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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
管理番号 1344842
異議申立番号 異議2018-700084  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-01 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6172363号発明「蓄電デバイス用外装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6172363号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について、訂正することを認める。 特許第6172363号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6172363号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2012年(平成24年)11月 7日(優先権主張 平成23年11月 7日(3件))を国際出願日とする特許出願である特願2013-543010号(以下、「本件特許の原出願」ということがある。)の一部を平成28年 8月 9日に新たな特許出願としたものであって、平成29年 7月14日に特許権の設定登録がされ、同年 8月 2日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1?5に係る特許について、平成30年 2月 1日に特許異議申立人磯崎紀雄(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 4月26日付けで取消理由が通知され、これに対し特許権者から同年 6月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対し異議申立人から同年 8月14日に意見書が提出されたものである。



第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年 6月25日付けで提出された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1、2のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及び水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪族系イソシアネート硬化剤により形成されたウレタン樹脂を含有する基材保護層と、」
とあるのを
「前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、」
に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】に
「前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及び水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪族系イソシアネート硬化剤により形成されたウレタン樹脂を含有する基材保護層と、」
とあるのを
「前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項1は、以下の訂正事項1-1と、訂正事項1-2とからなる。
・訂正事項1-1 訂正前の「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及び水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種」との記載を、訂正後の「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」との記載にする訂正。
・訂正事項1-2 訂正前の「により形成されたウレタン樹脂を含有する基材保護層と、」との記載を、訂正後の「とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、」との記載にする訂正。

(イ)訂正事項1-1による訂正は、訂正前は、「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」と「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」という二つの選択肢があったものを、訂正後は、後者の選択肢のみに限定する訂正であるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(ウ)訂正事項1-2による訂正は、「基材保護層」に関し、訂正前は、「ウレタン樹脂」を「含有する」ものであって他の成分も含まれ得るものであったのに対し、訂正後は、「ウレタン樹脂」「で形成された」ものであって他の成分が含まれないことを限定する訂正であるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

(エ)したがって、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
(ア)願書に添付した明細書の段落【0013】に「基材保護層17は、・・・水酸基を有する基(官能基)を側鎖に有する・・・アクリルポリオール・・・と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される。」(当審注:「・・・」により記載の省略を示す。以下同様である)との記載があることに照らすと、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正事項1による訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
前記(1)イの検討と同じ理由で、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲を拡張又は変更するものに該当しないことは明らかである。

3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?5に対応する訂正後の請求項1?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるといえる。

4 本件訂正が特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合することについて
訂正事項2による訂正は明細書の訂正であるところ、当該明細書の訂正に関連する請求項の全てである請求項1?5について訂正を行わなければならない。
そして、本件訂正は、請求項1?5について行われているので、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。

5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
前記第2の検討のとおり、本件訂正は認められるから、特許第6172363号の特許に係る請求項1?5に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、訂正箇所に下線を付した。
「【請求項1】
蓄電デバイス用外装材であって、
第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面に順次積層された、少なくとも第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層及びシーラント層を備えポリアミドフィルムからなる基材層と、
前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、
を備えることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記ポリオールが有する水酸基に対する前記脂肪族系イソシアネート硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)を0.5?50とすることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記基材保護層の厚さが、1?10μmとされることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記基材保護層の外表面は、マット処理が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記基材保護層には、添加剤が配合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。」


2 申立理由と取消理由について
(1)申立理由について
ア 特許異議申立書(以下単に「異議申立書」という。)において異議申立人が主張する申立理由の概要は、以下のとおりである。それぞれの申立理由を、便宜的に「申立理由1」?「申立理由4」という。
・申立理由1 本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(異議申立書の第5頁下から第4行?第20頁第8行)。
・申立理由2 本件訂正前の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである(異議申立書の第20頁第9行?第21頁第8行)。
・申立理由3 本件訂正前の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである(異議申立書の第21頁第9行?第28頁第15行)。
・申立理由4 本件訂正前の請求項1?5に係る特許は出願日の遡及が認められないところ、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であるか、甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(異議申立書の第28頁第16行?第29頁第11行)。

イ [証拠方法]
甲第1号証:特開2011-54563号公報
甲第2号証:特開2000-123799号公報
甲第3号証:岩田敬司編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社(昭和62年9月25日発行)31頁、36頁、406?407頁、455頁及び奥付の写し
甲第4号証:本件特許の審査過程において、平成28年 8月26日付けで提出された上申書
甲第5号証:国際公開第2013/069698号(本件特許の原出願である特願2013-543010号に対応する国際特許出願であるPCT/JP2012/078874の国際公開)
(以下、甲第1号証?甲第5号証をそれぞれ「甲1」?「甲5」という。)


(2)取消理由について
ア 取消理由通知書において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。それぞれの取消理由を、便宜的に「取消理由1」、「取消理由2」という。
・取消理由1 申立理由3で主張された内容の一部(異議申立書の第21頁第10行?第22頁第1行)を引用したものであって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、その発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
・取消理由2 申立理由4で主張された内容(異議申立書の第28頁第16行?第29頁第11行)を引用したものであって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲5に記載された発明であるか、甲5に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

イ なお、申立理由1、2として主張された内容と、申立理由3として主張された内容のうち取消理由1として採用しなかった内容は、取消理由として採用しなかった(その理由については、次項3の(2)、(4)及び(5)を参照。)。


3 当審の判断
事案に鑑み、以下においては、まず、本件訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合することを述べる(後記(1)を参照。)。
次いで、取消理由1及び申立理由3では本件特許を取り消すことができないことを述べる(後記(2)を参照。)。
次いで、本件発明1?5は出願日の遡及が認められるから、取消理由2(すなわち申立理由4)では本件特許を取り消すことができないことを述べる(後記(3)を参照。)。
次いで、申立理由1、2では、本件特許を取り消すことができないことを述べる(後記(4)及び(5)を参照。)。

(1)本件訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合することについて
ア 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるので、以下、この観点から検討する。

イ 本件特許の願書に添付された明細書(以下、単に「本件明細書」という)には、以下の記載がある(下線は当審による。以下同様である。)。
「【0003】
外装材としてラミネートフィルムを用いる蓄電デバイスは、ラミネートフィルムを冷間成型により深絞りして凹部を形成し、前記凹部内にデバイス用内容物を収容して、周縁部をヒートシールにより熱封緘することで製造される。前記蓄電デバイスは、前記凹部を深くするほど内容物の収納量が増加し、エネルギー密度が高くなる。そのため、外装材の基材層には、凹部を深くしてもクラックやピンホールが生じ難い、優れた成型性を有するポリアミドフィルムが好適に使用される(例えば、特許文献1、2)。しかし、ポリアミドフィルムは、充分な電解液耐性を有していない。そのため、蓄電デバイスが複数個積層されて使用される場合等、一つの蓄電デバイスに破損が生じて電解液が漏れ出すと、他の蓄電デバイスの外装材に付着した電解液によって基材層が溶解し、内側の金属箔層を腐食させるおそれがある。また、耐傷性も充分ではなく、取り扱い時に基材層の表面に傷が付き、意匠性、耐久性等が低下することがある。
【0004】
一方、特許文献1には、外装材の成型性をさらに向上させる目的で、基材層の外表面上にマットニス層を形成することが示されている。前記マットニス層は、セルロース系、塩化ビニル-酢酸ビニル系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系等のオレフィン系、又はアルキッド系合成樹脂と、シリカ系、カオリン系等のマット剤により形成されている。しかし、前記マットニス層を設けても、基材層の電解液による劣化を充分に抑制すること、及び充分な耐傷性を付与することは困難である。
【0005】
また、特許文献2には、基材層の電解液耐性及び耐傷性を向上させた外装材として、以下の構造が示されている。
(1)外側から順に、基材層/金属箔層/熱接着性樹脂層が積層され、前記基材層が、外側から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムからなる外装材(特許文献2)。
しかし、前記外装材(1)では、電解液耐性及び耐傷性は向上するが、成型性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-54563号公報
【特許文献2】特許第4559547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えた蓄電デバイス用外装材の提供を目的とする。」

「【0012】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態の蓄電デバイス用外装材の一例を示して詳細に説明する。
・・・
【0013】
(基材保護層17)
基材保護層17は、基材層11の外側の面(第2の面)に積層される層であり、水酸基を有する基(官能基)を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される。基材保護層17により、基材層11が電解液によって劣化することが抑制される。・・・
【0018】
ポリオールとしては、電解液耐性により優れることから、アクリルポリオール(a2)が好ましい。
ポリオールは、求められる機能や性能に応じて使用でき、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とを使用することで、ポリウレタン樹脂により形成される基材保護層17が得られる。
・・・
【0053】
本発明の第一実施形態の外装材における基材保護層は、前述した従来の外装材におけるマットニス層と異なり、特定のポリオールと硬化剤とで形成されたウレタン樹脂により形成されており、これにより優れた電解液耐性が得られると考えられる。・・・ポリオールとして、主鎖の末端のみに水酸基があるポリエーテルポリオールではなく、少なくとも末端以外に水酸基が配置されているポリエステルポリオール(a1)、アクリルポリオール(a2)を使用することで、架橋点が増え、電解液耐性が向上していると考えられる。特にアクリルポリオール(a2)は、主鎖に対して無秩序に水酸基を有する基が側鎖として配置されるため、架橋点が増え、電解液耐性が向上すると考えられる。」

「【0055】
[第二実施形態]
以下に、本発明の第二実施形態について説明する。
本発明の第二実施形態は、本発明の第一実施形態の基材保護層17が、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される、ガラス転移温度Tgが0?60℃であるウレタン樹脂(以下、「ウレタン樹脂(A)」という。)を含有する層であることを特徴とする。
【0056】
以下、本発明の第二実施形態の蓄電デバイス用外装材の一例を示して詳細に説明する。・・・
【0057】
(基材保護層17)
本発明の第二実施形態においては、基材保護層17は、基材層11の外側の面に積層される層であり、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される、ガラス転移温度Tgが0?60℃であるウレタン樹脂(以下、「ウレタン樹脂(A)」という。)を含有する層である。
基材保護層17により、基材層11が電解液によって劣化することが抑制され、優れた耐傷性が付与される。
・・・
【0093】
以上説明した本発明の第二実施形態の外装材は、基材層の外側の面に基材保護層が積層されていることで、優れた電解液耐性を有している。そのため、外装材の基材層側の表面に電解液が付着しても、基材層、及び金属箔層の基材層側が変質することを抑制できる。本発明の第二実施形態の外装材における基材保護層は、前述した従来の外装材におけるマットニス層と異なり、特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂(A)により形成されており、これにより優れた電解液耐性が得られると考えられる。・・・ポリオールとして、主鎖の末端のみに水酸基があるポリエーテルポリオールではなく、少なくとも末端以外に水酸基が配置されているポリエステルポリオール(a1)、アクリルポリオール(a2)を使用することで、架橋点が増え、電解液耐性が向上していると考えられる。特にアクリルポリオール(a2)は、主鎖に対して無秩序に水酸基を有する基が側鎖として配置されるため、架橋点が増え、電解液耐性が向上すると考えられる。
また、本発明の第二実施形態の外装材は、優れた電解液耐性が得られることに加え、基材保護層を形成するウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgが0?60℃であることで、優れた耐傷性も得られる。」

「【0095】
[第三実施形態]
以下に、本発明の第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態の蓄電デバイス用外装材は、基材層の第1の面に、順次積層された、少なくとも第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層及びシーラント層を備え、前記基材層の第2の面に、厚さ6?40μmのポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムが順次積層された積層フィルムを備え、前記積層フィルムの外表面に凹凸(凹凸部)が形成されている。
・・・
【0133】
以上説明した本発明の第三実施形態の外装材は、基材層が、ポリアミドフィルムの外側にポリエステルフィルムを有する積層フィルムからなることで、優れた電解液耐性及び耐傷性が得られる。さらに、基材層は成型性に優れたポリアミドフィルムを有し、かつ外側のポリエステルフィルムの外表面に凹凸が形成されていることで、冷間成型の際に金型と外装材とが過度に密着することを抑制できることから、優れた成型性も得られる。」

「【0136】
・・・
実施例1においては、本発明の第一実施形態に示す材料を用いた。
・・・
【0142】
[基材保護層17]
塗布液G-1:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-2:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-3:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-4:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
・・・
【0146】
【表1】

【0147】
表1に示すように、アクリルポリオール(a2)と脂肪族系イソシアネート硬化剤とにより基材保護層を形成した実施例1(当審注:表1の「実験例1」は「実施例1」の誤記と認められる。)の外装材は、ポリエーテルポリオールと芳香族系イソシアネート硬化剤との少なくとも一方を使用して基材保護層を形成した比較例1?3の外装材に比べて、優れた電解液耐性を有していた。」

「【0148】
以下、実施例2及び実施例3においては、本発明の第二実施形態に示す材料を用いた。
・・・
【0154】
[基材保護層17]
塗布液G-11:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が20となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-12:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-13:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が8となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-14:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が10となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-15:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が1となるようにトルエンに溶解した塗布液。
各塗布液中のポリオールと硬化剤の比率は、形成される樹脂のガラス転移温度Tgが所望の温度となるように調整した。樹脂のガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定(DMS)により、1Hzでの損失正接(tanθ)のピーク温度(昇温速度5℃/分)として測定した。
・・・
【0159】
【表2】

【0160】
表2に示すように、アクリルポリオール(a2)と脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成したガラス転移温度Tgが0?60℃のウレタン樹脂の基材保護層を有する実施例2、3の外装材は、優れた電解液耐性と耐傷性を兼ね備えていた。
・・・」

「【0161】
以下、実施例4及び実施例5においては、本発明の第三実施形態に示す材料を用いた。
・・・
【0172】
【表3】

【0173】
表3に示すように、厚さ6?40μmの二軸延伸Nyフィルムの外側に、二軸延伸PETが積層され、かつ外表面に凹凸が形成された実施例4、5の外装材は、優れた電解液耐性、耐擦傷性及び成型性を兼ね備えていた。・・・」

ウ 上記イに摘記した本件明細書の各記載に関し、以下のことがいえる。
(ア)本件明細書において、「【発明が解決しようとする課題】」という見出しが付された段落【0007】には、「本発明は、優れた電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えた蓄電デバイス用外装材の提供を目的とする。」と記載されている。

(イ)本件明細書の全体を参照すると、「第一実施形態」(段落【0012】?【0054】)、「第二実施形態」(段落【0055】?【0094】)、「第三実施形態」(段落【0095】?【0134】)の、三つの実施形態が記載されており、「実施例1」が第一実施形態に対応し、「実施例2」と「実施例3」が第二実施形態に対応し、「実施例4」と「実施例5」が第三実施形態に対応するものとなっている。

(ウ)「第一実施形態の外装材における基材保護層」は、「特定のポリオールと硬化剤とで形成されたウレタン樹脂により形成され」たものであって、これにより「優れた電解液耐性が得られる」とされており(段落【0053】)、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール(アクリルポリオール(a2))と脂肪族系イソシアネート硬化剤とにより基材保護層を形成した「実施例1」の外装材は、そのことを実験的に裏付けるものとなっている(段落【0136】?【0147】)。

(エ)「第二実施形態の外装材における基材保護層」は、「特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂(A)により形成され」たものであって、これにより「優れた電解液耐性が得られる」とされ、また、「優れた電解液耐性が得られることに加え、基材保護層を形成するウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgが0?60℃であることで、優れた耐傷性も得られる」とされており(段落【0093】)、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール(アクリルポリオール(a2))と脂肪族系イソシアネート硬化剤とにより、ガラス転移温度Tgが0?60℃の範囲内にあるウレタン樹脂からなる基材保護層を形成した「実施例2」及び「実施例3」は、そのことを実験的に裏付けるものとなっている(段落【0148】?【0160】)。

(オ)「第三実施形態の蓄電デバイス用外装材」は、「基材層が、ポリアミドフィルムの外側にポリエステルフィルムを有する積層フィルムからなることで、優れた電解液耐性及び耐傷性が得られる」とされ、また、「外側のポリエステルフィルムの外表面に凹凸が形成されていることで、冷間成型の際に金型と外装材とが過度に密着することを抑制できることから、優れた成型性も得られる」とされており(段落【0133】)、「実施例4」及び「実施例5」は、そのことを実験的に裏付けるものとなっている(段落【0161】?【0173】)。

エ 上記イ及びウを踏まえ、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否かを判断するため、本件発明と、本件明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比し、本件発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものであるか否かについて検討する。
(ア)上記ウ(ア)によれば、本件明細書において明示的に記載されている課題は、「電解液耐性」と「耐傷性」と「成型性」の三つの特性を兼ね備えた蓄電デバイス用の外装材を提供することである。

(イ)ところが、上記ウ(イ)?(オ)によれば、本件明細書に記載された各実施形態は、それぞれ異なる効果を奏するものであって、上記(ア)に示した課題を解決しているのは第三実施形態の外装材のみであるとともに、第一実施形態の外装材は「耐傷性」と「成型性」を備えるか否かが不明である点で、また、第二実施形態の外装材は「成型性」を備えるか否かが不明である点で、上記(ア)に示した課題を解決しているとはいえない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、本件明細書において明示的に記載されている課題と、各実施形態に関する記載とが整合しないから、本件明細書の記載事項の全てに接した当業者は、本件明細書に記載の全ての実施形態が上記(ア)に示した三つの特性を兼ね備えるという課題を解決しようとするものではなく、実質的には、実施形態ごとに解決しようとする課題が異なるものになっていることを認識するものというべきである。

(エ)そこで、各実施形態ごとの解決しようとする課題と、その解決手段について検討する。

(オ)上記ウ(ウ)によれば、第一実施形態の外装材は、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備えることで、優れた電解液耐性が得られるものである。
したがって、第一実施形態の外装材は、解決しようとする課題が「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という事項であって、当該課題を「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備えるという手段によって解決しているものと認められる。

(カ)上記ウ(エ)によれば、第二実施形態の外装材は、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備えるとともに「ウレタン樹脂のガラス転移温度Tgが0?60℃である」ものとすることで、優れた電解液耐性と優れた耐傷性が得られるものである。
したがって、第二実施形態の外装材は、解決しようとする課題が「電解液耐性及び耐傷性を兼ね備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という事項であって、当該課題を「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備えるとともに「ウレタン樹脂のガラス転移温度Tgが0?60℃である」ものとするという手段によって解決しているものと認められる。

(キ)上記ウ(オ)によれば、第三実施形態の外装材は、「基材層が、ポリアミドフィルムの外側にポリエステルフィルムを有する積層フィルムからなる」とともに「外側のポリエステルフィルムの外表面に凹凸が形成されている」ことで、優れた電解液耐性及び耐傷性が得られ、優れた成型性も得られるものである。
したがって、第三実施形態の外装材は、解決しようとする課題が「電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という事項であって、当該課題を「基材層が、ポリアミドフィルムの外側にポリエステルフィルムを有する積層フィルムからなる」とともに「外側のポリエステルフィルムの外表面に凹凸が形成されている」ものとするという手段によって解決しているものと認められる。

(ク)以上のことを踏まえて、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否かを判断する。
まず、本件発明と、本件明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比して、本件発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かについて検討する。
本件発明は、前記第3の1に示したとおりのものであって、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備える「蓄電デバイス用外装材」であるところ、上記ウ(ウ)に照らせば、本件発明の「蓄電デバイス用外装材」は、第一実施形態の外装材として、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(ケ)次に、本件発明が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものであるか否かについて検討する。
上記(オ)によれば、第一実施形態の外装材は、解決しようとする課題が「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という事項であって、当該課題を「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備えるという手段によって解決しているものと認められる。
したがって、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」を備える本件発明の「蓄電デバイス用外装材」は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものである。

(コ)上記(ク)及び(ケ)の検討によれば、本件発明の「蓄電デバイス用外装材」が、第二実施形態及び第三実施形態として本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かについての検討を行うまでもなく、本件発明の「蓄電デバイス用外装材」は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものであるといえる。

オ よって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。


(2)取消理由1及び申立理由3では本件特許を取り消すことができないことについて
ア 取消理由1について
(ア)取消理由1は、具体的には、以下の取消理由1-1と、取消理由1-2とからなるものである。
・取消理由1-1 本件訂正前の請求項1?5に係る発明における「基材保護層」が「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」を使用して形成されたものである場合に関し、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
・取消理由1-2 本件訂正前の請求項1?5に係る発明における「基材保護層」は、所定のポリオールと脂肪族系イソシアネート硬化剤により形成されたウレタン樹脂を「含有する」と特定されるものであることにより、「基材保護層」が電解液耐性を発揮しない場合を含むから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。

(イ)これに対し、本件訂正によって、本件発明1?5の「基材保護層」は、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」と規定されることとなった。

(ウ)この本件訂正は、「基材保護層」が「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」を使用して形成された場合を排除するものであるから、取消理由1-1の前提となる事項が存在しないこととなった。

(エ)また、本件訂正後の「基材保護層」である「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」は、前記(1)ウ(ウ)によれば、電解液耐性を発揮するものであると認められるから、取消理由1-2は該当しないこととなった。

(オ)よって、取消理由1は、理由がない。


イ 申立理由3について
(ア)申立理由3のうち取消理由1として採用しなかった部分は、具体的には、本件発明が解決しようとする課題は「優れた電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えた」ものとすることであって、本件訂正前の特許請求の範囲に記載された発明は、耐傷性が劣っている点で当該課題を解決しない比較例6を含むものであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない、というものである。

(イ)しかしながら、前記(1)エで検討したとおり、本件明細書の記載事項の全てに接した当業者であれば、本件発明が解決しようとする課題には、「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」というものがあると認識すると認められるから、異議申立人による申立理由3の主張は、本件発明が解決しようとする課題を正しく捉えたものではない。

(ウ)そして、本件発明においても比較例6を包含しているものの、前記(1)エで検討したとおり、本件発明は「電解液耐性を備えた蓄電デバイス用の外装材を提供する」という課題を解決できるものであるから、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。

(エ)よって、申立理由3は、理由がない。


(3)本件発明1?5は出願日の遡及が認められることにより、取消理由2(申立理由4)では本件特許を取り消すことができないことについて
ア 本件訂正により、本件発明1?5の「基材保護層」は、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」と規定され、「ウレタン樹脂」以外の他の成分を含まないこととなった。

イ この本件訂正の結果、本件発明1?5は、本件特許の原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内のものとなり、特許法第44条第2項に規定する原出願の出願日への遡及が認められることになるから、本件特許の出願日は、実際の出願日である平成28年 8月 9日ではなく、本件特許の原出願の国際出願日である平成24年11月 7日である。

ウ したがって、甲5は、本件特許の出願日前に公知になったものではないから、取消理由2は、理由がない。


(4)申立理由1では本件特許を取り消すことができないことについて
ア 甲1には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納し、
周縁部をヒートシールすることにより前記電気化学セル本体を密封する電気化学セル用包装材であって、
少なくとも、基材層、接着剤層、金属箔層、熱接着性樹脂層がこの順に積層された構造を有する多層フィルムであり、
前記基材層、前記接着剤層、前記金属箔層のいずれかの層に識別標識が含まれることを特徴とする電気化学セル用包装材。
【請求項2】
前記識別標識が、前記接着剤層に含有された顔料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項3】
前記識別標識が、前記基材層を構成する延伸ナイロンフィルムに含有した顔料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項4】
前記識別標識が、前記金属箔層を構成する金属箔表面に施された凹凸により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項5】
前記顔料がパール顔料であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項6】
前記顔料が蛍光顔料であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項7】
前記基材層の上面にマットニス層が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項8】
前記基材層が、表面をマット処理された延伸ナイロンフィルムにより構成されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の電気化学セル用包装材。
【請求項9】
前記金属箔層と前記熱接着性樹脂層との間に酸変性ポリオレフィン層を介在させたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気化学セル用包装材。」

「【0002】
近年、特許文献1に示すように、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、燃料電池等や、または、液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電気化学セルは、多層フィルムで構成される電気化学セル用包装材が外装体として用いられている。」

「【0036】
また、基材層11は延伸ナイロンフィルムで構成されている。なお、電池化学セル用包装材10の基材層表面の金型表面への滑り性を向上させるために、基材層11をマット処理された延伸ナイロンフィルムを用いたり、基材層を延伸ナイロンフィルムで構成し基材層の上面にマットニス層を形成することができる。これにより、電気化学セル用包装材10を冷間プレス成形等によって成形する成形工程において成形不良を減らすことができる。
【0037】
具体的には、マットニス層は、例えばセルローズ系、ポリアミド系、塩酢ビ系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などのオレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂に、シリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤を適量添加したマットニスを用いることができる。或いは前記オレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂に、シリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤とワックスとを適量添加したマットニスを用いることができる。なお、前記マットニス層を形成する方法は、特に限定されることはなく、例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、ロールコーティング方式、リバースコーティング方式などを適宜使用することができる。」

「【符号の説明】
【0073】
10、110、210 電気化学セル用包装材
11、111 基材層
12、112 金属箔層
12a、112a 化成処理層
13,113 接着剤層
14、114 酸変性ポリオレフィン層
15、115 熱接着性樹脂層
16、116 樹脂コーティング層
17、117 接着剤層
119 印刷層
120 外装体
120a トレイ
120b シート
121 リチウムイオン電池
122 リチウムイオン電池本体」

「【図1】



甲1に記載の「マットニス層」は、甲1の図1の基材層11の上側に配置されるものであり、その材料の一つとして、ウレタン系の合成樹脂が挙げられている。
本件発明1の記載に倣い、甲1に記載の「基材層11」の一方の面を「第1の面」とし、他方の面を「第2の面」と表現すると、甲1には、以下の[甲1発明]が記載されているといえる。
[甲1発明]
「正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納する、電気化学セル用包装材であって、
少なくとも、延伸ナイロンフィルムである基材層、接着剤層、金属箔層、熱接着性樹脂層がこの順に積層された構造を有する多層フィルムであり、
前記基材層の第1の面に前記接着剤層、前記金属箔層、前記熱接着性樹脂層が積層され、
前記基材層の第2の面に積層される、ウレタン系の合成樹脂にマット剤を添加してなるマットニス層を備える、
電気化学セル用包装材」

イ 甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】 アルミニウム箔の片面の最も外側に、その表面側に塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムをラミネートすると共に、ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリレート共重合体またはアイオノマー樹脂のフィルムをアルミニウム箔の他の面の最も外側にラミネートした、包材総厚が150ミクロン以下である電池ケース用包材。
【請求項2】 塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング材として、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれた少なくとも1種のコーティング層を有する延伸フィルムである請求項1に記載の電池ケース用包材。」

「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、張り出し成形、深絞り成形などの冷間加工性が優れてシャープな形状の成形が可能であり、強度的にも優れており、電解液などが付着してもにも白化せず、侵されることのない電池ケース用包材及びそれを使用した小型であり、体積エネルギー密度が高い畜電池のための電池ケースの開発を目的とする。」


ウ 甲3には、以下の記載がある。


」(第31頁)



」(第36頁)



」(第406頁)



」(第407頁)


エ 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「電気化学セル用包装材」は「正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体」を収容するものであって、この「電気化学セル」は正極と負極と電解質とを含むものであるから、実質的には電池すなわち蓄電デバイスであると認められる。したがって、甲1発明の「電気化学セル用包装材」は、本件発明1の「蓄電デバイス用外装材」に相当する。

(イ)また、甲1発明の「基材層」は、本件発明1の「基材層」に相当する。そして、甲1発明の「基材層」の「第1の面」、「基材層」の「第2の面」は、それぞれ、本件発明1の「基材層」の「第1の面」、「基材層」の「第2の面」に相当する。

(ウ)また、甲1発明の「前記基材層の第2の面に積層される、ウレタン系の合成樹脂にマット剤を添加してなるマットニス層」と、本件発明1の「前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」は、「前記基材層の第2の面に積層され」る「層」である点で共通する。

(エ)そうすると、上記両発明は、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点1)
「前記基材層の第2の面に積層され」る層が、本件発明1では、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層」であるのに対し、甲1発明では、「ウレタン系の合成樹脂にマット剤を添加してなるマットニス層」である点

オ 相違点1について検討する。
(ア)技術常識によれば、ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネート硬化剤とを反応させることにより得られるものであるところ、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」である甲3には、「2.4 PUの設計技術」なる見出しの下に、例えば
・ポリウレタンの生成に用いるイソシアネートとして、芳香族系、脂肪族系又は脂環系のものが存在すること
・ポリウレタン生成時のベースポリオールとなる高MWのポリオールは、大きく分けるとポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールであり、この他にもアクリルポリオール、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ブタジエンポリオール等があること
という事項が記載されている(第31頁及び第36頁)。

(イ)さらに、甲3には、ポリエステルポリオールは樹脂構造及び合成技術上、分子末端には確実に水酸基があり、また水酸基価の高さに応じて分子鎖の中間にも水酸基が存在するので、NCO基との反応で、確実に各分子が網目構造に組み込まれ欠陥の少ない網目が形成されることが記載されており、このような点からポリエステルポリオールはアクリルポリオールより小さい分子量で使用できることも記載されている(第406頁?407頁)。

(ウ)甲3には上記(ア)及び(イ)のように、「アクリルポリオール」や「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」についての一般的な記載はあるものの、本件発明1に特定される「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」自体についての記載や、本件発明1や甲1発明である「蓄電用デバイス外装材」という特定の用途に用いられるウレタン樹脂の設計指針についての記載はなく、本件発明1で規定される「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」と「脂肪族系イソシアネート硬化剤」との組み合わせによってウレタン樹脂を製造することについても記載はない。

(エ)また、甲1、甲2の記載事項の全てを考慮したとしても、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」と「脂肪族系イソシアネート硬化剤」という具体的な組み合わせによってウレタン樹脂を形成することについては記載されておらず、そのような組み合わせによってウレタン樹脂を形成することが技術常識であるといえる根拠も見当たらない。

(オ)したがって、甲1発明の、「前記基材層の第2の面に積層され」る層である「ウレタン系の合成樹脂からなるマットニス層」を、「水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール」と「脂肪族系イソシアネート硬化剤」との組み合わせによって形成されるウレタン樹脂とすることは、甲1?甲3の記載事項を総合し、技術常識を考慮したとしても、当業者が容易に想到し得たとはいえないから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。

カ 上記オの検討によれば、本件発明1と甲1発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明2?5は本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明2?5についても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ よって、申立理由1は、理由がない。


(5)申立理由2では本件特許を取り消すことができないことについて
ア 異議申立書において、異議申立人は、実施例で使用されている基材保護層は、全て水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと脂肪族系イソシアネート硬化剤により形成された基材保護層であって、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオールと脂肪族系イソシアネート硬化剤により形成されたウレタン樹脂を含有する基材保護層については、実施例が一切記載されておらず、そのようなポリエステルポリオールを使用した場合においては、どのような条件で製造してどのような特性のものが得られたときに、本件発明の課題を解決することができるのか確認することができない、として、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないことを主張している。

イ しかしながら、物の発明について、明細書の発明の詳細な説明が、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するか否かは、当業者が、明細書の発明の詳細な説明と出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かによって判断されるべきものであって、物の発明が本件発明の課題を解決できるか否かとは直接関係するものではない。

ウ したがって、「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」を用いて形成された基材保護層が本件発明の課題を解決できることを確認することができなかったとしても、そのことは、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するか否かとは直接関係しないから、申立理由2は、理由がない。

エ なお、本件訂正は、本件発明1?5の「基材保護層」が、「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール」を使用して形成された場合を排除するものであり、この本件訂正の結果、申立理由2の前提となる事項が存在しないことになったから、この点からみても、申立理由2は、理由がない。



第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蓄電デバイス用外装材
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用外装材に関する。
本願は、2011年11月7日に出願された特願2011-243575号、2011年11月7日に出願された特願2011-243579号、及び2011年11月7日に出願された特願2011-243582号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パソコン等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、電気自動車等に用いられる蓄電デバイスとしては、例えば、超薄型化、小型化が可能なリチウムイオン電池が知られている。このような蓄電デバイスでは、正極材、負極材、セパレータ、電解液等の内容物が、蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」ということがある。)を所定の形状に成型した外装体内に収納される。外装体としては、従来は金属板等をプレス成型した金属製の缶タイプの外装体が使用されていたが、形状の自由度が高く、軽量化が容易なことから、近年ではアルミニウム箔等の金属箔を有するラミネートフィルム(例えば、基材層/第1接着層/金属箔層/第2接着層/シーラント層のような構成)を冷間成型したラミネートフィルムタイプの外装体が広く使用されている。
【0003】
外装材としてラミネートフィルムを用いる蓄電デバイスは、ラミネートフィルムを冷間成型により深絞りして凹部を形成し、前記凹部内にデバイス用内容物を収容して、周縁部をヒートシールにより熱封緘することで製造される。前記蓄電デバイスは、前記凹部を深くするほど内容物の収納量が増加し、エネルギー密度が高くなる。そのため、外装材の基材層には、凹部を深くしてもクラックやピンホールが生じ難い、優れた成型性を有するポリアミドフィルムが好適に使用される(例えば、特許文献1、2)。しかし、ポリアミドフィルムは、充分な電解液耐性を有していない。そのため、蓄電デバイスが複数個積層されて使用される場合等、一つの蓄電デバイスに破損が生じて電解液が漏れ出すと、他の蓄電デバイスの外装材に付着した電解液によって基材層が溶解し、内側の金属箔層を腐食させるおそれがある。また、耐傷性も充分ではなく、取り扱い時に基材層の表面に傷が付き、意匠性、耐久性等が低下することがある。
【0004】
一方、特許文献1には、外装材の成型性をさらに向上させる目的で、基材層の外表面上にマットニス層を形成することが示されている。前記マットニス層は、セルロース系、塩化ビニル-酢酸ビニル系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系等のオレフィン系、又はアルキッド系合成樹脂と、シリカ系、カオリン系等のマット剤により形成されている。しかし、前記マットニス層を設けても、基材層の電解液による劣化を充分に抑制すること、及び充分な耐傷性を付与することは困難である。
【0005】
また、特許文献2には、基材層の電解液耐性及び耐傷性を向上させた外装材として、以下の構造が示されている。
(1)外側から順に、基材層/金属箔層/熱接着性樹脂層が積層され、前記基材層が、外側から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムからなる外装材(特許文献2)。
しかし、前記外装材(1)では、電解液耐性及び耐傷性は向上するが、成型性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-54563号公報
【特許文献2】特許第4559547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えた蓄電デバイス用外装材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電デバイス用外装材は、第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面に順次積層された、少なくとも第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層及びシーラント層を備えポリアミドフィルムからなる基材層と、
前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、
を備える。
また、本発明の蓄電デバイス用外装材においては、前記ポリオールが有する水酸基に対する前記脂肪族系イソシアネート硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)を0.5?50とすることが好ましい。
本発明の前記基材保護層の厚さが、1?10μmとされることができる。
本発明の前記基材保護層の外表面は、マット処理が施されていることができる。
本発明の前記基材保護層には、添加剤が配合されていることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材は、優れた電解液耐性、耐傷性及び成型性を兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蓄電デバイス用外装材の一例を示した断面図である。
【図2】本発明の蓄電デバイス用外装材の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中では、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味し、他の化合物についても同様である。
【0012】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態の蓄電デバイス用外装材の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態の蓄電デバイス用外装材1(以下、単に「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の第1の面に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層され、基材層11の第2の面に基材保護層17が積層された積層体である。外装材1は、蓄電デバイス用外装材として用いる際には、基材保護層17が最外層、シーラント層16が最内層となるように使用される。外装材1は、基材層11の外側(第2の面側)に基材保護層17が積層されていることを特徴とする外装材である。
【0013】
(基材保護層17)
基材保護層17は、基材層11の外側の面(第2の面)に積層される層であり、水酸基を有する基(官能基)を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される。基材保護層17により、基材層11が電解液によって劣化することが抑制される。
【0014】
水酸基を有する基(官能基)を側鎖に有するポリエステルポリオール(以下、「ポリエステルポリオール(a1)」という。)は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールである。
ポリエステルポリオール(a1)としては、例えば、二塩基酸の1種以上と、水酸基を3つ以上有する化合物の1種以上とを反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。水酸基を3つ以上有する化合物の水酸基のうちの未反応の部位が、ポリエステルポリオール(a1)の側鎖の水酸基となる。
二塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の脂肪族系二塩基酸;イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系二塩基酸等が挙げられる。
水酸基を3つ以上有する化合物としては、例えば、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0015】
また、ポリエステルポリオール(a1)は、前記二塩基酸及び水酸基を3つ以上有する化合物に加えて、必要に応じてジオールを反応させた化合物が用いられてもよい。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等の脂肪族系ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコル等の脂環式系ジオール;キシリレングリーコル等の芳香族系ジオール等が挙げられる。
【0016】
また、前記ポリエステルポリオールの両末端の水酸基に、2官能以上のイソシアネート化合物の1種以上を反応させて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールを用いてもよい。
2官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールでもよい。
【0017】
水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール(以下、「アクリルポリオール(a2)」という。)は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するアクリルポリオールである。
アクリルポリオール(a2)としては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸とを共重合して得られる、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を主成分とする共重合体が挙げられる。
水酸基含有アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有アクリルモノマー及び(メタ)アクリル酸と共重合する成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。);(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、N-アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。)、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシラン等のシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマーが挙げられる。
【0018】
ポリオールとしては、電解液耐性により優れることから、アクリルポリオール(a2)が好ましい。
ポリオールは、求められる機能や性能に応じて使用でき、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とを使用することで、ポリウレタン樹脂により形成される基材保護層17が得られる。
【0019】
脂肪族系イソシアネート硬化剤は、芳香環を有しない2官能以上のイソシアネート化合物である。芳香環を有しないことにより紫外線によるベンゼン環のキノイド化が起きず、黄変を抑制できることからも、最外層に適している。脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いてもよい。
脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、電解液耐性が向上することから、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。硬化剤の自己修復性能が向上することに加え、上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性においては、イソホロンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性よりも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性の方が高いため、量産適性を踏まえると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0020】
前記ポリオールが有する水酸基に対する脂肪族系イソシアネート硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、0.5?50が好ましく、1?20がより好ましい。前記モル比(NCO/OH)が下限値(0.5)以上の場合は、耐傷性、電解液耐性が向上する。前記モル比(NCO/OH)が上限値(50)以下の場合は、基材保護層と基材との接着性を確保しやすい。
【0021】
基材保護層17の厚さは、1?10μmが好ましく、1?5μmがより好ましい。基材保護層17の厚さが下限値(1μm)以上の場合は、優れた電解液耐性が得られやすい。基材保護層17の厚さが上限値(10μm)以下の場合は、基材を薄型化しやすく延伸性能が得られやすい。
【0022】
基材保護層17の外表面は、マット処理が施されていることが好ましい。これにより、基材保護層17表面のすべり性が向上し、冷間成型において外装材1が過度に金型に密着することが抑制されやすくなるので、成型性が向上する。また、つや消し効果も得られる。
【0023】
基材保護層17には、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の添加剤を配合してもよい。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の脂肪酸アミドが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、シリカ等の各種フィラー系のアンチブロッキング剤が好ましい。
これら添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(基材層11)
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途のリチウムイオン電池の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムが好ましい。前記樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。基材層11は、これらの樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムを2種以上使用した積層フィルムであってもよい。
基材層11としては、前記した材料のなかでも、成型性に優れることから、ポリアミドフィルムが好ましい。ポリアミドフィルムを形成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
【0025】
基材層11の厚さは、6?40μmが好ましく、10?30μmがより好ましい。基材層11の厚さが下限値(6μm)以上の場合は、耐ピンホール性、絶縁性が向上する。基材層11の厚さが上限値(40μm)以下の場合は、成型性が向上する。
【0026】
(第1接着層12)
第1接着層12は、基材層11と金属箔層13との間に形成される。第1接着層12は、基材層11と金属箔層13とを強固に接着するために必要な密着力を有するのみでなく、冷間成型する際には基材層11によって金属箔層13が破断されることを保護するための追随性(部材が変形・伸縮したとしても、剥離することなく部材上に第1接着層12を確実に形成するための性能)等も求められる。
第1接着層12としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールを主剤にし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤にした二液硬化型のポリウレタン系接着剤等が挙げられる。前記主剤における水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1?10が好ましく、2?5がより好ましい。
【0027】
第1接着層12の厚さは、所望の接着強度、追随性、加工性等を得るために、1?10μmが好ましく、2?6μmがより好ましい。
また、第1接着層12には、高温条件下(80℃、3日)での延伸部のデラミネーションを防止する目的として、無機物等のフィラー、顔料を適量添加することが好ましい。
【0028】
(金属箔層13)
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス綱等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
アルミニウム箔としては、例えば、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、所望の耐ピンホール性、及び成型時の延展性を得るために、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1?9.0質量%が好ましく、0.5?2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値(0.1質量%)以上の場合は、耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値(9.0質量%)以下の場合は、柔軟性が向上する。
また、アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できるために、焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔がさらに好ましい。
【0029】
金属箔層13の厚さは、所望のバリア性、耐ピンホール性、加工性を得るために、9?200μmが好ましく、15?150μmがより好ましい。
特に好ましい金属箔層13は、厚さ15?150μmの焼鈍処理した軟質アルミニウム箔である。具体的には、JIS規格で8021材、8079材が好ましい。
【0030】
金属箔層13に使用するアルミニウム箔は、所望の耐電解液性を得るために、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程を簡便にするためには、表面がエッチングされていないアルミニウム箔が好ましい。
脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプの脱脂処理とドライタイプの脱脂処理に分けられ、製造工程を簡便にするためには、ドライタイプの脱脂処理が好ましい。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。アルミニウム箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。また、前記脱脂処理の他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらに、特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を採用してもよい。
【0031】
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤が配合された材料が挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理は、浸漬法やスプレー法によって行われる。
【0032】
(腐食防止処理層14)
腐食防止処理層14は、金属箔層13と第2接着層15を強固に密着させると共に、金属箔層13を、電解液や、電解液から発生するフッ酸から保護する役割を果たす。
腐食防止処理層14は、例えば、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれら処理の組み合わせにより形成できる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理することで得られるベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合層からなる各種化成処理が挙げられる。また、これらの化成処理は湿式型に限らず、これらの処理剤を樹脂成分と混合し、塗布する方法も適用できる。
以上、これらの腐食防止処理の中でも、その効果を最大限にするとともに廃液処理の観点からも塗布型クロメート処理が好ましい。
【0033】
また、上述した化成処理以外にも、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14を形成することもできる。このような方法としては、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素系酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。前記方法を用いることで、一般的なコーティング方法でもアルミニウム箔等の金属箔腐食防止効果を付与することが可能である。
【0034】
(第2接着層15)
第2接着層15は、腐食防止処理層14とシーラント層16とを接着する層である。外装材1は、第2接着層15の種類によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成との2種類に大別される。
ドライラミネート構成の場合、第2接着層15を形成する成分として、第1接着層12で挙げた接着剤と同じ接着剤を使用できる。この場合、電解液による膨潤やフッ酸による加水分解を抑制するため、使用する接着剤は、加水分解し難い骨格の主剤を使用する、架橋密度を向上させる、等の組成設計をする必要がある。
【0035】
例えば、架橋密度を向上させる手法としては、ダイマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物、ダイマー脂肪酸の還元グリコール、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物の還元グリコールを使用する方法が挙げられる。ダイマー脂肪酸とは、各種不飽和脂肪酸を二量化させた酸であり、その構造としては、非環型、単環型、多環型、芳香環型が挙げられる。第2接着層15を形成する接着剤として使用するポリエステルポリオールの原料である多塩基酸は、特に限定されない。また、ダイマー脂肪酸の出発物質である脂肪酸も特に限定されない。また、このようなダイマー脂肪酸を必須成分として、通常のポリエステルポリオールで用いられるような二塩基酸を導入しても構わない。
前記主剤に対する硬化剤としては、ポリエステルポリオールの鎖伸長剤としても使用できるイソシアネート化合物を用いることが可能である。これにより、接着剤塗膜の架橋密度が高まり、溶解性や膨潤性の向上につながるとともに、ウレタン基濃度が高まることで基材密着性の向上も期待される。
【0036】
熱ラミネート構成の場合、第2接着層15を形成する成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。グラフト変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
第2接着層15を構成する成分としては、電解液が浸透してきてもシーラント層16と金属箔層13との密着力を維持しやすくするために、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性させた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0037】
第2接着層15を押出成型により形成する場合、押出成型時に発生する応力等により接着樹脂がMD方向(機械方向)に配向しやすい。この場合、第2接着層15の異方性を緩和するために、第2接着層15にエラストマーを配合してもよい。
第2接着層15に配合するエラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが挙げられる。配合するエラストマーの平均粒径は、エラストマーと接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層15の異方性を緩和する効果を向上させるためには、200nm以下が好ましい。なお、前記平均粒径は、電子顕微鏡により、エラストマー組成物の断面を拡大した写真を撮影し、画像解析により、分散した架橋ゴム成分の平均粒径を測定することで測定される。
これらエラストマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
第2接着層15に前記エラストマーを配合する場合、第2接着層15(100質量%)中の前記エラストマーの配合量は、1?25質量%が好ましく、10?20質量%がより好ましい。エラストマーの配合量が下限値(1質量%)以上の場合は、接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層15の異方性を緩和する効果が向上する。エラストマーの配合量が上限値(25質量%)以下の場合は、第2接着層15が電解液によって膨潤することを抑制しやすい。
【0039】
第2接着層15は、前記接着樹脂を有機溶媒に分散させたディスパージョンタイプの接着樹脂液を用いて形成されてもよい。
第2接着層15の厚さは、1?40μmが好ましく、5?20μmがより好ましい。
【0040】
(シーラント層16)
シーラント層16は、外装材1の内層であり、電池組み立て時に熱溶着される層である。つまり、シーラント層16は、熱溶着性のフィルムからなる層である。
シーラント層16を構成するフィルムの成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。なかでも、水蒸気バリア性を向上させ、ヒートシールによって過度に潰れることなく電池形態を形成しやすくするためには、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。ポリプロピレンとしては、第2接着層15において例示したポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層16は、前記した各種樹脂が混合されたフィルムにより形成してもよい。
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
【0041】
シーラント層16は、押出成型により形成したフィルムを使用する場合、前記フィルムの押出し方向に配向傾向があるため、配向によるシーラント層16の異方性を緩和するために、シーラント層16にエラストマーを配合してもよい。これにより、外装材1を冷間成型して凹部を形成する際にシーラント層16が白化することを抑制しやすくなる。
【0042】
シーラント層16に配合するエラストマーとしては、第2接着層15に配合するエラストマーとして挙げた材料と同じ材料が使用でき、好ましい材料も同じである。
シーラント層16が積層フィルムである場合は、そのいずれかの層のみにエラストマーを配合してもよく、全ての層に配合してもよい。例えば、シーラント層16がランダムポリプロピレン/ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレンの3層構成の場合、エラストマーは、ブロックポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層とブロックポリプロピレンとの層の両方に配合してもよい。
【0043】
また、シーラント層16には、滑り性を付与する目的で滑剤を配合してもよい。これにより、外装材1に冷間成型によって凹部を形成する際、外装材1において延伸率の高い凹部の辺や角となる部分が必要以上に延伸されることを防止しやすくなる。そのため、金属箔層13と第2接着層15との間が剥離したり、シーラント層16と第2接着層15とにおいてクラックによる破断や白化が生じたりすることを抑制することが容易になる。
【0044】
シーラント層16に滑剤を配合する場合、シーラント層16(100質量%)中の滑剤の配合量は、0.001質量%?0.5質量%が好ましい。滑剤の配合量が0.001質量%以上の場合は、冷間成型時にシーラント層16が白化することを抑制する効果が得られやすい。滑剤の配合量が0.5質量%以下の場合は、シーラント層から、外装材1の、その他の層のラミネート面(積層面)に滑剤がブリードして密着強度が低下することを抑制しやすい。
【0045】
(製造方法)
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下に記載する方法には限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(I)?(IV)を有する方法が挙げられる。
(I)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(II)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した面とは、反対の面に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程。
(III)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。
(IV)基材層11上に基材保護層17を積層する工程。
【0046】
工程(I):
金属箔層13の一方の面に、腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼付けを行って腐食防止処理層14を形成する。腐食防止処理剤としては、例えば、塗布型クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。
腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、ダイコート、バーコート、キスコート、コンマコート等が挙げられる。
なお、金属箔層13には、未処理の金属箔を使用してもよく、ウェットタイプの脱脂処理又はドライタイプの脱脂処理にて脱脂処理を施した金属箔を使用してもよい。
【0047】
工程(II):
金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した面とは、反対の面に、第1接着層12を形成する接着剤を用いて基材層11を貼り合わせる。
貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法が挙げられる。
工程(II)では、接着性の促進のため、室温?100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
【0048】
工程(III):
基材層11、第1接着層12、金属箔層13及び腐食防止処理層14がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる。
ドライラミネート構成の場合は、前述の接着剤を使用し、前記積層体の腐食防止処理層14側に、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法でシーラント層16を貼り合わせる。
【0049】
熱ラミネート構成の場合は、例えば、以下のドライプロセスとウェットプロセスとが挙げられる。ドライプロセスの場合は、前記積層体の腐食防止処理層14上に接着樹脂を押出ラミネートし第2接着層15を形成する。さらにシーラント層16を形成するフィルムを第2接着層15上に積層する。なお、シーラント層16を形成するフィルムは、インフレーション法又はキャスト法により得られる。その後は、腐食防止処理層14と第2接着層15との密着性を向上させる目的で、熱処理(エージング処理、熱ラミネーション等。)を施してもよい。また、インフレーション法又はキャスト法にて、第2接着層15とシーラント層16とが積層された多層フィルムを作成し、前記多層フィルムを前記積層体上に熱ラミネーションにより積層することで、第2接着層15を介してシーラント層16を積層してもよい。
【0050】
ウェットプロセスの場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂等の接着樹脂のディスパージョンタイプの接着樹脂液を前記積層体の腐食防止処理層14上に塗工し、接着樹脂の融点以上の温度で溶媒を揮発させ、接着樹脂を溶融軟化させて焼き付けし、第2接着層15を形成する。その後、シーラント層16を熱ラミネーション等の熱処理により第2接着層15上に積層する。
【0051】
工程(IV):
基材層11の外側の面(第2の面)に、基材保護層17を積層する。基材保護層17を基材層11の外側の面(第2の面)に積層する方法としては、例えば、基材保護層17を形成するウレタン樹脂のディスパージョンタイプの塗工液を調製し、ディッピング、スプレー法等の各種塗工方法で塗工した後、加熱して溶媒を揮発させ、焼き付けを行う方法が挙げられる。また、基材保護層17は、前記ウレタン樹脂を溶融させて押出す押出成型等で形成することもできる。また、基材保護層17の外表面には、マット処理等の加工を施してもよい。
【0052】
以上説明した工程(I)?(IV)により、外装材1が得られる。
なお、外装材1の製造方法は、前記工程(I)?(IV)を順次実施する方法には限定されない。例えば、工程(II)を行ってから工程(I)を行ってもよい。また、工程(IV)を行った後に工程(II)を行ってもよい。また、腐食防止処理層14の形成と、第2接着層15上にシーラント層16を積層する押出ラミネーションをインラインで連続的に行ってもよい。また、金属箔層の両面に腐食防止処理層を設けてもよい。
【0053】
以上説明した本発明の第一実施形態の外装材は、基材層の外側の面(第2の面)に基材保護層が積層されていることで、優れた電解液耐性を有している。そのため、外装材の基材層側の表面に電解液が付着しても、基材層、及び金属箔層の基材層側が変質することを抑制できる。本発明の第一実施形態の外装材における基材保護層は、前述した従来の外装材におけるマットニス層と異なり、特定のポリオールと硬化剤とで形成されたウレタン樹脂により形成されており、これにより優れた電解液耐性が得られると考えられる。このような特定の構成を有するウレタン樹脂により前記効果が得られる原因については、必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。ポリオールとして、主鎖の末端のみに水酸基があるポリエーテルポリオールではなく、少なくとも末端以外に水酸基が配置されているポリエステルポリオール(a1)、アクリルポリオール(a2)を使用することで、架橋点が増え、電解液耐性が向上していると考えられる。特にアクリルポリオール(a2)は、主鎖に対して無秩序に水酸基を有する基が側鎖として配置されるため、架橋点が増え、電解液耐性が向上すると考えられる。
【0054】
なお、本発明の第一実施形態の外装材は、前記外装材1には限定されない。例えば、金属箔層の両面に腐食防止処理層が形成されていてもよい。金属箔層の基材層側にも腐食防止処理層が形成されている場合は、金属箔層の基材層側が電解液で腐食されることを抑制することがさらに容易になる。
【0055】
[第二実施形態]
以下に、本発明の第二実施形態について説明する。
本発明の第二実施形態は、本発明の第一実施形態の基材保護層17が、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される、ガラス転移温度Tgが0?60℃であるウレタン樹脂(以下、「ウレタン樹脂(A)」という。)を含有する層であることを特徴とする。
【0056】
以下、本発明の第二実施形態の蓄電デバイス用外装材の一例を示して詳細に説明する。本発明の第二実施形態の蓄電デバイス用外装材は、第一実施形態と同様に、図1を用いて説明できる。以下、本発明の第二実施形態の説明においては、本発明の第一実施形態と同一符号を用いて説明する。
本実施形態の蓄電デバイス用外装材1(以下、単に「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層され、基材層11の他方の面側に基材保護層17が積層された積層体である。外装材1は、基材保護層17が最外層、シーラント層16が最内層となるように使用される。外装材1は、基材層11の外側に基材保護層17が積層されていることを特徴とする外装材である。
【0057】
(基材保護層17)
本発明の第二実施形態においては、基材保護層17は、基材層11の外側の面に積層される層であり、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらをまとめて「ポリオール」ということがある。)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成される、ガラス転移温度Tgが0?60℃であるウレタン樹脂(以下、「ウレタン樹脂(A)」という。)を含有する層である。
基材保護層17により、基材層11が電解液によって劣化することが抑制され、優れた耐傷性が付与される。
【0058】
水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール(以下、「ポリエステルポリオール(a1)」という。)は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールである。
本発明の第二実施形態においても、第一実施形態と同様のポリエステルポリオール(a1)を用いることができる。
ポリエステルポリオール(a1)としては、例えば、二塩基酸の1種以上と、水酸基を3つ以上有する化合物の1種以上を反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。水酸基を3つ以上有する化合物の水酸基のうちの未反応の基が、ポリエステルポリオール(a1)の側鎖の水酸基となる。
二塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の脂肪族系二塩基酸;イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系二塩基酸等が挙げられる。
水酸基を3つ以上有する化合物としては、例えば、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0059】
また、ポリエステルポリオール(a1)は、前記二塩基酸及び水酸基を3つ以上有する化合物に加えて、必要に応じてジオールを反応させた化合物が用いられてもよい。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等の脂肪族系ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコル等の脂環式系ジオール;キシリレングリーコル等の芳香族系ジオール等が挙げられる。
【0060】
また、前記ポリエステルポリオールの両末端の水酸基に、2官能以上のイソシアネート化合物の1種以上を反応させて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールを用いてもよい。
2官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールでもよい。
【0061】
水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオール(以下、「アクリルポリオール(a2)」という。)は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するアクリルポリオールである。
本発明の第二実施形態においても、第一実施形態と同様のアクリルポリオール(a2)を用いることができる。
アクリルポリオール(a2)としては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸を共重合して得られる、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を主成分とする共重合体が挙げられる。
水酸基含有アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有アクリルモノマー及び(メタ)アクリル酸と共重合する成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。);(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、N-アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。)、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシラン等のシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマーが挙げられる。
【0062】
ポリオールとしては、電解液耐性により優れることから、アクリルポリオール(a2)が好ましい。
ポリオールは、求められる機能や性能に応じて使用でき、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤を使用することで、ポリウレタン樹脂により形成される基材保護層17が得られる。
【0063】
本発明の第二実施形態においても、第一実施形態と同様の脂肪族系イソシアネート硬化剤を用いることができる。
脂肪族系イソシアネート硬化剤は、芳香環を有しない2官能以上のイソシアネート化合物である。芳香環を有しないことにより紫外線によるベンゼン環のキノイド化が起きず、黄変を抑制できることからも、最外層に適している。脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いてもよい。
脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、電解液耐性が向上することから、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。硬化剤の自己修復性能が向上することに加え、上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性においては、イソホロンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性よりも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性の方が高いため、量産適性を踏まえると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0064】
ウレタン樹脂(A)における前記ポリオールが有する水酸基に対する脂肪族系イソシアネート硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、0.5?50が好ましく、1?20がより好ましい。前記モル比(NCO/OH)が下限値(0.5)以上の場合は、耐傷性、電解液耐性が向上する。前記モル比(NCO/OH)が上限値(50)以下の場合は、基材との密着性を確保しやすい。
【0065】
また、ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、自己修復性による耐傷性を付与しやすいことから、0℃以上であり、5℃以上が好ましい。また、ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、基材保護層17が硬くなることで脆くなることを抑制しやすいことから、60℃以下であり、40℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
なお、前記ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定(DMS)における1Hzでの損失正接(tanθ)のピーク温度(昇温速度5℃/分)を意味する。
【0066】
基材保護層17の厚さは、1?10μmが好ましく、1?5μmがより好ましい。基材保護層17の厚さが下限値(1μm)以上の場合は、優れた電解液耐性及び耐傷性が得られやすい。
基材保護層17の厚さが上限値(10μm)以下の場合は、基材を薄型化しやすく延伸性能が得られやすい。
【0067】
基材保護層17には、フィラーが含有されていることが好ましい。フィラーが含有されていれば、たとえ基材保護層17表面に傷が付いたとしても、その傷をより目立たなくすることができる。
フィラーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の樹脂フィラー、シリカ、黒鉛等が挙げられる。フィラーの形状としては、フレーク状、真球状、中空状、ファイバー状、不定形等が挙げられる。中でも、基材保護層17の耐傷性が向上することから、樹脂フィラーが好ましく、不定形の樹脂フィラーがより好ましい。
【0068】
基材保護層17(100質量%)中のフィラーの含有量は、表面光沢を下げやすいことから、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、前記フィラーの含有量は、フィラーの脱落を防ぎやすいことから、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、光沢をより下げられることから、フィラーの粒子径は、0.8μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。なお、フィラーの粒子径は、レーザー回折法により測定した値を意味する。
【0069】
また、基材保護層17には、前記フィラー以外にも、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合してもよい。
滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の脂肪酸アミドが挙げられる。
これら添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本発明の第二実施形態においても、基材保護層17の外表面は、マット処理が施されていることが好ましい。これにより、基材保護層17表面のすべり性が向上し、冷間成型において外装材1が過度に金型に密着することが抑制されやすくなるので、成型性が向上する。また、つや消し効果も得られる。
【0071】
(基材層11)
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途のリチウムイオン電池の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。 基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムが好ましい。該樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。基材層11は、これらの樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムを2種以上使用した積層フィルムであってもよい。
基材層11の材料としては、前記した材料のなかでも、成型性に優れることから、ポリアミドフィルムが好ましい。ポリアミドフィルムを形成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
また、基材保護層17との密着性を高め、電解液耐性を向上させることから、基材層11にはコロナ処理を行うことが好ましい。
【0072】
基材層11の厚さは、6?40μmが好ましく、10?30μmがより好ましい。基材層11の厚さが下限値(6μm)以上の場合は、耐ピンホール性、絶縁性が向上する。基材層11の厚さが上限値(40μm)以下の場合は、成型性が向上する。
【0073】
(第1接着層12)
第1接着層12は、基材層11と金属箔層13間に形成される。第1接着層12は、基材層11と金属箔層13を強固に接着するのに必要な密着力を有するだけでなく、冷間成型する際には基材層11によって金属箔層13が破断されることを保護するための追随性等も求められる。
第1接着層12としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールを主剤とし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤等が挙げられる。前記主剤における水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1?10が好ましく、2?5がより好ましい。
【0074】
第1接着層12の厚さは、接着強度、加工性などの点において、或いは、第1接着層12が設けられる部材が変形・伸縮したとしても、剥離することなく部材上に第1接着層12を確実に形成する(追随性を得る)ためには、1?10μmが好ましく、2?6μmがより好ましい。
【0075】
(金属箔層13)
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス綱等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
アルミニウム箔としては、例えば、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、所望の耐ピンホール性、及び成型時の延展性を得るためには、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1?9.0質量%が好ましく、0.5?2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値(0.1質量%)以上の場合は、耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値(9.0質量%)以下の場合は、柔軟性が向上する。
また、アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できるために、焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔がさらに好ましい。
【0076】
金属箔層13の厚さは、所望のバリア性、耐ピンホール性、加工性を得るために、9?200μmが好ましく、15?150μmがより好ましい。
特に好ましい金属箔層13は、厚さ15?150μmの焼鈍処理した軟質アルミニウム箔である。具体的には、JIS規格で8021材、8079材が好ましい。
【0077】
金属箔層13に使用するアルミニウム箔は、所望の耐電解液性を得るために、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程の簡便化の観点から、表面がエッチングされていないアルミニウム箔が好ましい。
脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプの脱脂処理とドライタイプの脱脂処理に分けられ、製造工程を簡便化するためには、ドライタイプが好ましい。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。アルミニウム箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。また、該脱脂処理の他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらに、特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を採用してもよい。
【0078】
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。
酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤が配合された材料が挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理は、浸漬法やスプレー法で行われる。
【0079】
(腐食防止処理層14)
腐食防止処理層14は、金属箔層13と第2接着層15を強固に密着させると共に、金属箔層13を、電解液や、電解液から発生するフッ酸から保護する役割を果たす。腐食防止処理層14は、例えば、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれら処理の組み合わせにより形成できる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理することで得られるベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合層からなる各種化成処理が挙げられる。また、これらの化成処理は湿式型に限らず、これらの処理剤を樹脂成分と混合した塗布型タイプも適用できる。
以上、これらの腐食防止処理の中でも、その硬化を最大限にするとともに廃液処理の観点からも塗布型クロメート処理が好ましい。
【0080】
また、上述した化成処理以外にも、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14を形成することもできる。このような方法としては、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素系酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。該方法を用いることで、一般的なコーティング方法でもアルミニウム箔等の金属箔腐食防止効果を付与することが可能である。
【0081】
(第2接着層15)
第2接着層15は、腐食防止処理層14とシーラント層16を接着する層である。外装材1は、第2接着層15の種類によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成の2種類に大別される。
ドライラミネート構成の場合、第2接着層15を形成する成分としては、第1接着層12で挙げた成分と同じ接着剤を使用できる。この場合、電解液による膨潤やフッ酸による加水分解を抑制するため、使用する接着剤は、加水分解し難い骨格の主剤を使用する、架橋密度を向上させる、等の組成設計を行う必要がある。
【0082】
例えば、架橋密度を向上させる手法としては、ダイマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物、ダイマー脂肪酸の還元グリコール、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物の還元グリコールを使用する方法が挙げられる。ダイマー脂肪酸とは、各種不飽和脂肪酸を二量化させた酸であり、その構造としては、非環型、単環型、多環型、芳香環型が挙げられる。第2接着層15を形成する接着剤として使用するポリエステルポリオールの原料である多塩基酸は、特に限定されない。また、ダイマー脂肪酸の出発物質である脂肪酸も特に限定されない。また、このようなダイマー脂肪酸を必須成分として、通常のポリエステルポリオールで用いられるような二塩基酸を導入しても構わない。
前記主剤に対する硬化剤としては、ポリエステルポリオールの鎖伸長剤としても使用できるイソシアネート化合物を用いることが可能である。これにより、接着剤塗膜の架橋密度が高まり、溶解性や膨潤性の向上につながるとともに、ウレタン基濃度が高まることで基材密着性の向上も期待される。
【0083】
熱ラミネート構成の場合、第2接着層15を形成する成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。グラフト変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
第2接着層15を構成する成分としては、電解液が浸透してきてもシーラント層16と金属箔層13の密着力を維持しやすくするためには、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性させた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0084】
第2接着層15を押出成型により形成する場合、押出成型時に発生する応力等により接着樹脂がMD方向(機械方向)に配向しやすい。この場合、第2接着層15の異方性を緩和させるために、第2接着層15にエラストマーを配合してもよい。
第2接着層15に配合するエラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが挙げられる。配合するエラストマーの平均粒径は、接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層15の異方性を緩和する効果を向上させるためには、200nm以下が好ましい。なお、前記平均粒径は、電子顕微鏡により、エラストマー組成物の断面を拡大した写真を撮影し、画像解析により、分散した架橋ゴム成分の平均粒径を測定することで測定される。
これらエラストマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
第2接着層15に前記エラストマーを配合する場合、第2接着層15(100質量%)中の前記エラストマーの配合量は、1?25質量%が好ましく、10?20質量%がより好ましい。エラストマーの配合量が下限値(1質量%)以上の場合は、接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層15の異方性を緩和する効果が向上する。エラストマーの配合量が上限値(25質量%)以下の場合は、第2接着層15が電解液によって膨潤することを抑制しやすい。
【0086】
第2接着層15は、前記接着樹脂を有機溶媒に分散させたディスパージョンタイプの接着樹脂液を用いて形成されてもよい。
第2接着層15の厚さは、1?40μmが好ましく、5?20μmがより好ましい。
【0087】
(シーラント層16)
シーラント層16は、外装材1の内層であり、電池組み立て時に熱溶着される層である。つまり、シーラント層16は、熱溶着性のフィルムからなる層である。
シーラント層16を構成するフィルムの成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。なかでも、水蒸気バリア性を向上させ、ヒートシールによって過度に潰れることなく電池形態を形成しやすくするためには、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。ポリプロピレンとしては、第2接着層15において例示したポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層16は、前記した各種樹脂が混合されたフィルムにより形成してもよい。
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
【0088】
シーラント層16は、押出成型により形成したフィルムを使用する場合、該フィルムの押出し方向に配向傾向があるため、配向によるシーラント層16の異方性を緩和するために、シーラント層16にエラストマーを配合してもよい。これにより、外装材1を冷間成型して凹部を形成する際にシーラント層16が白化することを抑制しやすくなる。
【0089】
シーラント層16に配合するエラストマーとしては、第2接着層15に配合するエラストマーとして挙げた材料と同じ材料を使用でき、好ましい材料も同じである。
シーラント層16が積層フィルムである場合は、そのいずれかの層のみにエラストマーを配合してもよく、全ての層に配合してもよい。例えば、シーラント層16がランダムポリプロピレン/ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレンの3層構成の場合、エラストマーは、ブロックポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層とブロックポリプロピレンの層の両方に配合してもよい。
【0090】
また、シーラント層16には、滑り性を付与する目的で滑剤を配合してもよい。これにより、外装材1に冷間成型によって凹部を形成する際、外装材1において延伸率の高い凹部の辺や角となる部分が必要以上に延伸されることを防止しやすくなる。そのため、金属箔層13と第2接着層15間が剥離したり、シーラント層16と第2接着層15においてクラックによる破断や白化が生じたりすることを抑制するのが容易になる。
【0091】
シーラント層16に滑剤を配合する場合、シーラント層16(100質量%)中の滑剤の配合量は、0.001質量%?0.5質量%が好ましい。滑剤の配合量が0.001質量%以上の場合は、冷間成型時にシーラント層16が白化することを抑制する効果が得られやすい。滑剤の配合量が0.5質量%以下の場合は、シーラント層から、外装材1のその他の層のラミネート面(積層面)に滑剤がブリードして密着強度が低下することを抑制しやすい。
【0092】
本発明の第二実施形態の外装材1の製造方法については、本発明の第一実施形態の外装材1の製造方法と同様の方法(工程(I)?(IV))であるため、以下省略する。
【0093】
以上説明した本発明の第二実施形態の外装材は、基材層の外側の面に基材保護層が積層されていることで、優れた電解液耐性を有している。そのため、外装材の基材層側の表面に電解液が付着しても、基材層、及び金属箔層の基材層側が変質することを抑制できる。本発明の第二実施形態の外装材における基材保護層は、前述した従来の外装材におけるマットニス層と異なり、特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂(A)により形成されており、これにより優れた電解液耐性が得られると考えられる。このような特定の構成を有するウレタン樹脂(A)により前記効果が得られる原因については、必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。ポリオールとして、主鎖の末端のみに水酸基があるポリエーテルポリオールではなく、少なくとも末端以外に水酸基が配置されているポリエステルポリオール(a1)、アクリルポリオール(a2)を使用することで、架橋点が増え、電解液耐性が向上していると考えられる。特にアクリルポリオール(a2)は、主鎖に対して無秩序に水酸基を有する基が側鎖として配置されるため、架橋点が増え、電解液耐性が向上すると考えられる。
また、本発明の第二実施形態の外装材は、優れた電解液耐性が得られることに加え、基材保護層を形成するウレタン樹脂(A)のガラス転移温度Tgが0?60℃であることで、優れた耐傷性も得られる。
【0094】
なお、本発明の第二実施形態の外装材は、前記外装材1には限定されない。例えば、金属箔層の両面に腐食防止処理層が形成されていてもよい。金属箔層の基材層側にも腐食防止処理層が形成されていれば、金属箔層の基材層側が電解液で腐食されることを抑制することがさらに容易になる。
【0095】
[第三実施形態]
以下に、本発明の第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態の蓄電デバイス用外装材は、基材層の第1の面に、順次積層された、少なくとも第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層及びシーラント層を備え、前記基材層の第2の面に、厚さ6?40μmのポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムが順次積層された積層フィルムを備え、前記積層フィルムの外表面に凹凸(凹凸部)が形成されている。
【0096】
以下、本発明の第三実施形態の蓄電デバイス用外装材の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態の蓄電デバイス用外装材101(以下、単に「外装材101」という。)は、図2に示すように、基材層111の第1の面に、第1接着層112、金属箔層113、腐食防止処理層114、第2接着層115及びシーラント層116が順次積層された積層体である。外装材101は、基材層111が最外層、シーラント層116が最内層となるように使用される。
【0097】
(基材層111)
本発明の第三実施形態において示す、基材層111は、蓄電デバイスを製造する際の外装材101のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。また、電解液耐性を付与し、蓄電デバイスを製造する際の電解液注入工程において電解液が付着した場合の外観不良の発生を抑制する。
基材層111は、基材層111の第2の面上に、ポリアミドフィルム111b、ポリエステルフィルム111aが順次積層された積層フィルムからなる層である。
ポリエステルフィルム111aとポリアミドフィルム111bは第3接着層111cを介して接着されることで積層されている。
【0098】
基材層111は、最外層にポリエステルフィルム111aを有している。これにより、優れた電解液耐性及び耐傷性を有する外装材101が得られる。ポリエステルフィルム111aは、成膜後にXYの二軸方向に延伸して分子を配向させることで結晶化させ、強度と耐熱性とを付与できることから、延伸ポリエステルフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。ただし、ポリエステルフィルム111aは、未延伸ポリエステルフィルムであってもよい。
ポリエステルフィルム111aを形成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0099】
ポリエステルフィルム111aの厚さは、電解液耐性及び耐傷性が向上することから、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、ポリエステルフィルム111aの厚さは、成型性が向上することから、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。
【0100】
また、基材層111は、ポリエステルフィルム111aの内側にポリアミドフィルム111bを有している。これにより、優れた成型性が得られる。ポリアミドフィルム111bは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。ポリアミドフィルム111bとしては、延伸させることにより強度が向上することから、延伸ポリアミドフィルムが好ましく、二軸延伸ポリアミドフィルムがより好ましい。
ポリアミドフィルムを形成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
【0101】
ポリアミドフィルム111bの厚さは、優れた成型性、耐ピンホール性、絶縁性が得られることから、6μm以上であり、10μm以上が好ましい。また、ポリアミドフィルム111bの厚さは、優れた成型性が得られることから、40μm以下であり、30μm以下が好ましい。
【0102】
ポリエステルフィルム111aとポリアミドフィルム111bとの密着性を向上させるためには、ドライラミネート法により積層されることが好ましい。この場合、第3接着層111cを形成する接着成分としては、ドライラミネート用接着剤が好ましい。
ドライラミネート用接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる二液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。前記ポリウレタン系接着剤は、塗布後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤とのイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。主剤が有する水酸基に対する硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1?10が好ましく、2?5がより好ましい。
【0103】
また、ポリエステルフィルム111aとポリアミドフィルム111bは、コストをより低減させるためには、共押出し法により積層されることが好ましい。この場合、第3接着層111cを形成する成分としては、熱可塑性材料である接着樹脂が好ましい。前記接着樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂に酸をグラフト共重合して変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂におけるポリオレフィン系樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロックまたはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;前記化合物にアクリル酸、メタクリル酸などの極性分子を共重合した共重合体;架橋ポリオレフィン;等のポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
変性に用いる酸としては、カルボン酸又はその無水物、エポキシ化合物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
【0104】
また、基材層111の外表面111d、すなわちポリエステルフィルム111aの外表面111dには、凹凸(凹凸部)が形成されている。これにより、外表面に凹凸が形成されていない場合に比べて、外装材101を冷間成型にて深絞りする際、金型表面と基材層111の外表面111dとの接触面積が実質的に小さくなり、金型と外装材101が過度に密着することが抑制される。そのため、冷間成型時に外装材101の滑り性が充分に得られ、外装材101の特定の部分が局所的に引き延ばされてクラック、ピンホール等の欠陥が生じることが抑制される。このように、外装材101は、優れた電解液耐性及び耐傷性に加え、優れた成型性も得られる。
【0105】
基材層11の外表面111dに形成する凹凸は、成型性が向上することから、外表面111dの静摩擦係数が、0.4以下となるように形成することが好ましく、0.3以下となるように形成することがより好ましい。
なお、本発明における静摩擦係数は、傾斜法(JIS P8147)により測定される値を意味する。
【0106】
基材層111の外表面111dに凹凸(凹凸部)を形成する方法は、特に限定されず、エンボスロールを使用する方法、ポリエステルフィルム111aにフィラーを配合する方法、サンドブラスト法等が挙げられる。
【0107】
(第1接着層112)
第1接着層112は、基材層111と金属箔層13との間に形成される。第1接着層112は、基材層111と金属箔層13とを強固に接着するのに必要な密着力を有するだけでなく、冷間成型する際には基材層111によって金属箔層13が破断されることを保護するための追随性等も求められる。
第1接着層112としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールを主剤とし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤等が挙げられる。前記主剤における水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1?10が好ましく、2?5がより好ましい。
【0108】
第1接着層112の厚さは、接着強度、追随性、加工性等の点から、1?10μmが好ましく、2?6μmがより好ましい。
【0109】
(金属箔層113)
金属箔層113としては、アルミニウム、ステンレス綱等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。 アルミニウム箔としては、例えば、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、所望の耐ピンホール性、及び成型時の延展性を得るためには、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1?9.0質量%が好ましく、0.5?2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値(0.1質量%)以上であるとき耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値(9.0質量%)以下であるとき、柔軟性が向上する。
また、アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与させるためには、焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔がさらに好ましい。
【0110】
金属箔層113の厚さは、所望のバリア性、耐ピンホール性、加工性を得るためには、9?200μmが好ましく、15?150μmがより好ましい。
特に好ましい金属箔層113は、厚さ15?150μmの焼鈍処理した軟質アルミニウム箔である。具体的には、JIS規格で8021材、8079材が好ましい。
【0111】
金属箔層113に使用するアルミニウム箔は、所望の耐電解液性を得るためには、脱脂処理が施されていることが好ましい。また、製造工程の簡便化の観点から、表面がエッチングされていないアルミニウム箔が好ましい。
脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプとに分けられ、製造工程を簡便化させるためには、ドライタイプが好ましい。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。アルミニウム箔を軟質化するために施される焼鈍処理の際に、同時に行われる脱脂処理程度でも充分な耐電解液性が得られる。また、前記脱脂処理の他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらに、特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を採用してもよい。
【0112】
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高い水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤が配合された材料が挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理は、浸漬法やスプレー法で行われる。
【0113】
(腐食防止処理層114)
腐食防止処理層114は、金属箔層113と第2接着層115とを強固に密着させると共に、金属箔層113を、電解液や、電解液から発生するフッ酸から保護する役割を果たす。
腐食防止処理層114は、金属箔層113に対して、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらを組み合わせた処理を行うことによって、金属箔層113上に形成される層である。
熱水変成処理により形成される層としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中に金属箔層113を浸漬するベーマイト処理により形成される層が挙げられる。陽極酸化処理により形成される層としては、例えば、アルマイト処理により形成される層が挙げられる。化成処理により形成される層としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらを組み合わせた処理により形成される層が挙げられる。また、前記した湿式型の化成処理により形成される層には限られず、前記した化成処理に使用する処理剤と樹脂成分とを混合した塗布型タイプの処理剤を使用した塗布型クロメート処理により形成される層が挙げられる。
これらの中でも、効果が最大限となるとともに、廃液処理が有利になる観点から、塗布型クロメート処理により形成される層が好ましい。
【0114】
また、腐食防止処理層114は、上述した化成処理により形成される層以外にも、純粋なコーティング手法のみで形成される層であってもよい。具体的には、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境側面的にも好適な材料である、平均粒径100nm以下の酸化セリウム等の希土類元素系酸化物のゾルを含む処理液を塗布し、乾燥することで形成される層等が挙げられる。
【0115】
(第2接着層115)
第2接着層115は、腐食防止処理層114とシーラント層116とを接着する層である。外装材101は、第2接着層115の種類によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成との2種類に大別される。
ドライラミネート構成の場合、第2接着層115を形成する成分として、第1接着層112で挙げた接着剤と同じ接着剤を使用できる。この場合、電解液による膨潤やフッ酸による加水分解を抑制するため、使用する接着剤は、加水分解し難い骨格の主剤を使用する、架橋密度を向上させる、等の組成設計を行う必要がある。
【0116】
例えば、架橋密度を向上させる手法としては、ダイマー脂肪酸、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物、ダイマー脂肪酸の還元グリコール、ダイマー脂肪酸のエステルもしくは水素添加物の還元グリコールを使用する方法が挙げられる。ダイマー脂肪酸とは、各種不飽和脂肪酸を二量化させた酸であり、その構造としては、非環型、単環型、多環型、芳香環型が挙げられる。第2接着層115を形成する接着剤として使用するポリエステルポリオールの原料である多塩基酸は、特に限定されない。また、ダイマー脂肪酸の出発物質である脂肪酸も特に限定されない。また、このようなダイマー脂肪酸を必須成分として、通常のポリエステルポリオールで用いられるような二塩基酸を導入しても構わない。
前記主剤に対する硬化剤としては、ポリエステルポリオールの鎖伸長剤としても使用できるイソシアネート化合物を用いることが可能である。これにより、接着剤塗膜の架橋密度が高まり、溶解性や膨潤性の向上につながるとともに、ウレタン基濃度が高まることで基材密着性の向上も期待される。
【0117】
熱ラミネート構成の場合、第2接着層115を形成する成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。グラフト変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
第2接着層115を構成する成分としては、電解液が浸透してきてもシーラント層116と金属箔層113との密着力を維持させるためには、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性させた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0118】
第2接着層115を押出成型により形成する場合、押出成型時に発生する応力等により接着樹脂がMD方向(機械方向)に配向しやすい。この場合、接着樹脂の異方性を緩和させるためには、第2接着層115にエラストマーを配合してもよい。
第2接着層115に配合するエラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが挙げられる。配合するエラストマーの平均粒径は、接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層115の異方性を緩和する効果を向上させるためには、200nm以下が好ましい。なお、前記平均粒径は、電子顕微鏡により、エラストマー組成物の断面を拡大した写真を撮影し、画像解析により、分散した架橋ゴム成分の平均粒径を測定することで測定される。
これらエラストマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
第2接着層115に前記エラストマーを配合する場合、第2接着層115(100質量%)中の前記エラストマーの配合量は、1?25質量%が好ましく、10?20質量%がより好ましい。エラストマーの配合量が下限値(1質量%)以上であるとき、接着樹脂との相溶性が向上し、また第2接着層115の異方性を緩和する効果が向上する。エラストマーの配合量が上限値(25質量%)以下であるとき、第2接着層115が電解液によって膨潤することを抑制しやすい。
【0120】
第2接着層115は、前記接着樹脂を有機溶媒に分散させたディスパージョンタイプの接着樹脂液を用いて形成されてもよい。
第2接着層115の厚さは、1?40μmが好ましく、5?20μmがより好ましい。
【0121】
(シーラント層116)
シーラント層116は、外装材101の内層であり、電池組み立て時に熱溶着される層である。つまり、シーラント層116は、熱溶着性のフィルムからなる層である。
シーラント層116を構成するフィルムの成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。なかでも、水蒸気バリア性を向上させ、ヒートシールによって過度に潰れることなく電池形態を形成しやすくするためには、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。ポリプロピレンとしては、第2接着層115において例示したポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層116は、前記した各種樹脂が混合されたフィルムにより形成してもよい。
シーラント層116は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
【0122】
シーラント層116は、押出成型により形成したフィルムを使用する場合、前記フィルムの押出し方向に配向傾向があるため、配向によるシーラント層116の異方性を緩和するために、シーラント層116にエラストマーを配合してもよい。これにより、外装材101を冷間成型して凹部を形成する際にシーラント層116が白化することを抑制しやすくなる。
【0123】
シーラント層116に配合するエラストマーとしては、第2接着層115に配合するエラストマーとして挙げた材料と同じ材料を使用でき、好ましい材料も同じである。
シーラント層116が積層フィルムである場合は、そのいずれかの層のみにエラストマーを配合してもよく、全ての層に配合してもよい。例えば、シーラント層116がランダムポリプロピレン/ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレンの3層構成の場合、エラストマーは、ブロックポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層のみに配合してもよく、ランダムポリプロピレンの層とブロックポリプロピレンとの層の両方に配合してもよい。
【0124】
また、シーラント層116には、滑り性を付与する目的で滑剤を配合してもよい。これにより、外装材101に冷間成型によって凹部を形成する際、外装材101において延伸率の高い凹部の辺や角となる部分が必要以上に延伸されることを防止しやすくなる。そのため、金属箔層113と第2接着層115とが剥離したり、シーラント層116と第2接着層115とにおいてクラックによる破断や白化が生じたりすることを抑制するのが容易になる。
【0125】
シーラント層116に滑剤を配合する場合、シーラント層116(100質量%)中の滑剤の配合量は、0.001質量%?0.5質量%が好ましい。滑剤の配合量が0.001質量%以上であるとき、冷間成型時にシーラント層116が白化することを抑制する効果が得られやすい。滑剤の配合量が0.5質量%以下であるときは、シーラント層から、外装材101のその他の層のラミネート面(積層面)に滑剤がブリードして密着強度が低下することを抑制しやすい。
【0126】
(製造方法)
以下、外装材101の製造方法について説明する。ただし、外装材101の製造方法は以下に記載する方法には限定されない。
外装材101の製造方法としては、例えば、下記工程(I)?(III)を有する方法が挙げられる。
(I)金属箔層113上に、腐食防止処理層114を形成する工程。
(II)金属箔層113における腐食防止処理層114を形成した面とは、反対の面に、第1接着層112を介して基材層111を貼り合わせる工程。
(III)金属箔層113の腐食防止処理層114側に、第2接着層115を介してシーラント層116を貼り合わせる工程。
【0127】
工程(I):
金属箔層113の一方の面に、例えば、腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼付け等を行って腐食防止処理層114を形成する。腐食防止処理剤としては、例えば、塗布型クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。
腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、ダイコート、バーコート、キスコート、コンマコート等が挙げられる。
なお、金属箔層113には、未処理の金属箔を使用してもよく、ウェットタイプの脱脂処理又はドライタイプの脱脂処理にて脱脂処理を施した金属箔を使用してもよい。
【0128】
工程(II):
金属箔層113における腐食防止処理層114を形成した面とは、反対の面に、第1接着層112を形成する接着剤を用いて基材層111を貼り合わせる。
貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法が挙げられる。
工程(II)では、接着性の促進のため、室温?100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
【0129】
工程(III):
基材層111、第1接着層112、金属箔層113及び腐食防止処理層114がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層114側に、第2接着層115を介してシーラント層116を貼り合わせる。
ドライラミネート構成の場合は、前述の接着剤を使用し、前記積層体の腐食防止処理層114側に、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法でシーラント層116を貼り合わせる。
【0130】
熱ラミネート構成の場合は、例えば、以下のドライプロセスとウェットプロセスとが挙げられる。ドライプロセスの場合は、前記積層体の腐食防止処理層114上に接着樹脂を押出ラミネートし、さらにインフレーション法又はキャスト法により得られるシーラント層116を形成するフィルムを積層する。その後は、腐食防止処理層114と第2接着層115との密着性を向上させる目的で、熱処理(エージング処理、熱ラミネーション等。)を施してもよい。また、インフレーション法又はキャスト法にて、第2接着層115とシーラント層116とが積層された多層フィルムを作成し、前記多層フィルムを前記積層体上に熱ラミネーションにより積層することで、第2接着層115を介してシーラント層116を積層してもよい。
【0131】
ウェットプロセスの場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂等の接着樹脂のディスパージョンタイプの接着樹脂液を前記積層体の腐食防止処理層114上に塗工し、接着樹脂の融点以上の温度で溶媒を揮発させ、接着樹脂を溶融軟化させて焼き付けを行った後、シーラント層116を熱ラミネーション等の熱処理により積層する。
【0132】
以上説明した工程(I)?(III)により、外装材101が得られる。
なお、外装材101の製造方法は、前記工程(I)?(III)を順次実施する方法には限定されない。例えば、工程(II)を行ってから工程(I)を行ってもよい。また、腐食防止処理層114の形成と、シーラント層116とを積層する押出ラミネーションをインラインで連続的に行ってもよい。また、金属箔層の両面に腐食防止処理層を設けてもよい。
【0133】
以上説明した本発明の第三実施形態の外装材は、基材層が、ポリアミドフィルムの外側にポリエステルフィルムを有する積層フィルムからなることで、優れた電解液耐性及び耐傷性が得られる。さらに、基材層は成型性に優れたポリアミドフィルムを有し、かつ外側のポリエステルフィルムの外表面に凹凸が形成されていることで、冷間成型の際に金型と外装材とが過度に密着することを抑制できることから、優れた成型性も得られる。
【0134】
なお、本発明の第三実施形態の外装材は、前記外装材101には限定されない。例えば、金属箔層の両面に腐食防止処理層が形成されていてもよい。金属箔層の基材層側にも腐食防止処理層が形成されていれば、金属箔層の基材層側が電解液で腐食されることを抑制することがさらに容易になる。
【0135】
本発明の実施形態の外装材により形成する蓄電デバイスとしては、例えば、パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、潜水艦、電気自動車、電動自転車等に用いられる蓄電デバイスが挙げられる。蓄電デバイスとしては、これらの用途に用いられるリチウムイオン電池が好ましい。
前記蓄電デバイスは、正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリード及びタブシーラントからなるタブを有する蓄電デバイス用内容物を、前記タブの一部が蓄電デバイスの外部に位置するように密封することで製造される。この蓄電デバイスは、本発明の実施形態の外装材を有する以外は、公知の形態を採用できる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
実施例1においては、本発明の第一実施形態に示す材料を用いた。
<使用材料>
実施例1で使用した材料を以下に示す。
[基材層11]
フィルムA-1:厚さ25μmのナイロン6フィルム。
【0137】
[第1接着層12]
接着剤B-1:ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)。
【0138】
[金属箔層13]
金属箔C-1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)。
【0139】
[腐食防止処理層14]
処理剤D-1:溶媒として蒸留水を使用し、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」。酸化セリウム100質量部に対して、リン酸塩は10質量部とした。
【0140】
[第2接着層15]
接着樹脂E-1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン。
【0141】
[シーラント層16]
フィルムF-1:厚さ40μmのポリオレフィンフィルム。
【0142】
[基材保護層17]
塗布液G-1:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-2:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-3:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-4:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートとを、モル比(NCO/OH)が3.0となるようにトルエンに溶解した塗布液。
【0143】
[蓄電デバイス用外装材の作成]
金属箔C-1の一方の面(金属箔層13の第1面)に処理剤D-1を塗布、乾燥して、金属箔層13の一方の面(金属箔層の第1面)に腐食防止処理層14を形成した。次いで、金属箔層13における腐食防止処理層14の反対面(金属箔層の第2面)に、ドライラミネート法により、接着剤B-1を用いてフィルムA-1を貼り合わせ、第1接着層12を介して基材層11を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側(金属薄層の第1面側)に押出し装置にて接着樹脂E-1を押出し、フィルムF-1を貼り合わせ、サンドイッチラミネーションすることで、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせた。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した。次いで、基材層11の外側の面(基材層の第2面)に、グラビアコート法にて塗布液G-1?G-4を塗布後、エージングを40℃、3日間行うことで基材保護層17を形成し、外装材を作成した。
【0144】
[耐電解液性の評価]
各例で得られた外装材の基材保護層表面に電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)に対し、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように調整して溶解した電解液)を数滴滴下し、25℃、65%RHの環境下で24時間放置し、電解液を拭き取り、基材保護層表面の変質を目視にて確認した。評価は、以下の基準に従って行った。
「優」:基材保護層表面の変質が見られなかった。
「不良」:基材保護層表面が変質した。
【0145】
[実施例1及び比較例1?3]
前記作成方法により、表1に示す構成の外装材を作成した。電解液耐性の評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1に示すように、アクリルポリオール(a2)と脂肪族系イソシアネート硬化剤とにより基材保護層を形成した実施例1の外装材は、ポリエーテルポリオールと芳香族系イソシアネート硬化剤との少なくとも一方を使用して基材保護層を形成した比較例1?3の外装材に比べて、優れた電解液耐性を有していた。
【0148】
以下、実施例2及び実施例3においては、本発明の第二実施形態に示す材料を用いた。
<使用材料>
実施例2及び実施例3で使用した材料を以下に示す。
[基材層11]
フィルムA-1:厚さ25μmのナイロン6フィルム。
【0149】
[第1接着層12]
接着剤B-1:ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)。
【0150】
[金属箔層13]
金属箔C-1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)。
【0151】
[腐食防止処理層14]
処理剤D-1:溶媒として蒸留水を使用し、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」。酸化セリウム100質量部に対して、リン酸塩は10質量部とした。
【0152】
[第2接着層15]
接着樹脂E-1:無水マレイン酸ポリプロピレン。
【0153】
[シーラント層16]
フィルムF-1:厚さ40μmのポリオレフィンフィルム。
【0154】
[基材保護層17]
塗布液G-11:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が20となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-12:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-13:三井化学社製のアクトコール(ポリエーテルポリオール)と、脂肪族系イソシアネート硬化剤の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が8となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-14:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、芳香族系イソシアネート硬化剤のトリレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が10となるようにトルエンに溶解した塗布液。
塗布液G-15:DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が1となるようにトルエンに溶解した塗布液。
各塗布液中のポリオールと硬化剤の比率は、形成される樹脂のガラス転移温度Tgが所望の温度となるように調整した。樹脂のガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定(DMS)により、1Hzでの損失正接(tanθ)のピーク温度(昇温速度5℃/分)として測定した。
【0155】
[蓄電デバイス用外装材の作成]
金属箔C-1の一方の面に処理剤D-1を塗布、乾燥して、金属箔層13の一方の面に腐食防止処理層14を形成した。次いで、金属箔層13における腐食防止処理層14の反対面に、ドライラミネート法により、接着剤B-1を用いてフィルムA-1を貼り合わせ、第1接着層12を介して基材層11を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側に押出し装置にて接着樹脂E-1を押出し、フィルムF-1を貼り合わせ、サンドイッチラミネーションすることで、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせた。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した。次いで、基材層11の外側の面に、グラビアコート法にて塗布液G-11?G-15を塗布した後、エージングを40℃、3日間行うことで基材保護層17を形成し、外装材を作成した。
【0156】
[耐電解液性の評価]
各例で得られた外装材の基材保護層表面に電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)に対し、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように調整して溶解した電解液)を数滴滴下し、25℃、65%RHの環境下で24時間放置し、電解液を拭き取り、基材保護層表面の変質を目視にて確認した。評価は、以下の基準に従って行った。
「優」:基材保護層表面の変質が見られなかった。
「不良」:基材保護層表面が変質した。
【0157】
[耐傷性の評価]
各例で得られた外装材の基材保護層の表面に対して、#0000スチールウール(日本スチールウール製)を150g/cm^(2)の荷重を加えながら10往復させて擦り、耐傷性を以下の基準で評価した。
「優」:基材保護層表面の傷の深さが1μm未満である。
「不良」:基材保護層表面の傷の深さが1μm以上である。
【0158】
[実施例2?3及び比較例4?6]
前記作成方法により、表2に示す構成の外装材を作成した。電解液耐性及び耐傷性の評価結果を表2に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
表2に示すように、アクリルポリオール(a2)と脂肪族系イソシアネート硬化剤で形成したガラス転移温度Tgが0?60℃のウレタン樹脂の基材保護層を有する実施例2、3の外装材は、優れた電解液耐性と耐傷性を兼ね備えていた。
一方、アクリルポリオール(a2)の代わりにポリエーテルポリオールを使用した比較例4の外装材は、電解液耐性が劣っていた。また、脂肪族系イソシアネート硬化剤の代わりに芳香族系イソシアネート硬化剤を使用した比較例5の外装材は、電解液耐性と耐傷性がともに劣っていた。また、アクリルポリオール(a2)と脂肪族系イソシアネート硬化剤を使用したものの、ガラス転移温度Tgが0?60℃の範囲外である比較例6の外装材は、耐傷性が劣っていた。
【0161】
以下、実施例4及び実施例5においては、本発明の第三実施形態に示す材料を用いた。
<使用材料>
実施例4及び実施例5で使用した材料を以下に示す。
[基材層111]
フィルムA-101:厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(Ny)フィルムとをドライラミネート法により積層した積層フィルムであり、二軸延伸PETフィルムの外表面にサンドブラストにより凹凸を形成したフィルム。前記外表面の静摩擦係数を傾斜法(JIS P8147)により測定したところ、0.3であった。前記フィルムの積層には、ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。
フィルムA-102:厚さ10μmのPETフィルムと厚さ20μmのNyフィルムの積層フィルムとを共押出しによって形成し、二軸延伸した後、二軸延伸PETフィルムの外表面にサンドブラストにより凹凸を形成した積層フィルム。前記外表面の静摩擦係数を傾斜法で測定したところ、0.3であった。共押出しにおける接着剤としては、無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレンを使用した。
フィルムA-103:厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムと厚さ15μmの二軸延伸Nyフィルムとをドライラミネート法で積層した積層フィルム。二軸延伸PETフィルムの静摩擦係数は0.5であった。接着剤として、フィルムA-101と同じ接着剤を使用した。
フィルムA-104:厚さ10μmの二軸延伸PETフィルムと厚さ5μmの二軸延伸Nyフィルムとをドライラミネート法で積層し、二軸延伸PETフィルムの外表面にサンドブラストにより凹凸を形成した積層フィルム。前記外表面の静摩擦係数を傾斜法で測定したところ、0.3であった。接着剤として、フィルムA-101と同じ接着剤を使用した。
【0162】
[第1接着層112]
接着剤B-101:ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)。
【0163】
[金属箔層113]
金属箔C-101:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)。
【0164】
[腐食防止処理層114]
処理剤D-101:酸化セリウムと、前記酸化セリウム100質量部に対して10質量部のポリリン酸ナトリウムとを、固形分濃度が10質量%になるように蒸留水に加えて調製した処理剤(酸化セリウムゾルを含む処理剤)。
【0165】
[第2接着層115]
接着樹脂E-101:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン。
【0166】
[シーラント層116]
フィルムF-101:厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム。
【0167】
[蓄電デバイス用外装材の作成]
金属箔C-101の一方の面(金属箔層113の第1面)に塗布剤D-101を塗布、乾燥して、金属箔層113の一方の面(金属箔層の第1面)に腐食防止処理層114を形成した。次いで、金属箔層113における腐食防止処理層114の反対面(金属箔層の第2面)に、接着剤B-101を用いたドライラミネート法により、フィルムA-101?A-104を、二軸延伸PETフィルムを外側にして貼り合わせ、第1接着層112を介して基材層111を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層114側(金属薄層の第1面側)に押出し装置にて接着樹脂E-101を押出し、フィルムF-101を貼り合わせ、サンドイッチラミネーションすることで、第2接着層115を介してシーラント層116を貼り合わせた。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した。
【0168】
[耐電解液性の評価]
各例で得られた外装材の基材保護層表面に電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)に対し、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように調整して溶解した電解液)を数滴滴下し、25℃、65%RHの環境下で24時間放置し、電解液を拭き取り、基材保護層表面の変質を目視にて確認した。評価は、以下の基準に従って行った。
「優」:基材保護層表面の変質が見られない。
「不良」:基材保護層表面が変質する。
【0169】
[耐擦傷性の評価]
#0000スチールウール(日本スチールウール製)に150g/cm^(2)の荷重をかけて外装材の外表面(基材層側)を10往復こすり、傷の程度を以下の基準で評価した。
「優」:擦り傷がつかない。
「良」:若干擦り傷がつく。
「不良」:多数の傷が発生する。
【0170】
[成型性評価]
得られた外装材に対し、絞り部分が80mm×100mmの冷間成型が可能な成型装置を使用し、絞り深さ6mmで冷間成型を行った。その後、冷間成型を行った部分の破断やピンホールを確認した。成型性の評価は以下の基準に従って行った。
優:破断やピンホールが無い。
不良:破断もしくはピンホールが発生する。
【0171】
[実施例4?5及び比較例7?8]
前記作成方法により、表3に示す構成の外装材を作成した。電解液耐性、耐擦傷性及び成型性の評価結果を表3に示す。
【0172】
【表3】

【0173】
表3に示すように、厚さ6?40μmの二軸延伸Nyフィルムの外側に、二軸延伸PETが積層され、かつ外表面に凹凸が形成された実施例4、5の外装材は、優れた電解液耐性、耐擦傷性及び成型性を兼ね備えていた。一方、基材層における二軸延伸PETフィルムの外表面に凹凸が形成されていない比較例7の外装材は、優れた電解液耐性と耐擦傷性とが得られるものの、充分な成型性が得られなかった。また、外側から二軸延伸PETフィルムと二軸延伸Nyフィルムとが積層され、外表面に凹凸が形成されているが、二軸延伸Nyフィルムの厚さが6μm未満である比較例8でも、優れた電解液耐性と耐擦傷性とが得られるものの、充分な成型性が得られなかった。
【符号の説明】
【0174】
1 蓄電デバイス用外装材
11 基材層
12 第1接着層
13 金属箔層
14 腐食防止処理層
15 第2接着層
16 シーラント層
17 基材保護層
101 蓄電デバイス用外装材
111 基材層
111a ポリエステルフィルム
111b ポリアミドフィルム
111c 第3接着層
111d 外装材の外表面
112 第1接着層
113 金属箔層
114 腐食防止処理層
115 第2接着層
116 シーラント層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス用外装材であって、
第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面に順次積層された、少なくとも第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層及びシーラント層を備えポリアミドフィルムからなる基材層と、
前記基材層の前記第2の面に積層され、水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールと、脂肪族系イソシアネート硬化剤とからなるウレタン樹脂で形成される基材保護層と、
を備えることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記ポリオールが有する水酸基に対する前記脂肪族系イソシアネート硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)を0.5?50とすることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記基材保護層の厚さが、1?10μmとされることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記基材保護層の外表面は、マット処理が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記基材保護層には、添加剤が配合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-27 
出願番号 特願2016-157013(P2016-157013)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 536- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 知絵  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 長谷山 健
▲辻▼ 弘輔
登録日 2017-07-14 
登録番号 特許第6172363号(P6172363)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 蓄電デバイス用外装材  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 高橋 詔男  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 鈴木 史朗  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
代理人 鈴木 史朗  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 伏見 俊介  
代理人 伏見 俊介  
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