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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02F
管理番号 1344856
異議申立番号 異議2018-700052  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-22 
確定日 2018-09-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6169530号発明「液晶表示装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6169530号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6169530号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は,平成26年5月13日に特許出願され,平成29年7月7日にその特許権の設定登録がされ,同年7月26日に特許掲載公報が発行され,その後,その特許について,平成30年1月22日に特許異議申立人 小林瞳により請求項1ないし11に対して特許異議の申立て(以下「異議申立1」という。)がなされ,また,同年1月26日に特許異議申立人 松岡規子により請求項1ないし11に対して特許異議の申立て(以下「異議申立2」という。)がなされ,同年5月7日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年7月9日に意見書の提出があったものである。

第2 本件発明
本件の請求項1ないし11に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源ユニットと,光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって,
前記光源ユニットが出射する光は,緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,
前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であり,
前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と,前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し,
前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であり,
前記第1の保護フィルムの温度40℃,相対湿度90%における透湿度が100g/m^(2)/day以下である液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)と,厚さ方向のレタデーションRth(589)との比Re(589)/Rth(589)が0.8?2.0である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記光源ユニットが,青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードと,前記青色発光ダイオードまたは前記紫外線発光ダイオードからの光によって励起されて発光できる蛍光体とを少なくとも有する請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記蛍光体が少なくとも1つの量子ドットを含む請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の保護フィルムが,少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムである請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の保護フィルムが,ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン-2,6-ナフタレートフィルムである請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の保護フィルムが,ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1?6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の保護フィルムの厚みが,10?500μmである請求項1?7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の20%未満である請求項1?8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記極小値L1が波長460nm?520nmの間の極小値かつ最小値L1’であり,
前記極大値L2が波長520nm?560nmの間の極大値かつ最大値L2’であり,
前記極小値L3が波長560nm?620nmの間の極小値かつ最小値L3’である請求項1?9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記視認側の偏光板が前記第1の保護フィルムを有する請求項1?10のいずれか一項に記載の液晶表示装置。」

第3 取消理由の概要
請求項1ないし11に係る特許に対して平成30年5月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

(1)理由1
請求項1ないし11に係る発明は,A甲1ないしA甲11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「理由1-1」という。)。
また,請求項1ないし11に係る発明は,B甲1ないしB甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「理由1-2」という。)。
ここで,A甲1,A甲2,A甲3,・・・,A甲11は,それぞれ異議申立1に係る甲第1号証,甲第2号証の1,甲第2号証の2,・・・,甲第5号証の2である。
また,B甲1?B甲8は,それぞれ異議申立2に係る甲第1号証?甲第8号証である。

(2)理由2
本件特許請求の範囲の請求項1ないし11の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,請求項1ないし11に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである(以下「理由2」という。)。

第4 取消理由についての判断
1 理由1-1について(本件発明1に対して)
(1)A甲1発明
ア A甲1(特開2006-171693号公報)には以下の各記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。

イ 「【0020】
本発明は,例えば図1に示すような構成のバックライト方式の液晶表示部1を備えるカラー液晶表示装置に適用される。
【0021】
(液晶表示部の構成)
液晶表示部1は,透過型のカラー液晶表示パネル10と,このカラー液晶表示パネル10の背面側に設けられたバックライト装置20とから構成されている。
【0022】
(パネル)
透過型のカラー液晶表示パネル10は,TFT基板11と対向電極基板12とを互いに対向配置させ,その間隙に例えばツイステッドネマチック(TN)液晶を封入した液晶層13を設けた構成となっている。TFT基板11にはマトリクス状に配置された信号線14と走査線15及びこれらの交点に配置されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ16と画素電極17が形成されている。薄膜トランジスタ16は走査線15により順次選択されると共に,信号線14から供給される映像信号を対応する画素電極17に書き込む。一方,対向電極基板12の内表面には対向電極18及びカラーフィルタ19が形成されている。
【0023】
液晶表示部1では,この様な構成の透過型のカラー液晶表示パネル10を2枚の偏光板で挟み,バックライト装置20により背面側から白色光を照射した状態で,アクティブマトリクス方式で駆動することによって,所望のフルカラー 映像表示が得られる。
【0024】
(バックライト)
バックライト装置20は,光源21と波長選択フィルタ22とを備えている。バックライト装置20は,光源21から発光された光を,波長選択フィルタ22を介してカラー液晶表示パネル10を背面側から照明する。このようなバックライト装置20は,透過型のカラー液晶表示パネル10を背面に配設され,カラー液晶表示パネル10の背面直下から照明する直下型タイプである。
【0025】
ここで,バックライト装置20の光源21には,多数の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)3が設けられ,この発光ダイオードから出射された光を出力する。光源21には,赤色の光を発光する多数の発光ダイオード3Rと,緑色の光を発光する多数の発光ダイオード3Gと,青色の光を発光する多数の発光ダイオード3Bが設けられている。光源21では,赤,青,緑の光を混合して白色光を生成し,この白色光をカラー液晶表示パネル10に出射している。」

ウ 「【0050】
(色度一定化のための制御方法)
つぎに,バックライト装置20から発光される白色光の色度を,ある特定の色度に収束して安定化させるための制御方法について説明をする。
【0051】
・・・(中略)・・・
【0064】
例えば,図10は,赤(R),緑(G),青(B)の各LED素子の発光波長に対する明るさを示したグラフである。図10には,温度が0℃,25℃,50℃のそれぞれの場合についてのグラフを示している。なお,図10のグラフは,x軸方向に発光波長を示し,y軸方向に発光出力(明るさ)を示している。」

エ ここで,図10は以下のものである。


オ 上記イ,ウの記載から,上記エの特性を備える各発光ダイオードは,バックライト装置20に用いられるものといえる。
そして,上記エの特性図を見ると,赤(R),緑(G),青(B)の各LED素子の光を合わせた光のスペクトルに関して,以下の特性が読み取れる。
(ア)青色の発光ピークは400?500nmにあり,緑色の発光ピークは500?600nmにあり,赤色の発光ピークは600?680nmにある。
(イ)緑色及び赤色の発光ピークの半値全幅は,それぞれ約35nmと約30nmである。
(ウ)490nm付近に極小値1があり,525nm付近の極大値があり,585nm付近に極小値2がある。また,前記極大値が最も小さい50℃の場合においても,前記極小値1は前記極大値の約10%であり,前記極小値2は前記極大値の約5%である。

カ 以上から,A甲1には以下の発明(以下「A甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「バックライト方式の液晶表示部1を備えるカラー液晶表示装置であって,
液晶表示部1は,透過型のカラー液晶表示パネル10と,このカラー液晶表示パネル10の背面側に設けられたバックライト装置20とから構成され,
液晶表示部1では,透過型のカラー液晶表示パネル10を2枚の偏光板で挟み,バックライト装置20により背面側から白色光を照射した状態で,アクティブマトリクス方式で駆動することによって,所望のフルカラー 映像表示が得られるものであり,
透過型のカラー液晶表示パネル10は,TFT基板11と対向電極基板12とを互いに対向配置させ,その間隙に例えばツイステッドネマチック(TN)液晶を封入した液晶層13を設けた構成となっており,
バックライト装置20は,光源21と波長選択フィルタ22とを備えており,バックライト装置20は,光源21から発光された光を,波長選択フィルタ22を介してカラー液晶表示パネル10を背面側から照明するものであり,
バックライト装置20の光源21には,多数の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)3が設けられ,この発光ダイオードから出射された光を出力する。光源21には,赤色の光を発光する多数の発光ダイオード3Rと,緑色の光を発光する多数の発光ダイオード3Gと,青色の光を発光する多数の発光ダイオード3Bが設けられて,光源21では,赤,青,緑の光を混合して白色光を生成するものであり,
バックライト装置20の光源21のスペクトル特性は,
(ア)青色の発光ピークは400?500nmにあり,緑色の発光ピークは500?600nmにあり,赤色の発光ピークは600?680nmにある。
(イ)緑色及び赤色の発光ピークの半値全幅は,それぞれ約35nmと約30nmである。
(ウ)490nm付近に極小値1があり,525nm付近の極大値があり,585nm付近に極小値2がある。また,前記極大値が最も小さい50℃の場合においても,前記極小値1は前記極大値の約10%であり,前記極小値2は前記極大値の約5%である。
の各特性を有するものである,
カラー液晶表示装置。」

(2)A甲2に記載された事項
ア A甲2(国際公開第2014/021242号)には以下の記載がある。
「発明が解決しようとする課題
【0006】
本発明者等は,上記の問題を解決する手段として,バックライト光源として白色発光ダイオードを用い,更に偏光子保護フィルムとして一定のリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを用いることを見出した(特許文献4)。しかしながら,発明者等は,かかる構成を有する液晶表示装置について更なる検討を重ねた末,そのように改良された液晶表示装置であっても,一対の偏光板の両方に偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合は,斜め方向から観察すると,角度によっては依然として虹斑が生じる場合が存在するという新たな課題の存在を発見した。そこで,本発明は,液晶表示装置の一対の偏光板の両方の偏光子保護フィルムとして配向ポリエステルフィルムを用いた場合の虹斑の発生を抑制することを主な課題とする。

課題を解決するための手段
【0007】
・・・(中略)・・・
【0008】
代表的な本発明は,以下の通りである。
項1.
バックライト光源,2つの偏光板,及び前記2つの偏光板の間に配された液晶セルを有する液晶表示装置であって,
前記バックライト光源は連続した発光スペクトルを有する白色光源であり,
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成であり,
入射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方,及び出射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方が,4000?30000nmのリタデーション及び1.70以下のNz係数を有する配向ポリエステルフィルムである,
液晶表示装置。
・・・(中略)・・・

発明の効果
【0009】
本発明の液晶表示装置は,虹斑の発生が抑制されているため,優れた視認性を有する。また,本発明の液晶表示装置は,虹斑発生の問題なく,一対の偏光板の両方の偏光子保護フィルムとして配向ポリエステルフィルムを利用することを可能にする。よって,本発明は,液晶表示装置の十分な機械的強度を保持した状態で,一層の薄型化を可能にし,引いては,製造コストを低減することを可能にする。更に,本発明の偏光板及び偏光子保護フィルムは,本発明の液晶表示装置の製造を可能にする。

発明を実施するための形態
【0010】
1.液晶表示装置
・・・(中略)・・・
【0011】
2.バックライト光源
本発明の液晶表示装置は少なくとも,バックライト光源,2つの偏光板,及び2つの偏光板の間に配された液晶セルを構成部材として含む。本発明の液晶表示装置は,これら以外の他の構成部材,例えば,カラーフィルター,レンズフィルム,拡散シート,反射防止フィルム等を適宜有しても構わない。
【0012】
バックライトの構成は,導光板や反射板等を構成部材とするエッジライト方式であっても,直下型方式であっても構わない。本発明では,液晶表示装置のバックライト光源として,連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用いることが好ましい。ここで,連続した幅広い発光スペクトルとは,少なくとも450nm?650nmの波長領域,好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない発光スペクトルを意味する。このような連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源としては,例えば,白色LEDを挙げることができるが,これに限定されるものではない。
【0013】
本発明で使用可能な白色LEDには,蛍光体方式,すなわち化合物半導体を使用した青色光,もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子や,有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)等が含まれる。蛍光体としては,例えば,イットリウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体やテルビウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体等を挙げることができる。白色LEDの中でも,化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは,連続的で幅広い発光スペクトルを有していると共に発光効率にも優れるため,本発明のバックライト光源として好適である。白色LEDは消費電力が小さいため,それを利用した本発明の液晶表示装置は,省エネルギー化にも資する。
【0014】
従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は,発光スペクトルが特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルを有する。よって,本発明の所期の効果を得ることは困難であるため,本発明の液晶表示装置の光源としては好ましくない。
【0015】
3.偏光子保護フィルム
偏光板は,PVA等にヨウ素を染着させた偏光子の両側に2枚の偏光子保護フィルムを積層した構成を有する。本発明で使用される偏光板は,2枚の偏光子保護フィルムの少なくとも一方に,特定範囲のリタデーション及び|ny-nz|/|ny-nx|で表されるNz係数という物性を満たす配向ポリエステルフィルム用いる。
【0016】
3-1.リタデーション
本発明で使用される偏光子保護フィルムに用いられる配向ポリエステルフィルムは,4000?30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが4000nm未満では,液晶表示装置を斜め方向から観察した時に干渉色を呈するため,良好な視認性を常に確保することができないためである。配向ポリエステルフィルムの好ましいリタデーションは4500nm以上,次に好ましくは5000nm以上,より好ましくは6000nm以上,更に好ましくは8000nm以上,より更に好ましくは10000nm以上である。」

イ 以上の記載から,A甲2には以下の事項(以下「A甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
(ア)「液晶表示装置の一対の偏光板の両方の偏光子保護フィルムとして配向ポリエステルフィルムを用いた場合の虹斑の発生を抑制することを主な課題とし,
バックライト光源,2つの偏光板,及び前記2つの偏光板の間に配された液晶セルを有する液晶表示装置において,
前記バックライト光源は連続した発光スペクトルを有する白色光源であり,
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成であり,
入射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方,及び出射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方が,4000?30000nmのリタデーション及び1.70以下のNz係数を有する配向ポリエステルフィルムとすることで,
虹斑の発生が抑制されているため,優れた視認性を有するものとすること。」
(イ)「液晶表示装置のバックライト光源として,連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用いることが好ましく,連続した幅広い発光スペクトルとは,少なくとも450nm?650nmの波長領域,好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない発光スペクトルを意味し,このような連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源としては,例えば,白色LEDを挙げることができ,これに限定されるものではないものの,従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は,発光スペクトルが特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルを有し,本発明の所期の効果を得ることは困難であるため,本発明の液晶表示装置の光源としては好ましくない。」
(ウ)「本発明で使用される偏光子保護フィルムに用いられる配向ポリエステルフィルムは,4000?30000nmのリタデーションを有することが好ましく,リタデーションが4000nm未満では,液晶表示装置を斜め方向から観察した時に干渉色を呈するため,良好な視認性を常に確保することができない。配向ポリエステルフィルムの好ましいリタデーションは4500nm以上,次に好ましくは5000nm以上,より好ましくは6000nm以上,更に好ましくは8000nm以上,より更に好ましくは10000nm以上である。」

(3)A甲3に記載された事項
A甲3(株式会社東ソー分析センター作成「技術レポート No.T1307」)には,特に図2を参照すると,「厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの透湿度は,温度40℃,相対湿度90%において,10g/m^(2)/day以下であること」が記載されているといえる。

(4)A甲11に記載された事項
ア A甲11(特表2013-539598号公報)には以下の記載がある。
イ 「【請求項44】
液晶ディスプレイユニットであって,
ホスト材料,緑色光を放出することが可能な第1の量子ドットおよび赤色光を放出することが可能な第2の量子ドットを含む光学材料であり,前記光学材料内の前記第2の量子ドットに対する前記第1の量子ドットの重量パーセント比は約9:1から約2:1の範囲にある光学材料を照射することが可能なように位置した,青色光を放出することが可能な光源を含み,
前記光学材料は,さらに透明光導体の表面に隣接して位置しており,前記第1の量子ドットから放出された緑色光,前記第2の量子ドットから放出された赤色光,および前記光源から放出された青色光の一部の組み合わせから三色光が発生されることが可能である,バックライトユニット装置,および
前記バックライトユニット装置から放出された三色光と光学的に関連して位置する液晶ディスプレイパネル
を含む,液晶ディスプレイユニット。」

ウ 「【0003】
LCDの質は,多くの場合,色域図によって測定される。色域は,ディスプレイによって表される色の全スペースを称する。一般に,色域は,International Commission on Illumination(CIE)1931XY色図などの図によって示される。この図では,利用可能な色の全範囲は,x軸上の色度およびy軸上の明るさまたは輝度によって表される。二次元のCIEプロット上のすべての可視色の全範囲は,図の中心において舌形状の領域によって概して表される。
【0004】
ディスプレイ装置の色域を増大させることは,色質を高め,より高い知覚された輝度ももたらす。この効果は,ヘルムホルツ-コールラウシュ(H-K)効果として知られており,「この輝度を明所視の範囲内で一定に保つ間の,色刺激の純度を増大させることによって生成された知覚された色の輝度の変化」として定義される(CIE Publication No.17.4,International Lighting Vocabulary,Central Bureau of CIE,Vienna,1988,sec.845-02-34,p.50参照)。この効果は,周囲光の状態による(つまり,効果は,より低い周囲光の状態で向上され,より高い周囲光の状態で減少される。)。
【0005】
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って,本発明の1つの目的は,実行の容易さをさらに維持しながら,色域を増大および/または消費電力を低下させるなどによってディスプレイシステムの性能を増大させ,従ってより低コストをもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・・・(中略)・・・
【0009】
本開示の実施形態は,光を発生するための量子ドット(例えば,半導体ナノ結晶を含む。)を含む光学材料を対象とする。1つの態様によれば,青色光波長を放出するLEDによって励起される,緑色光波長を放出する量子ドットおよび赤色光波長を放出する量子ドットなどの本発明のある量子ドットの組み合わせは,三色白色光の発生をもたらす。ある態様によれば,三色白色光などの量子ドットによって発生された光は,液晶ディスプレイ(LCD)ユニットまたは他の光学ディスプレイユニットと組み合わせて使用される。本発明の1つの実行は,例えば,LCDユニットと共にさらに使用されることが可能なバックライトユニットとして用いるための量子ドット,LED青色光源および光導体の組み合わせである。」

エ 「【0018】
・・・(中略)・・・
【図2】量子ドット含有バックライトユニット(BLU)および白色LED BLUの実施形態のスペクトルを示す。・・・(後略)」

オ 「【0055】
本発明のさらなる態様によれば,量子ドットは,半値全幅(FWHM)で約25nmから約60nmの間の範囲に狭い発光プロフィールを示す。本開示の量子ドットの狭い発光プロフィールは,量子ドットの調整および量子ドットの混合を可能にして飽和色を放出し,これによって,従来のLED照明ディスプレイを超える色域および出力効率を増大させる。1つの態様によれば,例えば,約523nmの主波長を放出するように設計され,例えば,約37nmの半値全幅を有する発光プロフィールを有する緑色量子ドットが,組み合わせられる,混合される,または例えば約617nmの主波長を放出するように設計され,例えば,約32nmの半値全幅を有する発光プロフィールを有する赤色量子ドットと組み合わせて使用される。このような組み合わせは,青色光によって励起されて,三色白色光を生成することが可能である。」

カ 「【0129】
図2は,量子ドットフィルム/青色LEDの組み合わせ(一般的に,実施例1で説明されるように)および対照の白色LED(実施例1で説明されるように)のスペクトルを比較する。図2に示されるように,狭周波数帯量子ドットエミッタの使用は,従来のLCDディスプレイで使用されるカラーフィルタを使用することで起きてしまう電力損失を最小限とする可能性がある。量子ドットBLUを備えた色マップ上の所定の色ポイントに到着するために,使用された量子ドットのピーク中心波長を検討することに加えて,異なる色の量子ドットの比および濃度を,本発明の態様に応じて変更することが可能である。」

キ ここで,図2は以下のものである。



上記図2から,量子ドットが発する光のスペクトルにおいて,波長530nm付近の極大値(約8)に対して,波長490nm付近の極小値(約1)及び波長580nm付近の極小値(約0.5)はともに15%を超えるものではないことが見て取れる。

ク 以上から,A甲11には,以下の技術事項が記載されているといえる。
(ア)LCDユニットと共にさらに使用されることが可能なバックライトユニットとして用いるための量子ドット,LED青色光源および光導体の組み合わせであって,
量子ドットは,半値全幅(FWHM)で約25nmから約60nmの間の範囲に狭い発光プロフィールを示し,本開示の量子ドットの狭い発光プロフィールは,量子ドットの調整および量子ドットの混合を可能にして飽和色を放出し,これによって,従来のLED照明ディスプレイを超える色域および出力効率を増大させるものであり,1つの態様によれば,例えば,約523nmの主波長を放出するように設計され,例えば,約37nmの半値全幅を有する発光プロフィールを有する緑色量子ドットが,組み合わせられる,混合される,または例えば約617nmの主波長を放出するように設計され,例えば,約32nmの半値全幅を有する発光プロフィールを有する赤色量子ドットと組み合わせて使用され,このような組み合わせは,青色光によって励起されて,三色白色光を生成することが可能であること。
(イ)量子ドットが発する光のスペクトルにおいて,波長530nm付近の極大値(約8)に対して,波長490nm付近の極小値(約1)及び波長580nm付近の極小値(約0.5)はともに15%を超えるものではないこと。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の構成により,色域を増大および/または消費電力を低下させるなどによってディスプレイシステムの性能を増大させること。

(5)対比
ア 本件発明1とA甲1発明とを対比する。

イ A甲1発明においては,「バックライト装置20は,光源21と波長選択フィルタ22とを備えており,バックライト装置20は,光源21から発光された光を,波長選択フィルタ22を介してカラー液晶表示パネル10を背面側から照明するものであ」るところ,本件発明においては,「光源ユニットと,光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であ」るから,A甲1発明の「バックライト装置20」が,本件発明の「光源ユニット」に相当する。

ウ A甲1発明の「バックライト方式の液晶表示部1を備えるカラー液晶表示装置であって」,「液晶表示部1は,透過型のカラー液晶表示パネル10と,このカラー液晶表示パネル10の背面側に設けられたバックライト装置20とから構成され,液晶表示部1では,透過型のカラー液晶表示パネル10を2枚の偏光板で挟み,バックライト装置20により背面側から白色光を照射」されるものは,本件発明1の「光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置」に相当する。

エ A甲1発明の,「バックライト装置20の光源21のスペクトル特性は,(ア)青色の発光ピークは400?500nmにあり,緑色の発光ピークは500?600nmにあり,赤色の発光ピークは600?680nmにある」,「バックライト装置20の光源21」と,本件発明1の「少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源ユニット」とは,「少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源」である点で一致する。

オ A甲1発明の「バックライト装置20の光源21のスペクトル特性は,」「(イ)緑色及び赤色の発光ピークの半値全幅は,それぞれ約35nmと約30nmである。(ウ)490nm付近に極小値1があり,525nm付近の極大値があり,585nm付近に極小値2がある。また,前記極大値が最も小さい50℃の場合においても,前記極小値1は前記極大値の約10%であり,前記極小値2は前記極大値の約5%である」ことと,本件発明1の「前記光源ユニットが出射する光は,緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であ」ることとは,「光源が出射する光は,緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であ」る点で一致する。

カ そうすると,本件発明1と甲1発明は,以下の点で一致する。
「少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源と,光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって,
前記光源が出射する光は,緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,
前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満である液晶表示装置。」

キ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
A甲1発明においては,「バックライト装置20は,光源21と波長選択フィルタ22とを備えており,バックライト装置20は,光源21から発光された光を,波長選択フィルタ22を介してカラー液晶表示パネル10を背面側から照明するもの」であるから,バックライト装置20がカラー液晶表示パネル10を照射する光のスペクトルは,波長選択フィルタ22の透過特性の影響を受けるものである。
それゆえ,A甲1発明の光源21が本件発明1の「光源ユニット」に係るスペクトル特性を備えていても,A甲1発明のバックライト装置20が,本件発明1の「光源ユニット」に係るスペクトル特性を備えているとは限らない。
よって,以下の相違点1が存在する。
A甲1発明の「バックライト装置20」は,本件発明の「光源ユニット」に相当するものであるが,A甲1発明に係る「バックライト装置20」の「カラー液晶表示パネル10を背面側から照明する」光が,本件発明1の「光源ユニット」に係る,「少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光」であって,「緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であ」る光であるか不明である点。

《相違点2》
本件発明1は,「前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と,前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し,前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であ」る構成を備えるが,A甲1発明はそのような構成を備えない点。

《相違点3》
本件発明1は,「前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と,前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルム」について,「前記第1の保護フィルムの温度40℃,相対湿度90%における透湿度が100g/m^(2)/day以下である」構成を備えるが,A甲1発明はそのような構成を備えない点。

(6)判断
まず,相違点2について検討する。

ア 前記(2)イ(ア)のとおり,A甲2には,「バックライト光源,2つの偏光板,及び前記2つの偏光板の間に配された液晶セルを有する液晶表示装置において,前記バックライト光源は連続した発光スペクトルを有する白色光源であり,前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成であり,入射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方,及び出射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムの少なくとも一方が,4000?30000nmのリタデーション及び1.70以下のNz係数を有する配向ポリエステルフィルムとすることで,虹斑の発生が抑制されているため,優れた視認性を有するものとすること」が記載されている。
すなわち,A甲2には,出射光側に配される偏光板の偏光子保護フィルムとして,4000?30000nmのリタデーションをもつ配向ポリエステルフィルムを用いることが記載されている。

イ また,前記(2)イ(イ)のとおり,A甲2には,「液晶表示装置のバックライト光源として,連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用いることが好ましく,連続した幅広い発光スペクトルとは,少なくとも450nm?650nmの波長領域,好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない発光スペクトルを意味し,このような連続した幅広い発光スペクトルを有する白色光源としては,例えば,白色LEDを挙げることができ,これに限定されるものではないものの,従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は,発光スペクトルが特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルを有し,本発明の所期の効果を得ることは困難であるため,本発明の液晶表示装置の光源としては好ましくない」と記載されており,この記載からは,バックライト光源としては,白色光源としては,好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない発光スペクトルのものが好ましく,例えば,白色LEDを挙げることができ,これに限定されるものではないが,冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は,本発明の所期の効果を得ることは困難であるため,本発明の液晶表示装置の光源としては好ましくないと理解できる。

ウ ところで,上記A甲2の記載事項において,冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管は,液晶表示装置の光源としては好ましくないとされているところ,特許権者が平成30年7月9日に提出した意見書の16ページ冒頭のグラフに示されているように,バックライトに用いられる冷陰極管や熱陰極管等の,450nm?650nmの波長領域における発光スペクトルは,発光ピーク以外において光の強度が完全にゼロになる波長が必ず存在するものではないから,上記上記A甲2の記載事項における,「光の強度がゼロになる」とは,光の強度が完全にゼロになることを意味するのではなく,ピークの光強度に比して視認できない程度の強度になることを指すと解される。

エ そこで,前記(1)エに摘記したA甲1発明の光源21のスペクトルを見ると,特に590nm付近にあるスペクトルの谷における光の強度は,赤色光のピークの強度に比べると視認できない程度のものであるから,上記ウに照らすと,上記A甲2の記載事項における,「光の強度がゼロになる波長が存在」するといえる。
ここで,A甲1発明の光源21のスペクトルに存在する谷は,A甲1発明に係る「波長選択フィルタ22」を介した光である,「バックライト装置20」の白色光のスペクトルにおいても,その光の強度が谷のレベルから上昇することはないから,依然としてスペクトルの谷であることは明らかである。
なお,仮に,「波長選択フィルタ22」により,ピークの光強度を谷のレベルまで減少させれば,光源21のスペクトルにおける谷が,「バックライト装置20」の白色光のスペクトルにおける「谷」とはいえなくなることもあり得るが,その場合の「バックライト装置20」の白色光のスペクトルは,本件発明1に係る光源ユニットのスペクトルとは大幅に異なり,前記相違点1の解消は困難となる。
それゆえ,A甲1発明に係る「波長選択フィルタ22」を介した光である,「バックライト装置20」の白色光のスペクトルにおいても,上記A甲2の記載事項における,「光の強度がゼロになる波長が存在」するといえる。

オ そうすると,A甲1発明に係る「バックライト装置20」の白色光のスペクトルは,「光の強度がゼロになる波長が存在」するものであって,A甲2に記載された「可視光の領域において光の強度がゼロになる波長が存在しない」ものではないから,A甲1発明に係る「バックライト装置20」を備えるカラー液晶表示装置に対して,前記(ア)に記載したA甲2に記載された技術を適用することには阻害要因がある。

カ また,A甲11に記載された光源のスペクトルも前記A甲2に係るスペクトルと同様に,「光の強度がゼロになる波長が存在」するといえるから,A甲1発明に係る「バックライト装置20」を備えるカラー液晶表示装置に対して,A甲11に記載された技術を適用することには阻害要因がある。

キ また,A甲3?A甲10を参照しても,上記オ,カの各阻害要因を解消するような記載は見いだせない。

ク したがって,A甲2及びA甲11の記載事項を参酌しても,A甲1発明において相違点2に係る構成を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。

(7)小括
よって,相違点1及び3について検討するまでもなく,本件発明1は,A甲1発明及びA甲2?A甲11に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(8)本件発明2?11について
本件発明2?11は,本件発明1に係る構成を全て含むものであるから,本件発明2?11については,上記(1)?(7)と同様の理由によって,A甲1発明及びA甲2?A甲11に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


2 理由1-2について
(1)B甲1発明
ア B甲1(特開平2011-59488号公報)には以下の各記載がある。

イ 「【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと,
前記偏光フィルムの片面に,第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと,を備え,
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y),厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値である請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
・・・(中略)・・・
【請求項4】
前記偏光フィルムにおける前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に,第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備える請求項1?3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
・・・(中略)・・・
【請求項7】
前記保護フィルムまたは前記光学補償フィルムにおける前記偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された粘着剤層を備える請求項4?6のいずれかに記載の偏光板。
【請求項8】
・・・(中略)・・・
【請求項9】
請求項7または8に記載の偏光板が,その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置。」

ウ 「【0005】
これらの要求を満足すべく,これまでに様々な提案がなされてきた。たとえば,偏光板は通常,偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し,その透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが一般的に使用されているが,特開平8-43812号公報(特許文献1)のように,その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより,構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで,偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ,さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで,生産工程を簡素化し,歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。
【0006】
さらには,保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。たとえば,特開平7-77608号公報(特許文献2)には,トリアセチルセルロースに代えて,環状オレフィン系樹脂を使用する手段が開示されている。しかしながら,環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため,現状は,より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており,単なる保護フィルムとして使用するには,コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。
【0007】
上記要求を満足できる技術として,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから,薄膜化に適しており,偏光板の薄型化を実現できる。さらに,トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して,一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて,トリアセチルセルロースと比較して,低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから,耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ,環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。
【0008】
しかしながら,一方で,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合,トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて,その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ,虹ムラとも言う)が目立ち,視認性に劣るという問題を有している。この問題について,たとえば特開2009-109993号公報(特許文献3)では,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板と,ヘイズ値を制御した防眩層を付与した偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を構成することで,色ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら,この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり,より効果的な手法の確立が望まれていた。
【先行技術文献】
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで,本発明の目的は,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって,液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ,かつ薄型化を実現し,コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また,本発明のもう一つの目的は,前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。」

エ 「【0038】
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは,一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し,横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム,または,製膜後引き続いて縦延伸し,次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは,延伸により屈折率の異方性および,それらで規定される位相差値,Nz値,光軸を任意に制御することができ,本発明においては,必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。」

オ 「【0071】
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて,上記縦延伸または横延伸における延伸倍率は,フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であるn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であるn_(y),厚み方向の屈折率であるn_(z)を制御する上で最も重要な因子であり,一般的に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製において,一軸延伸は,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が比較的小さい,二軸延伸は比較的大きいフィルムを作製することに適している。
【0072】
本発明の偏光板においては,かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして,Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで,かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は,2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し,好ましくは1.5以下,より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は,かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し,視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合,色ムラ低減効果を得ることができない。なお,Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ,この場合,Nz係数の値が高いほど,色ムラ低減に有利である。
【0073】
また,本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,膜厚をdとしたときに,(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmのものが好適に採用できる。R_(0)がかかる範囲外,すなわちR_(0)が1200を超え,2000nm未満の範囲にある場合は,比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって,より効果的に色ムラを低減する観点から,面内位相差値R_(0)は,1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また,R_(0)が200nm未満と小さい場合は,安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり,生産性やコストの面に問題を有する。一方で,R_(0)が7000nmを超える場合は,Nz係数は低減させやすいものの,機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。」

カ 「【0079】
本発明の偏光板に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは,15?75μmの範囲内であることが好ましく,20?60μmの範囲内であることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが15μm未満である場合には,ハンドリングしにくい(取り扱い性に劣る)傾向にあり,また厚みが75μmを超える場合には,厚膜となるためコスト高となり,さらには,薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。」

キ 「【0217】
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板,すなわち,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は,粘着剤層から剥離フィルムを剥離して,液晶セルの片面または両面に貼合し,液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは,液晶表示装置に適用することができる。
【0218】
本発明の偏光板は,たとえば,液晶表示装置において,光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは,液晶セルを基準に,液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合,当該偏光板は,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に,防眩層,ハードコート層,反射防止層,および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また,液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は,本発明の偏光板であってもよいし,従来公知の偏光板であってもよい。
【0219】
本発明の偏光板は,また,液晶表示装置において,光入射側に配置される偏光板として用いることもできる。この場合,液晶表示装置の光出射側に配置される偏光板は,本発明
の偏光板であってもよいし,従来公知の偏光板であってもよい。
【0220】
・・・(中略)・・・
【0222】
液晶表示装置を構成するバックライトも,一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば,拡散板とその背後に配置された光源で構成され,光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや,導光板とその側方に配置された光源で構成され,光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで,その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては,蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや,発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。」

ク 「【0235】
【表1】



ク 上記各記載から,B甲1には以下の発明(以下「B甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「バックライトと,光入射側に配置される偏光板と,液晶セルと視認側に配置される偏光板とを備えた液晶表示装置であって,
前記光入射側に配置される偏光板及び前記視認側に配置される偏光板の少なくともいずれかは,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離して,液晶セルの片面または両面に貼合されたものであり,
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値であり,
面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y),厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満である,
液晶表示装置。」

(2)B甲2に記載された事項
B甲2(齋藤晴司 著,「絵とき光学基礎のきそ」,日刊工業新聞社,66?67ページ)には,一般に,何も断らずに屈折率という場合には,波長589.3nmのときの屈折率を示すことが習慣となっている旨が記載されている。

(3)B甲3に記載された事項
B甲3(特表2013-539598号公報)には,前記1「(4)A甲11に記載された事項」に記載したとおりの事項が記載されている。

(4)B甲4に記載された事項
B甲4(ジェイソン・ハートラブ,“LEDバックライトの量子ドット技術,LCDで広い色域を実現”,LEDs Magazine Japan, 2011年12月)には,B甲3に記載されたもの(すなわち,前記1「(4)A甲11に記載された事項」)と同様の事項が記載されている。

(5)B甲5に記載された事項
B甲5(福田由美 他,“高効率と高演色性をともに実現できる白色LED用緑色サイアロン蛍光体”,東芝レビュー,Vol.64,No.4)には,青色LEDと緑色及び赤色蛍光体を組み合わせて白色LEDを構成することが記載されている。

(6)対比
ア 本件発明1とB甲1発明とを対比する。

イ B甲1発明の「バックライト」,「光入射側に配置される偏光板」,「液晶セル」及び「視認側に配置される偏光板」は,それぞれ本件発明1の「光源ユニット」,「光源ユニット側の偏光板」,「液晶セル」及び「視認側の偏光板」に相当する。

ウ B甲1発明の「バックライトと,光入射側に配置される偏光板と,液晶セルと視認側に配置される偏光板とを備えた液晶表示装置」は,本件発明1の「光源ユニットと,光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置」に相当する。

エ B甲1発明に係る偏光板の少なくともいずれかは,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有」し,偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離して,液晶セルの片面または両面に貼合されたものであるから,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は,「偏光フィルム」から見て液晶セルの反対側に配置されることとなり,このことから,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」が保護フィルムとなることは明らかである。
よって,B甲1発明の,「前記光入射側に配置される偏光板及び前記視認側に配置される偏光板の少なくともいずれかは,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離して,液晶セルの片面または両面に貼合されたものであ」ることは,本件発明1の,「前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と,前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有」することに相当する。

オ B甲1発明においては,「前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値であ」ることについて,特定の波長における「面内の位相差値」であることは,B甲1の記載から見いだせないから,当該「面内の位相差値」は,前記「(2)B甲2に記載された事項」のとおり波長589.3nmにおけるものと認められる。
そうすると,B甲1発明においては,「前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値であ」ることは,本件発明1の「前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であ」ることに相当する。

カ よって,両者は以下の点で一致する。
「光源ユニットと,光源ユニット側の偏光板と,液晶セルと,視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって,
前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と,前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し,
前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上である液晶表示装置。」

キ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点3》
本件発明1は,「少なくとも400?500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500?600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600?680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源ユニットであって,前記光源ユニットが出射する光は,緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり,波長460nm?520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し,波長520nm?560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し,波長560nm?620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し,前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であ」る「光源ユニット」を備えるが,B甲1発明は上記特性を備える「光源ユニット」を備えない点。

《相違点4》
本件発明1は,「前記第1の保護フィルムの温度40℃,相対湿度90%における透湿度が100g/m^(2)/day以下である」構成を備えるが,B甲1発明が当該構成を備えることは明らかでない点。

(7)判断
ア 上記相違点3について検討する。
イ 前記(1)ウに摘記したとおり,B甲1発明は,液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく,視認性に優れ,かつ薄型化を実現し,コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を用いた液晶表示装置として構成されたものである。
そして,前記(1)オ,カに摘記したとおり,B甲1には,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmのものが好適に採用でき,R_(0)が7000nmを超える場合は,Nz係数は低減させやすいものの,機械的強度に劣るフィルムとなり好ましくない旨の記載がある。
また,前記(1)キに摘記したとおり,B甲1には,液晶表示装置を構成するバックライトも,一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよく,発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができることが記載されている。

ウ ところで,B甲3には,前記1「(4)A甲11に記載された事項」のクの技術事項が記載され,当該技術事項は,さらにB甲4にも記載されていることから,従来より周知であるといえる。
そして,当該周知技術(以下「量子ドット蛍光体技術」という。)は,ディスプレイの色域を増大および/または消費電力を低下させる効果を奏する技術であって,当該各効果は,ディスプレイ一般において要求されるものであるから,B甲1発明において,量子ドット蛍光体技術を適用する動機は,一応存在するものといえる。

エ しかしながら,以下のとおり,本件発明1が奏する効果は,B甲1発明において量子ドット蛍光体技術を適用したものについて,当業者が,予測できる範囲を越えるものである。
B甲1には,実施例3(面内位相差が3950nmのポリエチレンテレフタレートを用いたもの)の色ムラ強度が「比較的弱い」とされているところ,これと同程度の面内位相差フィルムを用いた本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)に記載された比較例6,すなわち,青色LEDと量子ドットを含む蛍光体を組み合わせたものを光源として,保護フィルムを面内リタデーション(589)を4104nmであるポリエチレンテレフタレートとしたものにおいては,虹ムラが強く視認されるとされている。
すなわち,B甲1発明において色ムラ強度が「比較的弱い」とされる程度の面内位相差が3950nmと同等のポリエチレンテレフタレートを,量子ドット蛍光体技術と組み合わせたものといえる,本件明細書に係る比較例6においては,虹ムラが強く視認されるものとされている。

オ よって,前記ウのとおり,B甲1発明において,量子ドット蛍光体技術を適用する動機は,一応存在するものといえるものの,前記エのとおり,本件明細書に係る比較例6からは,当該適用によって,B甲1発明から予測できる程度の効果が得られるとはいえない。もしくは,本件明細書における虹ムラの評価基準が,B甲1における評価基準よりも厳しいものであり,これを翻せば,本件明細書における虹ムラの評価基準により,「虹ムラが視認されない」本件発明1による虹ムラ解消の効果は,B甲1発明が奏する効果よりもはるかに大きいということになる。
したがって,本件発明1の虹ムラ解消の効果は,B甲1および前記周知技術からは予測できないほど顕著な効果であるといえる。

カ また,B甲6ないしB甲8を参照しても,本件発明1の虹ムラ解消の効果が,B甲1および前記周知技術から予測できる程度の効果であるとはいえない。

キ したがって,周知技術及びB甲2ないしB甲8に記載された事項を参酌しても,B甲1発明において相違点3に係る構成を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。

(8)小括
よって,相違点4について検討するまでもなく,本件発明1は,B甲1発明及びB甲2?B甲8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(9)本件発明2?11について
本件発明2?11は,本件発明1に係る構成を全て含むものであるから,本件発明2?11については,上記(1)?(8)と同様の理由によって,周知技術及びB甲2ないしB甲8に記載された事項を参酌して,B甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


3 理由2について
(1)理由2は,視認側の偏光板が通過する光は,光源ユニットから出射される光そのものではなく,LCDパネル中のカラーフィルタによって,スペクトルが変化するのであって,光源ユニットのスペクトルとカラーフィルタの透過特性があいまって,視認側偏光板が通過するスペクトルが定まるものであるところ,本件発明1?11においては,光源ユニットのスペクトルのみが規定され,また,本件明細書の記載を見ても,全てのカラーフィルタについて一般化することはできない,というものである。

(2)しかしながら,A甲10の図1にも示されているように,一般に,LCDパネル中のカラーフィルタについては,RGB各色の通過帯域は比較的広いものに設定されており,また,A甲10(1ページ右欄1?15行)には,各色の通過帯域を狭くすることは現実的ではない旨の記載もある。
そして,A甲10の図1に示されているカラーフィルタの通過帯域を,A甲10の図2に示された,量子ドット蛍光体技術を用いた光源のスペクトル(これは,本件発明1に係る光源ユニットの特性を満たすものである。)に重ねると,RGB各色のスペクトルは,いずれもカラーフィルタの通過帯域内に収まり,前記量子ドット蛍光体技術を用いた光源のスペクトルと,カラーフィルタを通過した後のスペクトルはほぼ同じものとなることがわかる。
別の見方をすると,A甲10の図1に示されている,一般的なカラーフィルタの通過帯域に合うように,量子ドット蛍光体技術を用いた光源のRGB各色のスペクトルが設計されているともいえる。
すなわち,通常,量子ドット蛍光体技術を用いた光源については,当該光源が発したRGB各色の光を無駄なく利用すべく,一般的なカラーフィルタによって光の減衰が発生しないようなスペクトルを持つものとされており,本件発明1?11においては,そのようなスペクトルが,光源ユニットの特性として規定されていると解される。

(3)よって,本件発明1?11においては,光源ユニットの特性が一般的なカラーフィルタ特性に合わせたものとして規定されているといえるから,当該カラーフィルタの特性が規定されていないことをもって,本件の特許請求の範囲の記載が,本件明細書の記載によって支持されていないとまではいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,理由1-1によって本件請求項1?11に係る特許を,理由1-2によって本件請求項1?11に係る特許を,理由2によって本件請求項1?11に係る特許を,それぞれ取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-09-19 
出願番号 特願2014-99880(P2014-99880)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G02F)
P 1 651・ 121- Y (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯野 光司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6169530号(P6169530)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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