T)-d_(2)(T)によって付与される。画像がセンサに常に位置すること、即ち、d_(1)(T)=d_(2)(T)のように、a(T)=0になることが理想的である。
【0033】
温度Tが上昇するにつれてd_(2)(T)が減少する(Δd_(2)/ΔTが負になる)レンズ組立体20のレンズについて、このことは、レンズ組立体20がレンズホルダ53に直に接続されている、チューブ26を有さない従来技術においては問題となる。温度が上昇するにつれて収縮する材料が存在しないため、即ち熱膨張係数Cが常に正であるため、温度が上昇するにつれてd_(2)(T)が減少する(Δd_(2)/ΔTが負になる)レンズのために焦点を保持することは、方程式h_(H)・C_(H)=Δd_(2)/ΔTを満たすことができないため、不可能である。
【0034】
本発明では、レンズホルダ53とレンズ組立体20との間に中間チューブ26を加える。このことは、d_(1)(T)=h_(H)(T)-h_(T)(T)になることを意味する。チューブ26の熱膨張係数C_(T)及び高さH_(T)は、方程式h_(T)・C_(T)=h_(H)・C_(H)-Δd_(2)/ΔTに従って適合させられている。ここでは、h_(H)は、レンズホルダ53の高さを表し、C_(H)は、レンズホルダ53の熱膨張係数を表す。ここでは、C_(T)>C_(H)であり、Δd_(2)は、温度変化ΔTによるd2の変化を表す。本出願では、熱膨張係数Cは、Δh=h・C・ΔTにより、線熱膨張係数として定義される。また、チューブの高さh_(T)は、チューブの自由高さ、即ち自由に動くことができる、レンズホルダ53への接続部とレンズ組立体20との間のチューブの部分を意味すると理解される。図4から後に分かるように、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)は、チューブ26の実際の長さよりかなり小さい場合がある。詳細には、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)は、レンズホルダ53の高さh_(H)より小さいことが好ましい。」

(イ)「【0041】
レンズ鏡筒63が、レンズ鏡筒63の下端にまた、チューブ26の底端部57に設けられたねじ山71と係合するように適合させられたねじ山72を有することが好ましい。カメラモジュール12が取り付けられた場合、ねじ山71、ねじ山72が係合する軸方向長さlは、レンズ組立体20の高さh_(L)よりかなり小さく、詳細にはレンズ組立体の高さh_(L)の1/2より小さく、1/3より小さいことが好ましく、1/4より小さいことがより好ましい。図4の実施形態では、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)は、チューブ26のねじ山60とねじ山71との間の軸方向長さである。ねじ山71、ねじ山72が係合する軸方向長さlが比較的小さいことにより、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)は、本発明を実現するのに十分大きくあることができる。」

上記「(ア)」によれば、上記相違点3に係る発明特定事項により、本願発明1は、「レンズ組立体とセンサとの間の温度に依存する距離」及び「レンズ組立体と画像平面との間の(温度にわたって変動する)距離」の両方のパラメータが補償されるといえる。
上記「(イ)」によれば、上記相違点2に係る発明特定事項により、本願発明1は、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)は、十分大きくできるといえる。

つまり、相違点2及び3に係る発明特定事項を両方有することで、本願発明1は、自由長さ即ち効果的なチューブ長さh_(T)を十分大きくした上で、そのh_(T)を考慮した、「方程式 h_(T)・C_(T)=h_(H)・C_(H)-Δd_(2)/ΔT」を満足することで、レンズ組立体とセンサとの間の距離、及び、レンズ組立体と画像平面との間の距離の両方を補償する、という作用効果を奏するものであるといえる。
そして、本願発明1と引用発明1との対比結果は上記(1)のとおりであるから、引用発明1はそのような作用効果を奏するものであるとはいえない。

イ 引用発明2は、上記「第5 2」のとおりであって、「第1レンズ及び第2レンズにより構成され」る「撮影レンズ」、「レンズ鏡枠」及び「レンズ鏡筒」からなるものは、レンズが組み立てられたものといえるから、本願発明1の「レンズ組立体(20)」に相当し、「伸縮筒」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明1の「レンズホルダ(53)」に相当する。
また、引用発明2の「接続筒」は、「被写体側の前端部が伸縮筒の前端部に接続さ」れているから、当該「接続筒」は、その構造からみれば、本願発明1の「チューブ(26)」に相当するといえる。
また、引用発明2は、「レンズ鏡筒と接続筒との接続は、ネジ止めや、一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌合させる係合等の機械的結合でもよいし、接着剤を用いた接着でもよく」、ここで、「ネジ止め」、「一方に設けた凸部を他方に設けた凹部に嵌合させる係合等の機械的結合」あるいは「接着剤を用いた接着」は、「レンズ鏡筒」と「接続筒」を接続する接続手段であるといえる。また、引用発明2においては、「レンズ鏡筒と接続筒との接続長さは、レンズ鏡筒の長さの1/2未満であ」るから、その接続手段の長さは、レンズ鏡筒の軸方向高さの1/2未満にわたって延びているといえる。更に、引用発明2においては、「撮影レンズによる結像面側における後端部がレンズ鏡筒の後端部に接続され」ており、当該「撮影レンズによる結像面側における後端部」は、本願発明1の「底端部(57)」に相当する
してみると、引用発明2は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項である、「前記レンズ組立体(20)が、接続手段(71、72)により、前記チューブ(26)の底端部(57)に接続され」ている点、及び、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である、「前記接続手段(71、72)が、前記レンズ組立体(20)の軸方向長さ(h_(L))の1/2未満にわたって延び」ている点、を有しているといえるが、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を有していないことは明らかである。
そして、引用発明2は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を有していない以上、上記「ア」で検討した、相違点2及び3に係る発明特定事項を両方有することによる作用効果を奏するものでもない。

ウ 引用発明3は、上記「第5 3」のとおりであって、「鏡筒保持筒」及び「レンズ鏡筒」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明1の「レンズホルダ(53)」及び「チューブ(26)」に相当する。また、引用発明3の「赤外線レンズ」と本願発明1の「レンズ組立体(20)」とは、「レンズに関する部品」との概念で共通する。
しかしながら、引用発明3においては、「レンズ鏡筒に内嵌してレンズ保持部に保持された赤外線レンズは、環状のレンズ押さえにて固定され」ており、「レンズ押さえ」は、「赤外線レンズ」と「レンズ鏡筒」とを接続しているとはいえないから、本願発明1の「接続手段(71、72)」に相当するものが存在せず、上記相違点1及び2に係る本願発明1の発明特定事項を有しているとはいえない。
加えて、引用発明3は、「α1<α2の関係は、L1×α1<L2×α2においてL1=L2の関係を満たしており、但し、L1は、光軸L方向における鏡筒保持筒の幅であり、L2は、光軸L方向におけるレンズ鏡筒の幅であ」るが、「L2」が「レンズ鏡筒」の「赤外線レンズ」及び「鏡筒保持筒」と連結されていない自由な部分に関する幅(高さ)である旨の記載はなく、本願発明1の「h_(T)」に相当しない。よって、引用発明3は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項も有していないことは明らかである。
そして、引用発明3は、上記「ア」で検討した、相違点2及び3に係る発明特定事項を両方有することによる作用効果を奏するものでもない。

エ 引用発明4は、上記「第5 4」のとおりであって、「ホルダー」及び「鏡筒」は、その構造、機能、作用等からみて、本願発明1の「レンズホルダ(53)」及び「チューブ(26)」に相当する。また、引用発明4の「レンズ」と本願発明1の「レンズ組立体(20)」とは、「レンズに関する部品」との概念で共通する。
しかしながら、引用発明4においては、「鏡筒の機能素子側の端部にレンズが組み込まれ」ているものの、どのような態様で組み込まれているのか明らかでなく、したがって、「レンズ」と「鏡筒」とが何らかの手段により接続されているのか明らかではなく、本願発明1の「接続手段(71、72)」に相当するものが存在するとはいえないから、上記相違点1及び2に係る本願発明1の発明特定事項を有しているとはいえない。
加えて、引用発明4は、「鏡筒のレンズの位置から取り付け部までの距離Aと、ホルダーの一端から鏡筒の取り付け部までの距離Bとは一致しておらず、鏡筒の線膨張係数をa、ホルダーの線膨張係数をbとした場合、A×a=B×bが成り立」つものであるが、「鏡筒のレンズの位置から取り付け部までの距離A」は、「鏡筒」の「レンズ」及び「ホルダー」と連結されていない自由な部分に関する距離(高さ)である旨の記載はなく、本願発明1の「h_(T)」に相当しない。よって、引用発明4は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項も有していないことは明らかである。
そして、引用発明4は、上記「ア」で検討した、相違点2及び3に係る発明特定事項を両方有することによる作用効果を奏するものでもない。

オ 以上のとおりであるから、いずれの引用発明も、少なくとも、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項も有しておらず、また、いずれの引用発明も、上記相違点2及び3に係る本願発明1の発明特定事項を両方有することによる作用効果を奏するものでもない。
したがって、本願発明1は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?12について
本願発明2?12は本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
原査定の拒絶の理由の概要は上記「第2」のとおりであるが、上記「第5」?「第6」のとおり、本願発明1?12は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-27 
出願番号 特願2016-537168(P2016-537168)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 571- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 勇  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 尾崎 淳史
荒井 隆一
発明の名称 自動車用のカメラモジュール、及びカメラモジュールを取り付ける方法  
代理人 飯塚 雄二  

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