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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1344516
審判番号 不服2017-11107  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-26 
確定日 2018-09-20 
事件の表示 特願2016-19490号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月19日出願公開、特開2016-83544号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本願は、平成24年11月6日に出願した特願2012-244813号の一部を平成28年2月4日に新たな特許出願(特願2016-19490号)としたものであって、同年10月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年4月28日付け(発送日:同年5月9日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年3月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年5月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「A 入賞領域を備えた遊技機であって、
B 前記入賞領域を遊技媒体が通過したことを検出するための検出手段と、
C 前記検出手段が遊技媒体の通過を検出した時点から監視期間を経過するまでに該検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数を計数する計数手段と、
D 前記計数手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生したと判定するエラー判定手段と、
E 前記検出手段が遊技媒体の通過を検出している状態が、予め定められた期間継続する度に、連続検出エラーが発生したと判定する連続検出エラー判定手段と、
F 前記エラー判定手段によって前記エラーが発生したと判定されたときと、前記連続検出エラー判定手段によって前記連続検出エラーが発生したと判定されたときとで、共通の端子から共通の出力期間にわたって特定信号を出力する特定信号出力手段とを備え、
G 前記特定信号出力手段は、特定信号の出力期間中に新たに前記エラーおよび前記連続検出エラーの少なくともいずれかが発生したと判定されたときに、該出力期間が経過し、さらに所定の非出力期間が経過した後に特定信号を出力する
ことを特徴とする遊技機。」(A?Gは、当審にて分説して付与した。)

3 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
当審による拒絶理由において刊行物として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物1である特開2012-152425号公報には、次の事項が記載されていると認められる。

・記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、不正行為による遊技球の入賞を検出可能とするパチンコ遊技機に関するものである。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、非検出時に「Hi」、検出時に「Low」となる仕様の近接スイッチは、電波ゴトが行える期間が遊技球検出時に限られるため電波ゴトには有効といえる。但し近年、遊技に利用する遊技球よりも若干大きく検出スイッチを通過しない大きさの金属球(略球状)を、磁石を用いて所定の入賞口(例えば一般入賞口)に誘導し、検出スイッチを常時検出状態(「Low」)となるようにした上で電波を照射することで不正行為者が任意のタイミングで不正に遊技球を得られるようにするゴト行為(所謂大玉ゴト)が行われている。
【0007】
この様な不正行為は、遊技機に備えられた磁力センサや電波センサによる不正検知を巧妙に回避して行われているため発見が困難であり、ホールが被害を受けるケースが多発している。
【0008】
本願発明は、上記問題に鑑み、電波ゴトの不正行為を適切に検出し、ホールの被害を未然に防ぐことが可能な弾球遊技機を提供することを目的とする。」

ウ 「【実施例1】
【0017】
図1は、本実施例におけるパチンコ機の遊技盤8の正面図である。なお、このパチンコ機の全体的な構成は公知技術に従っているので図示及び説明は省略する。遊技盤8には公知のガイドレール25a、25bによって囲まれた略円形の遊技領域26が設けられ、多数の遊技釘27が植設されている。遊技領域26の略中央には、窓部28aを有する液晶枠飾り28が設けられており、演出図柄表示装置54b(図2参照)のLCD画面が遊技者から視認可能に構成され、図示しない公知のワープ入口、ワープ通路、ステージ等も設けられている。
・・・
【0019】
液晶枠飾り28の左右両側又は左側には普通図柄作動ゲート42が設けられており、下側には第1始動口31と開放時のみ入賞可能となる普通電動役物40が第2始動口32として設けられている。また普通電動役物40には、7セグメントLED等の発光部材により構成される普通図柄表示装置41が配置されている。第2始動口32の下方には、アタッカー式の大入賞口33aを備える大入賞口ユニット33が配置され、該大入賞口ユニット33の下方にはアウト口34が設けられている。大入賞口33aの左側には4個のLEDで構成される普通図柄保留数表示装置41aが設けられている。また、大入賞口ユニット33の左右両側には、一般入賞口35aが複数備えられる入賞口ユニット35が設けられている。尚、計4個の一般入賞口35aのそれぞれに配置された一般入賞口スイッチ35b、35c、35d、35eは遊技盤正面から見た一般入賞口35aの位置によって区別され、右側上には一般入賞口スイッチ35b、右側下には一般入賞口スイッチ35c、左側上には一般入賞口スイッチ35d、左側下には一般入賞口スイッチ35e、が配置されている。
・・・
【0024】
主制御装置50の入力端には、遊技盤中継端子板を介して第1始動口31に入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ31aと、第2始動口32である普通電動役物40に入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ32aと、普通図柄作動ゲート42に入球した遊技球を検出する普通図柄作動スイッチ42aと、大入賞口33aに入球した遊技球を検出するカウントスイッチ33bと、一般入賞口35aに入球した遊技球を検出する一般入賞口スイッチ35b(右上)、35c(右下)、35d(左上)、35e(左下)とが接続されている。また、裏配線中継端子板を介して前面枠が閉鎖していることを検出する前面枠閉鎖スイッチと、意匠枠が閉鎖していることを検出する意匠枠閉鎖スイッチと、が接続されている。なお、主制御装置50の入力端に接続された各種入賞検出スイッチ(第1始動口スイッチ31a、第2始動口スイッチ32a、普通図柄作動スイッチ42a、カウントスイッチ33b、一般入賞口スイッチ35b、35c、35d、35e)は、電波(電磁波)ゴトに有効なスイッチとしてノーマルクローズタイプ(NCタイプ)の近接スイッチ(遊技球通過孔を備えた形状)を用いている。
【0025】
主制御装置50の出力端には、遊技盤中継端子板を介して大入賞口33aの扉部材を駆動する大入賞口ソレノイドと、普通電動役物40の羽根部材を駆動する普通電役ソレノイドとが接続されており、図柄表示装置中継端子板を介して第1特別図柄を表示する第1特図表示装置29と、第1特別図柄の保留数を表示する第1特図保留数表示装置29aと、第2特別図柄を表示する第2特図表示装置30と、第2特別図柄の保留数を表示する第2特図保留数表示装置30aと、普通図柄を表示する普通図柄表示装置41と、普通図柄の保留数を表示する普図保留数表示装置41aとが接続されており、裏配線中継端子板及び外部接続端子板を介して図示しないホールコンピュータと、が接続されている。」

エ 「【0065】
次に、本願明における主制御装置50が備えるスイッチデータバッファの構成と、該スイッチデータバッファにおける入賞処理を実施するスイッチ信号の検出パターン(スイッチデータ検出パターン)と、主制御装置50がエラー判定パターンとして記憶するスイッチ信号の検出パターン(スイッチデータ検出パターン)を、図7を用いて説明する。スイッチデータバッファは、主制御装置50が定時割込処理を実施する毎に検知する入賞口に配置された近接スイッチの非検出状態又は検出状態を、所定期間記憶する一時記憶領域となる。
・・・
【0068】
また、(2)(a)(b)の太枠に示すようにスイッチデータバッファの下位3bitが、スイッチデータが非検出状態「0」から検出状態「1」に変化した後に検出状態「1」を維持することなく非検出状態「0」に変化した状態を示すスイッチデータ検出パターン「010」の場合、及びスイッチデータバッファの下位4bitが、スイッチデータが非検出状態「0」から検出状態「1」に変化した後に検出状態「1」を1回維持した後に非検出状態「0」に変化した状態を示すスイッチデータ検出パターン「0110」の場合は、遊技球の検出期間が短すぎ、電波ゴトである可能性が高いためエラー1と判定する。
・・・
【0071】
(3)(a)の太枠に示すようにスイッチデータバッファに記憶するスイッチデータの8回分の履歴が全て検出状態「1」となった場合、遊技球の検出期間としては長すぎ、大玉ゴト又は玉詰まりである可能性が高いためエラー2と判定する。従って、定時割込処理において近接スイッチの非検出状態が検出状態に変化してから該検出状態の維持回数が所定回数(最長検出維持回数)を超えた場合にエラー2と判定する構成となるが、本実施における該所定回数は7回となり、この値が大玉ゴト回避値(最長検出維持回数)となる。」

オ「【0073】
次に、実施例1において主制御装置50が実行する入賞確認処理1を図8のフローチャートを用いて説明する。入賞確認処理1は、主制御装置50が所定周期で実行する定時割込処理によって近接スイッチの非検出状態が所定回数連続した後に検出状態に変化し、該検出状態を所定回数維持することによって入賞と判定するように構成したうえで、定時割込処理によって近接スイッチの検出状態となってから、該検出状態の維持回数が所定回数に満たない場合にエラー1と判定し、定時割込処理によって近接スイッチの検出状態となってから、該検出状態の維持回数が所定回数を超えた場合にエラー2と判定し、所定期間内にエラーと判定された回数を計数し、該計数値が所定値に達することを条件にエラー1の報知を行い、エラー2と判定された時点でエラー2の報知を行う構成となっている。
・・・
【0077】
S100が否定判定なら(S100:no)、S105と同様のスイッチバッファのシフト処理として、最も古い記憶内容を消去すると共に残りの記憶内容の記憶位置を1bit繰上げ(S125)、シフト処理によって空いた下位1bit目に「0」を書き込む(S130)。S130又はS115の否定判定(S115:no)に続いては、更新されたスイッチデータバッファの内容とデータテーブルのエラーパターンとの比較処理を行い(S135)、エラーパターンと一致しているか否か判定する(S140)。否定判定なら(S140:no)リターンし、肯定判定なら(S140:yes)、スイッチデータバッファの8bit全てが「1」か否か判定する(S145)。肯定判定なら(S145:yes)、エラー2報知処理を行って(S150)リターンし、否定判定なら(S145:no)、エラー1報知処理(図9)を行って(S155)リターンする。
【0078】
次に図9に示したフローチャートを用いて、エラー1報知処理(S155)を説明する。エラー1報知処理を開始すると、入賞判定バッファにエラー1判定を示す「1」を書き込む(S200)。次に8bitで構成された入賞判定バッファ内にエラー1判定を示す「1」が4個あるか否か判定し(S205)、否定判定なら(S205:no)リターンし、肯定判定なら(S205:yes)、エラー1報知処理を行って(S210)リターンする。
・・・
【0080】
上述したエラー1報知処理及びエラー2報知処理は、所定期間内にエラー1と判定された回数を計数し、該計数値が所定値(電波ゴト確認値)に達することを条件にエラー1の報知を行い、エラー2と1回判定されるとエラー2の報知を行う構成となる。尚、エラー1の報知条件となる所定期間は、本実施例においては上述した入力判定バッファに8回の書き込みを実施する期間となるが、定時割込処理の回数を計数することによって、最初のエラー1が発生してからの時間を計測してもよい。
・・・
【0083】
エラー1又はエラー2の報知を実施した場合は、払出し動作を含め遊技の進行を中断した上で演出図柄表示装置54b上や各種LED・ランプを用いてエラー1又はエラー2状態を報知してもよいし、払出し動作を含め遊技の進行をそのままに演出図柄表示装置54b上や各種LED・ランプを用いてエラー1又はエラー2状態を報知してもよい。なお報知の実施中には、ホールコンピュータにもエラー内容を伝える信号が送信される。またエラーNo表示装置74には、エラー1の場合には「1」を、エラー2の場合には「2」を表示する。エラー1及びエラー2の報知は、ホールスタッフによって遊技機裏面に配置されたエラー解除スイッチ76が操作されることによりエラー状態が解除される(エラー2の場合は、大玉の除去が必要)。」

・認定事項
カ 【0073】に「主制御装置50が実行する入賞確認処理1を図8のフローチャートを用いて説明する。」と記載されていることから、刊行物1には、「主制御装置50が」「入賞確認処理1」を実行することが記載されている。
そして、【0077】に「入賞確認処理1」において、「エラー1報知処理(図9)を行って(S155)リターンする。」と記載されている。また、【0078】に「図9に示したフローチャートを用いて、エラー1報知処理(S155)を説明する。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、主制御装置50は、入賞確認処理1(図8)や、エラー1報知処理(図9)を実行することが記載されている。

キ 上記ア?オの記載事項、上記カの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる(a?fは、本願発明のA?Fに対応させて付与した。)。
「a 遊技領域26に第1始動口31と第2始動口32とが設けられているパチンコ遊技機(【0001】、【0017】、【0019】)において、
b 第1始動口31に入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ31aと、第2始動口32に入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ32aと(【0024】)、
c 近接スイッチの非検出状態又は検出状態を記憶する、スイッチデータバッファの下位3bitがスイッチデータ検出パターン[010]の場合、又は、スイッチデータ検出パターン[0110]の場合にエラー1と判定され、最初のエラー1が発生してから計測される時間の所定期間内に、エラー1と判定された回数を計数する主制御装置50とを備え(【0065】、【0068】、【0080】、認定事項カ)、
d 主制御装置50は、計数値が所定値(電波ゴト確認値)に達することを条件にエラー1の報知を行い(【0080】、認定事項カ)、
e また、主制御装置50は、スイッチデータバッファに記憶するスイッチデータの8回分の履歴が全て検出状態「1」となった場合にエラー2と判定し(【0071】)、エラー2と1回判定されるとエラー2の報知を行い(【0080】、認定事項カ)、
f エラー1又はエラー2の報知の実施中には、外部接続端子板を介して接続されているホールコンピュータにもエラー内容を伝える信号を送信するパチンコ機(【0017】、【0025】、【0080】、【0083】)。」

(2)刊行物2
同じく、当審による拒絶理由において刊行物として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物2である特開2011-167406号公報には、次の事項が記載されていると認められる。

・記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機等の弾球遊技機に関し、特には、入賞口に入球した遊技球を不正に操作して多量の賞球を払い出させる不正行為を防止するように構成した弾球遊技機に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パチンコ機には、各種入賞装置に対応して通過型センサ等からなる入賞球検出器が設けられており、この入賞装置に入球する遊技球が入賞球検出器を通過することによって該入賞装置での遊技球の入賞が検出され、入球個数に応じた賞球の払い出しや当り外れの抽選等が適時実行されるようになっている。このとき正当な正常遊技では、原則として遊技球1球につき1回のみ入賞球検出器への通過が検出されるものであるが、近年においては、パチンコ機の前面側に配設された球皿等の開口部からセル等の不正部材(ゴト器具)をパチンコ機内部に侵入させ、入賞球検出器に入球する遊技球を不正に操作して(同じ遊技球を入賞検出センサ内に何度も繰り返し通過させて)多数の賞球を払い出させる不正行為(所謂「リフティングゴト」と称される)が頻発しており、このような不正行為を的確に判別して有効に防止する策を講じることが課題となっている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正当な遊技による入賞と不正行為による入賞とを正確に判別することが可能な構成の弾球遊技機を提供することを目的とする。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のために、本発明に係る弾球遊技機は、遊技領域が形成された遊技盤と、遊技領域内に設けられ遊技球が入球可能な入賞口を有する入賞装置と、入賞口に入球した遊技球を検出する入賞球検出器と、予め設定された所定時間内に入賞球検出器において連続的に検出される遊技球の個数を計測するカウンタ手段と、カウンタ手段において計測された遊技球の個数が入賞装置への遊技球の入球頻度に応じた個数を超える所定数以上であるか否かを判定する判定手段(例えば、実施形態における不正判定手段185)と、判定手段において遊技球の個数が所定数以上であると判定された場合に、所定の警報作動を行う警報作動手段とを備えて構成される。」

エ 上記ア?ウの記載事項を踏まえると、刊行物2には、次の技術事項(以下「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「遊技盤と、
入賞口を有する入賞装置と、
入賞口に入球した遊技球を検出する入賞球検出器とを備え、
予め設定された所定時間内に入賞球検出器において連続的に検出される遊技球の個数を計測するカウンタ手段と、
カウンタ手段において計測された遊技球の個数が入賞装置への遊技球の入球頻度に応じた個数を超える所定数以上であると判定された場合に、所定の警報作動を行う行う警報作動手段を
備える弾球遊技機。」

4 対比
本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
(a)刊行物発明の「遊技領域26」に「設けられている」「第1始動口31と第2始動口32」は、本願発明における「入賞領域」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「パチンコ遊技機」は、本願発明における構成Aの「遊技機」に相当する。

(b)刊行物発明における「第1始動口31に入球した遊技球を検出する」こと、及び、「第2始動口32に入球した遊技球を検出する」ことは、本願発明における「入賞領域を遊技媒体が通過したことを検出する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「第1始動口スイッチ31a」、「第2始動口スイッチ32a」は、本願発明における構成Bの「検出手段」に相当する。

(c)刊行物発明において、「エラー1が発生」するのは、スイッチデータバッファの内容がスイッチデータ検出パターン[010]の場合、又は、スイッチデータ検出パターン[0110]の場合である。そして、スイッチデータ検出パターン[010]、[0110]のうち、[0]は、近接スイッチの非検出状態を示し、[1]は、近接スイッチの検出状態を示す。
したがって、「最初のエラー1が発生」するのは、最初に近接スイッチの検出状態が検出されるときに含まれるといえる。
ゆえに、刊行物発明における「最初のエラー1が発生してから」は、本願発明における「検出手段が遊技媒体の通過を検出した時点から」に相当する。

そして、刊行物発明における「所定期間」は、「エラー1と判定された回数を計数」する期間であることから、刊行物発明における「所定期間内」は、本願発明における「監視期間を経過するまで」に相当する。

次に、刊行物発明における「スイッチデータバッファの下位3bitがスイッチデータ検出パターン[010]の場合、又は、スイッチデータ検出パターン[0110]の場合にエラー1と判定され、その回数を計数」することと、本願発明における「検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数を計数する計数手段」とを対比する。
本願発明において、「検出手段が遊技媒体の通過を再度検出」するのは、構成Dによると、「計数手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生した」ことを判定するためである。
したがって、刊行物発明における「エラー1と判定され」た「回数」と、本願発明における「検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数」とは、「エラー検出の基になる回数」である点で共通する。

よって、刊行物発明における構成cの「主制御装置50」と、本願発明における「検出手段が遊技媒体の通過を検出した時点から監視期間を経過するまでに該検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数を計数する計数手段」とは、「検出手段が遊技媒体の通過を検出した時点から監視期間を経過するまでに、エラー検出の基になる回数を計数する手段」である点で共通する。

(d)上記(c)より、刊行物発明における「計数値が所定値(電波ゴト確認値)に達することを条件に」することと、本願発明における「計数手段が計数した回数にもとづ」くこととは、「エラー検出の基になる回数を計数する手段が計数した回数にもとづ」くことで共通する。
そして、刊行物発明における「エラー1の報知」は、エラー1が発生したことの報知であるから、刊行物発明における「エラー1の報知を行」うことは、本願発明における「エラーが発生したと判定する」ことに基づくものである。
したがって、刊行物発明における構成dの「計数値が所定値(電波ゴト確認値)に達することを条件にエラー1の報知を行」う「主制御装置50」と、本願発明における構成Dの「計数手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生したと判定するエラー判定手段」とは、「エラー検出の基になる回数を計数する手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生したと判定するエラー判定手段」である点で共通する。

(e)刊行物発明における「スイッチデータバッファに記憶するスイッチデータの8回分の履歴が全て検出状態「1」となった場合」は、検出状態「1」となることが8回連続して発生することであるから、本願発明における「検出手段が遊技媒体の通過を検出している状態が、予め定められた期間継続する度」に相当する。
そして、刊行物発明における「エラー2と判定」することは、本願発明における「連続検出エラーが発生したと判定する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成eの「主制御装置50」は、本願発明における構成Eの「連続検出エラー判定手段」に相当する。

(f)上記(d)?(e)より、刊行物発明における「エラー1又はエラー2の報知の実施」をすることは、本願発明における「エラーが発生したと判定する」こと、「連続検出エラーが発生したと判定する」ことに基づくものである。
そして、刊行物発明における「外部接続端子板を介して接続されているホールコンピュータにもエラー内容を伝える信号を送信する」ことと、本願発明における「共通の端子から共通の出力期間にわたって特定信号を出力する」こととは、「端子から所定信号を出力する」ことで共通する。
したがって、刊行物発明における「スイッチデータバッファに記憶するスイッチデータの8回分の履歴が全て検出状態「1」となった場合にエラー2と判定され、エラー2と1回判定されるとエラー2の報知を行」うことと、本願発明における「エラー判定手段によってエラーが発生したと判定されたときと、連続検出エラー判定手段によって連続検出エラーが発生したと判定されたときとで、共通の端子から共通の出力期間にわたって特定信号を出力する特定信号出力手段」とは、「エラー判定手段によってエラーが発生したと判定されたときと、連続検出エラー判定手段によって連続検出エラーが発生したと判定されたときとで、端子から所定信号を出力する所定信号出力手段」である点で共通する。

上記(a)?(f)における対比から、本願発明と刊行物発明とは、
「A 入賞領域を備えた遊技機であって、
B 前記入賞領域を遊技媒体が通過したことを検出するための検出手段と、
C’前記検出手段が遊技媒体の通過を検出した時点から監視期間を経過するまでに、エラー検出の基になる回数を計数する手段と、
D’前記エラー検出の基になる回数を計数する手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生したと判定するエラー判定手段と、
E 前記検出手段が遊技媒体の通過を検出している状態が、予め定められた期間継続する度に、連続検出エラーが発生したと判定する連続検出エラー判定手段と、
F’前記エラー判定手段によって前記エラーが発生したと判定されたときと、前記連続検出エラー判定手段によって前記連続検出エラーが発生したと判定されたときとで、端子から所定信号を出力する所定信号出力手段とを備える
遊技機。」
の点で一致し、構成C、D、F、Gに関し、次の点で相違する。

[相違点1](構成C、Dについて)
エラー検出の基になる回数を計数する手段に関して、本願発明は、検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数を計数する計数手段であるのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えるか明らかでない点。

[相違点2](構成Fについて)
エラー判定手段によってエラーが発生したと判定されたときと、連続検出エラー判定手段によって連続検出エラーが発生したと判定されたときに所定信号を出力する所定信号出力手段が、
本願発明は、共通の端子から共通の出力期間にわたって特定信号を出力する特定信号出力手段であるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか明らかでない点。

[相違点3](構成Gについて)
本願発明の特定信号出力手段は、特定信号の出力期間中に新たにエラーおよび連続検出エラーの少なくともいずれかが発生したと判定されたときに、該出力期間が経過し、さらに所定の非出力期間が経過した後に特定信号を出力するのに対して、刊行物発明はそのような構成を備えるか明らかでない点。

5 当審の判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
まず、刊行物2に記載された技術事項と本願発明とを比較する。
刊行物2に記載された技術事項の「予め設定された所定時間内に入賞球検出器において連続的に検出される遊技球の個数を計測するカウンタ手段」は、本件補正発明における「監視期間を経過するまでに該検出手段が遊技媒体の通過を」「検出した回数を計数する計数手段」に相当する。
そして、刊行物2に記載された技術事項の「カウンタ手段において計測された遊技球の個数が入賞装置への遊技球の入球頻度に応じた個数を超える所定数以上であると判定された場合に、所定の警報作動を行う警報作動手段」は、異常が発生したと判定する構成を有するものであるから、本願発明における「計数手段が計数した回数にもとづいて、エラーが発生したと判定するエラー判定手段」を備えることに相当する。
また、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、エラー検出の基になる回数を計数する手段の計数結果に基づいて、エラー判定を行う遊技機である点で共通する。
さらに、刊行物発明は、「電波ゴトの不正行為を適切に検出し、ホールの被害を未然に防ぐことが可能な弾球遊技機を提供する」(【0008】)ことを技術的課題とするものである。
一方、刊行物2に記載された技術事項は、「正当な遊技による入賞と不正行為による入賞とを正確に判別することが可能な構成の弾球遊技機を提供する」(【0006】)ことを技術的課題とするものである。
したがって、両者は、不正行為を適切に検出するという共通の課題を有するものである。
ところで、回数が所定回数に達したか否かの判断を、全ての回数と基準回数に基づいて判断するか、全ての回数から初回回数を除いた回数と基準回数から1を減算した基準回数に基づいて判断するかは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用して、「エラー1と判定され」る「回数」を、当該「回数」から初回にエラー1と判定される回数である1を減算し、検出手段が遊技媒体の通過を再度検出した回数とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2?3について
遊技機の技術分野において、イ:結線作業や、異常信号を出力されるための処理を簡略化するために、複数種類の異常信号を共通のコネクタ(端子)から出力すること、及び、ロ:ホールコンピュータにおいて所定信号を確実に認識させるために、所定の事象が発生したと判定されたときと、別の事象が発生したと判定されたときとで、共通の端子から共通の出力期間にわたって所定信号を出力し、所定信号の出力期間中に新たに所定の事象および別の事象の少なくともいずれかが発生したと判定されたときに、共通の出力期間が経過し、さらに所定の非出力期間が経過した後に所定信号を出力することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2009-148453号公報の【0305】、【0306】?【0311】、【図55】?【図58】や、特開2012-143606号公報の【0249】、【0250】?【0256】、【図52】?【図55】や、特開2009-34344号公報の【0328】?【0335】、【図70】?【図73】には、イ:複数種類の異常信号を共通のコネクタ(端子)から出力することにより、遊技機とホールコンピュータ間の信号線の数を減らすことができ、結線作業を簡略することができるとともに、異常信号を出力されるための処理を簡略化することができることが記載され、さらに、ロ:信号をホールコンピュータに確実に認識させるために、共通の端子(コネクタCN1)から、3つの始動口信号(始動口1信号、始動口2信号、始動口3信号)を出力する際に、各始動口信号を0.500秒間出力する遊技機において、1つの入賞に基づく信号を出力中に別の入賞に基づく信号が重複して発生した場合、出力中の信号の出力終了時から0.500秒の間隔を空けて、別の入賞に基づく信号を出力することが記載されている。

そして、刊行物発明は、「エラー1又はエラー2の報知の実施中に」「ホールコンピュータにもエラー内容を伝える信号を送信する」構成を有しているから、遊技機とホールコンピュータとを接続する信号線の結線作業や、異常信号を出力されるための処理が複雑化するとともに、信号をホールコンピュータにおいて確実に記憶するという課題を内在するものである。
また、刊行物発明における「エラー内容を伝える信号」と、上記周知の技術事項における「始動口信号」とは、共に遊技機からホールコンピュータに出力される信号である点で共通するものである。

よって、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用して、エラー1とエラー2の報知とを共通の端子から、共通の出力期間にわたって所定信号を出力し、所定信号の出力期間中に新たにエラー1およびエラー2の少なくともいずれかが発生したと判定されたときに、共通の出力期間が経過し、さらに所定の非出力期間が経過した後に所定信号を出力することとし、上記相違点2?3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(3)請求人の主張について
平成30年5月16日付け意見書において、請求人は、「(5)本願発明と刊行物1、2に記載された発明との比較
本願発明と刊行物1、2に記載された発明とを比較すると、少なくとも、上記の(e),(f)の構成要素が大きく異なります。
すなわち、本願発明では、エラー判定手段によってエラーが発生したと判定されたときと、連続検出エラー判定手段によって連続検出エラーが発生したと判定されたときとで、共通の端子から共通の出力期間にわたって特定信号を出力する特定信号出力手段という上記の(e)の構成要素を備えています。一般に、遊技店においては遊技機の設置台数に比例して配線作業が煩雑になりますが、上記の(e)の構成要素を備えていることにより、複数種類のエラー(すなわちエラーと連続検出エラー)で特定信号を出力する端子が共通化されるため、配線作業が複雑化することを防ぐことができるという効果を得ることができます。また、複数種類のエラーで特定信号を出力する処理が共通化される(すなわち共通の端子から共通の出力期間にわたって出力する)ため、遊技機の処理負担を軽減することができるという効果も得ることができます。
なお、複数種類のエラーで特定信号を出力する端子や特定信号を出力する処理が共通化された構成では、複数種類のエラーが短期間に立て続けに発生したり重複して発生したりする場合に、一の種類のエラーの発生に対して特定信号を出力したときに、他の種類のエラーの発生に対して適切に特定信号の出力を行えないおそれがあるという課題が想定されます。
そこで、上記課題を解決するために、本願発明では、特定信号出力手段は、特定信号の出力期間中に新たにエラーおよび連続検出エラーの少なくともいずれかが発生したと判定されたときに、該出力期間が経過し、さらに所定の非出力期間が経過した後に特定信号を出力するという上記の(g)の構成要素を備えています。このような構成要素を備えていることにより、特定信号の出力期間中に新たにエラーおよび連続検出エラーの少なくともいずれかが発生したと判定された場合にも、もれなく適切に特定信号を出力することができるという効果を得ることができます。
すなわち、上記の(e),(f)の構成要素の相乗的な効果により、複数種類のエラーで特定信号を出力する端子や特定信号を出力する処理を共通化しながらも、同時期に発生した複数種類のエラーのそれぞれに対して適切に特定信号の出力を行えることが本願発明の大きな特徴です。」(第3頁第12行?第4頁第7行)と主張する。

しかしながら、請求人が主張する、本件補正発明が奏する効果のうち、「配線作業が複雑化することを防ぐことができるという効果」、「遊技機の処理負担を軽減することができるという効果」は、上記周知の技術事項のイが奏する効果に対応し、「もれなく適切に特定信号を出力することができるという効果」については、上記周知の技術事項のロが奏する効果に対応する。

したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

(4)小括
本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、刊行物2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本願発明は、刊行物発明、刊行物2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-17 
結審通知日 2018-07-24 
審決日 2018-08-06 
出願番号 特願2016-19490(P2016-19490)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 川崎 優
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 眞野 修二  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 井伊 正幸  
代理人 塩川 誠人  

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