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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G
管理番号 1344701
審判番号 不服2017-1109  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-25 
確定日 2018-10-03 
事件の表示 特願2015-46956号「患者ベッド制御のための介護者汎用遠隔カート」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月1日出願公開、特開2015-171533号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月10日(パリ条約による優先権主張2014年3月11日、米国)の出願であって、平成28年10月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年1月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書(請求項の削除)が提出されたものである。

第2 本願発明
平成29年1月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「患者ベッドの機能を制御するためのベッド制御カートであって、前記ベッド制御カートが、
足入力のある車輪付きベースと、
前記車輪付きベースから上方に延長するサポートと、
前記サポートによって保持されたGUIであって、前記GUIが手入力を表示するGUIと、
前記ベッド制御カートの前記足入力と手入力のそれぞれを使用するのに反応して、前記ベッドの前記機能を制御するために、無線信号を送信するように構成された回路とを備えるベッド制御カート。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-21に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?4に記載された発明に基づいて、また、請求項22-26に係る発明は、下記の引用文献1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特表2005-527245号公報
引用文献2.特開2012-86013号公報
引用文献3.米国特許出願公開第2012/0073054号明細書
引用文献4.特表2006-508719号公報
引用文献5.特開平8-56781号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、患者看護箇所用コンピュータ・システムに関して、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付与。)。
(ア)「【0001】
本発明は、患者を看護すべく病院または他の保健看護施設において患者および看護人により看護箇所(point-of-care)にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関する。本発明は、看護箇所にて看護人および患者がコンピュータにアクセスして情報を入力するのを促進し、自動的なデータ捕捉を提供し、フローシート・サイズの割合でコンピュータ画面を提供し、かつ、他の装置(equipment)に対するインタフェースを提供する。」
(イ)「【0010】
以下に記述される各実施例は単に例示的であり、開示された詳細な形態に対して発明を限定することを意図していない。代わりに、これらの実施例は当業者による本発明の実施を可能とするための記述に対して選択されている。
【0011】
次に図面を参照すると、図1は本発明に係る患者および看護師用の看護箇所用コンピュータ・システム10の各構成要素を示すブロック図である。システム10は概略的に、ディスプレイ24に電気的に接続されたコンピュータ12と、ベッド14と、看護師呼出システム36と、入力デバイス38とを含む。コンピュータ12は例示的に、プロセッサ、メモリ、および、複数の入出力ポートを有する。コンピュータ12は、図1に示された有線接続により、または、図2に関して以下で論じられる無線接続によりベッド14に接続される。」
(ウ)「【0012】
ベッド14は例示的に、ベッド・デッキ区画の移動、マットレス制御、娯楽制御または他の制御などの種々のベッド機能を制御する複数の御患者用制御部16を含む。ベッド14に対して電力を供給すべく、電源18が配列される。ベッド14は例示的に、37ピンJボックス・コネクタ20を含む。コネクタ20はデッキ区画の箇所、ベッド機能の状況、キャスタ固定の状況などのベッド14の種々の状態を表す複数のラインを含む。コネクタ20は、たとえばシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)Motorola(登録商標)データ規格を用いてコンピュータ12に光結合された4本ラインを例示的に含むデータ・リンク22によりコンピュータ12に接続される。データ・リンク22はコンピュータ12とベッド14との間の双方向通信を許容する。換言すると、ベッド状況の状態および患者データは、ベッド14からデータ・リンク22を介してコンピュータ12へと送信され得る。これに加え、ベッド14に対する制御信号はコンピュータ12からデータ・リンク22を介してベッド14へと送信され得る。」
(エ)「【0013】
一実施例においてコンピュータ12は、制御様式で薬剤投与、テレビ、ラジオ/オーディオ、電話、および、ベッド制御、インターネット・アクセス、電子メール機能、ならびに看護師呼出し機能を提供すべく用いられる。例示的にディスプレイ24は、テレビ端末およびコンピュータ・ディスプレイの両者として用いられ得るタッチ画面式ディスプレイである。コンピュータ12により作動されるソフトウェアはディスプレイ24上にキーボード・エミュレーション26を提供することから、ユーザはタッチ画面式ディスプレイ24を用いてコンピュータ12へと情報を入力し得る。尚、コンピュータ12に情報を入力すべく(以下に記述される)ハンド・パッド、ペンもしくはスタイラス式の入力デバイス、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識インタフェース、または、他の同様のデバイスなどの任意で適切な入力デバイスが用いられ得ることは理解される。」
(オ)「【0017】
図2には、本発明の無線コンピュータ・システム10'が示される。図1で用いられたのと同一の参照番号が付された要素は、同一もしくは同様の機能を実施する。図2においてJボックス・コネクタ20は例示的に、SPI/Bluetooth変換器50に接続される。任意の形式の適切な無線データ送信器/受信器および変換器が用いられ得ることを理解すべきである。変換器50は、ベッド14に接続されたDC電源52に接続される。変換器50は例示的に、コンピュータ12に接続された送受信機54に対してRF信号を送信する。変換器50および送受信機54は、RF、IRまたは他の適切な通信技術を採用し得る。例示的に、上記BluetoothプロトコルはRF送信に用いられる。・・・」
(カ)「【0023】
図4乃至図7には、本発明の別実施例が示される。患者支援カート100は、夫々の側方支持部104、106を有する基部102を含む。側方支持部104、106は夫々、長寸支持プレート108、110を含む。プレート108、110の一端に対しては、(一方が示された)キャスタ112が連結される。キャスタ112は例示的に、自立式起動可能固定部を含む。プレート108、110の逆側端部には、固定用キャスタ114が連結される。キャスタ114にはブレーキ機構116が連結される。ブレーキ機構116は、カート100に対して付与された重量により起動される。カート100は更に、基部102の中央部分122に連結されて上方に延在する支持管118、120と、折畳み可能シート124と、可動式患者/看護人用ハンドル126と、支持管118および120の間に取付けられたコンピュータ12と、アーム・アセンブリによりカート100に連結されたディスプレイ24と、IVポール134を支持する可動支持アーム132と、支持ブラケット138によりカート100に連結された酸素もしくは空気タンク136とを含むが、その全ては'580出願において更に詳細に記述される。最後にカート100は更に、患者支援カート100上の連結器142に対して着脱自在に連結された薬剤バンクもしくは施錠済薬剤ボックス140を含む。薬剤ボックス140は、図1乃至図3Bの薬剤ボックス46と同様に機能し得る。
【0024】
図5Aは、連結器142から取り外された薬剤ボックス140を示している。次に薬剤ボックス140は、補充のために薬局へと、または、患者の部屋もしくは他の箇所における容器内に装填されるべく搬送され得る。図6および図7は、薬剤ボックス140および連結器142の詳細を示している。連結器142は例示的に、薬剤ボックス140に連結された第1および第2フランジ146を受容すべく構成された一対の軌道144を含む。薬剤ボックス140は、外側ハウジング148と、枢動軸心154の回りにおける枢動運動のために枢動コネクタ152によりハウジング148に連結された内部区画(internal compartment)150とを含む。固定用プランジャ156は、図6に示された如く閉成位置に区画150を固定すべく、且つ、以下に記述される如く薬剤ボックス140を連結器142に対して固定すべく構成される。
【0025】
図7に最も良く示される如くプランジャ156は、区画150のハウジング158内に配置される。プランジャ156は重力により通常的に、図7に示された下降位置に移動する。ハウジング148の後壁162に対しては、支持プレート160が連結される。またプレート160に対しては枢動接続部166によりL形状固定アーム164が枢動連結される。固定アーム164上のポスト171と、プレート160のフランジ172に形成された開孔173との間にはスプリング168が連結され、固定アーム164を図6に示された位置へと付勢する。固定アーム164のアーム174は、区画150が閉成されるときにプランジャ156の底面180に係合すべく構成された傾斜表面178を有するヘッド176を含む。傾斜表面178がプランジャ156の底面180に係合したとき、固定アーム164上のスプリング168の付勢力により傾斜表面178はプランジャ156を図6における矢印182の方向に上方に揚動し、区画150をハウジング148に対して固定する。プランジャ156の頂面184は、ハウジング148の開孔185を貫通して移動する。これに加えてプランジャ156の頂面184は軌道144に形成されたノッチもしくは開孔186内へと移動し、カート100に固着された連結器142に対してハウジング148を固定する。
【0026】
区画150の開成が所望されたとき、カート100上の磁気アクチュエータ190(図6)がコンピュータ12により起動され、図7の矢印192により示された如く枢動接続部166の回りで固定アーム164は時計方向に回動される。これにより固定アーム164は図7に示された位置へと移動されることから、プランジャ156は区画150のハウジング158内へと落下し得る。故に、区画150は図5Bおよび図7に示された開成位置へと枢動され得るか、または、薬剤ボックス140は図5Aに示された如く軌道144から取り外され得る。薬剤ボックス140がカート100から取り外されたなら、(もはや磁気アクチュエータ190により影響されずに)スプリング168は固定アーム164を図7の位置へと付勢する。故に、区画150がハウジング148内で閉成位置に在る間に薬剤ボックス140がカート100から取り外されると、プランジャ156は固定アーム164のヘッド176によりハウジング148の開孔185内へと上方に押圧されることで、区画150を閉成位置に固定する。」
(キ)「【0048】
図42乃至図63は、本発明の別実施例を示している。図42には、上記で論じられたディスプレイ24と類似したディスプレイ624が示される。ディスプレイ624は、アーム626上に取付けられる。但し、ディスプレイ24は本明細書中に記述された装置の任意のものに対して取付けられ得ると共に本明細書中に記述されたアームアセンブリもしくは他のディスプレイ支持体の任意のものにより支持され得ることを理解すべきである。ディスプレイ624は、複数の看護人アイコン630および複数の患者アイコン632を表示するタッチ画面式制御パネル628を含む。・・・」
(ク)「【0051】
図44は、看護人用ベッド制御アイコン634が押圧されたときにタッチ画面628上に表示されるサンプル・ベッド制御画面を示している。例示されたベッド制御画面は、(不図示の)ベッドの種々のデッキ区画を移動するコントロールボタン660と、ベッド脚部区画を移動するコントロールボタン662と、ベッドを上昇および下降させる高低コントロールボタン664と、ベッドを傾斜しまたはベッドを平坦もしくは椅子位置に位置決めする付加的デッキ調節コントロールボタン666とを含む。典型的に、(看護人用ベッド制御アイコン634と対置された)患者用ベッド制御アイコン648の起動時に表示されるベッド制御画面は、ヘッド上昇/下降、膝部上昇/下降、椅子、および血管の各コントロールボタンを含む。図55は、患者用ベッド制御アイコン648が起動されたときに画面628上に表示されるサンプル的な患者用ベッド・コントロールボタンを示している。これらのコントロールボタンは、頭部上昇/下降コントロールボタン651、膝部上昇/下降コントロールボタン653、脚部コントロールボタン655および椅子位置コントロールボタン657を含む。看護人用ベッド・コントロールボタンは典型的に、ベッド高/低、頭部上昇/下降、膝部上昇/下降、トレンデレンブルグおよび逆トレンデレンブルグ位置、脚部調節、椅子および血管の各コントロールボタンを含む。
【0052】
CPRアイコン636は、自動的に心停止救急状態(code blue condition)を起動する。マットレス制御アイコン338が起動されると、例示的に図45に示された画面に帰着する。図示実施例において看護人は、たとえばインディアナ州、ベーツビルのヒル・ロム社(Hill-Rom Company of Batesville, Indiana)から入手可能なZone Air(登録商標)マットレスを用い、転回支援、連続的側方回転療法、衝撃/振動療法、通常膨張、最大膨張、および、踵(かかと)懸架を提供すべくコンピュータ12に接続された(不図示の)マットレス制御器を制御し得る。
【0053】
重量計アイコン640を起動すると例示的に、指示領域659における作動命令と制御領域661におけるベッド重量計(bed scale)に対する制御機能とを表示する図46の画面に帰着する。
【0054】
もし患者位置監視アイコン642がタッチされたなら、画面628上には図47に示された画面が表示される。看護人は、画面628上の各アイコンを起動することで、コンピュータ12に接続された(不図示の)患者位置監視システムの機能を起動し得る。看護人は、アイコン665にタッチすることでベッド退出警報を、アイコン667にタッチすることで昏睡警報を、且つ、アイコン669にタッチすることで起き直り警報を可能とし得る。」

以上の記載された事項から、次の事項が理解できる。
(ケ)摘記事項(カ)の「患者支援カート100」は、摘記事項(ア)の「本発明は、患者を看護すべく病院または他の保健看護施設において患者および看護人により看護箇所(point-of-care)にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関する。」ものであるので、「病院または他の保健看護施設において患者および看護人により看護箇所にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関した患者支援カート100」といえる。

(コ)摘記事項(カ)の「基部102」は、「夫々の側方支持部104、106を有する基部102」であって、「側方支持部104、106は夫々、長寸支持プレート108、110を含む。プレート108、110の一端に対しては、(一方が示された)キャスタ112が連結される。・・プレート108、110の逆側端部には、固定用キャスタ114が連結される。」ものであるので、「キャスタ付き基部102」であるといえる。

(サ)摘記事項(カ)の「アーム・アセンブリによりカート100に連結されたディスプレイ24」は、図4に、支持管118、120によって、基部102の上方に保持された態様で記載されたものであり、摘記事項(エ)の「例示的にディスプレイ24は、テレビ端末およびコンピュータ・ディスプレイの両者として用いられ得るタッチ画面式ディスプレイである。コンピュータ12により作動されるソフトウェアはディスプレイ24上にキーボード・エミュレーション26を提供することから、ユーザはタッチ画面式ディスプレイ24を用いてコンピュータ12へと情報を入力し得る。」ものであるので、ディスプレイ24は、「支持管118、120によって保持されたタッチ画面式ディスプレイ24」であるといえる。

(シ)摘記事項(カ)の患者支援カート100は、「患者支援カート100は・・コンピュータ12・・を含む」ものであるので、「コンピュータ12を備える」ものといえる。

上記(ア)?(シ)から、引用文献1には、図4記載の患者支援カートに着目して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「病院または他の保健看護施設において患者および看護人により看護箇所にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関した患者支援カート100であって、前記患者支援カート100が、
キャスタ付き基部102と、
基部102の中央部分122に連結されて上方に延在する支持管118、120と、
支持管118、120によって保持されたタッチ画面式ディスプレイ24と、
コンピュータ12とを備える患者支援カート100。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、高度機能を持つグラフィカルユーザーインターフェース付きの病院用ベッドに関して、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審で付与。)。
(ア)「【0002】
グラフィカルユーザーインターフェースまたはディスプレイスクリーンを持つ患者保持装置は、当技術分野で知られている。病院用ベッドのグラフィカルユーザーインターフェースはアイコンを表示するタッチスクリーンであることが多く、これらは病院ベッドの機能を制御したり、またはベッドの機能および特徴に関する興味のある情報を介護者に表示するために使用される。・・・」
(イ)「【0023】
図1に示されるように、例証的病院用ベッド10は、上部フレーム組立品30に連結された4つのサイドレール組立品を有する。4つのサイドレール組立品は、一対の頭部サイドレール組立品48(時にヘッドレールと呼ばれる)および一対の足部サイドレール組立品50(時にフットレールと呼ばれる)を含む。・・各サイドレール48、50は、バリアパネル54およびリンク56を含む。・・・」
(ウ)「【0029】
例証的実例では、図1に示されるように、ベッド10はベース28に連結された4つの足ペダル84a、84b、84c、84dを持つ。足ペダル84aは、ベース28に対して上部フレーム組立品30を上昇させるために使用され、足ペダル84bはベース28に対して上部フレーム組立品30を下降させるために使用され、足ペダル84cはフレーム36に対して頭部分40を上昇させるために使用され、足ペダル84dはフレーム36に対して頭部分40を下降させるために使用される。他の実施形態では、足ペダル84a-dは省かれている。」
(エ)「【0030】
サイドレール48はそれぞれ、関連するバリアパネル54の外側に連結された第一のユーザー制御パネル66を含む。サイドレール50はそれぞれ、関連するバリアパネル54の外側に連結された第二のユーザー制御パネル67を含む。制御パネル66、67は、介護者(非表示)がベッド10の関連機能を制御するために使用するさまざまなボタンを含む。例えば、制御パネル66は、頭部分40を上昇・下降させるために頭部モーター90を操作するのに使用するボタンと、大腿部分を上昇・下降させるために膝部モーターを操作するのに使用するボタンと、上部フレーム組立品30をベース28に対して上昇、下降、傾斜させるためにモーター70を操作するのに使用するボタンとを含む。例証的実施形態では、制御パネル67は、足部分44を上昇・下降させるためにモーター94を操作するのに使用するボタンと、足伸長部分47を主要部分45に対して伸長・格納するためにモーター96を操作するのに使用するボタンとを含む。一部の実施形態では、制御パネル66、67のボタンは薄膜スイッチを含む。
【0031】
図2に図式的に示されるように、ベッド10は、モーター90、92、94、96、およびリフトシステム32のモーター70に電気的に連結された制御回路98を含む。図6では制御回路98は単一ブロック98として図式的に表されているが、一部の実施形態の制御回路98は、電気的および通信的に相互接続されたさまざまな回路基板、電子モジュールなどを含む。制御回路98は、本明細書に記述のさまざまな制御機能およびアルゴリズムをソフトウェアに実行させるマイクロプロセッサ172またはマイクロコントローラを1つ以上を含む。従って、本技術分野でよく知られているように、回路98は、ソフトウェア、変数、計算値などを保存するためのメモリー174も含む。」
(オ)「【0032】
また図2に図式的に示されるように、ユーザー入力ブロックは、制御パネル66、67のボタンおよびペダル84a-dなどのさまざまなユーザー入力を表し、これらは例えば、介護者または患者が入力信号をベッド10の制御回路98に通信して、ベッド10のさまざまなモーター70、90、92、94、96の作動を命令し、ベッド10の他の機能の作動を命令するために使用される。図1に示されるように、ベッド10は、それぞれのサイドレール48に連結されたグラフィカルユーザー入力またはディスプレイスクリーン142の少なくとも1つを含む。図2に図式的に示されるように、ディスプレイスクリーン142は制御回路142に連結されている。一部の実施形態では、2つのグラフィカルユーザーインターフェース142が提供され、それぞれサイドレール48に連結されている。別の方法または追加的な方法として、1つ以上のグラフィカルユーザーインターフェースが、サイドレール50に連結されており、かつ/または、ヘッドボード46およびフットボード45の1つまたは両方に連結されている。制御回路98は、ユーザー入力コマンドをグラフィカルディスプレイスクリーン142から受信するが、これは図3?40に関して下記でさらに詳述される。」

第5 対比
(a)引用発明の「病院または他の保健看護施設において患者および看護人により看護箇所にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関した患者支援カート100」と、本願発明の「患者ベッドの機能を制御するためのベッド制御カート」とは、「看護箇所にて用いられるカート」である点で共通する。
(b)引用発明の「キャスタ」は、本願発明の「車輪」に相当し、以下同様に「基部102」は、「ベース」に相当する。
そして、引用発明の「キャスタ付き基部102」と、本願発明の「足入力のある車輪付きベース」とは、「車輪付きベース」である点で共通する。
(c)引用発明の「基部102の中央部分122に連結されて上方に延在する支持管118、120」は、本願発明の「車輪付きベースから上方に延長するサポート」に相当する。
(d)引用発明の「支持管118、120によって保持されたタッチ画面式ディスプレイ24」は、本願発明の「サポートによって保持されたGUI」に相当する。
(e)引用発明の「コンピュータ12」と、本願発明の「前記ベッド制御カートの前記足入力と手入力のそれぞれを使用するのに反応して、前記ベッドの前記機能を制御するために、無線信号を送信するように構成された回路」とは、「制御装置」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「看護箇所にて用いられるカートであって、前記カートが、
車輪付きベースと、
前記車輪付きベースから上方に延長するサポートと、
前記サポートによって保持されたGUIと、
制御装置とを備えるカート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:看護箇所にて用いられるカートが、本願発明は「患者ベッドの機能を制御するためのベッド制御」カートであるのに対して、引用発明は、その点が特定されていない点。

相違点2:車輪付きベースが、本願発明は「足入力のある」車輪付きベースであるのに対して、引用発明は、足入力を備えていない点。

相違点3:GUIが、本願発明は「GUIが手入力を表示するGUI」であるのに対して、引用発明は、「手入力を表示する」点が特定されていない点。

相違点4:制御装置が、本願発明は「前記ベッド制御カートの前記足入力と手入力のそれぞれを使用するのに反応して、前記ベッドの前記機能を制御するために、無線信号を送信するように構成された回路」であるのに対して、引用発明はコンピュータ12であって、制御内容が特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。

1.相違点1について
(a)引用文献1摘記事項(イ)には「コンピュータ12は、・・図2に関して以下で論じられる無線接続によりベッド14に接続される。」と、摘記事項(ウ)には「ベッド14は例示的に、ベッド・デッキ区画の移動、マットレス制御、娯楽制御または他の制御などの種々のベッド機能を制御する複数の御患者用制御部16を含む。」、「ベッド14に対する制御信号はコンピュータ12から・・ベッド14へと送信され得る。」と、摘記事項(エ)には「一実施例においてコンピュータ12は、・・ベッド制御・・を提供すべく用いられる。」と記載されている。
(b)そして、引用発明の患者支援カート100は、「コンピュータ12とを備える」ものであって、そのコンピュータ12は、例示的に、上記引用文献1摘記事項(イ)?(エ)のベッド制御をするものであるので、引用発明の患者支援カート100は、例示的に無線接続によりベッド制御するコンピュータ12を備えたものであり、患者ベッドの機能を制御するためのベッド制御カートといえるものであるので、相違点1は、実質的には相違点でない。
(c)また、仮に相違点1が実質的なものであったとしても、引用発明の患者支援カート100のコンピュータ12を、引用文献1摘記事項(イ)?(エ)に記載されたコンピュータ12の様な、ベッド制御するものとして、本願発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

2.相違点2について
(a)引用文献2摘記事項(ウ)の「足ペダル84a、84b、84c、84d」は、足で操作するものであって、足入力といえるものであり、引用文献2摘記事項(エ)の「制御パネル66、67のボタン」は、足ペダルよりも上方に位置するバリアパネル54に制御パネル66、67のボタンとして設けられたものであって、手で操作するものと解され、手入力といえるものである。
そして、足ペダル84、及び制御パネル66、67のボタンは引用文献2摘記事項(オ)の「図2に図式的に示されるように、ユーザー入力ブロックは、制御パネル66、67のボタンおよびペダル84a-dなどのさまざまなユーザー入力を表し、これらは例えば、介護者または患者が入力信号をベッド10の制御回路98に通信して、ベッド10のさまざまなモーター70、90、92、94、96の作動を命令し、ベッド10の他の機能の作動を命令するために使用される。」ものであるので、引用文献2には、病院用ベッドの制御装置に、足入力と手入力とを両方を設けて併用することが記載されているといえる。
(b)引用文献1摘記事項(エ)には、「ユーザはタッチ画面式ディスプレイ24を用いてコンピュータ12へと情報を入力し得る。」「コンピュータ12に情報を入力すべく・・他の同様のデバイスなどの任意で適切な入力デバイスが用いられ得ることは理解される。」と記載され、引用発明のコンピュータ12の入力装置として、他の適切な入力装置を用いることが示唆されている。
そして、引用文献2の足ペダルの様な足でも操作ができる入力装置は、手を用いなくても入力が出来て便利なものと一般的に認識されるものであり、引用発明の看護箇所にて用いられるべく構成されたコンピュータ・システムに関した患者支援カート100においても、手を用いなくても入力が出来て便利なことは、望ましいことであるので、引用発明のコンピュータ12の入力装置として、引用文献2記載の足ペダルを付加的に設けて、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

3.相違点3について
(a)引用文献1摘記事項(キ)(ク)には、「ディスプレイ624は・・タッチ画面式制御パネル628を含む。」、「図44は、看護人用ベッド制御アイコン634が押圧されたときにタッチ画面628上に表示されるサンプル・ベッド制御画面を示している。例示されたベッド制御画面は、(不図示の)ベッドの種々のデッキ区画を移動するコントロールボタン660と、ベッド脚部区画を移動するコントロールボタン662と、ベッドを上昇および下降させる高低コントロールボタン664と、ベッドを傾斜しまたはベッドを平坦もしくは椅子位置に位置決めする付加的デッキ調節コントロールボタン666とを含む。」と記載されており、ディスプレイ624のタッチ画面628(本願発明の「GUI」に相当)の看護人用ベッド制御アイコン634が押圧(本願発明の「手入力」に相当)されたときにベッド制御画面が表示される(本願発明の「手入力を表示する」ことに相当)ものである。
(b)そして、上記「ディスプレイ624」は、引用文献1摘記事項(キ)の「ディスプレイ24と類似したディスプレイ624が示される。・・ディスプレイ24は本明細書中に記述された装置の任意のものに対して取付けられ得る」とされたものであって、引用発明のディスプレイ24を、ディスプレイ624と同様のタッチ画面の看護人用ベッド制御アイコンが押圧されたときにベッド制御画面が表示されるものとして具現化することに特段の困難性はない。
(c)そうすると、引用発明の患者支援カート100のタッチ画面式ディスプレイ24を、引用文献1摘記事項(ク)のタッチ画面628の看護人用ベッド制御アイコン634が押圧されたときにベッド制御画面が表示されるものとして具現化して、本願発明の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

4.相違点4について
(a)引用文献1摘記事項(イ)には「コンピュータ12は、・・無線接続によりベッド14に接続される。」と、摘記事項(ウ)には「ベッド14に対する制御信号はコンピュータ12から・・ベッド14へと送信され得る。」と、摘記事項(エ)には「一実施例においてコンピュータ12は、・・ベッド制御・・を提供すべく用いられる。」「ユーザはタッチ画面式ディスプレイ24を用いてコンピュータ12へと情報を入力し得る。」と記載されているので、引用発明のコンピュータ12は、実質的にタッチ画面式ディスプレイ24(本願発明の「手入力」に相当)を使用するのに反応して、ベッド制御(本願発明の「ベッドの機能を制御」に相当)するために、無線信号を送信するものといえるものである。
(b)上記2.に記載したように、引用文献2には、病院用ベッドの制御装置に、足入力と手入力とを両方を設けて併用することが記載されており、上記2.の引用発明のコンピュータ12の入力装置として、引用文献2記載の足ペダルを付加的に設けることにより、上記(a)のコンピュータ12が、足入力と手入力のそれぞれを使用するのに反応するものとなることは自明である。
(c)そうすると、引用発明のコンピュータ12の入力装置として、引用文献2記載の足ペダルを付加的に設けて、本願発明の相違点4に係る構成とすることもは当業者が容易になし得ることである。

5.請求人の主張について
請求人は、平成29年2月10日付けの手続補正書「3.本願発明が特許されるべき理由」において「文献2及び文献3のペダルはベッドに備え付けられることを前提とした構成となっている。従って、文献1に記載のカート(ベッドとは分離されている構成)に文献2または3に記載のペダル(ベッドに備え付けられている構成)を適用する動機付けがない。」と主張する。
しかしながら、引用文献1摘記事項(エ)に引用発明のコンピュータ12の入力装置として、タッチ画面式ディスプレイ24以外の他の適切な入力装置を用いることが示唆されており、かつ、引用文献2の足ペダルの様な足でも操作ができる入力装置は、手を用いなくても入力が出来て便利なものと一般的に認識されるものであり、さらに、引用文献2の足ペダルの様な足でも操作ができる入力装置が、ベッドにしか備え付けられないものであると解すべき特段の事情が存在するものでもない(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の図1には、ベッド近傍の整形外科手術のナビゲーション・デバイス10にフットペダル27を設けたものが記載されているし、他にも、特開平8-332202号公報図1には、ベッド近傍のコントロールスタンドにベッドの高さ調整用フットスイッチを設けたものが記載されており、特開平6-14864号公報の図2には、ベッド近傍のドクターワークステーションに電動式ベッド制御用のフットスイッチ25を設けたものが記載されている様に、足ペダルの様な入力装置の配置場所はベッドに限るものではないことは周知である。)以上、タッチ画面式ディスプレイ24以外の他の適切な入力装置を用いることが示唆されている引用発明において、手を用いなくても入力が出来て便利な引用文献2記載の発明の足ペダルを用いることに動機付けがないとはいえず、請求人の主張は採用できない。

6.総合判断
相違点1?4を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-01 
結審通知日 2018-05-08 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2015-46956(P2015-46956)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒嶋 慶子大谷 謙仁  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
中川 真一
発明の名称 患者ベッド制御のための介護者汎用遠隔カート  
代理人 一色国際特許業務法人  

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