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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1344617
審判番号 不服2017-8793  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-16 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2016- 9469「被撮像物情報提供システム、被撮像物情報提供方法、および被撮像物情報提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日出願公開、特開2017-130079、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年1月21日の出願であって、平成28年11月22日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年1月20日付けで手続補正がなされたが、平成29年3月3日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年5月17日付けで補正の却下の決定がなされ、同日付で拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年7月13日付けで手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年3月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献A、Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2014-241095号公報
B.特開2013-37533号公報

第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

●理由1(特許法第29条第2項)
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-62929号公報

●理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1-4に係る発明は不明瞭であり、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明

本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年7月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、4は以下のとおりの発明である(下線は、審判請求人が付与したものである。)。

「【請求項1】
所定の地域内又は施設内に存在する有体物の情報を記憶する前記所定の地域毎又は施設毎のデータベースと通信し、
無線情報から情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定する地域特定手段と、
前記特定手段で特定した地域に対応するデータベースを選択するデータベース選択手段と、
前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得する被撮像物特定手段と、
前記被撮像物特定手段で取得した被撮像物の情報を提供する情報提供手段と、
を備え、
前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行うことを特徴とする被撮像物情報提供システム。」

「【請求項4】
所定の地域内又は施設内に存在する有体物の情報を記憶する前記所定の地域毎又は施設毎のデータベースと通信する情報端末が実行する被撮像物情報提供方法であって、
無線情報から前記情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定するステップと、
前記地域特定モジュールで特定した地域に対応するデータベースを選択するステップと、
前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得するステップと、
前記被撮像物を特定するステップで取得した被撮像物の情報を提供するステップと、
を備え、
前記特定するステップで特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行うことを特徴とする被撮像物情報提供方法。」

本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 当審拒絶理由についての判断

1.理由1(特許法第29条第2項)について

(1)引用文献、引用発明等

平成30年5月17日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-62929号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信端末からネットワーク上に置かれたサーバへ情報検索を行うシステムに関するものであり、例えば、位置情報と映像データや音楽データ等とを用いた情報検索システムに関する。」

イ.「【0014】
通信端末1は、通信網2を介して代表サーバ3やデータベースサーバ群4への通信機能を有した端末である。また、図2に示すように、通信端末1はマイク101、カメラ102、コンパス103、位置計測器104、距離計測器105、時計106、入力装置107、表示装置108、映像特徴抽出装置109、通信装置110、制御装置111を有している。データベースサーバ群4は、それぞれ固有の位置情報を有する1つ以上のデータベースサーバで構成されている。例えば、データベースサーバ1(401)は京都の地区Aと地区Bに関する情報を有しており、データベースサーバ2(402)は京都の地区Aと地区Cに関する情報を有しており、データベースサーバ3(403)は奈良の地区Dに関する情報を有しているものとする。ここで、データベースサーバ1(401)、2(402)、3(403)がそれぞれ有する固有の位置情報の範囲は、その広さ・大きさを問わず、小規模なものから大規模なもののいずれであっても構わない。例えば、テーマパーク施設のような近接した範囲や小規模な範囲でも構わないし、日本各地や世界各地の情報を有している、といった大規模な範囲であっても構わない。」

ウ.「【0015】
・・・(中略)・・・データベースサーバ1(401)、2(402)、3(403)には、位置情報501、INDEX502、画像データ503、名称504、情報1(505)、情報2(506)が1つの情報セット5として記録されている。」

エ.「【0019】
ユーザは、通信端末1を用いてユーザが知りたい情報(例えば地区Aにある建造物(例えば東大寺大仏の手))の映像を通信端末1が有するカメラ102を用いて撮影する。さらに位置計測器104により現在位置の計測を行う。このとき、前記映像撮影時に自動的に位置計測器により現在位置を計測してもよい。
【0020】
通信端末1は、まず代表サーバ3へ前記取得した位置情報を送信(S2)し、前記位置情報に関する情報を有したデータベースサーバの有無を問い合わせる(S3)。代表サーバ3は、通信端末1から送られた位置情報:地区Aの座標(3、2)とデータベースサーバ群4から登録された位置情報の範囲とを比較し、通信端末1から送られた位置情報が、前記データベースサーバ群4から登録されている位置範囲内となっているデータベースサーバを検索する。即ち、前記位置情報が示す位置範囲内の情報を有するデータベースサーバの有無を検索する(第1の検索)。
【0021】
検索の結果、位置範囲内となるデータベースサーバが存在しない場合には(S3:無し)、代表サーバ3から通信端末1へ該当する情報が存在しないことが通知され、終了する。一方、位置範囲内となるデータベースサーバ(図4においてデータベースサーバ1(401)とデータベースサーバ2(402))が存在する場合には(S3:有り)、該当する情報があると判断され、代表サーバ3から通信端末1へ検索映像データ送信要求が送られる(S4)。検索映像データ送信要求を受け取った通信端末1は、送信された検索映像データ送信要求に従って代表サーバ3へ検索映像データを送信する(S5)。ここでいう検索映像データとは、例えばユーザがカメラ102を用いて撮影した画像であり、上記例でいえば東大寺大仏の手の画像を意味する。前記検索映像データを受け取った代表サーバ3は、前記範囲内として見つかった各データベースサーバへ前記検索映像データと前記位置情報:地区Aの座標(3,2)を送信し検索依頼を行い(S6)、各データベースサーバにおいて検索が行われる(第2の検索)。

オ.「【0023】
代表サーバ3から、位置範囲内となるもうひとつのデータベースサーバ2(402)に対して検索依頼を行う(S9)。図4はデータベースサーバ2(402)が地区Aの座標(3、2)に関する情報を有する場合を示すものとし、データベースサーバ2(402)は、図3に示す情報セット5のデータを有し、地区Aの座標(3,2)に関する情報セット5を3つ、地区Aの座標(5,4)に関する情報セット5を1つ、地区Aの座標(2,6)に関する情報セット5を2つ有しているものとする。データベースサーバ2(402)は、前記位置情報:地区Aの座標(3,2)と前記検索映像データを受け取り、前記位置情報:地区Aの座標(3,2)に関する情報の有無を検索する(S10)。前記検索(S10)の結果、データベースサーバ2(402)は地区Aの座標(3,2)に関する情報として、3つの情報セット5を有していることが分かる。データベースサーバ2(402)は、前記3つの情報セット5が有する画像データと前記検索映像データとの比較を行い、もっとも類似する情報セット5を検出する。このとき、類似する映像データの検出には、輝度分布相関法:画像中の輝度分布相関を比較して類似画像を見つける手法や、残差マッチング法:マスタ画像とターゲット画像を上下左右ずらしながら重ね合わせの残差が最小となるものを見つけ出す手法、などを用いることで、類似する画像を有する情報セット5を見つけ出すことが可能である。データベースサーバ2(402)は、前記検索でもっとも類似する画像を有する情報セット5の情報を代表サーバ3へ送る(S11)。代表サーバ3は通信端末1に対して課金を行い(S12)、前記データベースサーバ2(402)から送られた情報セット5を通信端末へ送信する(S13)。そして、通信端末の表示画面に送信された検索の結果が表示され、ユーザはそれを見て検索の結果を把握することができるようになる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「通信端末からネットワーク上に置かれたサーバへ情報検索を行う情報検索システムであって(【0001】)、
通信端末1は、通信網2を介して代表サーバ3やデータベースサーバ群4への通信機能と、カメラ102、位置計測器104、表示装置108を有し(【0014】)、
データベースサーバ群4は、それぞれ固有の位置情報を有する1つ以上のデータベースサーバで構成され、データベースサーバ1は京都の地区Aと地区Bに関する情報を有しており、データベースサーバ2は京都の地区Aと地区Cに関する情報を有しており、データベースサーバ3は奈良の地区Dに関する情報を有し、ここで、データベースサーバがそれぞれ有する固有の位置情報の範囲は、テーマパーク施設のような範囲でもよく(【0014】)、
データベースサーバ1、2、3には、位置情報501、INDEX502、画像データ503、名称504、情報1(505)、情報2(506)が1つの情報セット5として記録され(【0015】)、
ユーザは、通信端末1を用いてユーザが知りたい情報(地区Aにある建造物)の映像をカメラ102を用いて撮影し、位置計測器104により現在位置の計測を行い(【0019】)、
通信端末1は、取得した位置情報を代表サーバ3へ送信し、前記位置情報に関する情報を有したデータベースサーバの有無を問い合わせ(【0020】)、
代表サーバ3は、通信端末1から送られた位置情報(地区Aの座標)とデータベースサーバ群4から登録された位置情報の範囲とを比較し、位置情報が、登録された位置範囲内となっているデータベースサーバを検索し(【0020】)、
代表サーバ3は、位置範囲内となるデータベースサーバ(データベースサーバ1とデータベースサーバ2)が存在する場合には、通信端末1へ検索映像データ送信要求を送り(【0021】)、存在しない場合には、通信端末へ該当する情報が存在しないことを通知し(【0021】)、
通信端末1は、検索映像データ送信要求に従って代表サーバ3へ検索映像データを送信し、ここで検索映像データはカメラ102を用いて撮影した画像であり(【0021】)、
代表サーバ3は、範囲内として見つかった各データベースサーバへ検索映像データと位置情報を送信して検索依頼を行い(【0021】)、
データベースサーバは、位置情報に関する情報セットを検索し、検索された情報セットが有する画像データと検索映像データとの比較を行い、もっとも類似する画像を有する情報セットを代表サーバ3へ送り、代表サーバ3は送られた情報セットを通信端末に送信し(【0023】)、通信端末の表示画面に送信された検索の結果を表示する(【0023】)、
情報検索システム。」

(2)対比・判断

(2-1)本願発明1について

ア.対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の複数のデータベースサーバは、それぞれ、固有の位置情報の範囲(地区、施設)を有し、その範囲内に存在する建造物の情報を記憶する。そして、通信端末は、代表サーバーを介して、データベースサーバに、検索映像データと位置情報を送信すると共にデータベースサーバから情報セットを受信する。
この通信端末が、データベースサーバに検索映像データと位置情報を送信し、また、データベースサーバから情報セットを受信することは、本願発明1の「所定の地域内又は施設内に存在する有体物の情報を記憶する前記所定の地域毎又は施設毎のデータベースと通信し」に相当する。

・引用発明の通信端末は、位置情報を代表サーバへ送信して、通信端末の位置が、登録された位置範囲内(地区、施設)にあるデータベースサーバの有無を問い合わせる。また、代表サーバ3は、通信端末1から送られた位置情報とデータベースサーバ群4から登録された位置情報の範囲とを比較し、位置情報が、登録された位置範囲内となっているデータベースサーバを検索する。
通信端末の上記問い合せ手段、及び、代表サーバの上記検索手段は、通信端末がデータベースサーバの位置範囲内(地区、施設)にあるか否かを特定するための手段であり、本願発明1の「無線情報から情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定する地域特定手段」と、「情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定する地域特定手段」の点で共通する。

・引用発明の代表サーバは、通信端末から送られた位置情報(地区Aの座標)とデータベースサーバ群4から登録された位置情報の範囲とを比較し、位置情報が、登録された位置範囲内となっているデータベースサーバを検索するが、この検索されたデータベースサーバ1,2は、データベースサーバ1?3から選択されたものである。
したがって、通信端末の上記問い合せ手段及び代表サーバの上記検索手段は、本願発明1の「前記特定手段で特定した地域に対応するデータベースを選択するデータベース選択手段」に相当する。

・引用発明の通信端末は、検索対象として選択されたデータベースサーバに対し、検索映像データを送信し、検索結果である情報セットを受信することから、通信端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、データベースサーバから特定し、特定した被撮像物の情報を取得する手段を有するといえる。
当該手段は、本願発明1の「前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得する被撮像物特定手段」に相当する。

・引用発明は「通信端末の表示画面に送信された検索の結果を表示する」ことから、通信端末は、データベースサーバから取得した被撮像物の情報を画面に表示する手段を有する。当該手段は、本願発明1の「前記被撮像物特定手段で取得した被撮像物の情報を提供する情報提供手段」に相当する。

・引用発明の「情報検索システム」は、撮影された建造物の情報を提供するといえるから、本願発明1の「被撮像物情報提供システム」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次の通りである。

<一致点>
「所定の地域内又は施設内に存在する有体物の情報を記憶する前記所定の地域毎又は施設毎のデータベースと通信し、
情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定する地域特定手段と、
前記特定手段で特定した地域に対応するデータベースを選択するデータベース選択手段と、
前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得する被撮像物特定手段と、
前記被撮像物特定手段で取得した被撮像物の情報を提供する情報提供手段と、
を備えた、
被撮像物情報提供システム。」

<相違点1>
情報端末が前記所定の地域内又は施設内にあることを特定する地域特定手段が、本願発明1では「無線情報から」特定するものであるのに対し、引用発明は、通信端末の位置計測器により計測された現在位置から特定するものであり、「無線情報から」特定するものではない点。

<相違点2>
被撮像物特定手段が、本願発明1では、「特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」のに対し、引用発明では上記処理を行わない点。

イ.相違点についての判断

事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」という構成は、上記引用文献1には記載されておらず、周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2-2)本願発明2、3について

本願発明2、3も、本願発明1の「前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2-3)本願発明4について

本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について

当審では、請求項1-4に係る発明は「【0027】・・・被撮像物特定モジュール152は、データベース200から、ステップS03で特定した被撮像物の情報を取得する(ステップS04)。」に係る構成を有していないことから、被撮像物の情報を、どのようにして提供するのか不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年7月13日付けの補正において、「前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得する被撮像物特定手段」(請求項1)、「前記情報端末で撮像された撮像画像の被撮像物を、前記データベースから特定し、特定した被撮像物の情報を取得するステップ」(請求項4)と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第6 原査定についての判断

1.引用文献について

(1)引用文献Aについて

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A(特開2014-241095号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0017】
[実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る情報提供システム1を構成する装置を示した図である。情報提供システム1は、店3A,3Bに来店した者に対して、商品の価格情報を提供するシステムである。店3A,3Bには、複数の商品が陳列されており、陳列されている商品には、商品を表すバーコードが付されている。また、店3Aには、店サーバ装置40Aと発信機30Aが設けられており、店3Bには、店サーバ装置40Bと発信機30Bが設けられている。・・・(中略)・・・また、発信機30Aと発信機30Bの構成は同じであるため、発信機30A,30Bについても、以下、各々を区別する必要のない場合は発信機30と記載する。」

イ.「【0020】
サーバ装置20は、店3Aや店3Bに陳列されている商品の価格情報を、店3A又は店3Bに来店した消費者が有する端末装置10へ送信する装置である。サーバ装置20は、店3Aや店3Bに陳列されている商品の価格情報を取得し、店3毎に商品の価格情報を記憶する。」

ウ.「【0022】
発信機30は、発信機30を一意に識別する発信機識別子を示す信号を出力する装置である。」

エ.「【0025】
(端末装置10の構成)
図3は、端末装置10のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えたマイクロコントローラである。」

オ.【0030】
(サーバ装置20の構成)
図5は、サーバ装置20のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。・・・(中略)・・・
【0031】
・・・(中略)・・・また、記憶部202は、価格情報テーブルTB1を記憶している。
【0032】
価格情報テーブルTB1は、図6に示したように、発信機識別子、店名(店情報の一例)、当該店名の店に陳列された商品のJAN(Japanese Article Number)コード(商品識別子の一例)、当該JANコードの商品の価格情報及びJANコードで特定される商品の商品名とを対応付けて格納したテーブルである。価格情報テーブルTB1は、発信機30が配置された店毎に設けられており、」

カ.「【0038】
一方、端末装置10のユーザが、例えば端末装置10を持って店3Aに入店すると、発信機30Aが出力している信号cが音声処理部107のマイクロホンで取得される。音声処理部107は、マイクロホンが取得した信号cをデジタル信号に変換し、このデジタル信号を制御部101へ供給する。制御部101は、供給されたデジタル信号を解析し、発信機30Aが出力する信号cを抽出する。制御部101(第2取得手段1002)が、この信号cを復調すると、発信機30Aの発信機識別子を表す信号aが得られる。
【0039】
制御部101は、信号aのHレベルとLレベルとを解析し、信号aから発信機識別子を抽出する(ステップSA4)。例えば、信号aが図2に示した波形の場合、制御部101は、「1001100」という発信機識別子を抽出する。制御部101は、発信機識別子を抽出すると、店内フラグの値を1(ステップSA7)にして処理の流れをステップSA1へ戻す。
【0040】
店3Aの中に入った端末装置10のユーザは、陳列されている商品の価格を知りたい場合、端末装置10を操作し、店内に陳列されている商品に付されているバーコードを端末装置10に読み取らせる。端末装置10は、読取り部106でバーコードを読み取ると、バーコードを示す画像のデータを制御部101へ供給する。」

キ.「【0042】
制御部101(第1取得手段1001)は、店内フラグの値が1の場合(ステップSB2でYES)、即ち、端末装置10が店内にある場合、取得したデータが示すバーコードの画像を解析し、バーコードが示すJANコードを特定する(ステップSB4)。例えば、端末装置10が店3Aにある場合には、制御部101(第1送信手段1004)は、通信部105を制御し、特定したJANコードをサーバ装置20へ送信する(ステップSB5)。
【0043】
サーバ装置20においては、端末装置10から送信されたJANコードを通信部205が受信すると、制御部201(第2受信手段2001)がJANコードを取得し、図10に示した処理を実行する。まず、制御部201は、受信したJANコードを格納した価格情報テーブルTB1を検索する(ステップSC1)。制御部201(抽出手段2002)は、受信したJANコードを格納した価格情報テーブルTB1を見つけると、検索で見つけた価格情報テーブルTB1において、受信したJANコードに対応付けられている商品名、価格情報及び店名の組を抽出する(ステップSC2)。
【0044】
例えば、受信したJANコードが図6に示した2つのテーブルの1行目に格納されている場合、制御部201は、店3Aにおける商品の価格情報を格納した価格情報テーブルTB1(図6において上に示したテーブル)から、商品名「AAA」、価格情報「10000」及び店名「○○電機××店」の組を抽出し、店3Bにおける商品の価格情報を格納した価格情報テーブルTB1(図6において下に示したテーブル)から、商品名「AAA」、価格情報「11000」及び店識別子「△△電機□□店」の組を抽出する。制御部201(第2送信手段2003)は、ステップSC2の処理が終了すると、商品名、価格情報及び店名の組を端末装置10へ送信する(ステップSC3)。」

ク.「【0046】
一方、サーバ装置20から送信された商品名、価格情報及び店名の組を所定時間の間に通信部105で受信されると、受信した組を制御部101(第1受信手段1005)が取得する。制御部101(表示制御手段1006)は、ステップSB5の処理の後、所定時間内にサーバ装置20が送信した商品名、価格情報及び店名の組を取得した場合(ステップSB6でYES)、表示部103を制御し、受信した商品名、価格情報及び店名の組を表示する(ステップSB8)。」

したがって、引用文献Aには、次の事項が記載されている。

<引用文献Aの記載事項>
「来店した者に対して、商品の価格情報を提供する情報提供システム1であって(【0017】)、
店に陳列されている商品には商品を表すバーコードが付され(【0017】)
店には発信機30が設けられ(【0017】)、発信機30は、発信機30を一意に識別する発信機識別子を示す信号を出力し(【0022】)、
サーバ装置20は、店に陳列されている商品の価格情報を、来店した消費者が有する端末装置10へ送信する装置であり(【0020】)、発信機識別子、店名、当該店名の店に陳列された商品のJANコード(商品識別子)、当該JANコードの商品の価格情報及びJANコードで特定される商品の商品名とを対応付けた価格情報テーブルTB1を記憶し、当該価格情報テーブルTB1は、発信機30が配置された店毎に設けられ(【0032】)、
ユーザが端末装置10を持って入店すると、端末装置10は、発信機30が出力している信号cを取得し、当該信号cから発信機識別子を抽出し、発信機識別子を抽出すると店内フラグの値を1に設定し(【0038】【0039】)、
端末装置10は、商品に付されているバーコードを読み取り(【0040】)、店内フラグの値が1の場合、即ち、端末装置10が店内にある場合、取得したバーコードの画像を解析し、バーコードが示すJANコードを特定し、当該JANコードをサーバ装置20へ送信し(【0042】)、
サーバ装置20は、価格情報テーブルTB1から、受信したJANコードに対応付けられている商品名、価格情報及び店名の組を抽出して(【0043】)、端末装置10へ送信し(【0044】)、
端末装置10は、受信した商品名、価格情報及び店名の組を表示する(【0046】)、
情報提供システム1。」

(2)引用文献Bについて

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献B(特開2013-37533号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「【0015】
図1の商品情報提供システム1は、携帯端末2のユーザが、商品情報を知りたい商品を携帯端末2で撮影して、その撮影画像(商品画像とも呼ぶ)を携帯端末2からサーバ3に伝送し、サーバ3側で画像マッチング処理を行って商品を特定して、その商品の商品情報を取得して、携帯端末2に送り返す処理(以下、商品情報提供処理)を行う。」

2.対比・判断

平成30年7月13日付けの補正により、補正後の請求項1-3は「前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」という技術的事項を有し、また、補正後の請求項4は「前記特定するステップで特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」という技術的事項を有するものとなった。
当該「前記被撮像物特定手段は、特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」、及び、「前記特定するステップで特定した被撮像物の撮像画像の使用が制限されている場合には、前記情報端末の記憶部から前記撮像画像の消去を行うか、又は、前記情報処理端末において画像検索以外の使用が行えないように画像に対して制限をかける処理を行う」は、原査定における引用文献A、Bには記載されておらず、周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-01 
出願番号 特願2016-9469(P2016-9469)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成瀬 博之田中 秀樹松尾 真人  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 金子 幸一
相崎 裕恒
発明の名称 被撮像物情報提供システム、被撮像物情報提供方法、および被撮像物情報提供プログラム  
代理人 小木 智彦  

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