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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1344781
審判番号 不服2017-18794  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-19 
確定日 2018-10-23 
事件の表示 特願2014-49963号「汚泥脱水システム、および汚泥の脱水方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月5日出願公開、特開2015-174000号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月13日の出願であって、平成29年3月16日付けの拒絶理由通知書が通知され、同年5月15日付けの意見書及び手続補正書が提出され、又、同日付けの刊行物等提出書が提出されたところ、同年9月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成29年5月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものであり(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明7」という。)、本願発明1?4は「汚泥脱水システム」の発明であり、本願発明5?7は「汚泥の脱水方法」の発明である。

「【請求項1】
有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混合する凝集混和槽と、
前記凝集混和槽で得られた凝集汚泥を、透水性を有する無端ベルトで搬送しながら濃縮するベルト式濃縮機と、
前記ベルト式濃縮機に配管で接続され、前記無端ベルトの上を搬送される凝集汚泥に無機凝集剤を添加する無機凝集剤注入手段と、
前記ベルト式濃縮機で濃縮された凝集汚泥に高分子凝集剤をさらに添加して混合する濃縮汚泥槽と、
前記濃縮汚泥槽で得られた凝集汚泥を脱水する脱水機と、
を備え、
前記無機凝集剤注入手段にて、前記無端ベルトの汚泥搬送側を走行しているベルト部の中流部から下流部までの間に無機凝集剤を添加することを特徴とする、汚泥脱水システム。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥脱水システムにおいて、
前記無機凝集剤注入手段にて、前記無端ベルトの汚泥搬送側を走行しているベルト部の下流部に無機凝集剤を添加することを特徴とする、汚泥脱水システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚泥脱水システムにおいて、
前記無機凝集剤がポリ硫酸第二鉄であることを特徴とする、汚泥脱水システム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の汚泥脱水システムにおいて、
前記脱水機がスクリュープレス脱水機であることを特徴とする、汚泥脱水システム。
【請求項5】
有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混合する第一凝集工程と、
前記第一凝集工程で得られた凝集汚泥を、ベルト式濃縮機の透水性を有する無端ベルトで搬送しながら無機凝集剤を添加する濃縮工程と、
前記濃縮工程で濃縮された凝集汚泥に高分子凝集剤をさらに添加して混合する第二凝集工程と、
前記第二凝集工程で得られた凝集汚泥を脱水機で脱水する脱水工程と、
を備え、
前記濃縮工程において、前記無端ベルトの汚泥搬送側を走行しているベルト部の中流部から下流部までの間に無機凝集剤を添加することを特徴とする、汚泥の脱水方法。
【請求項6】
請求項5に記載の汚泥の脱水方法において、
前記濃縮工程において、前記無端ベルトの汚泥搬送側を走行しているベルト部の下流部に無機凝集剤を添加することを特徴とする、汚泥の脱水方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の汚泥の脱水方法において、
前記無機凝集剤がポリ硫酸第二鉄であることを特徴とする、汚泥の脱水方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、
「この出願については、平成29年3月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1(特許法第29条第2項の規定)によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その理由1の概要は、原査定の備考によれば、以下のとおりのものである。
「(A)
・請求項 1?3、5?7
・引用文献等 1?5
・・・引用文献1記載の発明において、上記周知の課題を解決するために、無機凝集剤を添加して調質する2次反応槽に代えて、引用文献2及び引用文献3に記載されているような重力ろ過脱水部の下流域に薬注配管装置を設け、炉布上の脱水汚泥に無機凝集剤を添加する構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項であり、その際に、無端ベルトの下流部付近のある程度濃縮された汚泥に対し、引用文献3にあるような、また、引用文献4に記載されるような周知の配管で接続された注入手段を用いて(・・・)、無機凝集剤を添加するものとすることも当業者が容易に想到し得たことである。

(B)
・請求項 4
・引用文献等 1?5
引用文献1記載の発明における「脱水機」として、凝集汚泥の脱水に使用される周知のスクリュープレス脱水機(必要であれば、引用文献5・・・参照)を採用することは当業者が適宜なし得たことである。」

「引用文献1 特開平09-024400号公報
引用文献2 特開昭61-149300号公報
引用文献3 実願昭57-190709号(実開昭59-094797号)のマイクロフィルム
引用文献4 特開昭60-221200号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5 特開2012-045441号公報(周知技術を示す文献)」

第4 当審の判断
1 原査定の拒絶の理由について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、「消化汚泥の脱水方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 消化汚泥にカチオンポリマーを添加して凝集処理する工程と、
凝集した汚泥を重力脱水する工程と、
重力脱水した汚泥に無機凝集剤を添加して調質する工程と、
調質した汚泥に両性ポリマーを添加して脱水機で脱水する工程とを有する消化汚泥の脱水方法。」

イ「【0014】1次反応槽1の凝集処理汚泥を重力脱水機2に送り、重力脱水して濃縮する。この重力脱水機としては、ロータリースクリーン、傾斜スクリーン、濾布走行式脱水機等を用いることができる。この重力脱水機2により、汚泥濃度が原泥の3?5倍程度となるように濃縮するのが好ましい。なお、この重力脱水工程の後半部において、濃縮された汚泥に散水して汚泥を洗浄しても良い。
【0015】この重力脱水機2では、汚泥から分離された液を系外へ排出し、脱水汚泥を2次反応槽3に送る。
【0016】2次反応槽3では、重力脱水汚泥に対し無機凝集剤を添加し、汚泥を調質する。
【0017】即ち、1次反応槽1でのカチオンポリマーの添加によって、汚泥粒子のマイナス荷電は一部中和されているが、この中和は不十分であり、形成されるフロックの強度は弱い。2次反応槽3における無機凝集剤の添加によって、汚泥粒子の荷電は十分に中和され、微細であるが強固なフロックが形成される。なお、未濃縮の状態で無機凝集剤を添加すると、汚泥中の液体に、添加した無機凝集剤の大部分が消費され、添加率が高くなり、また、炭酸ガスが発生して激しく発泡するが、濃縮(重力脱水)した汚泥に添加することによって、この問題は解消される。」

ウ「【0019】2次反応槽3の調質汚泥を3次反応槽4に導入し、両性ポリマーを添加し、粒径の大きい強固なフロックを形成する。」

エ「【0021】3次反応槽4の汚泥はをベルトプレス5に送給し、脱水して脱水ケーキとする。」

オ「【0023】図2は、脱水機として遠心脱水機を用いる実施例方法を示し、図1に示す方法と同様に、1次反応槽1にて消化汚泥にカチオンポリマーを添加して凝集処理し、この凝集汚泥を重力脱水機2で重力脱水し、2次反応槽3にて重力脱水汚泥に無機凝集剤を添加して調質する。
【0024】本実施例の方法では、この2次反応槽3の調質汚泥を、両性ポリマーと共に遠心脱水機6に導入して脱水する。即ち、遠心脱水機を用いる場合には、両性ポリマー添加のための反応槽を別途設ける必要はなく、遠心脱水機に調質汚泥と共に両性ポリマーを添加する。これにより、反応槽の数を削減できる。」

カ【図1】及び【図2】(図示省略)

(2)引用文献2?5の記載事項
(a)引用文献2の記載事項
引用文献2には、「有機性汚泥の脱水方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
a1「2.特許請求の範囲
有機性汚泥にカチオン系有機高分子凝集剤を添加して混合したのち、この汚泥を攪拌しながらフロックを生成させる第1工程、つぎにこの汚泥を重力ろ(当審注:当該「ろ」は、「さんずい(部首)」と「戸」からなる漢字を代用したものである。以下、同じ「ろ」については「ろ※」と表記する。)過する第2工程、そしてこの重力ろ※過後の汚泥に鉄塩を添加して混合した後加圧脱水する第3工程の結合よりなることを特徴とする有機性汚泥の脱水方法。」(1頁左下欄)

a2「本発明における第2工程は、第1工程を経た凝集汚泥の脱水を目的とするが、つぎの第3工程での鉄塩の添加及び加圧脱水によって脱水率の向上を図るためにはこの第2工程で余分の水分を予め除いておくことが不可欠である。そして重力ろ※過にはメッシュドラム等が用いられる。」(2頁左下欄5?10行)

a3「そして、これらの鉄塩の添加混合方法としては、カチオン系有機高分子凝集剤を添加した後メツシュドラム等で水切りを行なつた汚泥と鉄塩を混和槽で攪拌して混和する方法または水切りを行なつた汚泥がベルトプレスのろ※布上(重力脱水部)にあるときに鉄塩をシャワーあるいはスプレーのようにして添加する方法が望ましい。」(2頁右下欄9?15行)

(b)引用文献3の記載事項
引用文献3には、「ベルトプレス脱水機」(考案の名称)について、次の記載がある。
b1「2.実用新案登録請求の範囲
凝集造粒部と動ろ※過脱水部と楔脱水部と加圧脱水部とからなるベルトプレス脱水装置において、重力ろ※過脱水部の下流域に無機凝集剤を添加する薬注配管装置を配設したことを特徴とするベルトプレス脱水機。」(1頁)

b2「第2図には示されていないが、汚泥は高分子凝集剤とともに凝集混和槽に送られフロック化される。次いで給泥ホッパlに送られ、ここで下部ろ※布3を介して汚泥中の凝集フロック6と自由水分5は重力ろ※過部て重力ろ※過により分離され凝集フロック6が形成される。
このとき給泥ホッパ1の上部に取付げられた薬注配管2より無機凝集剤を添加してち密で強い凝集フロックを形成し、これを次の楔脱水部に送る。」(4頁4?13行)

b3第2図および第3図(図示省略)

(c)引用文献4の記載事項
引用文献4には、「ベルトプレス型脱水機」(発明の名称)について、次の記載がある。
c1「2.特許請求の範囲
(1)未凝集汚泥中に凝集剤を添加する一次凝集部と、一次凝集した汚泥中の水分をその自重によって脱水する一次重力脱水部と、上記一次重力脱水後の汚泥をベルト間に挟んで加圧することにより脱水する圧搾脱水部とを有してなるベルトプレス型脱水機において、上記一次重力脱水部と圧搾脱水部との間に一次重力脱水後の汚泥に再度凝集剤を添加する二次凝集部と、二次凝集した汚泥中の水分を再度その自重によって脱水する二次重力脱水部とを設けてなることを特徴とするベルトプレス型脱水機。」(1頁左下欄)

c2「通常、未凝集汚泥は固形分濃度が2?4%のスラリ状汚泥であるのに対し、高分子凝集剤を添加し凝集反応の促進した凝集汚泥を一次重力脱水すると、固形物の濃度は約7?10%に向上する。こうして一次重力脱水された汚泥に対して一次重力脱水部6の末端部において二次凝集部4による凝集剤の注入が行われる。二次凝集部4は通常側面に多数の切り欠き溝を形成した樋状のトラフにより構成され、このトラフに供給された凝集剤が、上記切り欠き溝から一次濾布ベルト装置3上の一次重力脱水済みの汚泥に滴下、注入される。このようなトラフの構造は第10図に示す注入トラフと同様である。こうして一次重力脱水済みの汚泥に二次凝集部4から滴下された凝集剤がしみ込んで行き、この部分で再度の凝集反応が行われ、汚泥中の自由水が分離されていく。分離された自由水は続く二次重力脱水部において自重により脱水される。この時当然ながら二次凝集部4から注入された凝集剤に含まれる水も二次重力脱水部9において脱水される。」(3頁左上欄2行?右上欄1行)

c3「上記のような二次凝集を行うベルトプレス型脱水機においては、二次凝集剤に含まれる水を圧搾脱水に先立って重力脱水しなければならないことから、二次凝集剤を添加する場所は一次重力脱水終了後、圧搾脱水に入るまでの重力脱水可能な部分に限定される。従って第2図に示すように一次重力脱水部6の末端部において二次凝集剤を添加することは適切である。しかしながらこの装置には次の2点において二次凝集剤添加の効果を十分に発揮することができない。
その1点は、第2図に示したような重力脱水可能な濾布ベルト上の汚泥に二次凝集剤を単に滴下する場合には、二次凝集剤と汚泥との混合が十分に行われず、汚泥中に二次凝集剤と混合反応しえない部分が発生し部分的な凝集塊を生じることになる。このような不都合をなくす為に二次凝集部4からの凝集剤添加量を増加させると、凝集剤が汚泥の隅々まで行きわたって凝集反応床についてはかなり解消されるが、反応塊をなくす程に多くの凝集剤を添加した場合には、過剰の凝集剤の添加によってかえって脱水率が低下したり、濾布ベルトの側部から汚泥が溢れでるいわゆる再度リークを発生するばかりか、高価な凝集剤の注入量の増加により極めて不経済な運転状態となる点であり、第2点には、かかる二次凝集剤の添加は重力脱水可能な薄手の濾布ベルト上で行うことになり、凝集剤を添加してもその一部又は多くは汚泥との反応を行うことなく濾布ベルトから重力脱水されてしまい凝集剤の添加による効果が十分に発揮されない点である。
かかる点に鑑み二次凝集剤を添加した直後に汚泥を鋤き返すような機構を設けて二次凝集剤と汚泥との混合を促進することも考えられる。このような汚泥の鋤き返し機構は、例えば特開昭58-125398号公報に記載されたバッフル板を用いることができる。しかしこのような鋤き返し機構を用いても二次凝集剤と汚泥との完全な攪拌を行うことは困難で、また未反応の二次凝集剤が濾布ベルトから幾分重力脱水されてしまうことを避けることも困難である。
このような点に改良を加えた実施例が第3図に示されている。この場合一次重力脱水部6と二次重力脱水部9との間に二次凝集部の一態様としての攪拌槽4aが設けられており、一次重力脱水された汚泥はこの攪拌槽4aに投入され、ここで改めて注入される二次凝集剤との混合攪拌が行われ、再度凝集反応の進行した凝集汚泥が、前記上部濾布ベルト7の二次重力脱水部9に供給される。」(3頁左下欄末行?4頁右上欄8行)

c4「上記いずれの実施例においても一次凝集部で添加する凝集剤の種類と、二次凝集部で添加する凝集剤の種類とを同一のものにすることも、また異なるものを選定することも可能である。同一種類の凝集剤を用いる場合には、第3図に示す如く凝集剤添加用の配管20を分岐して第一次及び第二次凝集に用いることが可能である。このような凝集剤は高分子凝集剤や無機系の塩化第二鉄、消石灰或いは焼却灰等を使用することができ、第一次凝集剤として高分子凝集剤を使用し、第二次凝集剤としてそれ以外の凝集剤を使用することもまたその逆も考えられる。」(5頁右上欄15行?左下欄6行)

c5第2図及び第3図(図示省略)

(d)引用文献5の記載事項
引用文献5には、「有機性汚泥の脱水方法及び装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
d1「【請求項1】
有機性汚泥に高分子凝集剤を添加し、該汚泥を凝集させて凝集フロックを形成する凝集工程と、形成した凝集フロックを濃縮する濃縮工程と、濃縮した凝集フロックに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程と、無機凝集剤が添加された濃縮した凝集フロックを機械脱水する脱水工程とを有する汚泥の脱水方法であって、前記無機凝集剤添加工程では、無機凝集剤を添加した凝集フロックのpHあるいは脱水濾液のpHが3?6になるように、無機凝集剤を添加することを特徴とする汚泥の脱水方法。」

d2「【0020】
図1は本発明の一態様を示し、図示のものに限定されるものではない。例えば、フロック調整機6を省略し、無機凝集剤添加機7において、凝集フロックの大きさを適切に調整すると同時に、凝集フロックに無機凝集剤を添加してもよい。また、フロック調整機6を省略し、濃縮機5の後段に無機凝集剤添加機7を配置してもよい。また、フロック調整機を省略し、無機凝集剤添加機7を濃縮機5に一体化させてもよい。また、フロック調整機6を無機凝集剤添加機7の後段に配置してもよい。
pHセンサ8は、脱水濾液の貯槽あるいは脱水濾液の排出ラインに設置してもよい。この場合、無機凝集剤の添加量は、pHセンサ8により測定された脱水濾液のpHにより決定する。この場合、無機凝集剤は、脱水濾液のpHが3?6になるように、無機凝集剤添加機7に供給することが好ましい。より好ましくは、脱水濾液のpHが3.5?5.5になるように無機凝集剤を供給する。さらに、より好ましくは、脱水濾液のpHが4?5になるように無機凝集剤を供給する。」

d3「【0022】
本発明で使用される高分子凝集剤として、例えば、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などが挙げられる。
本発明で使用される無機凝集剤として、例えば、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄などが挙げられる。
本発明で使用される脱水機には、従来の汚泥脱水に使用される脱水機が使用できる。例えば、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、真空脱水機、フィルタプレス脱水機、多重円板脱水機などが挙げられる。
本発明で使用される濃縮機には、従来の汚泥脱水に使用される重力濃縮機あるいは機械濃縮機が使用できる。例えば、ベルト濃縮機、遠心濃縮機、楕円板濃縮機などが挙げられる。
本発明で使用されるフロック調整機には、従来から汚泥に使用される撹拌機が使用できる。例えば、パドル型撹拌機、ドラム型撹拌機などが挙げられる。」

(3)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記アないしカより、特に、上記アで示した「消化汚泥にカチオンポリマーを添加して凝集処理する工程と、
凝集した汚泥を重力脱水する工程と、
重力脱水した汚泥に無機凝集剤を添加して調質する工程と、
調質した汚泥に両性ポリマーを添加して脱水機で脱水する工程とを有する消化汚泥の脱水方法。」(【請求項1】)及び同イで示した「1次反応槽1の凝集処理汚泥を重力脱水機2に送り、重力脱水して濃縮する。この重力脱水機としては、・・・濾布走行式脱水機等を用いることができる。」(【0014】)からして、引用文献1には、
「消化汚泥にカチオンポリマーを添加して凝集処理する工程と、
凝集した汚泥を濾布走行式脱水機で重力脱水する工程と、
重力脱水した汚泥に無機凝集剤を添加して調質する工程と、
調質した汚泥に両性ポリマーを添加して脱水機で脱水する工程とを有する、消化汚泥の脱水方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(4)本願発明と引用発明との対比
引用発明は方法の発明であるため、引用発明と本願発明5(方法の発明)とを対比する。
○引用発明の「消化汚泥」、「凝集処理する工程」(先の工程)、「無機凝集剤を添加して調質する工程」(後の工程)及び「重力脱水」は、本願発明5の「有機性汚泥」、「第一凝集工程」、「第二凝集工程」及び「濃縮」にそれぞれ相当する。

○引用発明の「とを有する」は、本願発明5の「と、」「を備え」るに相当する。

○引用発明の「カチオンポリマー」及び「両性ポリマー」それぞれは、本願発明5の「高分子凝集剤」に相当する。

○引用発明の「消化汚泥にカチオンポリマーを添加して凝集処理する工程」は、消化汚泥にカチオンポリマーが添加されることで、消化汚泥とカチオンポリマーとの混合がなされる(必要であれば、引用文献2a1を参照)といえるので、本願発明5の「有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混合する第一凝集工程」に相当する。

○引用発明の「凝集した汚泥を濾布走行式脱水機で重力脱水する工程」は、透水性を有する無端ベルトを有する濾布走行式脱水機(ベルト式濃縮機)自体、極めて一般的なものである(必要であれば、引用文献3、4の図面を参照)といえるので、本願発明5の「第一凝集工程で得られた凝集汚泥を、ベルト式濃縮機の透水性を有する無端ベルトで搬送しながら」濃縮する「濃縮工程」に相当する。

○引用発明の「調質した汚泥に両性ポリマーを添加して脱水機で脱水する工程」は、本願発明5の「濃縮された凝集汚泥に高分子凝集剤をさらに添加して混合する第二凝集工程と、第二凝集工程で得られた凝集汚泥を脱水機で脱水する脱水工程」に相当する。
そうすると、本願発明5と引用発明とは、
「有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して混合する第一凝集工程と、
前記第一凝集工程で得られた凝集汚泥を、ベルト式濃縮機の透水性を有する無端ベルトで搬送しながら濃縮する濃縮工程と、
濃縮された凝集汚泥に高分子凝集剤をさらに添加して混合する第二凝集工程と、
前記第二凝集工程で得られた凝集汚泥を脱水機で脱水する脱水工程と、
を備える、汚泥の脱水方法。」という点で一致し、両者は、少なくとも、下記の点で相違していると認められる。(以下、「相違点」という。)
●相違点
本願発明5は、「第一凝集工程で得られた凝集汚泥を、ベルト式濃縮機の透水性を有する無端ベルトで搬送しながら無機凝集剤を添加する濃縮工程」において「濃縮」された凝集汚泥に高分子凝集剤を添加して脱水するのに対して、引用発明は、「(第一凝集工程で)凝集した汚泥を濾布走行式脱水機で重力脱水する工程(濃縮工程)」に続く「重力脱水した(濃縮された)汚泥に無機凝集剤を添加して調質する工程」において「調質」された汚泥(凝集汚泥)に両性ポリマー(高分子凝集剤)を添加して脱水する点。

(5)相違点についての判断
引用発明は、高分子凝集剤を添加する前に、その調質を目的として、重力脱水工程(濃縮工程)後の汚泥に無機凝集剤を添加するものであると認められる。
一方、上記「1(2)引用文献2?5の記載事項」で示した引用文献2?5それぞれの摘示事項からして、
引用文献2には、カチオン系有機高分子凝集剤を添加して混合した有機性汚泥を攪拌しながらフロックを生成させる第1工程と、この汚泥をメッシュドラム等を用いて重力ろ※過する第2工程と、重力ろ※過後の汚泥がベルトプレスのろ※布上(重力脱水部)にあるときに鉄塩をシャワーあるいはスプレーのようにして添加して混合した後加圧脱水する第3工程をもって有機性汚泥を脱水すること、つまり、重力脱水部中の汚泥に鉄塩(無機凝集剤)を添加した後に加圧脱水することの記載があり、
引用文献3には、高分子凝集剤とともに凝集混和槽に送られた汚泥を次の重力ろ※過脱水部に送り、ここで、自由水を分離することで形成された凝集フロックに無機凝集剤を添加して緻密で強い凝集フロックを形成し、これを楔脱水部および加圧脱水部に送つて脱水すること、つまり、無機凝集剤が添加される重力ろ※過脱水部の次に、汚泥の楔脱水および加圧脱水を行うことの記載があり、
引用文献4には、未凝集汚泥中に高分子凝集剤を添加する一次凝集部と、一次凝集した汚泥中の水分をその自重によって脱水する一次重力脱水部と、一次重力脱水後の汚泥に無機凝集剤を添加する二次凝集部と、二次凝集した汚泥中の水分を再度その自重によって脱水する二次重力脱水部と、二次重力脱水後の汚泥をベルト間に挟んで加圧することにより汚泥を脱水すること、つまり、無機凝集剤が添加される重力脱水の次に、汚泥の加圧脱水を行うことの記載があり、
引用文献5には、有機性汚泥に高分子凝集剤を添加し、該汚泥を凝集させて凝集フロックを形成する凝集工程と、ベルト濃縮機、遠心濃縮機、楕円板濃縮機などの重力濃縮機あるいは機械濃縮機を用いて凝集工程からの凝集フロックを濃縮する濃縮工程と、濃縮した凝集フロックに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程と、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、真空脱水機、フィルタプレス脱水機、多重円板脱水機などを用いて無機凝集剤添加工程からの凝集フロックを脱水する脱水工程とを有する工程をもって汚泥を脱水すること、つまり、濃縮工程後の汚泥に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程の次に、汚泥の(加圧)脱水を行うことの記載があることからして、引用文献2?5は、いずれも、重力脱水工程(濃縮工程)後の汚泥をそのまま(加圧)脱水することを目的として、重力脱水工程(濃縮工程)中またはその後の汚泥に無機凝集剤を添加するものであると認められ、高分子凝集剤を添加する前に、その調質を目的として、濃縮された汚泥に無機凝集剤を添加するものではない。
そうすると、引用発明と引用文献2?5の記載事項とは、重力脱水工程(濃縮工程)中ないしはその後の汚泥に無機凝集剤を添加することの目的において相違するといわざるをえないことからして、引用発明に引用文献2?5の記載事項を組み合わせることの動機付けを欠くというべきであり、仮に、組み合わせる(置き換える)ことができるとしても、置き換えたものは、重力脱水工程(濃縮工程)後の汚泥に高分子凝集剤を添加するものではなくなり、上記相違点に係る本願発明5の構成には至らないことになる。
また、上記相違点に係る本願発明5の構成が、本願出願前の周知慣用技術であることを立証する証拠は発見されていない。
したがって、本願発明5は、引用発明及び引用文献2?5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたものとすることはできない。

(6)本願発明1?4、6、7について
本願発明6、7は、本願発明5を引用し、本願発明5の発明特定事項を全て含むものであり、また、本願発明1は、本願発明5をシステムとして表現した発明に相当し、さらに、本願発明2?4は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1?4、6、7は、本願発明5と同じく、引用発明及び引用文献2?5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたものとすることはできない。

(7)まとめ
上記1(1)?(6)からして、本願発明1?7は、原査定の理由によって拒絶することができないものである。

2 平成29年5月15日付けの刊行物等提出書について
(1)平成29年5月15日付けの刊行物等提出書における主張
平成29年5月15日付けの刊行物等提出書は同年3月21日付けの拒絶理由通知後、同年5月15日付けの意見書及び手続補正の提出と同日付けで提出されたものであるから、上記補正前の特許請求の範囲に記載された発明に対して拒絶すべきと主張するものと認められる。
その主張は、上記補正前の請求項1?9に係る発明について次の刊行物(ア)、(イ)に基づく進歩性の欠如をいうものであるところ、この主張を、本願発明1?7に対する主張に置き換え、以下、これに対する検討を行うこととする。
(ア)特開平9-24400号公報(原査定の理由の「引用文献1」)
(イ)特開2013-712号公報(以下、「引用文献6」という。)
主張の概要は、請求項1、6に係る発明(補正後の請求項1、5に係る発明、すなわち本願発明1、5に対応する。)は、「ベルト式濃縮機に配管で接続され、無端ベルトの上を搬送される凝集汚泥に無機凝集剤を添加する無機凝集剤注入手段」を有する点で、引用文献1に記載の発明と相違しているところ、引用文献6には、補正前の請求項1の無機凝集剤注入手段と同一または類似の構成のものが記載されており(【0053】、【0065】)、また、引用文献1、6に記載された発明は、同一または類似の技術分野の発明であるので、請求項1、6に係る発明(本願発明1、5)は、当業者ならば、引用文献1と引用文献6との組み合わせにより容易に想到できる、というものである。

(2)平成29年5月15日付けの刊行物等提出書における主張についての判断
本願発明5と、引用文献1に記載された発明(引用発明)との一致点・相違点は、上記1(3)(4)において認定したとおりである。
ここで、引用文献6は、大略、「有機性汚泥に高分子凝集剤を添加し凝集汚泥を形成する凝集工程と、前記工程で形成された凝集汚泥を加圧することにより凝集汚泥を圧搾して脱水する凝集汚泥加圧脱水工程と、前記工程で形成された脱水ケーキに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程と、無機凝集剤が添加された脱水ケーキを機械脱水する機械脱水工程とを順次実施することを特徴とする有機性汚泥の脱水方法」(【0010】)を示すものであるところ、引用文献6は、引用文献2?5と同じく、高分子凝集剤を添加する前に、その調質を目的として、濃縮された汚泥に無機凝集剤を添加するものではない。
そうすると、上記1(5)(6)で示した理由と同じ理由より、本願発明1?7は、引用発明及び引用文献6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたものとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-09 
出願番号 特願2014-49963(P2014-49963)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 天野 皓己田中 雅之池田 周士郎  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 金 公彦
豊永 茂弘
発明の名称 汚泥脱水システム、および汚泥の脱水方法  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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