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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1345237 |
審判番号 | 不服2017-10231 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-10 |
確定日 | 2018-10-30 |
事件の表示 | 特願2016-162573「仮想空間における入力を支援するための方法および装置ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 32130、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年8月23日を出願日とする出願であって,平成29年1月13日付けで拒絶理由通知がなされ,平成29年3月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成29年4月6日付けで拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,平成29年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,平成30年4月24日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がなされ,平成30年6月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年4月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1,4-16に係る発明は,以下の引用文献A-Gに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2015-232783号公報 B.特開2011-175617号公報 C.国際公開第2015/170641号 D.特開2012-248067号公報 E.特開2014-127124号公報 F.特開2013-242834号公報 G.国際公開第2014/034031号 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 本願請求項2-4,7-10,14-16に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2 本願請求項1-16に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 本願請求項11-16に係る発明は明確でない。 引用文献等一覧 1.特開2001-100906号公報(当審において新たに引用した文献) 2.特開2011-175617号公報(拒絶査定における引用文献B) 3.特開2015-232783号公報(拒絶査定における引用文献A) 4.特開2009-145883号公報(当審において新たに引用した文献) 5.特開2013-242834号公報(拒絶査定における引用文献F) 6.国際公開第2014/034031号(拒絶査定における引用文献G) 7.国際公開第2015/170641号(拒絶査定における引用文献C) 第4 本願発明 本願請求項1-14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は,平成30年6月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-3は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 ヘッドマウントディスプレイによって提供される仮想空間における入力を支援するためにコンピュータによって実行される方法であって, 前記コンピュータのユーザの四肢のいずれかの状態を検出するステップと, 前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて,前記ヘッドマウントディスプレイによって提供される仮想空間において入力を受け付ける入力装置オブジェクトに対する入力操作を行うための操作オブジェクトを配置するステップと, 前記操作オブジェクトの動きに基づいて,前記ヘッドマウントディスプレイによって提供される仮想空間において入力を受け付けるための入力装置オブジェクトを前記仮想空間に配置するステップと, 前記操作オブジェクトと前記入力装置オブジェクトとの接触を検出するステップと, 前記接触が予め定められた態様での接触である場合に,当該接触を前記入力装置オブジェクトに対する入力操作として受け付けるステップとを含み, 前記四肢のいずれかは,前記ユーザの手を含み, 前記操作オブジェクトは,前記手に相当する手オブジェクトを含み, 前記手オブジェクトは,1つ以上の指オブジェクトを含み, 前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップをさらに含む,方法。 【請求項2】 仮想空間における入力を支援するためにコンピュータによって実行される方法であって, 前記コンピュータのユーザの四肢のいずれかの状態を検出するステップと, 前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて,前記仮想空間において入力操作を行うための操作オブジェクトを配置するステップと, 前記操作オブジェクトの動きに基づいて,入力装置が前記コンピュータへの入力のために使用されていない状態で前記仮想空間において入力を受け付けるために予め規定された入力装置オブジェクトを前記仮想空間に配置するステップと, 前記操作オブジェクトと前記入力装置オブジェクトとの接触を検出するステップと, 前記接触が予め定められた態様での接触である場合に,当該接触を前記入力装置オブジェクトに対する入力操作として受け付けるステップとを含み, 前記四肢のいずれかは,前記ユーザの手を含み, 前記操作オブジェクトは,前記手に相当する手オブジェクトを含み, 前記手オブジェクトは,1つ以上の指オブジェクトを含み, 前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップをさらに含む,方法。 【請求項3】 仮想空間における入力を支援するためにコンピュータによって実行される方法であって, 前記コンピュータのユーザの四肢のいずれかの状態を検出するステップと, 前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて,前記仮想空間において入力操作を行うための操作オブジェクトを配置するステップと, 前記操作オブジェクトの動きに基づいて,前記仮想空間において入力を受け付けるために,現実空間において前記コンピュータに接続されている入力装置とは異なる入力装置として予め規定された入力装置を表わす入力装置オブジェクトを前記仮想空間に配置するステップと, 前記操作オブジェクトと前記入力装置オブジェクトとの接触を検出するステップと, 前記接触が予め定められた態様での接触である場合に,当該接触を前記入力装置オブジェクトに対する入力操作として受け付けるステップとを含み, 前記四肢のいずれかは,前記ユーザの手を含み, 前記操作オブジェクトは,前記手に相当する手オブジェクトを含み, 前記手オブジェクトは,1つ以上の指オブジェクトを含み, 前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップをさらに含む,方法。」 なお,本願発明4-14は,本願発明1-3のいずれかを直接又は間接的に引用した発明である。 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。 (1)段落【0010】-【0011】 「【0010】 【発明の実施の形態】<全体構成>以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示すように,三次元データ表示装置は,仮想空間に対する操作が三次元での動作として入力されると共に当該操作動作の位置を計測する操作入力手段2と,この操作入力手段2に対するオペレータの操作に応じて仮想空間内に配置する仮想操作具の位置を示す仮想操作具情報を生成する仮想操作具生成手段31と,この仮想操作具生成手段31にて生成される仮想操作具情報と仮想物体の仮想空間内での位置情報及び形状情報とを有する仮想空間情報を記憶した仮想空間情報記憶手段41と,この仮想空間情報記憶手段41に格納された仮想空間情報を所定の表示パラメータに従って表示用データに変換する表示制御手段1011と,この表示制御手段1011によって生成された表示用データを表示する表示手段(ディスプレイ)1001とを備えている。 【0011】そして,仮想操作具生成手段31は,オペレータの操作動作が予め定められた動作であるか否かを判定する動作特定部33と,この動作特定部33によって判定された動作種別に基づいて仮想操作具の機能又は仮想空間中の表示対象位置を示す表示パラメータを選択する表示パラメータ選択部34とを備えている。動作特定部33が操作入力手段2に加えられた操作の内容を識別し,表示パラメータ選択部34が,この識別された操作内容に応じて表示パラメータを選択するため,通常の操作と機能の選択や表示領域の選択などの処理を操作入力手段2を用いたまま行うことができる。」 (2)段落【0014】-【0015】 「【0014】仮想操作具としては,工具のモデルデータや,人の手のモデルデータや,ペンやメスのモデルデータを用いることができる。人の手のモデルパターンを生成するには,指先位置を計測する三次元マニピュレータを操作入力手段として用いると良い。また,ペンやメスのモデルデータを用いるには,ペンの位置及び傾きを計測する三次元マニピュレータを使用すると良い。 【0015】<手モデル>図2に手のモデルデータを仮想操作具とする場合の操作入力手段2の構成例を示す。操作入力手段2は,オペレータの複数の指先位置を計測する指先位置計測部24を備えている。図2に示す例では,親指を保持する親指用操作グリップ17Bと,人差し指を保持する人差し指用操作グリップ17Cと,中指を保持する中指用操作グリップ17Dとを備えている。各操作グリップ17は,回転関節14を介してリンク18にて支持されている。」 (3)段落【0021】 「【0021】システムCPU3Cは,力制御CPU3Aを介して入力される指先の位置情報に基づいて,手のモデルデータを生成する手形状モデル生成部として機能する。そして,システムCPU3は,モデルデータの仮想空間での位置情報及び形状情報をグラフィックワークステーション1011に入力する。グラフィックワークステーション1011では,仮想空間を二次元の表示データに変換して表示用データをディスプレイ1001に出力する。また,グラフィックワークステーション1011では,仮想物体と手のモデルデータとの干渉を判断し,干渉の有無及び量を反力情報としてシステムCPU3Cに入力する。このように4つのCPUを並列で使用することで,オペレータの操作に応じた表示及び反力の発生をリアルタイムで行うことができる。手の形状モデルの生成手法については,三次元位置計測装置を三次元マニピュレータの代用として使用する例にて説明する。」 (4)段落【0057】 「【0057】<三次元位置計測>上述した2つの三次元マニピュレータでは,オペレータに触覚を与えるために反力を算出する構成としたが,単にオペレータの操作を表示するのみであれば,非接触にて指先位置等を計測し,仮想空間に対する操作の入力を受けることもできる。図8は三次元位置計測装置を使用してオペレータの指先位置を計測する例を示すブロック図である。図8に示す三次元データ表示装置は,指先等の複数の先端部とこれら先端部にリンクした関節と当該先端部を関節を介して支持する支持部とを有するモデル対象物22について当該先端部及び支持部の位置を計測する操作入力手段(三次元位置計測装置)2と,この三次元位置計測装置2によって計測された各先端部及び支持部の位置情報に基づいてモデル対象物のモデルデータを生成するモデルデータ生成部32と,このモデルデータ生成部32によって生成されたモデルデータを表示手段等の外部機器に出力する表示制御手段1011とを備えている。」 (5)段落【0060】 「【0060】関節に連なる先端部である各指先の位置が計測されると,形状モデル生成部1013は,この各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成する。このとき,形状モデル生成部1013は,手の形状をエミュレートするために種々の拘束条件を使用する。すなわち,指先でのみ位置情報を検出しつつ,指は3つの関節でその形状が定まるため,各関節の回転角度を単一の位置情報で特定することはできない。このため,各指の動作の性質に応じて,拘束条件を与える。」 (6)段落【0066】 「【0066】図10は図8に示す例でのハードウエア資源の構成を示すブロック図である。図8に示すモデルデータ生成部32及び表示制御手段1011は,ワークステーション等のコンピュータ(演算装置)で実現することができる。演算装置1010は,位置計測手段の一部を成す撮像カメラ23によって撮像された画像データを受信する計測I/F1031と,この画像データに基づいて各指の指先の座標値を算出すると共に当該座標値に基づいて各指の形状モデルを生成する処理を行うCPU1037と,このCPU1037の主記憶となるRAM1038と,演算装置1010の起動時の手順等を記憶したROM1039とを備えている。」 (7)段落【0071】 「【0071】このように,三次元位置計測装置を使用することで,仮想操作具としての手のモデルデータを生成することができ,さらに,第1及び第2の拘束条件を用いることで,指先位置の計測と手の甲の位置の計測のみで,手の形状を特定することができる。従って,図8に示す例では,動作特定部33は,形状モデル生成部1013によって生成されたモデルデータに基づいてオペレータの手の動作を特定する。すなわち,各拘束条件を用いたのちに,各指が伸びているかそれとも握られているかを判定する。これにより,図2に示した三次元マニピュレータを使用する場合と同様に,種々の手の形状を特定動作として仮想空間に対する操作を行うことができる。」 (8)段落【0088】-【0089】 「【0088】図14は限界範囲の例を示す説明図である。本実施例では,センサプローブ13の,x,y,z,ヨー(yaw),ピッチ(pitch),ロール(roll)に対する動作範囲は予め定まっている。そこで,この動作範囲の中で動作限界に近いところで視点移動動作範囲を定めておく。図14(A)に示すように,オペレータの手12及びセンサプローブ13に対して三次元座標を定義すると,各方向について図14(B)に示すように動作限界点51が定まる。ここでは,この動作限界点近傍の一定領域を,視点を平行移動させるための動作範囲52として定義している。センサプローブ13により,オペレータの手の甲の位置・姿勢を検出して,オペレータの手の甲の位置・姿勢が視点移動動作範囲にあれば,コンピュータ画面上のオペレータの視点を移動させる。 【0089】同様に,図14(C)に示す各軸での回転を定義すると,それぞれの回転角度についても動作限界角度53が定義され,この動作限界角度53の近傍に視点回転移動動作範囲54を定義している。センサプローブ13により,オペレータの手の甲の位置・姿勢を検出して,オペレータの手の甲の姿勢が視点回転移動動作範囲にあれば,コンピュータ画面上のオペレータの視点を回転させる。」 (9)段落【0094】 「【0094】また,図18に示すように,指の伸縮の組み合わせに応じて,仮想操作パネルを表示するようにしても良い。図18に示す例では,全ての指が伸びていることを,操作パネル表示用の特定動作としている。従って,オペレータの手が図18(A)に示す状態となると,図18(B)に示すような仮想操作パネル75を表示する。オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができる。また,このとき,オペレータの指先にボタンを押した感覚を提示させるようにしても良い。図18(C)に示すように,仮想操作パネル75での特定のボタン(例えば,図中左上のボタン)を仮想的に三次元マニピュレータを用いて押すことで,仮想操作具の機能を特定し,例えば図18(D)に示すように仮想物体72を削る工具71を選択する。」 (10)段落【0096】 「【0096】 【発明の効果】本発明は以上のように構成され機能するので,これによると,動作特定部によってオペレータの操作動作が予め定められた動作であるか否かが判定されると,表示パラメータ選択部が,動作特定部によって判定された動作種別に基づいて仮想空間に配置する仮想操作具の機能又は仮想空間中の表示対象位置を示す表示パラメータを選択するため,操作入力部に加えられた動作の種別に応じて,仮想操作具の形状及び機能や,表示手段への表示領域などを変化させることができ,すると,操作入力手段を手にしたまま他の物を操作することなく表示内容を変更することができ,さらに,動作の種別と表示パラメータによる操作内容との組み合わせによって,オペレータが希望する操作を直感的に入力することができ,さらに,オペレータの動作に応じて表示領域を変化させるように表示パラメータを設定すると,小さい操作入力部(三次元入力マニピュレータ)を使用して広大な空間を有する仮想空間内で仮想物体を操作することができ,例えば,四輪車を実物大で操作する等の処理が可能となる,という従来にない優れた三次元データ表示装置を提供することができる。」 したがって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「仮想空間に対する操作が三次元での動作として入力されると共に当該操作動作の位置を計測する操作入力手段2と,この操作入力手段2に対するオペレータの操作に応じて仮想空間内に配置する仮想操作具の位置を示す仮想操作具情報を生成する仮想操作具生成手段31と,この仮想操作具生成手段31にて生成される仮想操作具情報と仮想物体の仮想空間内での位置情報及び形状情報とを有する仮想空間情報を記憶した仮想空間情報記憶手段41と,この仮想空間情報記憶手段41に格納された仮想空間情報を所定の表示パラメータに従って表示用データに変換する表示制御手段1011と,この表示制御手段1011によって生成された表示用データを表示する表示手段(ディスプレイ)1001とを備える三次元データ表示装置において, 仮想操作具生成手段31は,オペレータの操作動作が予め定められた動作であるか否かを判定する動作特定部33を備え, 仮想操作具としては,工具のモデルデータや,人の手のモデルデータや,ペンやメスのモデルデータを用いることができ, 操作入力手段2は,オペレータの複数の指先位置を計測する指先位置計測部24を備え, 表示制御手段(グラフィックワークステーション)1011では,仮想空間を二次元の表示データに変換して表示用データをディスプレイ1001に出力し,また,仮想物体と手のモデルデータとの干渉を判断し, 三次元位置計測装置を使用して,非接触にて指先位置等を計測し,仮想空間に対する操作の入力を受けることもでき, 手の形状をエミュレートするために種々の拘束条件を使用して,各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成し, 表示制御手段1011は,ワークステーション等のコンピュータ(演算装置)で実現することができ, 各指の指先の座標値を算出すると共に当該座標値に基づいて各指の形状モデルを生成する処理を行い, 生成されたモデルデータに基づいてオペレータの手の動作を特定し, コンピュータ画面上のオペレータの視点を移動,回転させることができ, 指の伸縮の組み合わせに応じて,仮想操作パネルを表示するようにしても良く,全ての指が伸びていることを,操作パネル表示用の特定動作とし,オペレータの手が,全ての指が伸びている状態となると,仮想操作パネル75を表示し,オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができ, 操作入力手段の他の物を操作することなく表示内容を変更することができる, 仮想空間に対する操作の入力を受ける方法。」 2 引用文献2-7について (1)当審拒絶理由で引用された引用文献2には,「指が仮想操作面を横切ると,指し示す位置の項目が選択されたと判定される」(段落【0090】)ことが記載されている。 (2)当審拒絶理由で引用された引用文献3には,「HMD1310には仮想空間の画像を表示する」(【要約】の【解決手段】の欄),「頭部装着型ディスプレイであるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:以下「HMD」)は,臨場感と迫力の有る映像体験を提供するためのキーデバイスとして知られている。」(段落【0002】)という事項が記載されている。 (3)当審拒絶理由で引用された引用文献4には,「VRにおいては,HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ;表示手段)やフォース・フィードバック等の技術を用いてユーザの行動を仮想空間内での各種オブジェクトの動作に反映させることができる。」(段落【0012】),「講師が装着して仮想空間の映像を表示するHMDであるHMD30(第1表示手段,第1HMD)」(段落【0015】)という事項が記載されている。 (4)当審拒絶理由で引用された引用文献5には,「ユーザの指の動きが一定速度以上で動いてから,・・・(中略)・・・,ジェスチャとして認識する。」(段落【0064】)という事項が記載されている。 (5)当審拒絶理由で引用された引用文献6には,「予め定められた値以上の速度,・・・(中略)・・・でポインタが通過したことを検出する処理部であってもよい。」(段落【0078】)という事項が記載されている。 (6)当審拒絶理由で引用された引用文献7には,「手を含めた腕部の角度に応じて操作画面の傾きが変わって見えるように変形して表示する」(段落[0052])という事項が記載されている。 第6 対比・判断 1 本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明では,「操作入力手段2」が備える「指先位置計測部24」又は「三次元位置計測装置」を使用して「オペレータ」の「指先位置」を「計測」し,「仮想空間に対する操作の入力を受け」ており,この「オペレータ」の「指先位置」は,本願発明2の「前記ユーザの手を含」む「ユーザの四肢のいずれかの状態」に相当する。 また,引用発明では,「コンピュータ画面上のオペレータの視点を移動,回転させることができ」ることから,「オペレータ」が「コンピュータ」を操作しているといえる。 そうすると,引用発明は,「コンピュータ」の「オペレータ」「の指先位置」を「計測」しているといえ,このことは,本願発明2の「コンピュータのユーザの四肢のいずれかの状態を検出するステップ」に相当する。 イ 下記(ア),(イ)より,引用発明と本願発明2とは,「前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて,仮想空間において入力を受け付ける入力装置オブジェクトに対する入力操作を行うための操作オブジェクトを配置するステップ」を有する点で一致するといえる。 (ア)引用発明では,「オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができ」るから,この「仮想操作パネル75」は,「仮想空間において入力を受け付ける」ものといえ,本願発明2の「仮想空間において入力を受け付ける入力装置オブジェクト」に相当するといえる。 (イ)引用発明では,「仮想操作具」を「手のモデルデータ」などとし,「各指先の位置が計測されると」「この各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成し」,また,「仮想操作具生成手段31」によって「仮想空間内に配置する仮想操作具の位置を示す仮想操作具情報を生成」しているから,引用発明は,「各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成し」,この「手のモデルデータ」を「仮想操作具」として「仮想空間内に配置する」ものといえる。 そして,引用発明は,「仮想物体と手のモデルデータとの干渉を判断し」,且つ,「オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができ」るから,「手のモデルデータ」により「仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押す」という入力操作ができるものといえ,この「仮想操作具」として「仮想空間内に配置」される「手のモデルデータ」は,本願発明2の「前記手に相当する手オブジェクトを含」む「入力装置オブジェクトに対する入力操作を行うための操作オブジェクト」に相当する。 そうすると,引用発明は,「各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成し」,この「手のモデルデータ」は,「仮想操作具」として「仮想空間内に配置」され,且つ,「仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押す」という入力操作ができるものといえるから,本願発明2とは「前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて」,「入力装置オブジェクトに対する入力操作を行うための操作オブジェクトを配置する」点で一致するといえる。 ウ 引用発明では,「全ての指が伸びていることを,操作パネル表示用の特定動作とし,オペレータの手が,全ての指が伸びている状態となると,仮想操作パネル75を表示し,」この「仮想操作パネル75」は,本願発明2の「予め規定された」「入力装置オブジェクト」に相当する。 また,引用発明では,「生成されたモデルデータに基づいてオペレータの手の動作を特定し」ているから,「全ての指が伸びている」という「特定動作」も「モデルデータ」に基づいて特定されることは明らかである。 さらに,引用発明は,「他の物を操作することなく表示内容を変更することができる」から,入力操作手段2以外の物が「入力のために使用されていない状態」で「仮想操作パネル75を表示」することも明らかである。 そうすると,引用発明は,入力操作手段2以外の物が「入力のために使用されていない状態で」,「モデルデータ」に基づいて「特定動作」を特定し,「オペレータの手」が「特定動作」を行なうと「仮想操作パネル75」を表示するものといえるから,本願発明2とは,「前記操作オブジェクトの動きに基づいて,入力装置が前記コンピュータへの入力のために使用されていない状態で前記仮想空間において入力を受け付けるために予め規定された入力装置オブジェクトを前記仮想空間に配置するステップ」を有する点で一致するといえる。 エ 上記イ(イ)で述べたとおり,引用発明は,「仮想物体と手のモデルデータとの干渉を判断し」,且つ,「オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができ」るから,「手のモデルデータ」と「仮想操作パネル75」との「干渉を判断」しているといえ,また,「押す」ときに「手のモデルデータ」と「仮想操作パネル75の目的に応じたボタン」が接触することは明らかであるから,引用発明と本願発明2とは,「前記操作オブジェクトと前記入力装置オブジェクトとの接触を検出するステップ」を有する点で一致する。 オ 上記エで述べたとおり,引用発明は,「手のモデルデータ」と「仮想操作パネル75」との「干渉を判断」しているといえ,「押す」ときに「手のモデルデータ」と「仮想操作パネル75の目的に応じたボタン」が接触することは明らかである。また,引用発明における「押す」ことは,本願発明2の「予め定められた態様での接触」に含まれる。そうすると,引用発明と本願発明2とは,「前記接触が予め定められた態様での接触である場合に,当該接触を前記入力装置オブジェクトに対する入力操作として受け付けるステップ」を有する点で一致するといえる。 カ 上記イ(ア)で述べたとおり,引用発明では,「仮想空間を二次元の表示データに変換して表示用データをディスプレイ1001に出力し」ているから,このディスプレイによって「仮想空間」が提供されているといえる。 そして,引用発明は,このディスプレイによって提供される「仮想空間」「に対する操作の入力を受ける方法」であって,「仮想空間情報を所定の表示パラメータに従って表示用データに変換する」「表示制御手段1011は,ワークステーション等のコンピュータ(演算装置)で実現することができ」るから,本願発明2とは「仮想空間における入力を支援するためにコンピュータによって実行される方法」である点で一致する。 キ 引用発明では,「各指の指先の座標値を算出すると共に当該座標値に基づいて各指の形状モデルを生成する処理を行」い,この「各指の形状モデル」が「手のモデルデータ」に含まることは明らかであるから,本願発明2とは,「前記手オブジェクトは,1つ以上の指オブジェクトを含」む点で一致する。 したがって,本願発明2と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「仮想空間における入力を支援するためにコンピュータによって実行される方法であって, 前記コンピュータのユーザの四肢のいずれかの状態を検出するステップと, 前記四肢のいずれかの状態の検出結果に応じて,前記仮想空間において入力操作を行うための操作オブジェクトを配置するステップと, 前記操作オブジェクトの動きに基づいて,入力装置が前記コンピュータへの入力のために使用されていない状態で前記仮想空間において入力を受け付けるために予め規定された入力装置オブジェクトを前記仮想空間に配置するステップと, 前記操作オブジェクトと前記入力装置オブジェクトとの接触を検出するステップと, 当該接触を前記入力装置オブジェクトに対する入力操作として受け付けるステップとを含み, 前記四肢のいずれかは,前記ユーザの手を含み, 前記操作オブジェクトは,前記手に相当する手オブジェクトを含み, 前記手オブジェクトは,1つ以上の指オブジェクトを含む,方法。」 (相違点) 本願発明2は,「前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップ」を含むのに対して,引用発明は,このようなステップを含まない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,「前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップ」は,引用文献2-7には記載されておらず,本願出願日前に周知技術であったともいえない。 そして,引用発明は,「オペレータは仮想操作パネル75の目的に応じたボタンを押すことによって,仮想空間内での動作を選択することができ」るものの,「三次元位置計測装置を使用して,非接触にて指先位置等を計測し」,「手の形状をエミュレートするために種々の拘束条件を使用して,各指先の位置情報に基づいて手のモデルデータを生成し」,「仮想操作具として」「の手のモデルデータ」「の仮想空間内での位置情報及び形状情報とを有する仮想空間情報を」「所定の表示パラメータに従って表示用データに変換する」ものであるから,仮想操作パネル75に手のモデルデータが所定の距離まで接近した場合に,各指先の位置情報の検出結果によらず,手のモデルデータの1つ以上の指のモデルを伸ばした状態に変化させるようにする合理的理由はない。 したがって,本願発明2は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明1,3について 本願発明1,3も,本願発明2と同じく,「前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップ」という事項を有しているから,本願発明2と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明4-14について 本願発明4-14も,本願発明1-3と同じく,「前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップ」という事項を有しているから,本願発明2と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 平成30年6月19日付けの補正により,本願発明1-14は「前記仮想空間に配置された,前記入力装置オブジェクトと前記手オブジェクトとが予め定められた距離以下まで接近した場合に,前記ユーザの手の状態の検出結果によらず,前記手オブジェクトの前記1つ以上の指オブジェクトを伸ばした状態に変化させるステップ」という事項を有しており,当該事項は拒絶査定において引用された引用文献A-Gには記載されておらず,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献A-Gに基づいて容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 その他の当審拒絶理由について 当審では,請求項11-16の「手オブジェクト」と請求項1-3の「操作オブジェクト」との異動包含関係が不明瞭であるという拒絶理由を通知しているが,平成30年6月19日付けの補正において,補正前の請求項10に対応する請求項9では「手オブジェクト」が「操作オブジェクト」と補正された結果,この拒絶理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-15 |
出願番号 | 特願2016-162573(P2016-162573) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) P 1 8・ 537- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 円子 英紀 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
松田 岳士 稲葉 和生 |
発明の名称 | 仮想空間における入力を支援するための方法および装置ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラム |
代理人 | 小田 直 |
代理人 | 高岡 亮一 |
代理人 | 高木 貴子 |