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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S |
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管理番号 | 1344767 |
審判番号 | 不服2017-16252 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-01 |
確定日 | 2018-10-23 |
事件の表示 | 特願2013-141977号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月22日出願公開、特開2015-15191号公報、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月5日を出願日とする出願であって、平成28年12月9日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 本願の請求項1に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2010-205473号公報 引用文献2:登録実用新案第3148103号公報 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成29年11月1日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 光源と、非常用電源と、外部電源が正常に供給されている状態では前記外部電源により前記非常用電源を充電する充電部と、前記外部電源の停電時に前記非常用電源により前記光源を点灯させる点灯部と、前記点灯部の動作を制御する制御部と、周囲の状況を検知するための検知部とを備え、 前記制御部は、前記光源を点灯させる通常モードと、前記光源を前記通常モードより減光させる休止モードとを有し、前記外部電源が停電になると前記検知部の検知結果に応じて前記通常モード又は前記休止モードを選択し、 前記制御部は、前記外部電源の停電時に前記通常モードを選択した場合、前記外部電源の停電から一定時間が経過するまで前記通常モードを継続し、前記一定時間が経過すると前記検知部の検知結果に応じて前記通常モード又は前記休止モードを選択することを特徴とする照明器具。」 第4 当審の判断 1 引用文献の記載事項等 (1) 引用文献1の記載事項等 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。)は、以下のとおりである。 (1a) 「【請求項1】 屋外の支柱等の構造物に取付けられて街路面を照明する防犯灯において、 1又は複数のLEDを有し前記街路面の明るさ及び配光が所定の基準を満たすように照明する光源部と、 商用電力に基づいて前記光源部を点灯する防犯用点灯部と、を備え、 前記商用電力を蓄電するバッテリーと、 前記商用電力の供給異常を検出する異常検出部と、 前記異常検出部により供給異常が検出されたときに、前記バッテリーの蓄電電力により前記LEDを点灯する防災用点灯部と を更に備えたことを特徴とする防犯灯。」 (1b) 「【0014】 バッテリー23は、防災灯動作時に光源部7を点灯させる電力を蓄電する。このバッテリー23には、例えばニッケル・カドミウムバッテリーやニッケル水素バッテリー等が好適に用いられる。充電回路部25は、商用電源13に接続され、当該商用電源13から供給される商用電力をバッテリー23に蓄電する。照度センサー29は、LED防犯灯1の周囲の明るさを検出し、LED点灯回路27に出力する。LED点灯回路27は、電圧監視部21から防災灯作動信号が入力されたとき、照度センサー29により検出された周囲の明るさが所定値よりも暗い場合に、バッテリー23の蓄電電力からLED駆動電力を生成し、切替部15を介して光源部7に供給する。切替部15は、電圧監視部21の防災灯作動信号が入力されていない間は、LED防犯灯部3のLED電源11と光源部7を電気的に接続して防犯灯の基準を満足するように光源部7のLED8を点灯し、また、防災灯作動信号が入力された場合には、光源部7の接続先をLED防災ユニット5のLED点灯回路27に切替えて、光源部7のLED8を防災灯として点灯させる。 【0015】 図2は、LED防犯灯1の点灯動作を示すフローチャートである。 LED防犯灯1は、電源投入に伴って商用電源13から商用電力が入力され、バッテリー23の充電を開始する(ステップS1)。 この充電動作においては、上記充電回路部25は、充電当初、充電量が少なくとも充電電力として確保しておくべき最低充電量に達するまで急速充電を行い、その後、トリクル充電に切替えて満充電になるまで充電する。上記最低充電量は、防災灯として機能するときに、光源部7を例えば3時間程度継続的に点灯するのに要する電力量に設定されている。 このように、所定時間に亘り光源部7を点灯し続けるのに要する最低充電量に達するまでは急速充電が行われるため、当該最低充電量を早期に確保して不意の災害発生に対応可能にされている。」 (1c) 「【0017】 一方、災害発生等で商用電源の電力供給に異常が検出された場合(ステップS2:異常)、LED防犯灯1は、防災灯として動作する。すなわち、電圧監視部21が商用電源供給異常検出時に出力する防災灯作動信号により切替部15が光源部7への電力供給をLED防災ユニット5のLED点灯回路27に切替え、そして、照度センサー29により検出された周囲の明るさに基づいてLED8を点灯するか否かが判定される(ステップS6)。周囲が昼間のように所定値よりも明るい場合(ステップS6:昼)、街路面を照明する必要がないためLED8の点灯は行わず(ステップS7)、周囲が夜間のように所定値よりも暗い場合(ステップS6:夜)、バッテリー23に蓄電された電力でLED8を上記所定時間(例えば3時間)以上に亘り点灯させる(非常点灯)(ステップS8)。 この防災灯点灯動作時においては、LED防犯灯1の明るさを防犯灯動作時(常時点灯)の明るさ(例えば水平面照度3又は5lux(ルクス))から防災灯に求められる1luxまで低下させ、消費電力を抑えて少なくとも3時間の点灯時間を維持している。 商用電源に異常が発生している場合には、周囲の民家等でも停電が発生し家庭内照明等が消灯しているから通常時よりも周囲が暗くなり、LED8の出力を低下させても遠方から十分にLED防犯灯1を視認することが可能である。また、上記のように、比較的遠方にも照射光が届く配光を有するため、経路の誘導効果も十分に生じさせることができる。」 (1d) 「【符号の説明】 【0026】 1 LED防犯灯 2 電柱(構造物) 3 LED防犯灯部 4 防犯灯本体 5 LED防災ユニット 7 光源部 8 LED 8A?8C LEDユニット 9 点滅器(防犯用点灯部) 13 商用電源 15 切替部 21 電圧監視部(異常検出部) 23 バッテリー 25 充電回路部 27 LED点灯回路(防災用点灯部) 29 照度センサー 50 外付ケース」 上記(1a)?(1d)を総合すると、引用文献1には、以下の引用発明が記載されている。 「屋外の支柱等の構造物に取付けられて街路面を照明するLED防犯灯1において、 1又は複数のLED8を有し前記街路面の明るさ及び配光が所定の基準を満たすように照明する光源部7と、 商用電力に基づいて前記光源部7を点灯する防犯用点灯部9と、 前記商用電力を蓄電するバッテリー23と、 前記商用電力の供給異常を検出する電圧監視部21と、 前記電圧監視部21により供給異常が検出されたときに、前記バッテリー23の蓄電電力により前記LED8を点灯するLED点灯回路27と、 前記商用電源13に接続され、当該商用電源13から供給される商用電力を前記バッテリー23に蓄電する充電回路部25と、 前記LED防犯灯1の周囲の明るさを検出し、前記LED点灯回路27に出力する照度センサー29と、 を備え、 前記LED防犯灯1は、電源投入に伴って商用電源13から商用電力が入力され、バッテリー23の充電を開始し、 災害発生等で前記商用電源13の電力供給に異常が検出された場合、前記LED防犯灯1は、防災灯として動作し、 前記電圧監視部21が商用電源供給異常検出時に出力する防災灯作動信号により切替部15が前記光源部7への電力供給をLED防災ユニット5の前記LED点灯回路27に切替え、そして、前記照度センサー29により検出された周囲の明るさに基づいて前記LED8を点灯するか否かが判定され、 周囲が昼間のように所定値よりも明るい場合、街路面を照明する必要がないため前記LED8の点灯は行わず、 周囲が夜間のように所定値よりも暗い場合、前記バッテリー23に蓄電された電力で前記LED8を上記所定時間以上に亘り点灯させる LED防犯灯1。」 (2) 引用文献2の記載事項 引用文献2の記載事項は、以下のとおりである。 (2a) 「【0007】 図1は、本考案の第1の実施例の非常用照明灯を備えた住宅用火災警報器の構成を表すブロック図である。1は煙センサまたは熱センサ等のセンサとその周辺回路等からなる火災検知センサ部、2は警報音発生用のブザーや警報ランプとその周辺回路等からなる警報器部、3は火災検知センサ部1が火災発生を検知して出力したON信号により照明ランプの点灯を開始し、照明ランプ点灯開始からある一定時間を経過すると照明ランプを消灯するタイマ機能であるところの点灯回路部で、誤って発生させてしまった煙による火災警報器の不用意な作動等により、実際の火災ではないにもかかわらず火災検知センサ部1が検知信号を出してしまって照明ランプが点灯した場合でも、一定時間で自動復帰して電池の消耗を防ぐ構成となっている。4は主に白色光LEDと反射板からなる照明ランプ、5は各部の作動電力の供給源であるところの電源部であり主に電池と電池の残量検知・警告回路である。」 (2b) 「【0011】 図3は第2の実施例の振動検知センサ部6の内部構成例で、ばね6aに取り付けられた錘6bが振動で電気接点6cを叩くことで振動を検知する簡単な構造になっている。ばね6aの強度と錘6bの質量は、例えば震度3以上の地震の振動を検知出来るよう適宜に設定されている。この場合、震度3以上の地震が発生すると、図2における振動検知センサ部6の検知信号がオア回路部7を通して点灯回路部3へ入力されて照明ランプ4のランプが点灯する。地震の揺れが収まっても点灯回路部3に予め設定された適宜な一定時間が経過するまでは照明ランプ4のランプは点灯し続け、ある一定時間の経過と共にランプは消灯し、すなわち自動復帰して次の地震もしくは火災が発生するまで待機する。」 2 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「LED8」が、本願発明の「光源」に相当する。 イ 引用発明の「バッテリー23」は、「災害発生等で前記商用電源13の電力供給に異常が検出された場合、前記LED防犯灯1」が、「防災灯として動作」する際に、「周囲が夜間のように所定値よりも暗い場合、前記バッテリー23に蓄電された電力で前記LED8を上記所定時間以上に亘り点灯させる」ものであるから、引用発明の「バッテリー23」が、本願発明の「非常用電源」に相当する。 ウ 引用発明の「充電回路部25」は、「LED防犯灯1」の「電源投入に伴って商用電源13から商用電力が入力され、バッテリー23の充電を開始し」ていることから、「商用電源13」により「商用電力」が正常に供給されている状態では、「商用電源13」により「バッテリー23」が充電されているといえる。 そして、引用発明の「商用電源13」が、本願発明の「外部電源」に相当する。 そうすると、引用発明の「充電回路部25」が、本願発明の「外部電源が正常に供給されている状態では前記外部電源により前記非常用電源を充電する充電部」に相当する。 エ 引用発明の「LED点灯回路27」は、「前記電圧監視部21により供給異常が検出されたときに、前記バッテリー23の蓄電電力により前記LED8を点灯する」ものであるとともに、「前記照度センサー29により検出された周囲の明るさに基づいて前記LED8を点灯するか否かが判定され、周囲が昼間のように所定値よりも明るい場合、街路面を照明する必要がないため前記LED8の点灯は行わず、周囲が夜間のように所定値よりも暗い場合、前記バッテリー23に蓄電された電力で前記LED8を上記所定時間以上に亘り点灯させる」ものである。 そして、「電圧監視部21」により「検出」される「供給異常」は、「商用電源13の電力供給の異常」であり、「商用電源に異常が発生している場合には、周囲の民家等でも停電が発生し家庭内照明等が消灯している」(摘示(1c)【0017】)との記載を考慮すれば、「停電」も想定されるものである。 そうすると、引用発明の「LED点灯回路27」は、本願発明の「前記外部電源の停電時に前記非常用電源により前記光源を点灯させる点灯部と、前記点灯部の動作を制御する制御部」に相当する。 オ 引用発明の「照度センサー29」が、本願発明の「周囲の状況を検知するための検知部」に相当する。 カ 引用発明の「LED防犯灯1」が、本願発明の「照明器具」に相当する。 上記ア?カを踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「光源と、非常用電源と、外部電源が正常に供給されている状態では前記外部電源により前記非常用電源を充電する充電部と、前記外部電源の停電時に前記非常用電源により前記光源を点灯させる点灯部と、前記点灯部の動作を制御する制御部と、周囲の状況を検知するための検知部とを備えた照明器具。」 <相違点> 本願発明の照明器具の「制御部」は、「前記光源を点灯させる通常モードと、前記光源を前記通常モードより減光させる休止モードとを有し、前記外部電源が停電になると前記検知部の検知結果に応じて前記通常モード又は前記休止モードを選択」するとともに「前記外部電源の停電時に前記通常モードを選択した場合、前記外部電源の停電から一定時間が経過するまで前記通常モードを継続し、前記一定時間が経過すると前記検知部の検知結果に応じて前記通常モード又は前記休止モードを選択する」のに対し、引用発明の「LED点灯回路27」は、「災害発生等で、前記商用電源13の電力供給に異常が検出された場合」に、「前記照度センサー29により検出された周囲の明るさに基づいて前記LED8を点灯するか否かが判定され、周囲が昼間のように所定値よりも明るい場合、街路面を照明する必要がないため前記LED8の点灯は行わず、周囲が夜間のように所定値よりも暗い場合、前記バッテリー23に蓄電された電力で前記LED8を上記所定時間以上に亘り点灯させる」ものであるが、本願発明のような特定はされていない点。 上記相違点について検討する。 引用文献2には、「誤って発生させてしまった煙による火災警報器の不用意な作動等により、実際の火災ではないにもかかわらず火災検知センサ部1が検知信号を出してしまって照明ランプが点灯した場合でも、一定時間で自動復帰して電池の消耗を防ぐ構成」(摘示(2a))として、「3は火災検知センサ部1が火災発生を検知して出力したON信号により照明ランプの点灯を開始し、照明ランプ点灯開始からある一定時間を経過すると照明ランプを消灯するタイマ機能であるところの点灯回路部」(摘示(2a))が記載され、その動作として、「地震の揺れが収まっても点灯回路部3に予め設定された適宜な一定時間が経過するまでは照明ランプ4のランプは点灯し続け、ある一定時間の経過と共にランプは消灯し、すなわち自動復帰して次の地震もしくは火災が発生するまで待機」(摘示(2b))する点は記載されているものの、上記相違点に係る構成、特に、「前記光源を前記通常モードより減光させる休止モード」は記載も示唆もされておらず、当業者といえども、引用発明、引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点に係る本願発明の構成を容易に想到することはできない。 したがって、本願発明は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-10 |
出願番号 | 特願2013-141977(P2013-141977) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F21S)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 丸山 裕樹、丹治 和幸 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
仁木 学 一ノ瀬 覚 |
発明の名称 | 照明器具 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |