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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1344553
審判番号 不服2018-2591  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-23 
確定日 2018-09-27 
事件の表示 特願2016-241464号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 74409号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月25日に出願した特願2014-90932号の一部を平成28年12月13日に新たな特許出願(特願2016-241464号)としたものであって、平成29年2月9日に手続補正書が提出され、同年7月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年2月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年2月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年2月23日付け手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技者により操作される複数のストップスイッチと、
前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む役抽選結果を選出する役抽選手段と、
前記有利操作順序を報知可能な報知可能状態にするか否かを、前記役抽選手段の役抽選結果に基づいて決定する状態決定プログラムを少なくとも記憶した状態決定プログラム記憶手段と、
前記状態決定プログラムを実行する状態決定プログラム実行手段と、
遊技者にとって有利となる演出である有利演出の演出内容を決定する演出内容決定プログラムを少なくとも記憶した演出内容決定プログラム記憶手段と、
前記演出内容決定プログラムを実行する演出内容決定プログラム実行手段と、
前記状態決定プログラム記憶手段に対するアクセスを制限するアクセス制限手段と、を備えた遊技機であって、
前記状態決定プログラム実行手段は、
前記報知可能状態にすると決定すると前記報知可能状態であることを特定可能な状態情報を所定記憶手段に記憶することにより前記報知可能状態に制御する状態制御手段と、
前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段とを備え、
前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報であり、
前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記有利演出の演出内容として決定し、
前記アクセス制限手段は、前記所定記憶手段に対するアクセスをも制限する、遊技機。」とあったものを、

「遊技者により操作される複数のストップスイッチと、
前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む役抽選結果を選出する役抽選手段と、
前記有利操作順序を報知可能な報知可能状態にするか否かを、前記役抽選手段の役抽選結果に基づいて決定する状態決定プログラムを少なくとも記憶した状態決定プログラム記憶手段と、
前記状態決定プログラムを実行する状態決定プログラム実行手段と、
遊技者にとって有利となる演出である有利演出の演出内容を決定する演出内容決定プログラムを少なくとも記憶した演出内容決定プログラム記憶手段と、
前記演出内容決定プログラムを実行する演出内容決定プログラム実行手段と、
前記状態決定プログラム記憶手段に対するアクセスを制限するアクセス制限手段と、を備えた遊技機であって、
前記状態決定プログラム実行手段は、
前記報知可能状態にすると決定すると前記報知可能状態であることを特定可能な状態情報を所定記憶手段に記憶することにより前記報知可能状態に制御する状態制御手段と、
前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定すると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段とを備え、
前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報であり、
前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であり、
前記アクセス制限手段は、前記所定記憶手段に対するアクセスをも制限する、遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項ア及びイからなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「状態決定プログラム実行手段」が「前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定すると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段」「を備え」るとする補正。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「演出内容決定プログラム実行手段」が「前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であ」るとする補正。

2 本件補正の目的
(1)上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0190】、図16等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「演出契機情報を出力する」のが「前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出される」だけでなく「前記有利演出を実行する旨を決定する」ことによるものであることに限定するものである。

(2)上記1(2)イの補正は、当初明細書等の【0235】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1における「有利演出の演出内容」を「演出内容決定プログラム実行手段」が「決定」するのが、「前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したとき」に限定し、同じく本件補正前の請求項1における「演出内容決定プログラム実行手段」が「決定」する「有利演出の演出内容」が、「前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている」ものに限定し、同じく本件補正前の請求項1における「演出内容決定プログラム実行手段」が、「前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であ」るものに限定するものである。

(3)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア及びイの補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア及びイの補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしG-1は、分説するため合議体が付した。

「A 遊技者により操作される複数のストップスイッチと、
B 前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む役抽選結果を選出する役抽選手段と、
C 前記有利操作順序を報知可能な報知可能状態にするか否かを、前記役抽選手段の役抽選結果に基づいて決定する状態決定プログラムを少なくとも記憶した状態決定プログラム記憶手段と、
D 前記状態決定プログラムを実行する状態決定プログラム実行手段と、
E 遊技者にとって有利となる演出である有利演出の演出内容を決定する演出内容決定プログラムを少なくとも記憶した演出内容決定プログラム記憶手段と、
F 前記演出内容決定プログラムを実行する演出内容決定プログラム実行手段と、
G 前記状態決定プログラム記憶手段に対するアクセスを制限するアクセス制限手段と、を備えた遊技機であって、
D-1 前記状態決定プログラム実行手段は、
D-1-1 前記報知可能状態にすると決定すると前記報知可能状態であることを特定可能な状態情報を所定記憶手段に記憶することにより前記報知可能状態に制御する状態制御手段と、
D-1-2 前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定すると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段とを備え、
H 前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報であり、
E-1 前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であり、
G-1 前記アクセス制限手段は、前記所定記憶手段に対するアクセスをも制限する、遊技機。」

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用例1として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2008-237240号公報(以下、同じく「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
記憶手段に記憶された処理手順に従って、遊技や演出の進行を実行する遊技機に関する。
【背景技術】
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の技術では、ROMが交換されたことを容易に発見したり、ROMの交換を困難にしようとするものではあったが、いずれのものも、一旦、ROMを取り外すことができれば、ROMに記憶されているプログラムを解析することによって、不正なROMを作ることは容易であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仮に、ROMが取り外すことができたとしても、ROMに記憶されているプログラムやデータの解析を困難にして、不正行為を断念させたり、解析に多くの時間を要するようにしたりすることによって、不正行為を抑止できる遊技機を提供することにある。
以上のような目的を達成するために、本発明においては、演出制御用データとして占められる記憶領域に、演出制御手段の動作状態の検査処理を実行する検査プログラムを配置する。
【0007】
具体的には、本発明に係る遊技機は、
遊技媒体を用いて遊技が行われる遊技機であって、
前記遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
前記遊技の進行に基づいて行われる演出を制御する演出制御手段と、を含み、
前記演出制御手段は、
前記演出を進めるための演出制御用プログラムと、
前記演出制御用プログラムによる処理が実行されたときに読み出され、前記演出の内容に対応したデータが定められた演出制御用データと、が記憶される演出用記憶手段を含み、
前記演出制御用プログラムは、
前記演出用記憶手段に実行可能に配置されると共に、
起動されたときに前記演出制御手段を初期化する初期化処理と、
前記初期化処理を終えた後、少なくとも1回繰り返して前記演出の演出制御処理を含む処理を実行する通常処理と、を含み、
前記演出制御用データとして占められる前記演出用記憶手段の記憶領域には、前記演出制御手段の動作状態の検査処理を実行する検査プログラムが実行可能に配置され、
前記初期化処理は、前記検査処理を実行すべきことを示す検査要求情報を設定する検査要求設定処理を含み、
前記演出制御手段は、前記初期化処理を実行したときに、前記検査要求情報が設定されていた場合には、前記通常処理を実行するときに、前記検査プログラムが記憶されている領域に処理を移して、前記検査処理を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る遊技機は、遊技制御手段と演出制御手段とを含む。遊技制御手段は、遊技の進行を制御する。例えば、遊技制御手段は、いわゆるメイン制御手段にするものが好ましい。演出制御手段は、遊技の進行に基づいて行われる演出を制御する。例えば、この演出制御手段は、いわゆるサブ制御手段にするものが好ましい。また、演出制御手段は、遊技制御手段に電気的に接続され、遊技制御手段から演出制御手段に送信された情報に基づいて遊技の進行に応じた演出を決定するものが好ましい。
・・・略・・・
【0012】
上述した演出用記憶手段の記憶領域には、演出制御用データとして占められる記憶領域がある。この記憶領域には、検査プログラムが実行可能に配置されている。検査プログラムは、演出制御手段の動作状態の検査処理を実行するためのものである。このように、演出制御用データとして占められる記憶領域に、検査プログラムを配置する構成にすることで、演出用記憶手段の内容が解析されても、検査プログラムが存在していないように判断させたり、検査プログラムの存在や場所を特定しにくくしたりすることができる。」
(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。以下に示す実施例では、遊技機としてスロットマシンの場合を示したが、パチンコ遊技やアレンジボール遊技機等の他の遊技であってもよい。
【0025】
<<スロットマシン10の構成>>
図1は、本実施形態に係るスロットマシン10の前面を示す正面図である。また、図2は、スロットマシン10の内部構造を示す図である。
・・・略・・・
【0071】
<<スロットマシン10の機能>>
図3は、スロットマシン10における主要な制御機能の概略を示す機能ブロック図である。図3に示すように、スロットマシン10は、主に、操作手段500と、遊技媒体数設定手段600と、メイン制御手段100と、図柄表示手段400と、サブ制御手段200と、演出手段300とを含む。
【0072】
<操作手段500>
操作手段500は、遊技者によって操作されるもので、操作されたことを示す信号を後述するメイン制御手段100に遊技者の操作に基づいて発する。操作手段500は、スタートスイッチ42と、ストップスイッチ44a?44cと、を含むものが好ましい。スタートスイッチ42は、遊技者によって操作されたときに、操作されたことを示す信号を後述するメイン制御手段100に発する。また、ストップスイッチ44a?44cの各々も、遊技者によって操作されたときに、操作されたことを示す信号をメイン制御手段100に発する。
【0073】
上述したように、スタートスイッチ42からメイン制御手段100に発せられた信号によって、3つのリール30L、30C及び30Rの回転が始まり、上述した単位遊技の開始の契機が定められる。このスタートスイッチ42からメイン制御手段100に発せられる信号を始動信号と称する。
【0074】
また、ストップスイッチ44a?44cの各々からメイン制御手段100に発せられた信号によって、3つのリール30L、30C及び30Rのうち対応したリールが停止する。3つのストップスイッチ44a?44cの全てが操作されて、3つのリール30L、30C及び30Rの全てが停止したことに基づいて、単位遊技の終了の契機が定められる。このストップスイッチ44a?44cの各々からメイン制御手段100に発せられる信号を停止信号と称する。このように、上述した始動信号が発せられたことに基づいて単位遊技が開始され、最後に停止させるリールに対応したすトップスイッチから停止信号が発せられたことに基づいて単位遊技が終了する。
・・・略・・・
【0078】
<メイン制御手段100(遊技制御手段)>
メイン制御手段100には、上述した操作手段500や遊技媒体数設定手段600や図柄表示手段400のほか、サブ制御手段200が電気的に接続されている。メイン制御手段100は、遊技の進行等の遊技全体を制御する。このメイン制御手段100は、上述したメイン制御基板32からなるのが好ましい。
【0079】
上述したように、メイン制御手段100には操作手段500が電気的に接続されている。操作手段500のスタートスイッチ42からは、メイン制御手段100に始動信号が発せられる。これにより、スタートスイッチ42が遊技者によって操作されたことを検出することができる。操作手段500のストップスイッチ44a?44cの各々からは、メイン制御手段100に停止信号が発せられる。これにより、ストップスイッチ44a?44cの各々から発せられた停止信号の順番やタイミングを検出することができる。
【0080】
また、メイン制御手段100には遊技媒体数設定手段600が電気的に接続されている。遊技媒体数設定手段600の1ベットスイッチ62、2ベットスイッチ64及び最大ベットスイッチ66の各々からは、メイン制御手段100にベット信号が発せられる。発せられたベット信号を検出することによって、賭けの対象とするメダルの枚数や、有効ラインの設定の制御をする。
【0081】
メイン制御手段100は、役抽選手段120と、リール駆動制御手段130と、図柄検出手段150とを含む。
【0082】
<役抽選手段120(役抽選手段)>
役抽選手段120は、予め定められている種類の役の抽選を行う。役には、上述したように、例えば、小役や、再遊技役や、特別役等の種類がある。このように、役抽選手段120の役抽選処理によって、少なくとも1つの種類の役が定められることを、「当り」と称し、いずれの種類の役も定められないことを、「外れ」と称する。
【0083】
役抽選手段120は、例えば、乱数発生手段122と、乱数抽出手段124と、乱数判定手段126とを含む。乱数発生手段122は、役抽選処理用の乱数(ハードウェア乱数等)を発生させる。乱数抽出手段124は、乱数発生手段122によって発せられた乱数を抽出する。乱数判定手段126は、乱数抽出手段124が抽出した乱数値に基づいて、役の当選の有無及び当選役を判定する。この役抽選手段120によって、「役抽選手段」が構成され、「役抽選処理」が行われる。
【0084】
「役抽選処理」は、遊技についての「当り」又は「外れ」を定める抽選処理である。具体的には、後述する図4のステップS13において実行される。
・・・略・・・
【0128】
<サブ制御手段200(演出制御手段)>
上述したように、メイン制御手段100には、サブ制御手段200が電気的に接続されており、メイン制御手段100から発せられた各種の信号や情報は、サブ制御手段200に供給される。
【0129】
メイン制御手段100から発せられる各種の信号には、役抽選手段120による役抽選処理の結果を示す信号や、ストップスイッチ44a、44b又は44cが操作されたことを示す信号等がある。これらの信号は、後述する図4のフローチャートのステップS14やS17の処理で、メイン制御手段100から送信される。
【0130】
サブ制御手段200は、これらの信号を受信して、後述する演出手段300で行う演出の制御をする。演出は、単位遊技に関する情報を報知するためのものである。特に、サブ制御手段200(演出制御手段)は、遊技の進行に基づいて行われる演出を制御する。
【0131】
サブ制御手段200は、上述したサブ制御基板52からなるのが好ましい。サブ制御手段200は、演出用記憶手段220と情報送信手段270とを含む。
【0132】
<演出用記憶手段220>
サブ制御手段200(演出制御手段)は、演出用記憶手段220を含む。演出用記憶手段220は、データを容易に書き込んだり変更したりできないリードオンリーメモリ(ROM)であるものが好ましい。不正行為をより的確に防止することができるからである。
【0133】
演出用記憶手段220には、演出制御用プログラムと演出制御用データとが記憶される。例えば、図9に示すように、演出用記憶手段220の所定の領域には、演出制御用プログラムが配置され、演出制御用プログラムが配置された領域とは異なる領域に、演出制御用データが配置される。この図9は、演出用記憶手段220の記憶領域の概略を示す図である。演出制御用プログラムは、演出を進めるためのプログラムである。演出制御用データは、演出制御用プログラムによる処理が実行されたときに読み出されるデータであって、演出の内容に対応したデータが定められたデータである。
【0134】
例えば、後述する画像表示装置34で、各種の画像や動画を表示することによって演出を行うものの場合には、画像表示装置34に表示すべき画像の内容に対応した画像データや動画データが、演出制御用データとして演出制御用データに記憶される。また、後述するランプ38の点灯や点滅によって演出を行うものの場合には、点灯や点滅のパターンのデータが演出制御用データとして演出制御用データに記憶される。さらに、後述するスピーカ36で各種の効果音や音楽などの音声によって演出を行うものの場合には、効果音や音楽などの音声データが演出制御用データとして演出制御用データに記憶される。
【0135】
上述した演出制御用プログラムは、演出用記憶手段220に実行可能に配置される。すなわち、演出制御用プログラムは、演出用記憶手段220に単に記憶されているのではなく、例えば、演出制御用プログラムが、演出用記憶手段220に実行可能に展開されて記憶されている。
【0136】
さらに、演出制御用プログラムは、初期化処理と通常処理とを実行することができる。初期化処理は、遊技機が起動されたときに演出制御手段を初期化するための処理である。また、通常処理は、上述した初期化処理を終えた後に実行される処理であって、少なくとも1回繰り返して実行される処理である。この通常処理には、演出の演出制御処理が含まれる。
【0137】
上述した演出用記憶手段220の記憶領域には、図9に示すように、演出制御用データとして占められる記憶領域(図9に示す演出制御用データ領域)がある。この演出制御用データとして占められる記憶領域には、演出制御用データと検査プログラムとが配置されている。検査プログラムは、演出用記憶手段220に実行可能に配置されている。図9に示した例では、検査プログラムは、演出制御用データと分離して、演出制御用データよりも上位に配置されている。検査プログラムは、演出制御手段の動作状態の検査処理を実行するためのものである。一般的に、演出用記憶手段220の記憶領域では、演出制御用プログラムと演出制御用データとは、分離して配置される。このため、演出制御用データとして占められる記憶領域に、検査プログラムを配置する構成にすることで、演出用記憶手段220の内容が解析されても、検査プログラムが存在していないように判断させたり、検査プログラムの存在や場所を特定しにくくしたりすることができる。
【0138】
上述した初期化処理は、検査要求情報を設定する検査要求設定処理を含む。この検査要求情報は、検査処理を実行すべきことを示す情報である。このようにすることで、初期化処理を実行する時点では、検査要求情報を設定するだけで、具体的な検査処理は実行されないので、演出用記憶手段220の内容が解析されても、演出用のデータを処理しているのみで、検査処理が存在しないのではないかと思わせることができる。
【0139】
サブ制御手段200は、上述した通常処理を実行するときに、検査要求情報が設定されていた場合のみに、検査プログラムが記憶されている領域に処理を移して検査処理を実行する。すなわち、上述した初期化処理が実行されたときに、検査要求情報が設定された場合に、検査処理を実行し、検査要求情報が設定されていない場合には、検査処理を実行しない。
【0140】
このように、通常処理が実行されたときに、常に、検査処理が実行されるわけではないので、検査処理が存在するか否かの解析を困難にすることができる。また、上述したように、検査処理のための検査プログラムは、演出制御用データとして占められる記憶領域に配置されているので、検査プログラムが存在していないように思わせたり、検査プログラムが存在を確認しにくくしたりすることができる。
【0141】
<情報送信手段270>
情報送信手段270は、演出に関する情報を、演出手段300に送信する。演出が決定されたときには、演出手段300で行う演出に関する情報、例えば画像データ等が演出手段300に送信される。一方、演出をしないと決定されたときには、演出に関する情報は、演出手段300に送信されない。」
(ウ)「【0176】
また、上述した実施例は、メイン制御手段100に設けられた記憶手段ではなく、サブ制御手段200に設けられた演出用記憶手段220に記憶された内容を解析しにくくすることによって、不正行為を断念させたり、解析に多くの時間を要するようにしたりするものである。このサブ制御手段200は、演出として、メイン制御手段100の抽選処理によって当選した図柄に関する情報を遊技者に報知する、いわゆるATと称される機能を実行する場合がある。このため、演出用記憶手段220に対する不正行為として、メイン制御手段100の抽選処理の結果を常に表示させるように変更したプログラムを記憶させた記憶手段に交換されるような不正行為が想定される。」
(エ)「【図3】


(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、引用例1には、次の発明が記載されている。なお、aないしg-1については本願補正発明のAないしG-1に対応させて付与し、引用箇所の段落番号を併記した。
「a 遊技者によって操作されるストップスイッチ44a?44c(【0072】、【図3】)と、
b’ATと称される機能により、当選した図柄に関する情報を遊技者に報知される役を含み、小役や、再遊技役や、特別役等少なくとも1つの種類の役を役抽選処理によって定める役抽選手段120(【0082】、【0176】)と、
c’、e’演出の演出制御処理を実行する演出制御用プログラムが記憶される演出用記憶手段220(【0133】、【0136】)と、
d’、f’ 演出制御用プログラムを実行するサブ制御手段200(【0136】、【0139】)と、
g’サブ制御手段200に設けられた演出用記憶手段220に記憶された内容を解析しにくくするように、演出制御用データとして占められる記憶領域に配置される検査プログラム(【0140】、【0176】)と、
を備えたスロットマシン10(【0071】)。」(以下「引用発明」という。)

イ 原査定の拒絶の理由に引用例2として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-348号公報(以下、同じく「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に使用されるセキュリティチップに関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
・・・略・・・
【0008】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、内部に記録されたプログラム等の重要な情報について十分な秘匿性を備えるとともに、必要があるときは容易にこれらの情報の読み出しや書き込みができる遊技機用セキュリティチップを提供することを目的とする。」
(ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態に係る遊技機用セキュリティチップのブロック図である。同図において、中央処理装置(CPU)10は、遊技機の全体的な動作を制御する。ユーザメモリはユーザROM12及びユーザRAM14からなり、ユーザROM12の中には、パチンコなどを開発、製造する遊技機メーカが開発したユーザプログラムが格納され、ユーザRAM14には遊技動作の実行時に必要なデータが一時的に記憶される。
・・・略・・・
【0031】
ただし、セキュリティチップの性格上、検査機関による検査の必要性から全くユーザROMの読み出しが不可能とすることは問題があるので、所定の検査装置を接続し、所定の暗号コードのやり取りの後、正規の検査装置であることが認識された場合には、当該検査装置によるユーザROMの読み出しを可能する。遊技機に接続されたのが特定の検査装置かどうかという認識は、図1及び図4に示した照合用ブロック28によって行われる。この照合用ブロック28によって正規の検査装置が接続されていると認識されると、量産用チップであるか開発用チップであるかにかかわらず、当該検査装置によるユーザROMの読み出し及びバス出力を可能とする。」
(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。
「所定の検査装置を接続し、所定の暗号コードのやり取りの後、正規の検査装置であることが認識された場合には、当該検査装置による、遊技機メーカが開発したユーザプログラムが格納されたユーザROMの読み出しを可能とした、遊技機用セキュリティチップ(【0014】、【0031】)。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

ウ 原査定の拒絶の理由に引用例3として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2013-172870号公報(以下、同じく「引用例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0013】
本発明が適用されたスロットマシンの実施例を図面を用いて説明すると、本実施例のスロットマシン1は、前面が開口する筐体1aと、この筐体1aの側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。
・・・略・・・
【0036】
図4は、スロットマシン1の構成を示すブロック図である。スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御され、電源基板101によってスロットマシン1を構成する電気部品の駆動電源が生成され、各部に供給される。
・・・略・・・
【0052】
遊技制御基板40には、遊技制御用マイクロコンピュータ100、外部メモリ(SRAM)50、制御用クロック生成回路42、乱数用クロック生成回路43、スイッチ回路44、モータ駆動回路45、ソレノイド駆動回路46、LED駆動回路47が搭載されている。
・・・略・・・
【0082】
図7に示す遊技制御用マイクロコンピュータ100が備える外部バスインタフェース501は、遊技制御用マイクロコンピュータ100を構成するチップの外部バスと内部バスとのインタフェース機能や、アドレスバス、データバスおよび各制御信号の方向制御機能などを有するバスインタフェースである。例えば、外部バスインタフェース501は、遊技制御用マイクロコンピュータ100に外付けされた外部メモリや外部入出力装置などに接続され、これらの外部装置との間でアドレス信号やデータ信号、各種の制御信号などを送受信するものであればよい。この実施の形態において、外部バスインタフェース501には、内部リソースアクセス制御回路501Aが含まれている。
【0083】
内部リソースアクセス制御回路501Aは、外部バスインタフェース501を介した外部装置から遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データに対するアクセスを制御して、例えばROM506に記憶されたゲーム制御用プログラム(遊技制御処理プログラム)や固定データといった、内部データの不適切な外部読出を制限するための回路である。ここで、外部バスインタフェース501には、例えばインサーキットエミュレータ(ICE;InCircuit Emulator)といった回路解析装置が、外部装置として接続されることがある。
・・・略・・・
【0085】
他の一例として、内部リソースアクセス制御回路501Aは、ROM506における記憶データの一部または全部といった、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しが、外部バスインタフェース501に接続された外部装置から要求されたことを検出する。この読出要求を検出したときに、内部リソースアクセス制御回路501Aは、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを許可するか否かの判定を行う。例えば、ROM506における記憶データの一部または全部に暗号化処理が施されているものとする。この場合、内部リソースアクセス制御回路501Aは、外部装置からの読出要求がROM506に記憶された暗号化処理プログラムや鍵データ等に対する読出要求であれば、この読出要求を拒否して、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを禁止する。外部バスインタフェース501では、ROM506の記憶データが出力される出力ポートと、内部バスとの間にスイッチ素子を設け、内部リソースアクセス制御回路501Aが内部データの読み出しを禁止した場合には、このスイッチ素子をオフ状態とするように制御すればよい。このように、内部リソースアクセス制御回路501Aは、外部装置からの読出要求が所定の内部データ(例えばROM506の所定領域)の読み出しを要求するものであるか否かに応じて、内部データの読み出しを禁止するか許可するかを決定するようにしてもよい。
【0086】
あるいは、内部リソースアクセス制御回路501Aは、内部データの読出要求を検出したときに、所定の認証コードが外部装置から入力されたか否かを判定してもよい。この場合には、例えば内部リソースアクセス制御回路501Aの内部あるいはROM506の所定領域に、認証コードとなる所定のコードパターンが予め記憶されていればよい。そして、外部装置から認証コードが入力されたときには、この認証コードを内部記憶された認証コードと比較して、一致すれば読出要求を受容して、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを許可する。これに対して、外部装置から入力された認証コードが内部記憶された認証コードと一致しない場合には、読出要求を拒否して、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを禁止する。このように、内部リソースアクセス制御回路501Aは、外部装置から入力された認証コードが内部記憶された認証コードと一致するか否かに応じて、内部データの読み出しを禁止するか許可するかを決定するようにしてもよい。これにより、検査機関などが予め知得した正しい認証コードを用いて、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データを損なうことなく読み出すことができ、内部データの正当性を適切に検査することなどが可能になる。」
(イ)上記(ア)からみて、引用例3には、次の事項が記載されている。
「遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御されている、スロットマシン1において(【0036】)、
遊技制御基板40には、遊技制御用マイクロコンピュータ100が搭載され(【0052】)、該遊技制御用マイクロコンピュータ100は外部バスインタフェース501を備え、該外部バスインタフェース501には、内部リソースアクセス制御回路501Aが含まれているものであり(【0082】)、
内部リソースアクセス制御回路501Aは、内部データの読出要求を検出したときに、所定の認証コードが外部装置から入力されたか否かを判定するものであり、外部装置から認証コードが入力されたときには、この認証コードを内部記憶された認証コードと比較して、一致すれば読出要求を受容して、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを許可すし、これに対して、外部装置から入力された認証コードが内部記憶された認証コードと一致しない場合には、読出要求を拒否して、遊技制御用マイクロコンピュータ100の内部データの読み出しを禁止する(【0086】)、
スロットマシン1。」(以下「引用例3の記載事項」という。)

エ 原査定の拒絶の理由に引用例4として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2012-115537号公報(以下、同じく「引用例4」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0026】
次に、図4を用いて、スロットマシン100の制御部の回路構成について詳細に説明する。なお、図4は制御部の回路ブロック図を示した図である。
【0027】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。
・・・略・・・
【0070】
なお、AT遊技状態と非AT遊技状態があることで出玉の波を創出できるという意味がある。すなわち、非AT遊技状態である場合はRT1に移行させる報知を行わず、万が一RT1に移行した場合であってもパンクリプレイを表示させない報知を行わず、さらに小役3?小役8やチェリー、スイカが当選した場合にそれぞれの役が当選したことまたはそれぞれの役に対応する操作手順を報知しない。その一方で、AT遊技状態となった場合にはRT1に移行する報知を行い、さらにRT1からRT0に移行しないようにパンクリプレイの図柄組み合わせの表示を避ける停止操作順序の報知を行い、小役3?小役8やチェリー、スイカが当選した場合にそれぞれの役が当選したことまたはそれぞれの役に対応する操作手順を報知する。これらのことから有利な状態と不利な状態の差を大きくし、出玉の波を創出することができるように設けられている。さらに、AT遊技状態と非AT遊技状態の切り替えは第1副制御部400が行うため、主制御部300が行う抽選プログラムの範囲内で様々な出玉管理を行うことができるというメリットがある。なお、AT遊技状態の場合は非AT遊技状態と比べて操作条件報知を行う確率が高いようにしてもよいし、AT遊技状態の場合は操作条件報知を常に行うようにしてもよい。
・・・略・・・
【0138】
ステップS408では、ステップS405で読み出した演出データの中に第2副制御部500に送信する制御コマンドがある場合には、この制御コマンドを出力する設定を行い、ステップS402へ戻る。なお、第2副制御部500に送信する制御コマンドには、第1副制御部400が操作条件報知(押し順報知など)を実行すると決定したことに関する情報(より詳細に表現すると、操作条件報知の表示画像の表示コマンド)が含まれ、後述するが第2副制御部500はこの情報に基づいて演出画像表示装置157を用いて操作条件報知を実行する。これにより、演出画像表示装置157は本発明にいう報知装置の一部を構成し、第2副制御部500は本発明にいう報知手段の一部を構成する。
・・・略・・・
【0159】
ステップS809ではAT遊技状態を設定するか否かの抽選を行い、当選した場合はAT遊技状態に設定する。なお、本実施形態では抽選によりAT遊技状態を設定するようにしたが、BB終了後の所定のゲーム数は必ずAT遊技状態になるようにしてもよい。
・・・略・・・
【0161】
<第2副制御部500の処理>
次に図15を用いて、第2副制御部500の処理について説明する。図15は第2副制御部500の処理のフローチャートである。同図(a)は、第2副制御部500のCPU504が実行するメイン処理のフローチャートである。同図(b)は、第2副制御部500のコマンド受信割込処理のフローチャートである。同図(c)は、第2副制御部500のタイマ割込処理のフローチャートである。同図(d)は、第2副制御部500の画像制御処理のフローチャートである。
【0162】
まず、同図(a)のステップS901では、各種の初期設定を行う。電源投入が行われると、まずステップS901で初期化処理が実行される。この初期化処理では、入出力ポート初期設定や、RAM508内の記憶領域の初期化処理等を行う。
【0163】
ステップS903では、タイマ変数が10以上か否かを判定し、タイマ変数が10となるまでこの処理を繰り返し、タイマ変数が10以上となったときには、ステップS905の処理に移行する。
【0164】
ステップS905では、タイマ変数に0を代入する。
【0165】
ステップS907では、コマンド処理を行う。第2副制御部500のCPU504は、第1副制御部400のCPU404からコマンドを受信したか否かを判別する。
【0166】
ステップS909では、演出制御処理を行う。例えば、ステップS907で新たなコマンドがあった場合には、このコマンドに対応する演出データをROM506から読み出す等の処理を行い、演出データの更新が必要な場合には演出データの更新処理を行う。
【0167】
ステップS911では、ステップS909で読み出した演出データの中にシャッタ制御の命令がある場合には、この命令に対応するシャッタ制御を行う。
【0168】
ステップS913では、ステップS909読み出した演出データの中に画像制御の命令がある場合には、この命令に対応する画像制御を行い(詳細は後述する)、ステップS903へ戻る。たとえば、第1副制御部400から操作条件報知に関する画像制御命令(画像表示コマンド)があった場合には、この制御命令に基づいて画像による操作条件報知を実行する。
【0169】
次に、同図(b)を用いて、第2副制御部500のコマンド受信割込処理について説明する。このコマンド受信割込処理は、第2副制御部500が、第1副制御部400が出力するストローブ信号を検出した場合に実行する処理である。コマンド受信割込処理のステップS1001では、第1副制御部400が出力したコマンドを未処理コマンドとしてRAM508に設けたコマンド記憶領域に記憶する。
【0170】
次に、同図(c)を用いて、第2副制御部500のCPU504によって実行する第2副制御部タイマ割込処理について説明する。第2副制御部500は、所定の周期(本実施形態では2msに1回)でタイマ割込を発生するハードウェアタイマを備えており、このタイマ割込を契機として、タイマ割込処理を所定の周期で実行する。
【0171】
ステップS1101では同図(a)のステップS903で参照されるタイマ変数をインクリメントする。
【0172】
ステップS1103では各種の更新処理を行う。
【0173】
次に、同図(d)を用いて、第2副制御部500のメイン処理におけるステップS913の画像制御処理について説明する。同図は、画像制御処理の流れを示すフローチャートを示した図である。
【0174】
ステップS1201では、画像データの転送指示を行う。ここでは、CPU504は、まず、VRAM536の表示領域Aと表示領域Bの描画領域の指定をスワップする。これにより、描画領域に指定されていない表示領域に記憶された1フレームの画像が演出画像表示装置157に表示される。次に、CPU504は、VDP534のアトリビュートレジスタに、位置情報等テーブルに基づいてROM座標(ROM506の転送元アドレス)、VRAM座標(VRAM536の転送先アドレス)などを設定した後、ROM506からVRAM536への画像データの転送開始を指示する命令を設定する。VDP534は、アトリビュートレジスタに設定された命令に基づいて画像データをROM506からVRAM536に転送する。その後、VDP536は、転送終了割込信号をCPU504に対して出力する。
【0175】
ステップS1203では、VDP534からの転送終了割込信号が入力されたか否かを判定し、転送終了割込信号が入力された場合はステップS1205に進み、そうでない場合は転送終了割込信号が入力されるのを待つ。ステップS1205では、演出シナリオ構成テーブルおよびアトリビュートデータなどに基づいて、パラメータ設定を行う。ここでは、CPU504は、ステップS1201でVRAM536に転送した画像データに基づいてVRAM536の表示領域AまたはBに表示画像を形成するために、表示画像を構成する画像データの情報(VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標(配置座標)など)をVDP534に指示する。VDP534はアトリビュートレジスタに記憶された命令に基づいてアトリビュートに従ったパラメータ設定を行う。
【0176】
ステップS1207では、描画指示を行う。この描画指示では、CPU504は、VDP534に画像の描画開始を指示する。VDP534は、CPU504の指示に従ってフレームバッファにおける画像描画を開始する。
【0177】
ステップS1209では、画像の描画終了に基づくVDP534からの生成終了割込み信号が入力されたか否かを判定し、生成終了割込み信号が入力された場合はステップS1211に進み、そうでない場合は生成終了割込み信号が入力されるのを待つ。ステップS1211では、RAM508の所定の領域に設定され、何シーンの画像を生成したかをカウントするシーン表示カウンタをインクリメント(+1)して処理を終了する。」
(イ)上記(ア)からみて、引用例4には、次の事項が記載されている。
「遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている制御部を備えるスロットマシン100(【0026】)であって、
AT遊技状態を設定するか否かの抽選を行い、当選した場合に設定されるAT遊技状態と非AT遊技状態があり、非AT遊技状態である場合は小役3?小役8やチェリー、スイカが当選した場合にそれぞれの役が当選したことまたはそれぞれの役に対応する操作手順を報知せず、AT遊技状態となった場合には、小役3?小役8やチェリー、スイカが当選した場合にそれぞれの役が当選したことまたはそれぞれの役に対応する操作手順を報知するものであり(【0070】、【0159】))、
第2副制御部500に送信する制御コマンドには、第1副制御部400が操作条件報知(押し順報知など)を実行すると決定したことに関する情報、すなわち、操作条件報知の表示画像の表示コマンドが含まれ、第2副制御部500はこの情報に基づいて演出画像表示装置157を用いて操作条件報知を実行し(【0138】、【0168】)、
第2副制御部500のCPU504は、表示画像を構成する画像データの情報(VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標(配置座標)など)をVDP534に指示し、VDP534は、CPU504の指示に従ってフレームバッファにおける画像描画を開始する(【0170】、【0175】、【0176】)、
スロットマシン100。」(以下「引用例4の記載事項」という。)

オ 原査定の拒絶の理由に引用例5として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2013-66569号公報(以下、同じく「引用例5」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0044】
次に、図3を用いて、スロットマシン100の制御部の制御部の回路構成について詳細に説明する。なお、図3は制御部の回路ブロック図である。
【0045】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンドを受信し、コマンドに応じた処理を実行する副制御部(第1副制御部400、第2副制御部500)と、によって構成されている。本実施形態の場合、副制御部は、主制御部300からコマンドを受信して演出の制御に関わる処理を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。
・・・略・・・
【0115】
AT遊技状態と非AT遊技状態があることで出玉の波を創出できるという意味がある。例えば、第1副制御部400は、非AT遊技状態である場合、RT0であれば再遊技役2に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止操作する停止操作順序の報知を行わない。RT1であれば再遊技役3に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行わず、かつ、再遊技役4に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示しない停止操作順序の報知を行わない。RT2であれば、小役3aが内部当選した場合に中リール中段図柄にベル図柄に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行わない。
【0116】
AT遊技状態となった場合には、RT0であれば再遊技役2に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行い、RT1であれば再遊技役3に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行い、かつ、再遊技役4に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示しない停止操作順序の報知を行う。RT2であれば小役3aが内部当選した場合に中リール中段図柄にベル図柄が停止表示する停止操作順序の報知を行う。
【0117】
これらのことから有利な状態と不利な状態の差を大きくし、出玉の波を創出することができるように設けられている。さらに、AT遊技状態と非AT遊技状態の切り換えは第1副制御部400が行うため、主制御部300が行う抽選プログラムの範囲内で様々な出玉管理を行うことができるというメリットがある。なお、AT遊技状態の場合は非AT遊技状態と比べて操作条件報知を行う確率が高いようにしてもよいし、AT遊技状態の場合は、操作条件報知を常に行うようにしてもよい。
・・・略・・・
【0174】
<第2副制御部の処理>
次に図15を用いて、第2副制御部500の処理について説明する。図15は第2副制御部500の処理のフローチャートである。同図(a)は、第2副制御部500のCPU504が実行するメイン処理のフローチャートである。同図(b)は、第2副制御部500のコマンド受信割込処理のフローチャートである。同図(c)は、第2副制御部500のタイマ割込処理のフローチャートである。同図(d)は、第2副制御部500の画像制御処理のフローチャートである。
【0175】
まず、同図(a)のS71では、各種の初期設定を行う。電源投入が行われると、まずS1501で初期化処理が実行される。この初期化処理では、入出力ポート初期設定や、RAM508内の記憶領域の初期化処理等を行う。
【0176】
S72では、タイマ変数が10以上か否かを判定し、タイマ変数が10となるまでこの処理を繰り返し、タイマ変数が10以上となったときには、S73の処理に移行する。
【0177】
S73では、タイマ変数に0を代入する。S74では、コマンド処理を行う。第2副制御部500のCPU504は、第1副制御部400のCPU404からコマンドを受信したか否かを判別する。S75では、演出制御処理を行う。例えば、S74で新たなコマンドがあった場合には、このコマンドに対応する演出データをROM506から読み出す等の処理を行い、演出データの更新が必要な場合には演出データの更新処理を行う。
【0178】
S76では、S74で読み出した演出データの中にシャッタ制御の命令がある場合には、この命令に対応するシャッタ制御を行う。S77では、S74で読み出した演出データの中に画像制御の命令がある場合には、この命令に対応する画像制御を行い(詳細は後述する)、S7へ戻る。たとえば、第1副制御部400から操作条件報知に関する画像制御命令(画像表示コマンド)があった場合には、この制御命令に基づいて画像による示唆報知または操作条件報知を実行する。以上により一単位のメイン処理が終了する。
【0179】
次に、同図(b)を用いて、第2副制御部500のコマンド受信割込処理について説明する。このコマンド受信割込処理は、第2副制御部500が、第1副制御部400が出力するストローブ信号を検出した場合に実行する処理である。コマンド受信割込処理のS81では、第1副制御部400が出力したコマンドを未処理コマンドとしてRAM508に設けたコマンド記憶領域に記憶する。以上により一単位のコマンド受信割込処理が終了する。
【0180】
次に、同図(c)を用いて、第2副制御部500のCPU504によって実行する第2副制御部タイマ割込処理について説明する。第2副制御部500は、所定の周期(本実施形態では2msに1回)でタイマ割込を発生するハードウェアタイマを備えており、このタイマ割込を契機として、タイマ割込処理を所定の周期で実行する。S91では同図(a)のS72で参照されるタイマ変数をインクリメントする。S102では各種の更新処理を行う。以上により、一単位のタイマ割込み処理が終了する。
【0181】
次に、同図(d)を用いて、第2副制御部500のメイン処理におけるS77の画像制御処理について説明する。同図は、画像制御処理の流れを示すフローチャートを示した図である。
【0182】
S101では、画像データの転送指示を行う。ここでは、CPU504は、まず、VRAM536の表示領域Aと表示領域Bの描画領域の指定をスワップする。これにより、描画領域に指定されていない表示領域に記憶された1フレームの画像が演出画像表示装置157に表示される。次に、CPU504は、VDP534のアトリビュートレジスタに、位置情報等テーブルに基づいてROM座標(ROM506の転送元アドレス)、VRAM座標(VRAM536の転送先アドレス)などを設定した後、ROM506からVRAM536への画像データの転送開始を指示する命令を設定する。VDP534は、アトリビュートレジスタに設定された命令に基づいて画像データをROM506からVRAM536に転送する。その後、VDP536は、転送終了割込信号をCPU504に対して出力する。
【0183】
S102では、VDP534からの転送終了割込信号が入力されたか否かを判定し、転送終了割込信号が入力された場合はS103に進み、そうでない場合は転送終了割込信号が入力されるのを待つ。S103では、演出シナリオ構成テーブルおよびアトリビュートデータなどに基づいて、パラメータ設定を行う。ここでは、CPU504は、S101でVRAM536に転送した画像データに基づいてVRAM536の表示領域AまたはBに表示画像を形成するために、表示画像を構成する画像データの情報(VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標(配置座標)など)をVDP534に指示する。VDP534はアトリビュートレジスタに記憶された命令に基づいてアトリビュートに従ったパラメータ設定を行う。
【0184】
S104では、描画指示を行う。この描画指示では、CPU504は、VDP534に画像の描画開始を指示する。VDP534は、CPU504の指示に従ってフレームバッファにおける画像描画を開始する。S105では、画像の描画終了に基づくVDP534からの生成終了割込み信号が入力されたか否かを判定し、生成終了割込み信号が入力された場合はS106に進み、そうでない場合は生成終了割込み信号が入力されるのを待つ。S106では、RAM508の所定の領域に設定され、何シーンの画像を生成したかをカウントするシーン表示カウンタをインクリメント(+1)して一単位の画像制御処理を終了する。
・・・略・・・
【0204】
<演出制御処理>
次に、停止操作に関わる演出について第1副制御部400が実行する処理について説明する。図21はS45の演出制御処理の例を示すフローチャートである。
【0205】
S131では、S44のコマンド処理の対象コマンドが内部当選コマンドか否かを判定する。該当する場合はS132へ進み、該当しない場合はS133へ進む。S132では内部当選コマンド受付時処理を行う。詳細は後述する。
【0206】
S133ではS44のコマンド処理の対象コマンドが停止コマンドか否かを判定する。該当する場合はS134へ進み、該当しない場合はS135へ進む。S134では停止コマンド受付時処理を行う。詳細は後述する。S135ではその他の処理を行う。以上により一単位の演出制御処理が終了する。
【0207】
<内部当選コマンド受付時処理>
図22はS132の内部当選コマンド受付時処理のフローチャートである。S141では、RAM408の所定のエリアに設定したATフラグを参照して、現在の遊技がAT遊技状態の遊技か否かを判定する。該当する場合はS142へ進み、該当しない場合はS143へ進む。S142では報知用演出データの読み出し処理を行う。詳細は後述する。S143ではAT設定処理を行う。詳細は後述する。S144ではAT抽選処理を行う。詳細は後述する。
・・・略・・・
【0212】
<AT設定処理>
図24はS143のAT設定処理のフローチャートである。S161では残AT回数があるか否かを判定する。残AT回数は、遊技者が遊技可能なAT遊技の回数である。残AT回数がある場合はS162へ進み、無い場合は一単位の処理を終了する。S162では、ペナルティゲーム数(自然数)が1以上設定されているか否かを判定する。該当する場合はATフラグをOFF(非AT遊技状態を示す)にして一単位の処理を終了する。この処理により、残AT回数があっても、ペナルティ期間にはAT遊技状態にはならないことになる。該当しない場合はS163へ進み、ATフラグをON(AT遊技状態を示す)にする。また、残AT回数を一つ減算する。以上により一単位の処理を終了する。
【0213】
<AT抽選処理>
図25はS144のAT抽選処理のフローチャートである。S171ではペナルティゲーム数が1以上設定されているか否かを判定する。該当する場合はS175へ進み、該当しない場合は、ペナルティ期間ではないのでAT遊技状態の設定に関わるS172へ進む。
【0214】
S172では小役1又は小役2に内部当選したか否かを判定する。該当する場合は、AT遊技状態を新規に或いは継続的に設定すべく、S173へ進む。該当しない場合は一単位の処理を終了する。S173ではAT遊技状態の遊技回数(AT回数)を設定する。ここでは抽選で設定するが、予め定めた回数であってもよい。また、0回に当選する場合を抽選に含め、0回に当選した場合は事実上、AT遊技状態が設定されない構成としてもよい。
【0215】
S174では残AT回数にS173で当選したAT回数を加算することにより、残AT回数を更新する。
【0216】
S175ではペナルティゲーム数を一つ減算する。以上により一単位の処理が終了する。本実施形態では、ペナルティ期間はAT回数の抽選を行わないように構成したが、例えば、ペナルティ期間はAT回数の当選確率が低い、或いは、当選するAT回数が少ない、
といった構成も採用可能である。」
(イ)上記(ア)からみて、引用例5には、次の事項が記載されている。「遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンドに応じて、演出の制御に関わる処理を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている制御部を備えるスロットマシン100(【0045】)であって、
第1副制御部400は、抽選によりAT遊技状態と非AT遊技状態との切り替えを行い、非AT遊技状態である場合、RT0であれば再遊技役2に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止操作する停止操作順序の報知を行わず、RT1であれば再遊技役3に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行わず、かつ、再遊技役4に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示しない停止操作順序の報知を行わず、AT遊技状態となった場合には、RT0であれば再遊技役2に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行い、RT1であれば再遊技役3に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示する停止操作順序の報知を行い、かつ、再遊技役4に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に停止表示しない停止操作順序の報知を行う。RT2であれば小役3aが内部当選した場合に中リール中段図柄にベル図柄が停止表示する停止操作順序の報知を行い(【0115】、【0117】、【0207】)、
第2副制御部500のCPU504は、第1副制御部400のCPU404からコマンドを受信したか否かを判別し(【0177】)、第1副制御部400から操作条件報知に関する画像制御命令(画像表示コマンド)があった場合には、この制御命令に基づいて画像による示唆報知または操作条件報知を実行し、表示画像を構成する画像データの情報(VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標(配置座標)など)をVDP534に描画開始を指示する(【0178】、【0183】、【0184】)、
スロットマシン100。」(以下「引用例5の記載事項」という。)

カ 原査定の拒絶の理由に引用例6として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2013-94479号公報(以下、同じく「引用例6」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
「【0029】
以下、本実施形態の遊技機を構成する回胴式遊技機について説明する。
【0030】
<1.機械的構成>
図1は、本実施形態の回胴式遊技機の外観を示す正面側の斜視図である。図1に示すように、回胴式遊技機は、遊技に供する各種遊技部品を収納するための遊技機筐体1と、遊技機筐体1の前面側に開閉自在に取り付けられた前扉2とを備える。
【0031】
前扉2には、そのほぼ中央に回胴視認部3が設けられており、その上側に液晶画面視認部4が設けられている。
・・・略・・・
【0039】
液晶画面視認部4は、前扉2の裏側に装着された画像表示装置としての液晶表示装置6(LCDユニット)の液晶画面6aに対応して、たとえば回胴視認部3よりも少し小さい矩形状に形成されている。遊技者はこの液晶画面視認部4を介して液晶画面6aを前側から視認可能となっている。
【0040】
この液晶画面6aには、遊技に伴う演出が画像により表示される。液晶表示装置6は、AT(アシストタイム)遊技状態において、当選役獲得のための操作手順等を遊技者に報知する主たる手段として働く。よって、液晶表示装置6は、本発明の演出装置に相当する。
・・・略・・・
【0064】
主制御基板400には、演出I/F基板340を介して接続された演出制御基板420と液晶制御基板460とが接続されている。演出制御基板420は、主制御基板400からの制御コマンドを受けて、スピーカ16やLED基板380の制御を中心的に司る制御基板であって、主制御基板400から送信される制御コマンドを受けて、これに関連付けられた液晶コマンドを液晶制御基板460に送信する。
【0065】
液晶制御基板460は、演出制御基板420からの液晶コマンドを受けて、液晶表示装置6を駆動制御し、演出内容に沿った画像を表示して画像による演出を実現している。この液晶制御基板460は、図示しない液晶制御CPU、液晶制御RAM、液晶制御ROM、画像ROM、ビデオRAM、画像IC等を備えている。
【0066】
液晶制御CPUは、液晶コマンドに基づいて、液晶制御ROMに記憶された画像制御プログラムに従い、液晶表示装置6に表示する演出内容を決定する。液晶制御RAMは、液晶制御CPUによる画像制御プログラムの実行の際、データ(プログラムで使用されるフラグや変数の値)を一時的に記憶する作業領域として利用される。
【0067】
画像ICは、液晶制御CPUで決定された演出に沿った画像データを画像ROMから読み出し画像を形成し、液晶表示装置6に出力する。ビデオRAMは、画像ICが画像を形成する際に発生するデータを一時的に記憶する作業領域として利用される。」

キ 原査定の拒絶の理由に引用例7として引用され、本願出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2012-249954号公報(以下、同じく「引用例7」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
「【0031】
[スロットマシンの内部的構成]
図2に示すように、本形態例のスロットマシン1は、筐体2の内部に、主制御部30と、副制御部40と、表示演出制御部50と、音声制御部60と、発光制御部70と、可動役物制御部80と、リールユニット7と、ホッパーユニット90と、を有している。
・・・略・・・
【0034】
主制御部30のCPUは、遊技制御プログラムに従って遊技処理を実行する遊技制御部31、操作検出プログラムに従って操作検出処理を実行する操作検出部32として機能する。
【0035】
遊技制御部31は、乱数発生部31aと乱数値サンプリング部31bとを有する。乱数発生部31aは、例えば0?1000の数値を順に繰り返して発生する。乱数値サンプリング部31bは、遊技が開始されるごとに、乱数発生部31aによって発生した乱数の中から1つの乱数値を抽出する。
【0036】
遊技制御部31は、スタートスイッチ20が操作されたことを契機に主制御部30に入力される遊技スタート信号に応答して、遊技処理を開始する。遊技処理において、遊技制御部31は、乱数発生部31aに乱数を発生させ、発生させた乱数を乱数値サンプリング部31bによって抽出させる。また、遊技制御部31は、メイン記憶部33に記憶されている抽選テーブルを参照し、抽出された乱数値に応じて、現在実行された遊技に対する抽選結果を上記いずれかの当選役又はハズレから選択して決定する。
【0037】
抽選結果が上記いずれかの当選役である場合、所定期間中にリールの停止図柄7dの組み合わせが予め定められた当選図柄と一致したことを条件に入賞となり、遊技制御部31は、遊技者にメダルの払い出しや、遊技者に有利な特別遊技(BBゲーム、RBゲーム)等の利益を付与する。遊技者にメダルを払い出す場合、遊技制御部31をホッパーユニット70を制御し、メダル払出口10からメダル受け皿11へメダルを払い出す。
【0038】
また、遊技制御部31は、抽選結果を示す抽選結果信号を副制御部40へ送信する。
【0039】
操作検出部32は、所定時間毎に操作検出処理を実行し、主制御部30がMAXベットボタン18から操作検出信号を受信すると、MAXベットボタン18が押圧操作されたことを示す操作検出信号を副制御部40へ送信する。また、操作検知部32は、遊技制御部31が遊技処理を開始する前の所定期間内(遊技者が1回の遊技に投入するメダルの枚数を決定するための期間内)に、操作検出信号を受信した場合にのみ、1回の遊技に投入されるメダルの枚数を3枚に決定し、遊技機内に貯留するメダルの数を減ずる。
【0040】
副制御部40は、図示しないCPUと、CPUによって実行される種々のプログラムなどを予め記憶したROMと、RAMと、を有する。また、副制御部40は、演出パターン決定部41と、操作検知部42と、特定付随演出指示部43と、サブ記憶部44と、を有する。サブ記憶部44は、上記ROM及びRAMからなり、ROMには、副制御部40のCPUによってRAMに展開されて実行される各種プログラム(演出パターン決定プログラム、操作検知プログラム、特定付随演出指示プログラムを含む)を予め記憶するサブプログラム記憶領域44aと、各抽選結果と演出パターンとが対応付けられた演出パターンテーブル45を予め記憶する演出パターンテーブル記憶領域44bと、後述する各特定演出画像と特定付随演出とが対応付けられた特定付随演出テーブル46を予め記憶する特定付随演出テーブル記憶領域44cと、が設定されている。
【0041】
演出パターンテーブル45は、図3に示すように抽選結果列と演出パターン列とからなり、例えば、当選役の「BB」に演出パターンの「歩行演出」が対応付けられている。また、当選役の「RB」に演出パターンの「水泳演出」が対応付けられている。
【0042】
特定付随演出テーブル46は、図4に示すように特定演出画像列と特定付随演出列とからなり、例えば、特定演出画像の「キャラクターが扉に入る」に特定付随演出の「開扉音の発生、ランプの点滅」が対応付けられている。また、特定演出画像の「キャラクターがジャンプし、コインを取得する」に特定付随演出として、「ジャンプ音及びコイン取得音の発生、ランプの点灯、可動役物の左回転」が対応付けられている。
【0043】
副制御部40のCPUは、演出パターン決定プログラムに従って演出パターン決定処理を実行する演出パターン決定部41、操作検知プログラムに従って操作検知処理を実行する操作検知部42、特定付随演出指示プログラムに従って特定付随演出指示処理を実行する特定付随演出指示部43として機能する。
【0044】
演出パターン決定部41は、副制御部40が主制御部30から送信された抽選結果信号を受信すると、演出パターン決定処理を開始し、サブ記憶部44に記憶されている演出パターンテーブル45を参照して、抽選結果に対応付けられた演出パターンを選択して決定する。演出パターン決定部41は、決定した演出パターンを示す演出パターン信号を表示演出制御部50、音声制御部60、発光制御部70及び可動役物制御部80へ送信する。例えば、抽選結果信号が示す抽選結果が当選役の「BB」である場合、演出パターン決定部41は、演出パターンを「歩行演出」に決定し、決定した「歩行演出」を示す演出パターン信号を表示演出制御部50、音声制御部60、発光制御部70及び可動役物制御部80へ送信する。
【0045】
操作検知部42は、所定時間毎に操作検知処理を実行し、副制御部40が主制御部30から送信された操作検出信号を受信すると、MAXベットボタン18が押圧操作されたことを示す操作検知信号(コマンド)を表示演出制御部50へ送信する。
【0046】
特定付随演出指示部43は、副制御部40が表示演出制御部50から後述する適正判定信号を受信すると、適正信号に含まれる特定演出画像を示す情報に基づきサブ記憶部44に記憶されている特定付随演出テーブル46を参照し、特定演出画像に対応付けられた特定付随演出を選択し、選択した特定付随演出の実行を指示する特定付随演出指示信号を音声制御部60、発光制御部70、可動役物制御部80へ送信する。例えば、特定演出画像が「キャラクターが扉に入る」である場合、特定付随演出指示部43は、開扉音の発生を指示する特定付随演出指示信号を音声制御部60へ送信し、また、ランプ15の点滅を指示する特定付随演出指示信号を発光制御部70へ送信する。特定演出画像が「キャラクターがジャンプし、コインを取得する」である場合、ジャンプ音及びコイン取得音の発生を指示する特定付随演出指示信号を音声制御部60へ送信し、ランプ15の点灯を指示する特定付随演出指示信号を発光制御部70へ送信し、また、可動役物14の左回転を指示する特定付随演出指示信号を可動役物制御部80へ送信する。
【0047】
表示演出制御部50は、図示しないCPUと、CPUによって実行される種々のプログラムなどを予め記憶したROMと、RAMと、を有する。また、表示演出制御部50は、演出画像表示部51と、操作適否判定部52と、特定演出画像表示部53と、演出記憶部54と、を有する。
【0048】
演出記憶部54は、上記ROM及びRAMからなり、ROMには、表示演出制御部50のCPUによってRAMに展開されて実行される各種プログラム(表示演出制御プログラム、操作適否判定プログラム及び特定演出画像表示プログラムを含む)を予め記憶する表示プログラム記憶領域54aと、演出用画像(図柄、背景、文字などを含む)を予め記憶する演出用画像記憶領域54bと、表示演出制御プログラム上の関数と特定演出画像とが対応付けられた特定演出画像テーブル55を予め記憶する特定演出画像テーブル記憶領域54cと、が設定されている。
【0049】
特定演出画像テーブル55は、図5に示すように関数列と特定演出画像列とからなり、演出画像表示部51が演出画像表示処理において画像表示部に所定の演出画像を表示するための演出画像表示プログラム上の関数と特定演出画像とが対応付けられている。例えば、演出画像表示部51の画面の中央にキャラクターCHを配置し、キャラクターCHの前方に扉DOを配置する演出画像100(図6(a)参照)を表示するための関数Aには、キャラクターCHが扉に入る特定演出画像110(図6(b)参照)が対応付けられている。キャラクターCHの前方上側にコインCOを配置する演出画像101(図7(a)参照)を表示するための関数Bには、キャラクターCHがジャンプし、コインCOを取得する特定演出画像111(図7(b)参照)が対応付けられている。また、上記関数がキャラクターの前方にジャンプ板を配置する演出画像を表示する関数Cには、キャラクターがジャンプ板を使って大きくジャンプをする特定演出画像(図示省略)が対応付けられている。
【0050】
表示演出制御部50のCPUは、演出画像表示プログラムに従って演出画像表示処理を実行する演出画像表示部51、操作適否判定プログラムに従って操作適否判定処理を実行する操作適否判定部52及び特定演出画像表示プログラムに従って特定演出画像表示処理を実行する特定演出画像表示部53として機能する。
【0051】
演出画像表示部51は、表示演出制御部50が副制御部40から演出パターン信号を受信すると、演出画像表示処理を開始し、演出パターン信号が示す演出パターンに応じて、表示演出制御プログラム上の関数に基づき演出用画像を演出画像記憶領域から読み出して所定の演出画像(動画像)を生成し、演出表示部13に表示する。例えば、演出パターン信号が示す演出パターンが「歩行演出」である場合、演出画像表示部51は、上記関数(上述の関数A,B及びCを含む)に基づき演出記憶部54から演出用画像の歩行するキャラクターの画像、画面を左から右へスクロールする背景画像、コインの画像、扉の画像及びジャンプ台の画像などを適宜読み出し、演出画像(演出画像100,101を含む)を生成し、演出表示部13に表示する。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)、(b)は、本願補正発明のA、Bに対応させている。

(a)引用発明の「遊技者によって操作されるストップスイッチ44a?44c」は、本願補正発明の「遊技者により操作される複数のストップスイッチ」に相当する。

(b)引用発明の「少なくとも1つの種類の役を役抽選処理によって定める役抽選手段120」と、本願補正発明の「前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む役抽選結果を選出する役抽選手段」とは、「役抽選結果を選出する役抽選手段」である点で共通する。また、引用発明の「スロットマシン10」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。


イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者により操作される複数のストップスイッチと、
B’役抽選結果を選出する役抽選手段と、
を備えた遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項B)
「役抽選結果」は、
本願補正発明では、「前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点2(特定事項C、D、D-1-1、D-1-2)
本願補正発明では、「有利操作順序を報知可能な報知可能状態にするか否かを、前記役抽選手段の役抽選結果に基づいて決定する状態決定プログラムを少なくとも記憶した状態決定プログラム記憶手段と、前記状態決定プログラムを実行する状態決定プログラム実行手段」を備え、「前記状態決定プログラム実行手段は」、「前記報知可能状態にすると決定すると前記報知可能状態であることを特定可能な状態情報を所定記憶手段に記憶することにより前記報知可能状態に制御する状態制御手段と、前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定すると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段とを備え」るのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点3(特定事項E、E-1、F)
本願補正発明では、「遊技者にとって有利となる演出である有利演出の演出内容を決定する演出内容決定プログラムを少なくとも記憶した演出内容決定プログラム記憶手段と、前記演出内容決定プログラムを実行する演出内容決定プログラム実行手段と」を備え、「前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であ」るのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点4(特定事項G、G-1)
本願補正発明では、「状態決定プログラム記憶手段に対するアクセスを制限するアクセス制限手段」を備え、「前記アクセス制限手段は、前記所定記憶手段に対するアクセスをも制限する」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点5(特定事項H)
本願補正発明では、「前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報である」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(4)判断
ア 事案に鑑み、相違点2を先に検討する。
(ア)引用例4の記載事項(上記(2)エ(イ))は、スロットマシンにおいて、抽選に当選した場合に設定されるAT遊技状態(本願補正発明の「報知可能状態」に相当。以下、当該(4)の項目以降、各引用例の記載事項等の用語に続く()内の用語は対応する本願補正発明の用語を表す。)と非AT遊技状態があり、AT遊技状態となった場合には、小役等が当選した場合にそれぞれの役が当選したこと、または、それぞれの役に対応する操作手順(有利操作順序)を報知するが、非AT遊技状態である場合は小役等が当選した場合にそれぞれの役に対応する操作手順を報知しないものであり、第2副制御部500に送信する制御コマンドには、第1副制御部400が操作条件報知、いわゆる押し順報知(有利操作順序)などを実行すると決定したことに関する情報、すなわち、操作条件報知の表示画像の表示コマンド(演出契機情報)が含まれ、第2副制御部500はこの情報に基づいて演出画像表示装置157を用いて操作条件報知を実行し、第2副制御部500のCPU504(演出内容決定プログラム実行手段)は、表示画像を構成する画像データの情報、すなわち、VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標、配置座標などをVDP534に指示し、VDP534は、CPU504の指示に従ってフレームバッファにおける画像描画を開始するものである。引用例5の記載事項も引用例4の記載事項とほぼ同内容である。なお、以下、引用例4の記載事項及び引用例5の記載事項をまとめて「引用例4、5の記載事項」という。
そして、引用発明は、AT機能を有するものであるところ、同じくAT機能を有する引用例4、5の記載事項における特定事項を採用することは当業者にとって格別困難なことではない。
(イ)具体的に検討すると、引用例4、5の記載事項は、AT遊技状態であるか否かを決定するプラグラムを有することの明示がないものの、技術常識からみて、当該プログラムが存在することは自明であり、また、該プログラムが記憶されている記憶手段及び該プラグラムを実行する実行手段を備えることも自明であるから、本願補正発明の「C 前記有利操作順序を報知可能な報知可能状態にするか否かを、前記役抽選手段の役抽選結果に基づいて決定する状態決定プログラムを少なくとも記憶した状態決定プログラム記憶手段」及び「D 前記状態決定プログラムを実行する状態決定プログラム実行手段」に相当する特定事項を備えることは明らかである。
(ウ)引用例4、5の記載事項は、第1副制御部400がAT遊技状態とするか否かを決定しているのであり、AT遊技状態と決定した場合に当該状態をフラグ等で記憶することは技術常識からみて自明な事項であり、また、前記フラグ等を記憶するための記憶手段を備えることも自明な事項である。そして、引用例4、5の記載事項は、第1副制御部400が第2副制御部500に制御コマンド(演出契機情報)を送信し、該コマンドに、操作条件報知、いわゆる押し順報知(有利操作順序)などを実行すると決定したことに関する情報、すなわち、操作条件報知の表示画像の表示コマンド(演出契機情報)を含むものである。そうすると、前記各コマンドの送信元には、コマンドを送信するための情報出力手段を備えることは自明である。してみると、引用例4、5の記載事項は、本願補正発明の「D-1-1 前記報知可能状態にすると決定すると前記報知可能状態であることを特定可能な状態情報を所定記憶手段に記憶することにより前記報知可能状態に制御する状態制御手段」及び「D-1-2 前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定すると当該報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を出力する情報出力手段」に相当する特定事項を備えることは明らかである。
(エ)以上のとおりであるから、上記(ア)で示したように、引用発明と引用例4、5の記載事項とは、AT機能を有するスロットマシンであることで共通するものであるところ、引用発明において、引用例4、5の記載事項の特定事項を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点1について検討する。
上記アのように、引用発明のAT機能として、複数種類の役に入賞するためのストップボタンの押し順を報知する態様を含むのであれば、役抽選結果として、「前記ストップスイッチに対する操作順序のうち遊技者に有利となる有利操作順序が互いに異なる複数種類の報知対象結果を含む」になすことも当業者が適宜なし得た事項である。してみると、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について検討する。
(ア)上記ア(ア)で示したように、引用例4、5の記載事項は、スロットマシンにおいて、第2副制御部500に送信する制御コマンド(演出契機情報)には、第1副制御部400が操作条件報知、いわゆる押し順報知(有利操作順序)などを実行すると決定したことに関する情報、すなわち、操作条件報知の表示画像の表示コマンド(演出契機情報)が含まれ、第2副制御部500はこの情報に基づいて演出画像表示装置157を用いて操作条件報知を実行し、第2副制御部500のCPU504(演出内容決定プログラム実行手段)は、表示画像を構成する画像データの情報、すなわち、VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標、配置座標などをVDP534に指示し、VDP534は、CPU504の指示に従ってフレームバッファにおける画像描画を開始するものである。
(イ)引用例4、5の記載事項は、第2副制御部500のVDP534が、CPU504の指示に基づいて、表示画像を構成する画像データの情報、すなわち、VRAM536の座標軸、画像サイズ、VRAM座標、配置座標などの任意の要素を用いて、操作条件報知の表示画像を描画するものであるから、押し順報知(有利演出)の演出内容を決定しているものといえる。同様に引用例6、7にもサブ-サブ側で演出内容を決定しているものが記載されている。この点、本願補正発明について、本願の明細書を参酌しても、「演出内容決定」については、押し順報知(有利演出)の描画や画像生成程度の事項しか読み取れず、具体的に演出内容として何を決定するのかが読み取れない。
そして、技術常識からみて、引用例4、5の記載事項が、前記演出内容の決定のためのプログラムを有し、該プログラムの記憶手段及び実行手段を備えることは自明である。また、引用例4、5の記載事項は、第2副制御部500が押し順報知(有利操作順序)の制御コマンド(演出契機情報)を受信しなかったときにどのような演出を実行するのか明らかではないが、少なくとも押し順報知の演出を実行しないことは明らかであり、それ以外の演出、例えば通常時に行われる演出を実行することは明らかである。そうすると、引用例4、5の記載事項は、本願補正発明の「E 遊技者にとって有利となる演出である有利演出の演出内容を決定する演出内容決定プログラムを少なくとも記憶した演出内容決定プログラム記憶手段」、「F 前記演出内容決定プログラムを実行する演出内容決定プログラム実行手段」及び「E-1 前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能であ」ることに相当する特定事項を備えることは明らかである。
(ウ)以上のとおりであるから、上記ア(ア)で示したように、引用発明と引用例4、5の記載事項とは、AT機能を有するスロットマシンであることで共通するものであるところ、引用発明において、引用例4、5の記載事項の特定事項を採用し、上記相違点3に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が容易になし得たことである。

エ 相違点4について検討する。
(ア)引用例2の記載事項((2)イ(イ))及び引用例3の記載事項(上記(2)ウ(イ))(以下まとめて「引用例2、3の記載事項」という。)は、要するに、遊技機において、所定の認証コードが外部装置から入力された場合にのみ、記憶手段から内部データを読み出し可能とするものである。
(イ)引用発明は、サブ制御手段200に設けられた演出用記憶手段220に記憶された内容を解析しにくくするように、演出制御用データとして占められる記憶領域に検査プログラムを配置したものであり、演出制御用データに簡単にはアクセスしにくくしたものであると理解できる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、引用発明において、演出制御用データへのアクセス制限をするために、引用例2、3の記載事項を採用することは当業者にとって格別困難なことではなく、上記相違点1ないし3に係る本願補正発明の特定事項のようになした際には、AT遊技状態とするか否かを決定するためのプログラムを記憶する手段(状態決定プログラム記憶手段)へのアクセスを制限すること、すなわち、上記相違点4に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が引用例2、3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

オ 相違点5について検討する。
引用例4、5の記載事項は、AT遊技状態となった場合には、小役等が当選した場合にそれぞれの役が当選したことまたはそれぞれの役に対応する操作手順(有利操作順序)を報知するが、非AT遊技状態である場合は小役等が当選した場合にそれぞれの役に対応する操作手順を報知しないものであるから、本願補正発明の「H 前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報であ」るとの特定事項に相当する事項を備えることは明らかである。そうすると、前述のとおり、引用発明と引用例4、5の記載事項とは、AT機能を有するスロットマシンであることで共通するものであるところ、引用発明において、引用例4、5の記載事項の特定事項を採用し、上記相違点5に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が容易になし得たことである。

カ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2ないし5の記載事項の奏する効果から予測することができた程度のものである。

キ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、以下のとおり概略主張している。
「(3) 対比
(A) 本願発明1
ア.構成aおよび構成bについて
本願発明1は、“(1)(A)本願発明1の説明”欄で説明したように、「状態決定プログラム実行手段」が「前記報知可能状態において前記役抽選手段により前記複数種類の報知対象結果のうちのいずれかが選出されることにより前記有利演出を実行する旨を決定する」という構成aとともに、「前記演出内容決定プログラム実行手段は、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信したときには当該演出契機情報に関連付けられた前記報知対象結果の種類に対応した有利操作順序を報知する演出を前記状態決定プログラム実行手段により実行する旨が決定されている有利演出の演出内容として決定し、前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報を受信しなかったときには前記有利演出とは異なる通常演出を実行するか否かを決定可能」である構成bを備えています。
また、本願発明1は、構成aおよび構成bを備えることにより、「遊技者の利益に影響する演出であるか否かで切り分けて、利益に影響する有利演出を実行する旨については「状態決定プログラム実行手段」側において決定することにより不正防止を図りつつ、有利演出とは異なる通常演出を実行する旨の決定については「演出内容決定プログラム実行手段」側に委譲するといったように、演出の種類に応じて決定主体を異ならせることによって「状態決定プログラム実行手段」の処理負担を軽減する」といった第1の有利な効果を奏します。
これに対し、拒絶査定において示された引用文献1?7のいずれにも、本願発明1が備える構成aおよび構成bに関連する技術的事項について記載されていません。
特に拒絶査定の備考(B)欄において例示された引用文献4?7は、いずれも、「サブ-メイン」において演出を実行する旨を決定し、当該決定に従って「サブ-サブ」が演出を実行するといった技術的事項を記載するものに過ぎず、演出を実行する旨を演出の種類に応じて「サブ-メイン」ではなく「サブ-サブ」側において決定するといった技術的事項を記載するものではありません。
さらに、引用文献4?7には、遊技者の利益に影響する演出であるか否かで切り分けて決定主体を異ならせるといった技術的思想についても記載されていません。
このため、引用文献1?7には、本願発明1が備える構成aおよび構成bのようにする根拠および動機が存在しません。
イ.構成cについて
拒絶査定の備考(C)欄では、「引用例4では、[0070]等に記載されているように、非AT遊技状態では操作手順報知を行わない実施形態が主に記載され、[0150]に、非AT遊技状態であっても操作手順報知を行ってもよい、として記載した実施形態の変形を示唆するもの」であることを根拠として、「引用例4および5にコマンドが非AT遊技状態中において出力されることがない」という技術的事項が記載されている旨を論証されていると思料します。
しかし、引用例4(引用文献4)の上記記載からでは、操作手順報知を行うためのコマンドを非AT中に送信しないことまでを導き出すことはできないと思料します。なぜなら、引用文献4にはどのようにして非AT中において操作手順報知を行わないのかについて具体的に記載されていない結果、例えば「サブ-メイン」側は非AT中であっても操作手順報知を行うためのコマンドを送信して、「サブ-サブ」側において当該コマンドを受信したときであっても非AT中であるときには操作手順報知を行わないという構成を備えているのか、あるいはその他の構成を備えているのか、引用文献4の記載のみからでは不明であるためです。
また、引用文献4における段落0070の「AT遊技状態の場合は非AT遊技状態と比べて操作条件報知を行う確率が高いようにしてもよい」との記載から、引用文献4には、非AT中であっても操作条件報知を行うためにAT中と同じコマンドを送信する動機は存在しますが、非AT中においてAT中と同じコマンドを送信しないようにする動機が存在するとはいえません。 このため、引用文献1?7から本願発明1が備える構成cのようにすることが当業者であれば容易に想到し得るということが十分に論理付けられているとはいえません。」

(イ)審判請求人は縷々主張するが、上記「ア.」の主張については、上記「ウ 相違点3について検討する。」等で検討したように、引用例4、5の記載事項において、第1副制御部で、「状態決定プログラム実行手段」としての役割を担い、第2副制御部で、「演出内容決定プログラム実行手段」としての役割を担っているのであるから、本願補正発明の「状態決定プログラム実行手段」の処理負担を軽減するといった効果を奏することは予測可能な効果である。また、演出を実行する旨を演出の種類に応じて「サブ-メイン」ではなく「サブ-サブ」側において決定するといった技術的事項についても、上記「ウ 相違点3について検討する。」等で検討したとおりである。
上記「イ.」の主張については、上記「オ 相違点5について検討する。」で検討したように、引用例4、5の記載事項は、本願補正発明の「H 前記報知対象結果の種類に関連付けられた演出契機情報は、前記報知可能状態と異なる状態において出力されることがない情報であ」るとの特定事項を備えることは明らかであり、引用例4、5に、「非AT遊技状態であっても操作手順報知を行ってもよい」との変形例の記載があったとしても、当該変形例を採用して引用発明を認定しなければならない特段の事情は存在しない。
以上のとおり、審判請求人の主張を採用することはできない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2ないし5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
この出願の平成29年9月20日付けの手続補正書により補正された請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例1.特開2008-237240号公報
引用例2.特開2009-348号公報
引用例3.特開2013-172870号公報
引用例4.特開2012-115537号公報
引用例5.特開2013-66569号公報
引用例6.特開2013-94479号公報
引用例7.特開2012-249954号公報

引用例1の遊技機では、演出用記憶手段に記憶されている演出制御用プログラムが解析されてしまうことを防止するものであるところ、引用例2,3に基づきROMに記憶されているプログラムの読み出しを制限できるようになすことに、困難性はない。
また、スロットマシンにおいて、サブ-メインでAT状態を管理し、該サブメインの信号に基づきサブ-サブ側でAT報知内容を決定してAT報知を実行することは、周知技術(例.引用例4ないし7)である。

3 引用例
(1)引用例1ないし7の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、当業者が引用発明及び引用例2ないし5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び引用例2ないし5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用発明及び引用例2ないし5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-26 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-14 
出願番号 特願2016-241464(P2016-241464)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 治企  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 井海田 隆
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  

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