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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01K
管理番号 1345154
審判番号 不服2018-2392  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2014-211629「熱エネルギー回収装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月16日出願公開、特開2016-79881、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年5月17日付け :拒絶理由通知書
平成29年7月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月22日付け:拒絶査定
平成30年2月20日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1、3及び5ないし7に記載された発明、又は引用文献2、3及び5ないし7に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項5に係る発明は、引用文献1及び3ないし7に記載された発明、又は引用文献2ないし7に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開昭58-13112号公報(本審決における引用例1)
引用文献2:特開昭57-131806号公報(同引用例2)
引用文献3:特開2013-181398号公報(同引用例3)
引用文献4:特開昭57-135206号公報(同引用例7)
引用文献5:国際公開第2013/031287号(同引用例4)
引用文献6:特開2013-68137号公報(同引用例5)
引用文献7:国際公開第2013/046853号(同引用例6)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成29年7月10日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
外部から供給される加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を加熱する予熱手段及び前記予熱手段から流出した作動媒体と加熱媒体とを熱交換させることによって作動媒体を加熱する蒸発手段を有する熱交換部と、
前記熱交換部から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された作動媒体を前記熱交換部へ送るポンプと、
前記熱交換部、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記蒸発手段及び前記膨張機をバイパスするバイパス流路と、
前記熱交換部から流出した加熱媒体の温度が一定の範囲内に収まるように、前記熱交換部への作動媒体の流入量を制御するとともに、前記熱交換部から流出した作動媒体の過熱度が基準範囲内に収まるように、前記熱交換部に流入した作動媒体のうち前記バイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御する制御部と、を備える、熱エネルギー回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記バイパス流路の下流側の端部は、前記循環流路のうち前記凝縮器と前記ポンプとの間の部位に接続されている、熱エネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記バイパス流路の下流側の端部は、前記循環流路のうち前記膨張機と前記凝縮器との間の部位、又は、前記凝縮器に接続されている、熱エネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項2に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記バイパス流路と前記循環流路のうち前記膨張機と前記凝縮器との間の部位とを接続する分岐流路をさらに備え、
前記制御部は、前記ポンプに流入する作動媒体の過冷却度が規定範囲内に収まるように前記バイパス流路から前記分岐流路に分流させる作動媒体の流量を制御する、熱エネルギー回収装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記熱交換部は、前記予熱手段及び前記蒸発手段をまとめて取り囲む形状を有する筐体をさらに備える、熱エネルギー回収装置。」

第4 引用例、引用発明、引用技術
1 引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭58-13112号公報(以下「引用例1」という。)には、「廃熱回収発電プラント」に関して、図面(特に第1図参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「第1図は、従来実施されている廃熱回収発電プラントの系統図である。図において、1は蒸発器、2は予熱器、3はタービン、4は発電機、5は凝縮器、6は媒体ポンプである。蒸発器1は、上部ドラム7、加熱管8、下部ドラム9および下降管10から構成されている。かかる廃熱回収発電プラントの作動媒体には、廃ガス温度が十分高い場合には、水-蒸気を用いることも可能であるが、通常は廃ガス源である生産システムで十分に利用されて200?400℃の温度に低下しているため、廃熱回収発電効率の観点から、トリクロロトリフルオロエタン、トリクロロフルオロメタン等の低沸点媒体(以下媒体と記す)が利用されている。媒体は予熱器2でその供給圧力の飽和温度近くまで予熱され、さらに給液管11より蒸発器1の上部ドラム7に供給される。蒸発器1では媒体が加熱管8で廃ガスにより加熱され、その一部が気化蒸発する。それに伴つて加熱管8中には媒体の気泡が発生し、下降管10中の媒体との密度差によつて、上部ドラム7、下降管10、下部ドラム9および加熱管8を系とした自然循環流が生じる。発生媒体蒸気は上部ドラム7で分離し、主蒸気管13よりタービン3へ供給して動力を回収し、凝縮器5、媒体ポンプ6、予熱器2へ戻る閉サイクルを形成する。
この廃熱回収プラントでは、廃ガス温度の変動時に廃熱回収発電効率が低い欠点があつた。すなわち、廃熱回収発電プラントを設計する際には、熱源温度を生産システムの廃ガス条件を見較べてほぼその平均温度に設定するが、実機では生産システムの生産状況により、廃ガス温度が常時変動する。」(第1ページ右欄第9行ないし第2ページ右上欄第1行)

イ 「廃ガス温度が設計温度より低下した場合には、蒸発器1における媒体の蒸発量は減少するが、それに伴なつて、予熱器2の廃ガスと媒体との温度差が大きくなり、予熱器内で媒体が沸騰するようになる。予熱器での媒体の沸騰現象は、伝熱管の損傷を起し、プラントの安定運転が阻害されるため、さける必要がある。従来のプラントでは、第1図に示すように予熱器2の媒体放出管を分岐してバイパス液管12を設け、廃ガス温度が設計温度より低下した場合には、予熱器2への媒体供給量を増やして媒体の沸騰を防ぎ、その増加分をバイパス液管12で凝縮器5へ放出して冷却する。」(第2ページ右上欄第12行ないし左下欄第3行)

ウ 上記ア及びイ並びに第1図の図示内容からみて、予熱器2及び蒸発器1において、生産システムの廃ガスと作動媒体とが熱交換すること、発生媒体蒸気がタービン3で膨張すること、発電機4がタービン3に接続されたものであること、凝縮器5でタービン3から流出した作動媒体を凝縮させること、閉サイクルは、予熱器2及び蒸発器1を有する装置、タービン3、凝縮器5及び媒体ポンプ6をこの順に接続するものであること、及び、作動媒体供給量を制御するための制御部が設けられること、はいづれも明らかである。

エ 上記イ及び第1図の図示内容からみて、予熱器2の媒体放出管を分岐して設けられたバイパス液管12は、凝縮器5に接続することが確認できるから、バイパス液管12は、蒸発器1及びタービン3をバイパスするものであることが分かる。

上記アないしエ及び第1図の図示内容を総合すると、引用例1には、「廃熱回収発電プラント」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「生産システムの廃ガスと作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を予熱する予熱器2及び前記予熱器2から供給された作動媒体と廃ガスとを熱交換させることによって作動媒体を加熱する蒸発器1を有する装置と、
発生媒体蒸気を膨張させるタービン3と、
前記タービン3に接続された発電機4と、
前記タービン3から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器5と、
前記凝縮器5で凝縮された作動媒体を前記予熱器2及び蒸発器1を有する装置へ戻す媒体ポンプ6と、
前記予熱器2及び蒸発器1を有する装置、前記タービン3、前記凝縮器5及び前記媒体ポンプ6をこの順に接続する閉サイクルと、
前記蒸発器1及び前記タービン3をバイパスするバイパス液管12と、
生産システムの廃ガス温度が設計温度より低下した場合には、前記予熱器2への作動媒体供給量を増やして、その増加分を前記バイパス液管12で前記凝縮器5へ放出する制御部と、を備える、廃熱回収発電プラント。」

2 引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭57-131806号公報(以下「引用例2」という。)には、図面(特に第1図参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「第1図は、従来実施されている排熱回収発電プラントの系統を示すものである。第1図において1は蒸発器、2は予熱器、3はタービン、4は発電機、5は凝縮器、6はポンプである。蒸発器1は、上部ドラム7、加熱器8、下部ドラム9および下降管10から構成されている。このような排熱回収発電プラントの作動媒体には、排ガス温度が十分に高い場合には水-蒸気を用いることも可能であるが、通常は排ガス源である生産システムで十分に利用されて200?400℃の温度に低下しているため、排熱回収発電効率の観点からトリクロロトリフルオロエタン、トリクロロフルオロメタン等の低沸点媒体(以下媒体と記す)が利用されている。媒体は予熱器2でその供給圧力の飽和温度近くまで予熱され、さらに給液管11より蒸発器1の上部ドラム7に供給される。蒸発器1では媒体が加熱管8で排ガスにより加熱され、その一部が気化蒸発する。それに伴つて加熱管中には媒体の気泡が発生し、下降管10中の媒体との密度差によつて、上部ドラム7、下降管10、下部ドラム9および加熱管8を系とした自然循環流が生じる。発生媒体蒸気は上部ドラム7で分離し、蒸気管16よりタービン3へ供給されて動力を回収し、凝縮器5、ポンプ6、予熱器2へ戻る閉サイクルを形成する。
かかる従来の排熱回収発電プラントでは、排ガス温度の低下時に排熱回収発電効率が低い欠点があつた。すなわち、排熱回収発電プラントを設計する際には熱源温度を生産システムの排ガス条件を見較べて設定されるが、実機では生産システムの生産状況により排ガス温度が常時変動する。排ガス温度が設計温度より低下すると、蒸発器1における媒体蒸発量は減少するが、それに伴つて予熱器2の媒体と排ガスとの温度差は逆に大きくなり、予熱器内で媒体が沸騰するようになる。予熱器内における媒体の沸騰現象は、伝熱管の損傷やプラントを安定に運転するために与える影響が大きいためさける必要がある。そこで従来では、第1図に示すごとく予熱器媒体出口管を分枝してバイパス管12を設け、排ガス温度が設計温度より低下した場合には予熱器への媒体供給量を増やして媒体の沸騰を防ぎ、その増加分をバイパス管12で凝縮器5へ導いて冷却している。」(第1ページ右欄第18行ないし第2ページ左下欄第1行)

イ 上記ア及び第1図の図示内容からみて、予熱器2及び蒸発器1において、生産システムの排ガスと作動媒体とが熱交換すること、発生媒体蒸気がタービン3で膨張すること、発電機4がタービン3に接続されたものであること、凝縮器5でタービン3から流出した作動媒体を凝縮させること、閉サイクルは、予熱器2及び蒸発器1を有する装置、タービン3、凝縮器5及びポンプ6をこの順に接続するものであること、及び、作動媒体供給量を制御するための制御部が設けられること、はいづれも明らかである。

ウ 上記ア及び第1図の図示内容からみて、予熱器媒体出口管を分岐して設けられたバイパス管12は、凝縮器5に接続することが確認できるから、バイパス管12は、蒸発器1及びタービン3をバイパスするものであることが分かる。

上記アないしウ及び第1図の図示内容を総合すると、引用例2には、「排熱回収発電プラント」に関して、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

〔引用発明2〕
「生産システムの排ガスと作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を予熱する予熱器2及び前記予熱器2から供給された作動媒体と排ガスとを熱交換させることによって作動媒体を加熱する蒸発器1を有する装置と、
発生媒体蒸気を膨張させるタービン3と、
前記タービン3に接続された発電機4と、
前記タービン3から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器5と、
前記凝縮器5で凝縮された作動媒体を前記予熱器2及び蒸発器1を有する装置へ戻すポンプ6と、
前記予熱器2及び蒸発器1を有する装置、前記タービン3、前記凝縮器5及び前記ポンプ6をこの順に接続する閉サイクルと、
前記蒸発器1及びタービン3をバイパスするバイパス管12と、
生産システムの排ガス温度が設計温度より低下した場合には前記予熱器2への作動媒体供給量を増やして、その増加分を前記バイパス管12で前記凝縮器5へ導く制御部と、を備える、排熱回収発電プラント。」

3 引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2013-181398号公報(以下「引用例3」という。)には、図面(特に、図1ないし図4参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0015】
「第1実施形態」
以下、本発明のバイナリー発電装置1及びこのバイナリー発電装置1の制御方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、第1実施形態のバイナリー発電装置1を模式的に示したものである。図1に示すように、バイナリー発電装置1は、工場から排出される排温水や温泉からの温水を熱源として液体の作動媒体を蒸発させる蒸発器2と、蒸発器2で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機3と、膨張機3で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器4と、凝縮器4から蒸発器2に向って作動媒体を循環させる循環ポンプ5とを備えている。これら蒸発器2、膨張機3、凝縮器4及び循環ポンプ5は作動媒体を循環させる閉ループ状の循環配管6により接続されていて、作動媒体を循環配管6の一方向(蒸発器2、膨張機3、凝縮器4、循環ポンプ5の順番に循環する方向)に沿って流通できるようになっている。」

イ 「【0026】
図3は、制御部9で行われる制御(バイナリー発電装置1の制御方法)を示すフローチャートである。
第1実施形態のバイナリー発電装置1の制御方法は、次のような手順で行われる。
ステップ11では、第1の温度計測手段13aを用いて、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]を計測する。そして、予め入力されていた排水温度の目標値Ts[℃](2次利用において要求される温水温度)に対して、計測された温水温度Tw[℃]が有する温度差の絶対値が許容値Tp[℃]内に入っているかどうかを判断する。
【0027】
なお、この許容値Tp[℃]は、2次利用される温水の目的などに合わせて適宜設定されるものであり、例えば温泉や温水プールの場合であれば2℃?5℃程度とされる。
このようにして算出された温度差の絶対値が許容値Tp[℃]より大きい場合は、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]を調整する必要があるものと判断して、ステップ12以降に進んで作動媒体の循環流量及び圧力の調整を行う。また、算出された温度差の絶対値が許容値Tp[℃]以下である場合は、作動媒体の循環流量や圧力を調整する必要はない(現状の運転をそのまま継続すればよい)と判断して、ステップ18に進んで処理を終了する。
【0028】
ステップ12では、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]より高いかどうか、言い換えれば蒸発器2の出側における温水の温度が排水温度の目標値Ts[℃]より高温側に外れているか低温側に外れているかを判断する。蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]より高い場合は、高温側に外れている温水の温度を下げるためにステップ13以降に進んで作動媒体の循環流量を上げる(増加させる)。また、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]と同じ温度か低い場合は、低温側に外れている温水の温度を上げるために、図4のステップ21に進んで作動媒体の循環流量を下げる(減少させる)。
【0029】
ステップ13では、循環ポンプ5の回転数を増加させて、作動媒体の循環流量を増加させる。具体的には、作動媒体の循環流量を所定の増加量毎に段階的に変化させ、段階的に増加させられた循環流量のそれぞれに対して後述する過熱度が所望範囲に収まるような作動媒体の圧力を求める。このようにして作動媒体の循環流量と圧力とをそれぞれ段階的に変化させてゆけば、蒸発器2の出側において2次利用が可能な温度を維持しつつも、発電効率が最大となるような循環流量及び圧力の条件を得ることが可能となるからである。
【0030】
ステップ14では、このようにステップ13で循環ポンプ5の回転数を所定量だけ増加させて作動媒体の循環流量が増大したら、増大した作動媒体の循環流量に対応する膨張機3の入側における作動媒体の温度T_(2)[℃]及び圧力P_(2)[Pa]を、第2の温度計測手段13b及び第2の圧力計測手段14bを用いて計測する。そして、求められた作動媒体の温度T_(2)[℃]及び圧力P_(2)[Pa]を用いて、膨張機3の入側(膨張機3の出側)における作動媒体の過熱度ΔTv[℃]を算出する。
【0031】
なお、過熱度ΔTv[℃]は、作動媒体に用いられる有機化合物の種類が分かれば、膨張機3の入側における作動媒体の圧力P_(2)[Pa]より必然的に導くことができる。このようにして作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が算出されたら、ステップ15に進んで過熱度が所望範囲に収まるかどうかを判断する。
ステップ15では、ステップ14において算出された作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が、予め定められた過熱度の下限値ΔTP_(2)[℃]よりも大きいかどうかを判断する。この過熱度の下限値ΔTP_(2)[℃]は、作動媒体が気液混合状態のまま膨張機3に吸い込まれることがないように作動媒体が蒸発器2で十分に過熱されたと判断できる過熱度、言い換えれば良好な発電効率が得られていることを示す過熱度の値である。
【0032】
このようにして算出された作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が下限値ΔTP_(2)[℃]よりも大きいと判断された場合は、膨張機3において作動媒体から回転駆動力を安定して回収して、上述した発電機7を用いて効率よく発電を行うことができると判断できるので、ステップ17に進む。
一方、算出された作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が下限値ΔTP_(2)[℃]よりも小さいと判断された場合は、作動媒体が液体のまま膨張機3に吸い込まれる虞があり、このままでは良好な発電効率を得ることができないため、ステップ16に進んで作動媒体の圧力を下げる。
【0033】
ステップ16では、圧力調整弁12に制御信号を出力して、圧力が低くなる方向に所定の変更量毎に弁開度を段階的に調整する。このようにすれば、弁開度を調整するたびに、第1の圧力計測手段14aで計測される作動媒体の圧力P1[Pa]が段階的に低く変化する。そして、作動媒体の圧力P_(1)[Pa]が段階的に変化する毎に、ステップ14の前に戻って過熱度が所望の範囲に入っているかどうかの判断を繰り返せば、やがて過熱度ΔTv[℃]が下限値ΔTP_(2)[℃]よりも大きくなるような作動媒体の圧力P_(1)[Pa]が得られる。このようにして過熱度を所望の範囲内にするような作動媒体の圧力P_(1)[Pa]が求められたら、ステップ17に進む。
【0034】
ステップ17では、蒸発器2の出側で計測された温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]に対して許容値Tp[℃]の範囲内に入っているか小さいかどうかを再び判断する。このステップ17の判断において、蒸発器2の出側で計測された温水温度Tw[℃]から排水温度の目標値Ts[℃]を差し引いた温度差が許容値Tp[℃]以下となる場合には、発電効率が最大となる循環流量と圧力との条件が得られたものと考えて、処理を終了する。
【0035】
一方、温度差が許容値Tp[℃]より大きくなる場合には、ステップ13に戻って、再び循環流量を段階的に増加させる。
上述したステップ13?ステップ17は、蒸発器2の出側における温水の温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]より高い場合(ステップ12での判断が「yes」の場合)であった。しかし、排水温度の目標値Ts[℃]と同じか低い場合(ステップ12での判断が「no」の場合)には、図4に示すような手順で処理を行うこともできる。
【0036】
すなわち、ステップ21では、バイパス流路10に設けられた流量調整弁11に制御信号を送って循環ポンプ5の出側から入側に戻る作動媒体の流量を所定の量だけ上げ、蒸発器2に供給される作動媒体の循環流量を段階的に減少させる。このようにして循環流量が段階的に減少したら、ステップ22に進んで作動媒体の過熱度ΔTv[℃]を算出する。
ステップ22では、膨張機3の入側(蒸発器2の出側)における作動媒体の温度T_(2)[℃]及び圧力P_(2)[Pa]を計測する。そして、求められた作動媒体の温度T_(2)[℃]及び圧力P_(2)[Pa]を用いて、ステップ14の場合と同様にして膨張機3の入側(膨張機3の出側)における作動媒体の過熱度ΔTv[℃]を算出する。このようにして作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が算出されたら、ステップ23に進む。
【0037】
ステップ23では、ステップ22において算出された作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が、予め定められた過熱度の適正範囲内にあるかどうかを判断する。具体的には、このステップ23では、作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が過熱度の下限値ΔTP2[℃]よりも小さいかどうかという判断が行われる。
例えば、作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が下限値ΔTP_(2)[℃]よりも小さいと判断されなかった場合(「no」の場合)は、作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が高く、温水と作動媒体との間に十分な温度差があると考えられるので、発電量を高くするためにステップ24に進んで作動媒体の圧力を上げる。
【0038】
ステップ24では、循環ポンプ5に制御信号を出力して、圧力が高くなる方向に所定の変更量毎に回転数を段階的に調整する。このように循環ポンプ5を用いて作動媒体の圧力を上げた場合は、圧力と共に作動媒体の流量も上昇する。それゆえ、図3の場合と同様に第1圧力計測手段14aで計測される作動媒体の圧力P_(1)[Pa]が段階的に大きくなると同時に、作動媒体の流量も大きくなり、蒸発器2の出側における作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が必要以上に小さくなる場合がある。そこで、ステップ23に戻って再び過熱度が所望の範囲に入っているかどうかの判断を繰り返す。
【0039】
ステップ23に戻った際に、上述したように作動媒体の過熱度ΔTv[℃]が過熱度の下限値ΔTP_(2)[℃]よりも小さいという判断が下された場合は、循環ポンプ5の回転数を上げ過ぎたと言うことになるので、今度は圧力が低くなる方向に所定の変更量毎に回転数を段階的に調整し、循環ポンプ5を用いて作動媒体の圧力及び流量を下げる。
このようにしてステップ23とステップ24との操作を繰り返し、作動媒体の過熱度が適正な範囲に収まるような作動媒体の圧力及び流量、言い換えれば最大の発電出力が得られれば(「yes」の場合は)、ステップ25に進む。
【0040】
ステップ25では、ステップ17と同様に蒸発器2の出側で計測された温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]に対して許容値Tp[℃]の範囲内に入っているかどうかを再び判断する。この判断において、蒸発器2の出側で計測された温水温度Tw[℃]から排水温度の目標値Ts[℃]を差し引いた温度差が許容値Tp[℃]以下となる場合には、発電効率が最大となる循環流量と圧力との条件が得られたものと考えて、処理を終了する。
【0041】
上述の制御方法に従って発電を行えば、作動媒体の循環流量を上げたり下げたりして、蒸発器2の出側における温水の温度を2次利用に適した温度に制御することができる。そして、このように循環流量を調整した上で、バイパス流路10や圧力調整弁12を用いて圧力を調整することで、発電効率を最大にすることができる。それゆえ、蒸発器2の出側における温水の温度の変更を行っても、それに付随して発電量が大きく落ち込むことがなく、温水の2次利用と良好な発電効率の維持とを両立させることが可能となる。」

上記ア及びイ並びに図1ないし図4の図示内容を総合すると、引用例3には、次の技術(以下「引用技術3」という。)が記載されている。

〔引用技術3〕
「バイナリー発電装置1において、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]より高い場合は、高温側に外れている温水の温度を下げるために、作動媒体の循環流量を上げ(増加させ)、作動媒体の過熱度を所望の範囲内にするように、圧力調整弁12に制御信号を出力して、作動媒体の圧力を調整し、
蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]と同じ温度か低い場合は、低温側に外れている温水の温度を上げるために、作動媒体の循環流量を下げ(減少させ)、作動媒体の過熱度が適正な範囲に収まるように、循環ポンプ5に制御信号を出力して、圧力が高くなる方向(又は圧力が低くなる方向)に回転数を調整し、作動媒体の圧力及び循環流量を上昇(又は減少)させる技術。」

4 引用例4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された国際公開第2013/031287号(以下「引用例4」という。)には、図面(特に、図5及び図6参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0079】
第2バイパス路41は、その内部に作動流体を流通させることにより、作動流体に排気ボイラ26を迂回させる。第2流量調整弁43は、排気液ボイラ26(審決注:「排気ボイラ26」の誤記)に流入する作動流体と第2バイパス路41に流入する作動流体との流量を変更可能である。この第2流量調整弁43は制御装置11bに電気的に接続されている。」

イ 「【0081】
このランキンサイクル3bでは、第2電動ポンプP2を作動させることにより、図5及び図6に示すように、作動流体が第2電動ポンプP2から加圧空気ボイラ23を経た後、排気ボイラ26又は第2バイパス路41を流通して、膨張機25更には凝縮器27に至る順で配管28、33、45?48内を循環する。つまり、ランキンサイクル3bにおける作動流体の流通方向において、加圧空気ボイラ23は第2バイパス路41及び排気ボイラ26の上流側に位置している。また、第2バイパス路41は排気ボイラ26の上流側に位置している。そして、第2バイパス路43は、膨張機25の上流で配管48に合流する。」

上記ア及びイ並びに図5及び図6の図示内容を総合すると、引用例4には、次の事項(以下「引用例4に記載された事項」という。)が記載されている。

〔引用例4に記載された事項〕
「作動流体が第2電動ポンプP2から加圧空気ボイラ23を経た後、排気ボイラ26又は第2バイパス路41を流通し、第2流量調整弁43は、排気ボイラ26に流入する作動流体と第2バイパス路41に流入する作動流体との流量を変更可能であること。」

5 引用例5について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2013-68137号公報(以下「引用例5」という。)には、図面(特に図3参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0056】
一方、駆動系1による出力要求が所定値以上となった場合、例えば、アクセルの開度が所定値以上となった場合には、制御装置11は、三方弁43の切り替え制御を行う。これにより、図3に示すように、配管36とバイパス路41とが連通され、配管36及びバイパス路41と配管37とが非連通とされる。
【0057】
これにより、同図の実線矢印に示すように、第1ボイラ27を経た作動流体はパイパス路41に流入する。そして、このバイパス路41内の作動流体は、第2ボイラ28を迂回しつつ、配管38から第3ボイラ29の第6通路29fに至る。
【0058】
ここで、バイパス路41を流通した作動流体は、第2ボイラ28における熱交換が行われていないため、上記の図2に示す状態よりも低温の状態で第3ボイラ29に流入することとなる。このため、第3ボイラ29における熱交換では、作動流体は還流排気からより多くの放熱を受けることとなる。この結果、第5通路29c内の還流排気はより冷却されることとなる。」

上記ア及び図3の図示内容を総合すると、引用例5には、次の事項(以下「引用例5に記載された事項」という。)が記載されている。

〔引用例5に記載された事項〕
「第1ボイラ27を経た作動流体はパイパス路41に流入し、第2ボイラ28を迂回しつつ、配管38から第3ボイラ29に至り、三方弁43の切り替え制御により、配管36とバイパス路41とを連通させること。」

6 引用例6について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された国際公開第2013/046853号(以下「引用例6」という。)には、図面(特に図2参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0023】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る廃熱回生システム200の構成を図2に示す。
実施の形態2係る廃熱回生システム200は、実施の形態1に係る廃熱回生システム100において、インタークーラ124及びバイパス流路131の第1分岐点131aの下流側かつ膨張機126の上流側に排ガスボイラ229を追加したものである。排ガスボイラ229は冷媒をエンジン150から排気系142を通って排出される排気ガスと熱交換させて加熱する第2の熱交換器である。なお、以降の説明において、図1の参照符号と同一の符号は同一又は同様の構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。」

イ 「【0025】
一方、圧力センサ127によって測定される蒸発圧力が所定値以上であり、膨張機126が故障したと判断されるときは、コントローラ160によって開閉弁132が開かれる。インタークーラ124で加熱された冷媒は、排ガスボイラ229及び膨張機126には流通せずに、バイパス流路131を流通する。冷媒はランキンサイクル装置内を循環し、インタークーラ124においてエンジン150への吸入空気を冷却し続ける。」

上記ア及びイ並びに図2の図示内容を総合すると、引用例6には、次の事項(以下「引用例6に記載された事項」という。)が記載されている。

〔引用例6に記載された事項〕
「インタークーラ124及びバイパス流路131の第1分岐点131aの下流側に排ガスボイラ229を追加し、コントローラ160によって開閉弁132が開かれ、インタークーラ124で加熱された冷媒は、排ガスボイラ229には流通せずに、バイパス流路131を流通すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「生産システムの廃ガス」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「外部から供給される加熱媒体」に相当し、以下同様に、「作動媒体」は「作動媒体」に、「熱交換させる」は「熱交換させる」に、「作動媒体を予熱する予熱器2」は「作動媒体を加熱する予熱手段」に、「予熱器2から供給された作動媒体」は「予熱手段から流出した作動媒体」に、「作動媒体を加熱する蒸発器1」は「作動媒体を加熱する蒸発手段」に、「予熱器2及び蒸発器1を有する装置」は「熱交換部」に、「発生媒体蒸気を膨張させるタービン3」は「熱交換部から流出した作動媒体を膨張させる膨張機」に、「タービン3に接続された発電機4」は「膨張機に接続された動力回収機」に、「タービン3から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器5」は「膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器」に、「予熱器2及び蒸発器1を有する装置へ戻す媒体ポンプ6」は「熱交換部へ送るポンプ」に、「閉サイクル」は「循環流路」に、「蒸発器1及び前記タービン3をバイパスするバイパス液管12」は「蒸発手段及び前記膨張機をバイパスするバイパス流路」に、「廃熱回収発電プラント」は「熱エネルギー回収装置」に、それぞれ相当する。

また、引用発明における「生産システムの廃ガス温度が設計温度より低下した場合には、前記予熱器2への作動媒体供給量を増やして、その増加分を前記バイパス液管12で前記凝縮器5へ放出する制御部」と、本願発明1における「熱交換部から流出した加熱媒体の温度が一定の範囲内に収まるように、前記熱交換部への作動媒体の流入量を制御するとともに、前記熱交換部から流出した作動媒体の過熱度が基準範囲内に収まるように、前記熱交換部に流入した作動媒体のうち前記バイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御する制御部」とは、「熱交換部への作動媒体の流入量を制御するとともに、前記熱交換部に流入した作動媒体のうちバイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御する制御部」という限りにおいて一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「外部から供給される加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を加熱する予熱手段及び前記予熱手段から流出した作動媒体と加熱媒体とを熱交換させることによって作動媒体を加熱する蒸発手段を有する熱交換部と、
前記熱交換部から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された作動媒体を前記熱交換部へ送るポンプと、
前記熱交換部、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記蒸発手段及び前記膨張機をバイパスするバイパス流路と、
前記熱交換部への作動媒体の流入量を制御するとともに、前記熱交換部に流入した作動媒体のうち前記バイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御する制御部と、を備える、熱エネルギー回収装置。」

〔相違点〕
本願発明1においては、「熱交換部から流出した加熱媒体の温度が一定の範囲内に収まるように」、前記熱交換部への作動媒体の流入量を制御するとともに、「前記熱交換部から流出した作動媒体の過熱度が基準範囲内に収まるように」、前記熱交換部に流入した作動媒体のうち前記バイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御するのに対して、
引用発明においては、予熱器2への作動媒体供給量を増やすものの、それは予熱器2及び蒸発器1を有する装置から流出した廃ガスの温度が一定の範囲内に収まるようにするためのものではなく、さらに、予熱器2への作動媒体供給量の増加分をバイパス液管12で凝縮器5へ放出するものの、それは予熱器2及び蒸発器1を有する装置から流出した作動媒体の過熱度が基準範囲内に収まるようにするためのものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用技術3は、
「バイナリー発電装置1において、蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]より高い場合は、高温側に外れている温水の温度を下げるために、作動媒体の循環流量を上げ(増加させ)、作動媒体の過熱度を所望の範囲内にするように、圧力調整弁12に制御信号を出力して、作動媒体の圧力を調整し、
蒸発器2の出側の温水温度Tw[℃]が排水温度の目標値Ts[℃]と同じ温度か低い場合は、低温側に外れている温水の温度を上げるために、作動媒体の循環流量を下げ(減少させ)、作動媒体の過熱度が適正な範囲に収まるように、循環ポンプ5に制御信号を出力して、圧力が高くなる方向(圧力が低くなる方向)に回転数を調整し、作動媒体の圧力及び流量を上昇(減少)させる技術」である。
すなわち、引用技術3は、作動媒体の過熱度を所望の範囲内にするために、圧力調整弁12に制御信号を出力して、或いは循環ポンプ5の回転数を調整して、作動媒体の圧力、或いは作動媒体の圧力及び流量を調整することを備えるものである。他方、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、「熱交換部から流出した作動媒体の過熱度が基準範囲内に収まるように、前記熱交換部に流入した作動媒体のうち前記バイパス流路へ分流させる作動媒体の流量を制御する」という事項を含むものである。そうすると、引用技術3は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。
また、引用例4ないし6に記載された事項及び特開昭57-135206号公報(以下「引用例7」という。)も、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではない。

したがって、本願発明1は、引用発明、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、引用発明2は、引用発明と同一であるから、本願発明1は、引用発明2、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項、又は引用発明2、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし5について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし5は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
したがって、本願発明2ないし5は、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項、又は引用発明2、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし5は、いずれも、引用発明、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項、又は引用発明2、引用技術3及び引用例4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2014-211629(P2014-211629)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西中村 健一  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 粟倉 裕二
水野 治彦
発明の名称 熱エネルギー回収装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 荒田 秀明  
代理人 小谷 昌崇  

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