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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60Q
管理番号 1344871
異議申立番号 異議2018-700634  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-31 
確定日 2018-10-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6271943号発明「車両用灯具の制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6271943号の請求項1ないし3、6ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6271943号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成25年10月21日を出願日とする特許出願(特願2013-218686号。優先権主張 平成24年10月24日)であって、平成30年1月12日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年7月31日に特許異議申立人 松本 征二(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6271943号の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両前後方向及び車両上下方向の加速度を導出可能な、加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時及び減速時の少なくとも一方における前記検出値をプロットし、プロットした複数点から直線を導出し、前記直線の傾きを用いて車両用灯具の光軸調節を指示する調節信号を出力するための制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の曲進状態及び所定の坂道走行状態の少なくとも1つに車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれる場合、この検出値を除外して前記直線を導出することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検出値における車両左右方向の加速度と、複数の検出値における車両左右方向の加速度から導出される曲進判定基準値との差が、所定の曲進判定しきい値を上回る場合、又は、
前記検出値における車両前後方向の加速度と、車速から算出された車両前後方向の加速度との加速度差が、所定の坂道走行判定しきい値を上回る場合に、
この検出値を除外して前記直線を導出する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、基準値更新部を備え、
前記基準値更新部は、前記曲進判定基準値を、所定のタイミングで繰り返し更新する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、しきい値調整部を備え、
前記しきい値調整部は、前記曲進判定しきい値の大きさを、車速又は車両の加速度に応じて調整する請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、車両前後方向の加速度のしきい値を設定する坂道用加速度しきい値設定部を備え、
前記加速度差が前記坂道走行判定しきい値以下であり、且つ前記坂道走行判定しきい値よりも小さい第2の坂道走行判定しきい値を上回る場合、前記坂道用加速度しきい値設定部は車両前後方向の第1の加速度しきい値を設定し、前記制御部は車両前後方向の加速度が当該第1の加速度しきい値以下の検出値を用いて前記直線を導出し、
前記加速度差が前記第2の坂道走行判定しきい値以下の場合、前記坂道用加速度しきい値設定部は前記第1の加速度しきい値よりも大きい車両前後方向の第2の加速度しきい値を設定し、前記制御部は車両前後方向の加速度が当該第2の加速度しきい値以下の検出値を用いて前記直線を導出する請求項2乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
車両前後方向及び車両上下方向の加速度を導出可能な、加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時及び減速時の少なくとも一方における前記検出値をプロットし、プロットした複数点から直線を導出し、前記直線の傾きを用いて車両用灯具の光軸調節を指示する調節信号を出力するための制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、基準値更新部を備え、
前記基準値更新部は、前記凹凸路走行判定基準値を、所定のタイミングで繰り返し更新する請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、しきい値調整部を備え、
前記しきい値調整部は、前記凹凸路走行判定しきい値の大きさを、車速又は車両の加速度に応じて調整する請求項6又は7に記載の制御装置。」

第3 申立理由の概要
1 申立人の主張の概要
本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術的事項(周知の技術的事項)に基いて、本件発明6?7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証?甲第7号証に記載された技術的事項(周知の技術的事項)に基いて、当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1?3、6?7に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立人が提出した証拠方法
(1)甲第1号証
特開2012-106719号公報

(2)甲第2号証
特開2012-30782号公報

(3)甲第3号証
特開2000-233682号公報

(4)甲第4号証
特開2001-58539号公報

(5)甲第5号証
特開2006-27300号公報

(6)甲第6号証
特開2010-149766号公報

(7)甲第7号証
特開2009-282022号公報

第4 当審の判断
1 各甲号証の記載等
(1)甲第1号証に記載された事項及び発明
本件特許の優先日前に頒布された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】
加速度センサで検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な加速度を受信するための受信部と、
車両の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部と、
前記制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部と、
を備えたことを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサの検出値を経時的にプロットし、少なくとも2点から得られる直線またはベクトルの傾きを前記比率とする請求項1に記載の制御装置。」

(1b)「【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置、車両用灯具システム、および車両用灯具の制御方法に関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置、車両用灯具システム、および車両用灯具の制御方法に関するものである。」

(1c)「【0021】
(実施形態1)
・・・
【0034】
続いて、上述の構成を備えた車両用灯具システム200によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3(A)および図3(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図3(A)は、後述する車両姿勢角度θvが変化していない状態を示し、図3(B)は、車両姿勢角度θvが変化している状態を示している。また、図3(A)および図3(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速あるいは後進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図4は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を表すグラフである。
【0035】
たとえば、車両後部の荷室に荷物を載せたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、照射制御部228L,228Rは、車両制御部302を経由して加速度センサ316の検出値を受信し、レベリング制御部236を介してレベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで車両300の使用状況に応じて車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
【0036】
加速度センサ316は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ316は、センサのX軸が車両300の前後軸と、センサのY軸が車両300の左右軸と、センサのZ軸が車両300の上下軸と沿うように車両300に取り付けられている。加速度センサ316は、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを検出し、3軸方向における重力加速度ベクトルGの各軸成分の数値を出力する。すなわち、加速度センサ316は、水平面に対する路面の傾斜角度(第1角度)である路面角度θrと、路面に対する車両の傾斜角度(第2角度)である車両姿勢角度θvとが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度(合計角度)である合計角度θをベクトルとして検出することができる。また、加速度センサ316は、車両300の走行時、重力加速度ベクトルGと車両300の移動により生じる運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出し、3軸方向における合成加速度ベクトルβの各軸成分の数値を出力する。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv、および合計角度θは、それぞれX軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。また、以下の説明では加速度センサ316のY軸方向の成分、すなわち車両300のロール方向の角度は考慮しない。なお、加速度センサ316は、任意の姿勢で車両300に取り付けられてもよい。この場合、加速度センサ316から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、照射制御部228Rによって車両の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換される。
【0037】
オートレベリング制御は、車両のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御することが望まれる。これを実現するためには、加速度センサ316から得られる合計角度θから、車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
【0038】
ここで、車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図3(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は加速度センサ316のX軸(あるいは車両300の前後軸)は路面に対して平行となるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ316のX軸に平行なベクトルとなる。よって、車両の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に加速度センサ316によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して平行な直線となる。一方、図3(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ316のX軸は路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ316のX軸に対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して傾いた直線となる。
【0039】
そこで、照射制御部228Rは、受信部228R1によって加速度センサ316から車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信する。そして、制御部228R2において車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率を算出する。例えば、照射制御部228Rは、図4に示すように車両前後方向の加速度を第1軸(x軸)に設定し車両上下方向の加速度を第2軸(z軸)に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ316の検出値を経時的にプロットする。点t_(A1)?t_(An)は、図3(A)に示す状態での時間t_(1)?t_(n)における加速度センサ316の検出値である。点t_(B1)?t_(Bn)は、図3(B)に示す状態での時間t_(1)?t_(n)における加速度センサ316の検出値である。そして、少なくとも2点から得られる直線またはベクトルの傾きを上述した比率として算出する。本実施形態では、照射制御部228Rは、プロットされた複数点t_(A1)?t_(An),t_(B1)?t_(Bn)に対して最小二乗法などを用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを比率として算出する。
【0040】
車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ316の検出値から、x軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ316の検出値から、車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、車両300の加減速時における車両前後方向および車両上下方向の加速度の時間変化量の比率の変化を計測することで、加速度センサ316の検出値から、車両姿勢角度θvについての情報として車両姿勢角度θvの変化を知ることができる。そして、得られた車両姿勢角度θvの変化情報を利用することで、より高精度なオートレベリング制御を実現することができる。
【0041】
本実施形態に係る車両用灯具システム200は、上述した比率の変化を検出することで得られる車両姿勢角度θvについての情報を利用して、次のようなオートレベリング制御を実行する。すなわち、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態では、車両300の運転席に1名乗車している状態、あるいは空車状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作、または照射制御部228Rと加速度センサ316とを車両制御部302を介して接続するCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、照射制御部228Rに初期化信号が送信される。照射制御部228Rに送信された初期化信号は、受信部228R1で受信されて制御部228R2に送られる。制御部228R2は、初期化信号を受けると、受信部228R1が受信した加速度センサ316の出力値を基準傾斜角度として用いて、初期エイミング調整を実施する。また、制御部228R2は、このときの加速度センサ316の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ228R4に記録することで、これらの基準値を保持する。
【0042】
車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。そこで、制御部228R2は、車両走行中に合計角度θが変化した場合、光軸調節を指示する制御信号の生成を回避する。なお、制御部228R2は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する制御信号を生成し、送信部228R3からレベリング制御部236に送信するようにしてもよい。車両300が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。前記『車両走行中』は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。この『車両走行中』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0043】
そして車両停止時に、制御部228R2は、加速度センサ316で検出された現在の合計角度θから、メモリ228R4から読み出した車両姿勢角度θvの基準値を減算して、車両停止時の路面角度θrを計算する。そして、この路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値としてメモリ228R4に記録する。前記『車両停止時』は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ316の検出値が安定したときである。加速度センサ316の検出値が安定したときとするのは、車両300が停止してから車両姿勢が安定するまでに若干の時間を要し、車両姿勢が安定していない状態では正確な合計角度θを検出することが困難なためである。この『安定した時』は、加速度センサ316の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後としてもよい。前記『車両停止時』、『所定量』、および『所定時間』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0044】
一方、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。そこで、制御部228R2は、車両停止中に合計角度θが変化した場合、加速度センサ316の検出値とメモリ228R4から読み出した路面角度θrの基準値とから得られる車両姿勢角度θvを用いて、光軸調節を指示する制御信号を生成する。具体的には、制御部228R2は、車両停止中に所定のタイミングで繰り返し車両姿勢角度θvを計算する。車両姿勢角度θvは、加速度センサ316から受信した現在の合計角度θからメモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値を減じて得られる。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvとメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合に、新たに得られた車両姿勢角度θvに基づいて制御信号を生成する。これにより、頻繁な光軸調節を回避でき、その結果、制御部228R2の制御負担を軽減することができ、またレベリングアクチュエータ226の長寿命化を図ることができる。生成された制御信号は、送信部228R3によってレベリング制御部236に送信され、制御信号に基づいた光軸調節が実行される。計算された車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ228R4に記録される。
【0045】
前記『車両停止中』は、例えば加速度センサ316の検出値が安定したときから車両発進時までであり、この『車両発進時』は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときである。前記『車両停止中』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0046】
車両の加速時および減速時の少なくとも一方、たとえば車両が発進したときあるいは停止するときの所定時間、制御部228R2は、加速度センサ316の出力値を記録する。制御部228R2は、車両上下方向の加速度を第1軸とし車両上下方向の加速度を第2軸とした座標に、記録した出力値をプロットし、最小二乗法により直線近似式を連続的、あるいは所定時間毎に算出する。そして、制御部228R2は、得られた直線近似式の傾きの変化に基づいて灯具ユニット10の光軸調節を指示する制御信号を生成し、これにより光軸位置を補正する。また、あわせてメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を補正する。例えば、制御部228R2は、得られた直線近似式の傾きと前回の計算で得られた直線近似式の傾きとを比較し、直線近似式の傾きの変化が検出された場合、当該傾きの変化に基づいて補正処理を実行する。
【0047】
また、例えば、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvがp°であり、直線近似式の傾きの変化の初回計算からの積算値がq°であったとする。あるいは、前回の車両停止中における車両姿勢角度θvの変化量、すなわち車両停止時に保持していた車両姿勢角度θvと車両発進時に保持していた車両姿勢角度θvとの差がp°であり、前回の発進時に算出した直線近似式と今回の発進時に算出した直線近似式との傾きの差がq°であったとする。この場合、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの誤差(p-q)°だけ光軸位置を調節するための制御信号を生成し、送信部228R3が当該制御信号を送信する。また、制御部228R2は、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を(p-q)°だけ補正する。これにより、上述したように路面角度θrおよび車両姿勢角度θvの基準値を繰り返し書き換えることで加速度センサ316の検出誤差等が積み重なって、オートレベリング制御の精度が低下してしまうことを回避することができる。あるいは、オートレベリング制御の精度低下を軽減することができる。
【0048】
あるいは、光軸位置および車両姿勢角度θvの基準値の補正方法は、次のようであってもよい。すなわち、車両300の加減速に起因した車両姿勢の傾きや、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾き等の外乱を除外できない場合、直線近似式の傾きの変化量が車両姿勢角度θvの変化量から大きくずれる可能性がある。この場合、直線近似式の傾きの変化量だけ光軸位置および車両姿勢角度θvの基準値を補正しても、実際の車両姿勢角度θvからずれてしまう。また、直線近似式の傾きが変化していることから実際の車両姿勢角度θvが保持している基準値からずれている可能性が高いため、保持している基準値を使用して光軸調節を実施しても高精度にオートレベリング制御を実施できない可能性がある。そこで、制御部228R2は、前記比率あるいは直線近似式の傾きの変化が検出された場合に、当該傾きの変化に基づく光軸位置の補正制御として、光軸位置を水平方向あるいは初期位置に近づけ、車両姿勢角度θvの基準値を0°に近づけるように補正する。これにより、灯具ユニット10の光軸位置を車両姿勢角度θvの変化に精度良く追従させることができなくなった場合でも、光軸位置を水平あるいは初期位置に近づけて運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。
【0049】
なお、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvと、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合に、計算された車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ228R4に記録するようにしてもよい。同様に、制御部228R2は、計算された路面角度θrと、メモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値との差が所定量以上であった場合に、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録するようにしてもよい。これにより、路面角度θrあるいは車両姿勢角度θvの基準値が頻繁に書き換えられることを回避できる。また、制御部228R2は、車両300の発進時の合計角度θと停止時の合計角度θとが異なる場合に路面角度θrを計算してもよい。これにより、制御部228R2の制御負担を軽減することができる。
【0050】
また、制御部228R2は、車両300の1回の発進から停止までの間における加減速時の加速度センサ316の検出値を記録しておき、車両停止時などに直線近似式を算出して、上述の補正処理を実行してもよい。
【0051】
図5は、実施形態1に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御のフローチャートである。図5のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。また、Sと数字との組み合わせによって表示した処理で何らかの判断処理が実行され、その判断結果が肯定的であった場合は、Y(Yesの頭文字)を付加して、例えば(S101のY)と表示し、逆にその判断結果が否定的であった場合は、N(Noの頭文字)を付加して、例えば(S101のN)と表示する。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に照射制御部228R(制御部228R2)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
【0052】
まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S101)。車両走行中である場合(S101のY)、制御部228R2は、車両が加減速中であるか判断する(S102)。車両の加減速は、加速度センサ316の検出値、アクセルペダルやブレーキペダル(ともに図示せず)の踏み込みの有無等から検知することができる。車両が加減速中である場合(S102のY)、制御部228R2は、加速度センサ316の複数の出力値から直線近似式を算出し、得られた直線近似式の傾きと前回算出した直線近似式の傾きとを比較する(S103)。そして、制御部228R2は、直線近似式の傾きの変化を検出したか判断する(S104)。直線近似式の傾きの変化が検出された場合(S104のY)、制御部228R2は、光軸調節を指示する制御信号を生成して光軸位置を補正し、車両姿勢角度θvの基準値を補正する(S105)。その後、制御部228R2は、加速度センサ316によって検出された合計角度θが変化しても光軸調節を指示する制御信号を生成せずに、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。また、制御部228R2は、車両が加減速中でない場合(S102のN)、および直線近似式の傾きの変化が検出されない場合(S104のN)も、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。
【0053】
車両走行中でない場合(S101のN)、制御部228R2は、車両停止時であるか判断する(S107)。車両停止時である場合(S107のY)、制御部228R2は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減じて路面角度θrを計算し(S108)、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録する(S109)。そして、照射制御部228Rは、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。
【0054】
車両停止時でない場合(S107のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部228R2は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減じて車両姿勢角度θvを計算する(S110)。続いて、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であるか判断する(S111)。差が所定量未満である場合(S111のN)、制御部228R2は、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。差が所定量以上である場合(S111のY)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvに基づいて光軸位置を調節する(S112)。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを基準値としてメモリ228R4に記録し(S113)、本ルーチンを終了する。
【0055】
なお、左側の前照灯ユニット210Lについては、照射制御部228L(制御部228L2)が同様の制御を実行する。あるいは、照射制御部228L,228Rの一方が車両姿勢角度θvや路面角度θrを計算し、他方は計算された車両姿勢角度θvや路面角度θrを取得して光軸Oを調節する構成であってもよい。
【0056】
また、車両走行中は、一般に車両300が一定速度を維持する時間は短く、大部分の時間は加減速していると推定することができる。そのため、車両300が加速または減速しているかを判断するステップ102を省略してもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、加速度センサ316で検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な加速度を受信し、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて灯具ユニット10の光軸を調節する。このように、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両加減速時における車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化から車両姿勢角度θvの変化を取得するという新たな抽出方法を用いて、車両姿勢角度θvについての情報を取得している。すなわち、車両用灯具システム200は、加速度センサ316のプロット特性から車両姿勢角度θvについての情報を取得している。そのため、本実施形態に係る車両用灯具システム200によれば、加速度センサ316によって検出された合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する新たな技術を提供することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両走行中に合計角度θが変化した場合に、変化した合計角度θと車両姿勢角度θvの基準値とから路面角度θrを導出して、保持している路面角度θrの基準値を書き換え、車両停止中に合計角度θが変化した場合に、変化した合計角度θと路面角度θrの基準値とから車両姿勢角度θvを導出し、保持している車両姿勢角度θvの基準値を書き換えている。そして、車両用灯具システム200は、車両300の加減速時に、上述した方法で抽出した車両姿勢角度θvについての情報を利用して、灯具ユニット10の光軸位置を補正している。そのため、加速度センサを用いたオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。」

(1d)甲第1号証には以下の図が示されている。




以上の記載事項(1a)?(1d)を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
<引用発明>
「加速度センサ316で検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な加速度を受信するための受信部228R1、228L1と、
車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部228R2、228L2と、
前記制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部228R3、228L3と、
を備えた車両用灯具の制御装置228R、228Lであって、
前記制御部228R2、228L2は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ316の検出値を経時的にプロットし、少なくとも2点から得られる直線またはベクトルの傾きを前記比率とする
車両用灯具の制御装置228R、228L。」

(2)甲第2号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(2a)「【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置、車両用灯具、および車両用灯具の制御方法に関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置、車両用灯具、および車両用灯具の制御方法に関するものである。」

(2b)「【0038】
また、車両制御部302は、車両300に搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314、傾斜検出装置としての加速度センサ316などからの情報も取得可能である。そして、これにより照射制御部228L,228Rは、車両300の走行状態や姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸Oの方向を変化させて簡易的に配光パターンを変化させたりすることができる。たとえば、車両後部の荷室に荷物を載せたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、照射制御部228L,228Rは、車両制御部302を経由して加速度センサ316から車両300の傾斜角度を受信し、レベリング制御部236を介してレベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで車両300の使用状況に応じて車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。このような制御モードをオートレベリング制御モードという場合がある。以上説明した各種制御モードを含む配光パターンの自動形成制御は、例えばライトスイッチ304によって配光パターンの自動形成制御が指示された場合に実行される。
【0039】
なお、本実施形態では、水平面に対する車両300の傾斜角度を検出するための傾斜検出装置の一例として加速度センサ316を用いているが、傾斜検出装置は、加速度センサ316に限定されず、例えば、ジャイロセンサや地磁気センサなどの他のセンサを用いてもよい。
【0040】
続いて、上述の構成を備えた車両用灯具システム200によるオートレベリング制御について詳細に説明する。
【0041】
本実施形態にかかる車両用灯具システム200の加速度センサ316は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ316は、センサのX軸が車両300の前後軸と、センサのY軸が車両300の左右軸と、センサのZ軸が車両300の上下軸と沿うように車両300に取り付けられている。加速度センサ316は、重力加速度ベクトルと車両300の移動により生じる運動加速度ベクトルとが合成された合成加速度ベクトルを検出することができ、3軸方向における合成加速度ベクトルの各成分の数値を出力する。加速度センサ316は、車両300が静止状態にある場合、3軸方向における重力加速度ベクトルの各成分の数値を出力する。すなわち、加速度センサ316は、水平面に対する路面の傾斜角度(第1角度)と、路面に対する車両の傾斜角度(第2角度)とが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度(合計角度)をベクトルとして検出することができる。言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。以下適宜、水平面に対する路面の傾斜角度を「路面角度」と称して符号θrを付し、路面に対する車両の傾斜角度を「車両姿勢角度」と称して符号θvを付し、水平面に対する車両の傾斜角度を「合計角度」と称して符号θを付す。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv、および合計角度θは、それぞれX軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。
・・・
【0043】
ここで、オートレベリング制御は、車両の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。そこで、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御する。
【0044】
また、本実施形態では、車両停止中の合計角度θの変化が車両姿勢角度θvの変化と推定され、車両走行中の合計角度θの変化が路面角度θrの変化と推定される。すなわち、走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。一方、車両停止中は車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。照射制御部228Rは、加速度センサ316の検出値から合計角度θを導出し、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸位置の調節を指示する制御信号を生成し、車両走行中の合計角度θの変化に対しては当該制御信号の生成を回避する。そして、制御信号をレベリング制御部236に送信する。なお、照射制御部228Rは、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する制御信号を生成し、この制御信号をレベリング制御部236に送信するようにしてもよい。
【0045】
具体的には、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態では、車両300の運転席に1名乗車している状態、あるいは空車状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作、または照射制御部228Rと加速度センサ316とを車両制御部302を介して接続するCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、照射制御部228Rに初期化信号が送信される。照射制御部228Rに送信された初期化信号は、受信部228R1で受信されて制御部228R2に送られる。制御部228R2は、初期化信号を受けると、受信部228R1が受信した加速度センサ316の出力値を基準傾斜角度として用いて、初期エイミング調整を実施する。また、制御部228R2は、路面角度θrの基準値=0°、車両姿勢角度θvの基準値=0°という情報をメモリ228R4に記録することで、これらの基準値を保持する。
【0046】
車両走行中は、制御部228R2(照射制御部228R)は光軸位置の調節を指示する制御信号の生成を回避する。車両300が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。前記『車両走行中』は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。この『車両走行中』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0047】
そして車両停止時に、制御部228R2は、加速度センサ316の検出値から導出された現在の車両300の傾斜角度、すなわち合計角度θから、メモリ228R4から読み出した車両姿勢角度θvの基準値を減算して、車両停止時の路面角度θrを計算する。そして、この路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値としてメモリ228R4に記録する。前記『車両停止時』は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ316の検出値が安定したときである。加速度センサ316の検出値が安定したときとするのは、車両300が停止してから車両姿勢が安定するまでに若干の時間を要し、車両姿勢が安定していない状態では正確な合計角度θを検出することが困難なためである。この『安定した時』は、加速度センサ316の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後としてもよい。前記『車両停止時』、『所定量』、および『所定時間』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
・・・
【0049】
車両停止中、制御部228R2は、所定のタイミングで繰り返し車両姿勢角度θvを計算する。車両姿勢角度θvは、現在の合計角度θからメモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値を減じて得られる。計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合、制御部228R2は、新たに得られた車両姿勢角度θvに基づいて光軸調節のための制御信号を生成する。そして、この制御信号に基づいて光軸が調節される。また、計算された車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ228R4に記録される。このように、計算された車両姿勢角度θvと基準値との差が所定量以上であった場合に光軸調節を実施することで、頻繁な光軸調節を回避できる。その結果、制御部228R2の制御負担を軽減することができ、またレベリングアクチュエータ226の長寿命化を図ることができる。前記『車両停止中』は、例えば加速度センサ316の検出値が安定したときから車両発進時までであり、この『車両発進時』は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときである。なお、車両姿勢角度θvの計算は、所定のタイミングで繰り返し行わず、車両発進時に行ってもよい。前記『車両停止中』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。」

(2c)「【0059】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具システム200は、車両走行中に生じ得る車両姿勢角度θvの変化を考慮して、オートレベリング制御を実施するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の主な構成や、オートレベリング制御の主なフロー、形成可能な配光パターンの形状などは実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。図4は、実施形態2に係る車両用灯具システムによるオートレベリング制御の説明図である。
【0060】
実施形態1では、車両走行中の車両傾斜角度(合計角度θ)の変化を路面角度θrの変化と推定している。これにより、簡単な制御構造でオートレベリング制御を高精度に実施することができる。しかしながら、稀ではあるものの、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化する場合がある。例えば、車両300がバスなどの大型車両である場合、車両走行中に乗員が車室内を移動する可能性があり、これにより車両姿勢角度θvが変化し得る。そのため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定した場合、実際の路面角度θrと推定された路面角度θrとの間に誤差が生じる可能性がある。
【0061】
そこで、本実施形態では、車両が発進する際および車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで、路面の水平判定が実施される。そして、路面水平判定の結果に応じて路面角度θrの基準値が補正される。
【0062】
車両発進の際の路面水平判定とその結果に応じた基準値補正は、次のように実施される。まず、制御部228R2は、車両300が発進したか判断する。制御部228R2は、車速センサ312の検出値から得られる単位時間あたりの車速変化量(車両300の運動加速度)が所定値以上である場合に車両300が発進したと判断することができる。車両300が発進したと判断される運動加速度の所定値は、適宜設定可能である。また、制御部228R2は、車両300が直進しているか判断する。制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値、あるいは加速度センサ316のY軸成分の数値から車両の直進を判断することができる。例えば、制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値からハンドル角が0°付近である場合に車両300が直進していると判断する。車両300が直進していると判断されるステアリング角の範囲は、適宜設定可能である。
【0063】
車両300が直進している場合、制御部228R2は、車両発進から所定時間後に車速センサ312、あるいは加速度センサ316から得られる車両300の運動加速度ベクトルの大きさの2乗と、加速度センサ316の検出値ベクトルの大きさの2乗とを計算する。そして、その差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、制御部228R2は、保持している路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正する。
・・・
【0074】
前記『車両発進から所定時間後』および『車両停止から所定時間前』は、それぞれの補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された地点の路面と実質的に路面角度θrが等しい路面上で上述の水平判定を実施することができる時間である。すなわち、車両発進の際であれば、発進直後の路面に対して水平判定を実施することで、補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された路面の水平を実質的に判定することができる。また、車両が停止する際であれば、停止直前の路面に対して水平判定を実施することで、補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された路面の水平を実質的に判定することができる。そして、判定の結果、路面が水平であるにもかかわらず路面角度θrの基準値が0°でない場合は、実際の路面角度θrと記録されている路面角度θrの基準値との間に誤差があることを意味するため、当該基準値が0°に近づくように補正される。
【0075】
これにより、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化した場合であっても、当該変化を考慮した路面角度θrの基準値を得ることができる。そして、補正された路面角度θrの基準値を用いて車両姿勢角度θvが計算されるため、車両姿勢角度θvをより正確に計算することができる。前記『車両発進から所定時間後』および『車両停止から所定時間前』は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。また、路面の水平判定は、運動加速度ベクトルの大きさの2乗と検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい状態が所定時間、例えば3秒以上継続した場合に、路面が水平であると判定するようにしてもよい。
【0076】
図5は、実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両発進の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0077】
まず、制御部228R2は、車両停止中であるか判断する(S201)。車両停止中でない場合(S201のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車両停止中である場合(S201のY)、制御部228R2は、車両300の運動加速度が所定値以上であるか判断する(S202)。すなわち、制御部228R2は、車両300が発進したか判断する。運動加速度が所定値未満である場合(S202のN)、制御部228R2は、車両300の運動加速度が所定値以上であるか繰り返し判断する(S202)。運動加速度が所定値以上である場合(S202のY)、制御部228R2は、ハンドル角が0°付近であるか判断する(S203)。
【0078】
ハンドル角が0°付近でない場合(S203のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。ハンドル角が0°付近である場合(S203のY)、制御部228R2は、路面水平判定を実施する(S204)。そして、制御部228R2は、路面が水平であるか判断する(S205)。路面が水平でない場合(S205のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。路面が水平である場合(S205のY)、制御部228R2は、路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正し(S206)、本ルーチンを終了する。
【0079】
図6は、実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両停止の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0080】
まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S301)。車両走行中でない場合(S301のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車両走行中である場合(S301のY)、制御部228R2は、車両300の運動減速度が所定値以上であるか判断する(S302)。運動減速度が所定値未満である場合(S302のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。運動減速度が所定値以上である場合(S302のY)、制御部228R2は、ハンドル角が0°付近であるか判断する(S303)。
【0081】
ハンドル角が0°付近でない場合(S303のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。ハンドル角が0°付近である場合(S303のY)、制御部228R2は、車速センサ312の検出値から車速が0であるか判断する(S304)。車速が0でない場合(S304のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車速が0である場合(S304のY)、制御部228R2は、路面水平判定を実施し(S305)、路面が水平であるか判断する(S306)。路面が水平でない場合(S306のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。路面が水平である場合(S306のY)、制御部228R2は、路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正し(S307)、本ルーチンを終了する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200では、照射制御部228L,228Rが、車両が発進する際および車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで路面の水平判定を実施して、その結果に応じて路面角度θrの基準値を補正する。そのため、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化した場合であっても、当該変化を考慮した路面角度θrの基準値を得ることができるため、オートレベリング制御の精度をさらに高めることができる。」

(2d)「【0113】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。」

(2e)甲第2号証には以下の図が示されている。



(3)甲第3号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の前後方向の傾斜(以下、ピッチ角という)に基づいてヘッドランプの光軸をピッチ角相当相殺する方向に自動的に傾動調整(以下、オートレベリングという)する自動車用ヘッドランプのオートレベリング装置に係り、特に、主として停止時の車両のピッチ角に基づいてヘッドランプの光軸を上下に自動調整するオートレベリング装置に関する。」

(3b)「【0010】本発明は前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、アクチュエータの駆動頻度を減らすことで、安価にして長期の使用可能な自動車用ヘッドランプのオートレベリング装置を提供することであって、安定走行中における不適切なオートレベリングを改善することにある。」

(3c)「【0013】図1?図3は、本発明の一実施例を示すもので、図1は、本発明の第1の実施例である自動車用ヘッドランプのオートレベリング装置の全体構成図、図2は、同装置の制御部であるCPUによるフローチャートを示す図、図3は、走行開始後の車速と車両姿勢の特性を示す図である。
【0014】図1における符号1は、自動車用ヘッドランプで、ランプボディ2の前面開口部には、前面レンズ4が組付けられて灯室Sが画成されている。灯室S内には、光源であるバルブ6を挿着した放物面形状のリフレクター5が、水平傾動軸(図1における紙面と垂直な軸)7周りに傾動するように支持されるとともに、アクチュエータであるモータ10によって傾動調整できるように構成されている。
【0015】そして、ヘッドランプ1のオートレベリング装置は、ヘッドランプ1の光軸Lを上下方向に傾動調整するアクチュエータであるモータ10と、ヘッドランプ1の点灯スイッチ11と、車両の速度を検出する車速検出手段である車速センサー12と、車両のピッチ角検出手段の一部を構成する車高センサー14と、ヘッドランプの点灯と消灯を判別し、車速センサー12からの信号に基づいて車両の走行・停車状態を判別し、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するとともに、このピッチ角データに基づいてモータ10を駆動させるための制御信号をモータドライバ18に出力する制御部であるCPU16と、車高センサー14で検出され、CPU16で演算された車両のピッチ角データを記憶する記憶部20と、モータ10の駆動するタイミングを設定するためのインターバルタイマ22と、車両の安定走行時間を検出する安定走行時間検出タイマー24と、車両の旋回走行時間を検出する旋回走行時間検出タイマー26とから構成されている。
【0016】CPU16では、車速センサー12からの信号が入力すると、この入力信号に基づいて車両が停車中か走行中かを判別し、停車中は一定のインターバルでアクチュエータ10の駆動を制御し、走行中は、安定走行条件を満足した場合にのみ、しかも1回に限り、アクチュエータ10の駆動を制御する。
【0017】また、CPU16では、車高センサー14からの信号が入力すると、サスペンションの変位量に相当するこの信号から、車両の前後方向の傾斜(ピッチ角)を演算する。なお、この実施例に示す車両では、後輪側サスペンションの右輪側にのみ車高センサー14が設けられた1センサー方式が採用されており、車高センサ14の検出した車高の変化量から車両のピッチ角が推測できる。そして、CPU16は、検出されたこのピッチ角を打ち消す方向に、光軸Lを所定量傾動させるべくモータドライバ18に出力する。
・・・
【0021】即ち、ヘッドランプ1の光軸の傾動可能範囲は定まっており、したがって一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間も決まっている。そして、モータ駆動のインターバル(タイム)が一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間よりも短いと、人の乗り降りに伴う車両姿勢(ピッチ角)の変化に逐次追従してモータ10が頻繁に駆動することとなって、光軸L(モータ10)が目標位置まで到達することなく正転、逆転、停止を繰り返すこととなり、寿命の低下につながり、好ましいことではない。
【0022】そこで、モータ駆動のインターバルを、一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間よりも長い時間(例えば10秒)に設定することで、レベリング動作中(モータの駆動中)に光軸の目標位置が変わらないようになっている。
【0023】また、CPU16は、停車中に車速センサ12で検出されたピッチ角データに基づいてアクチュエータ10の駆動を制御するが、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがある。そこで、安定走行中に限り、しかも1回だけ、安定走行中に検出したピッチ角データに基づいてアクチュエータ10の駆動を制御して、この誤ったレベリング(光軸補正)を補正するようになっている。なお、車両停車中のピッチ角データが適切(停車中の車両が坂道停車とか縁石に乗り上げるなどの不自然な形態での停車ではない場合)であれば、安定走行中のピッチ角データは車両停車中のピッチ角データにほぼ等しく、したがって安定走行中のピッチ角データに基づいたレベリング後の光軸位置は、車両停車中に行われた最後のレベリング後の光軸位置とほぼ同一位置である。
【0024】また、CPU16は、車高センサー14からの信号を検出する際に、停車中では、比較的速いサンプリングタイムで演算を行い、走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、車両のピッチ角を演算するようになっている。
【0025】即ち、路面の凹凸等といった外乱となる要素の多い悪路では、30km/h以上の速度では走行できず、車両の姿勢が変わる急加減速を除くためには、0.8m/s^(2)以下の加速度に限定することが適切である。したがって、速度30km/h以上で、加速度0.8m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続することを安定走行の条件とし、この条件を満たした時にのみ車両のピッチ角を演算することで、突発的な異常値が検出されたり、その影響を受けにくいようになっている。この安定走行状態が3秒以上継続下か否かは、安定走行と判別された時点で作動する安定走行時間検出タイマ24をCPU16がカウントすることで、判別される。
【0026】また、CPU16は、安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.8m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、車両停車中(に検出した最新)のピッチ角データと所定値(+側に0.2度または-側に0.2度)以上の差のあるピッチ角データが、例えば2秒以上継続して検出された場合には、レベリング不適状態(車両旋回走行状態)であると判別し、アクチュエータ10の駆動制御を中止するようになっている。
【0027】また、旋回走行状態が2秒以上継続したか否かは、旋回走行と判別された時点で作動する旋回走行時間検出タイマ26をCPU16がカウントすることで、判別される。
【0028】次に、制御ユニットであるCPU16によるモータ10の駆動の制御を、図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0029】まず、ステップ98では、点灯スイッチ11からの信号により、ヘッドランプが点灯か否かが判別され、YES(点灯中)であれば、ステップ100に移行する。ステップ100では、車速センサー12からの信号によって、停車中か否かが判別され、YES(停車中)であれば、ステップ102において、停車中のピッチ角データθ_(1)が演算され、記憶部20にこのピッチ角データθ_(1) が記憶される。記憶部20に、すでにピッチ角データが記憶されている場合は、その記憶されているデータを古いものから順に新しいものに置き換える。
【0030】そして、ステップ104に移行し、インターバルタイマ22をカウントし、ステップ106において、インターバルタイム(10秒)を経過しているか否か判別される。ステップ106において、NOの場合(10秒経過していない場合)には、ステップ98に戻り、YESの場合(10秒を経過している場合)には、ステップ107において、インターバルタイマ22をリセットし、さらに補正済フラグがセットされている場合は、補正済フラグをリセットする。即ち、安定走行中のピッチ角データに基づいてアクチュエータの制御(光軸の補正)がすでに済んでいる場合は、後述するステップ119において、補正済フラグがセットされるようになっているが、このステップ107では、この補正済フラグをリセットする。そして、ステップ108に移行し、この停車時のピッチ角データθ_(1)に基づいて、モータ10を駆動させるべくモータドライバ18に出力し、ステップ98に戻る。
【0031】一方、ステップ100において、NO(走行中)であれば、ステップ110において、補正済フラグがセットされているか否か(走行中に光軸を補正、即ちレベリングしたか否か)が判別される。そして、補正済フラグがセットされていない場合(走行中に光軸を補正、即ちレベリングしていない場合)であれば、ステップ112において、車速が基準値(30km/h)を越えているか否かが判別され、YES(30km/hを越える場合)であれば、ステップ114において、加速度が基準値(0.8m/s^(2))未満か否かが判別される。ステップ114において、YES(0.8m/s^(2)未満)であれば、ステップ115において安定走行検出タイマ24をカウントし、ステップ116において、車速が30km/hを越え、かつ加速度が0.8m/s^(2)未満の状態が所定時間(3秒)以上経過しているか否かが、判別される。
【0032】そして、ステップ116において、YES(この状態が3秒以上経過している場合)であれば、ステップ118に移行し、車高センサ14で検出された安定走行時のピッチ角データθ_(2)が演算される。そして、ステップ119において、補正済フラグをセットするとともに、ステップ108に移行し、この安定走行時のピッチ角データθ_(2)に基づいてモータ10を駆動させるべくモータドライバ18に出力し、ステップ98に戻る。
【0033】また、ステップ110において、補正済フラグがセットされている場合(走行中に光軸を補正、即ちレベリングしている場合)や、ステップ112、114において、それぞれNOの場合(車速が基準値30km/h以下の場合、加速度が基準値0.8m/s^(2)以上の場合)には、いずれもステップ98に戻る。
【0034】また、ステップ116において、NOの場合(車速が基準値30km/hを越え、加速度が基準値0.8m/s^(2)未満の状態が3秒以上継続していない場合)には、ステップ120に移行し、車高センサ14で検出された走行中のピッチ角データを演算し、ステップ122に移行する。
【0035】ステップ122では、ステップ120で検出したピッチ角データが記憶部20に記憶されている停車中の最新のピッチ角データθ_(1)に対して、所定値(±0.2度)以上の差があるか否かを判別する。そして、YESの場合(±0.2度以上の差がある場合)は、ステップ123に移行し、旋回走行時間検出タイマ26をカウントし、ステップ124に移行する。一方、ステップ122においてNOの場合(±0.2度以上の差がない場合)は、ステップ98に戻る。また、ステップ124では、この状態が2秒以上経過しているか否か(停車中のピッチ角データθ_(1)に対して±0.2度以上の差があるピッチ角データが2秒以上継続して検出されたか否か)を判別する。そして、YESの場合(CPU16が旋回走行と認識した場合)は、ステップ126,128において、安定走行時間検出タイマー24,旋回走行時間検出タイマー26をリセットし、ステップ98に戻る。一方、ステップ122,124においてNOの場合(CPU16が旋回走行と認識しない場合)は、ステップ98に戻る。
【0036】また、このCPU16によるレベリング不適状態の判別に基づくアクチュエータ10の駆動制御の中止(オートレベリングの中止)の様子は、図3のように示すことができる。図3は、走行開始後の車速と車両姿勢の特性が示されており、符号A,Bは、車速,車高センサ出力(車両姿勢)が時間とともに変化する様子を示す。
【0037】この図3において、アクセルを踏み込んで車両が走行を開始した後、一般に車速は急速に上昇し、等速走行に移行する(符号A参照)。一方、車高センサの出力(車両姿勢)は、走行開始後、等速走行に移行するT_(1)で示す時間内では、加速度の影響をうけて変化するが、等速走行に移行後は一定の出力を示すはずである(符号B参照)。そして、停車中は、一定のインターバルでアクチュエータの駆動が制御され、走行開始後、等速走行に移行するまでの間T_(1)は、加速度が作用しピッチ角が変化する(符号B_(1)参照)が、加速度が大きすぎる(加速度0.8m/s^(2)以上)とか、車速が小さすぎる(速度30km/h以下)などのため、安定走行条件(速度30km/h以上,加速度0.8m/s^(2)以下,3秒継続)を満たさず、アクチュエータの駆動が制御されることはない。そして、等速走行になって後、安定走行条件を満たした場合に、1回だけアクチュエータの駆動が制御される。
【0038】しかし、安定走行条件に至る前に車両が旋回走行し、この旋回走行状態が所定時間続くと、車高センサ14の出力(車両姿勢)は、符号B_(2)に示すように、基準値(停車時のピッチ角データθ_(1)±Δθ)から外れたものとなる。この基準値外の出力が所定時間(2秒以上)続くと、CPU16は旋回走行状態と判別し、アクチュエータの駆動の制御を中止する(図3におけるP_(1)位置参照)。
【0039】また、その後、車両旋回走行状態が止み、安定走行条件(速度30km/h以上,加速度0.8m/s^(2)以下,3秒継続)を満たした場合(図3におけるT_(3)参照)には、まだ車両走行中にアクチュエータ10の駆動が制御されていないことを条件として、その安定走行中のピッチ角データに基づいてアクチュエータ10の駆動が制御される(図3におけるP_(2)位置参照)。」

(3d)甲第3号証には以下の図が示されている。



(4)甲第4号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の前後方向の傾斜(以下、ピッチ角という)に基づいてヘッドランプの光軸をピッチ角相当相殺する方向に自動的に傾動調整(以下、オートレベリングという)する自動車用ヘッドランプのオートレベリング装置に係り、特に、主として停止時の車両のピッチ角に基づいてヘッドランプの光軸を上下に自動調整するオートレベリング装置に関する」

(4b)「【0009】本発明は前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、アクチュエータの駆動頻度を減らすことで、安価にして長期の使用可能な自動車用ヘッドランプのオートレベリング装置を提供することであって、安定走行中における不適切なオートレベリングを改善することにある。」

(4c)「【0015】CPU16では、車速センサー12からの信号が入力すると、この入力信号に基づいて車両が停車中か走行中かを判別し、停車中は一定のインターバルでモータ10の駆動を制御し、走行中は、安定走行条件を満足し、かつ1秒平均ピッチ角データと、3秒平均ピッチ角データとが一致した場合にのみ、しかも1回に限り、モータ10の駆動を制御する。
【0016】また、CPU16では、車高センサー14からの信号が入力すると、サスペンションの変位量に相当するこの信号から、車両の前後方向の傾斜(ピッチ角)を演算する。なお、この実施例に示す車両では、後輪側サスペンションの右輪側にのみ車高センサー14が設けられた1センサー方式が採用されており、車高センサ14の検出した車高の変化量から車両のピッチ角が推測できる。そして、CPU16は、検出されたこのピッチ角を打ち消す方向に、光軸Lを所定量傾動させるべくモータドライバ18に出力する。
・・・
【0020】即ち、ヘッドランプ1の光軸の傾動可能範囲は定まっており、したがって一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間も決まっている。そして、モータ駆動のインターバル(タイム)が一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間よりも短いと、人の乗り降りに伴う車両姿勢(ピッチ角)の変化に逐次追従してモータ10が頻繁に駆動することとなって、光軸L(モータ10)が目標位置まで到達することなく正転、逆転、停止を繰り返すこととなり、寿命の低下につながり、好ましいことではない。
【0021】そこで、モータ駆動のインターバルを、一回のレベリングに必要なモータ10の最大駆動時間よりも長い時間(例えば10秒)に設定することで、レベリング動作中(モータの駆動中)に光軸の目標位置が変わらないようになっている。
【0022】また、CPU16は、停車中においては、記憶部20(格納部20A)に記憶されている最新の1秒平均ピッチ角データ(データD1?D10の平均値)に基づいて、モータ10の駆動を制御するが、発進時には、格納部20Bに記憶されている発進1秒前の1秒平均ピッチ角データ(データD11?D20の平均値)に基づいてモータ10の駆動を制御するようになっている。
【0023】即ち、アクセルを踏み込んで後、車速センサーが車両の発進を検出するまでの時間内に検出されたピッチ角データは、車両の沈み込みがあるため必ずしも正確ではない。また、車速センサーが車両の発進を検出するのに要す時間としては、1秒を超えることは、あり得ない。そこで、発進1秒前の1秒平均ピッチ角データを停車時のデータとして用いることで、適正なオートレベリングができる。
【0024】また、CPU16は、停車中に車高センサ14で検出された最新の1秒平均ピッチ角データに基づいてモータ10の駆動を制御するが、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがある。そこで、安定走行中に限り、しかも1回だけ、安定走行中に検出したピッチ角データに基づいてモータ10の駆動を制御して、この誤ったレベリング(光軸補正)を補正するようになっている。なお、車両停車中のピッチ角データが適切(停車中の車両が坂道停車とか縁石に乗り上げるなどの不自然な形態での停車ではない場合)であれば、安定走行中のピッチ角データは車両停車中のピッチ角データにほぼ等しく、したがって安定走行中のピッチ角データに基づいたレベリング後の光軸位置は、車両停車中に行われた最後のレベリング後の光軸位置とほぼ同一位置である。
【0025】また、CPU16は、常に車高センサー14からの信号を検出し、比較的速いサンプリングタイム(100ms)で演算を行って、1秒平均ピッチ角データおよび3秒平均データを算出している。そして、停車中では、10秒というインバータルタイム毎に、1秒平均ピッチ角データに基づいてモータ10の駆動を制御し、走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御するようになっている。
【0026】即ち、路面の凹凸等といった外乱となる要素の多い悪路では、30km/h以上の速度では走行できず、車両の姿勢が変わる急加減速を除くためには、0.78m/s^(2)以下の加速度に限定することが適切である。したがって、速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下の状態が3秒以上継続することを安定走行の条件とし、この条件を満たした時にのみ車両のピッチ角を演算することで、突発的な異常値が検出されたり、その影響を受けにくいようになっている。この安定走行状態が3秒以上継続したか否かは、速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が確認された時点で作動する安定走行時間検出タイマ24をCPU16がカウントすることで、判別される。
【0027】また、安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合がある。そこで、CPU16は、記憶部20の格納部20Aに記憶されている1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と記憶部20の格納部20Bに記憶されている3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御することで、不適切なオートレベリングを回避するようになっている。
【0028】即ち、ピッチ角データに影響を及ぼす何らかの要因がない場合は、1秒平均ピッチ角データと3秒平均ピッチ角データがほぼ一致するのに対し、ピッチ角データに影響を及ぼす何らかの要因がある場合(例えば、旋回走行やスラローム走行や凹凸路面走行等の異常走行の場合)は、1秒平均ピッチ角データと3秒平均ピッチ角データは一致しない。従って、1秒平均ピッチ角データと3秒平均ピッチ角データの差が所定の基準値(例えば0.1度)未満か否かによって、それが適正なデータかどうか(異常走行か否か)を判別し、適正であればモータ10の駆動を制御し、適正でなければ(異常走行の場合は)モータ10の駆動を制御しないようなっている。
【0029】次に、制御ユニットであるCPU16によるモータ10の駆動の制御を、図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】まず、ステップ102、104では、車速センサー12の出力から車速と加速度をそれぞれ演算し、ステップ106、108では、車高センサー14の出力から1秒平均ピッチ角データ、3秒平均ピッチ角データをそれぞれ演算する。そして、次のステップ110において、点灯スイッチ11からの出力により、ヘッドランプが点灯か否かが判別される。そして、YES(点灯中)であれば、ステップ112に移行する。
【0031】ステップ112では、車両が停車から発進状態に移行したか否かが判別される。即ち、車速センサ12の出力により、車両が停車から走行に移行したか否かが判別される。そして、YES(停車から走行に移行した場合、即ち車両が発進した場合)には、ステップ122において、停車時間検出タイマ26により停車時間が10秒以上か否かが判別され、NO(停車時間が10秒未満)であれば、ステップ124に移行する。このステップ124では、記憶部20に記憶されている車両発進1秒前の1秒平均ピッチ角データ(D11?D20の平均値)を選択し、ステップ120において、この車両発進1秒前の1秒平均ピッチ角データに基づいてモータ10を駆動するべくモータドライバ18に出力し、ステップ102に戻る。一方、ステップ112においてYES(停車時間が10秒以上)の場合には、何もすることなくステップ102に戻る。
【0032】また、ステップ112において、NO(停車中または走行中)の場合には、ステップ114において、走行中か否かが判別される。そして、ステップ114において、NO(停車中)の場合には、ステップ115において、走行補正フラグをリセットする。即ち、安定走行中のピッチ角データに基づいてモータの駆動制御(光軸の補正)がすでに済んでいる場合は、後述するステップ137において、走行補正フラグがセットされるようになっているが、このステップ115では、この走行補正フラグをリセットする。
【0033】そして、ステップ116に移行し、インターバルタイマ22をカウントし、ステップ117において、インターバルタイム(10秒)を経過しているか否か判別される。ステップ117において、YESの場合(10秒を経過している場合)には、ステップ118において、インターバルタイマ22をリセットし、さらにステップ119において、1秒平均ピッチ角データを選択する。そして、ステップ120に移行し、1秒平均ピッチ角データに基づいて、モータ10を駆動させるべくモータドライバ18に出力し、ステップ102に戻る。
【0034】一方、ステップ117において、NOの場合(10秒経過していない場合)には、モータ10を駆動させることなく、ステップ102に戻る。
【0035】また、ステップ114において、YES(走行中)であれば、ステップ130において、走行補正フラグがセットされているか否か(走行中に光軸を補正、即ちレベリングしたか否か)が判別される。そして、NO.即ち、走行補正フラグがセットされていない場合(走行中に光軸を補正、即ちレベリングしていない場合)であれば、ステップ131において、車速が基準値(30km/h)以上か否かが判別され、YES(30km/h以上の場合)であれば、ステップ132において、加速度が基準値(0.78m/s^(2))以下か否かが判別される。ステップ132において、YES(0.78m/s^(2)以下)であれば、ステップ133において、安定走行時間検出タイマ24をカウントし、ステップ134において、車速が30km/h以上で、加速度が0.78m/s^(2)以下の状態が所定時間(3秒)以上経過しているか否かが、判別される。
【0036】そして、ステップ134において、YES(車速30km/h以上で加速度0.78m/s^(2)以下の状態が3秒以上経過している場合)であれば、ステップ135に移行し、安定走行時間検出タイマ24のカウントをクリアにした後、ステップ136に移行する。
【0037】ステップ136では、1秒平均ピッチ角データと3秒平均ピッチ角データとの差が基準値(0.1度)未満か否かが判別され、YES(基準値未満)の場合は、ステップ137に移行し、走行補正フラグをセットするとともに、ステップ138に移行して、3秒平均ピッチ角データを選択する。そして、ステップ120において、この3秒平均ピッチ角データに基づいてモータ10を駆動させるべくモータドライバ18に出力し、ステップ102に戻る。」

(4d)甲第4号証には以下の図が示されている。


(5)甲第5号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(5a)「【0001】
本発明は、車両の姿勢変化及び道路勾配に応じて車両用前照灯の照射方向を制御することにより、前方視認性を向上させるための技術に関する。」

(5b)「【0014】
本発明によれば、路面に対する車体軸の角度を精度良く算出できるので、運転者の前方視野や道路利用者にとって不適正な照射制御が行われないようにすることができる。しかも、そのために車高検出手段や高精度の検出手段等を必要としないので、構成の簡素化、コストや部品点数の低減等に好適である。」

(5c)「【0021】
図1は、本発明の基本構成例を示す図である。
【0022】
車両用前照灯装置1は、車両の進行方向における姿勢変化及び走行路の道路勾配に応じて車両用前照灯の照射方向を制御するものであり、下記に示す構成要素を備えている(括弧内の数字は符号を示す。)。
【0023】
・第一の検出手段(2)
・第二の検出手段(3)
・比較手段(4)
・照射制御手段(5)
・駆動手段(6)
・車両用前照灯(7)
【0024】
第一の検出手段2は、水平面に対して路面がなす角度(これを『θ』と記す。)を検出する。第一の検出手段2には、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用した衛星通信装置や、路車間通信装置等が用いられる。
【0025】
また、第二の検出手段3は、水平面に対して車両の車体軸がなす角度(これを『δ』と記す。)を検出する。第二の検出手段3には、水準器を用いたレベルセンサ又は傾斜センサが用いられ、車体又は車両用前照灯の非可動部に付設される。尚、レベルセンサの検出方法には、例えば、気泡位置等を光学的に計測する方式と、錘位置(あるいは加重位置)を計測する機械式等が挙げられ、水準器の車体等への取り付けに際して水平面にほぼ平行な状態で設置する。また、車両の加減速時における加速度の影響によって計測誤差が発生することへの配慮が必要とされ、車両の定速走行時にのみ、δを検出するか、あるいはδ値として所定時間又は所定の走行距離内での平均値を検出することが好ましい。
【0026】
比較手段4は、検出手段2、3によってそれぞれ得られるθ、δについての比較結果又は検出角度差を求めて、後段の照射制御手段5に送出する。尚、比較結果とは、θ値とδ値との大小関係や等値関係を示す信号を意味し、また、検出角度差とは『θ-δ』又は『δ-θ』を意味する。
【0027】
照射制御手段5は、比較手段4からの出力に基づく制御信号を駆動手段6に送出することにより、鉛直面内における車両用前照灯7の照射方向を変更し又は該照射方向を維持する。
【0028】
尚、駆動手段6には、車両用前照灯7の照射方向制御や光軸制御のためのアクチュエータや駆動回路、駆動機構等が含まれる。また、車両用前照灯7には、ヘッドランプあるいはヘッドランプやフォグランプ等を含めた前方照明システムが挙げられる。
【0029】
図2は、勾配をもった走行路上の車両姿勢に関して説明するための概略図である。尚、図中の『γ』は路面に対して車両の車体軸がなす角度を示している。
【0030】
オートレベリングシステムでは、前照灯の照射光軸を路面に対して常に一定の状態に保つことが必要とされる。
【0031】
車両『M』の車体軸と照射光軸との間になす角度を『φ』と記すとき、その値は前照灯の照準調整を行うことで『φ=0』とされ、その後に照準変更を行わない限り一定である。従って、何らかの方法によってγ値を求めることができれば、照射光軸の制御が可能となる。その方法の1つには、路面のレーンマークを前方撮影用カメラで検出して画像処理を行う方法が挙げられる。しかし、レーンマークのない道路には適用できないことや、周囲環境の照度や天候等の影響を考慮する必要性等により、実用的ではない。
【0032】
そこで、本発明では、γ、θ、δの3者間に、『γ=θ-δ』の関係が成立することを利用して、θとδを求めてγを算出する。つまり、θについては路面の勾配から求められ、δについては上記のようにレベルセンサを用いて検出することができる。よって、両者の差からγを求めて、γ値に応じて前照灯の照射光軸の方向を制御すれば良い。
・・・
【0052】
次に、オートレベリング機能をどのように働かせるかについて、図5のフローチャート図に従って、車両の出荷段階から納車後の通常走行まで説明する。
【0053】
先ず、ステップS1に示す出荷時には、正しく水準化された路面(水平路面)の敷地内に車両を運んで、前照灯の照準調整を行い、車体軸と前照灯の照射光軸との間になす角度φをゼロとする。そして、この条件下において、車体又は前照灯の灯体に取り付けられたレベルセンサ(水準器)のゼロ調整を行う(出力角がδ=0となるように調整する。)。この状態で乗員の乗り降りやトランクへの積載物の出し入れを行って、乗員条件や積載条件の変化に対するレベルセンサの出力信号からδ値をビーム制御用ECU10で読み取り、δ値に応じて前照灯の照射光軸が補正されるように調整及び設定を行う(つまり、この場合にはθ=0であるため、γ=-δとなる。)。
【0054】
次ステップS2での走行開始からステップS7までが納車走行時の処理を示す。
【0055】
ステップS3にて車両の走行状態を判別し、定速走行時にはステップS4に進むが、加減速走行時(加速走行時又は減速走行時)にはステップS5に進む。
【0056】
ステップS4では、ビーム制御用ECU10において記憶されるθと、δ(平均値)からγを算出するとともに、γ値に応じて照射光軸制御用のアクチュエータを駆動し、鉛直面内における前照灯の照射方向を補正する。そしてステップS6に進む。
【0057】
また、ステップS5では、加速度センサ15の検出情報に基づいて前照灯の照射光軸の方向を制御する(例えば、加速走行時には照射方向が過剰に上向きにならないように制御し、また減速走行時には、ノーズダイブに伴って照射方向が過剰に下向きにならないように制御する。)。そして、ステップS6に進む。
【0058】
ステップS6では走行停止の如何を判断して、停止時にはステップS7に進むが、走行中である場合にはステップS3に戻る。
【0059】
ステップS7でのエンジン停止(停車)において、車両の停車場所、例えば、ディーラーモータプール等での駐車後にレベルセンサの出力角がδ1に変化したとすると、この角度は駐車場での路面の傾きを示す(γ=0より、θ=δ1)。この場所で所定の走行距離をもって定速での車両走行が可能である場合には、θの角度から駐車場所での路面の勾配を推定できるので、γ値を求めて照射光軸の制御を行えるが、駐車場所での走行が不可能な場合には、路面の勾配が不明であり、よって、照射光軸を制御すべきでない。
【0060】
ステップS8の始動時に、乗員の乗車条件や荷物等の積載条件が変化した場合には、該変化に応じて照射光軸が制御される。例えば、停車時のレベルセンサの出力角がδ1であるとして、さらに乗員が増えたり、トランク等に積載物が搭載された結果、レベルセンサの出力角がδ2に変化した場合を想定する。そのときの出力角の変化量『Δδ=δ2-δ1』に応じて前照灯の照射光軸の向きが変化するが、その変化を相殺するようにΔδの値の応じて照射光軸制御用のアクチュエータを駆動して鉛直面内における照射方向を補正する。
【0061】
ステップS9の走行開始からステップS14までが通常走行における処理を示す。
【0062】
ステップS9にて車両の走行状態を判別し、定速走行時又は坂道走行時にはステップS11に進むが、加減速走行時(加速走行時又は減速走行時)にはステップS12に進む。
【0063】
ステップS11では、ビーム制御用ECU10において記憶されるθと、δ(平均値)からγを算出するとともに、γ値に応じて照射光軸制御用のアクチュエータを駆動し、鉛直面内における前照灯の照射方向を補正する。
【0064】
尚、勾配の大きい坂道を所定の距離に亘って定速で走行する場合に、車両の重心位置が平坦路の場合に比べて変化するため、路面に対する車体軸の角度が若干変化する。よって、予め決められた基準距離以上の走行区間を走行する場合には、その路面の勾配θと、レベルセンサの出力角δの平均値を求めて両者の差からγ値を算出して前照灯の照射方向を補正する方が良いが、基準距離未満の区間を定速走行する場合には、照射光軸の補正制御を行わないことが好ましい。
【0065】
また、レベルセンサ14の出力角δはリアルタイムに計測されるが、車両の加減速状態や路面の凹凸等の影響を受け易いため、所定時間(例えば、高速道路等の高規格道路では5秒以上とされ、道路クラスの低い道路ではさらに長い時間とする。)又は所定距離(例えば、高速道路等の高規格道路では100乃至200m以上とし、道路クラスの低い道路ではさらに長い距離とする。)の走行区間に亘って平均した値を用いることが好ましい。あるいは、加速度センサ15の検出情報をもとに加速時や減速時にδの計測を一時的に中断したり、路面の凹凸によってδ値の変動が大きい場所では計測値を採用せずにマスクする処理が好ましい。」

(5d)甲第5号証には以下の図が示されている。





(6)甲第6号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(6a)「【0001】
本発明は、車輛用ヘッドランプの光軸調整方法に係り、特に、トラックのようにキャブと荷台がフレーム上に設けられ、荷台への荷物の積載時にフレームが撓むことでヘッドランプの光軸が変化したとき、それを検出して適切な角度に調整することができる、車輛用ヘッドランプの光軸調整方法に関するものである。」

(6b)「【0014】
また、前記前後の超音波センサにおけるそれぞれの路面までの距離Hf、Hrの測定は、前記超音波センサの設置環境温度を加味しておこなうことで、超音波は温度によって伝搬速度が変化するが、その温度による速度を加味して距離Hf、Hrを測定することで、より正確に車輛用ヘッドランプの光軸を調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明になる車輛用ヘッドランプの光軸調整方法は、走行中であっても、例え路面に凹凸があっても、正確に前後の超音波センサの仮想路面に対する角度αを算出することができるから、それに基づく車輛用ヘッドランプの光軸調整を正確に行うことができる。」

(6c)「【0017】
最初に図5、図6を用いて本発明に用いる超音波センサとその測定方法について簡単に説明する。なお、車輛への取り付けについては、前記した特許文献1に詳細に説明されているため省略する。図5は、超音波センサ22、24を搭載した傾斜測定装置10の概略斜視図で、図6は傾斜測定装置10に搭載した超音波センサ22、24により、傾斜測定装置10の傾斜角度を測定する方法を説明するための概念図である。
【0018】
図5に示した傾斜測定装置10は、車幅方向に送受信を行う2組の超音波センサ22と24で構成され、それぞれの超音波センサは信号発信部としての送信子22a、24a、及び、信号受信部としての受信子22b、24bとからなっている。一例として、送信子22a、24aは車輛の右側に配置され、受信子22b、24bは車輛の左側に配置されており、各超音波センサ22、24の送受信波の方向は略平行であると共に、車輛の前後方向に対してほぼ直交する方向となっている。なお、送信子22a、24aと受信子22b、24bの取付位置は左右逆であっても良い。
【0019】
そして、この超音波センサ22、24は路面側の送受信面が露出するように図示していない箱形のケースに収納され、このケースが車輛のクロスメンバに取付けられることで、傾斜測定装置10が車輛の前部に路面Rと対向して取付けられる。これにより、傾斜測定装置10の取付スペースを車輛の前後方向に短くすることができ、また、超音波センサ22、24をケース内に収納したことにより、傾斜測定装置10をコンパクトにできると共にクロスメンバへの取付が容易となる。
・・・
【0021】
この傾斜測定装置10は、2つの超音波センサ22、24の受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定するものであり、各送信子22a、24aからの超音波は路面Rで反射して各受信子22b、24bで受信され、この受信子22b、24bの受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態が判定される。即ち、送信子22a、24a及び受信子22b、24bの信号は、後記図3で説明するECUに入力され、受信子22b、24bの超音波の受信時間差に基づいて路面に対する前部のクロスメンバの傾斜状態(車輛前部の傾斜状態)がECUで判定される。なお、傾斜測定装置10は受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定するようにしたが、受信位相差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定してもよい。
・・・
【0031】
図4は、車輛の工場出荷時におこなう傾斜測定装置10の初期値セットアップのフロー図である。車輛の工場出荷時には、まずステップS50で傾斜測定装置10の傾斜角度α、すなわちヘッドランプの仮想路面に対する傾斜角度αの初期値セットが終了しているか否かが判断され、初期値セットが終了していないと判断された場合、ステップS51で路面が平面か否かが判断される。ステップS51で路面が平面であると判断された場合は、ステップS53で超音波センサの送信子22a、24a及び受信子22b、24bの検出情報により傾斜角αを演算する。そして、ステップS54で故障診断ツール18により、その時に演算された傾斜角αを初期値として記憶する指令が出力され、ECU12に初期値が記憶される。また、ステップS51で路面が平面ではないと判断された場合、ステップS52で車輛を平面な路面にセットし、ステップS53に移行する。一方、ステップS50で初期値セットが終了していると判断された場合、そのまま終了となる。
【0032】
なお、故障診断ツール18の代わりに、車体に設けられた初期値用スイッチやハーネスコネクタの抜き差し動作により初期値を記憶させるようにしてもよい。
【0033】
そして、平面路で、超音波センサの送信子22a、24a及び受信子22b、24bの検出情報により演算された傾斜角αを初期値とした後、ヘッドランプにおける高輝度バルブを傾動させ、高輝度バルブの光軸を平面路での光軸の状態に調整する。これにより、平坦路で演算された傾斜角αを基準にした、傾斜測定装置10の検出情報に応じた制御(オートレベリング)が可能となる。
【0034】
また、車輛の工場出荷後には、オートレベリングが開始され、車輛の停止状態における傾斜状態と、車輛の走行状態(例えば、40km/h以上)における傾斜状態とが検出され、ECU12は傾斜測定装置10からの情報に基づいてアクチュエータ14を駆動し、高輝度バルブの光軸が調整する。
【0035】
この場合、本発明では路面が凹凸状態にあったり段差や突起に乗り上げているとき、傾斜状態のデータはその状態に反応して正確に検出することができないことがあるため、傾斜状態のデータの高周波成分(例えば、0.1Hzを越える周波数成分)を除去(フィルタ手段)するようにしている。傾斜状態のデータを多数集めて各周波数成分で偏差を調べた場合、高周波成分のデータ(例えば、0.1Hz を越える周波数成分のデータ)で偏差が急激に高くなっていることが確認されている。このため、高周波成分のデータを除去することで、偏差の比較的少ないデータにより、即ち、路面の凹凸や段差や突起に乗り上げている状態を排除したデータにより、傾斜状態を判定することができる。
【0036】
また、車輛が停止状態の場合、積荷の積み降ろしがあったかどうかを判定し、積み降ろしがあったときにはそれまでの傾斜状態のデータに積み降ろしによるデータの変化量を演算し、この変化量を加減算してデータを更新する。
【0037】
即ち車輛が停止状態の場合、傾斜測定装置10による検出路面に道路の継ぎ目や段差、突起等があると適正な傾斜状態のデータを得ることができない。そのため、傾斜状態のデータを収集して移動平均処理を行い、この処理を行って求められた平均値が所定の範囲内に収束したときの収束平均値をメモリし、この収束平均値の最大値と最小値の差を傾斜状態のデータの変化量として設定(変化量算出手段)し、この変化量が予め設定された設定変化量以上のときに、現在の傾斜角データにこの変化量を加減算してデータを更新する。車輛の停止状態では、乗員の乗車及び降車やエンジン振動などにより収集したデータが小さい範囲内でばらつくが、積荷の積み降ろしがあった場合、収集したデータは大きい範囲内で変化することが確認されている。
【0038】
図1は、本発明になる車輛用ヘッドランプの光軸調整方法のうち、走行状態における車輛用ヘッドランプの光軸調整方法のフローチャート、図2は、同じく停車状態における車輛用ヘッドランプの光軸調整方法のフローチャートである。
【0039】
図2に示した停車状態のフロー図は、前記した特許文献1に開示されているのと同じフロー図であるが、図1に示した走行状態のフロー図へは、この図2のフロー図におけるステップS14から進むようになっているため、まず、図2のフロー図について簡単に説明する。
【0040】
オートレベリングが開始されると、ステップS11でスタータSWがONであるか否かが判断され、スタータSWがONであると判断された場合、ステップS12で前記した要領で傾斜測定装置10を作動させて傾斜角αを演算する。そしてステップS13で傾斜角αのデータの中から高周波成分(例えば、0.1Hzを越える周波数成分)を除去するフィルタ処理を実行する。従って、このフィルタ処理を実行することで、傾斜角αのデータから路面の凹凸や段差や突起に乗り上げたときのデータが除去され、適正な傾斜状態のデータを得ることができる。
【0041】
そして、ステップS14で車速が0km/hであるか否かが判断され、車速が0km/hであると判断された場合、次のステップS15で車速0km/hの状態が一定時間(例えば、5秒間)経過したか否かが判断される。ステップS15で一定時間経過したと判断された場合、車輛が停車中であると判断されてステップS16で停車中における傾斜角αのデータを計測する。一方、ステップS15で一定時間経過していないと判断された場合、車輛が一時停止中であると判断されてステップS14に戻って車速の判断を繰り返す。
【0042】
ステップS16で傾斜角αのデータを計測した後、ステップS17で移動平均処理を行って平均値を随時演算し、ステップS18で演算した平均値が所定の範囲内に収束したか否かが判断される。平均値が所定の範囲内に収束したと判断された場合、収束した平均値を収束平均値としてメモリし、ステップS19でこの収束平均値における最大値と最小値の変化量Δαを演算する。なお、このステップS18で平均値が所定の範囲内に収束しないと判断された場合、ステップS16に移行して処理を繰り返す。また、ステップS18で求められた収束平均値が一つだけの場合、ステップS19で演算した変化量Δαは0となる。
【0043】
ステップS19で変化量Δαを演算した後、ステップS20ではこの変化量Δαが予め設定された規定値(設定変化量Δα)以上であるか否かが判断される。ここで、変化量Δαがこの規定値以上であると判断された場合、積荷の積み降ろしがあったと判定されてステップS21に移行し、ここで、ステップS21で算出した変化量Δαをデータ更新用の変化量Δαとして確定する。そして、ステップS22で確定した変化量Δαが正常範囲内か否かが判断され、変化量Δαのデータが正常範囲内であると判断された場合、ステップS23で現在の傾斜角αのデータに変化量Δαを加算(減算)して傾斜角αのデータを更新する。
【0044】
このようにして車輛停車状態で積荷の積み降ろしの有無が判定されるから、積み降ろしがあった場合には迅速に傾斜角αのデータを更新することとなり、路面の凹凸の状態に関係なく、傾斜角αのデータを確実に、且つ、迅速に更新することが可能となる。
【0045】
その後、ステップS23で傾斜角αのデータを更新した後、ステップS24でヘッドランプ5を点灯させるランプSWがONであるか否かが判断され、ランプSWがONであると判断された場合、ステップS25でアクチュエータ14を駆動させて高輝度バルブの光軸が傾斜角αに調整される。ステップS24でランプSWがONではないと判断された場合、傾斜角αのデータを保持した状態を維持する。
【0046】
一方、ステップS14で車速が0km/hではないと判断された場合、処理は図1に示した走行状態における車輛用ヘッドランプの光軸調整方法のフロー図に移行する。そして最初にステップS31で車速が所定値以上か否かが判断される。このときの所定値は、傾斜状態のデータのばらつきが多くなる車速に満たない値、例えば、40km/hに設定される。ステップS31で車速が所定値以上であると判断された場合、ステップS32で車輛の加減速度が所定値以下か否かが判断される。このときの所定値は、加減速状態とはみなされない値、例えば、加減速度が2m/s^(2)に設定される。なお、ステップS31で車速が所定値を越えていないと判断された場合、及びステップS32で車輛の加減速度が所定値を越えていると判断された場合、ステップS43に進んで図2におけるステップS14に移行する。
【0047】
ステップS31で車速が所定値以上で、且つ、ステップS32で加減速度が所定値以下であると判断された場合、ステップS33でまず、前側超音波センサ22で超音波センサ22から路面R迄の距離Hfが測定される。そしてステップS34で、この測定した超音波センサ22から路面R迄の距離Hfが、予め定めた閾値、Hfm、Hfsの範囲にあるか否かを判断する。
【0048】
この閾値、Hfm、Hfsは、予め、車輛のフレームの撓みにより生じる、前後の超音波センサ22、24それぞれの平坦路面までの最大距離Hfm、Hrmと、最小距離Hfs、Hrsとを閾値として定めたもので、超音波センサ22、24で測定した路面までの距離Hf、Hrがこの閾値の範囲を逸脱している場合、路面に穴や比較的大きな石などがあって測定値が大きく異なったと考えられるから、それを除外することで、より正確な、前後の超音波センサ22、24の仮想路面に対する角度を得ることができ、車輛用ヘッドランプの光軸調整を正確に行うことができる。
【0049】
そのため、このステップS34で、測定した超音波センサ22から路面R迄の距離Hfが、閾値、Hfm、Hfsの範囲外であると判断された場合はステップS36に進み、範囲内である場合はステップS35に進んでこの路面R迄の距離Hfが記憶される。
【0050】
そして次のステップS36で、今度は後側超音波センサ24で超音波センサ24から路面R迄の距離Hrが測定される。そしてステップS34で、前記ステップS34の場合と同様、測定した超音波センサ22から路面R迄の距離Hrが、予め定めた閾値、Hrm、Hrsの範囲にあるか否かが判断される。そして、測定した超音波センサ24から路面R迄の距離Hrが、閾値、Hrm、Hrsの範囲外であると判断された場合はステップS39に進み、範囲内である場合はステップS38に進んでこの路面R迄の距離Hrが記憶される。
【0051】
こうして前後の超音波センサ22、24での測定が済むと、ステップS39で規定数(例えば、500個)以上の超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrが収集されたかどうかが判断され、まだの場合はステップS31に戻って以上の処理が繰り返され、規定数のデータが収集されたと判断された場合、ステップS40で収集されたHf、Hrそれぞれの平均値が演算される。
【0052】
そしてステップS41で演算されたHf、Hrの平均値と、図5に示した前後の超音波センサ22、24の距離Lとを用い、ステップS41でまず傾斜測定装置10の傾斜角度αが算出され、現在の傾斜角度との差、変化量Δαが算出される、そして処理が図2のステップS22に戻り、前記したように変化量Δαが正常範囲内か否かが判断され、変化量Δαのデータが正常範囲内であると判断された場合、ステップS23で現在の傾斜角αのデータに変化量Δαを加算(減算)して傾斜角αのデータを更新する。以下の処理は前記したとおりである。
【0053】
このように本発明によれば、車輛の走行中、前後の超音波センサそれぞれの複数の測定結果の平均値を算出し、その平均値から前後の超音波センサの仮想路面に対する角度αを算出することで、例え路面に凹凸があっても、正確に前後の超音波センサの仮想路面に対する角度αを算出することができるから、それに基づく車輛用ヘッドランプの光軸調整を正確に行うことができる。」


(6d)甲第6号証には以下の図が示されている。



(7)甲第7号証に記載された事項
本件特許の優先日前に頒布された甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(7a)「【0001】
この発明は、自動車などの車両の傾斜角度を自動的に検知するための車両傾斜検知装置に関するものである。特に、この車両傾斜検知装置は車両用ヘッドライトの光軸制御を自動で行うシステムにおいて適したものである。」

(7b)「【0011】
さらに、この発明は、局所的に生じる路面の凹凸があっても傾斜角度を精度よく検知することができる車両傾斜検知装置を得ることを目的とする。」

(7c)「【0074】
実施の形態9.
図17は実施の形態9による車両傾斜検知装置のブロック図の構成を示す図である。より具体的には、実施の形態9による車両傾斜検知装置の送信手段100と受信手段500と傾斜角度演算手段600と車両状態判定手段2500と路面状態判定手段2600と出力信号演算手段2700とを示すブロック図である。車両状態判定手段2500は、位相偏差演算器2501と車両状態判定器2502とを備えている。路面状態判定手段2600は角度偏差演算器2601と路面状態判定器2602とを備えている。出力信号演算手段2700は出力信号演算器2701を備えている。
【0075】
次に動作について説明する。受信アンテナ201は送信手段100から放射された電波を受信し、受信信号1として出力する。増幅器203は受信信号1を所定のレベルまで電力増幅し、直交検波器501へ出力する。直交検波器501は送信手段100内の発振器101から出力された送信信号と受信信号1をIQ検波(直交検波)しIQ信号1を傾斜角度演算手段600へ出力する。
【0076】
同様に受信アンテナ202は送信手段100から放射された電波を受信し、受信信号2として出力する。増幅器204は受信信号2を所定のレベルまで電力増幅し、直交検波器502へ出力する。直交検波器502は送信手段100内の発振器101から出力された送信信号と受信信号2をIQ検波(直交検波)しIQ信号2を傾斜角度演算手段600へ出力する。
【0077】
傾斜角度演算手段600内の振幅位相演算器601は、IQ信号1とIQ信号2から受信信号1と受信信号2と振幅と位相を導出し、傾斜角度演算器602と車両状態判定手段2500内の位相偏差演算器2501に出力する。
【0078】
傾斜角度演算器602は受信信号1と受信信号2の位相の位相差から傾斜角度を算出し路面状態判定手段2600内の角度偏差演算器2601と出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701へ出力する。
【0079】
車両状態判定手段2500内の、位相偏差演算器2501は、受信信号1と受信信号2のそれぞれ過去複数点にわたる位相の標準偏差を演算して位相標準偏差値として車両状態判定器2502へ出力する。
【0080】
車両状態判定器2502は、位相標準偏差が所定の閾値で区切られたどこの領域に存在するか判定し車両状態判定結果として出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701に出力する。位相の時間に対する変化量(時間変化量)から車両の走行および停止状態を判定することになる。
【0081】
図18は車両傾斜検知装置の車両状態判定手段を説明した図であり、車両状態を判定する閾値の一例を示した図である。横軸は時間、縦軸は位相偏位(位相の標準偏差値)を表している。例えば、車両状態として、単純な車両の走行および停止以外にも、踏み切りなどの局所的な路面の凸凹を走行している状態を判定する。車両が振動することで車両と路面との間の距離が変化すると受信信号1および受信信号2の電波伝搬経路長が変化し位相が変化する。
【0082】
図中の領域1となる場合には、車両の停止と判別する。車両が停止すると車両の振動が小さく、言い換えると電波伝搬経路長の偏位が小さくなるので、位相標準偏差値は小さくなる。走行すると路面の凹凸によって車両が振動するので、位相標準偏差値は大きくなる。閾値1は車両の停止と走行を判別するように設定される。
【0083】
図中の領域3は、高架を走行している時の道路の繋ぎ目や踏み切りなど局所的に発生する路面の凹凸を走行している状態を判定する。踏み切りなど局所的に発生する路面の凹凸により車両は大きく振動するので位相標準偏差は大きくなる。閾値2は、局所的に凸凹した路面を走行している状態を判別するように設定される。図中の領域2は、そのほかの路面を車両が走行していると判別する。
【0084】
路面状態判定手段2600内の角度偏差演算器2601は、過去複数点の傾斜角度の標準偏差を演算して角度標準偏差値として路面状態判定器2602へ出力する。路面状態判定部2602は、角度標準偏差が所定の閾値で区切られたどの領域に存在するか判定し路面状態判定結果として出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701に出力する。傾斜角度の時間変化量から路面の局所的な凹凸を検知することになる。
【0085】
図19は車両傾斜検知装置の路面状態判定手段を説明した図であり、路面の状態を判定する閾値の一例を示した図である。横軸は時間、縦軸は傾斜角度偏位(傾斜角度の標準偏差)標準偏差を表している。例えば、路面状態として踏み切りなど局所的にある凹凸の有無を検知する。
【0086】
図中の領域1は、車両の停止状態と判別する。車両が停止しているときは路面の電波照射面は変化しないので、角度標準偏差値は小さな値となる。走行すると路面の凹凸などにより傾斜角度は時々刻々と変化するので角度標準偏差値は増加する。閾値1は車両の停止を判別するように設定される。
【0087】
図中の領域3は、踏み切り等の局所的な路面の凹凸を走行している状態と判定する。車両の傾斜角度が大きく変化するので角度標準偏差は大きな値となる。閾値2は局所的な凸凹した路面を走行している状態を判別するように設定される。傾斜角度の時間変化量から路面の局所的な凹凸を検知することとなる。
【0088】
出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701は、傾斜角度と車両状態判定結果と路面状態判定結果を用いて、補正した傾斜角度を出力する。出力される補正した傾斜角度は、車両走行中と判定されている時に計測された過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力する。また、踏み切りなどを走行している時の計測データを除外して過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力する。また、領域ごとに重み係数を割り振り、過去複数点の傾斜角度の重み付け平均値を傾斜角度として出力する。
【0089】
よって、車両傾斜検知装置は車両の傾斜によって変化する電波伝搬距離の偏位を位相の偏位として高精度に検出し精度よく車両傾斜角度を算出できるという効果がある。また、温度変化や風があっても影響を受けず精度よく傾斜角度を算出できるという効果がある。また、エンジン等の騒音の影響を受けずに精度よく傾斜角度を算出できるという効果がある。また、受信信号レベル差が変動しても、直交検波によるIQ信号の位相から傾斜角度を算出するので精度良く傾斜角度を測定できるという効果が得られる。
【0090】
また、車両振動によって変化する電波伝搬距離の時間偏位を位相の時間変化として高精度に検出し位相の時間偏位量や過去複数点の位相の偏差として求め、車両の走行および停止など車両の状態を所定の閾値で区切られた領域に割り当て判定し、車両状態と傾斜角度により傾斜角度を出力するので車速センサを用いることなく精度よく傾斜角度を求めることができる。
【0091】
また、路面の凹凸によって変化する車両の傾斜角度を傾斜角度の時間偏位量や過去複数点の傾斜角度の偏差として高精度に検知し、局所的に生じる路面凹凸の有無を所定の閾値で区切られた領域に割り当て判定し、判定結果と傾斜角度を用いて車両の傾斜角度を求めるので、精度よく補正した傾斜角度を求めることができる。
【0092】
位相の時間変化量から車両の走行および停止状態を判定する車両状態判定手段と、傾斜角度演算手段で算出された傾斜角度の時間変化量から路面の局所的な凹凸を検知する路面状態判定手段と、車両状態判定手段の判定結果および路面状態判定手段の検知結果を用いて傾斜角度を補正した結果を出力する出力信号演算手段によって、例えば、補正した傾斜角度で車両のヘッドライトの光軸を調整することができるようになる。」

(7d)甲第7号証には以下の図が示されている。



2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。

(ア)引用発明の「受信部228R1、228L1」、「制御部228R2、228L2」及び「車両用灯具の制御装置228R、228L」は、その意味、機能または構造からみて、本件発明1の「受信部」、「制御部」及び「車両用灯具の制御装置」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「受信部228R1、228L1」は「車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な」「加速度センサ316で検出される」「加速度を受信する」ものである。
そうすると、引用発明の「加速度センサ316で検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な加速度を受信するための受信部228R1、228L1」は、本件発明1の「車両前後方向及び車両上下方向の加速度を導出可能な、加速度センサの検出値を受信するための受信部」に相当する。

(ウ)引用発明の「制御装置228R2、228L2」は「車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に」、「車両の加速時および減速時の少なくとも一方における」「加速度センサ316の検出値を」「プロットし」、その「少なくとも2点」すなわち複数点から「直線」を「得」、当該「直線」の「傾き」すなわち「車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率」の「変化に基づいて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成する」ものである。
そうすると、引用発明の「車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成するための制御部228R2、228L2」において「前記比率」が「車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ316の検出値を経時的にプロットし、少なくとも2点から得られる直線またはベクトルの傾き」であることは、本件発明1の「車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時及び減速時の少なくとも一方における前記検出値をプロットし、プロットした複数点から直線を導出し、前記直線の傾きを用いて車両用灯具の光軸調節を指示する調節信号を出力するための制御部」に相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
<一致点1>
「車両前後方向及び車両上下方向の加速度を導出可能な、加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時及び減速時の少なくとも一方における前記検出値をプロットし、プロットした複数点から直線を導出し、前記直線の傾きを用いて車両用灯具の光軸調節を指示する調節信号を出力するための制御部と、を備える車両用灯具の制御装置。」

<相違点1>
本件発明1は、「前記制御部は、所定の曲進状態及び所定の坂道走行状態の少なくとも1つに車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれる場合、この検出値を除外して前記直線を導出する」のに対し、
引用発明では、そのように特定されていない点。

イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
甲第2号証の段落【0060】?【0063】の「車両走行中に車両姿勢角度θvが変化する場合がある。例えば、車両300がバスなどの大型車両である場合、車両走行中に乗員が車室内を移動する可能性があり、これにより車両姿勢角度θvが変化し得る。そのため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定した場合、実際の路面角度θrと推定された路面角度θrとの間に誤差が生じる可能性がある。・・・本実施形態では、車両が発進する際および車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで、路面の水平判定が実施される。そして、路面水平判定の結果に応じて路面角度θrの基準値が補正される。・・・制御部228R2は、車速センサ312の検出値から得られる単位時間あたりの車速変化量(車両300の運動加速度)が所定値以上である場合に車両300が発進したと判断することができる。車両300が発進したと判断される運動加速度の所定値は、適宜設定可能である。また、制御部228R2は、車両300が直進しているか判断する。制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値、あるいは加速度センサ316のY軸成分の数値から車両の直進を判断することができる。例えば、制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値からハンドル角が0°付近である場合に車両300が直進していると判断する。・・・車両300が直進している場合、制御部228R2は、車両発進から所定時間後に車速センサ312、あるいは加速度センサ316から得られる車両300の運動加速度ベクトルの大きさの2乗と、加速度センサ316の検出値ベクトルの大きさの2乗とを計算する。そして、その差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、制御部228R2は、保持している路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正する。」という(記載事項(2c))及び図5の図示内容(記載事項(2e))を参照すると、甲第2号証には、車両走行中に乗員が車室内を移動する等により車両走行中に車両姿勢角度θvが変化する場合があるので、車両が発進する際及び車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで、車両の直進判定及び路面の水平判定を実施し、車両が直進し、かつ路面が水平であるときに路面角度θrの基準値を補正することが記載されているといえる。
ここで、甲第1号証の段落【0048】の「車両300の加減速に起因した車両姿勢の傾きや、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾き等の外乱を除外できない場合、直線近似式の傾きの変化量が車両姿勢角度θvの変化量から大きくずれる可能性がある。」という記載(記載事項(1c))を参照すると、引用発明は、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第2号証に記載された技術的事項は、車両走行中に乗員が車室内を移動する等により車両走行中に車両姿勢角度θvが変化する場合があるので路面角度θrの基準値を補正するというものであって、車両の走行に起因した車両姿勢の傾きの外乱を除外するものでないから、引用発明に甲第2号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第2号証に記載された技術的事項は、「車両が発進する際及び車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで、車両の直進判定及び路面の水平判定を実施し、車両が直進し、かつ路面が水平であるときに路面角度θrの基準値を補正する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第2号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の「前記制御部は、所定の曲進状態及び所定の坂道走行状態の少なくとも1つに車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれる場合、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(イ)甲第3号証の段落【0015】の「車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算する」という記載及び同段落【0023】?【0026】の「停車中に車速センサ12で検出されたピッチ角データに基づいてアクチュエータ10の駆動を制御するが、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがある。そこで、安定走行中に限り、しかも1回だけ、安定走行中に検出したピッチ角データに基づいてアクチュエータ10の駆動を制御して、この誤ったレベリング(光軸補正)を補正するようになっている。・・・走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、車両のピッチ角を演算する・・・安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.8m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、車両停車中(に検出した最新)のピッチ角データと所定値(+側に0.2度または-側に0.2度)以上の差のあるピッチ角データが、例えば2秒以上継続して検出された場合には、レベリング不適状態(車両旋回走行状態)であると判別し、アクチュエータ10の駆動制御を中止するようになっている。」という記載(いずれも記載事項(3c))及び図2?3の図示内容(記載事項(3d))を参照すると、甲第3号証には、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるので、走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、車両のピッチ角を演算するものにおいて、安定走行条件を満足するような場合であっても、車両停車中(に検出した最新)のピッチ角データと所定値以上の差のあるピッチ角データが、例えば2秒以上継続して検出された場合には、レベリング不適状態(車両旋回走行状態)であると判別し、アクチュエータ10の駆動制御を中止することが記載されている。
上記(ア)で述べたとおり、引用発明は、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、甲第3号証に記載された上記技術的事項は、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるという課題を解決するものであるから、車高センサーを用いていない引用発明に上記甲第3号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第3号証に記載された技術的事項は、「外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、車両のピッチ角を演算」したり、「車両停車中(に検出した最新)のピッチ角データと所定値以上の差のあるピッチ角データが、例えば2秒以上継続して検出された場合には」、「アクチュエータ10の駆動制御を中止する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第3号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の「前記制御部は、所定の曲進状態及び所定の坂道走行状態の少なくとも1つに車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれる場合、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(ウ)甲第4号証の段落【0016】の「車高センサー14からの信号が入力すると、サスペンションの変位量に相当するこの信号から、車両の前後方向の傾斜(ピッチ角)を演算する。」という記載及び同段落【0024】?【0027】の「停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがある。そこで、安定走行中に限り、しかも1回だけ、安定走行中に検出したピッチ角データに基づいてモータ10の駆動を制御して、この誤ったレベリング(光軸補正)を補正するようになっている。・・・走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御するようになっている。・・・安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合がある。そこで、CPU16は、記憶部20の格納部20Aに記憶されている1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と記憶部20の格納部20Bに記憶されている3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御することで、不適切なオートレベリングを回避する」という記載(いずれも記載事項(4c))及び図4の図示内容(記載事項(4d))を参照すると、甲第4号証には、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるので、走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御するものにおいて、安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合があるから1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御することが記載されている。
上記(ア)で述べたとおり、引用発明においては、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第4号証に記載された技術的事項は、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるという課題を解決するものであるから、車高センサーを用いていない引用発明に上記甲第4号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第4号証に記載された技術的事項は、「外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御」したり、「安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合があるから1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第4号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の「前記制御部は、所定の曲進状態及び所定の坂道走行状態の少なくとも1つに車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれる場合、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(エ)上記(ア)?(ウ)によれば、引用発明に甲第2号証に記載された技術的事項、甲第3号証に記載された技術的事項及び甲第4号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえず、さらに、仮に、引用発明に甲第2号証に記載された技術的事項、甲第3号証に記載された技術的事項及び甲第4号証に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成を容易に想到することはできない。
また、甲第2号証に記載された技術的事項、甲第3号証に記載された技術的事項及び甲第4号証に記載された技術的事項は、それぞれ上記(ア)?(ウ)で述べたとおりのものであり、「曲進状態に車両があったときの検出値を除外して車両の傾斜を演算する」というものではないから、周知の技術的事項として、「曲進状態に車両があったときの検出値を除外して車両の傾斜を演算する」という構成や技術思想を認定することもできない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術的事項から、本件発明1を容易に想到することはできない。

(オ)申立人は、「甲2発明の『車両が直進ではないと判断されたときの加速度センサの左右方向の検出値』、甲3発明の『旋回走行状態と判断されたときのセンサーの検出値』、及び甲4発明の『異常走行であると判断されたときの3秒間のピッチ角データの平均値』は、本件特許発明1の『曲進状態に車両があったときの検出値』に相当するものであり、これらの検出値は車両の傾斜角度の演算から除外されるものである。したがって、『従来周知の技術事項1』には、『曲進状態に車両があったときの検出値を除外して車両の傾斜を演算する制御部』と、『演算された車両の傾斜に基づいてヘッドランプの光軸を自動調整するオートレベリング装置』が記載されている。」とした上で(特許異議申立書第26ページ第16行?第23行)、「甲1発明は『車両の曲進に起因した車両姿勢の傾き等の外乱を除外し、光軸位置及び車両姿勢角度θvを補正する』という技術思想を有するものであり、車両の曲進等に起因する車両姿勢への外乱を除外する点では『従来周知の技術事項1』と同一のものである。また、甲1発明及び『従来周知の技術事項1』は、車体の傾斜を取得し、車体の傾斜に基づいてヘッドランプの光軸を自動調整するオートレベリング装置に関する発明である。よって、甲2?4発明は、甲1発明と技術分野を同一にするものであり、かつ、甲1?4発明は車両の曲進に起因した車両姿勢の傾きなどの外乱を除外するという課題も共通するから甲1発明に甲2?甲4発明を適用することについて動機付けはある。・・・相違点1は『従来周知の技術事項1』に記載されたものであり、『従来周知の技術事項1』を甲1発明に適用することは容易に想到し得るものである。」(特許異議申立書第26ページ第24行?第27ページ第7行)と主張している。
しかしながら、上記(ア)?(ウ)において述べたとおり、甲第2号証?甲第4号証に記載された各技術的事項の課題は引用発明に内在された課題と異なるものであり、さらに、仮に、引用発明に甲第2号証?甲第4号証に記載された各技術的事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(カ)以上より、本件発明1は、当業者であっても、引用発明(甲第1号証に記載された発明)及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1の構成を更に限定して発明を特定するものであって、上記(1)のとおり、本件発明1が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明2、3は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3)本件発明6について
ア 対比
上記(1)アを踏まえ、本件発明6と引用発明を対比する。

本件発明6と引用発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点2>
「車両前後方向及び車両上下方向の加速度を導出可能な、加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両の加速時及び減速時の少なくとも一方における前記検出値をプロットし、プロットした複数点から直線を導出し、前記直線の傾きを用いて車両用灯具の光軸調節を指示する調節信号を出力するための制御部と、を備える車両用灯具の制御装置。」

<相違点2>
本件発明6は、「前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出する」のに対し、
引用発明では、そのように特定されていない点。

イ 判断
(ア)上記相違点2について検討する。
上記「(1)イ(ウ)」で述べたとおり、甲第4号証には、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるので、走行中では、外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御するものにおいて、安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合があるから1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御することが記載されている。
上記「(1)イ(ア)」で述べたとおり、引用発明においては、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第4号証に記載された技術的事項は、車高センサー14からの信号に基づいて車両のピッチ角を演算するオートレベリング装置に関し、停車中の車両が坂道停車している場合とか、縁石に乗り上げて停車している場合のように、不適切な車両停車中におけるピッチ角データに基づいてレベリング(光軸補正)されることがあるという課題を解決するものであるから、車高センサーを用いていない引用発明に上記甲第4号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第4号証に記載された技術的事項は、「外乱を排除するために、車速が基準値以上で、加速度が基準値以下で、しかもこの状態(車速が基準値以上で、加速度が基準値以下の状態)が一定時間以上継続している場合にのみ、モータ10の駆動を制御」したり、「安定走行条件(速度30km/h以上で、加速度0.78m/s^(2)以下という状態が3秒以上継続)を満足するような場合であっても、旋回走行やスラローム走行や凹凸の激しい路面走行下のように、適正なピッチ角データが検出できない場合があるから1秒間のピッチ角データの平均値(1秒平均ピッチ角データ)と3秒間のピッチ角データの平均値(3秒平均ピッチ角データ)とを比較し、両者がほぼ等しい(一致する)かどうかを判別し、等しい場合に限り、モータ10の駆動を制御する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第4号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明6の「前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(イ)甲第5号証の段落【0024】?【0032】の「第一の検出手段2は、水平面に対して路面がなす角度(これを『θ』と記す。)を検出する。第一の検出手段2には、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用した衛星通信装置や、路車間通信装置等が用いられる。・・・第二の検出手段3は、水平面に対して車両の車体軸がなす角度(これを『δ』と記す。)を検出する。第二の検出手段3には、水準器を用いたレベルセンサ又は傾斜センサが用いられ、車体又は車両用前照灯の非可動部に付設される。・・・車両の加減速時における加速度の影響によって計測誤差が発生することへの配慮が必要とされ、車両の定速走行時にのみ、δを検出するか、あるいはδ値として所定時間又は所定の走行距離内での平均値を検出する・・・『γ』は路面に対して車両の車体軸がなす角度を示している。・・・γ、θ、δの3者間に、『γ=θ-δ』の関係が成立することを利用して、θとδを求めてγを算出する。」という記載及び同段落【0065】の「レベルセンサ14の出力角δはリアルタイムに計測されるが、車両の加減速状態や路面の凹凸等の影響を受け易いため、所定時間(例えば、高速道路等の高規格道路では5秒以上とされ、道路クラスの低い道路ではさらに長い時間とする。)又は所定距離(例えば、高速道路等の高規格道路では100乃至200m以上とし、道路クラスの低い道路ではさらに長い距離とする。)の走行区間に亘って平均した値を用いることが好ましい。あるいは、加速度センサ15の検出情報をもとに加速時や減速時にδの計測を一時的に中断したり、路面の凹凸によってδ値の変動が大きい場所では計測値を採用せずにマスクする処理が好ましい。」という記載(いずれも(記載事項(5c))及び図5?6の図示内容(記載事項(5d))を参照すると、甲第5号証には、GPS(Global Positioning System)を利用した衛星通信装置や、路車間通信装置を用いて、水平面に対して路面がなす角度(θ)を検出し、水準器を用いたレベルセンサ又は傾斜センサを用いて水平面に対して車両の車体軸がなす角度(δ)を検出し、路面に対して車両の車体軸がなす角度γ、θ、δの3者間に、「γ=θ-δ」の関係が成立することを利用して、θとδを求めてγを算出するものにおいて、レベルセンサ14の出力角δは車両の加減速状態や路面の凹凸等の影響を受け易いため、加速度センサ15の検出情報をもとに加速時や減速時にδの計測を一時的に中断したり、路面の凹凸によってδ値の変動が大きい場所では計測値を採用せずにマスクすることが記載されているといえる。
上記「(1)イ(ア)」で述べたとおり、引用発明においては、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第5号証に記載された技術的事項は、レベルセンサ14の出力角δは車両の加減速状態や路面の凹凸等の影響を受け易いという課題を解決するものであるから、レベルセンサを用いていない引用発明に上記甲第5号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第5号証に記載された技術的事項は、「加速度センサ15の検出情報をもとに加速時や減速時にδの計測を一時的に中断したり、路面の凹凸によってδ値の変動が大きい場所では計測値を採用せずにマスクする」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて、検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第5号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明6の「前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(ウ)甲第6号証の段落【0021】の「傾斜測定装置10は、2つの超音波センサ22、24の受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定するものであり、各送信子22a、24aからの超音波は路面Rで反射して各受信子22b、24bで受信され、この受信子22b、24bの受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態が判定される。」という記載、同段落【0048】?【0052】の「この閾値、Hfm、Hfsは、予め、車輛のフレームの撓みにより生じる、前後の超音波センサ22、24それぞれの平坦路面までの最大距離Hfm、Hrmと、最小距離Hfs、Hrsとを閾値として定めたもので、超音波センサ22、24で測定した路面までの距離Hf、Hrがこの閾値の範囲を逸脱している場合、路面に穴や比較的大きな石などがあって測定値が大きく異なったと考えられるから、それを除外することで、より正確な、前後の超音波センサ22、24の仮想路面に対する角度を得ることができ、車輛用ヘッドランプの光軸調整を正確に行うことができる。・・・ステップS34で、測定した超音波センサ22から路面R迄の距離Hfが、閾値、Hfm、Hfsの範囲外であると判断された場合はステップS36に進み、範囲内である場合はステップS35に進んでこの路面R迄の距離Hfが記憶される。・・・次のステップS36で、今度は後側超音波センサ24で超音波センサ24から路面R迄の距離Hrが測定される。そしてステップS34で、前記ステップS34の場合と同様、測定した超音波センサ22から路面R迄の距離Hrが、予め定めた閾値、Hrm、Hrsの範囲にあるか否かが判断される。そして、測定した超音波センサ24から路面R迄の距離Hrが、閾値、Hrm、Hrsの範囲外であると判断された場合はステップS39に進み、範囲内である場合はステップS38に進んでこの路面R迄の距離Hrが記憶される。・・・前後の超音波センサ22、24での測定が済むと、ステップS39で規定数(例えば、500個)以上の超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrが収集されたかどうかが判断され、まだの場合はステップS31に戻って以上の処理が繰り返され、規定数のデータが収集されたと判断された場合、ステップS40で収集されたHf、Hrそれぞれの平均値が演算される。・・・ステップS41で演算されたHf、Hrの平均値と、図5に示した前後の超音波センサ22、24の距離Lとを用い、ステップS41でまず傾斜測定装置10の傾斜角度αが算出され、現在の傾斜角度との差、変化量Δαが算出される」という記載(いずれも(記載事項(6c))及び図1の図示内容(記載事項(6d))を参照すると、甲第6号証には、2つの超音波センサ22、24の受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定する傾斜測定装置10を用いたものにおいて、超音波センサ22、24で測定した路面までの距離Hf、Hrが閾値の範囲を逸脱している場合、路面に穴や比較的大きな石などがあって測定値が大きく異なったと考えられるから、それを除外することで、より正確な、前後の超音波センサ22、24の仮想路面に対する角度を得ることができるところ、測定した超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrが、閾値、Hfm、Hfs、閾値、Hrm、Hrsの範囲内である場合はこの路面R迄の距離Hf、Hrを記憶し、規定数(例えば、500個)以上の超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrを収集したらHf、Hrそれぞれの平均値を演算して現在の傾斜角度を算出することが記載されているといえる。
上記「(1)イ(ア)」で述べたとおり、引用発明においては、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第6号証に記載された技術的事項は、2つの超音波センサ22、24の受信時間差に基づいて路面Rに対する車輛の傾斜状態を判定する傾斜測定装置10を用いたものにおいて、超音波センサ22、24で測定した路面までの距離Hf、Hrが閾値の範囲を逸脱している場合、路面に穴や比較的大きな石などがあって測定値が大きく異なったと考えられるから、それを除外することで、より正確な、前後の超音波センサ22、24の仮想路面に対する角度を得ることができるというものであるから、超音波センサを用いていない引用発明に上記甲第6号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第6号証に記載された技術的事項は、「測定した超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrが、閾値、Hfm、Hfs、閾値、Hrm、Hrsの範囲内である場合はこの路面R迄の距離Hf、Hrを記憶し、規定数(例えば、500個)以上の超音波センサ22、24から路面R迄の距離Hf、Hrを収集したらHf、Hrそれぞれの平均値を演算して現在の傾斜角度を算出する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて、検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第6号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明6の「前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(エ)甲第7号証の段落【0075】?【0078】の「受信アンテナ201は送信手段100から放射された電波を受信し、受信信号1として出力する。増幅器203は受信信号1を所定のレベルまで電力増幅し、直交検波器501へ出力する。直交検波器501は送信手段100内の発振器101から出力された送信信号と受信信号1をIQ検波(直交検波)しIQ信号1を傾斜角度演算手段600へ出力する。・・・受信アンテナ202は送信手段100から放射された電波を受信し、受信信号2として出力する。増幅器204は受信信号2を所定のレベルまで電力増幅し、直交検波器502へ出力する。直交検波器502は送信手段100内の発振器101から出力された送信信号と受信信号2をIQ検波(直交検波)しIQ信号2を傾斜角度演算手段600へ出力する。・・・傾斜角度演算手段600内の振幅位相演算器601は、IQ信号1とIQ信号2から受信信号1と受信信号2と振幅と位相を導出し、傾斜角度演算器602と車両状態判定手段2500内の位相偏差演算器2501に出力する。・・・傾斜角度演算器602は受信信号1と受信信号2の位相の位相差から傾斜角度を算出し路面状態判定手段2600内の角度偏差演算器2601と出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701へ出力する。」という記載、同段落【0081】?【0088】の「図18は車両傾斜検知装置の車両状態判定手段を説明した図であり、車両状態を判定する閾値の一例を示した図である。横軸は時間、縦軸は位相偏位(位相の標準偏差値)を表している。例えば、車両状態として、単純な車両の走行および停止以外にも、踏み切りなどの局所的な路面の凸凹を走行している状態を判定する。車両が振動することで車両と路面との間の距離が変化すると受信信号1および受信信号2の電波伝搬経路長が変化し位相が変化する。・・・領域1となる場合には、車両の停止と判別する。車両が停止すると車両の振動が小さく、言い換えると電波伝搬経路長の偏位が小さくなるので、位相標準偏差値は小さくなる。走行すると路面の凹凸によって車両が振動するので、位相標準偏差値は大きくなる。閾値1は車両の停止と走行を判別するように設定される。・・・領域3は、高架を走行している時の道路の繋ぎ目や踏み切りなど局所的に発生する路面の凹凸を走行している状態を判定する。踏み切りなど局所的に発生する路面の凹凸により車両は大きく振動するので位相標準偏差は大きくなる。閾値2は、局所的に凸凹した路面を走行している状態を判別するように設定される。図中の領域2は、そのほかの路面を車両が走行していると判別する。・・・路面状態判定手段2600内の角度偏差演算器2601は、過去複数点の傾斜角度の標準偏差を演算して角度標準偏差値として路面状態判定器2602へ出力する。路面状態判定部2602は、角度標準偏差が所定の閾値で区切られたどの領域に存在するか判定し路面状態判定結果として出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701に出力する。傾斜角度の時間変化量から路面の局所的な凹凸を検知することになる。・・・図19は車両傾斜検知装置の路面状態判定手段を説明した図であり、路面の状態を判定する閾値の一例を示した図である。横軸は時間、縦軸は傾斜角度偏位(傾斜角度の標準偏差)標準偏差を表している。例えば、路面状態として踏み切りなど局所的にある凹凸の有無を検知する。・・・領域1は、車両の停止状態と判別する。車両が停止しているときは路面の電波照射面は変化しないので、角度標準偏差値は小さな値となる。走行すると路面の凹凸などにより傾斜角度は時々刻々と変化するので角度標準偏差値は増加する。閾値1は車両の停止を判別するように設定される。・・・領域3は、踏み切り等の局所的な路面の凹凸を走行している状態と判定する。車両の傾斜角度が大きく変化するので角度標準偏差は大きな値となる。閾値2は局所的な凸凹した路面を走行している状態を判別するように設定される。傾斜角度の時間変化量から路面の局所的な凹凸を検知することとなる。・・・出力信号演算手段2700内の出力信号演算器2701は、傾斜角度と車両状態判定結果と路面状態判定結果を用いて、補正した傾斜角度を出力する。出力される補正した傾斜角度は、車両走行中と判定されている時に計測された過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力する。また、踏み切りなどを走行している時の計測データを除外して過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力する。また、領域ごとに重み係数を割り振り、過去複数点の傾斜角度の重み付け平均値を傾斜角度として出力する。」という記載、同段落【0091】の「路面の凹凸によって変化する車両の傾斜角度を傾斜角度の時間偏位量や過去複数点の傾斜角度の偏差として高精度に検知し、局所的に生じる路面凹凸の有無を所定の閾値で区切られた領域に割り当て判定し、判定結果と傾斜角度を用いて車両の傾斜角度を求めるので、精度よく補正した傾斜角度を求めることができる。」という記載(いずれも(記載事項(7c))及び図17?19の図示内容(記載事項(7d))を参照すると、甲第7号証には、受信信号1と受信信号2の位相の位相差から傾斜角度を算出するものにおいて、精度よく補正した傾斜角度を求めるために、踏み切りなどを走行している時の計測データを除外して過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力することが記載されているといえる。
上記「(1)イ(ア)」で述べたとおり、引用発明においては、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾きが生じ、その外乱を除外するという課題を内在しているといえる。しかしながら、上記甲第7号証に記載された技術的事項は、受信信号1と受信信号2の位相の位相差から傾斜角度を算出するものにおいて、精度よく補正した傾斜角度を求めるというものであるから、受信信号1と受信信号2の位相の位相差から傾斜角度を算出するものでない引用発明に上記甲第7号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記甲第7号証に記載された技術的事項は、「踏み切りなどを走行している時の計測データを除外して過去複数点の傾斜角度の平均値を傾斜角度として出力する」というものであって、プロットした複数点から直線を導出するものにおいて、検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に一部の検出値を除外して直線を導出するというものではないから、仮に引用発明に上記甲第7号証に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明6の「前記制御部は、所定の凹凸路走行状態に車両があったときの前記検出値が、前記直線の導出に用いようとする検出値に含まれ、且つこの検出値における車両上下方向の加速度と、複数の検出値における車両上下方向の加速度から導出される凹凸路走行判定基準値との差が、所定の凹凸路走行判定しきい値を上回る場合に、この検出値を除外して前記直線を導出する」という構成には至らない。

(オ)上記(ア)?(エ)によれば、引用発明に甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえず、さらに、仮に、引用発明に甲4号証に記載された技術的事項、甲第35証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明2の構成を容易に想到することはできない。
また、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項は、それぞれ上記(ア)?(エ)で述べたとおりのものであり、用いられている傾斜の算出方法に特有な課題を解決するものであるから、周知の技術的事項として、「凹凸路走行状態に車両があったときの検出値を除外して車両の傾斜を演算する」というひとまとまりの構成や技術思想を認定することもできない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び甲第4号証?甲第7号証に記載された技術的事項から、本件発明6を容易に想到することはできない。

(カ)申立人は、「甲4発明の『異常走行であると判断されたときの3秒間のピッチ角データの平均値』、甲5発明の『路面の凹凸によって大きく変動する角度δ』、甲6発明の『路面の凹凸によって予め定めた閾値の範囲を逸脱したセンサーの検出値』、及び甲7発明の『閾値より大きく変化したときの車両の傾斜角度の標準偏差値の計測データ』は、本件特許発明6の『凹凸路走行状態に車両があったときの検出値』に相当するものであり、これらの検出値は車両の傾斜角度の演算から除外されるものである。したがって、『従来周知の技術事項4』には、『凹凸路走行状態に車両があったときの検出値を除外して車両の傾斜を演算する制御部』と、『演算された車両の傾斜に基づいてヘッドランプの光軸を自動調整するオートレベリング装置』が記載されている。」とした上で(特許異議申立書第32ページ下から4行?第33ページ第5行)、「甲1発明は『車両の曲進に起因した車両姿勢の傾き等の外乱を除外し、光軸位置及び車両姿勢角度θvを補正する』という技術思想を有するものであり、車両の曲進等の走行路に起因する車両姿勢への外乱を除外する点では『従来周知の技術事項4』と同一のものである。また、甲1発明及び『従来周知の技術事項4』は、車体の傾斜を取得し、車体の傾斜に基づいてヘッドランプの光軸を自動調整するオートレベリング装置に関する発明である。よって、甲4?7発明は、甲1発明と技術分野を同一にするものであり、かつ、甲1発明と、甲4?7発明は車両の曲進に起因した車両姿勢の傾きなどの外乱を除外するという課題も共通するから甲1発明に甲4?甲7発明を適用することについて動機付けはある。・・・相違点4は『従来周知の技術事項4』に記載されたものであり、『従来周知の技術事項4』を甲1発明に適用することは容易に想到し得るものである。」(特許異議申立書第33ページ第6行?第18行)と主張している。
しかしながら、上記(ア)?(エ)において述べたとおり、甲第4号証?甲第7号証に記載された各技術的事項の課題は引用発明に内在された課題と異なるものであり、さらに、仮に、引用発明に甲第4号証?甲第7号証に記載された各技術的事項を適用しても、相違点2に係る本件発明6の構成には至らない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(キ)以上より、本件発明6は、当業者であっても、引用発明(甲第1号証に記載された発明)及び甲第4号証?甲第7号証に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を直接的に引用し、少なくとも本件発明6の構成を更に限定して発明を特定するものであって、上記(3)のとおり、本件発明6が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明7は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし3、6ないし7が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1ないし3、6ないし7に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものとはいえないことから、同法第113条第2号に該当するものとして取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3、6ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-09-28 
出願番号 特願2013-218686(P2013-218686)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B60Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 當間 庸裕  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
中田 善邦
登録日 2018-01-12 
登録番号 特許第6271943号(P6271943)
権利者 株式会社小糸製作所
発明の名称 車両用灯具の制御装置  
代理人 森下 賢樹  
代理人 三木 友由  
代理人 村田 雄祐  
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