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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1345207
審判番号 不服2017-17127  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2016-121937「翻訳システム及び翻訳方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-138942、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年2月3日、中国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年4月25日付け:拒絶理由通知書
平成29年7月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年8月10日付け:拒絶査定(原査定)
平成29年11月20日 :審判請求書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成29年8月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-139577号公報
2.特開2002-163400号公報
3.特開2006-134224号公報
4.国際公開第2002/017173号


第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成29年7月18日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
少なくとも1つのユーザー向けクライアント端末、サーバー、及び、複数の翻訳者向けクライアント端末を備え、
前記サーバーは、前記ユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼を受信すると、前記複数の翻訳者向けクライアント端末の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者向けクライアント端末候補を決定し、前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補に前記翻訳依頼に該当する翻訳注文を送信し、
前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補は、前記翻訳注文を受信すると、選択的に前記サーバーにオーダーの早期取得指令を送信し、
前記サーバーは、前記オーダーの早期取得指令を受信すると、前記オーダーの早期取得指令を送信した前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補の中から1又は複数の目標翻訳者向けクライアント端末を選定し、
前記サーバーは、
選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、
選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信すると、当該1つの指定翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、
前記翻訳依頼を受信した前記翻訳者向けクライアント端末は、前記翻訳注文に係る翻訳対象を翻訳してその翻訳結果をサーバーに送信し、
前記サーバーは、前記翻訳者向けクライアント端末から受信した前記翻訳結果を前記ユーザー向けクライアント端末に送信することを特徴とする翻訳システム。」

本願発明2-8は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明9は、以下の通りの発明である。
「【請求項9】
ユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼を受信すると、複数の翻訳者向けクライアント端末の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者向けクライアント端末候補を決定し、前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補に前記翻訳依頼に該当する翻訳注文を送信し、
前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補が選択的に送信したオーダーの早期取得指令を受信すると、前記オーダーの早期取得指令を送信した前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補の中から1又は複数の目標翻訳者向けクライアント端末を選定し、
選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、
選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信すると、当該1つの指定翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信することを特徴とする翻訳方法。」


第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0011】
図1は、本発明の実施形態に係わるシステム構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、インターネットやLANなどの専用回線、公衆回線網(無線通信網なども含む)等を含むネットワーク10を通じて翻訳サービスを提供する翻訳サービスサーバ12と、ネットワーク10を通じて翻訳サービスを利用するためにユーザが使用するユーザ端末14(14-1,14-2,…,14-n)と、ユーザ端末14から依頼された翻訳対象文章について翻訳を行う翻訳者が使用する翻訳者端末16(16-1,16-2,…,16-m)とが接続される。
【0012】
翻訳サービスサーバ12は、例えばWWW(World Wide Web)を利用して翻訳サービスを提供するもので、Webページを通じてユーザ端末14や翻訳者端末16などから各種データを受信し、ユーザ端末14からの時間指定を伴う翻訳依頼に対して適切な翻訳者を選択し、当該翻訳者が使用する翻訳者端末16に対して指定時間内での人手による翻訳依頼を送信する。」

「【0019】
翻訳サービスサーバ12には、顧客管理部20、翻訳受付部22、データベース24、翻訳者管理部26等の機能が設けられている。」

「【0027】
図4には、データベース24に記録される翻訳者データ24bの一例を示している。
図4に示すように、翻訳者データ24bには、翻訳者毎の、例えば翻訳が可能な言語を示す対応言語(原文言語、翻訳言語)、主として使用する言語(主言語)、電子メールアドレス、基本的に翻訳依頼を受付け可能な時間帯(可能時間帯)などを示すデータが含まれている。例えば、図4に示す最初のデータでは、英語から日本語への翻訳と日本語から英語への翻訳が可能であることを示している。主言語は、チェック翻訳者を選択する場合などに参照されるもので、例えば英語が記録されている場合に、英語に翻訳された翻訳結果に対するチェックが可能であることを表している。なお、翻訳サービスサーバ12は、世界各国にいる翻訳者に対して翻訳依頼をすることができるため、各翻訳者についての可能時間帯を、例えば特定の国(例えば日本)を基準とした時間帯により表すものとする。」

「【0081】
次に、翻訳サービスサーバ12(翻訳者選択部26b)による翻訳者選択処理について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0082】
翻訳者選択部26bは、翻訳受付部22(受付内容確認部22a)によって翻訳依頼が受信されると、この翻訳依頼の内容と翻訳者データ24bを参照して、実際に翻訳対象とする文章に対して翻訳を実行する翻訳者、及び翻訳者によって翻訳された翻訳結果をチェックするチェック翻訳者とを選択する。
【0083】
まず、翻訳者選択部26bは、翻訳依頼において指定されている対象言語、すなわち翻訳元の言語と翻訳先の言語、及びコース(1時間、3時間、…、24時間)を判別し(ステップB1)、この対象言語及びコースに該当するデータを翻訳者データ24bから検索する(ステップB2)。つまり、現時点において、翻訳作業が可能な翻訳者を選択する。
【0084】
ここでは、該当する翻訳者が複数存在する場合には、例えば他の条件に基づいて選択するものとする。例えば、予め決められた優先順位に従って決める、同じ翻訳依頼元についての翻訳を過去にしたことがある(あるいは回数が多い)翻訳者を優先して決める、あるいは最も短時間での納入が可能な翻訳者に決めるといったことが可能である。この場合、こうした条件に関するデータを、別途、データベース24に記録・管理しておき、これらのデータを参照することで選択することができる。」

「【0088】
翻訳者選択部26bは、選択された翻訳者宛てに翻訳依頼を送信する(図2、図6(8))(ステップB3)。ここでは、例えば、電子メールによって翻訳依頼を送信するものとする。
【0089】
ここで、翻訳依頼に対して、翻訳者から依頼受信の応答が予め決められた時間内になかった場合(ステップB4、No)、この翻訳者に対する依頼を取り消し、前述と同様にして、別の翻訳者を選択する(ステップB2)。同様にして、この新たに選択した翻訳者宛てに翻訳依頼を送信する(ステップB3)。
【0090】
一方、翻訳者から依頼受信の応答があると(ステップB4、Yes)、翻訳者選択部26bは、翻訳対象とする文章データ(翻訳内容)、コース(納入時間データ)、分野、翻訳言語(翻訳元、翻訳先)、翻訳依頼元のユーザの電子メールアドレスなどを示すデータを翻訳者に対して送信する(ステップB5)。すなわち、翻訳者に対して、納入時間データが示す時間内での翻訳結果の納入を条件とした翻訳依頼をする。」

「【0096】
図2においては、例えば翻訳者端末16-1を使用する翻訳者に対して翻訳依頼が送信され、翻訳者端末16-2を使用する翻訳者に対してチェック依頼が送信されたものとする。
【0097】
翻訳者は、翻訳依頼された翻訳内容について、指定された対象言語に従い、納入時間データが示す時間内であり、かつチェック翻訳者による作業時間を考慮した時間内に翻訳を実行し、翻訳結果を作成する。翻訳者は、翻訳者端末16-1より、ネットワーク10を通じてチェック翻訳者宛て(翻訳者端末16-2)に翻訳結果を送信して翻訳チェックを依頼する(図2、図6(9))。
【0098】
チェック翻訳者は、翻訳者端末16-2により翻訳者結果が受信されると、この翻訳結果に対してチェックし、その結果を翻訳者に対して返信する(図2、図6(10))。翻訳者は、チェック済みの翻訳結果について最終確認をした後、納入時間データが示す時間内に、翻訳依頼元のユーザ宛てに、例えば電子メールによりネットワーク10を通じて翻訳結果を送信する(図2、図6(11))。
【0099】
なお、翻訳結果については、翻訳者(翻訳者端末16-1)から直接、依頼元のユーザ宛てに送信するだけでなく、翻訳サービスサーバ12を介して依頼元に送信するようにしても良い。この場合、翻訳サービスサーバ12は、翻訳結果を翻訳サービスサーバ12に送信する。翻訳サービスサーバ12は、例えばユーザに対して電子メールによって送信する、あるいは翻訳結果表示用のWebページを通じて提供するようにしても良い。翻訳結果表示用のWebページには、例えばユーザ端末14からIDとパスワードを用いてログインできるようにする。これにより、各ユーザが依頼した翻訳結果をそれぞれに対して提供することができる。翻訳結果表示用のWebページを用いた翻訳結果を提供する場合には、翻訳サービスサーバ12は、翻訳結果が翻訳者から受信された場合に、ユーザに対して翻訳完了を電子メールにより通知して、翻訳結果表示用のWebページへのアクセスを促すようにしても良い。さらに、翻訳結果を翻訳者からではなく、チェック翻訳者から送信させるようにしても良い。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザ端末14(14-1,14-2,…,14-n)と、翻訳者端末16(16-1,16-2,…,16-m)と、翻訳サービスサーバ12を備え、
翻訳サービスサーバ12は、電子メールアドレスを含む翻訳者データ24bを記録するデータベース24を備え、
翻訳サービスサーバ12は、ユーザ端末14から翻訳依頼が受信されると、翻訳者データ24bを参照して、現時点において翻訳作業が可能な翻訳者を選択し、該当する翻訳者が複数存在する場合には、他の条件に基づいて翻訳者を選択し、選択された翻訳者宛てに電子メールによって翻訳依頼を送信し、
翻訳依頼を送信された翻訳者の翻訳者端末は、翻訳結果を翻訳サービスサーバ12に送信し、
翻訳サービスサーバ12は、受信した翻訳結果を電子メールまたは翻訳結果表示用のWebページを通じてユーザ端末14に提供する、システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、要約、段落【0052】-【0055】の記載からみて、「通訳や翻訳の仲介処理装置において、複数の通訳者の端末に依頼情報を送信し、最初に了承情報を送信した通訳者を、通訳を行う一の通訳者として選定する。」という技術的事項が記載されている。

3.引用文献3について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3には、段落【0043】の記載からみて、「翻訳依頼を送信するにあたり翻訳対象のコンテンツに暗号化を施す。」という技術的事項が記載されている。

4.引用文献4について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4には、第17頁第24行?第18頁第14行の記載からみて、「翻訳を仲介する装置において、発注者が翻訳者を選択する。」という技術的事項が記載されている。


第5 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「ユーザ端末14(14-1,14-2,…,14-n)」「翻訳サービスサーバ12」「翻訳者端末16(16-1,16-2,…,16-m)」は、それぞれ本願発明1の「少なくとも1つのユーザー向けクライアント端末」「サーバー」「複数の翻訳者向けクライアント端末」に相当する。

引用発明の「翻訳サービスサーバ12」は、ユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼が受信されると、「翻訳者データ24bを参照して、現時点において翻訳作業が可能な翻訳者を選択」するものであり、この際に複数の翻訳者が候補として選択されうる。よって、引用発明と本願発明1とは、「前記サーバーは、前記ユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼を受信すると、複数の翻訳者の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者候補を決定し」するという点で共通する。

引用発明は、「現時点において翻訳作業が可能な翻訳者」が複数存在する場合には、「他の条件に基づいて翻訳者を選択し、選択された翻訳者宛てに電子メールによって翻訳依頼を送信」するものであり、引用発明と本願発明1とは、「複数の翻訳者候補から選択された1つの翻訳者の翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信」するという点で共通する。

引用発明における「翻訳依頼を送信された翻訳者の翻訳者端末は、翻訳結果を翻訳サービスサーバ12に送信」するとの構成は、本願発明1における「前記翻訳依頼を受信した前記翻訳者向けクライアント端末は、前記翻訳注文に係る翻訳対象を翻訳してその翻訳結果をサーバーに送信し」との構成に相当する。

引用発明における「翻訳サービスサーバ12は、受信した翻訳結果を電子メールまたは翻訳結果表示用のWebページを通じてユーザ端末14に提供する」との構成は、本願発明1における「前記サーバーは、前記翻訳者向けクライアント端末から受信した前記翻訳結果を前記ユーザー向けクライアント端末に送信する」との構成に相当する。

引用発明の「システム」は、翻訳の仲介を目的としたものであるから、本願発明1の「翻訳システム」に相当する。


したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「少なくとも1つのユーザー向けクライアント端末、サーバー、及び、複数の翻訳者向けクライアント端末を備え、
前記サーバーは、前記ユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼を受信すると、複数の翻訳者の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者候補を決定し、
複数の翻訳者候補から選択された1つの翻訳者の翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、
前記翻訳依頼を受信した前記翻訳者向けクライアント端末は、前記翻訳注文に係る翻訳対象を翻訳してその翻訳結果をサーバーに送信し、
前記サーバーは、前記翻訳者向けクライアント端末から受信した前記翻訳結果を前記ユーザー向けクライアント端末に送信することを特徴とする翻訳システム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、サーバーがユーザー向けクライアント端末から翻訳依頼を受信すると、「前記複数の翻訳者向けクライアント端末の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者向けクライアント端末候補を決定」するのに対し、引用発明は、「複数の翻訳者の中から前記翻訳依頼に該当する複数の翻訳者候補を決定」する点で共通するものの、「翻訳者向けクライアント端末」ではなく「翻訳者」の候補を決定する構成となっている点。

(相違点2)本願発明1は、「前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補に前記翻訳依頼に該当する翻訳注文を送信し、前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補は、前記翻訳注文を受信すると、選択的に前記サーバーにオーダーの早期取得指令を送信し、前記サーバーは、前記オーダーの早期取得指令を受信すると、前記オーダーの早期取得指令を送信した前記複数の翻訳者向けクライアント端末候補の中から1又は複数の目標翻訳者向けクライアント端末を選定し」との構成を有するのに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

(相違点3)本願発明1は、「前記サーバーは、選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信すると、当該1つの指定翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し」との構成を有するのに対し、引用発明は「複数の翻訳者候補から選択された1つの翻訳者の翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し」との点で共通するものの、その他の構成を有しない点。


(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討すると、当該相違点3に係る本願発明1の構成に関して、引用文献4には、「翻訳を仲介する装置において、発注者が翻訳者を選択する。」という技術的事項が記載されているものの、翻訳者の候補が1つの場合と複数の場合とで異なる処理を行うものではない。してみると、「選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信する」ことは、いずれの文献にも記載されておらず、引用発明に引用文献2に記載の技術的事項及び引用文献3,4に例示される周知技術を組み合わせても当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3,4に例示される周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1の「選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3,4に例示される周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が1つの場合、当該1つの目標翻訳者向けクライアント端末に前記翻訳依頼を送信し、選定した前記目標翻訳者向けクライアント端末が複数の場合、当該複数の目標翻訳者向けクライアント端末の情報を前記ユーザー向けクライアント端末にフィードバックし、前記ユーザー向けクライアント端末から1つの指定翻訳者向けクライアント端末の情報を受信する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3,4に例示される周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上の通り、本願発明1-9は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3,4に例示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2016-121937(P2016-121937)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 宮久保 博幸
石川 正二
発明の名称 翻訳システム及び翻訳方法  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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