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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04B
管理番号 1344634
審判番号 不服2017-205  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-06 
確定日 2018-09-26 
事件の表示 特願2012- 88835「電子制御弁を用いた装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-241714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年4月9日(パリ条約による優先権主張2011年5月13日、米国)の出願であって、平成27年11月10日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年3月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年1月6日に審判の請求がなされ、その後、当審において、平成29年11月6日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。
「第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成されたコンピュータ装置であって、前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記コンピュータ装置とからなり、
前記コンピュータ装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送り、該第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成され、そして、第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される、圧力コントローラ。」
なお、請求項1には「圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前駆空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、」と記載されているが(下線は、当審で付加した。)、本願の明細書及び特許請求の範囲のその余の部分に「前駆空洞」との記載はない。
一方、本願明細書の「システムは、ピストン、検出部およびコントローラをさらに含む。ピストンは、空胴を形成するシリンダー内を移動可能である。空胴は、ピストンが第1の方向に移動するにつれて増加する容量を有し、ピストンが第2の反対方向に移動するにつれて減少する容量を有する。」(段落0007)、「ピストンは、可変容積をもつ空胴を形成するように内孔内を移動可能である。ピストンは、空胴の容積を拡大および収縮するために内孔内を作動可能である。」(段落0008)、「往復運動ピストン122は、シリンダー内孔124と併せて、ピストン122の1つの面上に配置された、可変容積をもつチャンバまたは空胴136を画定する。」(段落0018)及び「図1Bに最適に図示されるように、ピストン122が筺体116の流体回路144から離れるように移動するにつれて、空胴136の容量が増加し、それによって、空胴136内の圧力を低下させる。逆に、ピストン142が筺体116の流体回路144に近づくにつれて、図1Aに最適に図示されるように、空胴136の容積は低下し、それによって空胴136内の圧力を増加させる。」(段落0019)との記載からみて、本願明細書に記載されたピストンは、その移動により空胴の容量を変更するものである。さらに、請求項1には「前駆空洞」との記載より前に「第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、」との記載もあることから、「前駆空洞」は「前記空洞」の誤記と認め、本願発明を前記のように認定した。

第3 拒絶の理由

平成29年11月6日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由Aは、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例1に記載された発明及び引用例2?4に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1.特表2009-535557号公報
引用例2.特開昭61-55382号公報
引用例3.特開平8-284842号公報
引用例4.特開昭56-44486号公報

第4 引用例の記載及び引用発明

1.引用例1の記載及び引用発明
(1)引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ア.「【0001】
本発明は、流体の流れを制御する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負の流体の流れ(減圧)および正の流体の流れ(加圧)の両方を制御する装置は従来から知られている。」
イ.「【0004】
本発明は、流体の流れを制御する装置を提供する。好ましい実施形態において、本発明はユーティリティポートを通し、単一の電気制御弁の動きをポンプの交互の相と同期することによって双方向の流体の流れを制御する。本発明の実施形態は、使い捨てピペットから流体を出し入れするピペット装置を含む。」
ウ.「【0005】
1実施形態において、前記双方向の流体の流れを制御する装置は、ユーティリティポートと、双方向ポンプと、電気制御弁と、検出器と、制御器とを有する。前記制御器は前記検出器および前記弁に接続される。使用者は、前記制御器に接続されたユーザーインターフェイスを用いて前記装置を動作させる。
【0006】
前記ポンプは、双方向の流体の流れを共通ポートで産出し、加圧相および減圧相を有する継続的なポンプサイクルで動作する。導管が前記共通ポンプポートと前記ユーティリティポートを接続する。1実施形態において、前記ポンプは往復動体積置換要素を含み、この要素は前記ポンプサイクルの半分の期間は陽空気圧を生成し、前記ポンプサイクルの残りの半分の期間は負空気圧を生成する。
【0007】
前記電気制御弁は前記導管を通る空気の流れを調節する。前記弁は、前記ポンプと前記ユーティリティポートを分離する第1の位置と、前記ポンプと前記ユーティリティポートとを流体連通により接続する第2の位置との間で動作する。・・・(中略)・・・代替実施形態において、前記弁は、前記導管を通る流体の流れを制御する第1の電気的に動作される(電気制御)2方向弁と、前記ポンプから大気に放出される流体の流れを制御する第2の電気的に動作される(電気制御)2方向弁とを有する。
【0008】
前記検出器は、前記ポンプが前記ポンプサイクルの加圧相または減圧相のいずれで動作しているかを特定する信号を継続的に検知し、交信する。例えば、前記検出器は、前記ポンプの前記体積置換要素または他の周期的に動く要素の動きを検知する光センサーを有することができる。あるいは、前記検出器は、前記体積置換要素の動きを検知する超音波センサーを有することができる。
【0009】
前記制御器は前記検出器の信号を用いて前記弁の動作を前記ポンプサイクルと同期することにより、前記ユーティリティポートで継続的な陽圧または継続的な負圧を生成する。前記減圧相の期間に前記弁を前記第2の位置に周期的に動作させ、次に前記加圧の期間に前記弁を前記第1の位置に動作して戻すことにより、前記ユーティリティポートで負圧が生成される。前記加圧相の期間に前記弁を前記第2の位置に周期的に動作させ、次にそのポンプサイクルの減圧相の期間に前記弁を前記第1の位置に動作して戻すことにより、前記ユーティリティポートで陽圧が生成される。
【0010】
本発明の更なる実施形態において、前記装置は、前記ユーティリティポートを通る流量を制御する手段を含む。この実施形態において、前記制御器は、前記弁が前記ポンプサイクルのいずれかの相の期間に第2の位置に動作される時間の長さを変化させる。」
エ.「【0018】
図1が示す本発明の第1の実施形態による流体フロー装置は、参照番号10で指定される。前記流体フロー装置は、検出器18と、双方向ポンプ20と、電気制御弁22と、制御器24とを有し、これらは単一のユーティリティポート29を有するハウジング28内に収容される。流体の流れの方向に依存し、前記ユーティリティポート29は入り口ポートまたは出口ポートのいずれかとして作用する。流体フロー導管19は前記ポンプ20を前記ユーティリティポート29に接続する。好ましくは、前記弁22は前記導管19の中間に位置する。ユーザーインターフェイス25は前記ハウジング28の外に位置する。前記流体フロー装置10は、前記ユーティリティポート29で継続的な正の流体の流れまたは継続的な負の流体の流れのいずれかを選択的に提供する。」
オ.「【0019】
好ましい実施形態において、前記ポンプ20は、図2が示すように、ハウジング30と、単一の共通流体フローポート46と、ピストンチャンバ32を分岐する柔軟な隔膜34とを有する隔膜ポンプを有する。前記隔膜34はヨーク36によって駆動ロッド38の1端に装着される。前記駆動ロッド38のもう1方の端はフライホイール40の中心から偏心して接続されており、このフライホイールはその中心でモーター(図示せず)のシャフト42に接続されている。前記シャフト42およびフライホイール40の回転によって前記駆動ロッド38および隔膜34が上下に移動し、それによってアップストロークでは前記共通ポート46で陽圧が生成され、ダウンストロークでは前記共通ポート46で負圧若しくは減圧が生成される。前記ポンプでは、前記隔膜34と前記共通ポート46間で弁動作はない。前記ポンプ20はそのポンプサイクルに加圧と減圧を交互に生成し、前記ポンプサイクルの持続期間にかけて前記モーターシャフト42が1回転する。」
カ.「【0020】
前記検出器44は、前記ポンプ20が前記ポンプサイクルの加圧相と減圧相のいずれで動作しているかを継続的にモニターする。好ましい実施形態において、前記検出器44は、前記ポンプ20の周期移動(線形または回転のいずれかの移動)要素の動きを追跡することによって前記ポンプサイクルの相をモニターする。図2が図示する実施形態において、前記検出器44は光センサーを有し、これは前記ポンプハウジング30内にあり、前記フライホイール40の表面から光を反射する。前記ポンプサイクルの相を差別化するために、前記フライホイール40の半分40aは暗い非反射性の表面(斜交線で図示されている)を有し、前記フライホイール40の残りの半分40bは明るい反射性の表面を有する。この実施形態において、前記検出器44およびフライホイール40は同期されるので、前記検出器44は前記ポンプ20がそのポンプサイクルの1つの相から別の相へ転移すると同時に前記反射性表面と非反射性表面間の境界を読み取る。」
キ.「【0026】
前記電気制御弁22は、前記ポンプ20を前記出口ポート29に接続する前記導管19の中間に位置する。好ましい実施形態において、前記弁22は図5が示すような3方向ソレノイド弁を有する。前記ソレノイド弁22は、通常閉じられている(NC)ポート54のあるハウジング52と、共通ポート56と、通常開かれている(NO)ポート58とを有する。前記NCポート54は前記導管19の1部分19bによって前記ユーティリティポートに接続されている。前記弁の共通ポート56は、前記導管19の1部分19aによって前記ポンプの共通ポート29に接続されている。前記NOポート58は大気に放出する。
【0027】
前記ソレノイド弁は鉄製の往復動要素60を有し、この往復動要素は1端に弁頭部61を、もう1方の端に円筒形基部63を有する。誘導コイル64が前記基部63の周囲を巻回しており、圧縮バネ68が前記頭部61の周囲を巻回している。前記圧縮バネ68は、通常、前記弁頭部61を第1の位置に付勢し、この位置で前記共通ポート56は前記NOポート58と流体接続され、前記NCポート54は閉じている。前記第1の位置で、前記ポンプ20と前記ユーティリティポート29間の内部導管19は閉じている。前記誘導コイル64にエネルギーが送られると、磁場によって前記弁頭部61は第2の位置に進められ、この位置で前記共通ポート56は前記NCポート54と流体接続され、前記NOポート58は閉じている。前記第2の位置で、前記ポンプ20と前記ユーティリティポート29間の内部導管19は開いている。」
ク.「【0029】
前記弁22、検出器44、およびユーザーインターフェイス26は前記制御器24と交信する。前記検出器44は、前記ポンプが動作中のポンプサイクルの相を特定する信号を前記制御器24に継続的に送信する。前記制御器24は前記弁22の動作を前記ポンプ20の周期と同期することにより、前記ユーティリティポート29への正の空気の流れまたは負の空気の流れのいずれかの流れを持続する。加圧が前記ユーティリティポート29で望まれる場合、前記ソレノイド弁はそのポンプサイクルの加圧相(すなわちt=0からt=T/2)の期間のみエネルギーを与えられる。続いて、t=T/2からt=Tにかけて、前記ソレノイド弁はエネルギーを受けない。エネルギーを受けている前記弁22は、上述した前記第1の位置から前記第2の位置へと移動する。逆に、前記ユーティリティポート29で減圧が望まれる場合、前記ソレノイド弁22はそのポンプサイクルの減圧相(t=T/2からt=T)の期間のみエネルギーを与えられる。前記検出器44およびソレノイド弁22の応答時間は非常に速いので、前述の(加圧または減圧のいずれかの)周期は非常に高い頻度で繰り返され、前記ユーティリティポート29から出入りする流体の継続的な持続する流れが生成される。」
ケ.「【0031】
本発明の別の実施形態の装置は、前記ユーティリティポート29で選択的に減圧または加圧を生成するだけでなく、付加的な流体の流れ特性も制御する。例えば、前記ユーティリティポート29を通る流量は、そのポンプサイクルのいずれかの相の期間に前記弁22にエネルギーが与えられる時間を制御することによって変化させることができる。図6aおよび6bを参照し、斜交線で表される、前記ユーティリティポート29から出る流量は、前記弁がt=0からt=T/4にかけての時間のみエネルギーを与えられ、前記ポンプサイクルの加圧相の残りの期間すなわちt=T/4からt=T/2にかけて、および前記ポンプサイクルの減圧相の全期間すなわちt=T/2からt=Tにかけて閉じられる場合、50%低下する。
【0032】
望ましい流量を前記制御器に交信するために、前記トリガ26および27をポテンショメーターに接続することができる。使用者は、各トリガ26および27が押される距離を制御することによってその体積流量を制御することができる。上述のような他の既知のユーザーインターフェイス装置を前記トリガ26および27の代わりに用いることができる。」
コ.「【0033】
図7に示す本発明の別の実施形態による装置110は、ユーティリティポート129を通して流体の測定体積(V)を伝達する。この実施形態において、ポンプ120のストローク毎置換体積(DPS)は制御器124にプログラムされる。・・・(中略)・・・
【0034】
この実施形態において、ユーザーインターフェイス125はキーパッドまたはコンピュータを有することができる。前記キーパッド125は複数の入力キー127、および前記制御器にプログラムされた様々な付加的制御オプションを表示するLCD128を含むことができる。」
サ.「【0036】
前述の実施形態について、モーター駆動式の隔膜ポンプを参照して説明した。しかし、本発明から逸脱しない範囲でその他のタイプの双方向ポンプを使用できるものと理解すべきである。例えば、MEDO U.S.A.,Inc.製のもののようなソレノイド活性式隔膜ポンプを用いることができる。その他のタイプの双方向ポンプも、前記ポンプが動作中のポンプサイクル相をその検出器が継続的に決定することができるならば用いることができる。」
シ.「【0037】
同様に、前述の実施形態について、そのポンプの周期的移動要素の動きを追跡することによって動作中のポンプの相を継続的に決定する検出器を参照して説明した。しかし、前記ポンプのタイプに依存し、その他のタイプの検出器であっても、それが継続的に前記ポンプの動作中の相を決定し、前記相を特定する信号を前記制御器へ電子送信することができる検出器であるならば使用することができる。例えば、ソレノイド活性ポンプが用いられる場合、前記検出器は前記ソレノイドによって生成される極性の変化を検知することによって、1つの相から別の相への転移を特定することができる。」
ス.「【0038】
前述の実施形態について、電気制御式3方向ソレノイド弁を参照して説明した。しかし、前記3方向弁を、図8が示すような他の配置の電気制御弁で置換することができる。この実施形態において、装置210は検出器218と、双方向ポンプ220と、制御器224と、ユーザーインターフェイス225とを含み、これらの構成および配置は上述のものと類似している。しかし、この実施形態では、図1の実施形態の3方向ソレノイド弁は一対の電気制御2方向弁280および281で置換され、それら2方向弁の各々は、前記ポンプ220の共通ポート246に接続されたマニホールド283の1分岐管を通る流体の流れを調節する。1つの弁280は、前記ポンプ220から流体フロー導管219を通ってユーティリティポート229に流れる流体の流れを調節する。もう1つの弁281は、前記ポンプ220から大気弁282に流れる流体の流れを調節する。
【0039】
検出器218からの入力信号を用い、制御器224は選択的に前記弁280および281をポンプサイクル相と同期して開閉し、前記ユーティリティポート229で減圧または加圧のいずれかを生成する。図8が示す実施形態の弁280および281は、圧電セラミック要素の弁を有し、これらは前記ポンプ220の変化する相との同期に必要な高速の応答時間を有することで知られている。」
そして、記載事項エ及びス並びに図1及び8の記載からみて、以下の事項が理解できる。
セ.流体フロー装置210は、検出器218と、双方向ポンプ220と、一対の電気制御2方向弁280および281と、制御器224とを有し、これらは大気弁282及びユーティリティポート229を有するハウジング228内に収容される。
記載事項オ及びス並びに図1、2及び8の記載からみて、以下の事項が理解できる。
ソ.双方向ポンプ220は、ハウジングと、単一の共通流体フローポート246と、ピストンチャンバと、該ピストンチャンバ内に配置され、前記ピストンチャンバを2つに分岐する柔軟な隔膜と、を有し、
前記共通流体フローポート246は、前記隔膜により2つに分岐された前記ピストンチャンバの一方に連通し、
前記隔膜が上下に移動することによって、アップストロークでは前記共通流体フローポート246で陽圧が生成され、ダウンストロークでは前記共通流体フローポート246で負圧若しくは減圧が生成される。
記載事項スからみて、以下の事項が理解できる。
タ.電気制御2方向弁280および281は、いずれも、開状態と閉状態とを有し、電気制御2方向弁281は、双方向ポンプ220の共通流体フローポート246に接続されたマニホールド283の1分岐管を通る流体の流れを調節し、電気制御2方向弁280は、前記マニホールド283の他の1分岐管を通る流体の流れを調節する。
また、記載事項ク及びス並びに図1及び8の記載からみて、以下の事項が理解できる。
チ.電気制御2方向弁280および281は、前記制御器224と交信する。
(2)そうすると、これらの事項からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「大気弁282及びユーティリティポート229を有するハウジング228と、
ハウジングと、単一の共通流体フローポート246と、ピストンチャンバと、該ピストンチャンバ内に配置され、前記ピストンチャンバを2つに分岐する柔軟な隔膜と、を有し、前記共通流体フローポート246が前記隔膜により2つに分岐された前記ピストンチャンバの一方に連通し、前記隔膜が上下に移動することによって、アップストロークでは前記共通流体フローポート246で陽圧が生成され、ダウンストロークでは前記共通流体フローポート246で負圧若しくは減圧が生成される、前記ハウジング228内に収容された双方向ポンプ220と、
開状態と閉状態とを有する電気制御2方向弁281であって、前記共通流体フローポート246に接続されたマニホールド283の1分岐管を通る流体の流れを調節し、前記双方向ポンプ220から大気弁282に流れる流体の流れを調節する電気制御2方向弁281と、
開状態と閉状態とを有する電気制御2方向弁280であって、前記共通流体フローポート246に接続されたマニホールド283の他の1分岐管を通る流体の流れを調節し、前記双方向ポンプ220から流体フロー導管219を通って前記ユーティリティポート229に流れる流体の流れを調節する電気制御2方向弁280と、
選択的に前記弁280および281をポンプサイクル相と同期して開閉し、前記ユーティリティポート229で減圧または加圧のいずれかを生成する制御器224と、を有し、
電気制御2方向弁280および281は、前記制御器224と交信する、
流体フロー装置210。」

2.引用例2の記載
(1)引用例2には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
ツ.「本発明はヒートポンプ用等に使用される往復動型圧縮装置及びその圧縮方法に関し、特に流量、圧縮比が可変の往復動型圧縮装置及びその圧縮方法に関する。」(第1ページ右下欄第11?14行)
テ.「本発明の目的は、駆動軸の回転数を一定にしたまま流量、圧縮比を変化させることができ、しかもこの流量、圧縮比の変化が連続性を有し、微調整を可能にした往復動型圧縮装置及びその圧縮方法を提供するところにある。」(第2ページ右上欄第7?11行)
ト.「本発明の構成は、クランク軸にコンロッドを介してシリンダ内のピストンを連結し、シリンダに吸気弁、排気弁を設けた往復動型圧縮装置において、前記シリンダ内のピストン位置を検出するための検出手段と、前記吸気弁、排気弁を強制駆動するための駆動手段と、必要とされる流量、圧縮比のうちの少なくとも何れか1つを設定するための設定手段と、この設定手段で設定された流量、圧縮比に従って前記吸気弁、排気弁の開閉タイミングを定め、前記検出手段からの検出信号により前記駆動手段を駆動させて吸気弁、排気弁を開閉させるための制御手段とを備え、前記設定手段によって流量、圧縮比のうちの少なくとも何れか1つを可変にできるようにしたところに特徴を有する。」(第2ページ左下欄第6?20行)
ナ.「第1図で本実施例に係る装置の概略が示されている。・・・(中略)・・・吸気通路1、排気通路2はシリンダ3の頂部に開口形成された吸気口3A、排気口3Bに接続され、これらの吸気口3A、排気口3Bは吸気弁4、排気弁5で開閉される。吸気弁4、排気弁5にはソレノイド或いは油圧シリンダ等による弁駆動部6,7が連結され、これらの弁駆動部6,7によって構成される駆動手段で吸気弁4、排気弁5は強制的に開閉動せしめられる。」(第2ページ右下欄第2?15行)
ニ.「シリンダ3内を往復動するピストン8はコンロッド9を介して駆動軸であるクランク軸10に連結され、クランク軸10は電動機等の駆動源によって回転せしめられる。この駆動源は定速回転用でよい。クランク軸10に角度検出センサ11が配置され、このセンサ11はクランク軸10の回転角を検出するものであり、このクランク軸回転角検出が行われる結果、シリンダ3内のピストン8の位置が検出される。センサ11によって構成されるピストン位置検出手段からの信号は制御ボックス12に入力される。制御ボックス12には操作盤13が接続され、この操作盤13は必要とされる冷媒の流量、圧縮比を人為的に設定するための設定手段を構成し、操作盤13で設定された流量、圧縮比は制御ボックス12に入力される。制御ボックス12はセンサ11、操作盤13からの入力に従って前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御する制御手段を構成し、前記弁駆動部6,7が制御ボックス12に接続される。」(第2ページ右下欄第16行?第3ページ左上欄第14行)
ヌ.「第1図中、ピストン8が右動して上死点に達したとき、前記吸気弁4は開き、排気弁5は閉じる。次いでピストン8が左動し吸気行程が始まると、吸気通路1からシリンダ3内に冷媒が流入する。ピストン8が下死点に達した後、ピストン8の右動による圧縮行程が開始するが、吸気弁4は直ちに閉動せず、必要とされる冷媒の流量と対応する位置までピストン8が達したときに吸気弁4は弁駆動部6によって閉動せしめられる。これにより吸気弁4が閉じたピストン位置から上死点までのシリンダ長さに比例した冷媒量がシリンダ3の内部に蓄えられる。尚、蓄え得る冷媒量はピストン8が下死点に達したときに吸気弁4を閉じることにより最大とすることができる。また、ピストン8の圧縮行程時における吸気弁4の閉動によって得られるシリンダ3内の冷媒量と同じ量は、ピストン8の吸気行程において、上記圧縮行程時に吸気弁4を閉動させたときにおけるピストン位置と同じ位置にピストン8が達したときに吸気弁4を閉じさせても得られる。
以上の通り吸気弁4の閉動によってシリンダ3内に所定の冷媒量が収容された後、引続きピストン8の圧縮行程が行われ、この間に冷媒は断熱圧縮される。ピストン8が必要とされる圧縮比と対応する位置に達したときに前記弁駆動部7の駆動によって前記排気弁5が開く。これにより吸気弁4が閉動したピストン位置から上死点までのシリンダ長さと、排気弁5が開いたピストン位置から上死点までのシリンダ長さとの比率に等しい圧縮比に冷媒は圧縮され、このように圧縮され昇温した冷媒はピストン8の右動により排気通路2に送出される。ピストン8が上死点に達すると、上述の通り吸気弁4は開き、排気弁5は閉じ、以後上述と同じサイクルを繰返えす。
以上のピストン移動行程における吸気弁4、排気弁5の開閉動は前記操作盤13で設定された冷媒の流量、圧縮比が得られるように行われる。操作盤13で設定された流量、圧縮比に従って前記制御ボックス12においてピストン移動 程における吸気弁4、排気弁5の開閉タイミングが定められる。ピストン移動行程中におけるシリンダ3内のピストン8位置の検出は前記センサ11によって行われ、このセンサ11からのピストン位置信号により制御ボックス12は吸気弁4、排気弁5の前記開閉タイミングに従って前記弁駆動部6,7を駆動させ、これにより吸気弁4、排気弁5を開閉させる。」(第3ページ右上欄第3行?右下欄第9行)
ネ.「第2図は大きな冷媒流量を必要とするときにおけるピストン位置と開閉タイミングとの関係を示す。大きな冷媒流量が必要とされるときは、図示の通り、下死点Aに近い位置Cにピストン8が達したときに吸気弁4は閉じ、引続きピストン8の右動により圧縮行程が行われ、ピストン8が位置Dに達したときに排気弁5が開く。これにより位置Cから上死点Bまでのシリンダ長さl_(1)に比例した流量が得られるとともに、このシリンダ長さl_(1)と、位置Dから上死点Bまでのシリンダ長さl_(2)との比率に等しい圧縮比が得られる。第3図は冷媒流量が比較的少なくてよい場合におけるピストン位置と開閉タイミングとの関係を示す。図示の通りピストン8が下死点Aから遠い位置Eに達したときに吸気弁4は閉じ、ピストン8が位置Fに達したときに排気弁5が開く。この結果、位置Eから上死点Bまでのシリンダ長さl_(3)に比例した流量が得られ、圧縮比はこのシリンダ長さl_(3)と、位置Fから上死点Bまでのシリンダ長さl_(4)との比率に等しい値になる。
第2図の流量、圧縮比のピストン往復動運転を行っているとき、冷媒の圧縮比を一定にしたまま流量を減少させることが必要となった場合は、第3図においてこの必要となった流量に従って吸気弁4を閉じるピストン位置Eが定めされ、更にl_(1)/l_(2)=l_(3)/l_(4)の圧縮比から排気弁5を開く位置Fが定められる。圧縮比を一定にしたまま流量を増大させることが必要となった場合にも同様に吸気弁4を閉じるピストン位置、排気弁5を開けるピストン位置が定められる。第2図または第3図において、流量を一定にしたまま圧縮比を変更することが必要となった場合は、吸気弁4を閉じるピストン位置C,Eを変えず、排気弁5を開けるピストン位置D,Fが変更される。また、流量と圧縮比の両方を変えることが必要となった場合には、流量に従って吸気弁4を閉じるピストン位置が定められ、このピストン位置を元にして圧縮比に従って排気弁5を開けるピストン位置が定められる。」(第3ページ右下欄第17行?第4ページ右上欄第15行)
ノ.「本発明によれば、駆動軸の回転数を一定にしたまま流量、圧縮比の変更が可能であり、しかもこの変更を連続性を有するものとして行え、従って流量、圧縮比の微調整が可能となり、各種産業プロセス用として広く使用できる利点を有する。」(第5ページ左上欄第10?14行)
そして、記載事項ナ及びニからみて、次の事項が理解できる。
ハ.往復動型圧縮装置は、
シリンダ3と、該シリンダ3の頂部に開口形成され、吸気通路1が接続される吸気口3Aと、前記シリンダ3の頂部に開口形成され、排気通路2が接続される排気口3Bと、前記吸気口3Aを開閉する吸気弁4と、前記排気口3Bを開閉する排気弁5と、前記吸気弁4を強制的に開閉動せしめる弁駆動部6と、前記排気弁5を強制的に開閉動せしめる弁駆動部7と、前記シリンダ3内を往復動するピストン8と、ピストン位置検出手段を構成する角度検出センサ11と、制御ボックス12と、必要とされる冷媒の流量、圧縮比を人為的に設定するための操作盤13と、を備え、
前記制御ボックス12は、前記センサ11からの信号及び前記操作盤13で設定された流量、圧縮比が入力され、前記センサ11、前記操作盤13からの入力に従って前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御する。
また、記載事項ニ及びヌからみて、次の事項が理解できる。
ヒ.制御ボックス12は、操作盤13で設定された冷媒の流量、圧縮比が得られるように、ピストン移動行程における吸気弁4、排気弁5の開閉動のタイミングを定め、
前記吸気弁4は、ピストン8の吸気行程又は圧縮行程において、ピストン8が必要とされる冷媒の流量と対応する位置に達したときに閉じられ、
前記排気弁5は、ピストン8の圧縮行程において、ピストン8が必要とされる圧縮比と対応する位置に達したときに開かれる。
(2)そうすると、これらの事項からみて、引用例2には次の技術が記載されていると認められる。
「シリンダ3と、該シリンダ3の頂部に開口形成され、吸気通路1が接続される吸気口3Aと、前記シリンダ3の頂部に開口形成され、排気通路2が接続される排気口3Bと、前記吸気口3Aを開閉する吸気弁4と、前記排気口3Bを開閉する排気弁5と、前記吸気弁4を強制的に開閉動せしめる弁駆動部6と、前記排気弁5を強制的に開閉動せしめる弁駆動部7と、前記シリンダ3内を往復動するピストン8と、ピストン位置検出手段を構成する角度検出センサ11と、制御ボックス12と、必要とされる冷媒の流量、圧縮比を人為的に設定するための操作盤13と、を備え、
前記制御ボックス12は、前記センサ11からの信号及び前記操作盤13で設定された流量、圧縮比が入力され、前記センサ11、前記操作盤13からの入力に従って前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御する、往復動型圧縮装置において、
前記制御ボックス12は、操作盤13で設定された冷媒の流量、圧縮比が得られるように、ピストン移動行程における吸気弁4、排気弁5の開閉動のタイミングを定め、
前記吸気弁4は、ピストン8の吸気行程又は圧縮行程において、ピストン8が必要とされる冷媒の流量と対応する位置に達したときに閉じられ、
前記排気弁5は、ピストン8の圧縮行程において、ピストン8が必要とされる圧縮比と対応する位置に達したときに開かれる。」

3.引用例3の記載
(1)引用例3には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。
フ.「【0015】また、第2発明は、吸入弁と吐出弁を有するシリンダと、該シリンダ内でピストンを一定の回転数で往復運動させる電動機と、前記シリンダの吸入弁を強制的に開閉操作するアンローダ機構とを備えた容積形往復圧縮機の吐出し容量制御装置において、最終吐出ラインの圧力変動を検出する圧力検出器を有し、前記圧力検出器の検出結果により前記アンローダ機構による吸入弁の開閉操作間隔を時分割制御するものであることを特徴とする。」
ヘ.「【0017】
【作用】上記のとおりに構成された本発明では、最大使用量に対して十分な吐出し容量が電動機の回転数によって一定に定められている。このような状態で使用量が減少して最終吐出ラインの吐出し圧力が上昇すると、圧力検出器がその圧力値を検出して制御装置に出力する。制御装置では、検出された圧力値により、最終吐出ラインの吐出し圧力が一定(設定値)になるような負荷容量を算出する。この算出結果に基づき、アンローダ機構による吸入弁の開閉操作間隔が時分割制御(PWM制御)される。
【0018】このように、使用量が減少して吐出し圧力が上昇すれば自動的に吐出し容量を無段階調節して圧力を一定に保つので、動力の節約を図ることが可能になる。」
ホ.「【0020】(第1の実施例)図1は本発明の容積形往復圧縮装置の吐出し容量制御装置の第1実施例を示す概略構成図である。
【0021】本実施例における容積形往復圧縮装置の吐出し容量制御装置は、図1に示すように、ベッド1およびフレーム2により設置された1気筒の複動形シリンダ3と、シリンダ3内でピストンを一定に往復運動させるための、フライホイール4を持つ電動機5とを備えている。」
マ.「【0022】シリンダ3の後端付近の一側部には、ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり吸入ライン6よりガスをシリンダ室内に導く下吸入弁8が設けられ、その他側部には、ピストンの後端側への引き込み工程時に開になりシリンダ室内から吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す下吐出し弁が設けられている。
【0023】同様にシリンダ3の先端付近の一側部には、ピストンの先端側への引き込み工程時に開となり吸入ライン6よりガスをシリンダ室内に導く上吸入弁9が設けられ、その他側部には、ピストンの先端側への押し込み工程時に開になりシリンダ室内から吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す上吐き出し弁が設けられている。
【0024】下吸入弁8は下エアーシリンダ10により強制的に開操作される下アンローダ機構になっており、同様に上吸入弁8も上エアーシリンダ11により強制的に開操作される上アンローダ機構になっている。」
なお、段落0023には「同様にシリンダ3の先端付近の一側部には、ピストンの先端側への引き込み工程時に開となり吸入ライン6よりガスをシリンダ室内に導く上吸入弁9が設けられ、」と記載されている(下線は、当審で付加した。)が、引用例3に記載された第1の実施例に係る容積形往復圧縮装置の構成からみて、前記上吸入弁9が開となり前記吸入ライン6よりガスが前記シリンダ室内に導かれるのは、前記ピストンが前記シリンダの後端側から先端側へと移動する工程ではなく、先端側から後端側へと移動する工程であることは明らかである。さらに、引用例3の他の記載、特に前記摘記した記載以外の段落0023の記載及び段落0022の記載からみて、段落0023の「ピストンの先端側への引き込み工程」は「ピストンの後退側への引き込み工程」の誤記と認められる。
ミ.「【0027】本実施例の容積形往復圧縮装置では、電動機の回転数で決定される吐出し容量の圧縮ガスを供給しているので、使用量が減少すると吐出ライン7にて圧縮ガスの圧力が上昇する。そのため制御装置13は、圧力検出器12で吐出し圧力を測定し、この測定値に基づいて下エアーシリンダ10及び上エアーシリンダ11による下吸入弁8及び上吸入弁9の開閉を操作することにより吐出し容量を調節して吐出し圧力を一定に保つ事のできるフィードバック制御の構成になっている。このフィードバック制御の構成を図2にブロック線図として示す。
【0028】上記の制御装置13では、図2に示すように、調節計がプロセス変量に基づいて比較・演算を行い、アンローダ機構に吸入弁を開操作させる操作信号(パルス信号)を出力する。アンローダ機構により吸入弁が前記操作信号に対応する操作量(パルス間隔)で操作され、この状態で吐出しプロセスが行われる。さらに、吐出しプロセスにおいて外乱を含んだ実際の制御量によりプロセス変量が検出され、再び調節計にフィードバックされる。このような制御装置13では、吐出し容量が常に使用量の変化に応じてアンローダ機構の操作により自動調節されている。」
ム.「【0029】次に、上記の圧力検出器12の測定値によるアンローダ機構の制御操作について説明する。
【0030】図3は、本発明の第1の実施例による吐出し容量の自動調節を説明するための図であり、(A)は負荷容量と容量調節の関係を示し、(B)は負荷容量と上アンローダによる操作との関係を示し、(C)は負荷容量と下アンローダによる操作との関係を示している。図4は、第1の実施例のアンローダ機構の動作を示す図である。
【0031】本実施例の負荷容量と容量調節とは、図3(A)に示すように正比例の関係にあり、無段階の容量調節になっている。すなわち、図3(B)および図3(C)に示すように、負荷容量が0%を越え50%までの場合は、上アンローダの吸入弁の開閉操作を時分割制御(PWM制御)し、下アンローダの吸入弁を開(ノンロード)の状態にすることにより無段階に調節される。また、負荷容量が50%を越え100%までの場合は、上アンローダの吸入弁を閉(ロード)の状態とし、下アンローダの吸入弁の開閉操作を時分割制御(PWM制御)することにより無段階に調節される。
【0032】時分割制御(PWM制御)は、吸入弁を開閉操作させる操作信号のパルス幅を変更することにより行われる。すなわち、図4に示すようにロード(閉)状態とアンロード(開)状態とを加算したパスル間隔からなる周期Tを繰返し、その周期Tのうちノンロード(開)状態とするパスル間隔を変更することにより、アンローダの操作が時分割制御される。」
そして、記載事項マ及び図1の記載からみて、次の事項が理解できる。
メ.シリンダ3は、後端側に下吸入ポート及び下吐出ポートを、先端側に上吸入ポート及び上吐出ポートを、それぞれ有し、
下吸入弁8は、ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、吸入ライン6より前記下吸入ポートを介してガスをシリンダ室内に導き、
下吐出し弁は、ピストンの後端側への引き込み工程時に開になり、シリンダ室内から前記下吐出ポートを介して吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出し、
上吸入弁9は、ピストンの後端側への引き込み工程時に開となり、吸入ライン6より前記上吸入ポートを介してガスをシリンダ室内に導き、
上吐き出し弁は、ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、前記シリンダ室内から前記上吐出ポートを介して吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す。
記載事項ホ及びミ並びに図1の記載からみて、次の事項が理解できる。
モ.容積形往復圧縮装置は、下吸入ポート、下吐出ポート、上吸入ポート、上吐出ポート及びシリンダ室を有する複動形シリンダ3と、前記シリンダ室で一定に往復運動するピストンと、を備える。
また、記載事項マ?ムから、次の事項が理解できる。
ヤ.制御装置13は、下アンローダ機構又は上アンローダ機構に下吸入弁8又は上吸入弁9を開操作させる操作信号(パルス信号)を出力し、下吸入弁8又は上吸入弁9が前記操作信号に対応する操作量(パルス間隔)で操作され、下吸入弁8又は上吸入弁9の開閉操作は時分割制御(PWM制御)することにより無段階に調節される。
(2)そうすると、これらの事項からみて、引用例3には次の技術が記載されていると認められる。
「下吸入ポート、下吐出ポート、上吸入ポート、上吐出ポート及びシリンダ室を有する複動形シリンダ3と、前記シリンダ室で一定に往復運動するピストンと、
前記ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、吸入ライン6より前記下吸入ポートを介してガスを前記シリンダ室内に導く下吸入弁8と、
前記ピストンの後端側への引き込み工程時に開になり、前記シリンダ室内から前記下吐出ポートを介して吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す下吐出し弁と、
前記ピストンの後端側への引き込み工程時に開となり、前記吸入ライン6より前記上吸入ポートを介してガスを前記シリンダ室内に導く上吸入弁9と、
前記ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、前記シリンダ室内から前記上吐出ポートを介して前記吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す上吐き出し弁と、
下エアーシリンダ10及び上エアーシリンダ11による前記下吸入弁8及び前記上吸入弁9の開閉を操作することにより吐出し容量を調節する制御装置13と、を備え、
前記下吸入弁8は、前記下エアーシリンダ10により強制的に開操作される下アンローダ機構になっており、前記上吸入弁8は、前記上エアーシリンダ11により強制的に開操作される上アンローダ機構になっている、容積形往復圧縮装置において、
前記制御装置13は、前記下アンローダ機構又は上アンローダ機構に前記下吸入弁8又は上吸入弁9を開操作させる操作信号(パルス信号)を出力し、前記下吸入弁8又は上吸入弁9が前記操作信号に対応する操作量(パルス間隔)で操作され、前記下吸入弁8又は上吸入弁9の開閉操作は時分割制御(PWM制御)することにより無段階に調節され、この状態で吐出しプロセスが行われる。」

4.引用例4の記載
引用例4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ユ.「第1図は従来のダイヤフラムポンプを示したもので、1,2はおのおの吸入側,吐出側の逆止弁であって、プランジャー4の往復動でダイヤフラム3が往復動し、これにより逆止弁1,2が開閉する。プランジャー4のストロークは、ストローク変換器5をコントローラ6によって遠隔操作することにより、ストロークを調整される。」(第1ページ右下欄第14?20行)
ヨ.「第2図は本発明の一実施例を示したもので、第1図の逆止弁1,2に代えて電磁弁7,8を設け、マイクロコンピュータ10の指令で開閉作動ができるようにし、プランジャー4の作動もマイクロコンピュータ10の指令により、作動器9を作動させるようにしたものである。マイクロコンピュータ10の指令は、先ず電磁弁7を開とし、プランジャー4を作動させ、ダイヤフラム3を作動して流体を吸入した後電磁弁7を閉とし、次に電磁弁8を開き、ダイヤフラム3を作動させて吐出させ、電磁弁8を閉じる。これを繰り返してポンプ作用を行わせ、そのサイクルを制御することにより流量を制御する。」(第2ページ左上欄第1?13行)
ラ.「上述の実施例は、ダイヤフラムポンプを用いた例であるが、ダイヤフラム3のない、プランジャー4のみのプランジャーポンプ型のものでも同様であり、」(第2ページ左上欄第18行?右上欄第1行)
リ.「本発明は・・・(中略)・・・また、コンピュータを用いるため、演算結果などから決められた容量を任意の速度で任意の時間に供給することができる。更に、逆止弁ではできない逆方向への定量給液も自由に行うことができる。」(第2ページ右上欄第4?10行)
そして、記載事項ユ及びヨ並びに第1及び2図の記載から、以下の事項が理解できる。
ル.ポンプのハウジングは、ダイヤフラムが内部に配置され、該ダイヤフラムの往復動により容量が可変する空胴と、電磁弁7により開閉され、該空胴と連通する第1のポートと、電磁弁8により開閉され、前記空胴と連通する第2のポートと、を含む。

第5 対比

本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

引用例1、特に記載事項イからみて、引用発明は、前記ユーティリティポート229に、該ユーティリティポート229で生成される減圧又は加圧を利用する機器が接続されるものであるから、引用発明の「流体フロー装置210」は、本願発明の「圧力コントローラ」に相当する。

引用発明、特に双方向ポンプ220並びに電気制御2方向弁280及び281の動作からみて、引用発明は、大気弁282から2つに分岐された前記ピストンチャンバのうちの、共通流体フローポート246が連通する一方を介してユーティリティポート229に流体を供給して、前記ユーティリティポート229で加圧を生成し、前記ユーティリティポート229から2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方を介して前記大気弁282へ流体を放出して、前記ユーティリティポート229で減圧を生成する。そうすると、引用発明の「大気弁282」及び「ユーティリティポート229」は、それぞれ、本願発明の「第1のポート」及び「第2ポート」に相当し、また前記大気弁282は、当然、大気に連通している。
引用発明において、隔膜が上下に移動すれば、該隔膜により2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方の容量が可変されることは明らかであり、前記隔膜のアップストロークでは前記共通流体フローポート246で陽圧が生成され、ダウンストロークでは前記共通流体フローポート246で負圧若しくは減圧が生成されるから、引用発明の、隔膜により「2つに分岐されたピストンチャンバの一方」、「アップストローク」及び「ダウンストローク」は、それぞれ、本願発明の「空胴」、「圧縮ストローク」及び「拡大ストローク」に相当する。そして、引用発明の「隔膜」は、本願発明の「ピストン」と、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより空胴の容量を可変する部材である点において一致する。
さらに、引用発明において、前記ピストンチャンバは、前記双方向ポンプ220のハウジング内に収容されているから、前記ハウジング228は、内部に前記ピストンチャンバが配置されているとともに、該ピストンチャンバ内に前記隔膜を有するといえる。
そうすると、引用発明の、双方向ポンプ220の「ハウジング」は、本願発明の「筐体」と、空胴を含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する、前記筺体である点で一致する。

引用発明の前記大気弁282は、先に検討したとおり、大気に連通しており、当該大気は、本願発明の「流体源」に相当する。そして、前記電気制御2方向弁281が開状態にあるとき、前記大気弁282と2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方が連通することは明らかである。そうすると、引用発明の「開状態と閉状態とを有する電気制御2方向弁281であって、前記共通流体フローポート246に接続されたマニホールド283の1分岐管を通る流体の流れを調節し、前記双方向ポンプ220から大気弁282に流れる流体の流れを調節する電気制御2方向弁281」は、本願発明の「開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁」に相当する。
引用発明は、先に検討したとおり、前記ユーティリティポート229に、該ユーティリティポート229で生成される減圧又は加圧を利用する機器が接続されるものであり、当該機器は、本願発明の「システム」に相当する。そして、前記電気制御2方向弁280が開状態にあるとき、前記ユーティリティポート229と2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方が連通することは明らかである。そうすると、引用発明の「開状態と閉状態とを有する電気制御2方向弁280であって、前記共通流体フローポート246に接続されたマニホールド283の他の1分岐管を通る流体の流れを調節し、前記双方向ポンプ220から流体フロー導管219を通って前記ユーティリティポート229に流れる流体の流れを調節する電気制御2方向弁280」は、本願発明の「開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁」に相当する。

引用発明の「制御器224」は、前記電気制御2方向弁280および281を開閉するものであるから、本願発明の「コンピュータ装置」と、第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置である点において一致する。
先に検討したとおり、引用発明は、大気弁282から双方向ポンプ220の、2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方を介してユーティリティポート229に流体を供給して、前記ユーティリティポート229で加圧を生成する。また、引用発明は、前記ユーティリティポート229から2つに分岐された前記ピストンチャンバの前記一方を介して前記大気弁282へ流体を放出して、前記ユーティリティポート229で減圧を生成するものであり、この場合、前記ユーティリティポート229に接続される機器は、当然、少なくとも低真空となる。してみれば、引用発明の「前記ユーティリティポート229で減圧または加圧のいずれかを生成する」ことは、本願発明の「2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させ」、「前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「選択的に前記弁280および281をポンプサイクル相と同期して開閉し、前記ユーティリティポート229で減圧または加圧のいずれかを生成する制御器224」は、本願発明の「2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成されたコンピュータ装置であって、前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記コンピュータ装置」と、2つの動作モードにおいて圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置であって、前記第1の動作モードは、流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記装置である点で一致する。
さらに、引用発明は、前記制御器224が選択的に前記電気制御2方向弁280および281をポンプサイクル相と同期して開閉するから、前記電気制御2方向弁280および281と前記制御器224との交信の中には、前記制御器224から前記電気制御2方向弁280および281に送られる制御信号が含まれることは明らかである。そうすると、引用発明の「電気制御2方向弁280および281は、前記制御器224と交信する」ことは、本願発明の「前記コンピュータ装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送」ることと、第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置が前記第1と第2の制御弁に制御信号を送る点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
【一致点】
「第1のポートと第2のポートと、
空胴を含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成された装置であって、前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記装置とからなり、
前記装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送る、圧力コントローラ。」
【相違点1】
第1のポート及び第2のポートについて、本願発明は、筐体が第1のポートと第2のポートとを含むのに対し、引用発明は、筐体(双方向ポンプ220のハウジング)を収容するハウジング228が第1のポート(大気弁282)と第2のポート(ユーティリティポート229)とを有する点。
【相違点2】
圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより空胴の容量を可変する部材について、本願発明は、ピストンであるのに対し、引用発明は、隔膜である点。
【相違点3】
第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置について、本願発明は、コンピュータ装置であるのに対し、引用発明は、制御器が何で構成されているのか特定されていない点。
【相違点4】
本願発明は、第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成されているのに対し、引用発明は、第1の制御弁(電気制御2方向弁281)と第2の制御弁(電気制御2方向弁280)を選択的にポンプサイクル相と同期して開閉する点。
【相違点5】
本願発明は、第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放されるのに対し、引用発明は、第1の制御弁(電気制御2方向弁281)及び第2の制御弁(電気制御2方向弁280)がポンプサイクル相と同期して開閉するにあたり、複数回開放されない点。

第6 判断

1.相違点1について
空胴を含み、圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより該空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する筐体を備えてなる流体機械であって、該筐体が、前記空胴に連通する2つのポートであって、前記空胴の容量が可変されることに伴って一方から流体が吸入され他方から流体が吐出される2つのポートをも含むものは、例えば引用例4(特に事項ル参照)に記載されているように、周知である。そして、引用発明も、空胴(2つに分岐されたピストンチャンバの一方)の容量が変化することに伴い、第1のポート(大気弁282)及び第2のポート(ユーティリティポート229)の一方から流体が吸引され、他方から吐出されるものである。そうすると、引用発明において、相違点1に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、前記周知技術に基いて、当業者が容易になし得る事項である。

2.相違点2について
空胴を含み、圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより該空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する筐体を備えてなる流体機械であって、該部材がピストンであるものは、慣用されている。さらに、引用例1には、引用発明の前記双方向ポンプ220を隔膜ポンプ以外の型式のポンプとすることについての示唆もある(記載事項サ参照)。そうすると、引用発明において、相違点2に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。

3.相違点3について
コンピュータ装置により構成された制御器は、慣用されている。さらに、引用例1の記載事項コには、引用発明とは別な実施例に係るものではあるが、制御装置124にプログラムすることが記載されているから、引用例1には、前記制御器224をコンピュータ装置により構成することが示唆されているといえる。そうすると、引用発明において、相違点3に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。

4.相違点4について
引用例2に記載された技術は、ピストン8がシリンダ3内を往復動し、それに伴い、冷媒を吸気口3Aを介して前記シリンダ3内に吸い込み、圧縮された冷媒を排気口3Bを介して前記シリンダ3内から吐出するものであるから、該シリンダ3は、当然、前記ピストン8が配置され、その容量が前記ピストンの往復動に伴い変化する内部空間を有し、当該内部空間は、本願発明の「空胴」に相当する。そして、引用例2に記載された技術の「吸気口3A」、「排気口3B」、「ピストン8」、「シリンダ3」及び「往復動型圧縮装置」は、それぞれ、本願発明の「第1のポート」、「第2のポート」、「ピストン」、「筐体」及び「圧力コントローラ」に相当する。
そして、引用例2に記載された技術は、前記ピストン8の吸気行程において、吸気弁4が開かれていると、前記吸気口3Aに接続された吸気通路1を通して前記冷媒が吸い込まれるから、該吸気通路1は、当然、冷媒の供給源に接続されており、該冷媒の供給源は、本願発明の「流体源」に相当し、引用例2に記載された技術の「吸気弁4」は、本願発明の「第1の制御弁」に相当する。また、引用例2に記載された技術は、ヒートポンプ等に用いられるものであって、前記ピストン8の圧縮行程において、排気弁5が開かれていると、前記排気口3Bに接続された排気通路に圧縮された冷媒が排気されるから、該排気通路2は、当然、ヒートポンプ等の、前記圧縮された冷媒を利用する機器に接続されており、該機器は、本願発明の「システム」に相当し、引用例2に記載された技術の「排気弁5」は、本願発明の「第2の制御弁」に相当する。
そして、引用例2に記載された技術は、制御ボックス12が前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御しているから、該「制御ボックス12」は、本願発明の「コンピュータ装置」と、少なくとも、流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置である点において一致する。
そうすると、引用例2に記載された技術の「シリンダ3と、該シリンダ3の頂部に開口形成され、吸気通路1が接続される吸気口3Aと、前記シリンダ3の頂部に開口形成され、排気通路2が接続される排気口3Bと、前記吸気口3Aを開閉する吸気弁4と、前記排気口3Bを開閉する排気弁5と、」「前記シリンダ3内を往復動するピストン8と、」「制御ボックス12と、」「を備え、」「前記制御ボックス12は、」「前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御する」態様は、
本願発明の「第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成されたコンピュータ装置であって、前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記コンピュータ装置とからな」る態様と、少なくとも、
第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる点において一致している。
そして、引用例2に記載された技術において、前記吸気弁4と前記排気弁5は別個の弁であって、前記吸気弁4が弁駆動部6により強制的に開閉動せしめられ、前記排気弁5が弁駆動部7により強制的に開閉動せしめられるから、前記吸気弁4及び排気弁5は、互いに、相手が開閉状態に関係なく、独立して開閉可能であるといえる。さらに、引用例2の記載事項ネ、特に「第2図または第3図において、流量を一定にしたまま圧縮比を変更することが必要となった場合は、吸気弁4を閉じるピストン位置C,Eを変えず、排気弁5を開けるピストン位置D,Fが変更される。」との記載を参照すれば、引用例2に記載された技術は、操作盤13で設定された流量、圧縮比が得られるように、前記制御ボックス12が、ピストン位置検出手段を構成する角度検出センサ11及び前記操作盤13の入力に従って、前記吸気弁4の開閉動と前記排気弁5の開閉動とを独立して制御しているといえる。
そうすると、引用例2に記載された技術の「前記吸気弁4を強制的に開閉動せしめる弁駆動部6と、前記排気弁5を強制的に開閉動せしめる弁駆動部7と、」「ピストン位置検出手段を構成する角度検出センサ11と、」「必要とされる冷媒の流量、圧縮比を人為的に設定するための操作盤13と、を備え、」「前記制御ボックス12は、前記センサ11からの信号及び前記操作盤13で設定された流量、圧縮比が入力され、前記センサ11、前記操作盤13からの入力に従って前記吸気弁4、排気弁5の開閉動を制御」し、「前記制御ボックス12は、操作盤13で設定された冷媒の流量、圧縮比が得られるように、ピストン移動行程における吸気弁4、排気弁5の開閉動のタイミングを定め、前記吸気弁4は、ピストン8の吸気行程又は圧縮行程において、ピストン8が必要とされる冷媒の流量と対応する位置に達したときに閉じられ、前記排気弁5は、ピストン8の圧縮行程において、ピストン8が必要とされる圧縮比と対応する位置に達したときに開かれる」態様は、本願発明の「前記コンピュータ装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送り、該第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成され」る態様と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁および第2の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置が該第1と第2の制御弁に制御信号を送り、前記第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成される点において一致する。
したがって、引用例2には、
第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる、圧力コントローラにおいて、
相違点4に係る本願発明を特定する事項に相当する、前記装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送り、該第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成されることが、記載されている。

次に、引用発明と引用例2に記載された技術を対比すると、両者は、少なくとも、「第1のポートと第2のポートと、
空胴と含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる、圧力コントローラ。」である点で一致している。
そして、引用発明においても、前記電気制御2方向弁280と前記電気制御2方向弁281は別個の弁であるから、前記電気制御2方向弁280及び前記電気制御2方向弁281は、互いに、相手が開閉状態に関係なく、独立して開閉可能であるといえる。さらに、引用例1の記載事項ケ及びコには、引用発明とは別な実施例に係るものではあるが、電気制御弁の開閉時期を変化させることにより、ユーティリティポートを通る流量を変化させることが記載されているから、引用例1には、前記ユーティリティポート229を通る流量を所望の流量とするために前記電気制御2方向弁280や電気制御2方向弁281の開閉時期を変化させることが示唆されているといえる。さらに、圧縮機において、流量のみならず圧縮比をも所望の値を設定できるようにすることは、当然の技術課題である。
してみれば、引用例2に記載された技術を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。

以上のとおりであるから、引用発明において、相違点4に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。

5.相違点5について
本願発明と引用例3に記載された技術を対比すると、引用例3に記載された技術の「シリンダ室」、「ピストン」、「複動形シリンダ3」及び「容積形往復圧縮装置」は、それぞれ、本願発明の「空胴」、「ピストン」、「筐体」及び「圧力コントローラ」に相当する。
引用例3に記載された技術は、前記ピストンの先端側への押し込み工程時に下吸入弁8が開になり、吸入ライン6より下吸入ポートを介してガスが前記シリンダ室内に導かれ、前記ピストンの後端側への引き込み工程時に上吸入弁9が開になり、前記吸入ライン6より上吸入ポートを介して前記ガスが前記シリンダ室内に導かれるから、引用例3に記載された技術の「下吸入ポート」と「上吸入ポート」、及び「下吸入弁8」と「上吸入弁9」は、それぞれ、本願発明の「第1のポート」、及び「第1の制御弁」に相当し、また前記吸入ライン6は、当然、前記ガスの供給源に接続されており、該ガスの供給源は、本願発明の「流体源」に相当する。
引用例3に記載された技術は、前記ピストンの後端側への引き込み工程時に下吐出し弁が開になり、前記シリンダ室内から下吐出ポートを介して吐出ライン7に圧縮ガスが吐き出され、前記ピストンの先端側への押し込み工程時に上吐き出し弁が開になり、前記シリンダ室内から前記上吐出ポートを介して前記吐出ライン7に前記圧縮ガスが吐き出されるから、引用例3に記載された技術の「下吐出ポート」と「上吐出ポート」、及び「下吐出し弁」と「上吐き出し弁」は、それぞれ、本願発明の「第2のポート」、及び「第2の制御弁」に相当し、また前記吐出ライン7は、当然、前記圧縮ガスを利用する機器に接続されており、該機器は、本願発明の「システム」に相当する。
そして、引用例3に記載された技術は、制御装置13が、前記下吸入弁8及び上吸入弁9の開閉操作をしているから、該「制御装置13」は、本願発明の「コンピュータ装置」と、少なくとも、流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置である点において一致する。
そうすると、引用例3に記載された技術の「下吸入ポート、下吐出ポート、上吸入ポート、上吐出ポート及びシリンダ室を有する複動形シリンダ3と、前記シリンダ室で一定に往復運動するピストンと、
前記ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、吸入ライン6より前記下吸入ポートを介してガスを前記シリンダ室内に導く下吸入弁8と、
前記ピストンの後端側への引き込み工程時に開になり、前記シリンダ室内から前記下吐出ポートを介して吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す下吐出し弁と、
前記ピストンの後端側への引き込み工程時に開となり、前記吸入ライン6より前記上吸入ポートを介してガスを前記シリンダ室内に導く上吸入弁9と、
前記ピストンの先端側への押し込み工程時に開になり、前記シリンダ室内から前記上吐出ポートを介して前記吐出ライン7に圧縮ガスを吐き出す上吐き出し弁と、
下エアーシリンダ10及び上エアーシリンダ11による前記下吸入弁8及び前記上吸入弁9の開閉を操作することにより吐出し容量を調節する制御装置13と、を備え」る態様は、
本願発明の「第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
2つの動作モードにおいて前記圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁および前記第2の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成されたコンピュータ装置であって、前記第1の動作モードは、前記流体源から前記システムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとしてであり、前記第2の動作モードは、前記システムから流体を取り除くように構成された真空ポンプとしてである、前記コンピュータ装置とからな」る態様と、少なくとも、
第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる点において一致している。
そして、引用例3の記載、特に記載事項ミ及びム並びに図3及び4の記載からみて、引用例3に記載された技術において、前記下吸入弁8は、時分割制御(PWM制御)により、吐き出しプロセスである前記ピストンの後端側への引き込み工程時に複数回開かれ、かつその際の開状態である期間は可変であり、同様に、前記上吸入弁9は、時分割制御(PWM制御)により、吐き出しプロセスである前記ピストンの先端側への押し込み工程時に複数回開かれ、かつその際の開状態である期間は可変である。
そうすると、引用例3に記載された技術の「前記下吸入弁8は、前記下エアーシリンダ10により強制的に開操作される下アンローダ機構になっており、前記上吸入弁8は、前記上エアーシリンダ11により強制的に開操作される上アンローダ機構になって」おり、「前記制御装置13は、前記下アンローダ機構又は前記上アンローダ機構に前記下吸入弁8又は上吸入弁9を開操作させる操作信号(パルス信号)を出力し、前記下吸入弁8又は上吸入弁9が前記操作信号に対応する操作量(パルス間隔)で操作され、前記下吸入弁8又は上吸入弁9の開閉操作は時分割制御(PWM制御)することにより無段階に調節され、この状態で吐出しプロセスが行われる」態様は、
本願発明の「前記コンピュータ装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送」る「ように更に構成され、そして、第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される」態様と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置が第1の制御弁に制御信号を送るように更に構成され、そして、第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される点において一致する。
したがって、引用例3には、
第1のポートと第2のポートと空胴とを含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変するピストンを前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、第1の制御弁を開状態と閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる、圧力コントローラにおいて、
相違点5に係る本願発明を特定する事項に相当する、前記第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放されることが、記載されている。

次に、引用発明と引用例3に記載された技術を対比すると、両者は、少なくとも、「第1のポートと第2のポートと、
空胴と含む筺体であって、圧力コントローラの動作の間に圧縮ストロークと拡大ストロークを行うことにより前記空洞の容量を可変する部材を前記空胴内に有する、前記筺体と、
開状態と閉状態とを有する第1の制御弁であって、前記第1の制御弁が前記開位置にある場合に前記第1のポートを介して流体源と流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第1の制御弁と、
開状態と閉状態とを有する第2の制御弁であって、前記第2の制御弁が前記開位置にある場合に前記第2のポートを介して制御されるシステムと流体連通して前記空胴を選択的に接続する前記第2の制御弁と、
流体源からシステムに流体を供給するように構成されたコンプレッサとして圧力コントローラを動作させるように、前記第1の制御弁を前記開状態と前記閉状態との間で作動させるように構成された装置とからなる、圧力コントローラ。」である点で一致している。
そして、引用例1の記載事項ケ及びコには、引用発明とは別な実施例に係るものではあるが、電気制御弁の開閉時期を変化させることにより、ユーティリティポートを通る流量を変化させることが記載されているから、引用例1には、前記ユーティリティポート29を通る流量を所望の流量とするために前記電気制御2方向弁280や前記電気制御2方向弁281の開閉時期を変化させること、すなわち前記電気制御2方向弁280や電気制御2方向弁281が開状態とされる期間を可変とすることが示唆されているといえる。
してみれば、引用例3に記載された技術を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。

以上のとおりであるから、引用発明において、相違点5に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、引用例3に記載された技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。

なお、請求人は、平成30年2月7日に提出された意見書において、「この引用例3も、本願発明の特徴である「第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される」こと・・・(中略)・・・を開示も示唆もしておりません。」と主張している(【意見の内容】(3)(エ)参照)。
しかしながら、引用例3に、本願発明の「第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される」態様に相当する事項が記載されていることは、先に検討したとおりであるから、請求人の前記主張は認められない。

6.効果について
引用例1には、先に検討したとおり、前記電気制御2方向弁280や電気制御2方向弁281の開閉時期を変化させることにより、前記ユーティリティポート229を通る流量を変化させることが示唆されている。そして、引用例2に記載された技術は、前記操作盤13で設定された冷媒の流量、圧縮比が得られるように前記吸気弁4、排気弁5の開閉弁のタイミングを定めるものであり、引用例3に記載された技術は、最終吐出ラインの吐出し圧力が設定値となるように、吐き出しプロセスにおける前記下吸入弁8及び上吸入弁9の開状態である期間を定めるものである。そして、コンプレッサの吐出量や吐出圧、また真空ポンプの吸入量や吸入負圧を変化させることにより、該コンプレッサの吐出側又は真空ポンプの吸入側に接続された装置の圧力を制御できることは、当業者にとって明らかである。
そうすると、本願発明の奏する効果に、引用例1?3に記載された事項及び前記周知の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせない。

なお、請求人は、平成30年2月7日に提出された意見書において、「本願発明に係わる圧力コントローラは、「前記コンピュータ装置が第1と第2の制御弁に制御信号を送り、該第1と第2の制御弁を独立して開閉するように更に構成されて、」第1と第2の制御弁が互いに関連するのではなく、他の制御弁の開閉状態を変更することなく独立して開閉し、更に、「第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される」ことで、「様々な圧力レベルで試験装置などの関連システム又は装置内の圧力を正確且つ精密に制御できる」(平成24年4月9日提出の明細書(以下出願当初の明細書という)の段落【0012】【0035】参照)という優れた効果を奏するものです。」と主張し(【意見の内容】(3)(ア)参照)、さらに「引用例1?4は、いずれも本願発明の特徴である「第1の制御弁と第2の制御弁のうちの少なくとも一方が、前記ピストンの各ストロークの間可変期間で複数回開放される」こと・・・(中略)・・・を開示も示唆もしておりません。しかも、本願発明は上記のような優れた効果を奏するものであります。」と主張している(【意見の内容】(3)(カ)参照)。
しかしながら、先に検討したとおり、引用発明において、相違点1?5に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、引用例2及び3に記載された技術並びに前記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項であり、また本願発明の奏する効果にも、引用例1?3に記載された事項及び前記周知の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせないから、請求人の前記主張は認められない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2及び3に記載された技術並びに前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-25 
結審通知日 2018-05-01 
審決日 2018-05-15 
出願番号 特願2012-88835(P2012-88835)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 久保 竜一
永田 和彦
発明の名称 電子制御弁を用いた装置  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  

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