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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1344639
審判番号 不服2017-1747  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-06 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2013-177027「研磨用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日出願公開,特開2014-187348,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月28日の出願(優先権主張:平成25年2月20日)であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 4月28日 拒絶理由通知
平成28年 7月 5日 意見書提出・手続補正
平成28年11月 2日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 2月 6日 審判請求・手続補正
平成30年 6月18日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)
平成30年 7月23日 意見書提出・手続補正

第2 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成30年7月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-本願発明7は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
無極性面を有するサファイア基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって,
コロイダルシリカ粒子と,水と,を含み,
前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)が0.5以上1.5以下であり,
前記コロイダルシリカ粒子の比表面積が60m^(2)/g以下である,研磨用組成物。
【請求項2】
前記コロイダルシリカ粒子の累積個数分布において,小粒径側からの3%累積時の粒径および小粒径側からの97%累積時の粒径をそれぞれD_(3)およびD_(97)としたとき,D_(97)をD_(3)で除した値(D_(97)/D_(3))が2.0以上である,請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記コロイダルシリカ粒子のアスペクト比が1.10以上である,請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
pHが5以上11以下である,請求項1?3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径が25nm以上70nm以下である,請求項1?4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
無極性面を有するサファイア基板を請求項1?5のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて研磨する,研磨方法。
【請求項7】
請求項6に記載の研磨方法で研磨する工程を含む,サファイア基板の製造方法。」

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2001-11433号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,平均粒子径10?120nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合する金属酸化物含有シリカからなり,動的光散乱法による測定粒子径(D_(1)nm)と球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径(窒素吸着法による測定粒子径/D_(2)nm)の比D_(1)/D_(2)が3以上であって,このD_(1)は50?800nmであり,球状コロイダルシリカ粒子が一平面内のみにつながった数珠状コロイダルシリカ粒子が水中に分散した安定なシリカゾル(以下数珠状のシリカゾルと記載)でSiO_(2)濃度として0.5?50重量%含有するアルミニウムディスク,シリカを表面に有する基板及び半導体ウェハーの研磨用組成物に関する。
【0002】更に詳細に述べれば,この数珠状のシリカゾルはそのコロイダルシリカ粒子の形状に特徴を有し,本発明の研磨方法により高精度に平滑な研磨表面を効率的に得ることができるため最終仕上げ研磨方法として有用である。ここでのアルミニウムディスクの研磨とは,アルミニウムあるいはその合金からなる磁気記録媒体ディスクの基材そのものの表面,又は基材の上に設けられたNi-P,Ni-Bなどのメッキ層の表面,特にNi90?92%とP8?10%の組成の硬質Ni-Pメッキ層,及び酸化アルミニウム層を研磨することをいう。シリカを表面に有する基板の研磨とは,シリカを50重量%以上含有する基板上の表面層の研磨を示す,例として,水晶,フォトマスク用石英ガラス,半導体デバイスのSiO_(2)酸化膜,結晶化ガラス製ハードディスク,アルミノ珪酸塩ガラス又はソーダライムガラス強化ガラス製ハードディスクを研磨することをいう。また半導体ウェハーの研磨とは,珪素単体の半導体ウェハー,ガリウム砒素,ガリウム燐,インジウム燐等の化合物半導体ウェハーを研磨することをいう。
【0003】また,本発明の研磨用組成物は,高精度に平滑な研磨表面が効率的に得ることができるため,半導体多層配線基板の銅,アルミニウムなどの配線金属,窒化膜及び炭化膜などの精密研磨及び,サファイヤ,タンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウムなどの単結晶,GMR磁気ヘッドなどの最終研磨にも有用である。」

「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の研磨用組成物の構成物質である数珠状のシリカゾルは,SiO_(2)濃度50重量%以下の濃度を有し,安定である。そしてこのシリカゾルの液状媒体中に分散しているコロイダルシリカ粒子の形状が,動的光散乱法による測定粒子径D_(1)として50?800nmの大きさを有し,電子顕微鏡によって観察するとこの粒子は球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合するシリカからなり,球状コロイダルシリカ粒子が一平面内のみにつながった形状を有し,そしてつながり度合として球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径(窒素ガス吸着法によって測定される粒子径)D_(2)と上記D_(1)の比D_(1)/D_(2)値が3以上である数珠状である点に特徴を有する。
【0008】数珠状のシリカゾルは,平均粒子径10?120nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合する金属酸化物含有シリカからなり,動的光散乱法による測定粒子径(D_(1)nm)と球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径(窒素吸着法による測定粒子径/D_(2)nm)の比D_(1)/D_(2)が3以上であって,このD_(1)は50?800nmであり,球状コロイダルシリカ粒子が一平面内のみにつながった数珠状コロイダルシリカ粒子が液状媒体中に分散されてなるSiO_(2)濃度5?40重量%の安定なシリカゾルからなる。」

「【0014】数珠状コロイダルシリカ粒子を構成する球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径(D_(2))は通常窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積Sm^(2)/gから,D_(2)=2720/S(nm)の式によって与えられる。」

「【0025】
【実施例】実施例1
市販のJIS3号水ガラス(SiO_(2)/Na_(2)Oモル比3.22,SiO_(2) 濃度28.5重量%)に純水を加えて,SiO_(2)濃度3.6重量%の珪酸ナトリウム水溶液を得た。別途用意された商品名アンバーライト120Bの陽イオン交換樹脂充填のカラムに,上記珪酸ナトリウム水溶液を通すことにより,SiO_(2)濃度3.60重量%,pH2.90,電導度580μS/cmの活性珪酸のコロイド水溶液を得た。
【0026】上記活性珪酸のコロイド水溶液183kg(SiO_(2)含量6.6kg)を500Lのグラスライニイグ製オートクレーブ容器に投入し攪拌下に純水126kgを加えて,SiO_(2)濃度2.13重量%,pH3.1の活性珪酸のコロイド水溶液とした。次いで,これに10重量%の硝酸カルシウム水溶液(pH4.32)12.14kg(Ca0含量416g)を攪拌下に室温で添加し,30分間攪拌を続行した。添加した硝酸カルシウムはCaOとしてSiO_(2)に対して6.31重量%であった。
【0027】一方,平均粒子径(窒素吸着法/D_(2))20.5nmの酸性球状シリカゾルスノーテックスO-40(日産化学工業(株)製)(比重1.289,粘度4.10mPa・s,pH2.67,電導度942μS/cm,SiO_(2)濃度40.1重量%)409kg(SiO_(2)含量164kg)を別の容器に投入し,これに2重量%の水酸化ナトリウム水溶液3.1kgを攪拌下に添加し,30分攪拌を続行して,pH4.73,SiO_(2)濃度40.0重量%の酸性シリカゾルを得た。
【0028】このシリカゾルの動的光散乱法による測定粒子径(D_(1))は,35.0nmでありD_(1)/D_(2)値は,1.71であった。また,電子顕微鏡観察によると,このシリカゾル中のコロイダルシリカ粒子は球状であり,単分散に近い分散を示し,コロイド粒子間の結合,凝集は認められなかった。
【0029】前記硝酸カルシウムを添加した活性珪酸のコロイド水溶液[混合液(a)]に,上記20.5nmの酸性球状シリカゾルを攪拌下に添加し,30分間攪拌を続行し混合液(b)を得た。
【0030】次いで得られた混合液(b)に2重量%の水酸化ナトリウム水溶液66.9kgを攪拌下に10分間かけて添加し,更に1時間攪拌を続行した。この水酸化ナトリウム水溶液の添加により得られた混合液(c)はpH9.60,電導度3260μS/cmを示し,SiO_(2)濃度21.5重量%,SiO_(2)/Na_(2)Oモル比163であった。
【0031】次いで,上記アルカリ性の混合液(c)800kgを145℃で攪拌下3時間加熱した後,冷却して内容物800kgを取り出した。得られた液は透明性コロイド色のシリカゾルであり,SiO_(2)濃度21.5重量%含有し,SiO_(2)/Na_(2)Oモル比200,pH9.78,比重1.138,粘度9.5mPa・s,電導度3335μS/cm,動的光散乱法による測定粒子径(D_(1))は128nmであった。
【0032】従って,D_(1)/D_(2)比は6.24である。電子顕微鏡観察によると得られたシリカゾル中のコロイダルシリカ粒子は球状コロイダルシリカ粒子とそれを接合するシリカからなり,球状コロイダルシリカ粒子が,一平面内に数珠状に5個?30個つながった数珠状コロイダルシリカ粒子であり3次元のゲル構造粒子は認められなかった。
【0033】このシリカゾルにはシリカゲルの存在は認められず,シリカゾルは室温で6ヶ月放置によっても沈降物の生成,ゲル化は認められず安定であった。
【0034】得られたアルカリ性シリカゾルに10%硝酸と純水を添加し,pH7.10及びSiO_(2)濃度14.0重量%である数珠状コロイダルシリカ粒子を含む研磨用組成物(A)を調整した。」

「【0069】この数珠状シリカゾルを含有する研磨用組成物は球状のシリカゾルよりも研磨特性が優れているので,高精度に平滑な研磨表面が効率的に得ることができるため,半導体多層配線基板の銅及びアルミニウム配線金属,窒化膜及び炭化膜などの精密研磨及び,サファイヤ,タンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウムなどの単結晶,GMR磁気ヘッドなどの最終研磨にも有用である。」

(2)引用発明1
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 サファイヤの最終研磨に有用である研磨用組成物であって,
球状コロイダルシリカ粒子が一平面内のみにつながった数珠状コロイダルシリカ粒子と純水を含み,
球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径が10?120nmであり,
数珠状コロイダルシリカ粒子を構成する球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径(D_(2))は通常窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積Sm^(2)/gから,D_(2)=2720/S(nm)の式によって与えられる研磨用組成物。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(国際公開第2011/021599号)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「 技術分野
[0001] 本発明は,半導体基板の配線形成工程等における研磨に使用されるCMP研磨液及び研磨方法に関する。」

「[0021] 本発明は,前記問題点に鑑み,バリア膜の研磨速度が高速であり,層間絶縁膜を高速に研磨でき,かつ,CMP研磨液中の砥粒の分散安定性が良好あるCMP研磨液を提供することを目的とするものである。
[0022] また,本発明は,前記問題点に鑑み,バリア膜の研磨速度が高速であり,層間絶縁膜を高速に研磨でき,かつ,シーム等の平坦性の問題を抑制できるCMP研磨液を提供することを目的とするものである。
[0023] また,本発明は,微細化,薄膜化,寸法精度,電気特性に優れ,信頼性が高く,低コストの半導体基板等の製造における研磨方法を提供することを目的とするものである。」

「[0052] (第一実施形態)
以下,本発明のCMP研磨液について順に説明する。本発明のCMP研磨液の第一実施形態は,媒体と,前記媒体に分散している砥粒としてシリカ粒子とを含む,CMP研磨液であって,前記シリカ粒子のシラノール基密度が5.0個/nm^(2)以下であり,前記シリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径が25?55nmであり,前記シリカ粒子の会合度が1.1以上であるCMP研磨液である。
[0053] 第一実施形態に係るCMP研磨液は,従来のCMP研磨液と比較して,シリカ粒子の分散安定性が良好であり,さらに層間絶縁膜に対する良好な研磨速度を得ることができる。このような効果を有する理由は必ずしも明らかではないが,本発明者らは以下のように推定している。すなわち,シラノール基(-Si-OH)密度が小さい粒子は,シリカ粒子に存在する未反応の-Si-OH基が少なく,シリカ粒子中のSi-O-Si構造が充分かつ緻密に発達していると考えられる。このため,研磨粒子としての「硬さ」が相対的に高くなり,層間絶縁膜の研磨速度が速くなると推定している。但し,シリカ粒子のサイズが適切な範囲でないと,前記研磨速度と前記安定性とが両立できないため,二軸平均一次粒子径及び会合度と,前記シラノール基密度とのバランスを取ることが重要になると考えられる。」

「[0074] また,シリカ粒子の種類としては,ヒュームドシリカ,コロイダルシリカ等公知のものを使用することができるが,前記のシラノール基密度,二軸平均一次粒子径,会合度及びゼータ電位を有するシリカ粒子の入手が容易な点で,コロイダルシリカであることが好ましい。なお,本発明のCMP研磨液において,前記の特性を満たす限りは,2種類以上の砥粒を組み合わせて使用することができる。」

「[0079] (III.媒体)
CMP研磨液の媒体としては,シリカ粒子が分散できる液体であれば特に制限されないが,pH調整の取り扱い性,安全性,被研磨面との反応性などの点から水を主成分とするものが好ましく,より具体的には,脱イオン水,イオン交換水,超純水等が好ましい。」

「[0147] 本発明のCMP研磨液は,前記のような半導体基板に形成されたケイ素化合物膜の研磨だけでなく,所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜,ガラス,窒化ケイ素等の無機絶縁膜,フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス,ITO等の無機導電膜,ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路,光ファイバの端面,シンチレータ等の光学用単結晶,固体レーザ単結晶,青色レーザ用LEDサファイア基板,SiC,GaP,GaAs等の半導体単結晶,磁気ディスク用ガラス基板,磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる。」

「 実施例
[0148] 以下,実施例により本発明を説明する。但し,本発明はこれらの実施例により制限するものではない。
[0149] (実験1)
本発明の第一の実施形態に係るCMP研磨液を用いて,各種の膜を研磨した際の研磨速度及び砥粒の分散安定性を調べた。
[0150] (I-1.CMP研磨液用濃縮液の調製)
容器に,酸化金属溶解剤としてリンゴ酸を1.5質量部,金属防食剤としてベンゾトリアゾールを0.6質量部入れ,そこに超純水X質量部を注ぎ,攪拌・混合して,両成分を溶解させた。次に,表1?3に示すコロイダルシリカA?Rを,シリカ粒子として12.0質量部に相当する量添加し,「CMP研磨液用濃縮液」を得た。なお,前記コロイダルシリカは,それぞれ固形分(シリカ粒子含有量)が相違するため,前記超純水X質量部は,CMP研磨液用濃縮液が100質量部になるよう計算して求めた。
[0151] (I-2.CMP研磨液の調製)
前記CMP研磨液用濃縮液100質量部に,超純水200質量部添加して3倍に希釈し,「スラリ」を得た。次に,30質量%の過酸化水素水を2.66質量部(過酸化水素として0.8質量部に相当する量)添加し,攪拌・混合して実施例1-1?1-8,比較例1-1?1-10のCMP研磨液を調製した。
[0152] コロイダルシリカの二軸平均一次粒子径(R),BET比表面積(S_(BET)),シラノール基密度(ρ),二次粒子の平均粒径,会合度及びゼータ電位(ζ)の各値は,表1?表3に示されるとおりである。
[0153] (I-3.測定方法)
なお,表1?表3中,コロイダルシリカの特性は,下記のようにして調べた。
[0154] (1)二軸平均一次粒子径(R[nm])
適量のコロイダルシリカの液を取り,その液が入っている容器にパターン配線付きウエハを2cm角に切ったチップを約30秒浸した後,純水のはいった容器に移して約30秒間すすぎをし,そのチップを窒素ブロー乾燥する。その後,走査型電子顕微鏡(SEM)観察用の試料台に乗せ,加速電圧10kVを掛け,10万倍の倍率にてシリカ粒子を観察した画像を得た。得られた画像から,任意の粒子20個を選択した。図2に示すように,選択した粒子4に外接し,その長径が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形)5を導き,その外接長方形5の長径をX,短径をYとして,(X+Y)/2として1粒子の二軸平均一次粒子径を算出した。この作業を任意の20粒子に対して実施し,得られた値の平均値を求め,二軸平均一次粒子径とした。
[0155] (2)BET比表面積S_(BET)[m^(2)/g]
コロイダルシリカを乾燥機に入れて150℃で乾燥させた後,乳鉢で細かく砕いて測定セルに入れ,120℃で60分間真空脱気した後にBET比表面積測定装置(NOVA-1200,ユアサアイオニクス製)を用い,窒素ガスを吸着させる多点法により求めた。」

「[0161] (II-1.研磨速度)
前記(I-1)で得られたCMP研磨液を用いて,下記3種類のブランケット基板(ブランケット基板a?c)を,下記研磨条件で,研磨及び洗浄した。
[0162] (ブランケット基板)
・ブランケット基板(a):
厚さ1000nmの二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板。
[0163] ・ブランケット基板(b):
厚さ200nmの窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板。
[0164] ・ブランケット基板(c):
厚さ1600nmの銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板。
[0165] (研磨条件)
・研磨・洗浄装置:CMP用研磨機Reflexion LK(AMAT社製)
・研磨布:発泡ポリウレタン樹脂(品名:IC1010,Rohm and Haas製)
・定盤回転数:93回/min
・ヘッド回転数:87回/min
・研磨圧力:10kPa
・CMP研磨液の供給量:300ml/min
・研磨時間:ブランケット基板(a)90sec,ブランケット基板(b)30sec,ブランケット基板(c)120sec
研磨・洗浄後の3種類のブランケット基板それぞれについて,下記のようにして研磨速度を求め,各種の膜に対する研磨速度とした。研磨速度の測定結果を表1?表3に示す。
[0166] ブランケット基板(a)については研磨前後での膜厚を膜厚測定装置RE-3000(大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて測定し,その膜厚差から求めた。
[0167] ブランケット基板(b)及びブランケット基板(c)については,研磨前後での膜厚を金属膜厚測定装置(日立国際電気株式会社製型番VR-120/08S)を用いて測定し,その膜厚差から求めた。
[0168] (II-2.分散安定性評価)
前記(I-1)で調製したCMP研磨液用濃縮液を,それぞれ60℃の恒温槽で2週間保管した後,砥粒の沈降の有無を目視で確認した。また,60℃の恒温槽で2週間保管した後における二次粒子の平均粒径を前記と同様に測定し,保管後の平均粒径を,保管前の平均粒径で除して,粒径成長率(%)を求めた。
[0169] これらの結果を表1?表3に示す。
[表1](省略)
[0170]
[表2](省略)
[0171]
[表3](省略)」

「産業上の利用可能性
[0205] 本発明によれば,バリア膜の研磨速度が高速であり,かつ砥粒の分散安定性が良好であり,層間絶縁膜が高速に研磨できるCMP研磨液が得られ,研磨工程時間の短縮によるスループットの向上が可能となる。また,このCMP研磨液を用いて化学機械研磨を行う本発明の研磨方法は,生産性が高く,微細化,薄膜化,寸法精度,電気特性に優れ,信頼性の高い半導体基板及び他の電子機器の製造に好適である。」

[表1]-[表3]は,砥粒の物性,研磨速度,分散安定性の評価を示した表であって,実施例番号1-1から1-8,比較例番号1-1から1-10には,二軸平均一次粒子径R[nm]が21.5?89.0の範囲,BET比表面積S_(BET)[m^(2)/g]が45.8?162の範囲を有することが記載されている。

(2)引用発明2
前記(1)より,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「 二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板,窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板,銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板を研磨するCMP研磨液であって,
コロイダルシリカと,水と,を含み,
BET比表面積S_(BET)[m^(2)/g]が45.8?162,
二軸平均一次粒子径R[nm]が21.5?89.0であるCMP研磨液。」
また,前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
・引用文献2に記載されたCMP研磨液は,「半導体基板に形成されたケイ素化合物膜の研磨だけでなく,所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜,ガラス,窒化ケイ素等の無機絶縁膜,フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス,ITO等の無機導電膜,ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路,光ファイバの端面,シンチレータ等の光学用単結晶,固体レーザ単結晶,青色レーザ用LEDサファイア基板,SiC,GaP,GaAs等の半導体単結晶,磁気ディスク用ガラス基板,磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる」([0147])こと。

第4 対比及び判断
1 本願発明1と引用発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「サファイヤ」は,半導体用基板として周知な材料であり,「サファイア基板」を含むものであり,引用発明1の「サファイヤの最終研磨に有用である研磨用組成物」は,「サファイア基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物」といえる。
イ 引用発明1の「球状コロイダルシリカ粒子」は,本願発明1の「コロイダルシリカ粒子」に相当する 。
ウ 引用発明1の「純水」は,本願発明1の「水」に属するものである。
エ 引用発明1の「D_(2)=2720/S(nm)の式」より,比表面積S=2720/球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径D_(2)であり,また,球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径D_(2)は10?120nmであるから,比表面積Sは,22.6?272m^(2)/gの範囲を有する。
オ すると,本願発明1と引用発明1とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「サファイア基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって,
コロイダルシリカ粒子と,水と,を含む,
研磨用組成物。」

キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1の研磨用組成物は,「無極性面を有するサファイア基板」を研磨するものであるのに対し,引用発明の研磨用組成物は,サファイアのどの面を研磨するものであるのか記載されていない点。
(イ)相違点2
本願発明1では,「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)が0.5以上1.5以下」であるのに対し,引用発明1では,コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)をコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値,及び,前記値の範囲が記載されていない点。
(ウ)相違点3
本願発明1では,コロイダルシリカ粒子の比表面積が「60m^(2)/g以下」であるのに対して,引用発明1では,22.6?272m^(2)/gの範囲である点。

(2)相違点についての判断
相違点1,2について検討する。
ア 相違点1について
引用発明1においては,「本発明の研磨用組成物は,高精度に平滑な研磨表面が効率的に得ることができる」(第3の1(1)【0003】)ことは記載されているが,サファイアの研磨面の面方位について何ら着目していないから,当業者が「サファイア基板のうち特に無極性面(A面,M面等)または半極性面(R面等)を有するサファイア基板の研磨に用いられた場合,これらのサファイア基板は極性面(C面等)を有するサファイア基板に比べ比較的硬度が高く研磨加工が困難であることから,十分な高い研磨速度が得られない」(本願明細書【0006】)ことを認識することはなく,「無極性面・・を有するサファイア基板を高い研磨速度で研磨する」(本願明細書【0007】)動機付けがない。
イ 相違点2について
(ア)相違点2に係る構成である「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)が0.5以上1.5以下」ことは,引用発明1には明記されていないが,引用発明1の「D_(2)=2720/S(nm)の式」より,比表面積S=2720/球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径D_(2)であること,球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径D_(2)は10?120nmであることから,引用発明1のコロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)をコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)は,比表面積S/球状コロイダルシリカ粒子の平均粒子径D_(2)=2720/D_(2)^(2)であり,0.19?27.2の範囲を有することが算出できる。
(イ)ここで,引用発明1においては,「本発明の研磨用組成物は,高精度に平滑な研磨表面が効率的に得ることができる」(第3の1(1)【0003】)ことは記載されているが,コロイダルシリカ粒子の比表面積とコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径と関係と研磨速度の関係について何ら着目していないから,当業者が「研磨中の砥粒は,研磨機の加工圧力により基板に押し付けられて基板表面と固相反応し,固相反応により軟化した部位は,砥粒の摩擦力により除去される。砥粒表面に凹凸が多い場合には,砥粒とサファイア基板とがより効率良く固相反応すると考えられる。また,砥粒のアスペクト比が大きい場合には,砥粒の摩擦力が高くなり固相反応による生成物を効率良く除去することが可能となる。砥粒の個数平均粒子径が同等であっても砥粒表面に凹凸が多い場合は,比表面積が高くなると考えられ,砥粒の個数平均粒子径に対する比表面積の値が大きいほどサファイア基板の研磨には適すると考えられる。しかしながら,比表面積は微粒子の増加によっても大きくなるが,微粒子が過度に含まれる場合には,砥粒への加工圧力が分散され固相反応が乏しくなり,研磨能率が低くなることが考えられる。よって,砥粒の個数平均粒子径に対する比表面積の値には,適正な範囲が存在すると推定できる。また,この傾向は極性面であるC面とは異なる傾向であり,従来の技術とは明らかに一線を画するものであると言える。」(本願明細書【0013】)ことを認識することはなく,「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)」を「0.5以上1.5以下」の範囲に調整する動機付けがない。
(ウ)そして,本願発明1は,相違点1及び2に係る構成を備えることによって,「無極性面・・・を有するサファイア基板を高い研磨速度で研磨することができる」(本願明細書【0010】)という格別の効果を奏すると認められる。

2 本願発明1と引用発明2について
(1)本願発明1と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板,窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板,銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板」は,本願発明1の「無極性面を有するサファイア基板」と「基板」である点で共通である。
イ 引用発明2の「CMP研磨液」は,「研磨組成物」に属するものであり,引用発明2の「酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板,窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板,銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板を研磨するCMP研磨液」は,「基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物」といえる。
ウ 引用発明2の「コロイダルシリカ」は,本願発明1の「コロイダルシリカ粒子」に相当する。
エ 引用発明2の「BET比表面積S_(BET)[m^(2)/g]」は,本願発明1の「コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)」に相当する。
オ すると,本願発明1と引用発明2とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって,
コロイダルシリカ粒子と,水と,を含む,
研磨用組成物。」

キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1の研磨用組成物は,「無極性面を有するサファイア基板」を研磨するものであるのに対し,引用発明2のCMP研磨液は,「二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板,窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板,銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板」を研磨するものである点。
(イ)相違点2
本願発明1では,「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)が0.5以上1.5以下」であるのに対し,引用発明2では,コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)をコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値,及び,前記値の範囲が記載されていない点。
(ウ)相違点3
本願発明1では,コロイダルシリカ粒子の比表面積が「60m^(2)/g以下」であるのに対して,引用発明2では,「45.8?162m^(2)/g」の範囲である点。

(2)相違点についての判断
相違点1,2について検討する。
ア 相違点1について
引用発明2のCMP研磨液は,「半導体基板に形成されたケイ素化合物膜の研磨だけでなく,所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜,ガラス,窒化ケイ素等の無機絶縁膜,フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス,ITO等の無機導電膜,ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路,光ファイバの端面,シンチレータ等の光学用単結晶,固体レーザ単結晶,青色レーザ用LEDサファイア基板,SiC,GaP,GaAs等の半導体単結晶,磁気ディスク用ガラス基板,磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる」ことが記載されている。
ここで,引用発明2に記載されたCMP研磨液を,サファイアに適用することを検討する。
「二酸化ケイ素をCVD法で形成したシリコン基板,窒化タンタル膜をスパッタ法で形成したシリコン基板,銅膜をスパッタ法で形成したシリコン基板」とサファイアとは,IV族半導体と金属酸化物との関係であり,コロイダルシリカ粒子による両者のCMP研磨特性が大きく異なることは当業者が通常認識することであり,引用発明2のCMP研磨液でサファイアを研磨した際に,引用文献2に記載された「バリア膜の研磨速度が高速であり,層間絶縁膜を高速に研磨でき,かつ,CMP研磨液中の砥粒の分散安定性が良好である」(第3の2(1)[0021]),「バリア膜の研磨速度が高速であり,層間絶縁膜を高速に研磨でき,かつ,シーム等の平坦性の問題を抑制できる」(第3の2(1)[0022]),「微細化,薄膜化,寸法精度,電気特性に優れ,信頼性が高く,低コストの半導体基板等の製造における研磨方法を提供する」(第3の2(1)[0023])ことである引用発明2の目的を達成できるとは認められない。
さらに,引用発明2においては,「このCMP研磨液を用いて化学機械研磨を行う本発明の研磨方法は,生産性が高く,微細化,薄膜化,寸法精度,電気特性に優れ,信頼性の高い半導体基板及び他の電子機器の製造に好適である。」(第3の2(1)[0205])ことは記載されているが,サファイアの研磨面の面方位について何ら着目していないから,当業者が「サファイア基板のうち特に無極性面(A面,M面等)または半極性面(R面等)を有するサファイア基板の研磨に用いられた場合,これらのサファイア基板は極性面(C面等)を有するサファイア基板に比べ比較的硬度が高く研磨加工が困難であることから,十分な高い研磨速度が得られない」(本願明細書【0006】)ことを認識することはなく,「無極性面・・・を有するサファイア基板を高い研磨速度で研磨する」(本願明細書【0007】)動機付けがない。
イ 相違点2について
(ア)相違点2に係る構成である「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)が0.5以上1.5以下」ことは,引用発明2には明記されていないが,引用発明2のコロイダルシリカの「BET比表面積S_(BET)[m^(2)/g]が45.8?162」であること,コロイダルシリカの「二軸平均一次粒子径R[nm]が21.5?89.0」であることから,引用発明2のコロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)をコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)は,算出することができる。
(イ)ここで,引用発明2においては,「微細化,薄膜化,寸法精度,電気特性に優れ,信頼性が高く,低コストの半導体基板等の製造における研磨方法を提供する」(第3の2(1)[0023])目的が記載されているが,コロイダルシリカ粒子の比表面積とコロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径と関係と研磨速度の関係について何ら着目していないから,当業者が「研磨中の砥粒は,研磨機の加工圧力により基板に押し付けられて基板表面と固相反応し,固相反応により軟化した部位は,砥粒の摩擦力により除去される。砥粒表面に凹凸が多い場合には,砥粒とサファイア基板とがより効率良く固相反応すると考えられる。また,砥粒のアスペクト比が大きい場合には,砥粒の摩擦力が高くなり固相反応による生成物を効率良く除去することが可能となる。砥粒の個数平均粒子径が同等であっても砥粒表面に凹凸が多い場合は,比表面積が高くなると考えられ,砥粒の個数平均粒子径に対する比表面積の値が大きいほどサファイア基板の研磨には適すると考えられる。しかしながら,比表面積は微粒子の増加によっても大きくなるが,微粒子が過度に含まれる場合には,砥粒への加工圧力が分散され固相反応が乏しくなり,研磨能率が低くなることが考えられる。よって,砥粒の個数平均粒子径に対する比表面積の値には,適正な範囲が存在すると推定できる。また,この傾向は極性面であるC面とは異なる傾向であり,従来の技術とは明らかに一線を画するものであると言える。」(本願明細書【0013】)ことを認識することはなく,「前記コロイダルシリカ粒子の比表面積(単位:m^(2)/g)を前記コロイダルシリカ粒子の個数平均粒子径(単位:nm)で除した値(比表面積/個数平均粒子径)」を「0.5以上1.5以下」の範囲に調整する動機付けがない。
(ウ)そして,本願発明1は,相違点1及び2に係る構成を備えることによって,「無極性面・・・を有するサファイア基板を高い研磨速度で研磨することができる」(本願明細書【0010】)という格別の効果を奏すると認められる。

3 本願発明2-7について
本願発明2-7は,本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1-2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,補正前の請求項1-5,7及び8に記載された発明について,上記引用文献1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成30年7月23日付け手続補正により補正された請求項1-7に記載された発明は,上記のとおり,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第1号について
当審では,請求項1-7の「半極性面を有するサファイア基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物」という点は,発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年7月23日付けの補正において,上記の点を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-7は,当業者が引用文献1-2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-01 
出願番号 特願2013-177027(P2013-177027)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 儀同 孝信  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 梶尾 誠哉
河合 俊英
発明の名称 研磨用組成物  
代理人 八田国際特許業務法人  

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