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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1345205
審判番号 不服2017-17116  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2018-10-11 
事件の表示 特願2013-203460「ハイブリッド車両の診断装置および診断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月13日出願公開、特開2015-67125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月30日の出願であって、平成28年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月13日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成29年6月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月19日に意見書が提出されたが、平成29年10月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年11月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年1月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
エンジンとモータとを具備し、エンジンがモータから切り離されるEVモードと、エンジンがモータとともに回転するHEVモードと、での走行が可能なハイブリッド車両であって、
上記エンジンのスロットル弁下流の吸入負圧を負圧源とするブレーキブースタを具備するとともに、このブレーキブースタにおける負圧を検出する負圧センサを備えてなるハイブリッド車両において、
上記EVモード中であって上記ブレーキブースタに負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に、ブレーキ操作に伴って減少するブレーキブースタ内の負圧を推定し、この推定負圧と上記負圧センサの検出値との比較から上記負圧センサの診断を行う、ハイブリッド車両の診断装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

引用文献1.特開2012-35705号公報
引用文献2.特開2013-159241号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「【0001】
本発明は、走行用モータと内燃機関を併用して走行するハイブリッド車両に備わる車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用モータと内燃機関を併用して走行するハイブリッド車両には、ブレーキペダルなどブレーキ操作部材の操作を油圧等の液圧に変換してブレーキ作動部を駆動する液圧ブレーキと、走行用モータを回生制御して発電機として機能させ、走行時の運動エネルギを電気エネルギに変換して停止や減速をする回生ブレーキと、が車両用制動装置として備わっている場合がある。また、内燃機関の回転抵抗で減速するエンジンブレーキも利用できる。
このうち、回生ブレーキはハイブリッド車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収できることから、回生ブレーキによる制動力を効果的に利用することでハイブリッド車両のエネルギ効率を高めることができる。
【0003】
このようなハイブリッド車両を含む車両では、特に緊急制動時の制動距離を短縮することが要求され、種々の車両用制動装置が提案されている。
例えば特許文献1には、緊急時におけるブレーキペダルの操作状態の差異によって発生する制動力の大きさの違いに拘らず、好適な制動力を発生できる制動力制御装置が開示されている。
また、特許文献2には、早い段階で支援ブレーキ力を発生させてブレーキ操作タイミングの遅れを防止する緊急ブレーキ支援制御装置が開示されている。
また、特許文献3には、急ブレーキの操作時に負圧源からの真空圧で補助ブースタを強制的に駆動することによって、マスタシリンダからのブレーキ液圧を強制的に増圧させて急制動を掛ける車両用制動力制御装置が開示されている。
また、特許文献4には、急制動時の制動力補助が必要であると判定されたときに、ブレーキ操作量に応じた摩擦制動と回生制動を行う電気自動車の制動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4089016号公報
【特許文献2】特開平10-59150号公報
【特許文献3】特開平10-211833号公報
【特許文献4】特開平10-229608号公報」

イ 「【0007】
前記課題を解決するために本願の請求項1に係る発明は、電動機が発生する動力で回転駆動する駆動輪で走行し、前記電動機と前記駆動輪の間の減速比を変更可能な減速比設定手段を有する車両に備わり、操作量検出手段が検出するブレーキ操作部材の操作量に応じて設定される目標制動力に基づいて制動力を増加するようにブレーキアシスト制御する車両用制動装置とする。そして、前記電動機を回生制御して第1の制動力を発生する第1制動手段と、液圧源で加圧する作動液で作動部を作動して第2の制動力を発生する第2制動手段と、を備え、前記ブレーキアシスト制御の開始条件が成立したとき、前記減速比設定手段は前記第1の制動力が低下するように前記減速比を設定した後で前記減速比の変更を停止し、前記第1制動手段が前記第1の制動力を発生するとともに前記第2制動手段が前記第2の制動力を発生して前記目標制動力を発生することを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によると、制動力を増加するようにブレーキアシスト制御するとき、電動機と駆動輪の間の減速比の変化に応じて変化する第1の制動力の変化を停止した状態にすることができ、第1の制動力が低下した状態を維持できる。さらに、低下した第1の制動力に第2の制動力を上乗せして目標制動力を発生させることができる。
したがって、第2の制動力を、作動部を作動する液圧の制御で細かく制御可能にすることで車両の制動力を細かく制御できる。
また、第1の制動力は電動機の回生制御によって発生する制動力であり、第1の制動力を発生させることによって、車両の運動エネルギを電気エネルギへ変換できる。そして、この電気エネルギを蓄電可能な構成とすれば、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収できる。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、電動機が発生する動力で回転駆動する駆動輪で走行し、前記電動機と前記駆動輪の間の減速比を変更可能な減速比設定手段を有する車両に備わり、操作量検出手段が検出するブレーキ操作部材の操作量に応じて設定される目標制動力に基づいて制動力を増加するようにブレーキアシスト制御する車両用制動装置とする。そして、前記電動機を回生制御して第1の制動力を発生する第1制動手段と、液圧源で加圧する作動液で作動部を作動して第2の制動力を発生する第2制動手段と、を備え、前記ブレーキアシスト制御の開始条件が成立したとき、前記減速比設定手段は前記第1の制動力が上昇するように前記減速比を設定し、前記第1制動手段が前記第1の制動力を発生することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明によると、制動力を増加するようにブレーキアシスト制御するとき、第1の制動力を上昇させることができる。
したがって、車両の運動エネルギの電気エネルギへの変換量を高めることができる。そして、この電気エネルギを蓄電可能な構成とすれば、車両の運動エネルギを電気エネルギとして好適に回収できる。
【0011】
また、本願の請求項3に係る発明は、電動機が発生する動力と内燃機関が発生する動力の少なくとも一方で回転駆動する駆動輪で走行し、前記電動機と前記駆動輪の間の減速比および前記内燃機関と前記駆動輪の間の減速比を変更可能な減速比設定手段と、前記内燃機関と前記減速比設定手段を結合および切断するクラッチ機構と、を有する車両に備わり、操作量検出手段が検出するブレーキ操作部材の操作量に応じて設定される目標制動力に基づいて制動力を増加するようにブレーキアシスト制御する車両用制動装置とする。そして、前記電動機を回生制御して第1の制動力を発生する第1制動手段と、液圧源で加圧する作動液で作動部を作動して第2の制動力を発生する第2制動手段と、を備え、前記ブレーキアシスト制御の開始条件が成立したとき、前記第1制動手段が前記第1の制動力を発生するとともに前記第2制動手段が前記第2の制動力を発生して前記目標制動力を発生し、さらに、前記クラッチ機構によって前記内燃機関と前記減速比設定手段が結合されることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によると、電動機と内燃機関が備わる車両で制動力を増加するようにブレーキアシスト制御するときに、内燃機関と減速比設定手段を結合でき、ひいては、内燃機関と駆動輪を結合できる。
したがって、ブレーキアシスト制御するときに内燃機関の回転抵抗による制動力を発生して第1の制動力と第2の制動力に上乗せでき、大きな制動力で車両を制動できる。
【0013】
また、本願の請求項4に係る発明は請求項3に記載の車両用制動装置であって、前記ブレーキアシスト制御の開始条件が成立したときに前記内燃機関が駆動しているときは、前記内燃機関と前記減速比設定手段が切断されないことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明によると、内燃機関と駆動輪を結合した状態に維持することができ、内燃機関の回転抵抗による制動力が発生する状態を維持できる。したがって、第1の制動力と第2の制動力に内燃機関の回転抵抗による制動力を上乗せした大きな制動力が発生する状態を維持できる。
【0015】
また、本願の請求項5に係る発明は請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用制動装置であって、前記車両に発生するスリップを検出するスリップ検出手段を備え、前記ブレーキアシスト制御の開始条件が成立した場合に前記スリップ検出手段が前記車両のスリップを検出したとき、前記減速比設定手段が、前記第1の制動力が低下するように前記減速比を設定することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明によると、ブレーキアシスト制御するときに車両がスリップした場合には第1の制動力を低下させることができる。第1の制動力は駆動輪に発生する制動力であり、第1の制動力を低下させることで駆動輪に発生する制動力を低下できる。したがって、駆動輪のタイヤロックでスリップが発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、回生制動による制動力を状況に応じて変えるとともに、車両の運動エネルギを好適に電気エネルギに変換できる車両用制動装置を提供できる。」

ウ 「【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用制動装置1は、内燃機関であるエンジン2と電動機である走行用モータ3を併用して走行する車両(ハイブリッド車両HV)に備わる。エンジン2が発生する駆動力(エンジン動力)は、クラッチ機構(クラッチ6)を備えるエンジン伝達軸20によって動力ユニット4に入力される。また、走行用モータ3が発生する駆動力(モータ動力)は、モータ伝達軸30によって動力ユニット4に入力される。
【0020】
動力ユニット4は、例えばオートマチックトランスミッションで構成される変速機4aを含んで構成され、ハイブリッド車両HVの走行中はエンジン動力とモータ動力の少なくとも一方が変速機4aを介して、駆動輪7,7が取り付けられる駆動軸70に伝達される。この構成によって、エンジン動力とモータ動力の少なくとも一方で駆動輪7,7を回転駆動できる。また、駆動輪7,7にはそれぞれ車輪速センサ7a,7aが備わり、駆動輪7,7の車輪速(回転速度)を検出可能に構成される。なお、エンジン2および走行用モータ3と接続されない非駆動輪(図示せず)を有するハイブリッド車両HVの場合、図示しない非駆動輪にも車輪速センサ7aが備わり、非駆動輪の車輪速も検出可能に構成されることが好ましい。
【0021】
車両用制動装置1は、エンジン動力とモータ動力の少なくとも一方で回転駆動する駆動輪7,7(前輪駆動の場合は前輪)に備わるブレーキ作動部Br,Brを作動させる機能を有する。それぞれのブレーキ作動部Brが作動液の液圧で作動する構成の場合、車両用制動装置1は、ブレーキ作動部Brに作動液の液圧を入力して作動させる。この構成によると、ブレーキ作動部Brは特許請求の範囲に記載される、作動液で作動する作動部になる。また、ブレーキ作動部Brを作動する作動液は、例えば作動油であってブレーキ作動部Brは油圧で作動する。
なお、図示しない非駆動輪を有するハイブリッド車両HVの場合は非駆動輪にもブレーキ作動部Brが備わり、車両用制動装置1は、非駆動輪に備わるブレーキ作動部Brも作動させる構成が好ましい。
【0022】
クラッチ6は、エンジン制御装置8から入力される制御信号に基づいて、エンジン伝達軸20を結合および切断することで、エンジン2と変速機4aを結合および切断する。エンジン伝達軸20が結合されるとエンジン2が発生するエンジン動力が動力ユニット4、駆動軸70を介して駆動輪7,7に伝達され、エンジン伝達軸20が切断されるとエンジン2から駆動輪7,7へのエンジン動力の伝達が遮断される。
【0023】
エンジン2はエンジン制御装置8によって制御される。エンジン制御装置8によるエンジン2の制御は広く知られた技術であり詳細な説明は適宜省略する。
また、オートマチックトランスミッションが備わるハイブリッド車両HVの場合、エンジン制御装置8は、車速、エンジンの出力トルク等に応じて変速機4aを制御する。
【0024】
走行用モータ3は、例えば発電電動機であるブラシレスDCモータであって、モータ制御装置5によって制御される。モータ制御装置5はエンジン制御装置8とデータ通信可能に構成され、エンジン制御装置8とモータ制御装置5は協調してエンジン2および走行用モータ3を制御し、ハイブリッド車両HVを走行させる。
エンジン制御装置8とモータ制御装置5が協調してハイブリッド車両HVを走行させる技術も広く公知の技術であり詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
また、モータ制御装置5は、ハイブリッド車両HVの減速時や停車時に必要に応じて走行用モータ3を発電機に切り替え、運動エネルギを電気エネルギに変換するように制御(回生制御)する。モータ制御装置5による回生制御によって、走行用モータ3は回生ブレーキとして機能する。
回生ブレーキとして機能する走行用モータ3で発電された電力は、例えば図示しないバッテリに蓄電可能に構成される。
なお、モータ制御装置5は、走行用モータ3に供給する電力を発生させるインバータを含んで構成されている。
【0026】
エンジン制御装置8とモータ制御装置5は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータ及び周辺回路などを含んで構成される。なお、エンジン制御装置8とモータ制御装置5は一体に構成されていてもよい。
【0027】
本実施形態に係る車両用制動装置1は、例えば、図2に示すように構成され、ブレーキ制御装置14によって制御される。
ブレーキ制御装置14は、例えば図示しないCPU、RAM、ROMなどを備えるコンピュータ及び周辺回路などを含んで構成される。また、ブレーキ制御装置14は、CAN(Controller Area Network)などを介してエンジン制御装置8およびモータ制御装置5と接続されて互いにデータ通信可能に構成される。なお、エンジン制御装置8とモータ制御装置5とブレーキ制御装置14は一体に構成されていてもよい。
【0028】
車両用制動装置1はブレーキ制御装置14、ブレーキ作動部Brのほか、運転者が踏み込み操作するブレーキ操作部材(ブレーキペダル12)、運転者がブレーキペダル12を踏み込む力(ブレーキ操作力)を油圧に変換するブレーキブースタ10、およびブレーキブースタ10で発生する油圧に応じた油圧を発生してブレーキ作動部Brの油圧系統に入力するホイールシリンダ11を含んで構成される。以下、ブレーキ作動部Brの作動によるブレーキを油圧ブレーキと称し、前記した回生ブレーキと区別する。つまり、本実施形態に係るハイブリッド車両HV(図1参照)は、油圧ブレーキと回生ブレーキの2系統のブレーキ系統を備える。
【0029】
ブレーキブースタ10は、エンジン2の吸気側を形成するインテークマニホールド2aと配管2bを介して連通している。そして、ブレーキブースタ10には、チェックバルブ2cを介して、インテークマニホールド2aに発生する負圧(以下、インマニ負圧と称する)が供給され、ブレーキブースタ10のブースタ圧は負圧に維持される。この構成によって、ブレーキブースタ10はブレーキ操作力をインマニ負圧で倍力できる。
そして、ブースタ圧センサ10aはブースタ圧を検出し、その検出値をブースタ圧力信号P1としてブレーキ制御装置14に入力する。
【0030】
チェックバルブ2cは1方向弁であり、ブレーキブースタ10のブースタ圧の負圧がインテークマニホールド2aに発生するインマニ負圧より大きい場合、チェックバルブ2cが閉じてブースタ圧を大きな負圧に維持する。一方、ブースタ圧の負圧がインマニ負圧以下の場合、チェックバルブ2cが開いてブレーキブースタ10にインマニ負圧を供給し、ブースタ圧の負圧をインマニ負圧と同等に大きくする。
このように機能するチェックバルブ2cを備えることで、ブースタ圧を、より大きな負圧に維持できる。
なお、負圧は大気圧より低い圧力を示し、大気圧から離れるほど大きな負圧になる。
【0031】
ホイールシリンダ11は、アクチュエータ等を含んで構成される液圧源(油圧源13)の動作によって油圧を発生可能に構成される。そして、ホイールシリンダ11で発生した油圧をブレーキ作動部Brの油圧系統に入力することでブレーキ作動部Brを作動することができる。ホイールシリンダ11に備わる油圧源13はブレーキ制御装置14によって制御され、好適な油圧を発生してブレーキ作動部Brの油圧系統に入力するように構成される。
このように、本実施形態のブレーキ制御装置14は、油圧源13で加圧する作動油でブレーキ作動部Brを作動して制動力を発生する制動手段になる。
【0032】
また、ブレーキ制御装置14には、図1に示す車輪速センサ7a,7aが検出する駆動輪7,7および非駆動輪(図示せず)の車輪速が車輪速信号P2として入力される。この構成によって、ブレーキ制御装置14は駆動輪7,7および非駆動輪の車輪速を取得することができる。そして、駆動輪7,7および非駆動輪の車輪速に基づいてハイブリッド車両HVの車速(車体速)を算出できる。
なお、前記したようにエンジン制御装置8はエンジン2の制御のために車速を算出する必要があり、車輪速センサ7aが出力する車輪速信号P2は、エンジン制御装置8にも入力される構成であることが好ましい。
【0033】
また、ブレーキ制御装置14は、ハイブリッド車両HV(図1参照)の制動時に、駆動輪7,7(図1参照)および非駆動輪(図示せず)のタイヤロックによるスリップが発生しないように油圧ブレーキを制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)の機能を実現可能に構成される。本実施形態に係るブレーキ制御装置14のABS機能は公知の技術を利用することができ、詳細な説明は適宜省略する。
【0034】
このように構成される車両用制動装置1のブレーキ制御装置14は、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作したときの操作量(ストローク量)に応じて、ハイブリッド車両HV(図1参照)を減速および停車させるのに必要な制動力を算出する。
本実施形態においては、図2に示すように、ブレーキブースタ10のブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aを備え、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧の変化をブレーキペダル12の操作量として制動力を算出する。
【0035】
具体的に、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧センサ10aから入力されるブースタ圧力信号P1に基づいてブースタ圧の変化を算出し、さらに、算出したブースタ圧の変化に基づいて、ハイブリッド車両HV(図1参照)を減速および停車させるのに必要な制動力を算出する。
このように算出される制動力は、ブレーキ制御装置14が回生ブレーキおよび油圧ブレーキを制御するときの目標値(目標制動力)になる。また、ブレーキ制御装置14は、ブレーキペダル12の操作量をブースタ圧の変化として算出する構成であり、ブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aは、特許請求の範囲に記載の操作量検出手段になる。
【0036】
ブレーキ制御装置14がブレーキペダル12のブースタ圧の変化に基づいた制動力(目標制動力)を算出する方法は限定するものではない。例えば、ブースタ圧の変化と制動力の関係を示すマップを予め設定しておき、ブレーキ制御装置14は算出したブースタ圧の変化に基づいて当該マップを参照して目標制動力を算出する方法とすればよい。
その他、ブレーキ制御装置14が目標制動力を算出する方法は、公知の技術を利用することができる。
【0037】
そしてブレーキ制御装置14は、算出した目標制動力をモータ制御装置5およびエンジン制御装置8に通知する。エンジン制御装置8は、ブレーキ制御装置14から目標制動力が通知されるとクラッチ6(図1参照)を制御してエンジン伝達軸20(図1参照)を切断する。また、モータ制御装置5は、走行用モータ3を発電機に切り替えて回生ブレーキを作動する。モータ制御装置5が走行用モータ3を発電機に切り替えて回生ブレーキを作動する一連の制御を回生制御と称する。
そして、回生制御によって走行用モータ3で発生する制動力を回生制動力と称し、本実施形態における第1の制動力とする。また、回生制御によって走行用モータ3を発電機に切り替えて回生ブレーキを作動するモータ制御装置5は、特許請求の範囲に記載の第1制動手段になる。」

エ 「【0049】
油圧ブレーキの作動で発生する制動力は、回生制動力(第1の制動力)に対する第2の制動力である。また、ブレーキ作動部Br(図2参照)はハイブリッド車両HV(図1参照)の運動エネルギを摩擦熱に変換して制動力を発生する構成が一般的であるため、油圧ブレーキの作動で発生する第2の制動力を、以下、摩擦制動力と称する。そして、摩擦制動力(第2の制動力)を発生する制動手段であるブレーキ制御装置14(図2参照)は、第2制動手段になる。
【0050】
例えば図4の(a)に示すように、時刻tsで運転者がブレーキペダル12(図2参照)を踏み込み操作すると、ブースタ圧の変化に応じて算出される目標制動力BP1に基づいて、最初に回生ブレーキが作動して車速が減速し、車速が回生下限速度Vlmtまで減速した時刻t1で油圧ブレーキが作動する。このとき、油圧ブレーキが発生する摩擦制動力が目標制動力BP1となるようにホイールシリンダ11(図2参照)で発生する油圧が設定される。そして、時刻teでハイブリッド車両HV(図1参照)は車速がゼロになって停車する。
【0051】
このように、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応じてブレーキブースタ10(図2参照)に発生する油圧による制動力が、ブレーキアシスト制御によって回生制動力と油圧制動力で増加される。
【0052】
なお、図4の(a)における油圧ブレーキの摩擦制動力の振動は、ABS機能による摩擦制動力の制御を示している。したがって、ABS機能が作動しない状況では、この振動は発生しない。
【0053】
このように、車速が回生下限速度Vlmtより高いときには回生ブレーキで回生制動力を発生し、車速が回生下限速度Vlmt以下に減速したときには油圧ブレーキで摩擦制動力を発生して制動力を増加するブレーキアシスト制御は、車速の高いハイブリッド車両HV(図1参照)が有する運動エネルギを、回生ブレーキで電気エネルギとして回収することができる。そして車速が回生下限速度Vlmt以下に減速すると、油圧ブレーキでハイブリッド車両HVが停車する。このように回生ブレーキと油圧ブレーキを連動させるブレーキアシスト制御を、以下、ブレーキ連動制御と称する。」

オ 「【0058】
例えば図4の(b)に示すように、ブレーキ制御装置14(図2参照)は、時刻t2で緊急制動と判定すると、車速が回生下限速度Vlmtまで減速していない状態であっても油圧ブレーキを作動させる。このとき、油圧ブレーキが発生する摩擦制動力が最大目標制動力BP2となるように、ホイールシリンダ11(図2参照)で発生する油圧が設定される。
さらに、エンジン制御装置8(図1参照)を介して変速機4a(図1参照)をニュートラルに設定する。その結果、図4の(a)に示すブレーキ連動制御に比べて、運転者がブレーキ操作を開始してからハイブリッド車両HV(図1参照)が停車するまでの時間(時刻tsから時刻te)を短くできる。ひいては、制動距離を短くできる。
【0059】
また、時刻t2以降は油圧ブレーキのみ作動しているため、ブレーキ作動部Br(図2参照)に入力する油圧を制御して、ハイブリッド車両HV(図1参照)に発生する制動力を細かく制御できる。すなわち、ABS機能を有効に機能させることができる。したがって、ハイブリッド車両HVを安定な姿勢に維持して緊急制動できる。このように回生ブレーキを停止して油圧ブレーキを作動させて制動力を増加するブレーキアシスト制御を、以下、回生ブレーキ停止制御と称する。
【0060】
なお、ブレーキ制御装置14(図2参照)が緊急制動を判定する方法は限定するものではない。例えば、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧の単位時間における変化、すなわち、ブースタ圧の変化速度が所定値より大きな場合に緊急制動と判定する。ブレーキ制御装置14が緊急制動と判定するブースタ圧の変化速度の所定値を、以下、緊急制動判定閾値と称する。このような緊急制動判定閾値は、ブレーキブースタ10(図2参照)の構成、ハイブリッド車両HV(図1参照)に要求される性能等に基づいた特性値として適宜設定される。
【0061】
以上のように、エンジン2(図1参照)および走行用モータ3(図1参照)を備えるハイブリッド車両HV(図1参照)は、運転者によってブレーキペダル12(図2参照)が踏み込み操作されたとき、ブレーキ制御装置14(図2参照)とモータ制御装置5(図2参照)とエンジン制御装置8(図2参照)とが協調して回生ブレーキと油圧ブレーキを作動させ、ハイブリッド車両HVを減速および停車させることができる。」

カ 上記アの段落【0001】の「本発明は、走行用モータと内燃機関を併用して走行するハイブリッド車両に備わる車両用制動装置に関する。」という記載、上記イの段落【0007】及び【0009】の「電動機が発生する動力で回転駆動する駆動輪で走行し」という記載、上記イの段落【0011】の「電動機が発生する動力と内燃機関が発生する動力の少なくとも一方で回転駆動する駆動輪で走行し」という記載、並びにウの段落【0019】の「車両用制動装置1は、内燃機関であるエンジン2と電動機である走行用モータ3を併用して走行する車両(ハイブリッド車両HV)に備わる。エンジン2が発生する駆動力(エンジン動力)は、クラッチ機構(クラッチ6)を備えるエンジン伝達軸20によって動力ユニット4に入力される。また、走行用モータ3が発生する駆動力(モータ動力)は、モータ伝達軸30によって動力ユニット4に入力される。」という記載から、引用文献1には、エンジン2と走行用モータ3とを備え、走行用モータ3が発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードと、走行用モータ3が発生する動力とエンジンが発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードとを備えるハイブリッド車両HVが記載されているといえる。

キ 上記ウの段落【0019】の「エンジン2が発生する駆動力(エンジン動力)は、クラッチ機構(クラッチ6)を備えるエンジン伝達軸20によって動力ユニット4に入力される。また、走行用モータ3が発生する駆動力(モータ動力)は、モータ伝達軸30によって動力ユニット4に入力される。」という記載、同じく段落【0022】の「クラッチ6は、エンジン制御装置8から入力される制御信号に基づいて、エンジン伝達軸20を結合および切断することで、エンジン2と変速機4aを結合および切断する。エンジン伝達軸20が結合されるとエンジン2が発生するエンジン動力が動力ユニット4、駆動軸70を介して駆動輪7,7に伝達され、エンジン伝達軸20が切断されるとエンジン2から駆動輪7,7へのエンジン動力の伝達が遮断される。」という記載及び図1の記載から、引用文献1に記載されたハイブリッド車両HVは、エンジン2が発生する駆動力を使用する場合にはクラッチ6を結合し、エンジン2が発生する駆動力を使用しない場合にはクラッチ6を切断することが分かる。また、走行用モータ3が発生する駆動力は、常にモータ伝達軸30によって動力ユニット4に入力されることから、エンジン2が発生する駆動力を使用する場合にはエンジン2と走行用モータ3とは変速機4a及びクラッチ6を介して接続され、エンジン2が発生する駆動力を使用しない場合にはエンジン2と走行用モータ3とは切断されることが分かる。

ク 上記ウの段落【0029】の「ブレーキブースタ10には、チェックバルブ2cを介して、インテークマニホールド2aに発生する負圧(以下、インマニ負圧と称する)が供給され、ブレーキブースタ10のブースタ圧は負圧に維持される。」という記載から、引用文献1に記載されたハイブリッド車両HVは、インテークマニホールド2aに発生する負圧が供給されるブレーキブースタ10を備えることが分かる。

ケ 上記上記ウの段落【0029】の「ブースタ圧センサ10aはブースタ圧を検出し、その検出値をブースタ圧力信号P1としてブレーキ制御装置14に入力する。」という記載、同じく段落【0034】の「図2に示すように、ブレーキブースタ10のブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aを備え、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧の変化をブレーキペダル12の操作量として制動力を算出する。」という記載、同じく段落【0035】の「具体的に、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧センサ10aから入力されるブースタ圧力信号P1に基づいてブースタ圧の変化を算出し」という記載及び図2の記載から、引用文献1に記載されたハイブリッド車両HVは、ブレーキブースタ10のブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aを備え、ブレーキ制御装置14は、ブースタ圧の変化をブレーキペダル12の操作量として制動力を算出することが分かる。

(2)引用発明
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

<引用発明>
「エンジン2と走行用モータ3とを備え、走行用モータ3が発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードと、走行用モータ3が発生する動力とエンジンが発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードとを備えるハイブリッド車両HVであって、
インテークマニホールド2aに発生する負圧が供給されるブレーキブースタ10を備えるとともに、このブレーキブースタ10のブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aを備えてなるハイブリッド車両HV。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「【0001】
本発明は、負圧を用いて、ブレーキ操作部への操作を助勢する制動倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負圧を利用して運転者のブレーキペダル操作を助勢する制動倍力装置がある。制動倍力装置では、負圧センサを用いて負圧を検出し、負圧を制御している。また、2つの負圧センサを有して、いずれか一方の負圧センサが故障することに備えることが提案されている。この種の構造では、負圧センサの検出値が所定値以上である場合、負圧センサが故障していないと判定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3723001号公報」

イ 「【0007】
請求項1に記載される制動倍力装置は、ブレーキ操作部と、負圧を用いて前記ブレーキ操作部に入力されたブレーキ操作を助勢する助勢部と、前記助勢部内に前記負圧を発生する負圧発生手段と、前記助勢部内の圧力値を検出する複数の圧力検出手段と、前記複数の圧力検出手段の検出値のうち、最も大きい値と最も小さい値との差が、予め設定された故障判定値以上であると、前記複数の圧力検出手段の少なくとも1つが故障していると判定する故障判定手段と、前記故障判定手段が故障判定した場合に、故障している圧力検出手段を特定する特定手段と、前記特定手段によって故障していると特定された圧力検出手段とは異なる圧力検出手段の検出値に基づいて前記負圧発生手段を制御する制御手段とを備える。
【0008】
請求項2に記載の制動倍力装置は、請求項1の記載において、前記ブレーキ操作部が操作されていることを検出するブレーキ操作検出手段と、前記負圧発生手段の駆動に起因する前記負圧の変動値を推定する負圧変動値推定手段とを備える。前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段がブレーキ操作を検出していない状態で前記故障判定手段が故障判定すると、前記負圧発生手段を駆動する。前記特定手段は、各圧力検出手段の、前記負圧発生手段の駆動前の検出値と駆動した後の検出値の差と、前記負圧変動値推定手段の推定値とに基づき、故障している圧力検出手段を特定する。
【0009】
請求項3に記載の制動倍力装置は、請求項2の記載において、ブレーキ操作に起因する負圧の消費値を推定する負圧消費値推定手段を備える。前記ブレーキ操作検出手段がブレーキ操作を検出している状態で前記故障判定手段が故障判定すると、前記特定手段は、各圧力検出手段の、前記ブレーキ操作の前後での検出値の差と、前記負圧消費値推定手段の推定値とに基づき、故障している圧力検出手段を特定する。」

ウ 「【0015】
図1に示すように、制動装置1は、一対の前輪5と、一対の後輪6とを備える自動車に搭載されている。制動装置1は、各前輪5と各後輪6に設けられるディスクロータ20と、各ディスクロータ20に対して1つ設けられるキャリパ21と、運転者が操作するブレーキペダル30と、ブレーキペダル30の操作に応じてキャリパ21が備えるピストンにブレーキ液の圧力を作用させるマスタシリンダ40と、ブレーキペダル30に対する操作を助勢する制動倍力装置10とを備える。
【0016】
各キャリパ21とマスタシリンダ40とは、ブレーキ液配管41で接続されている。ブレーキ液配管41内にはブレーキ液が満たされている。マスタシリンダ40は、ブレーキペダル30の操作量に応じてブレーキ液配管41内のブレーキ液の圧力を調整する。ブレーキペダル30が踏み込まれることに応じて、マスタシリンダ40は、ブレーキ液配管41内の圧力を上げる。ブレーキペダル30が踏み込まれることは、ブレーキペダル30が操作されていることである。
【0017】
キャリパ21のピストン22は、ブレーキ液配管41内の圧力によって駆動される。ブレーキ液配管41内の圧力が上昇すると、ピストン22がディスクロータ20に向かって移動するとともにピストン22の先端に固定されたブレーキパッドがディスクロータ20に押し付けられる。ブレーキパッドのディスクロータ20に対する押し付け力は、ブレーキ液配管41内の圧力が上昇にするにともない、強くなる。
【0018】
ディスクロータ20は、当該ディスクロータ20が設けられる前輪5と後輪6と一体に回転する。ディスクロータ20は、ブレーキパッドが押し付けられることによって、その回転が停止する。このため、ピストン22がディスクロータ20に押し付けられることによって、前輪5の回転と、後輪6の回転とが停止される。
【0019】
制動倍力装置10は、ブレーキペダル30への操作を助勢する助勢部50と、複数の圧力検出手段と、ペダル操作検出センサ60と、電動バキュームポンプ70と、制御部80とを備えている。助勢部50は、定圧室51と、変圧室52とを備えている。定圧室51には、後述される電動バキュームポンプ70が連結されている。定圧室51内は、電動バキュームポンプ70によって、負圧になっている。なお、ここでいう負圧とは、大気圧より低い圧力である。言い換えると、定圧室51内の圧力は、電動バキュームポンプ70によって、大気圧よりも低い状態に保たれている。
【0020】
変圧室52は、ブレーキペダル30が踏み込まれていない場合は、定圧室51と同じに維持される。ブレーキペダル30が踏み込まれるに従い、変圧室52が大気に開放される。このため、ブレーキペダル30の操作量に応じて、言い換えると、ブレーキペダル30の踏み込み量に応じて、定圧室51と変圧室52との間に、圧力差が生じる。この差圧が、ブレーキペダル30の操作を助勢する。マスタシリンダ40には、運転者によるブレーキペダル30の踏み込み力と、助勢部50による助勢力が入力とされる。
【0021】
定圧室51には、複数の圧力検出手段の一例として、第1の圧力検出部55と、第2の圧力検出部56とが設けられている。第1,2の圧力検出部55,56は、定圧室51内の圧力に応じた信号を出力する。
【0022】
ブレーキペダル30には、ペダル操作検出センサ60が設けられている。ペダル操作検出センサ60は、ブレーキペダル30が操作されたこと、言い換えると、運転者がブレーキペダル30を踏み込んだことを検出すると、信号を出力する。
【0023】
制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56と、ペダル操作検出センサ60と、電動バキュームポンプ70とに接続されている。第1,2の圧力検出部55,56は、検出結果を、制御部80に送信する。ペダル操作検出センサ60は、検出結果を制御部80に送信する。制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に応じて、第1,2の圧力検出部55,56の出力信号に対応する圧力値を算出する。また、制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づいて電動バキュームポンプ70の動作を制御する。
【0024】
また、制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56のうち、故障した圧力検出部を検出するとともに、故障していない圧力検出部の検出結果に基づいて、電動バキュームポンプ70の動作を制御する。」

エ 「【0025】
つぎに、制御部80の動作を、図2?4を用いて説明する。制御部80の動作として、まず、運転者がブレーキペダル30の操作を行っていない状態での動作を説明する。図2は、制御部80の動作を示すフローチャートである。まず、第1,2の圧力検出部55,56のいずれにも故障が生じていない状態を説明する。
(中略)
【0039】
ステップST5では、制御部80は、電動バキュームポンプ70を、予め設定される時間駆動する。そして、制御部80は、電動バキュームポンプ70の動作が開始された後所定時間が経過すると、電動バキュームポンプ70の動作を停止する。また、制御部80は、電動バキュームポンプ70の駆動が停止されたときの、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を算出し、記憶する。電動バキュームポンプ70の駆動後の第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値をP1aとし、第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値をP2aとする。ついで、ステップST6に進む。
(中略)
【0054】
ステップST1では、制御部80は、ペダル操作検出センサ60の検出結果に基づいて、ブレーキペダル30が操作されたと判定する。ついで、ステップST10に進む。図4は、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフである。横軸、縦軸は、図3と同じである。図4中に示す、実線が、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を示す。図4に示すように、ブレーキペダル30が操作される前の状態では、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果は、略同じ値であり、それゆえ、検出結果に基づく圧力値も略同じである。このため、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の差の絶対値は、故障判定値未満である。
【0055】
そして、ブレーキペダル30が踏み込まれることによって、定圧室51内の圧力(審決注:「定圧室51内の負圧」の誤記と認める。)が消費されるので、定圧室51内の圧力が上昇する。制御部80は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値Q1,Q2を算出するとともに記憶する。
【0056】
なお、図4中には、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフに対して、ブレーキペダル操作のオンオフを示すタイムチャートを併記している。このタイムチャートの横軸は、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフの横軸と同じであり、時間を示している。縦軸は、ブレーキペダル30がオン状態であるかまたはオフ状態であるかを示している。オン状態はブレーキペダル39が踏み込まれている状態であり、オフ状態はブレーキペダル30が踏み込まれていない状態である。
【0057】
ステップST10では、制御部80は、第1の圧力検出部55の、ブレーキペダル30の操作後での検出結果に対応する圧力値と、第2の圧力検出部56の、ブレーキペダル30の操作後での検出結果に対応する圧力値との差の絶対値を求める。
【0058】
具体的には、ブレーキペダル30の操作が終了した後、言い換えると、ブレーキペダルの操作が終了した後予め設定した所定時間が経過すると、第1,2の圧力検出部55,56の検出値の、ブレーキペダル30の操作前後の差の絶対値を検出する。所定時間は、予め設定されている時間であり、例えば、ダンピングブレーキ時など複数回連続してブレーキを踏み込むような場合を考慮して設定されている。ブレーキペダルの踏み込み後所定時間が経過すると、次のブレーキペダル30の踏み込みがないと判定し、所定時間経過したときをブレーキ操作終了時としている。
【0059】
なお、図4では、ブレーキペダル30が、2回踏み込まれている。1回目の踏み込みが終了した後、上記所定時間が経過する前に2回目のブレーキ操作が行われている。そして、2回目のブレーキペダル30の操作終了後所定時間内に次のブレーキ操作が行われていないので、2回目のブレーキペダル30の操作終了後所定時間が経過したときにブレーキペダル30の操作が終了したと判定している。
【0060】
このため、制御部80は、2回目のブレーキ操作終了後所定時間が経過したときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を、Q1a,Q2aとして算出している。
【0061】
ついで、制御部80は、ブレーキ操作終了後の第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の差の絶対値であるΔQdを算出する。ΔQd=|Q1a-Q2a|となる。なお、上記したように、第2の圧力検出部56は、故障していることによって、ブレーキペダル30の操作前後で検出値が変化しない。つまり、Q2=Q2aとなる。ΔQdが検出されると、ついで、ステップST11に進む。
【0062】
ステップST11では、制御部80は、ΔQdが故障判定値以上であるか否かを判定する。制御部80は、ΔQdが故障判定値以上であると判定すると、第1,2の圧力検出部55,56のいずれかが故障していると判定する。なお、第1,2の圧力検出部55,56のどちらも故障していない場合は、ΔQdは故障判定値未満である。この場合、ステップST12に進む。ステップST12の処理は、ステップST4と同じである。この説明では、第2の圧力検出部56が故障している場合なので、ΔQdは、故障判定値以上であると判定する。ついで、ステップST13に進む。
【0063】
ステップT13(審決注:「ステップST13」の誤記と認める。)では、制御部80は、ブレーキペダル30の操作に応じて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。制御部80は、具体的には、ブレーキペダル30の操作時間、ブレーキペダル30の踏み込み量などに基づいて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。負圧の消費量の推定値を、ΔQとする。図4中に示す、2点鎖線は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの値であるQ1,Q2に、推定値ΔQを足したものである。2点鎖線で示されるグラフは、ブレーキペダル30の操作に応じた、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の推定値である。負圧の消費量が推定されると、ついで、ステップST14に進む。
【0064】
ステップST14では、故障している圧力検出部を特定する。具体的には、制御部80は、ブレーキペダル30の操作前後での第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値が、ステップST14で求められた負圧の消費量の推定値ΔQに対して設定される正常領域内であるか否かを判定する。
【0065】
第1の圧力検出部55の、ブレーキ操作前後での検出結果に対応する圧力値の実際の変動値の絶対値をΔQ1とすると、ΔQ1=|Q1a-Q1|となる。第2の圧力検出部56の、ブレーキ操作前後での検出結果に対応する圧力値の実際の変動値の絶対値をΔQ2とすると、ΔQ2=|Q2a-Q2|となる。なお、Q2a=Q2であるので、ΔQ2=0である。
【0066】
ΔQに対して設定される正常領域は、ΔQ±ΔQnである。具体的には、圧力検出部の検出結果に対応する圧力値が、ΔQ-ΔQn以上であって、かつ、ΔQ+ΔQn以下であると正常であると判定され、ΔQ-ΔQn未満、または、ΔQ+ΔQnより大きいと、故障であると判定される。ΔQnは、予め決定される値である。
【0067】
この説明では、第1の圧力検出部55は、正常であるので、ΔQとΔQ1とは、互いに近似値となる。このため、ΔQ-ΔQn≦ΔQ1≦ΔQ+ΔQnとなる。また、この説明では、第2の圧力検出部56は故障しているので、ΔQ2<ΔQ-ΔQnとなる。このため、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していると判定し、第1の圧力検出部55は正常であると判定する。ついで、ステップST15に進む。
【0068】
ステップST15では、制御部80は、ステップST14で正常であると判定した第1の圧力検出部55の検出結果を選択して電動バキュームポンプ70を制御するように設定される。ついで、ステップST16に進む。
【0069】
ステップST16では、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していることを運転者に警告するべく、故障情報を出力する。インジケータ90は、制御部80からの信号を受信すると、第2の圧力検出部56が故障していることを示すランプ92を点灯する。運転者は、第2の圧力検出部56が故障していることを示すランプ92が点灯すると、第2の圧力検出部56が故障していることを認識することができる。」

オ 「【0096】
第1?3の実施形態では、負圧発生手段の一例として、電動バキュームポンプ70が用いられた。なお、これは一例である。負圧を発生する手段として、電動バキュームポンプ70以外が用いられてもよい。」

カ 上記アの段落【0001】「本発明は、負圧を用いて、ブレーキ操作部への操作を助勢する制動倍力装置に関する。」という記載、上記ウの段落【0015】の「図1に示すように、制動装置1は、一対の前輪5と、一対の後輪6とを備える自動車に搭載されている。制動装置1は、各前輪5と各後輪6に設けられるディスクロータ20と、各ディスクロータ20に対して1つ設けられるキャリパ21と、運転者が操作するブレーキペダル30と、ブレーキペダル30の操作に応じてキャリパ21が備えるピストンにブレーキ液の圧力を作用させるマスタシリンダ40と、ブレーキペダル30に対する操作を助勢する制動倍力装置10とを備える。」及び図1の記載から、引用文献2には、負圧を用いて、ブレーキ操作部への操作を助勢する制動倍力装置が記載されていることが分かる。そして、オの段落【0096】の「負圧を発生する手段として、電動バキュームポンプ70以外が用いられてもよい。」という記載から、負圧発生手段は電動バキュームポンプ70以外が用いられてもよいことが分かる。(たとえば、段落【0002】に示された特許文献1のように吸気管負圧を負圧発生源としてもよいことが分かる。)

キ 上記エの段落【0055】の「ブレーキペダル30が踏み込まれることによって、定圧室51内の圧力(審決注:「定圧室51内の負圧」の誤記と認める。)が消費されるので、定圧室51内の圧力が上昇する。制御部80は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値Q1,Q2を算出するとともに記憶する。」という記載、及び図4の記載から、引用文献2に記載された制動倍力装置において、制御部80は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値Q1,Q2を算出するとともに記憶することが分かる。また、ブレーキペダル30が踏み込まれることによって、定圧室51内の圧力(負圧)が消費されることが分かる。

ク 上記エの段落【0063】の「ステップT13(審決注:「ステップST13」の誤記と認める。)では、制御部80は、ブレーキペダル30の操作に応じて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。制御部80は、具体的には、ブレーキペダル30の操作時間、ブレーキペダル30の踏み込み量などに基づいて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。負圧の消費量の推定値を、ΔQとする。」という記載、同じく段落【0064】の「制御部80は、ブレーキペダル30の操作前後での第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値が、ステップST14で求められた負圧の消費量の推定値ΔQに対して設定される正常領域内であるか否かを判定する。」という記載、同じく段落【0066】の「ΔQに対して設定される正常領域は、ΔQ±ΔQnである。」という記載、同じく段落【0067】の「第1の圧力検出部55は、正常であるので、ΔQとΔQ1とは、互いに近似値となる。このため、ΔQ-ΔQn≦ΔQ1≦ΔQ+ΔQnとなる。また、この説明では、第2の圧力検出部56は故障しているので、ΔQ2<ΔQ-ΔQnとなる。このため、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していると判定し、第1の圧力検出部55は正常であると判定する。」という記載、及び図4の記載から、引用文献2に記載された制動倍力装置において、定圧室51内の負圧の消費量の推定値ΔQと、圧力値の実際の変動値ΔQ1、ΔQ2とを比較して、正常範囲内であるか否かを判定し、圧力検出部55、56が故障しているか正常であるかを判定することが分かる。また、上記ステップST13において、ブレーキペダル30の操作及び圧力検出部55、56による圧力検出中に負圧の補充がなされると正しい判定ができなくなることからみて、ステップST13におけるブレーキペダル30の操作及び圧力検出部55、56による圧力検出中に負圧の補充がなされないことは自明である。

ケ 上記クに記載したとおり、引用文献2に記載された制動倍力装置においては、定圧室51内の負圧の消費量の推定値ΔQと、圧力値の実際の変動値ΔQ1、ΔQ2とを比較して、正常範囲内であるか否かを判定するものであり、これは、ブレーキ操作に伴って減少する定圧室51内の負圧(Q1+ΔQ)、(Q2+ΔQ)を推定し、この推定負圧(Q1+ΔQ)、(Q2+ΔQ)と圧力検出部55、56の検出結果に基づく圧力値(Q1+ΔQ1)、(Q2+ΔQ2)との比較から上記圧力検出部55、56の故障判定を行うことと等価であるから、引用文献2に記載された制動倍力装置においては、ブレーキ操作に伴って減少する定圧室51内の負圧(Q1+ΔQ)、(Q2+ΔQ)を推定し、この推定負圧(Q1+ΔQ)、(Q2+ΔQ)と圧力検出部55、56の検出結果に基づく圧力値(Q1+ΔQ1)、(Q2+ΔQ2)との比較から上記圧力検出部55、56の故障判定を行うといえる。

(2)引用文献2記載の技術
上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認める。

<引用文献2記載の技術>
「定圧室51に負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に、ブレーキ操作に伴って減少する定圧室51内の負圧を推定し、この推定負圧と圧力検出部55、56の検出結果に基づく圧力値との比較から上記圧力検出部55、56の故障判定を行う技術。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジン2」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「走行用モータ3」は「モータ」に、「備え」は「具備し」に、「インテークマニホールド2aに発生する負圧が供給されるブレーキブースタ10」は「エンジンのスロットル弁下流の吸入負圧を負圧源とするブレーキブースタ」に、「ブレーキブースタ10のブースタ圧」は「ブレーキブースタにおける負圧」に、「ブースタ圧センサ10a」は「負圧センサ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「走行用モータ3が発生する動力で回転する駆動輪で走行するモード」すなわちEVモードにおいては、上記第4 1(1)キにおいて述べたように、エンジン2と走行用モータ3とは切り離されるから、引用発明における「走行用モータ3が発生する動力で回転する駆動輪で走行するモード」は、本願発明における「エンジンがモータから切り離されるEVモード」に相当する。
また、引用発明における「走行用モータ3が発生する動力とエンジンが発生する動力で回転する駆動輪で走行するモード」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「エンジンがモータとともに回転するHEVモード」に相当する。
そして、以上のことから、引用発明における「走行用モータ3が発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードと、走行用モータ3が発生する動力とエンジンが発生する動力で回転する駆動輪で走行するモードとを備えるハイブリッド車両HV」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「エンジンがモータから切り離されるEVモードと、エンジンがモータとともに回転するHEVモードと、での走行が可能なハイブリッド車両」に相当し、同様に、「ハイブリッド車両HV」は「ハイブリッド車両」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「エンジンとモータとを具備し、エンジンがモータから切り離されるEVモードと、エンジンがモータとともに回転するHEVモードと、での走行が可能なハイブリッド車両であって、
上記エンジンのスロットル弁下流の吸入負圧を負圧源とするブレーキブースタを具備するとともに、このブレーキブースタにおける負圧を検出する負圧センサを備えてなるハイブリッド車両。」
という点で一致し、以下の<相違点>で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「上記EVモード中であって上記ブレーキブースタに負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に、ブレーキ操作に伴って減少するブレーキブースタ内の負圧を推定し、この推定負圧と上記負圧センサの検出値との比較から上記負圧センサの診断を行う、ハイブリッド車両の診断装置。」であるのに対し、引用発明においては、そのような負圧センサの診断を行うか否か明らかでない点。

上記相違点について判断する。
センサを用いる車両用装置において、センサの故障診断を行うことは一般的な技術課題である。
引用発明は、ブレーキブースタ10のブースタ圧を検出するブースタ圧センサ10aを備えるから、ブースタ圧センサ10aの故障診断を行うという課題が内在している。
また、引用発明において、EVモード中であって、ブレーキブースタに負圧の補充がされないとき(エンジンが停止しているとき)が存在することは、ハイブリッド車両のエンジン制御に関する技術常識からみて明らかである。
引用文献2には、「定圧室51に負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に、ブレーキ操作に伴って減少する定圧室51内の負圧を推定し、この推定負圧と圧力検出部55、56の検出結果に基づく圧力値との比較から上記圧力検出部55、56の故障判定を行う技術。」(上記「引用文献2記載の技術」)が記載されている。
そして、引用発明と、引用文献2記載の技術とは、車両のブレーキという共通の技術分野において、ブレーキブースタにおける負圧制御を行うものであり、センサの故障診断を行うという課題を有する点でも共通するから、組み合わせの動機付けがある。
ここで、引用文献2記載の技術と本願発明とを対比すると、引用文献2記載の技術における「定圧室51」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「ブレーキブースタ」に相当し、以下同様に、「圧力検出部55、56」は「負圧センサ」に、「検出結果に基づく圧力値」は「検出値」に、「故障判定」は「診断」に、それぞれ相当する。
したがって、引用文献2記載の技術は、本願発明の技術用語を用いると、「ブレーキブースタに負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に、ブレーキ操作に伴って減少するブレーキブースタ内の負圧を推定し、この推定負圧と負圧センサの検出値との比較から上記負圧センサの診断を行う技術。」と言い換えることができる。
そして、このような負圧センサの診断を行う技術は、負圧の供給がなされないときに行わなくてはならないことは明らかであり(上記第4 2(1)クを参照。)、引用文献2の図4を参照しても、負圧の供給がなされていないときに圧力検出部の診断が行われている。
引用発明は、上述のとおり、EVモード中であって、ブレーキブースタに負圧の補充がされないときが存在するから、引用発明において、引用文献2記載の技術を、「EVモード中であって、上記ブレーキブースタに負圧の補充がなされないときにおけるブレーキ操作中に」行い、相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載の技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2018-08-08 
結審通知日 2018-08-14 
審決日 2018-08-30 
出願番号 特願2013-203460(P2013-203460)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 和人  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 鈴木 充
金澤 俊郎
発明の名称 ハイブリッド車両の診断装置および診断方法  
代理人 小林 博通  
代理人 富岡 潔  

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