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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1345227
審判番号 不服2017-15730  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-24 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2015-197300「送受信装置、送受信プログラム、送受信システムおよび送受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 34512、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年11月17日に出願された特願2006-311830号の一部を、平成25年11月13日に新たな特許出願とした特願2013-234518号の一部を、さらに平成27年10月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月7日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月16日に意見書が提出され、同年7月14日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達日 同年7月25日)、これに対し、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、当審において、平成30年6月13日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成30年8月15日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置であって、
メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段、
前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断する宛先判断手段と、
前記送信データが、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断手段と、
前記宛先判断手段によって前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、前記登録メッセージ判断手段によって当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段を備える、送受信装置。
【請求項2】
前記宛先判断手段によって、前記送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていないことが判断された場合に、受信した前記送信データを削除する削除手段をさらに備える、請求項2記載の送受信装置。
【請求項3】
前記宛先はメールアドレスである、請求項1または2記載の送受信装置。
【請求項4】
前記宛先は前記他の装置の識別情報である、請求項1または2記載の送受信装置。
【請求項5】
前記返信データは、前記送信データを受信したことの受信確認メッセージについてのデータである、請求項1ないし4のいずれかに記載の送受信装置。
【請求項6】
メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段を備え、他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置の送受信プログラムであって、
前記送受信装置のコンピュータのプロセッサに、
前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断する宛先判断ステップと、
前記送信データが、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断ステップと、
前記宛先判断ステップにおいて前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることを判断した場合であり、前記登録メッセージ判断ステップにおいて当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることを判断した場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信ステップを実行させる、送受信プログラム。
【請求項7】
他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信システムであって、
メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段、
前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断する宛先判断手段と、
前記送信データが、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断手段と、
前記宛先判断手段によって、前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、前記登録メッセージ判断手段によって当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段を備える、送受信システム。
【請求項8】
メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段を備え、他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置の送受信方法であって、
前記送受信装置のコンピュータは、
(a)前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断するステップと、
(b)前記送信データが、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断するステップと、
(c)前記ステップ(a)において前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることを判断した場合であり、前記ステップ(b)において当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることを判断した場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する、送受信方法。」

第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要
原査定は、平成28年10月26日付けの拒絶理由によるものであって、その概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-10
・引用文献 1、2

<引用文献等一覧>
1.特開2004-139507号公報
2.特開2004-15650号公報

2.原査定の理由の判断
(1)引用例
ア.引用例1
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-139507号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(ア)「【0022】
図1は、本発明の概略のシステム構成および動作を示す図である。このシステムは、複数の端末装置(単に通信端末または端末ともいう)と、ネットワーク上のメールサーバ115からなる。図では、通常のパーソナルコンピュータ(PC)のような非携帯型の端末110(端末A,B)と、携帯端末100(携帯端末C,D)とを示している。端末A,Bはインターネット網を介してメールサーバ115に接続されている。また、携帯端末C,Dは基地局105を介してインターネット網およびメールサーバ115に接続されている。このシステムにおいて、どの端末からも、他のいずれの端末へも電子メールを送信可能である。この例では、端末として、非携帯型、携帯型の両方を含むシステムを示したが、いずれか一方のみを含むシステムであってもよい。なお、本発明で利用するネットワーク、メールサーバおよび各種プロトコル等を用いる電子メールシステム自体は既存のものをそのまま利用することができる。本発明による変更点は、送受信を行う端末100の処理内容にある。」

(イ)「【0026】
端末Aのユーザは、端末B宛のメールに取得希望データ情報402を付加する。このメールのヘッダ情報401には、メールの主題(Sub)、宛先(To)、発信元(From)が含まれる。宛先はユーザが入力または指定する。この例での宛先は端末B(のメールアドレス)である。主題はユーザが入力してもよいが、本実施の形態の処理において自動的に所定の文字列(図の例では「データ問い合わせ」)が入力されるようにしてもよい。本実施の形態では、取得希望データ情報402は、メール添付書類のデータとして、メールに付加する。但し、メールの本文または主題に、取得希望データ情報402を付加することも可能である。図の例では取得希望データ情報402として「”データB”が欲しい」という文字列を示しているが、実際には、後述するようにシステムが認識しやすい形式のデータとすることができる。
【0027】
このようにして端末Aのユーザが端末Aで作成したメール(データ問い合わせメールという)が送信されると、このメールは、一旦、メールサーバ115に送られ(S201)、ここからさらに宛先の端末Bへ送信される(S202)。端末Bはこのメールの取得希望データ情報402を解読して、指定されたデータが自己内に存在するか否かをチェックする。存在すれば、そのデータ(またはデータリスト)を返信メールに添付して、発信元へ返信する(S203)。この返信メールのヘッダ情報501の宛先にはデータ問い合わせメールの発信元である「端末A」が自動的にセットされ、発信元には「端末B」のメールアドレスが自動的にセットされる。本文には「”データB”を返信します」のような自動作成されたメッセージが埋め込まれる。このメッセージは、テンプレート内に要求されたデータ名を埋め込むことにより自動的に作成できる。さらにこの返信メールにはデータの存在の有無を示す返信添付データ502および「データB」そのものの返信添付データ503が添付書類として付加される。
【0028】
このようにして端末Bで検出されたデータBは、メールの添付書類として、メールサーバ115経由で端末Aに返信される(S204)。端末Aではこの添付書類を取り出して再生することができる。
【0029】
なお、端末Bにおいて、要求されたデータが存在しない場合にはその旨を知らせる返信メールを作成し、返信する。」

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「インターネット網を介してメールサーバに接続され、
どの端末からも、他のいずれの端末へも電子メールを送信可能であり、
端末Aのユーザは、端末B宛のメールに取得希望データ情報を付加し、
端末Aのユーザが端末Aで作成したメール(データ問い合わせメールという)が送信されると、このメールは、一旦、メールサーバに送られ、ここからさらに宛先の端末Bへ送信され、
端末Bはこのメールの取得希望データ情報を解読して、指定されたデータが自己内に存在するか否かをチェックし、存在すれば、そのデータ(またはデータリスト)を返信メールに添付して、発信元へ返信し、
端末Bにおいて、要求されたデータが存在しない場合にはその旨を知らせる返信メールを作成し、返信する
端末。」

イ.引用例2
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-15650号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0009】
すなわち、このファクシミリ装置は、原稿送受信用の電子メールアドレスとは異なる保守用の電子メールアドレスが割り当てられており、このアドレスに対して保守データの送信を許容している送信元の識別データを変更可能に登録した保守送信元登録手段と、保守用の電子メールアドレスで受信した電子メールについて保守送信元登録手段による認証を確認した後、電子メールの受け入れ処理を許容する信号処理手段とを備えている。」

(イ)「【0026】
図3は、インターネットファクシミリ装置1の受け入れ処理の基本動作を示すフローチャートである。また、図4は、保守用電子メールのサンプルを示しており、(a)はメールヘッダ部、(b)は機能設定用の保守コマンドを含むメール本文を示している。また、保守コマンドのパラメータとしてバイナリデータが添付されていてもよい。
【0027】
電子メールサーバ3から電子メールを受信すると、そのメールのヘッダ部のパスワードを含んだサブジェクト(図4の符号A)をキーとして、保守送信元登録手段11a内の照合用データをサーチし、正当な送信元であることを認証する(図3の101?103)。
【0028】
照合した結果がNGであれば、表示部17aへアラーム表示等で報知する(図3の104)。ファクシミリ装置の管理者は、これにより不正な保守用データが送られてきたことを知ることができる。
【0029】
正当な送信元から送られてきたメールであれば、電子メールを自動オープンして内容を読み取り、電子メール本文に含まれる保守コマンドを表示または印刷する。例えば、図4(a)、(b)に示す電子メール情報が、そのまま表示、印刷される。また、添付されたバイナリデータも、そのまままたは変換して表示、印刷するようにしてもよい。」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「原稿送受信用の電子メールアドレスとは異なる保守用の電子メールアドレスに対して保守データの送信を許容している送信元の識別データを変更可能に登録した保守送信元登録手段と、保守用の電子メールアドレスで受信した電子メールについて保守送信元登録手段による認証を確認した後、電子メールの受け入れ処理を許容する信号処理手段とを備え、
電子メールサーバから電子メールを受信すると、そのメールのヘッダ部のパスワードを含んだサブジェクトをキーとして、保守送信元登録手段内の照合用データをサーチし、正当な送信元であることを認証し、
照合した結果がNGであれば、表示部へアラーム表示等で報知し、
正当な送信元から送られてきたメールであれば、電子メールを自動オープンして内容を読み取り、電子メール本文に含まれる保守コマンドを表示または印刷し、添付されたバイナリデータも、そのまままたは変換して表示、印刷するようにしてもよい
インターネットファクシミリ装置。」

(2)本願発明1についての判断
ア.対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

後者の「端末A」はその構造、機能、作用等からみて前者の「他の装置」に相当し、同様に、「インターネット網」は「ネットワーク」に、「電子メール」及び「メール」は「送信データ」にそれぞれ相当する。
後者の「端末」は、「インターネット網を介してメールサーバに接続され、どの端末からも、他のいずれの端末へも電子メールを送信可能であ」るから、前者の「他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置」に相当する。
後者は「端末Bはこのメールの取得希望データ情報を解読して、指定されたデータが自己内に存在するか否かをチェック」するから、そのようなチェックを行う手段を有しているといえ、当該手段と「前記送信データが、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断手段」とは、「送信データについて判断する判断手段」との概念で共通する。
後者は「端末Bはこのメールの取得希望データ情報を解読して、指定されたデータが自己内に存在するか否かをチェックし、存在すれば、そのデータ(またはデータリスト)を返信メールに添付して、発信元へ返信」するから、そのような返信を行う手段を有しているといえ、当該手段と前者の「前記宛先判断手段によって前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、前記登録メッセージ判断手段によって当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段」とは、「判断手段によって特定の判断がされた場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段」との概念で共通する。

そうすると、両者は、
「他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置であって、
送信データについて判断する判断手段と、
前記判断手段によって特定の判断がされた場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段を備える、送受信装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者が「メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段」を有するのに対して、後者はそのような手段を有さない点。

[相違点2]
前者が「送信データが、当該送信データの送信元の他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断手段」を有するのに対して、後者は「送信データについて判断する判断手段」を有するものの、当該判断手段は、端末Aのユーザが端末Aで作成したメール(データ問い合わせメール)の取得希望データ情報を解読して、指定されたデータが自己(端末B)内に存在するか否かを判断する点。

[相違点3]
自動返信手段が、前者においては「宛先判断手段によって送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、登録メッセージ判断手段によって送信データが登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に」、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信するのに対して、後者においては指定されたデータが自己(端末B)内に存在すると判断された場合にそのデータ(またはデータリスト)を返信メールに添付して返信する点。

イ.判断
上記相違点2について検討する。

引用発明2の「保守用の電子メールアドレスで受信した電子メールについて保守送信元登録手段による認証を確認した後、電子メールの受け入れ処理を許容する信号処理手段」は「電子メールサーバ3から電子メールを受信すると、そのメールのヘッダ部のパスワードを含んだサブジェクトをキーとして、保守送信元登録手段11a内の照合用データをサーチし、正当な送信元であることを認証」するものであって、その「(受信した)電子メール」は本願発明1の「送信データ」に相当する。
そうすると、引用発明2の「信号処理手段」は「送信データについて何らかの判断をする」点で相違点2に係る本願発明1の「登録メッセージ判断手段」と共通する。しかしながら、引用発明2の「信号処理手段」は、「保守用の電子メールアドレスで受信した電子メールについて保守送信元登録手段による認証を確認」する、すなわち、「正当な送信元であること」を判断するものであって、「送信データが、当該送信データの送信元の他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうか」を判断するものではない。
してみると、引用発明2は、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「登録後のフレンド関係確立が自動的に行われる。」(段落【0133】)という効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明2ないし8についての判断
本願発明2ないし5は、本願発明1をさらに限定したものである。
また、本願発明6ないし8は、本願発明1の送受信装置に対応する送受信プログラム、送受信システム及び送受信方法の発明であって、それぞれ上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本願発明1については上記「(2)」のとおりであるから、本願発明2ないし8は、本願発明1と同様に引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
よって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第4 当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要

理由1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(明確性)

・請求項 5

請求項5の「前記送信データは、当該送信データの送信元の前記他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータである」との記載について、「送信データ」は「他の装置」から送信されるものであるところ、当該記載が「送受信装置」の何を特定するのかが不明である。
よって、請求項5に係る発明は明確でない。

●理由2(新規性)

・請求項 1及び3ないし9
・引用文献 A

●理由3(進歩性)

・請求項 1及び3ないし9
・引用文献 A

・請求項 2
・引用文献 A及びB

・請求項 4
・引用文献 A及びC

<引用文献等一覧>
A.特開2003-173311号公報
B.特開2006-293621号公報
C.特開2006-43099号公報

2.当審拒絶理由の判断
(1)当審拒絶理由の理由1(明確性)について
平成30年8月15日付け手続補正書による手続補正により、特許請求の範囲は上記「第2 本願発明」において摘示した請求項1ないし8のとおりに補正された。
このことにより、特許請求の範囲の記載は明確となった。

(2)当審拒絶理由の理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
ア.引用例
(ア)引用例A
当審拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-173311号公報(以下「引用例A」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【請求項1】 電子メールの送受信機能を有する情報端末装置において、
設定に従って通常モードと留守モードとを切り替える切替手段と、
留守モードが設定されたときに、到着した電子メールの送信者アドレスを送信先とする留守メールを作成する留守メール作成手段とを備えることを特徴とする情報端末装置。
【請求項2】 前記留守メール作成手段は、所定のメールアドレスを記憶する第1アドレス記憶手段と、送信者アドレスが、該第1アドレス記憶手段に記憶されているメールアドレスと一致するか否かを判定するアドレス判定手段とを備え、該アドレス判定手段が一致と判定すると、前記留守メールを作成する、請求項1に記載の情報端末装置。」

b.「【0025】ステップS5で留守メールを送信すると判定された場合には、メール作成部20は、留守メールを返信すべき送信者アドレスをアドレス判定部17から受けとり、返信すべき留守メールを作成する(ステップS6)。返信すべき留守メールが作成されると、その留守メールは、メール送信部11によって送信される(ステップS7)。送信が完了すると、一時記憶部16に記憶されている情報は消去される(ステップS8)。一時記憶部16に記憶されているヘッダ部分がまだ残っているときには(ステップS9)、ステップS5?ステップS8を繰り返し、残りの全てのヘッダ部分について同様の処理を行う。」

上記の記載事項を総合すると、引用例Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。

「電子メールの送受信機能を有する情報端末装置において、
到着した電子メールの送信者アドレスを送信先とする留守メールを作成する留守メール作成手段を備え、
前記留守メール作成手段は、所定のメールアドレスを記憶する第1アドレス記憶手段と、送信者アドレスが、該第1アドレス記憶手段に記憶されているメールアドレスと一致するか否かを判定するアドレス判定手段とを備え、該アドレス判定手段が一致と判定すると、前記留守メールを作成し、
留守メールを送信すると判定された場合には、メール作成部は、留守メールを返信すべき送信者アドレスをアドレス判定部から受けとり、返信すべき留守メールを作成し、
返信すべき留守メールが作成されると、その留守メールは、メール送信部によって送信される
情報端末装置。」

(イ)引用例B
当審拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-293621号公報(以下「引用例B」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【0201】
受信側の通信端末のユーザは、予め、迷惑メールに対する対応の設定を行う。すなわち、図20(a)に示されるように、ディスプレイ126上に、迷惑メールに対する対応設定画面を表示し、キー操作によって、所望の設定を行う。すなわち、アドレス帳にない送信者からのメール、特定の言葉を含むメールなどを迷惑メールと設定する。ユーザによって、迷惑メールの対応情報が設定されると、メイン処理部140は、通知判定処理部176に、その設定された情報を登録する。
【0202】
図20(b)に示されるように、電子メールが受信されると(S81)、メイン処理部140は、通知指定判定部176を呼び出し、受信した電子メールが、予め設定されている迷惑メールの条件に該当するか否かを判定する(S82)。迷惑メールであると判定された場合、メイン処理部140は、メール保存処理部176にメールを保存せず、削除する。」

上記の記載事項を総合すると、引用例Bには、次の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されているものと認められる。

「受信側の通信端末のユーザは、アドレス帳にない送信者からのメールを迷惑メールと設定し、
ユーザによって、迷惑メールの対応情報が設定されると、メイン処理部は、通知判定処理部に、その設定された情報を登録し、
電子メールが受信されると、メイン処理部は、通知指定判定部を呼び出し、受信した電子メールが、予め設定されている迷惑メールの条件に該当するか否かを判定し、迷惑メールであると判定された場合、メイン処理部は、メール保存処理部にメールを保存せず、削除する
通信端末。」

(ウ)引用例C
当審拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-43099号公報(以下「引用例C」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【請求項3】
対戦を求める旨のエントリー要求を受信すると、待ち状態にある他のゲーム装置がない場合には、対戦相手を待つことを指示する待ち情報を返信し、既にエントリー要求を受け付けて待ち状態中の他のゲーム装置がある場合には、勝ち抜き戦の段階と無関係に対戦相手を指定する指定情報を返信するサーバ装置を備え、複数段階の勝ち抜き戦を仮想的に実行可能なゲームシステムに用いられるゲーム装置であって、
画像を表示する表示手段と、
前記サーバ装置から返信された情報が前記指定情報である場合には、当該指定情報で指定される他のゲーム装置へ対戦要求を送信して対戦相手を確定させ、返信された情報が前記待ち情報である場合には他のゲーム装置から対戦要求を待ち、対戦要求を受信すると対戦相手を確定する確定手段と、
自己のゲーム結果を示す自己のゲーム結果情報を生成して対戦相手の他のゲーム装置へ送信する結果生成手段と、
対戦相手の他のゲーム装置から前記他のゲーム装置のゲーム結果を示す他のゲーム装置のゲーム結果情報を受信すると、当該ゲーム装置の前記自己のゲーム結果情報と比較して、勝敗を判定する勝敗判定手段と、
勝ち抜き戦の段階を管理し、前記勝敗判定手段の判定結果に基づいて勝ち抜き戦の段階を進め、勝ち抜き線の段階に応じた画像を前記表示手段に表示させるゲーム進行手段と、
勝ち抜き戦の初戦に参加する場合、および、勝ち抜いて次の段階に参加する場合に、前記エントリー要求を前記サーバ装置に送信するエントリー要求手段と、
を備えることを特徴とするゲーム装置。
【請求項4】
前記サーバ装置は、待ち状態のゲーム装置を特定するためのエントリー情報を管理し、前記指定情報は、待ち状態のゲーム装置を識別するための識別情報を記録したエントリー情報であり、前記待ち情報は、前記識別情報が未記録報のエントリー情報であり、
前記確定手段は、
前記サーバ装置から、返信された前記エントリー情報に前記識別情報が登録されている場合には、当該エントリー情報に含まれる前記識別情報を参照して他のゲーム装置へ対戦要求を送信して対戦相手を確定させる第1手段と、
前記サーバ装置から、返信された前記エントリー情報に前記識別情報が登録されていない場合には、他のゲーム装置から対戦要求を待ち、対戦要求を受信すると対戦相手を確定する第2手段と、
前記第1手段によって対戦相手のゲーム装置が確定すると、前記削除要求を前記サーバ装置に対して送信する削除要求手段とを更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲーム装置。」

b.「【0009】
この発明によれば、サーバ装置でエントリー情報を管理する一方、ゲーム装置はエントリー情報を参照して、自己の識別情報をサーバ装置に登録して対戦待ちになるか、対戦要求を待ち状態にあるゲーム装置に送信して対戦を開始させることができる。この場合、サーバ装置は、単にエントリー情報に識別情報を登録するだけで、勝ち抜き戦の段階を考慮した管理はしない。従って、サーバ装置の処理負荷を軽くしつつ、勝ち抜き戦の段階とは無関係なマッチングを行うことができる。ここで、識別情報は、ゲーム装置を一意に識別する情報であればどのようなものであってもよいが、例えば、通信アドレスが該当する。」

上記の記載事項を総合すると、引用例Cには、次の発明(以下「引用発明C」という。)が記載されているものと認められる。

「ゲームシステムに用いられるゲーム装置において、
待ち状態のゲーム装置を識別するための識別情報は、ゲーム装置を一意に識別する情報であればどのようなものであってもよいが、例えば、通信アドレスが該当する
ゲーム装置。」

イ.本願発明1についての判断
本願の請求項1に係る発明と、引用発明Aとを対比する。

後者の「情報端末装置」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「送受信装置」に相当し、同様に、「到着した電子メール」は「送信データ」に、「第1アドレス記憶手段」は「記憶手段」に、「アドレス判定手段」(「アドレス判定部」)は「宛先判断手段」に、「留守メール」は「返信データ」にそれぞれ相当する。
後者の「電子メール」がネットワークを介して他の装置と送受信されるものであることは明らかであるから、後者の「電子メールの送受信機能を有する情報端末装置」は前者の「他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置」に相当する。
後者の「電子メールの送受信機能を有する情報端末装置」は、前者の「他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置」に相当する。
後者においては「送信者アドレスが、該第1アドレス記憶手段に記憶されているメールアドレスと一致するか否かを判定するアドレス判定手段とを備え、該アドレス判定手段が一致と判定すると、前記留守メールを作成する」から、「第1アドレス記憶手段に記憶されているメールアドレス」は留守メールが作成され送信されるメールアドレスである。そうすると、後者の「所定のメールアドレスを記憶する第1アドレス記憶手段」は、前者の「メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段」に相当する。
また、同様に、後者の「送信者アドレスが、該第1アドレス記憶手段に記憶されているメールアドレスと一致するか否かを判定するアドレス判定手段」は、前者の「前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断する宛先判断手段」に相当する。
後者においては「留守メールを送信すると判定された場合には、メール作成部は、留守メールを返信すべき送信者アドレスをアドレス判定部から受けとり、返信すべき留守メールを作成し、返信すべき留守メールが作成されると、その留守メールは、メール送信部によって送信される」から、後者の当該「メール作成部」及び「メール送信部」と、前者の「前記宛先判断手段によって前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、前記登録メッセージ判断手段によって当該送信データが前記登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段」とは、「宛先判断手段によって送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断されたことを条件のひとつとして、前記送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段」との概念で共通する。

そうすると、両者は、
「他の装置とネットワークを介してデータの送受信を行う送受信装置であって、
メッセージの送信を許可する相手の宛先を記憶する記憶手段、
前記他の装置からの送信データを受信したとき、当該送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されているかどうかを判断する宛先判断手段と、
前記宛先判断手段によって前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断されたことを条件のひとつとして、前記送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する自動返信手段を備える、送受信装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点4]
前者が「送信データが、当該送信データの送信元の他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうかを判断する登録メッセージ判断手段」を有するのに対して、後者はそのような手段を有さない点。

[相違点5]
自動返信手段が、前者においては宛先判断手段によって送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として記憶手段に記憶されていることが判断された場合であり、「登録メッセージ判断手段によって送信データが登録メッセージについてのデータであることが判断された場合に」、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信するのに対して、後者においては宛先判断手段によって前記送信データの送信元の情報がメッセージの送信を許可する相手の宛先として前記記憶手段に記憶されていることが判断された場合に、他の条件について判断することなく、当該送信データの送信元の宛先に返信データを自動的に返信する点。

(イ)判断
上記相違点4について検討する。

引用発明Bは、「受信した電子メールが、予め設定されている迷惑メールの条件に該当するか否かを判定」するものであるところ、引用発明Bの「受信した電子メール」は本願発明1の「送信データ」に相当するから、引用発明Bは「送信データについて何らかの判断をする」点で本願発明1と共通する。しかしながら、引用発明Bは「受信した電子メールが、予め設定されている迷惑メールの条件に該当するか否か」を判断するものであって、「送信データが、当該送信データの送信元の他の装置において宛先が登録されたことを当該宛先に通知する登録メッセージについてのデータであるかどうか」を判断するものではない。
そうすると、引用発明Bは、相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。
また、引用発明Cが相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではないことも明らかである。
してみると、引用発明B及びCは、いずれも相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

そして、本願発明1は、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「登録後のフレンド関係確立が自動的に行われる。」(段落【0133】)という効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明AないしCに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ.本願発明2ないし8についての判断
本願発明2ないし5は、本願発明1をさらに限定したものである。
また、本願発明6ないし8は、本願発明1の送受信装置に対応する送受信プログラム、送受信システム及び送受信方法の発明であって、それぞれ上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本願発明1については上記「イ.」のとおりであるから、本願発明2ないし8は、本願発明1と同様に、引用発明AないしCに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)小括
上記「(1)及び(2)」のとおり、当審拒絶理由はいずれも解消した。

第5 むすび

以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2015-197300(P2015-197300)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 彦田 克文  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 畑井 順一
森次 顕
発明の名称 送受信装置、送受信プログラム、送受信システムおよび送受信方法  
代理人 山田 義人  

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