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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F15D
審判 全部申し立て 2項進歩性  F15D
管理番号 1344840
異議申立番号 異議2017-700509  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-24 
確定日 2018-09-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6029068号発明「表面流制御システムおよび表面流制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6029068号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕について」)訂正することを認める。 特許第6029068号の請求項1、2及び6に係る特許を維持する。 特許第6029068号の請求項3ないし5及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6029068号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年10月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人日高賢治より平成29年5月24日付けで特許異議の申立てがされ、平成29年8月14日付けで取消理由が通知され、平成29年10月16日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年12月15日付けで特許異議申立人日高賢治から意見書が提出され、平成30年1月11日付けで取消理由が通知され、平成30年3月7日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成30年5月24日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成30年7月5日付けで意見書の提出及び訂正請求がされたものである。

第2 平成30年7月5日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の適否

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され」と記載されているのを、「前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様とする)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記プラズマアクチュエータが、前記前方端縁部の近傍に配置され」と記載されているのを、「前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様とする)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を変化させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている」と記載されているのを、「前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様とする)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面流制御システム」と記載されているのを、「構成されていることを特徴とする表面流制御システム」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様とする)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「前記プラズマアクチュエータが、前記前方端縁部の近傍から所定の間隔で多段に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表面流制御システム。」と記載されているのを、「前記プラズマアクチュエータが、前記前方端縁部の近傍から所定の間隔で多段に配置され、
多段に配置された前記各プラズマアクチュエータの各段それぞれに異なる電圧を印加可能にした
ことを特徴とする請求項1に記載の表面流制御システム。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に「流体に対して相対的に移動する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータ」と記載されているのを、「流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であり、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータ」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6に「表面流制御方法であって、
前記プラズマアクチュエータによって」と記載されているのを、「表面流制御方法であって、
前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記プラズマアクチュエータによって」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6に「前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を変化させる流れを誘起する」と記載されているのを、「前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させる流れを誘起し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させる」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

2.訂正の目的の適否,新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1?3及び5?12は、特許請求の範囲の減縮を目的とし,訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項1?12は、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件訂正請求による訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。本件訂正請求による訂正前の請求項6及び7は、請求項7が、訂正の請求の対象である請求項6の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3.小括
したがって、本件訂正請求による訂正事項1?12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項,及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕について訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについて

1.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1、2及び6に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」及び「本件特許発明6」といい、全体をまとめて検討する場合には「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御手段とを備えた表面流制御システムであって、
前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され、
前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されていることを特徴とする表面流制御システム。
【請求項2】
前記プラズマアクチュエータが、前記前方端縁部の近傍から所定の間隔で多段に配置され、
多段に配置された前記各プラズマアクチュエータの各段それぞれに異なる電圧を印加可能にした
ことを特徴とする請求項1に記載の表面流制御システム。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であり、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御して、移動体表面の流体の境界層流れを変化させる表面流制御方法であって、
前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させる流れを誘起し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させることを特徴とする表面流制御方法。
【請求項7】(削除)」

2.取消理由の概要
当審において、平成30年3月7日付けの訂正請求による訂正後の請求項1?7に係る特許に対して平成30年5月24日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1?7に係る発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術に基いて、また引用例1に記載された発明及び引用例3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないものであり、請求項1?7に係る特許は、取り消されるべきものである。

3.刊行物の記載
(1)引用例1
ア.平成30年1月11日付け取消理由通知(以下、単に「取消理由通知」という。)において引用した、本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1(国際公開第2011/133260号)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。引用例2及び3についても同じ。)。
(ア)「The present disclosure relates generally to aircraft and, in particular, to controlling the flight of an aircraft. Still more particularly, the present disclosure relates to a method and apparatus for controlling the flow of air using a plasma actuator.」(第1ページ第6?8行)
(当審による仮訳:本開示は、航空機に関し、特に航空機の飛行を制御することに関するものである。より詳細には、本開示は、プラズマアクチュエータを使用して空気の流れを制御する方法及び装置に関するものである。)
(イ)「One alternative to the currently used control surfaces may be a plasma actuator. A plasma actuator may control the flow of air over a surface through the formation of a plasma. This plasma also may be referred to as a dielectric barrier discharge. With a plasma actuator, a plasma may be formed between a pair of electrodes when an alternating current or nanosecond pulse voltage is applied across electrodes. Air molecules may be ionized in the vicinity of the electrodes and accelerated through an electric field. The plasma discharge may induce airflow, shock, and/or acoustic disturbances to change the flow of air over a surface.
Plasma actuators may provide for increased airfoil lift, separation delay, boundary layer transition, drag reduction, and other desirable features.」(第1ページ第23?31行)
(当審による仮訳:現在利用されている制御面に代わるものとして、プラズマアクチュエータが挙げられる。プラズマアクチュエータは、プラズマを形成することにより表面上の空気の流れを制御することができる。このプラズマは、誘電性バリア放電と呼ばれることもある。プラズマアクチュエータを用いて、交流電流又はナノ秒パルス電圧を電極間に印加し、一対の電極の間にプラズマを形成することができる。空気分子を電極の近傍でイオン化し、電界により加速することができる。プラズマ放電は、気流、衝撃及び/又は音響外乱を起こし、表面上の空気の流れを変化させることができる。
プラズマアクチュエータは、増加された翼形揚力、剥離の遅れ、境界層遷移、抗力の低減や他の望ましい特徴をもたらすことができる。)
(ウ)「In yet another advantageous embodiment, a method may be present for controlling airflow. A plasma formed by a number of plasma actuators may be changed. Each of the number of plasma actuators may be configured to form the plasma in response to a voltage. The number of plasma actuators may be associated with a surface. Airflow over the surface may be modified in response to changing the plasma.」(第4ページ第19?23行)
(当審による仮訳:更に別の有利な実施形態では、気流を制御する方法を提供することができる。多数のプラズマアクチュエータにより形成されるプラズマは、変化させることができる。前記多数のプラズマアクチュエータの各々は、電圧に応じてプラズマを形成するように構成することができる。前記多数のプラズマアクチュエータは、表面に取り付けることができる。前記プラズマの変化に応じて前記表面上の気流を変更することができる。)
(エ)「With reference now to Figure 3, an illustration of a plasma actuator environment is depicted in accordance with an advantageous embodiment. Plasma actuator environment 300 may be an example of an environment that may be implemented for aircraft 200 in Figure 2.
In this illustrative example, plasma actuator environment 300 may include platform 302 with surface 304. Platform 302 may be, for example, without limitation, aircraft 200 in Figure 2. Surface 304 may be configured for airflow 306. In other words, air 308 may flow over surface 304. In these illustrative examples, surface 304 may take a number of different forms.
For example, without limitation, surface 304 may be selected from one of a leading edge of a section of an airfoil, a trailing edge of a section of an airfoil, a duct, an inlet, a section of a strut, a section of a stabilizer, a rudder, a fuselage, and other suitable surfaces over which air 308 may flow. Further, surface 304 may take the form of curved surface 309. In these illustrative examples, plasma actuator system 310 may change airflow 306 over surface 304.
As illustrated, plasma actuator system 310 may include number of plasma actuators 312, power system 314, and controller 316. Number of plasma actuators 312 may change the flow of air 308 over surface 304 to change airflow 306. Number of plasma actuators 312 may generate plasma 318. Power system 314 may supply an alternating voltage to number of plasma actuators 312. This alternating current may cause the generation of plasma 318.
Controller 316 may control the generation of plasma 318 by number of plasma actuators 312. Controller 316 may receive input 313 from operator input device 315. Input 313 may cause controller 316 to change plasma 318 in a manner that changes airflow 306 over surface 304.」(第14ページ第21行?第15ページ第9行)
(当審による仮訳:図3を参照すると、有利な実施形態によるプラズマアクチュエータ環境の例が、描かれている。プラズマアクチュエータ環境300は、図2の航空機200に実装されることができる環境の一例である。
この例示的な例において、プラズマアクチュエータ環境300は、表面304を有するプラットフォーム302を含むことができる。プラットフォーム302は、例えば、これに限定されないが、図2の航空機200であってよい。表面304は、気流306に適するように構成することができる。言い換えれば、空気308は、表面304上を流れることができる。これらの例示的な例において、表面304は、多くの異なる形態をとることができる。
例えば、これに限定されないが、表面304は、翼形の前縁、翼形の後縁、ダクト、吸気口、ストラット部、スタビライザー部、方向蛇、胴体、及びその上を空気308が流れることができる他の適当な表面のうちの1つから選択することができる。更に、表面304は、湾曲面309の形態をとってもよい。これらの例示的な例において、プラズマアクチュエータシステム310は、表面304上の気流306を変化させることができる。
図示のように、プラズマアクチュエータシステム310は、多数のプラズマアクチュエータ312と、電源システム314と、制御装置316と、を含むことができる。多数のプラズマアクチュエータ312は、表面304上の空気308の流れを変化させて、気流306を変化させることができる。多数のプラズマアクチュエータ312は、プラズマ318を発生させることができる。電源システム314は、交流電圧を多数のプラズマアクチュエータ312に供給することができる。この交流電流は、プラズマ318の発生をもたらすことができる。
制御装置316は、多数のアクチュエータ312によるプラズマ318の発生を制御することができる。制御装置316は、操作者入力装置315からの入力313を受けることができる。入力313により、制御装置316は、表面304上の気流306が変化するようにプラズマ318を変化させることができる。)
(オ)「With reference now to Figure 4, an illustration of an aircraft is depicted in which an advantageous embodiment may be implemented. Aircraft 400 may be an example of one implementation of aircraft 200 in Figure 2 and an example of one implementation for platform 302 in Figure 3. In this illustrative example, aircraft 400 may have wings 402 and 404 attached to fuselage 406. Aircraft 400 may include wing-mounted engine 408, wing-mounted engine 410, and tail 412.
In these illustrative examples, plasma actuators 413 are attached to various surfaces of aircraft 400. As depicted, plasma actuators 414, 416, 418, and 420 may be located on leading edge 422 of wing 402. Plasma actuators 424, 426, 428, and 430 may be located on leading edge 432 of wing 404. Plasma actuators 434 and 436 may be located on surface 438 of fuselage 406. Plasma actuators 440 and 442 may be located on trailing edge 444 of tail 412.
In this illustrative example, plasma actuators 414, 416, 418, 420, 424, 426, 428, 430, 434, 436, 440, and 442 may be examples of number of plasma actuators 312 in Figure 3. In particular, plasma actuators 414, 416, 418, 420, 424, 426, 428, 430, 434, 436, 440, and 442 may be examples of plasma actuator 320 in Figure 3. In the different advantageous embodiments, any number of plasma actuators may be located on any surface of aircraft 400 to control the flow of air over the surface.
Turning now to Figure 5, an illustration of a portion of a wing is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, portion 500 of wing 404 is depicted. In this example, plasma actuator 428 may be associated with surface 504 of portion 500 of wing 404.
As can be seen in this example, plasma actuator 428 may be located on leading edge 506 of wing 404. Plasma actuator 428 conforms to curved surface 508 of leading edge 506 of wing 404. Plasma actuator 428 may be configured to control the flow of air over surface 504.
In this illustrative example, plasma actuator 428 may be attached to curved surface 508. For example, plasma actuator 428 may take the form of an applique attached to curved surface 508. Plasma actuator 428 may be attached to curved surface 508 by adhering a side of plasma actuator 428 having an adhesive, such as adhesive 323 in Figure 3, to curved surface 508.」(第18ページ第27行?第19ページ第22行)
(当審による仮訳:図4を参照すると、有利な実施形態が実装されることができる航空機の例が描かれている。航空機400は、図2の航空機200の一実施形態の例及び図3のプラットフォーム302の一実施形態の例であってよい。この例示的な例において、航空機400は、胴体406に取り付けられた翼402及び翼404を備えることができる。航空機400は、翼に装着されたエンジン408、翼に装着されたエンジン410及び尾翼412を含むことができる。
これらの例示的な例において、プラズマアクチュエータ413は、航空機400の種々の表面に取り付けられる。図示のように、プラズマアクチュエータ414、416、418及び420は、翼402の前縁422に配置することができる。プラズマアクチュエータ424、426、428及び430は、翼404の前縁432に配置することができる。プラズマアクチュエータ434及び436は、胴体406の表面438に配置することができる。プラズマアクチュエータ440及び442は、尾翼412の後縁444に配置することができる。
この例示的な例では、プラズマアクチュエータ414、416、418、420、424、426、428、430、434、436、440及び442は、図3の多数のプラズマアクチュエータ312の例であってよい。特に、プラズマアクチュエータ414、416、418、420、424、426、428、430、434、436、440及び442は、図3のプラズマアクチュエータ320の例であってよい。異なる有利な実施形態において、任意の数のプラズマアクチュエータを航空機400の任意の表面に配置し、表面上の空気の流れを制御することができる。
図5に移ると、有利な実施形態による翼の一部の例が描かれている。この例示的な例において、翼404の一部500が描かれている。この例において、プラズマアクチュエータ428を翼404の一部500の表面504に結合することができる。
この例から分かるように、プラズマアクチュエータ428は、翼404の前縁506に配置することができる。プラズマアクチュエータ428は、翼404の前縁506の湾曲面508に適合する。プラズマアクチュエータ428は、表面504上の空気の流れを制御するように構成することができる。
この例示的な例において、プラズマアクチュエータ428は、湾曲面508に取り付けることができる。例えば、プラズマアクチュエータ428は、湾曲面508に取り付けられるアップリケの形態をとることができる。プラズマアクチュエータ428は、プラズマアクチュエータ428の、図3における接着剤323のような接着剤が付いた面を湾曲面508に接着することにより、湾曲面508に取り付けることができる。)
(カ)「With reference now to Figure 6, an illustration of a cross section of a portion of a wing with a plasma actuator is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, a cross section of portion 500 of wing 404 having plasma actuator 428 is depicted. Plasma actuator 428 has not yet been activated to form a plasma, such as plasma 318 in Figure 3, in this depicted example.
Air 600 may move around portion 500 of wing 404 in this illustrative example. As depicted, the flow of air 600 over surface 504 of leading edge 506 of wing 404 may separate from surface 504. In other words, airflow 602 over surface 504 may not follow the shape of surface 504 as closely as desired. For example, without limitation, airflow 602 may not follow curved surface 508 as closely as desired. Also, in this depicted example, wing 404 may provide lift 604.
Turning now to Figure 7, an illustration of a cross section of a portion of a wing having a plasma actuator is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, plasma actuator 428 may be activated and may form plasma 700 over plasma actuator 428.
As depicted, plasma 700 may cause airflow 602 over surface 504 to follow the shape of surface 504 more closely as compared to when plasma 700 is not present. For example, without limitation, plasma 700 may cause airflow 602 to follow the curve of curved surface 508 more closely. In other illustrative examples, the amount of plasma 700 formed may be changed to adjust how closely airflow 602 follows the shape of surface 504.
Changing plasma 700 to change airflow 602 may also change lift 604. For example, without limitation, lift 604 may be increased or decreased, depending on the change to the amount of plasma 700 formed. Further, changes to plasma 700 may cause changes to other aerodynamic characteristics, such as, for example, without limitation, drag and/or other suitable aerodynamic characteristics.」(第19ページ第23行?第20ページ第14行)
(当審による仮訳:図6を参照すると、有利な実施形態による、プラズマアクチュエータを備える翼の一部の断面の例が描かれている。この例示的な例において、プラズマアクチュエータ428を備える翼404の一部500の断面が描かれている。この図示の例において、プラズマアクチュエータ428は、作動されておらず、図3のプラズマ318のようなプラズマを形成していない。
この例示的な例において、空気600は、翼404の一部500の周囲を流れることができる。図示のように、翼404の前縁506の表面504上の空気600の流れは、表面504から剥離するだろう。言い換えれば、表面504上の気流602は、望む程には表面504の形状に沿って流れないだろう。例えば、これに限定されないが、気流602は、望む程には湾曲面508に沿って流れないだろう。また、この図示の例において、翼404は、揚力604を発生させることができる。
図7を参照すると、有利な実施形態による、プラズマアクチュエータを備える翼の一部の断面の例が描かれている。この例示的な例において、プラズマアクチュエータ428は、作動され、プラズマ700をプラズマアクチュエータ428上に形成することができる。
図示のように、プラズマ700は、表面504上の気流602が、プラズマ700が存在していない場合に比べて、より表面504の形状に沿って流れるようにすることができる。例えば、これに限定されないが、プラズマ700は、気流602がより湾曲面508の曲線に沿って流れるようにすることができる。他の例示的な例において、形成されるプラズマ700の量を変化させ、気流602がどの程度表面504の形状に沿って流れるかを調整することができる。
プラズマ700を変化させて気流602を変化させると、揚力604を変化させることもできる。例えば、これに限定されないが、揚力604は、形成されるプラズマ700の量の変化によって、大きく又は小さくすることができる。更に、プラズマ700を変化させることにより、例えば、これらに限定されないが、抗力及び/又は他の適切な空力特性のような他の空力特性を変化させることができる。)
(キ)「With reference now to Figure 9, an illustration of a cross-sectional view of a plasma actuator is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, plasma actuator 900 is an example of one implementation for plasma actuator 320 in Figure 3. Further, plasma actuator 900 may be an example of one implementation for a plasma actuator in plasma actuators 413 in Figure 4.
As depicted, plasma actuator 900 may include first surface layer 902, inner layer 904, second surface layer 906, first electrode 908, and second electrode 910. First surface layer 902 and second surface layer 906 may be comprised of a dielectric material, such as Kapton(R)((R)は、「○の中にR」の代替表示). Inner layer 904 may be comprised of a flexible material, such as Teflon(R)((R)は、「○の中にR」の代替表示)-FEP.
First surface layer 902, inner layer 904, and second surface layer 906 may form laminate 912 in this depicted example. Laminate 912 is an example of one implementation for laminate 330 in Figure 3.
First electrode 908 may be attached to first surface layer 902. Second electrode 910 may be attached to second surface layer 906. In these illustrative examples, an electrode may be attached to a layer in laminate 912 by being bonded to the layer. In other illustrative examples, the electrode may be attached to the layer by melting at least a portion of the material in the layer and then allowing the material to reform around a connector for the electrode.
With reference now to Figure 10, an illustration of a top view of a plasma actuator is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, a top view of plasma actuator 900 in Figure 9 is shown. As depicted, first electrode 908 is seen attached to first surface layer 902.
With reference now to Figure 11, an illustration of a bottom view of a plasma actuator is depicted in accordance with an advantageous embodiment. In this illustrative example, a bottom view of plasma actuator 900 in Figure 9 is shown. As depicted, second electrode 910 is seen attached to second surface layer 906.」(第21ページ第7?31行)
(当審による仮訳:図9を参照すると、有利な実施形態によるプラズマアクチュエータの断面図が描かれている。この例示的な例において、プラズマアクチュエータ900は、図3のプラズマアクチュエータ320の一実施形態の例である。更に、プラズマアクチュエータ900は、図4のプラズマアクチュエータ群413の中の1つのプラズマアクチュエータの一実施形態の例であってよい。
図示のように、プラズマアクチュエータ900は、第1表面層902、内側層904、第2表面層906、第1電極908及び第2電極910を含むことができる。第1表面層902及び第2表面層906は、カプトン(Kapton)(登録商標)のような誘電体材料から構成することができる。内側層904は、テフロン(Teflon)(登録商標)-FEPのような可撓性材料から構成することができる。
この図示の例では、第1表面層902、内側層904及び第2表面層906は、積層板912を形成することができる。積層板912は、図3の積層板330の一実施形態の例である。
第1電極908は、第1表面層902に取り付けることができる。第2電極910は、第2表面層906に取り付けることができる。これらの例示的な例において、電極は、接着により積層板912の1つの層に取り付けることができる。他の例示的な例において、電極は、層内の材料の少なくとも一部を溶融し、その後前記電極の接続部の近傍で再形成することにより、その層に取り付けることができる。
図10を参照すると、有利な実施形態によるプラズマアクチュエータの平面図が描かれている。この例示的な例において、図9のプラズマアクチュエータ900の平面図が示されている。図示のように、第1電極908が第1表面層902に取り付けられているのが分かる。
図11を参照するに、有利な実施形態によるプラズマアクチュエータの底面図が描かれている。この例示的な例において、図9のプラズマアクチュエータ900の底面図が示されている。図示のように、第2電極910が第2表面層906に取り付けられているのが分かる。)
そして、記載事項(ア)、(エ)及び(オ)から、次の事項が理解できる。
(ク)空気の流れを制御する方法及び装置は、航空機の翼と、前記翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御装置とを備え、前記翼の表面上の気流を制御する。
図4の記載から、次の事項が看取できる。
(ケ)翼は、後退翼であり、その前縁が空気の移動方向に対して垂直でない方向に延びている。
記載事項(キ)及び図9?11の記載からみて、次の事項が看取できる。
(コ)第1電極及び第2電極は、いずれも、プラズマアクチュエータの長手方向に延在し、第1電極が第1表面層に取り付けられる位置と、第2電極が第2表面層に取り付けられる位置とは、プラズマアクチュエータの長手方向と直交する方向にずれている。
記載事項(オ)並びに図4及び5の記載からみて、次の事項が看取できる。
(サ)翼の前縁に配置されたプラズマアクチュエータは、当該前縁と平行に配置されている。
イ.以上のことから、引用例1には、本件特許発明に倣って整理すると, 次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「航空機の翼と、前記翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御装置とを備えた、前記翼の表面上の気流を制御する方法及び装置であって、
前記翼は、後退翼であり、その前縁が空気の移動方向に対して垂直でない方向に延びており、
前記プラズマアクチュエータが、第1表面層、内側層、第2表面層、第1電極及び第2電極を含み、前記第1表面層及び第2表面層は誘電体材料からなり、前記第1表面層、内側層及び第2表面層が積層板を構成し、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられ、前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられ、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがずれており、さらに前記プラズマアクチュエータが前記翼の前縁に当該前縁と平行に配置され、
前記制御装置が、前記プラズマアクチュエータによるプラズマの発生を制御し、前記翼の表面上の気流を変化させることが可能である、方法及び装置。」
(2)引用例2
ア.取消理由通知において引用した、本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2(S.L.Chernyshev,ほか4名,「Attenuation of Cross-Flow-Type Instability in Compressible Boundary Layer by Means of Plasma Actuators」,第51回AIAA航空宇宙科学会議,アメリカ航空宇宙学会(AIAA),2013年1月7日?10日開催,第1?16ページ:甲第1号証)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「DEVELOPMENT of energy-saving and environmentally appropriate technologies in civil aviation remains one of the industries major objectives.^(1) Laminar-to-turbulent transition delay in boundary layer on aerodynamic surfaces is one of the effective methods of friction drag reduction and, consequently, fuel consumption and atmospheric pollution decrease. According to recent understanding, the initial stage of laminar-to-turbulent transition in a boundary layer consists in transformation of free-stream disturbances in unstable modes growing downstream inside a boundary layer. After amplification of these modes in the downstream region, secondary instability quickly destroys laminar flow in a boundary layer. In three-dimensional boundary layer on a swept wing three types of instability exist in common case. The first one is the instability of viscous flow along a critical line on a wing leading edge. This instability is characterized by critical value of Poll Reynolds number. The second type of instability presenting in some vicinity of a leading edge is the cross-flow-type instability. Finally, the Tollmien- Schlichting-type instability can arise at large enough distance from a wing-leading edge.
The cross-flow-type instability is, as a rule, the main reason of laminar-to-turbulent transition on a swept wing of modern civil airplanes. Therefore any method of suppression of this instability would be a key to solution of the problem of a swept wing drag reduction, if this method is energy acceptable. The concept of laminar flow control (LFC) method based on an attenuation of the cross-flow-type instability due to electrogasdynamic (EGD) force impact on three-dimensional boundary layer in the vicinity of a swept wing leading edge was proposed at TsAGl about 25 years ago^(2) and is illustrated in Fig. 1.」(第2ページ下から第28行?下から第6行)
(当審による仮訳:民間航空において、エネルギーを節約し、環境的にも好ましい技術の開発は、依然として産業界における主要な目的の一つとなっている。空力的表面の境界層における層流から乱流への遷移遅延は、摩擦抵抗を低減し、結果的に燃料消費や大気汚染を低減するための効果的な方法の一つである。最近わかってきたところによると、境界層における層流から乱流への遷移の初期段階は、境界層内の下流で成長する不安定なモードでの自由流擾乱の変形によって構成されている。下流領域においてこれらのモードが増幅すると、二次不安定性により境界層における層流はすぐに破壊される。後退翼上の3次元の境界層には、一般的に、3種類の不安定性が存在する。第1の不安定性は、翼の前縁上の臨界線に沿った粘性流動の不安定性である。この不安定性は、ポール・レイノルズ数の臨界値で特徴づけられる。前縁の近傍に現れる第2の種類の不安定性は、横流れ不安定性である。最後に、トルミーン-シュリヒティング型の不安定性は、翼の前縁から十分に離れたところで発生し得る。
横流れ不安定性は、概して、現代の民間航空機の後退翼における層流から乱流への遷移の主な理由である。従って、この不安定性を抑制するいかなる方法も、それがエネルギー的に許容可能であれば、後退翼の抗力低減の問題を解決する鍵となるであろう。後退翼の前縁近傍における3次元境界層に対する電気気体力学的(EGD)衝撃による横流れ不安定性の減衰に基づく層流制御(LFC)方法の概念は、約25年前にTsAGIで提唱されており、図1で説明される。)
(イ)「Original proposal implied the use of bipolar corona discharge to create volumetric force by plasma actuators in series. But actuators operating on the base of dielectric barrier discharge (DBD)^(3) seem to be more convenient for this method realization. Here V_(∞) is the free-stream velocity vector, LE is the swept wing leading edge. V is the gas velocity vector in some point inside a boundary layer. V_(MF) and V_(CF) are the main-flow and cross-flow components of the velocity vector, blue dashed curve shows the external inviscid streamline, red solid curves show the exposed electrodes of DBD-actuators. F_(II) is the vector component of the volumetric force generated by every actuator and directed parallel to wing surface.
The simplest configuration of DBD-actuator system is shown in Fig. 1, a. The exposed electrodes are placed continuously from lower to upper surfaces of a wing perpendicular to its leading edge. Volumetric force impact directed along the leading edge will produce a gas velocity component which will decrease V_(CF) at some distance from a critical line. Moreover one can expect that the "filling" of the velocity profile in viscous flow along a critical line due to gas acceleration will result in a rise of this flow stability and, hence, an increase in the critical Poll Reynolds number. The more complex configuration shown in Fig. 1, b may be found more effective and less energy consuming. The arrangement of the curvilinear exposed electrodes along the external streamline will result in the volumetric force F_(II) directly against V_(CF) thereby intensifying the effect of volumetric force on cross-flow. In this case the DBD-actuators may be placed at some distance from the critical line, namely, beginning at the line of the cross-flow-type instability origin. It will also reduce total power consumption. In both cases an attenuation of the cross-flow velocity V_(CF) results in a decrease of increments of spatial growth of steady-state modes of the cross-flow-type instability^(4). 」(第2ページ下から第5行?第3ページ第14行)
(当審による仮訳:当初の提案は、直列のプラズマアクチュエータによって体積力を生み出すために、双極コロナ放電を利用することを示唆した。しかし、この方法を実現するためには、誘電体バリア放電(DBD)に基づいて動作するアクチュエータがより便利であると思われる。ここで、V_(∞)は自由流速度ベクトル、LEは後退翼の前縁、Vは境界層内のある点における気体速度ベクトル、V_(MF)及びV_(CF)は速度ベクトルの主流及び横流れ成分であり、青の破線の曲線は外部の非粘性の流線を、赤の実線の曲線はDBDアクチュエータの露出した電極を示し、F_(ll)は、すべてのアクチュエータによって発生され、翼の表面と平行に方向付けられた体積力のベクトル成分である。
DBDアクチュエータシステムの最も単純な配置を図1aに示す。露出電極は、翼の前縁とは垂直に、翼の表面の下から上に連続的に配置されている。前縁に沿って方向付けられた体積力の衝撃は、臨界線からある距離においてV_(CF)を低下させる気体速度成分を生成する。さらに、気体の加速度に起因して臨界線に沿った粘性流の速度プロファイルが“充填”される結果、この流れの安定性が向上し、これにより臨界ポール・レイノルズ数が上昇することが予想される。図1bに示す、より複雑な配置は、より効果的でエネルギー損失が少ないであろう。曲線状の露出電極の外部の流線に沿った配置は、体積力F_(ll)が直接V_(CF)に抗し、その結果横流れにおける体積力の効果を強めている。この場合、DBDアクチュエータは臨界線、すなわち横流れ不安定性のラインの原点から始まるラインからある距離に配置される。これはまた、総消費電力量の削減にもなる。両方の場合において、横流れ速度V_(CF)の低下により、横流れ不安定性の定常状態の空間的成長の増加を低減することとなる)
そして、記載事項(イ)及び図1の記載から、次の事項が理解できる。
(ウ)誘電体バリア放電アクチュエータが航空機の後退翼の表面に設けられ、該後退翼の前縁の近傍に所定の間隔で多段に配置される。
記載事項(ア)及び(イ)から、次の事項が理解できる。
(エ)誘電体バリア放電アクチュエータにより発生される体積力F_(II)の衝撃により、後退翼表面の境界層内の気体速度ベクトルVの横流れ速度V_(CF)を低下させる気体速度成分を生成し、
もって、前記横流れ速度V_(CF)を低下させて、横流れ不安定性の定常状態の空間的成長の増加を低減し、後退翼表面の境界層における層流から乱流への遷移を遅延させ、摩擦抵抗を低減する。
イ.以上のことから、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「航空機の後退翼の表面に誘電体バリア放電アクチュエータを設け、該誘電体バリア放電アクチュエータを前記後退翼の前縁の近傍に所定の間隔で多段に配置し、
前記誘電体バリア放電アクチュエータにより発生される体積力F_(II)の衝撃により、前記後退翼表面の境界層内の気体速度ベクトルVの横流れ速度V_(CF)を低下させる気体速度成分を生成し、
もって、前記横流れ速度V_(CF)を低下させて、横流れ不安定性の定常状態の空間的成長の増加を低減し、後退翼表面の境界層における層流から乱流への遷移を遅延させ、摩擦抵抗を低減する。」
(3)引用例3
ア.取消理由通知において引用した、本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例3(米国特許出願公開第2012/0193483号明細書:甲第2号証)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「 [0019] An example of an embodiment of an apparatus for controlling boundary layer flow across an aerodynamic structure comprises a dielectric-barrier-discharge electrode assembly adapted to be connected to or otherwise integrated with the surface of an aerodynamic structure, such as, for example, a swept wing. The electrode assembly includes an insulating dielectric layer having an environmental fluid facing surface defining a top surface and an aerodynamic structure facing surface defining an bottom surface, a first or top electrode layer attached to or otherwise positioned in contact with the top surface of the insulating dielectric layer, and a second or bottom electrode layer attached to or otherwise positioned in contact with the bottom surface of the insulating dielectric layer so that the insulating dielectric layer is positioned between at least substantial portions of the first electrode layer and the bottom electrode layer.
[0020] The top electrode layer includes a plurality of oblong (e.g., pill shaped) voids extending through the layer, such that each of the oblong voids is substantially completely surrounded by a portion of the top electrode layer. The bottom electrode layer similarly includes a plurality of separate and spaced apart oblong (e.g., pill shaped) electrodes defining a plurality of secondary electrodes. Each of the secondary electrodes are positioned beneath a separate one of the plurality of oblong voids to complement the respective separate one of the plurality of oblong voids and positioned laterally substantially within confines of a normal extending along the perimeter of the respective complementing separate one of the plurality of oblong voids. That is, according to a preferred configuration, each secondary electrode is beneath and at least approximately centered laterally and within the confines of the respective complementing oblong void associated therewith when observed with a planar view. In this way, the combination of the portion of the top electrode layer surrounding each void and the associated secondary electrode creates a corresponding number of separate dielectric-barrier-discharge (DBD)-based plasma regions, with the set/array of plasma regions forming a plasma actuator. Each plasma region is dimensioned so that when activated, the respective plasma region functions to impart a net momentum and velocity to the surrounding environmental fluid which is primarily substantially normal to the portion of the dielectric layer immediately below the respective oblong void .」
(当審による仮訳:[0019]空気力学的構造体を横切る境界層流を制御するための装置の実施形態の一例は、例えば後退翼のような空気力学的構造体の表面に接続されるか又は一体化されるように適合された誘電体バリア放電電極アセンブリを含む。電極アセンブリは、上面を画定する環境流体対向表面と底面を画定する空気力学的構造体対向表面とを有する絶縁誘電体層と、絶縁誘電体層の上面に取り付けられるか又は接触するように配置される第1の電極層又は上部電極層と、絶縁誘電体層の底面に取り付けられるか又は接触するように配置される第2の電極層又は底部電極層とを含み、絶縁誘電体層は、第1の電極層の少なくとも実質的な部分と底部電極層との間に配置される。
[0020]上部電極層は、層を貫通して延在する複数の横長(例えば、ピル形状)の空隙を含み、横長の空隙の各々は、上部電極層の一部によって実質的に完全に取り囲まれる。下部電極層は、同様に、複数の二次電極を画定する、複数の別個の離間した横長(例えば、ピル形状)の電極を含む。二次電極の各々は、複数の横長の空隙のうちの別個の一つの下に配置され、複数の横長のそれぞれ別個の一つを補完し、複数の横長の空隙のそれぞれの周囲に沿って延びる通常の境界内に横方向に実質的に配置される。すなわち、好ましい構成によれば、各二次電極は、平面図で観察されると、それに関連するそれぞれの補完的な横長の空隙の範囲内にあり、かつその範囲内に少なくともほぼ中央に位置している。このように、各空隙を囲む上部電極層の部分と関連する二次電極の部分との組み合わせは、対応する数の別個の誘電体バリア放電(DBD)ベースのプラズマ領域を形成し、プラズマ領域のセット/アレイは、プラズマアクチュエータを形成する。各プラズマ領域は、活性化されると、それぞれのプラズマ領域が、個々の横長の空隙の直下の誘電層の部分に主に垂直である周囲の環境流体に正味の運動量及び速度を与えるように機能するように寸法決めされる。)
(イ)「[0027] Various embodiments of the present invention can advantageously mitigate cross-flow instabilities, which occur on swept wings, by providing an active means to maintaining laminar flow on swept-back wings. Transition from laminar flow to turbulent flow occurs earlier (upstream) on a swept back wing, then for a non-swept wing. This transition occurs due to the cross-flow instabilities that interact with each other, and grow. Advantageously, embodiments of the present invention can provide the flow over the wing with regions for the vortices caused by the cross-flow instability to attach, thus stabilizing the flow, reducing drag on aircraft and/or providing increased fuel efficiency.」
(当審による仮訳:[0027]本発明の様々な実施形態は、後退翼上の層流を維持する能動的手段を提供することによって、後退翼上で生じる横流れ不安定性を有利に軽減することができる。層流から乱流への遷移は、後退翼でより早く(上流で)起こり、次いで非後退翼で起こる。この遷移は、互いに相互作用して成長する横流れ不安定性によって生じる。有利には、本発明の実施形態は、翼上の流れに、横流れ不安定性によって引き起こされる渦が付着する領域を提供して、流れを安定化させ、航空機の抗力を減少させ、及び/又は燃料効率を向上させることができる。)
(ウ)「[0054] Various embodiments of the present invention beneficially provide flow control systems, apparatus, devices, electrode assemblies, controllers, program product, and methods for controlling boundary layer flow across an aerodynamic structure, which can produce separate regions of flow structures at different strengths by means of dielectric-barrier-discharge (DBD) type plasmas. Various embodiments of the systems and apparatus, for example, can provide the plasma regions that are capable of being individually controlled by voltage and/or frequency, which can be modulated for the purposes of flow control. Various embodiments of the apparatus includes an electrode assembly fitted with electrodes on either side of a dielectric such that different electrode geometries and arrangements create isolated regions of plasmas which results in separate regions of flow structures. These regions may be further controlled and modulated by the use of electronic-switching to produce irregularly shaped flow structures and strengths. As will be described in more detail below, the electrodes can be applied to either side of the dielectric by a sputtering and/or photolithography techniques, which allow for the specified electrode geometry and arrangement, as well as precision in creating optimally spatially oriented opposing electrodes. Additional deposition of other materials can be used to suppress unwanted discharge regions associated with electrodes.
[0055] Specifically, as perhaps best shown in FIGS. 1-2, an exemplary embodiment of the present invention includes an apparatus (or system) 30 for controlling boundary layer flow across an aerodynamic structure, including at least one electrode assembly 31 connected to an airfoil 33 or other aerodynamic structure to provide flow control to a fluid flow 35 passing over the airfoil 33. Note, although the term ”airfoil“ is used for convenience, as used herein, the term represents the various other terms of aerodynamic and hydrodynamic structures. The apparatus 30 also includes sensors 37 and/or pressured taps 39 for determining an aerodynamics/hydrodynamic profile and/or the state of the fluid flow across the airfoil 33, and a controller 40 operably coupled to electrode assembly 31 and sensors 37 to manage the formation, geometry, and arrangement of various plasma regions having a primarily vertical flow component and/or various plasma regions having a primarily horizontal flow component, described in more detail later. Note, sensors 37 can include airspeed sensors, pressure altitude sensors, skin surface sensors, temperature sensors along with others as known to those of ordinary skill in the art. Pressure taps 39 can include pitot tubes, outside air vents, and/or others as known to those of ordinary skill in the art.
[0056] FIGS. 3-6 illustrate cross-sections of two examples of a dielectric barrier discharge (“DBD“) or ”plasma“ actuator 41. The actuators 41 generally include a dielectric material 43, e.g., dielectric Kapton, with two opposing-electrodes 45, 47 positioned on either side of the dielectric material 43 in some relationship. Alternating current (AC) power source 49 delivers voltage and current to the device sufficient to cause a breakdown between the dielectric material 43 and the electrodes 45, 47. One electrode 47 may be suppressed or ”buried“ by covering it with some other dielectric material 50 (e.g., potting or silicone adhesive) to prevent breakdown from occurring on that side, or to act as a barrier between a support portion of the airfoil 33 and the actuator 41. Note, the electrodes 45, 47, can be of various sizes and can be positioned in various relations to each other as is shown in the FIGS. 3-6, depending upon the desired flow affect.
[0057] As perhaps best shown in FIGS. 7-8, in operation, discharges are created between the surface of the dielectric 43 and the corresponding electrode 45 by applying a high frequency and high voltage. The resultant discharge creates a net displacement of the air or other fluid 35 that is near the dielectric surface layer, which creates a flow structure with a flow strength that is directly dependent on the applied power at the electrodes 45. There is an equal discharge created on the opposing electrode 47, which is typically suppressed by isolating it from the surrounding fluid flow 35 by covering it with other dielectric material 50 or another electrode (not shown). The net result is an asymmetrical DBD-based plasma actuator 41 with one electrode 47 buried and not contributing to the net momentum or velocity, and the other electrode 45 exposed on the surface to be the single contributor to the momentum and velocity.」
(当審による仮訳:[0054]本発明の種々の実施形態は、誘電体バリア放電(DBD)型プラズマによって異なる強度で流れ構造の別個の領域を生成することができる、空気力学的構造体を横切る境界層の流れを制御する流れ制御システム、装置、デバイス、電極集合体、制御装置、プログラム製品及び方法を有利に提供する。システム及び装置の様々な実施形態は、例えば、流れ制御のために変調することができる、電圧及び/又は周波数によって個別に制御することができるプラズマ領域を提供することができる。装置の様々な実施形態は、誘電体のいずれかの側に電極が取り付けられた電極集合体を含み、異なる電極の幾何学的形状及び配置は、流れ構造の別個の領域をもたらす、プラズマの分離された領域を生成する。これらの領域は、不規則な形状の流れ構造及び強度を生成するため、電子スイッチングを使用することによってさらに制御及び変調され得る。以下により詳細に説明されるように、電極は、スパッタリング及び/又はフォトリソグラフィ技術によって誘電体のいずれかの側にも適用することができ、これにより、特定の電極の幾何学的形状及び配置、並びに最適に空間的に配向された対向電極の精度良い形成が可能になる。電極に関連する不要な放電領域を抑制するため、他の材料を追加して堆積させることができる。
[0055]具体的には、おそらく図1?2に最もよく示されているように、本発明の例示的な実施形態は、空気力学的構造体を横切る境界層流を制御する装置(又はシステム)30を含み、該装置(又はシステム)は、翼形部33上を通過する流体流れ35を流れ制御する、翼形部33又は他の空気力学的構造体に接続された少なくとも1つの電極集合体31を含む。「翼形部」という用語が、便宜上使用されているが、本明細書では、この用語は、空気力学的及び流体力学的構造の様々な他の用語も表す。装置30はまた、翼形部33を横切る流体流れの空気力学/流体力学的プロファイル及び/又は状態を測定するセンサ37及び/又は圧力孔39、及び電極集合体31及びセンサ37に動作可能に接続され、後でより詳細に記載されるが、主に垂直流れ成分を有する様々なプラズマ領域及び/又は主に水平流れ成分を有する様々なプラズマ領域の形状、幾何学的形状及び配置を管理する制御装置40を含む。センサ37は、対気速度センサ、気圧高度センサ、膜表面センサ、温度センサ及び当業者に知られるその他のセンサを含み得る。圧力孔39は、ピトー管、外気通気孔及び/又は当業者に知られるその他のものを含み得る。
[0056]図3?6は、誘電体バリア放電(“DBD”)すなわち“プラズマ”アクチュエータ41の2つの例の断面を示している。アクチュエータ41は、一般に、誘電体材料43、例えば誘電体カプトン(Kapton)と、なんらかの関係で誘電体材料43の両側に位置する2つの対向電極45,47と、を含む。交流(AC)電源49は、誘電体材料43と電極45,47との間に絶縁破壊を生じさせるのに十分な電圧及び電流をデバイスに供給する。一方の電極47は、そちら側で絶縁破壊が起こるのを防止し、翼形部33の支持部とアクチュエータ41との間のバリアとして機能する他の誘電体材料50、例えば、ポッティング又はシリコーン接着剤で被覆されることにより抑制され、すなわち“埋め込まれる”。電極45,47は、様々なサイズのものであってよく、望まれる流れへの影響に応じて、図3?6に示されるような様々な関係に互いに位置決めされてよい。
[0057]おそらく図7?8に最もよく示されているように、作動時には、高周波及び高電圧を印加することにより、誘電体43と対応する電極45の表面との間で放電が発生する。得られた放電により、誘電体表面層近傍の空気又は他の流体35の正味の変位が生成され、これにより、電極45に印加された電力に直接依存する流れ強度を有する流れ構造が生成される。対向する電極47上で発生する同等の放電は、典型的には、他の誘電体材料50又は別の電極(図示せず)で電極47を被覆して周囲の流体流れ35から絶縁することにより抑制される。正味には、埋め込まれ、正味運動量又は速度を起こさない一方の電極47と、表面に露出し、運動量及び速度を唯一起こす他方の電極45と、を有する、非対称のDBDに基づくプラズマアクチュエータ41となる。)
(エ)「[0060] The position of these actuators can be anywhere on the surface of the airfoil 33, such as, for example, on the leading or trailing edge of the airfoil 33. As such, these different flows can be introduced into the boundary layer, where necessary.」
(当審による仮訳: [0060]これらのアクチュエータの位置は、翼形部33の表面上のどこであってもよく、例えば翼形部33の前縁又は後縁である。このように、これらの異なる流れは、必要に応じて、境界層に導入することができる。)
(オ)「[0075] The controller 40 can be operably wirelessly coupled or coupled via wire/optical line connection to each of the pressure sensors 37 and to each of the actuators 51, and can be configured to determine the static pressure within the array in response to signals received from the pressure sensors 37 and to automatically and continuously control the flow momentum and/or velocity of at least a subset of the plasma regions of each actuator 51 and/or a subset of the actuators 51 responsive to the determined static pressure or pressures. Further, particularly in configurations where there are multiple rows of electrode assemblies 31, the controller 40 can also be configured to automatically and continuously determine a station location of the expected point of incipient separation responsive to the determined static pressure and responsive to the determined location of the expected point of incipient separation, to automatically and continuously control the flow of at least a subset of the plasma regions and/or actuators 51 most affecting the flow at the point of incipient separation.」
(当審による仮訳:[0075]制御装置40は、圧力センサ37の各々とアクチュエータ51の各々とに動作可能に無線で又はワイヤ/光ラインを介して接続することができ、圧力センサ37から受信した信号に応答してアレイ内の静圧を判定し、判定された静圧又は圧力に応答して、各アクチュエータ51のプラズマ領域の少なくとも一部の及び/又はアクチュエータ51の一部の運動量及び/又は速度を自動的かつ連続的に制御するように構成することができる。さらに、特に複数列の電極集合体31が存在する構成において、制御装置40は、判定された静圧に応答して、そして初期の剥離の予測された剥離点の決定された位置に応答して、初期の剥離の予想される剥離点のステーション位置を自動的かつ連続的に決定するように構成することができ、初期剥離の剥離点における流れに最も影響を及ぼすプラズマ領域及び/又はアクチュエータ51の少なくとも一部の流れを自動的に連続的に制御することができる。)
(カ)「[0076] According to an embodiment of the present invention, the controller 40 is configured to perform the operations of: determining an aerodynamic flight profile representing an expected level of crossflow in the boundary layer flow across the aerodynamic structure 33, and selectively adjusting a pattern of activated plasma regions in response thereto to thereby effectively adjust spacing between active plasma regions (see, e.g., FIGS. 14-22 ). The selective adjustments can include decreasing the effective spacing between activated plasma regions, for example, when encountering flow having a higher Reynolds chord number than a certain value, and increasing the effective spacing between activated plasma regions when encountering boundary layer flow having a lower Reynolds number than the certain value. According to an exemplary configuration, progressively decreasing the effective spacing between activated plasma regions is performed when encountering boundary layer flow having corresponding progressively higher Reynolds chord numbers greater than approximately 1.0e6, and progressively increasing the effective spacing in is performed when encountering boundary layer flow having corresponding progressively lower Reynolds chord numbers lower than approximately 1.0e6. Note, utilization of other Reynolds chord values as a transition point between increasing and decreasing the effective spacing between plasma regions, is, however, within the scope of the present invention.」
(当審による仮訳:[0076]本発明の実施形態によれば、制御装置40は、空気力学的構造体33を横切る境界層流れの横流れの予想されるレベルを表す空気力学的飛行プロファイルを判定し、それに応答して活性化されるプラズマ領域のパターンを選択的に調整する動作を実行するよう構成され、それにより活性化されるプラズマ領域間の間隔を効果的に調整する(例えば図14?22参照)。選択的調整は、例えば、ある値よりも高い翼弦レイノルズ数を有する流れに遭遇すると、活性されるプラズマ領域間の有効間隔を減少させることや、当該ある値よりも低い翼弦レイノルズ数を有する境界層流に遭遇すると、活性化されるプラズマ領域間の有効間隔を増加させることを含むことができる。例示的な構成によれば、遭遇する境界層流れの翼弦レイノルズ数が約1.0×10^(6)より高くなる程、活性化されるプラズマ領域間の有効間隔は減少され、遭遇する境界層流れの翼弦レイノルズ数が約1.0×10^(6)より低くなる程、活性化されるプラズマ領域間の有効間隔は増加される。しかしながら、プラズマ領域間の有効間隔の増加と減少との間の遷移点として他の翼弦レイノルズ数を用いることも、本発明の範囲内である。)
(キ)「[0085] Various embodiments of the present invention also include methods of providing distributed flow control actuation to manage the behavior of a global flow field. For example, such a method can include the steps of connecting one or more electrode assemblies 31 to a surface of an aerodynamic structure 33 to be in fluid contact with a primary fluid flow structure 35 when operationally flowing, and altering a secondary flow structure to manipulate fluid behavior of the primary flow structure 33 to thereby mitigate cross-flow instabilities to maintain a laminar flow-thereby reducing drag and potentially increasing fuel efficiency. Cross-flow instabilities are particularly troublesome on swept wing aircraft. Transition from laminar flow to turbulent flow occurs earlier (upstream) on a swept back wing than for a non-swept wing. This transition occurs due to the cross-flow instabilities that interact with each other, and grow. This method beneficially provides the flow structure 35 over the wing with regions for the vortices caused by the cross-flow instability to attach, thus, stabilizing the flow.
[0086] According to an exemplary embodiment of the method, at least one electrode assembly 31 including at least one row of plasma regions is positioned so that at least a subset of the plasma regions of at least one actuator 41, 51 is positioned adjacent a station line located at an expected point of incipient separation of at least portions of the primary flow structure 35 from the surface of the aerodynamic structure 33. In an exemplary configuration, the dielectric layer 43, bottom electrode layer 57, and any additional insulating layer or material 50 of the electrode assembly 31 is embedded or otherwise attached to the surface of the aerodynamic structure 33, with only the upper electrode 55 extending above the natural surface of the aerodynamic structure 33. Notably, as the total thickness is generally less than 0.5 microns, electrode assembly 31 is expected to render only negligible flow disruption when no power is being supplied to the assembly 31. In an alternative configuration, the entire electrode assembly 31 is connected to and above (on) the natural surface of the aerodynamic structure 33. In yet another alternative configuration, the top of the upper electrode 55 is flush with the natural surface of the aerodynamic structure 33.
[0087] Further, when multiple rows of plasma regions are employed, a subset of the plasma regions of at least one actuator 41, 51, can be longitudinally positioned substantially upstream of the expected point of incipient separation to allow selective activation in front of, at, and after the expected point of incipient separation which is expected to vary depending upon the specific operational profile that the aerodynamic structure 33 is subjected to.」
(当審による仮訳:[0085]本発明の様々な実施形態は、グローバル流れ歯の挙動を管理する分散流れ制御作動を提供する方法も含む。例えば、このような方法は、作動的に流れているときに一次流体流れ構造35と流体接触する空気力学的構造体33の表面に一つ以上の電極集合体31を接続するステップと、一次流れ構造35の流体挙動を操作するために二次流れ構造を変更し、それにより横流れ不安定性を軽減して層流を維持し、それにより抗力を低減させるとともに潜在的には燃料効率を高めるステップと、を含むことができる。横流れ不安定性は、後退翼航空機において特に問題である。層流から乱流への遷移は、非後退翼よりも、後退翼でより早く(上流で)起こる。この遷移は、互いに相互作用して成長する横流れ不安定性によって生じる。この方法は、翼上の流れ構造35に、横流れ不安定性によって引き起こされる渦が付着する領域を提供して、流れを安定化する。
[0086]本方法の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ41,51のプラズマ領域の少なくとも一部が、空気力学的構造体33の表面から一次流れ構造35の少なくとも一部が初期剥離する予想される剥離点に位置するステーションラインに隣接して配置されるように、少なくとも1列のプラズマ領域を含む少なくとも1つの電極集合体31は、配置される。例示的な構成では、電極集合体31の誘電体層43、底部電極層57及び任意の追加の絶縁層又は材料50は、空気力学的構造体33の表面に埋め込まれるか又は取り付けられ、上部電極55のみが空気力学的構造体33の自然表面の上に延在する。特に、総厚さが一般的に0.5ミクロン未満であるため、電極集合体31は、集合体31に電力が供給されていない場合、無視できる程度の流れの破壊しかもたらさないと予想される。代替的な構成では、電極アセンブリ31全体が、空気力学的構造体33の自然表面に接続される。さらなる代替構成では、上部電極55の上部は、空気力学的構造体33の自然表面と同一平面である。
[0087]さらに、複数列のプラズマ領域が使用される場合、少なくとも1つのアクチュエータ41,51のプラズマ領域の一部は、空気力学的構造体33が受ける特定の動作プロファイルに応じて変化する、初期分離の予想される剥離点よりも前、剥離点及び剥離点よりも後の選択的活性化を可能にするために、初期分離の予想される剥離点の実質的に上流に長手方向に配置されることができる。)
そして、記載事項(ア)、(ウ)、(エ)及び(オ)並びに図2の記載から、次の事項が理解できる。
(ク)空気力学的構造体を横切る境界層流れを制御する流れ制御システムは、空気力学的構造体である後退翼と、前記後退翼の表面に電極集合体が設けられた前誘電体バリア放電アクチェータと、前記誘電体バリア放電アクチェータを制御する制御装置を備え,前記誘電体バリア放電アクチェータは、前記後退翼の前縁の近傍に所定の間隔で多段に配置される。
記載事項(ウ)?(カ)から、次の事項が理解できる。
(ケ)制御装置は、対気速度センサを含み得るセンサに接続され、空気力学的構造体を横切る境界層流れの横流れを表す空気力学的飛行プロファイルを判定し、それに応答して、誘電体バリア放電アクチェータの活性化されるプラズマ領域のパターンを調整する。
記載事項(ア)、(イ)及び(オ)?(キ)からみて、次の事項が理解できる。
(コ)誘電体バリア放電アクチェータは、周囲の流体に運動量及び/又は速度を与えるように動作され、後退翼上で生じる横流れ不安定性を軽減し、層流を維持し、抗力を低減する。
イ.以上のことから、引用例3には、次の技術(以下、「引用例3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「空気力学的構造体である後退翼と、前記後退翼の表面に電極集合体が設けられた誘電体バリア放電アクチュエータと、前記誘電体バリア放電アクチュエータを制御する制御装置とを備えた、前記後退翼を横切る境界層流れを制御する流れ制御システムであって、
前記誘電体バリア放電アクチュエータが、前記後退翼の前縁の近傍に所定の間隔で多段に配置され、
前記制御装置は、対気速度センサを含み得るセンサと接続され、前記境界層流れの横流れを表す空気力学的飛行プロファイルを判定し、それに応答して、前記誘電体バリア放電アクチェータの活性化されるプラズマ領域のパターンを調整し、
誘電体バリア放電アクチュエータは、周囲の流体に運動量及び/又は速度を与えるように動作され、前記後退翼上で生じる横流れ不安定性を軽減し、層流を維持し、抗力を低減する、流れ制御システム。」

4.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断
(1)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と引用発明を比較する。
引用発明の「航空機の翼」、「プラズマアクチュエータを制御する制御装置」及び「翼の表面上の気流」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件特許発明1の「流体に対して相対的に移動する移動体」、「プラズマアクチュエータを制御する制御手段」及び「表面流」に相当する。そうすると、引用発明の「航空機の翼と、前記翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御装置とを備えた、前記翼の表面上の気流を制御する方法及び装置」は、本件特許発明1の「流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御手段とを備えた表面流制御システム」に相当する。
引用発明の「前縁」及び「空気」は、それぞれ、本件特許発明1の「前方端縁部」及び「流体」に相当するから、引用発明の「前記翼は、後退翼であり、その前縁が空気の移動方向に対して垂直でない方向に延びて」いることは、本件特許発明1の「前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され」ることに相当する。
引用発明は、「第1表面層及び第2表面層が誘電体材料からなり、前記第1表面層、内側層及び前記第2表面層が積層板を構成し」ているから、引用発明の、第1表面層、内側層及び第2表面層から構成される「積層板」は、本件特許発明1の「誘電体層」に相当する。引用発明の「第1電極」及び「第2電極」は、合わせて、本件特許発明1の「2つの電極」に相当する。引用例1、特に図9の記載からみて、引用発明において、前記第1表面層及び前記第2表面層は、それぞれ、前記積層板の両面の一方及び他方を形成するから、引用発明の「前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられ、前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられ、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがずれて」いることは、本件特許発明1の「誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられ」ることに相当する。引用例1の記載事項(イ)、(オ)及び(カ)をも参照すると、引用発明の前記プラズマアクチュエータは、誘電体バリア放電プラズマアクチュエータであって、前記翼の表面上の気流を変化させることを目的としており、前記翼の表面上の気流が境界層流れであることは明らかである。そして、引用発明において、前記プラズマアクチュエータは、前記翼の前縁に当該前縁と平行に配置され、引用例1の記載から看取できる事項(コ)のとおり、(前記「第3 3(1)ア」参照)、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがプラズマアクチュエータの長手方向と直交する方向にずれているから、前記プラズマアクチュエータにより当該前縁と直交する方向にプラズマの流れが誘起されることは明らかである。そうすると、引用発明の「前記プラズマアクチュエータが、第1表面層、内側層、第2表面層、第1電極及び第2電極を含み、前記第1表面層及び第2表面層は誘電体材料からなり、前記第1表面層、内側層及び第2表面層が積層板を構成し、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられ、前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられ、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがずれており、さらに前記プラズマアクチュエータが前記翼の前縁に当該前縁と平行に配置され」ることと、本件特許発明1の「前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」することとは、「前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」する点において一致する。
そして、引用発明の「前記制御装置が、前記プラズマアクチュエータによるプラズマの発生を制御し、前記翼の表面上の気流を変化させる」ことと、本件特許発明1の「前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている」こととは、「前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている」点において一致する。
したがって、本件特許発明1と引用発明は、
「流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御手段とを備えた表面流制御システムであって、
前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され、
前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている、表面流制御システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。
【相違点1】
本件特許発明1は、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されているのに対し、
引用発明は、前記移動体(航空機の翼)表面の流体の流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部(前縁)の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、前記制御手段(制御装置)が、前記移動体表面の流体の流れを変化させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されているにとどまる点。
イ.相違点1について検討する。
(ア)引用例2に記載された技術の「航空機の後退翼」、「誘電体バリア放電アクチェータ」、及び「前縁」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件特許発明1の「流体に対して相対的に移動する移動体」、「プラズマアクチュエータ」かつ「誘電体バリア放電プラズマアクチェータ」、及び「前方端縁部」に相当する。そして、引用例2に記載された技術の「航空機の後退翼」は、本件特許発明1の「前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が,流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され」ているものにも相当する。
引用例2に記載された技術の、前記後退翼表面の境界層内の気体速度ベクトルVの「横流れ速度V_(CF)を低下させ」ることは、本件特許発明1の「前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ」ることに相当する。そして、引用例2に記載された技術は、前記後退翼表面の境界層内の気体速度ベクトルVの横流れ速度V_(CF)を低下させて、横流れ不安定性の定常状態の空間的成長の増加を低減し、前記後退翼表面の境界層における層流から乱流への遷移を遅延させるから、その際、前記後退翼表面の境界層が層流から乱流へ遷移する位置は、当然、後退する。
してみれば、引用例2に記載された技術は、本件特許発明1と、少なくとも「流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータとを備え、
前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され、
前記プラズマアクチュエータが、誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記前方端縁部の近傍に配置され、
前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させる」点で一致している。
しかしながら、引用例1の記載、特に記載事項(イ)及び(カ)からみて、引用発明は、移動体表面の境界層の層流から乱流への遷移を促進するものである。一方、引用例2に記載された技術は、移動体表面の境界層の層流から乱流への遷移を遅延させるものであるから、引用発明と引用例2に記載された技術は、移動体表面の境界層遷移に関し、逆の作用を奏するものである。そうすると、引用発明に引用例2に記載された技術を適用することには阻害要因があり、当業者にとって容易であるとはいえない。
(イ)引用例3に記載された技術の「空気力学的構造体である後退翼」、「誘電体バリア放電アクチェータ」、「前縁」、「後退翼を横切る境界層流れ」、及び「制御装置」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件特許発明1の「流体に対して相対的に移動する移動体」、「プラズマアクチュエータ」、「前方端縁部」、「移動体表面の流体の境界層」かつ「移動体表面の流体の境界層流れ」、及び「制御手段」に相当する。そして、引用例3に記載された技術において、前記後退翼を横切る境界層流れは、当然,前記後退翼の表面上の流れであるから、引用例3に記載された技術の「後退翼を横切る境界層流れを制御する流れ制御システム」は、本件特許発明1の「表面流制御システム」に相当する。また、引用例3に記載された技術の「空気力学的構造体である後退翼」は、本件特許発明1の「前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が,流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され」ているものにも相当する。
引用例3に記載された技術において、前記誘電体バリア放電アクチェータは、その電極集合体が前記後退翼の表面に設けられているから、前記誘電体バリア放電アクチェータの周囲の流体は、前記後退翼の表面の流体である。すなわち、引用例3に記載された技術は、前記制御装置が、前記後退翼を横切る境界層流れの横流れを表す空気力学的飛行プロファイルを判定し、これに応答して、前記誘電体バリア放電アクチュエータの活性化されるプラズマ領域のパターンを調整し、前記誘電体バリア放電アクチュエータが、前記後退翼の表面の流体に運動量及び/又は速度を与えるように動作され、前記後退翼上で生じる横流れ不安定性を軽減し、層流を維持するものである。そうすると、引用例3に記載された技術において、前記誘電体バリア放電アクチュエータは、前記後退翼の表面の流体に与える運動量及び/又は速度により前記後退翼を横切る境界層流れの横流れ速度を減少させるように動作されることは明らかである。してみれば、引用例3に記載された技術の「周囲の流体に運動量及び/又は速度を与える」ことは、本件特許発明1の「前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ」ることに相当する。そして、引用例3に記載された技術において、前記後退翼を横切る境界層流れの横流れ速度が低下させることにより、前記後退翼上で生じる横流れ不安定性を軽減させ、層流を維持すれば、前記後退翼を横切る境界層流れが層流から乱流へ遷移する位置は、当然、後退する。
してみれば、引用例3に記載された技術は、本件特許発明1と、少なくとも「流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御手段とを備えた表面流制御システムであって、
前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され、
前記プラズマアクチュエータが、誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記前方端縁部の近傍に配置され、
前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されている、表面流制御システム。」の点で一致している。
しかしながら、先に検討したとおり(前記「第3 4(1)イ(ア)」参照)、引用発明は、移動体表面の境界層の層流から乱流への遷移を促進するものである。一方、引用例3に記載された技術は、移動体表面の境界層の層流から乱流への遷移を遅延させるものであるから、引用発明と引用例3に記載された技術は、移動体表面の境界層遷移に関し、逆の作用を奏するものである。そうすると、引用発明に引用例3に記載された技術を適用することには阻害要因があり、当業者にとって容易であるとはいえない。
ウ.したがって、本件特許発明1は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、また引用発明及び引用例3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を減縮したものであり、本件特許発明1と同様の理由(前記「第3 4(1)」参照)により、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、また引用発明及び引用例3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明6について
ア.本件特許発明6と引用発明を比較する。
引用発明の「航空機の翼」は、その構成及び機能からみて、本件特許発明6の「流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であ」るものに相当し、引用発明の「航空機の翼」、「前縁」及び「空気」は、それぞれ、本件特許発明6の「前方端縁部」及び「流体」に相当するから、引用発明の「航空機の翼」であって、「前記翼は、後退翼であり、その前縁が空気の移動方向に対して垂直でない方向に延びて」いるものは、本件特許発明6の「流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であり、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体」に相当する。
引用発明の「翼の表面上の気流」は、本件特許発明6の「移動体表面の流体の境界層流れ」かつ「表面流」に相当する。
そうすると、引用発明の「航空機の翼と、前記翼の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御装置とを備えた、前記翼の表面上の気流を制御する方法及び装置であって、前記翼は、後退翼であり、その前縁が空気の移動方向に対して垂直でない方向に延びて」いるものは、本件特許発明6の「流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であり、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御して、移動体表面の流体の境界層流れを変化させる表面流制御方法」に相当する。
引用発明は、第1表面層及び第2表面層が誘電体材料からなり、前記第1表面層、内側層及び前記第2表面層が積層板を構成しているから、引用発明の、第1表面層、内側層及び第2表面層から構成される「積層板」は、本件特許発明6の「誘電体層」に相当する。引用発明の「第1電極」及び「第2電極」は、合わせて、本件特許発明6の「2つの電極」に相当する。引用例1、特に図9の記載からみて、引用発明において、前記第1表面層及び前記第2表面層は、それぞれ、前記積層板の両面の一方及び他方を形成するから、引用発明の「前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられ、前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられ、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがずれて」いることは、本件特許発明6の「誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられ」ることに相当する。さらに、引用例1の記載事項(イ)、(オ)及び(カ)をも参照すると、引用発明の前記プラズマアクチュエータは、誘電体バリア放電プラズマアクチュエータであって、前記翼の表面上の気流を変化させることを目的としている。そして、先に検討したとおり(前記「第3 4(1)ア」参照)、引用発明において、前記プラズマアクチュエータにより当該前縁と直交する方向にプラズマの流れが誘起されることは明らかである。そうすると、引用発明の「前記プラズマアクチュエータが、第1表面層、内側層、第2表面層、第1電極及び第2電極を含み、前記第1表面層及び第2表面層は誘電体材料からなり、前記第1表面層、内側層及び第2表面層が積層板を構成し、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられ、前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられ、前記第1電極が前記第1表面層に取り付けられる位置と前記第2電極が前記第2表面層に取り付けられる位置とがずれており、さらに前記プラズマアクチュエータが前記翼の前縁に当該前縁と平行に配置され」ることと、本件特許発明6の「前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」することとは、「前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」する点において一致する。
そして、引用発明において、「前記制御装置が、前記プラズマアクチュエータによるプラズマの発生を制御し、前記翼の表面上の気流を変化させる」ことは、前記プラズマアクチュエータによって前記翼の表面上の気流を変化させることにほかならないから、引用発明の「前記制御装置が、前記プラズマアクチュエータによるプラズマの発生を制御し、前記翼の表面上の気流を変化させる」ことと、本件特許発明6の「前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させる流れを誘起し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させる」こととは、「前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の流れを変化させる」点において一致する。
したがって、本件特許発明6と引用発明は、
「流体に対して相対的に移動する移動体であって、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御して、移動体表面の流体の境界層流れを変化させる表面流制御方法であって、
前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れを変化させる、表面流制御方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
【相違点3】
本件特許発明6は、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ成分を減少させる流れを誘起し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるのに対し、
引用発明は、前記移動体(航空機の翼)表面の流体の流れを変化させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部(前縁)の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の流れを変化させるにとどまる点。
イ.相違点3について検討する。
前記「第3 4(1)イ」において検討したとおり、引用発明に引用例2に記載された技術を適用すること及び引用発明に引用例3に記載された技術を適用することは、いずれも、当業者にとって容易であるとはいえない。。
ウ.したがって、本件特許発明6は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、また引用発明及び引用例3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
ア.特許異議申立人日高賢治は、訂正前の請求項1、2及び6に係る特許について、訂正前の請求項1、2及び6に係る発明は、引用例2及び引用例3に記載された発明であるから、当該特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである旨主張している。
しかしながら、本件特許発明1及び2は、「前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、」誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなる「プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」するという事項を有し、本件特許発明6は、「前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、」誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成した「プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起」するという事項を有している。これらの事項は、引用例2及び3のいずれにも記載されていない。
したがって、本件特許発明1、2及び6は、引用例2に記載されているとも、引用例3に記載されているともいえない。
イ.特許異議申立人は、平成29年12月15日付けの意見書により、参考資料1?6(参考資料1は、引用例1)を提出し、プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなること、及びプラズマアクチュエータを移動体の前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置することは、いずれも周知である旨主張している。
しかしながら、引用例2には、プラズマアクチュエータの最も単純な配置として、露出電極を翼の前縁とは垂直に配置したものが記載され、さらに曲線状の露出電極の外部の流線に沿った配置が、後退翼表面の境界層内の気体速度ベクトルVの横流れ速度V_(CF)を低下させる気体速度成分を生成するのにより効果的であることが記載されている(前記「第3 3(2)ア(イ)」参照)。
また、引用例3に記載されたものは、特に図2から看取されるように、プラズマアクチュエータを本件特許発明1、2及び6とは異なる配置とし、これを前提として、例えば図14?22に記載されるように活性化されるプラズマ領域のパターンを選択的に調整して、後退翼を横切る境界層の流れを制御するものである(前記「第3 3(3)ア(カ)」参照)。
そうすると、特許異議申立人が主張するように、プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなること、及びプラズマアクチュエータを移動体の前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置することがいずれも周知であったとしても、これを引用例2に記載されたものに適用すること又は引用例3に記載されたものに適用することは、いずれも当業者が容易になし得るものではないというべきである。
したがって、本件特許発明1、2及び6は、引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも、引用例3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ.以上のとおり、特許異議申立人の主張には理由がない。

第4 結び

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3?5及び7に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3?5及び7に対して、特許異議申立人日高賢治がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に対して相対的に移動する移動体と、前記移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータを制御する制御手段とを備えた表面流制御システムであって、
前記移動体が、航空機の後退翼であり、前記移動体の前方端縁部が、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成され、
前記プラズマアクチュエータが、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータからなり、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記制御手段が、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させ、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させるようにプラズマアクチュエータを制御可能に構成されていることを特徴とする表面流制御システム。
【請求項2】
前記プラズマアクチュエータが、前記前方端縁部の近傍から所定の間隔で多段に配置され、
多段に配置された前記各プラズマアクチュエータの各段それぞれに異なる電圧を印加可能にした
ことを特徴とする請求項1に記載の表面流制御システム。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
流体に対して相対的に移動する移動体であって、前記移動体が、航空機の後退翼であり、流体の移動方向に対して垂直でない方向に延びるように形成された前方端縁部を有する移動体の表面に設けられたプラズマアクチュエータを制御して、移動体表面の流体の境界層流れを変化させる表面流制御方法であって、
前記プラズマアクチュエータを、誘電体層の両面に2つの電極が位置をずらして設けられた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータから構成し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を変位させるために、前記プラズマアクチュエータを前記前方端縁部の近傍に前記前方端縁部と平行に配置して前記移動体表面の前記前方端縁部と直交する方向にプラズマの流れを誘起し、
前記プラズマアクチュエータによって、前記移動体表面の流体の境界層流れの横流れ速度成分を減少させる流れを誘起し、前記移動体表面の流体の境界層の層流から乱流への遷移位置を後退させることを特徴とする表面流制御方法。
【請求項7】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-29 
出願番号 特願2013-94903(P2013-94903)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (F15D)
P 1 651・ 121- YAA (F15D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関 義彦  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 久保 竜一
矢島 伸一
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6029068号(P6029068)
権利者 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
発明の名称 表面流制御システムおよび表面流制御方法  
代理人 大森 純一  
代理人 大森 純一  
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