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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
管理番号 1344845
異議申立番号 異議2017-701248  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-28 
確定日 2018-09-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6153592号発明「酢酸の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6153592号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。 特許第6153592号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6153592号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成27年9月2日(パリ条約による優先権主張 2015年7月1日 米国(US) 優先権主張 平成27年8月21日 日本国)に出願された特願2015-172680号を平成27年12月28日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月9日に特許権の設定登録がされ、同年6月28日にその特許公報が発行され、その後、同年12月28日に、特許異議申立人 株式会社ダイセル(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年2月21日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成30年7月9日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1の「40?80重量%の水を含む軽質液相」との記載を「40重量%から80重量%の水を含みかつ5重量%以下のヨウ化メチルを含む軽質液相」に訂正する。

2 目的の適否
上記訂正事項1は、酢酸の製造方法において、第1の塔からの低沸点オーバーヘッド蒸気流の凝縮流を二相に分離し形成した軽質液相のヨウ化メチルの含有量を限定したものといえるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 新規事項についての判断
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1の「5重量以下のヨウ化メチルを含む」ことに関しては、【0044】の表1の軽質液相の例に、ヨウ化メチルの濃度(重量%)として「5以下」との記載があるので、願書に添付した明細書に記載されているものと認められる。
その実際の記載箇所は、ヨウ化メチルを含む他の成分も含めた軽質液相の例として示されたもので、他の成分の濃度と共にヨウ化メチルの濃度が「10以下」「5以下」「1-5」と示されているが、その他、願書に添付した明細書に軽質液相のヨウ化メチルの濃度が互いに特定の数値範囲しかとれないことを記載した箇所がないことを考慮すると、必ずしも数値の組み合わせとして記載されているものだけでなく、それらを上下限の数値として用いた範囲についても記載されていたと判断することができるから、新たな技術的事項の導入とはならないといえる。

4 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記3で検討したとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内において、軽質液相のヨウ化メチル成分の組成の限定に関して、特許請求の範囲の減縮を行っただけであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

5 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?10について、請求項2?10はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項1?10に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?10]について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
前記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、請求項1?10に係る特許発明をそれぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明10」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。

「【請求項1】
酢酸を製造する方法であって、
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流とに分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1?3重量%の水、50wppm以下のヨウ化水素、及び酢酸を含む側流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して重質液相と、40?80重量%の水を含みかつ5重量%以下のヨウ化メチルを含む軽質液相を形成すること、
該重質液相の一部、該軽質液相の一部、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させること、ここで、該第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転され、
当該軽質液相の一部を当該反応系にリサイクルすること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、ここで、該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ること、及び
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床と接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
該側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該液体リサイクル流が、酢酸及び当該金属触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該側流中が1.1?2.5重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該還流比が0.1?0.35である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
当該第1の塔は、当該側流と当該第1の塔の塔頂との間に、5より多い理論段数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
当該重質液相の一部を当該反応系へリサイクルする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の塔で当該側流の少なくとも一部を蒸留して、50?75重量%の水を含む第2のオーバーヘッドをさらに得る、請求項1に記載の方法。」

第4 取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。

(1)訂正前の請求項1?10に係る特許は、当該請求項に係る発明が、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2?4号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)訂正前の請求項1?10に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)訂正前の請求項1?10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)訂正前の請求項1?10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)甲号証
甲第1号証:国際公開第2013/137236号
甲第2号証:特表2004-502747号公報
甲第3号証:特開平8-20555号公報
甲第4号証:平田光穂、頼実正弘 著「蒸留工学ハンドブック」(昭和41年2月20日初版発行)朝倉書店,p.352-353

2 当審が通知した取消理由の概要
(1)訂正前の請求項1?10に係る特許に対して平成30年2月21日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由:請求項1?10に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2?4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)引用刊行物
刊行物1:国際公開第2013/137236号(甲第1号証)
刊行物2:特表2004-502747号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平8-20555号公報(甲第3号証)
刊行物4:平田光穂、頼実正弘 著「蒸留工学ハンドブック」(昭和41年2月20日初版発行)朝倉書店,p.352-353(甲第4号証)

なお、刊行物3?4は、本件発明の優先日時点での技術常識を示すものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1?10は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

当審が通知した取消理由の判断

1 理由(特許法第29条第2項)について

(1)刊行物の記載
ア 刊行物1
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物1には以下の記載がある。
(1a)「図1に示すプロセス(又は製造装置)は、触媒又は触媒系及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分と低揮発相成分とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッドと塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4と、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を蒸留し、塔頂からの第2のオーバーヘッドと、塔底からの缶出流と、側部からのサイドカット流(精製酢酸流)とに分離するための第2の蒸留塔(脱水塔又は精製塔)5と、前記コンデンサC4の凝縮液(水相及び有機相)から不純物を除去するための不純物除去系(第3の蒸留塔6,水抽出塔(水抽出器)7及び第4の蒸留塔8)とを備えている。」([0032])

(1b)「反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い揮発性成分[低沸成分(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、メタノール、水、ジメチルエーテルなど)又は低沸不純物(ヨウ化水素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド)など]、及び酢酸よりも沸点の高い低揮発性成分[金属触媒成分(ロジウム触媒、及び助触媒としてのヨウ化リチウム)又は高沸不純物(プロピオン酸、2-エチルクロトンアルデヒドなどのアルデヒド縮合物、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C_(6-12)アルキルなどの副反応生成物など)など]が含まれる。
そこで、反応混合物(反応混合物の一部)を、供給ライン11を通じて反応器1からフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽、フラッシュ蒸留塔)2に連続的に供給してフラッシュ蒸留し、フラッシュ蒸発槽2の塔頂部又は上段部からの揮発相成分(主に、生成した酢酸、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、プロピオン酸、アセトアルデヒド、副生したヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離する。
低揮発相成分(触媒液又は缶出液)は、リサイクルライン21を通じて反応器1にリサイクルしてもよいが、この例では、蒸発槽2の底部からのリサイクルライン21を通じて低揮発相成分(触媒液又は缶出液)を連続的に抜き出して熱交換器(コンデンサC6)で除熱又は冷却し、冷却された低揮発相成分(触媒液)を反応器1にリサイクルしている。そのため、反応器1の温度コントロールが容易である。なお、前記低揮発相成分(触媒液)は、通常、前記金属触媒成分の他、蒸発せずに残存した酢酸、ヨウ化メチル、水、酢酸メチルなどを含んでいる。」([0035][0036][0037])

(1c)「揮発相成分(又は揮発相)は、供給ライン22により、棚段塔などの第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3の高さ方向の中央部よりも下部に供給され、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3は、供給ライン22を通じて供給された揮発相成分(又は揮発相)の一部を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出する第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と、塔底から留出する缶出流(主に、水、酢酸、飛沫同伴などにより混入した触媒(ヨウ化リチウムなど)、プロピオン酸、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C _(6-12) アルキル、アルデヒド縮合物などの高沸不純物などの高沸点成分を含む流分)と、側部(供給ライン22による供給部よりも上部)からのサイドカット流(主に、酢酸を含む第1の液状流分(粗酢酸流分))とに分離する。この例では、サイドカット流(粗酢酸流)は供給ライン36を通じて第2の蒸留塔5に供給され、塔底からの缶出流はリサイクルライン31を通じて反応器1に与えられている。なお、塔底からの缶出流の一部又は全部は、ライン(図示せず)を通じて、蒸発槽2にリサイクルしてもよい。」([0039])

(1d)「コンデンサC3で凝縮した凝縮液の一部は、リサイクルライン41を通じて反応器1にリサイクルし、凝縮液分の一部は、還流ライン42を通じて第1の蒸留塔3にリサイクルして還流している。より詳細には、コンデンサC3で冷却して凝縮した第1のオーバーヘッドの凝縮液は、デカンタ4内で、水、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化水素及びアセトアルデヒドなどを含む水相(上相又は軽質相)と、ヨウ化メチル、酢酸メチルなどを含む有機相(下相又は重質相)とに分液し、水相(上相)を還流ライン42により第1の蒸留塔3に供給して還流し、有機相(下相)をリサイクルライン41により反応器1へリサイクルしている。」([0046])

(1e)「第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)は、供給ライン36により第2の蒸留塔(脱水塔又は精製塔)5に供給されて蒸留され、塔頂からライン52を通じて留出する第2のオーバーヘッド(水などの低沸成分を含む第2の低沸点成分)と、塔底からライン51を通じて留出する缶出流(水、プロピオン酸などの高沸点カルボン酸、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C _(6?12) アルキル、アルデヒド縮合物などを含む高沸成分(高沸不純物))と、側部(塔底と供給ライン36による供給部との間)からライン55を通じて留出するサイドカット流(酢酸を含む第2の液状流分(精製した高純度の酢酸流))とに分離している。」([0048])

(1f)「周期表第8族金属触媒としては、例えば、ロジウム触媒、イリジウム触媒など(特に、ロジウム触媒)が例示できる。触媒は、ハロゲン化物(ヨウ化物など)、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩、錯体(特に、反応液中で可溶な形態、例えば、錯体)の形態で使用できる。このようなロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI_(3) 、RhI_(2) (CO)_(4) ]、[Rh(CO)_(2) I_(2) ]など)、ロジウムカルボニル錯体などが例示できる。このような金属触媒は一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して10?5000ppm(重量基準、以下同じ)、特に200?3000ppm(例えば、500?1500ppm)程度である。
助触媒又は促進剤としては、イオン性ヨウ化物又はヨウ化金属が使用され、低水分下でのロジウム触媒の安定化と副反応抑制のために有用である。イオン性ヨウ化物(又はヨウ化金属)は、反応液中で、ヨウ素イオンを発生可能であればよく、例えば、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)などが挙げられる。なお、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウムなど)は、カルボニル化触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定剤としても機能する。これらの助触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの助触媒のうちヨウ化リチウムが好ましい。反応器の液相系(反応液)での助触媒(ヨウ化金属など)の濃度は、液相全体に対して、例えば、1?25重量%、好ましくは2?22重量%、さらに好ましくは3?20重量%程度である。
前記促進剤としては、ヨウ化メチルが利用される。反応器の液相系(反応液)でのヨウ化メチルの濃度は、液相全体に対して、例えば、1?20重量%、好ましくは5?20重量%、さらに好ましくは6?16重量%(例えば、8?14重量%)程度である。
反応混合液は、通常、酢酸とメタノールとの反応により生成した酢酸メチルを含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応混合液全体の0.1?30重量%、好ましくは0.3?20重量%、さらに好ましくは0.5?10重量%(例えば、0.5?6重量%)程度の割合であってもよい。
反応は溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、通常、生成物である酢酸を用いる場合が多い。
反応系の水濃度は、低濃度であってもよい。反応系の水濃度は、反応系の液相全体に対して、例えば、15重量%以下(例えば、0.1?12重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0.1?8重量%)、さらに好ましくは0.1?5重量%(例えば、0.5?3重量%)程度であり、通常1?15重量%(例えば、2?10重量%)程度であってもよい。」([0065]?[0070])

(1g)「なお、図示する例では、有機相(重質相)を反応器1へリサイクルし、水相(軽質相)を第1の蒸留塔3にリサイクルして還流しているが、有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器1へリサイクルしてもよく、第1の蒸留塔3にリサイクルしてもよい。」([0105])

(1h)「 (比較例1) 図2に示す酢酸の連続製造プロセスにおいて、メタノールと一酸化炭素とをカルボニル化反応器で連続的に反応させ、前記反応器からの反応混合物をフラッシャーに連続的に供給し、フラッシュ蒸留により、低揮発相成分(ロジウム触媒、ヨウ化リチウム、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、およびヨウ化水素を少なくとも含む缶出成分)と、揮発相成分(液化したガス状成分、液温135℃)とに分離し、この揮発相成分を第1の蒸留塔に供給した。なお、補給ライン34bおよび35bは利用しなかった。また、揮発相成分の組成は、ヨウ化メチル(MeI)38.2重量%、酢酸メチル(MA)0.3重量%、水(H _(2) O)6.5重量%、ヨウ化水素(HI)5000ppm(重量基準)、酢酸54.5重量%を含んでいる(なお、酢酸の含有量は、100重量%から酢酸以外の成分組成の総和を減算することにより算出した。以下同じ)。
揮発相成分100重量部を第1の蒸留塔(実段:20段、仕込段:下から2段)に供給し、ゲージ圧150KPA、塔底温度140℃、塔頂温度115℃、軽質相還流比3で蒸留し、デカンタで分液した水相(軽質相)5重量部及び有機相(重質相)38重量部を反応器にリサイクルした。なお、第1の蒸留塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、ヨウ化メチル(MeI)63.8重量%、酢酸メチル(MA)0.6重量%、水(H _(2) O)23.3重量%、ヨウ化水素(HI)440ppm、酢酸12.3重量%であり、水相(軽質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)2.6重量%、酢酸メチル(MA)0.3重量%、水(H _(2) O)67.0重量%、ヨウ化水素(HI)900ppm、酢酸30.0重量%であり、有機相(重質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)96重量%、酢酸メチル(MA)0.7重量%、水(H _(2) O)0.3重量%、ヨウ化水素(HI)200ppm、酢酸3.0重量%であった。
第1の蒸留塔のサイドカット(サイドカット段:下から4段)から酢酸を含むサイドカット流54重量部と、塔底から飛沫同伴で含有した触媒を含む缶出流3重量部との割合で抜取り、缶出流は反応系にリサイクルし、サイドカット流は第2の蒸留塔に供給して脱水精製した。なお、サイドカット流の組成は、MeIが2.9重量%、MAが0.03重量%、H _(2 )Oが5.3重量%、HIが970ppm、酢酸が90.8重量%であった。なお、揮発相成分、水相(軽質相)及び有機相(重質相)、サイドカット流及び缶出流などの流体の「重量部」は単位時間(1時間)当たりの流量を示す(以下、同じ)。
このような連続反応プロセスにおいて、第1蒸留塔の仕込段よりも1段上(3段)と仕込段よりも1段下のボトム、及び塔頂部(19段)に、以下のテストピースを入れて、100時間保持して腐食テストを行い、テスト前後のテストピースの重量を測定し、腐食量を求めた。測定した腐食量(減少した重量)及びテストピースの面積に基づいて、一年間あたりのテストピースの腐食速度(厚みの減肉量)を厚みmmに換算し、単位「mm/Y」で示した。
[テストピース]
HB2:小田鋼機(株)製、ハステロイB2(ニッケル基合金)
HC:小田鋼機(株)製、ハステロイC(ニッケル基合金)
SUS316L:ウメトク(株)製、サス316ローカーボン(ステンレス鋼)
(比較例2)
仕込み液(揮発相成分)中の水濃度を4重量%に調整して第1の蒸留塔に供給し、この水濃度に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。
なお、揮発相成分の組成は、MeIが38.5重量%、MAが0.3重量%、H _(2) Oが4.0重量%、HIが5000ppm、酢酸が56.7重量%であった。また、蒸留は、軽質相還流比5で行い、軽質相3.3重量部、重質相38.5重量部を反応系にリサイクルした。第1の蒸留塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、MeIが64.3重量%、MAが0.6重量%、H _(2) Oが23.3重量%、HIが470ppm、酢酸11.8重量%であり、水相(軽質相)の組成は、MeIが2.6重量%、MAが0.3重量%、H _(2) Oが68.0重量%、HIが1200ppm、酢酸が29.0重量%であり、有機相(重質相)の組成は、MeIが96重量%、MAが0.7重量%、H _(2) Oが0.3重量%、HIが90ppm、酢酸が3.0重量%であった。第1の蒸留塔からは、酢酸を含むサイドカット流55.2重量部及び缶出流3重量部との割合で抜取った。サイドカット流の組成は、MeIが2.6重量%、MAが0.04重量%、H _(2) Oが2.8重量%、HIが820ppm、酢酸が93.6重量%であり、缶出流の組成は、MeIが0重量%、MAが0.03重量%、H _(2) Oが2.6重量%、HIが800ppm、酢酸が97.1重量%であった。なお、第1の蒸留塔での塔頂温度は115℃であり、塔底温度は比較例1と同じであった。
(比較例3)
仕込み液(揮発相成分)中の酢酸メチル濃度を10重量%に調整して第1の蒸留塔に供給し、この酢酸メチル濃度に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。しかし、上記仕込み液(揮発相成分)での運転では、軽質相と重質相との分液性が悪く、両相が混相となったり1相化現象が発生した結果、数時間運転後に不安定となり、長時間の運転が不可能であった。
(実施例1?4)
仕込み液(揮発相成分)中の酢酸メチル及び水濃度を変化させて第1の蒸留塔に供給し、これらの酢酸メチル及び水濃度の変化に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。
実施例及び比較例での各運転条件を表1に示し、腐食テストの結果を表2に示す。表2中の数値の単位は腐食速度「mm/Y」である。

[表1]

」([0115]?[0124])

(1i)「本発明は、蒸留塔などの装置の腐食を抑制しつつ、高品質の酢酸を製造するのに有用な酢酸の製造方法に関する。
背景技術
酢酸の製造方法に関し、水の存在下、周期表第8族金属触媒(ロジウム触媒、イリジウム触媒など)、イオン性ヨウ化物(例えば、ヨウ化リチウムなど)およびヨウ化メチルを用いて、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応させて酢酸を製造する方法が工業的に採用されている。この方法では、通常、メタノールのカルボニル化により生成した反応混合物をフラッシュ蒸留し、揮発成分(揮発性流分)を第1の蒸留塔で蒸留し、塔頂からのオーバーヘッドと、塔底からの重質成分とに分離し、第1の蒸留塔の側流(サイドカット流)として酢酸流を流出させている。また、第1の蒸留塔からのオーバーヘッドを冷却して凝縮し、主に水及びアセトアルデヒドなどを含む水相と、主にヨウ化メチルなどを含む有機相とに分離している。さらに、酢酸流を第2の蒸留塔に供して水分などを除去し、酢酸流を側流(サイドカット流)又は缶出流の形態で分離し、酢酸流をさらに精製している。なお、第2の蒸留塔は、主に脱水を目的とする場合が多く、第2の蒸留塔の塔頂からのオーバーヘッドの水分含有量が少ないため、第2の蒸留塔の塔頂からのオーバーヘッドは冷却・凝縮しても二相(水相と有機相)に分液することは少ない。このような方法において、第1及び第2の蒸留塔内にヨウ化水素が蓄積すると、ヨウ化水素が混入して製品酢酸の品質を低下させるとともに、第1及び第2の蒸留塔などの装置が腐食する。
・・・
特開2006-160645号公報(特許文献5)には、ヨウ化水素、水、メタノール、ヨウ化メチル、酢酸及び酢酸メチルを含む混合液を蒸留して酢酸を製造する方法であって、蒸留塔の水分濃度が5重量%以下の条件で前記混合液を蒸留してヨウ化水素を含む留分を塔頂から留出させ、酢酸をサイドカット又は缶出により留出させ、ヨウ化水素濃度を50ppm以下に低減して酢酸を製造する方法が開示されている。この方法では、蒸留系内の水分濃度5重量%以下で蒸留することにより、蒸留系内でのヨウ化水素の濃縮を抑制できる。」([0001][0002][0008])

(1j)「第2の蒸留塔5の塔頂又は上段部からのオーバーヘッドは、通常、コンデンサC4で凝縮され、凝縮液は、反応器1及び/又は第2の蒸留塔5に戻してもよく、凝縮液が所定量の水分を含有し、分液可能であれば、前記と同様に、水と有機相とに分離して反応器1,第1の蒸留塔3及び/又は第2の蒸留塔5にリサイクルしてもよい。水は、第2の蒸留塔5で低沸成分として分離してもよく、分離した水は、反応器1又は水抽出器7に与えてもよい。なお、高沸成分(プロピオン酸など)などの高沸点留分(第2の高沸点成分)は、塔底又は塔下段部から缶出し、必要により反応器1に戻してもよく、系外に排出してもよい。また、第2のサイドカット流(精製酢酸流)には、必要により、さらに蒸留など精製工程に供してもよい。」([0111])

イ 刊行物2
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物2には以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】
メタノールのカルボニル化によって酢酸を製造するための反応システムの中の成分濃度のプロセスコントロールを行う方法であって、
反応システムの中の反応器の下流から反応システムサンプルを集め、サンプルは水、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、炭化水素、プロピオン酸、ヨウ化水素およびそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの成分を含んでおり;
前記成分の少なくとも一つの濃度を赤外分析器で測定し;そして
測定された濃度に応答して反応システムの中の、反応器、下流の塔または下流の移送ラインの少なくとも一つの中で、反応システムの中の成分濃度を調節する;
ことを含む前記方法。」

(2b)「【請求項9】
サンプルを乾燥塔への供給流から集め、そしてサンプル中の水の濃度を赤外分析器で測定し、そして測定された水濃度に応答してライトエンド塔へのライトエンド回収デカンター塔からの軽質相の供給量および反応器への水の供給量の少なくとも一つを調節することを含む、請求項1の方法。」

(2c)「【0023】
ライトエンド塔30へ還流として戻される軽質相44の部分もまた、反応器10と下流の乾燥塔50との間で水充填をバランスさせる働きをする。流れ170を経由する還流が増加しそして流れ180を経由する反応器10への再循環が減少することによって、あまりに多量の水がライトエンド塔30へ戻されると、結局は、より多量の水がサイド引出生成物引取装置の中へ取り出され、次いで流れ140を経由して乾燥塔50へ送られる。乾燥塔50の中の水充填は塔が溢れそしてその水除去機能を遂行しないであろう程度にまで増加させられることがある。逆に、あまりに多量の水が再循環流180を通って反応器10へ送られるならば、乾燥塔50は臨界的に未充填になるかもしれず、そしてヨウ化ヘキシルのような不純物が製品流200の中へ入り込むのを許すかもしれない。本発明の分析能力のもう一つの例はサイド引出流140の中の酢酸および水の濃度が維持されることを確実にすることによってライトエンド塔30をコントロールすることである。コントロールスキームの一例は酢酸と水の分析に基づいてライトエンド塔再沸器温度を単独で又は塔還流170と組合せて調節することである。」

(2d)「【0029】
2.ライトエンド塔底におけるプロセスコントロール
ヨウ化水素(HI)は約5重量%より大きい水分を有する酢酸溶液中で高沸点の共沸混合物を形成する。水濃度が約5重量%未満に降下すると、共沸の破壊およびHIの揮発が起こり始めるであろう。かかる揮発は反応セクションに戻る塔底流150の中のより少ないHIにつながるであろう、従って、反応器のヨウ化物インベントリーに悪影響を与えるかもしれない。揮発したHIは今や主として、乾燥塔50へ供給する未乾燥酢酸のライトエンドサイド引出流140の一部になるであろう。HOAc製造に一般に使用されるプロセス装置は成分に対して実質的に不活性であるが、システム中のHI濃度レベルが過度に高いレベルに達すると腐食されるか又はそうでなくても悪影響を受けるであろう。従って、この供給の中に有意な量のHIが存在するということは精製器の腐食と最終酢酸製品のヨウ化物汚染という両方の結果を生じる。従って、ライトエンド塔30の底部34における水分レベルは約5重量%(wt.%)(約3molar)の最小限濃度に維持されることは反応器の性能と精製セクションの性能の両方に関して臨界的である。
【0030】
HIと水は拡張中間赤外(extended mid-infrared)(4000?7000cm^(-1))または中間赤外(mid-infrared)(400?4000cm^(-1))どちらかの分光分析法によって正確に測定することができる。従って、ライトエンド塔底34のオンライン分析は水濃度が臨界的に低レベルに到達するであろう時を示して塔混乱を回避するのを助ける働きをするであろう。」

ウ 刊行物3
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物3には以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】 ロジウム触媒、ヨウ化物塩およびヨウ化メチルの存在下、連続的にメタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテルの内少なくとも一成分と一酸化炭素を反応させて酢酸および/または無水酢酸を製造する方法において、反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に保ち、反応を行い、得られる液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させることを特徴とする高純度酢酸および/または高純度無水酢酸の製造法。」

(3b)「【0025】従って、本発明においては、カルボニル化反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に維持することで得られた液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させる。強酸性カチオン交換樹脂と接触させる液は、酢酸および/または無水酢酸を主成分とする液であればどの様な液であってもかまわないが、樹脂の保護のためには可能な限り、ヨウ化メチル濃度の低いプロセス液を用いるのが好ましい。本発明においては、ライン17から蒸留など従来公知のプロセスを経て得た酢酸および/または無水酢酸を上記特定の強酸性カチオン交換樹脂40と接触させることで、そのまま蒸留など後工程を加えなくても高純度の酢酸および/または無水酢酸が得られる。また、蒸留など従来公知のプロセスを経る前に強酸性カチオン交換樹脂40と接触させてもよい。尚、必要に応じて、ライン17からの酢酸および/または無水酢酸は強酸性カチオン交換樹脂40と接触させた後に、蒸留等の操作を行なっても良い。」

エ 刊行物4
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物4には以下の記載がある。
(4a)353頁の表2.5実装置の段効率には、酢酸-水系の塔の段効率として76%,65%の例が記載されている。

(2)刊行物1に記載された発明
上記摘記事項(1a)には、プロセスとして、触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分と低揮発相成分とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッドと塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4と、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を蒸留し、精製酢酸流を分離するものが記載され、上記摘記事項(1b)には、反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い揮発性成分[低沸成分(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、メタノール、水、ジメチルエーテルなど)又は低沸不純物(ヨウ化水素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド)など]、及び酢酸よりも沸点の高い低揮発性成分[金属触媒成分(ロジウム触媒、及び助触媒としてのヨウ化リチウム)又は高沸不純物(プロピオン酸、2-エチルクロトンアルデヒドなどのアルデヒド縮合物、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C6-12アルキルなどの副反応生成物など)など]が含まれること及び、フラッシュ蒸発槽2の塔頂部又は上段部からの揮発相成分(主に、生成した酢酸、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、プロピオン酸、アセトアルデヒド、副生したヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離することが記載され、上記摘記事項(1c)には、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3の高さ方向の中央部よりも下部に供給され、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3で、供給された揮発相成分(又は揮発相)の一部を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出する第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と、側部(供給ライン22による供給部よりも上部)からのサイドカット流(主に、酢酸を含む第1の液状流分(粗酢酸流分))とに分離することが記載され、上記摘記事項(1d)には、第1のオーバーヘッドの凝縮液の一部を反応器にリサイクルし、一部を第1の蒸留塔にリサイクルして還流することが記載され、上記摘記事項(1g)には、有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器1へリサイクルしてもよいことが記載され、上記摘記事項(1e)には、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)は、供給ライン36により第2の蒸留塔(脱水塔又は精製塔)5に供給されて蒸留され、精製した高純度の酢酸流を分離することが記載され、基本的に同じプロセスで酢酸を製造している具体例である上記摘記事項(1h)には、酢酸の連続製造プロセスにおいて、実施例4として、サイドカット流、塔頂流、還流、上相(軽質相)流、下層(重質相)流に関して、サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm、ヨウ化メチル2.3重量部、酢酸メチル1.6重量部、塔頂流の流量が62.2、水が20.9重量部、還流の流量が16.8、軽質相の流量が1.40部、水が69.1重量部、ヨウ化メチル5.1重量部、重質相の流量が44部であることが示されている。

したがって、刊行物1には、「触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、金属触媒成分、ヨウ化リチウムが含まれ、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分(主に、生成した酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒド、ヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒などの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッドと塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4とを有し、第1のオーバーヘッドの凝縮液の一部を第1の蒸留塔にリサイクルして還流し、凝縮液の一部である有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器へリサイクルし、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を蒸留し、精製酢酸流を分離するもので、サイドカット流、塔頂流、還流、上相(軽質相)流、下層(重質相)流に関して、サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm、ヨウ化メチル2.3重量部、酢酸メチル1.6重量部、塔頂流の流量が62.2、水が20.9重量部、還流の流量が16.8、軽質相の流量が1.40部、水が69.1重量部、ヨウ化メチル5.1重量部、重質相の流量が44部である酢酸の連続製造プロセス」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されているといえる。

(3)対比・判断
(3-1)本件特許発明1について
ア 対比
刊行物1発明との対比
本件特許発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「酢酸の連続製造プロセス」は、本件特許発明1の「酢酸を製造する方法」に相当し、刊行物1発明の「触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、・・・反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分・・・と、低揮発相成分・・・とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2」を用いることは、本件特許発明1の、「反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること」に相当し、刊行物1発明の「反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、金属触媒成分、ヨウ化リチウムが含まれ」ることは、本件特許発明1の「反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること」に相当する。
そして、刊行物1発明の「フラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2」において、「反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分(主に、生成した酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒド、ヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒などの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離する」ことは、本件特許発明1の「フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること」に、相当している。
また、刊行物1発明の「第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3」において、「前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離する」及び「塔頂流の水が20.9重量部」であること、及び「サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm」であることは、アセトアルデヒドは、本件特許発明における過マンガン酸還元化合物(PRC)であるので、本件特許発明1の「第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1?3重量%の水、50wppm以下のヨウ化水素、及び酢酸を含む側流とを得ること」に該当する。
さらに、刊行物1発明の「デカンタ4」において、「第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液する」こと及び軽質相の「水が69.1重量部」であることは、本件特許発明1の「低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して重質液相と、40?80重量%の水を含」む「軽質液相を形成すること」に該当する。
刊行物1発明は、塔頂流の流量が62.2、還流の流量が16.8で運転されているので還流比は0.27であり、刊行物1発明の「第1のオーバーヘッドの凝縮液の一部を第1の蒸留塔にリサイクルして還流し」「還流比が0.27であ」ることは、本件特許発明1の「重質液相の一部、該軽質液相の一部、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させること、ここで、該第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転され」ることに該当する。
刊行物1発明の「有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器へリサイクル」することは、本件特許発明1の「軽質液相の一部を当該反応系にリサイクルすること」に相当する。
そして、刊行物1発明の「第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を、第2の蒸留塔5において蒸留し、精製酢酸流を分離する」ことは、本件特許発明1の「第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ること」に相当する。

したがって、本件特許発明1と刊行物1発明とは、「酢酸を製造する方法であって、反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1?3重量%の水、50wppm以下のヨウ化水素、及び酢酸を含む側流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して重質液相と、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該重質液相の一部、該軽質液相の一部、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させること、ここで、該第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転され、
当該軽質液相の一部を当該反応系にリサイクルすること、
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、前記方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御して側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及びリサイクル率の制御は、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合はリサイクル率を増加させることを含みと特定されているのに対して、刊行物1発明は、軽質液相を反応系へのリサイクルしており、側流中の水濃度が1.2重量%で、側流中のヨウ化水素濃度が5ppmであるものの、リサイクル率の制御に関して、その内容と手段として、水濃度を1?3重量%に維持し、側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合はリサイクル率を増加させることとの特定のない点
相違点2:本件特許発明1は、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、精製酢酸生成物をガード床と接触させることが特定されているのに対して、刊行物1発明では、そのような特定のない点
相違点3:本件特許発明1は、軽質液相が5重量%以下のヨウ化メチルを含むとされているのに対して、刊行物1発明では、軽質液相のヨウ化メチルが5.1重量部である点

相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1の判断について
刊行物1発明では、軽質液相を反応系へ一部リサイクルしてはいるが、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御して側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及びリサイクル率の制御は、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合はリサイクル率を増加させるとの直接の記載はない。
軽質液相をリサイクルして反応器に戻している以上、何らかの量の調整がなければ、継続して処理が行えないことになり、何らかのリサイクルする割合の調整が行われていることは理解できる。そして、刊行物1には、ヨウ化水素の蓄積混入が製品酢酸の品質低下、塔の腐食につながること、蒸留塔の水分濃度が5%以下の条件下でサイドカットのヨウ化水素濃度を50ppm以下に低減してヨウ化水素の濃縮を抑制することが背景技術として認識されていたことが記載されてはいる(摘記(1i)参照)。

しかしながら、刊行物1には、サイドカット流のヨウ化水素濃度と蒸留塔の水の濃度が何らかの関連をしていることが示唆されているだけで、還流比を特定の範囲にすることを前提に、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御することにより水の濃度を1?3重量%とし、ヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持することは一切記載されていない。
また、刊行物2摘記(2a)(2b)には、「【請求項1】
メタノールのカルボニル化によって酢酸を製造するための反応システムの中の成分濃度のプロセスコントロールを行う方法であって、反応システムの中の反応器の下流から反応システムサンプルを集め、サンプルは水、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、炭化水素、プロピオン酸、ヨウ化水素およびそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの成分を含んでおり;前記成分の少なくとも一つの濃度を赤外分析器で測定し;そして測定された濃度に応答して反応システムの中の、反応器、下流の塔または下流の移送ラインの少なくとも一つの中で、反応システムの中の成分濃度を調節する;ことを含む前記方法。」や「【請求項9】
サンプルを乾燥塔への供給流から集め、そしてサンプル中の水の濃度を赤外分析器で測定し、そして測定された水濃度に応答してライトエンド塔へのライトエンド回収デカンター塔からの軽質相の供給量および反応器への水の供給量の少なくとも一つを調節することを含む、請求項1の方法。」と記載があるものの、具体的記載としては、「【0023】ライトエンド塔30へ還流として戻される軽質相44の部分もまた、反応器10と下流の乾燥塔50との間で水充填をバランスさせる働きをする。流れ170を経由する還流が増加しそして流れ180を経由する反応器10への再循環が減少することによって、あまりに多量の水がライトエンド塔30へ戻されると、結局は、より多量の水がサイド引出生成物引取装置の中へ取り出され、次いで流れ140を経由して乾燥塔50へ送られる。乾燥塔50の中の水充填は塔が溢れそしてその水除去機能を遂行しないであろう程度にまで増加させられることがある。逆に、あまりに多量の水が再循環流180を通って反応器10へ送られるならば、乾燥塔50は臨界的に未充填になるかもしれず、そしてヨウ化ヘキシルのような不純物が製品流200の中へ入り込むのを許すかもしれない。本発明の分析能力のもう一つの例はサイド引出流140の中の酢酸および水の濃度が維持されることを確実にすることによってライトエンド塔30をコントロールすることである。コントロールスキームの一例は酢酸と水の分析に基づいてライトエンド塔再沸器温度を単独で又は塔還流170と組合せて調節することである。」(下線は当審にて追加。以下同様。)と記載されるだけで、制御の内容としては、反応器と下流の乾燥塔の間で水充填をバランスさせることや、酢酸と水の分析に基づいてライトエンド塔再沸器温度を調節することであって、第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転されることを前提に、軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、ここで、該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることの示唆はない。

したがって、刊行物1発明において、側流中の水及びヨウ化水素の量を、「サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm」のものを用いていること、背景技術として、「蒸留塔の水分濃度が5%以下の条件下でサイドカットのヨウ化水素濃度を50ppm以下に低減してヨウ化水素の濃縮を抑制すること」が知られていることを考慮しても、第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転されることを前提に、軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、ここで、該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることまで、制御の内容を特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

(イ)相違点2の判断について
刊行物1には、「第2のサイドカット流(精製酢酸流)には、必要により、さらに蒸留など精製工程に供してもよい」((1j)参照)との記載はあるものの、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、精製酢酸生成物をガード床と接触させることの直接の記載はない。
しかしながら、刊行物3摘記(3a)には、「【請求項1】 ロジウム触媒、ヨウ化物塩およびヨウ化メチルの存在下、連続的にメタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテルの内少なくとも一成分と一酸化炭素を反応させて酢酸および/または無水酢酸を製造する方法において、反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に保ち、反応を行い、得られる液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させることを特徴とする高純度酢酸および/または高純度無水酢酸の製造法。」において、摘記(3b)のように、
「【0025】従って、本発明においては、カルボニル化反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に維持することで得られた液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させる。強酸性カチオン交換樹脂と接触させる液は、酢酸および/または無水酢酸を主成分とする液であればどの様な液であってもかまわないが、樹脂の保護のためには可能な限り、ヨウ化メチル濃度の低いプロセス液を用いるのが好ましい。本発明においては、ライン17から蒸留など従来公知のプロセスを経て得た酢酸および/または無水酢酸を上記特定の強酸性カチオン交換樹脂40と接触させることで、そのまま蒸留など後工程を加えなくても高純度の酢酸および/または無水酢酸が得られる。」との記載があるのであるから、刊行物1発明において、精製酢酸流をさらに精製するに際して、イオン交換樹脂を用い、該樹脂保護のため、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合に、精製酢酸生成物をイオン交換樹脂が内部に設けられたガード床と接触させることを特定する程度のことは、当業者が容易になし得る。

(ウ)相違点3の判断について
刊行物1発明では、軽質液相のヨウ化メチルの含量は、認定の根拠となった実施例4において、5.1重量%と特定されており、もし他の実施例の値に変更する場合には、実施例4の仕込み、サイドカット、塔頂、塔底、還流、下相(重質相)の成分組成の変更も当然検討することになり、本件特許発明1との一致点、相違点の認定も変更されることになる。
各実施例は、各運転条件を一体の条件として記載したものであり、一部のみを変更することは、その変更に関する直接の明記がない限り示唆されているとはいえない。
したがって、前記実施例4において、前記して示した他の箇所における成分組成は変更しないで、軽質液相のヨウ化メチルの含量のみだけを単純に5重量%以下に変更することはできないといえる。
また、刊行物1には、どのようにすれば、ヨウ化メチル含量を5重量%以下にできるのかの手段も記載されているとはいえない。
その他、刊行物1発明において、ヨウ化メチルの濃度を変更する動機付けとなる記載は刊行物1には記載も示唆もなく、当業者が容易になし得るものとはいえない。

(エ)効果について
本件特許発明1は、【0023】の記載からみて、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御することで、第1の塔に追加の成分を導入することなく、第1の塔に送られる蒸気生成物供給における所定濃度を維持することなく側流中の水及びヨウ化水素濃度を独立して制御できるとの効果を奏しているといえる。
刊行物1発明において、背景技術として、ヨウ化水素濃度は水分量と何らかの関係をもつことが知られているからといって、本件特許発明1の上記効果は当業者の予測を超える顕著なものといえる。

ウ 小括
本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-2)本件特許発明2について
ア 対比・判断
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する」ことを限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明2は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-3)本件特許発明3について
ア 対比・判断
本件特許発明3は、本件特許発明1において、「液体リサイクル流が、酢酸及び当該金属触媒を含む」ことをさらに限定した発明であるから、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明3は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-4)本件特許発明4について
ア 対比・判断
本件特許発明4は、本件特許発明1において、「側流中が1.1?2.5重量%の水を含む」ことをさらに限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明4は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-5)本件特許発明5について
ア 対比・判断
本件特許発明5は、本件特許発明1において、「還流比が0.1?0.35である」ことをさらに限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明5は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-6)本件特許発明6について
ア 対比・判断
本件特許発明6は、本件特許発明1において、「側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む」ことをさらに限定した発明であるから、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-7)本件特許発明7について
ア 対比・判断
本件特許発明7は、本件特許発明1において、「側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む」ことをさらに限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明7は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-8)本件特許発明8について
ア 対比
本件特許発明8は、本件特許発明1において、「第1の塔は、当該側流と当該第1の塔の塔頂との間に、5より多い理論段数を含む」ことをさらに限定した発明であり、本件特許発明8と刊行物1発明を対比すると、前記相違点1?3以外に、以下の相違点4が認定できる。

相違点4:本件特許発明8では、第1の塔は、当該側流と当該第1の塔の塔頂との間に、5より多い理論段数を含むと特定されているのに対して、刊行物1発明では、側流と第1の塔の塔頂との間の理論段数が特定されていない点

イ 相違点4の判断
刊行物1には、摘記(1h)に、「・・・第1の蒸留塔(実段:20段、仕込段:下から2段)に供給し、ゲージ圧150KPA、塔底温度140℃、塔頂温度115℃、軽質相還流比3で蒸留し、デカンタで分液した水相(軽質相)5重量部及び有機相(重質相)38重量部を反応器にリサイクルした。・・・
第1の蒸留塔のサイドカット(サイドカット段:下から4段)から酢酸を含むサイドカット流54重量部と、塔底から飛沫同伴で含有した触媒を含む缶出流3重量部との割合で抜取り、缶出流は反応系にリサイクルし、サイドカット流は第2の蒸留塔に供給して脱水精製した。」との記載があり、刊行物4摘記(4a)に示されるように、酢酸-水系の塔の段効率として76%?65%程度であることは技術常識であるから、第1の蒸留塔において、下から4段のサイドカットと塔頂の間には、16の棚段があり、16×0.7=11.2段程度の理論段数が存在するといえるので、刊行物1発明において、側流と当該第1の塔の塔頂との間に、5より多い理論段数を含むと特定することは当業者が容易になし得る技術的事項である。

ウ 小括
しかしながら、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、前記相違点1,3は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえないから、本件特許発明8は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-9)本件特許発明9について
ア 対比・判断
本件特許発明9は、本件特許発明1において、「重質液相の一部を当該反応系へリサイクルする」ことをさらに限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明9は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3-10)本件特許発明10について
ア 対比・判断
本件特許発明10は、本件特許発明1において、「第2の塔で当該側流の少なくとも一部を蒸留して、50?75重量%の水を含む第2のオーバーヘッドをさらに得る」ことをさらに限定した発明であり、前記本件特許発明1で検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から容易になし得たものとはいえない。

イ 小括
したがって、(3-1)で検討したのと同様に、本件特許発明10は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張についての検討
ア 特許異議申立人は、平成30年7月9日付け意見書4?5頁において、刊行物1の実施例4は、連続運転中に上相中のヨウ化メチル濃度が変動して5重量%以下になることや還流比を変化させた場合の甲第5号証の実験成績証明書を提出して必然的に5重量%以下になる旨主張している。
しかしながら、刊行物1発明は、あくまでも、上相のヨウ化メチルを5.1重量部とした実施例であって、還流比を変化させた場合に、ヨウ化メチル濃度の変動した場合があるからといって、相違点3が実質的な相違点にならないとはいえないのはもちろん、5重量%以下にすることが動機付けられることにならない。

イ 特許異議申立人は、平成30年7月9日付け意見書6?12頁において、実施例4の記載に基づく発明(刊行物1発明)だけでなく、実施例3の記載に基づく発明や実施例2の記載に基づく発明から本願発明が動機付けられることに関して主張している。
しかしながら、それらの主張は、水濃度、酢酸メチル濃度、平衡反応式、結果から推測される傾向等、多くの前提に基いた推測であり、種々の前提をおいて、あるデータに焦点をあてて観察することで理解できることを主張することは、刊行物1発明からの本願発明への動機付けを説明できていることにならない。

ウ 以上のとおり、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について

1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について

特許異議申立人は、特許異議申立書29?30頁において、反応容器、フラッシュ容器、第1の塔等の多段工程の反応(蒸留)条件や水分やヨウ化水素等の成分組成の開示がなく、本件明細書及び出願時の技術常識を考慮しても、リサイクル率の制御により水濃度1?3重量%、ヨウ化水素50wppm以下の側流を得ることができるのか当業者が理解できず、いわゆる実施可能要件を満たしていない旨主張している。
しかしながら、請求項1?10に係る発明に関して、発明の詳細な説明には、具体的記載として反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することと第1の塔が特定範囲の軽質相の還流比で稼働されることが説明され、「リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み」と制御の内容も説明されており、発明の詳細な説明には、側流中のヨウ化水素濃度の制御に関する記載(【0012】【0023】【0027】)、カルボニル反応器の条件(【0029】?【0037】)、フラッシュ容器の条件(【0038】?【0041】)、軽質液相の組成例(【0044】)や、還流比と側流の水濃度との数値を伴った技術的意義に関する説明が存在する(【0047】)。
さらに、系の中で側流の直前の空間であって、近接した位置にある、第1の塔の水分やヨウ化水素の組成が、反応器での組成以上に側流中の組成に影響を与えると理解することが技術常識であることを考慮すると、上記知見を理解した上であれば、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明は、当業者であれば実施することができる発明であるといえる。
そして、反応容器、フラッシュ容器、第1の塔における実施例としての具体的な条件や成分組成値がなくとも、最終的にリサイクル率の制御によって、側流中の水濃度を1重量%から3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm又はそれを下回る量に維持することは、当業者が条件設定することにより行えるものといえる。

したがって、特許異議申立人の特許法第36条第4項第1号に関する主張は採用できない。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について

特許異議申立人は、特許異議申立書31?32頁において、反応容器、フラッシュ容器、第1の塔等の多段工程の反応(蒸留)条件や水分やヨウ化水素等の成分組成の開示がなく、本件明細書及び出願時の技術常識を考慮しても、どのようにして、第1塔に追加の成分を導入したり、第1塔に送られる蒸気生成物供給における所定濃度を維持することなく側流中の水やヨウ化水素濃度を制御するという課題を解決できるか当業者が認識できない旨主張している。
以下、検討する。
請求項1に係る発明は、「40重量%から80重量%の水を含み5重量%未満のヨウ化メチルを含む軽質液相を形成すること」、「該第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転される」ことを特定した上で、「該軽質液相の当該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」を制御内容とした「酢酸を製造する方法」であるといえる。
一方、発明の詳細な説明には、【0047】において、明細書中での還流比と側流の水濃度との数値を伴った技術的意義に関する説明が存在し、第1の塔への還流比を0.4以下の一定の値にしておけば、側流中の水濃度が3重量%以下に抑えることが可能であることが読み取れるといえ、実施例、比較例には、還流比の値は明確ではないものの、軽質液相をリサイクルすることによって、しない場合に比較すると、ヨウ化水素の濃度を低下させることが可能であることは理解できるといえる。
したがって、上記発明の詳細な説明の記載を併せて検討すれば、本件特許発明1の課題が解決できたことが具体的に理解できるといえる。
そして、明細書中での還流比と側流の水濃度との数値を伴った技術的意義に関する説明が存在すること及び、系の中で側流の直前の空間であって、近接した位置にある、第1の塔の水分やヨウ化水素の組成が、反応器での組成以上に側流中の組成に影響を与えると理解することが技術常識であることを考慮すると、上記知見を理解した上であれば、必ずしも第1塔に追加の成分を導入したり、第1塔に送られる蒸気生成物供給における所定濃度を維持しなくとも、第1の塔が0.05から0.4の還流比の範囲で稼働するとの前提で、「側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させ」、「軽質液相の」「反応器へのリサイクル率を制御」することにより、最終的に「該側流中の水濃度を1重量%から3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm又はそれを下回る量に維持すること」は、可能であるといえ、上記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

また、請求項2?10に係る発明についても、請求項1に係る発明をそれぞれ技術的にさらに限定したものであり、明細書にそれらの追加された技術的限定に関する実質的記載があり、同様に発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

したがって、特許異議申立人の特許法第36条第6項第1号に関する主張は採用できない。

3 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について

特許異議申立人は、特許異議申立書32頁において、「該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み」との記載について、側流中のヨウ化水素濃度を所定の閾値を超えないように維持する目的以外の目的のために、リサイクル率を変動させつつ、閾値を超えないようにして酢酸を製造する方法が技術的範囲に属するかどうか不明である点を指摘し、第三者に不測の不利益を与える旨主張している。
しかしながら、「該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み」との特定事項には、制御の内容の表現記載として第三者に不測の不利益を与えるような不明確な点はなく、本件特許発明の特許請求の範囲の記載は明確であるといえ、ある方法が技術的範囲に属するかどうか不明であるなどとの特許異議申立人の主張は採用できない。

したがって、上述のとおり、特許異議申立人の特許法第36条第6項第2号に関する主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1?10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、他に本件請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸を製造する方法であって、
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流とに分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1?3重量%の水、50wppm以下のヨウ化水素、及び酢酸を含む側流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して重質液相と、40?80重量%の水を含みかつ5重量%以下のヨウ化メチルを含む軽質液相を形成すること、
該重質液相の一部、該軽質液相の一部、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させること、ここで、該第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転され、
当該軽質液相の一部を当該反応系にリサイクルすること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、ここで、該リサイクル率の制御は、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ること、及び
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床と接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
該側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該液体リサイクル流が、酢酸及び当該金属触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該側流中が1.1?2.5重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該還流比が0.1?0.35である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
当該第1の塔は、当該側流と当該第1の塔の塔頂との間に、5より多い理論段数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
当該重質液相の一部を当該反応系へリサイクルする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の塔で当該側流の少なくとも一部を蒸留して、50?75重量%の水を含む第2のオーバーヘッドをさらに得る、請求項1に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-22 
出願番号 特願2015-256042(P2015-256042)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C07C)
P 1 651・ 536- YAA (C07C)
P 1 651・ 537- YAA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 水島 英一郎  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 冨永 保
瀬良 聡機
登録日 2017-06-09 
登録番号 特許第6153592号(P6153592)
権利者 セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
発明の名称 酢酸の製造方法  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 梶田 剛  
代理人 梶田 剛  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小林 泰  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
代理人 竹内 茂雄  

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