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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02F
管理番号 1345183
審判番号 不服2018-1499  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2014-58433「内燃機関のピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開、特開2014-206159、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成26年3月20日(優先権主張平成25年3月21日)の出願であって、平成29年8月21日付け(発送日:同年8月29日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年12月5日)、これに対し、平成30年2月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年10月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
ピストン頂面に設けられた燃焼室と、前記燃焼室を囲むように形成されたオイルギャラリーと、を有するピストンであって、
ピストンの摺動側面から前記オイルギャラリーまでの肉厚は、ピストン頂面側よりピストンスカート側が厚く形成され、
前記オイルギャラリーは、前記ピストン頂面側から前記ピストンスカート側に向かうほどピストン中心軸に近づく外部傾斜面を有し、
前記ピストン中心軸に沿った断面において、前記オイルギャラリーの前記ピストン中心軸の延在方向における長さをL、前記摺動側面から前記オイルギャラリーの前記ピストン頂面側までの最も薄い肉厚をA、前記オイルギャラリーの下端を通り前記ピストン中心軸に垂直な仮想直線V1と前記外部傾斜面に沿った延長線V2との交点をWとした場合における前記摺動側面から交点Wまでの肉厚をBとしたときに、(B-A)/L≧0.05を満たすことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項2】
前記オイルギャラリーの内部側面は、前記燃焼室の側壁に沿うように形成されている、請求項1に記載の内燃機関のピストン。
【請求項3】
前記燃焼室の側壁は、前記燃焼室の内側に突出するリップ部を有しており、
前記オイルギャラリーの内部側面は、前記リップ部に向かって張り出す内部拡大面を有している、請求項2に記載の内燃機関のピストン。」

第2 原査定の概要
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1、2
・引用文献1
本願の請求項1、2に係る発明は、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項3
・引用文献1、2
本願の請求項3に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

引用文献等一覧
1 特開2002-250251号公報
2 実願昭59-76037号(実開昭60-187325号)のマイクロフィルム

第3 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2002-250251号公報(以下「引用文献1」という。)には、「内燃機関用ピストン」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】従来のクーリングチャンネルを有する内燃機関用ピストンは、実開昭57-158957号公報に示すように、クーリングチャンネルの断面形状が円または楕円、または、円または楕円に近い形状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の内燃機関用ピストンには、つぎの課題(問題点)がある。クーリングチャンネルの断面形状が円または楕円、または、円または楕円に近い形状であるので、ピストン頂部に燃焼圧がかかりクーリングチャンネルの断面が潰れる方向の変形をするとき、クーリングチャンネルの外径壁に曲げ応力がかかる。この曲げ応力によって、クーリングチャンネルの外径壁には裂が発生しやすい。本発明の目的は、クーリングチャンネル周囲にき裂が発生することを従来より抑えることができる内燃機関用ピストンを提供することにある。」

(2)「【0006】
【発明の実施の形態】本発明実施例の内燃機関用ピストン10は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金または鉄からなる。ピストン10(ディーゼルエンジン用のピストンであっても、ガソリンエンジン用のピストンであってもよい)は、頂部11に頂面11aから凹む燃焼室12を有していてもよい。燃焼室12は、ピストン10の径方向中央部に形成されている。燃焼室12より径方向外側で、ピストン10の外周面13よりも径方向内側に、全周にわたってクーリングチャンネル20が設けられている。」

(3)「【0008】クーリングチャンネル20の外径壁21の断面の内面21aには、上下方向または上下方向に傾斜した方向に延びる直線部22が設けられている。直線部22は、外径壁21の内面21aのうち、ピストン10の頂部11に燃焼圧がかかりクーリングチャンネル20の断面を圧縮変形させる時に最大の拡開変形を生じる方向の軸線(以下、曲げモード線という)Lと交わる部分に設けられている。直線部22は、曲げモード線Lと直交またはほぼ直交している(本発明図示例では直交する場合を示している)。曲げモード線Lの角度α(ピストン10の中心線Pに直交する面Qと曲げモード線Lとのなす角)は、ピストン10の形状、たとえば燃焼室12の深さ等により異なるが、10°?80°とされている。クーリングチャンネル20の外径壁21の内面21aの一部のみが曲げモード線Lに直交する場合、外径壁21の内面21aのうち曲げモード線Lと直交しない部分は、ピストン10の中心線Pと平行またはほぼ平行であってもよい。本発明図示例では、平行の場合を示している。
【0009】クーリングチャンネル20の内径壁23の断面の厚みは、下方(ピストン10の頂面11aから離れる方向)にいくにつれて大となっていることが望ましい。クーリングチャンネル20の内径壁23の外面(クーリングチャンネル20の内径面)23aは、ピストン10の中心線Pと平行またはほぼ平行とされている。ただし、内径壁23の外面23aのうち曲げモード線Lと交わる部分は、曲げモード線Lと直交またはほぼ直交させて形成されていてもよい。本発明図示例では、曲げモード線Lと直交またはほぼ直交させて形成されておらず、内径壁23の外面23aの全体がピストン10の中心線Pと平行またはほぼ平行とされている場合を示している。
【0010】つぎに、本発明実施例の作用を説明する。本発明実施例では、クーリングチャンネル20の外径壁21の内面21aに曲げモード線Lと直交する直線部22が設けられているので、直線部22の外径壁にかかる主な応力は従来の曲げ応力から圧縮応力に変わる。材料は繰り返しの圧縮応力に対しては強いので、クーリングチャンネル20の外径壁21にき裂が発生することを従来より抑えることができる。また、クーリングチャンネル20の内径壁23の断面の厚みは、下方にいくにつれて大となっているので、ピストン10の頂部11に燃焼圧がかかった場合でも、応力が下方に分散されやすい。このため、内径壁23にも無理な荷重がかかりにくく、き裂発生が抑えられる。」

(4)上記(3)の「クーリングチャンネル20の外径壁21の内面21aの一部のみが曲げモード線Lに直交する場合、外径壁21の内面21aのうち曲げモード線Lと直交しない部分は、ピストン10の中心線Pと平行またはほぼ平行であってもよい。本発明図示例では、平行の場合を示している。」(段落【0008】)との記載、及びピストン10の外周面13はピストン10の中心線Pと平行であるとの技術常識に照らせば、図1には、ピストン10の外周面13からクーリングチャンネル20までの肉厚は、頂面11a側よりピストン10下部側が厚く形成されることが示されているといえる。

(5)上記(3)の「直線部22は、曲げモード線Lと直交またはほぼ直交している(本発明図示例では直交する場合を示している)。」(段落【0008】)との記載からみて、図1には、前記クーリングチャンネル20は、前記頂面11a側から前記ピストン10下部側に向かうほどピストン10の中心線Pに近づく直線部22を有することが示されているといえる。

(6)図1には、角度αが2箇所記載されている。そのうち一方は、「曲げモード線Lの角度α(ピストン10の中心線Pに直交する面Qと曲げモード線Lとのなす角)」(段落【0008】)であり、他方は、直線部22と下方へ向かう直線とのなす角である。上記(3)の「クーリングチャンネル20の外径壁21の内面21aの一部のみが曲げモード線Lに直交する場合、外径壁21の内面21aのうち曲げモード線Lと直交しない部分は、ピストン10の中心線Pと平行またはほぼ平行であってもよい。本発明図示例では、平行の場合を示している。」(段落【0008】)との記載及び前記技術常識、並びに幾何学的関係からみて、当該直線は、外径壁21の内面21a及びピストン10の外周面13と同様、ピストン10の中心線Pと平行であることが理解できる。そして、角度αは「10°?80°とされている」(段落【0008】)との記載を踏まえると、図1には、ピストン10の中心軸Pに沿った断面において、直線部22と外径壁21の内面21aのうち直線部22が設けられていない部分の延長線との角度αが10°?80°となることが示されているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「頂面11aに設けられた燃焼室12と、前記燃焼室12を囲むように形成されたクーリングチャンネル20と、を有するピストン10であって、
ピストン10の外周面13から前記クーリングチャンネル20までの肉厚は、頂面11a側よりピストン10下部側が厚く形成され、
前記クーリングチャンネル20は、前記頂面11a側から前記ピストン10下部側に向かうほどピストン10の中心線Pに近づく直線部22を有し、
前記ピストン10の中心軸Pに沿った断面において、前記直線部22と外径壁21の内面21aのうち前記直線部22が設けられていない部分の延長線との角度αが10°?80°となる内燃機関のピストン10。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された実願昭59-76037号(実開昭60-187325号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、「ピストンのオイル冷却装置」に関して、図面(特に、第5図参照)とともに、次の事項が記載されている。

「そこで、従来、第4図、第5図に示すようにしてピストンのオイル冷却を行なっていた(特開昭56-124650号公報参照)。
ピストン1の頂部には、燃料噴射ノズル6からの燃料が噴霧されるキャビティ7が形成され、このキャビティ7でのガス流動を高めるためにスキッシュリップ2が環状に突設され、主としてピストン1の外周のリング溝4に嵌めたトップリング3と、このスキッシュリップ2の冷却をはかるために、ピストン1の内部には略同心的な環状通路8が形成され、導入孔9から導き入れたオイルを排出孔10へと循環させている。」(明細書2ページ2行?13行)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「頂面11a」は前者の「ピストン頂面」に相当し、以下同様に、「燃焼室12」は「燃焼室」に、「クーリングチャンネル20」は「オイルギャラリー」に、「ピストン10」は「ピストン」に、「ピストン10の外周面13」は「ピストンの摺動側面」に、「頂面11a側」は「ピストン頂面側」に、「ピストン10下部側」は「ピストンスカート側」に、「ピストン10の中心線P」は「ピストン中心軸」に、「直線部22」は「外部傾斜面」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「ピストン頂面に設けられた燃焼室と、前記燃焼室を囲むように形成されたオイルギャラリーと、を有するピストンであって、
ピストンの摺動側面から前記オイルギャラリーまでの肉厚は、ピストン頂面側よりピストンスカート側が厚く形成され、
前記オイルギャラリーは、前記ピストン頂面側から前記ピストンスカート側に向かうほどピストン中心軸に近づく外部傾斜面を有する内燃機関のピストン。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記ピストン中心軸に沿った断面において、前記オイルギャラリーの前記ピストン中心軸の延在方向における長さをL、前記摺動側面から前記オイルギャラリーの前記ピストン頂面側までの最も薄い肉厚をA、前記オイルギャラリーの下端を通り前記ピストン中心軸に垂直な仮想直線V1と前記外部傾斜面に沿った延長線V2との交点をWとした場合における前記摺動側面から交点Wまでの肉厚をBとしたときに、(B-A)/L≧0.05を満たす」のに対し、
引用発明は、ピストン10の中心軸Pに沿った断面において、直線部22と外径壁21の内面21aのうち前記直線部22が設けられていない部分の延長線との角度αが10°?80°となる点。

(2)判断
そこで、相違点について検討する。
本願発明1は、「燃料の高圧噴射により燃焼温度が高温になると、ピストン頂面側とピストンスカート側における温度が大きく異なり、温度差によるピストンの変形を招くおそれがある。」(本願明細書段落【0004】)との課題を解決する手段として、上記「前記ピストン中心軸に沿った断面において、前記オイルギャラリーの前記ピストン中心軸の延在方向における長さをL、前記摺動側面から前記オイルギャラリーの前記ピストン頂面側までの最も薄い肉厚をA、前記オイルギャラリーの下端を通り前記ピストン中心軸に垂直な仮想直線V1と前記外部傾斜面に沿った延長線V2との交点をWとした場合における前記摺動側面から交点Wまでの肉厚をBとしたときに、(B-A)/L≧0.05を満たす」との事項を採用するものである。
他方、引用発明は、ピストン頂部に燃焼圧がかかりクーリングチャンネルの断面が潰れる方向の変形をするとき、クーリングチャンネルの外径壁に曲げ応力がかかり、クーリングチャンネルの外径壁にはき裂が発生しやすいとの課題を解決するために、直線部22を、頂部に燃焼圧がかかりクーリングチャンネルの断面を圧縮変形させる時に最大の拡開変形を生じる方向の軸線Lと直交するように設けることによって、直線部22の外径壁にかかる主な応力を従来の曲げ応力から圧縮応力に変え、クーリングチャンネルの外径壁にき裂が発生することを抑えるものである。
そうすると、本願発明1と引用発明とは課題において相違するものである。
また、引用文献1及び2には、引用発明の「角度αが10°?80°」を本願発明1の「(B-A)/L≧0.05」とすることについて契機となる記載や示唆はない。

そうしてみると、引用発明において引用文献1及び2に記載された事項から、当業者が相違点に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たということができない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、いずれも、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2014-58433(P2014-58433)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 冨岡 和人
金澤 俊郎
発明の名称 内燃機関のピストン  
代理人 黒木 義樹  
代理人 小飛山 悟史  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 阿部 寛  
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