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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1345245
審判番号 不服2017-17926  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-04 
確定日 2018-10-30 
事件の表示 特願2015-187762「光学測定器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 62184、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月25日の出願であって、平成29年5月9日付けで拒絶理由が通知され、同年7月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月5日付けで拒絶査定されたところ、同年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年12月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
測定試料が配置される測定部に光源からの測定用光を入射させる、直線状に伸びる貫通孔よりなる第1の導光路が内部に形成された第1の導光路形成体と、前記測定部から出射される検出用光を受光部に導光する、直線状に伸びる貫通孔よりなる第2の導光路が内部に形成された第2の導光路形成体とを有する光学測定器であって、
前記測定部においては、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケットを介して、前記測定用光が入射されると共に前記検出用光が出射され、
前記第2の導光路形成体が、光吸収性を有する材料より形成されており、前記測定部と前記受光部との間の光路の全てが当該第2の導光路形成体によって覆われており、
前記第2の導光路形成体の第2の導光路の径をd、長さをLとしたとき、下記関係式(1)を満足することを特徴とする光学測定器。
関係式(1):3≦L/d≦15」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年7月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
測定試料が配置される測定部に光源からの測定用光を入射させる、直線状に伸びる貫通孔よりなる第1の導光路が内部に形成された第1の導光路形成体と、前記測定部から出射される検出用光を受光部に導光する、直線状に伸びる貫通孔よりなる第2の導光路が内部に形成された第2の導光路形成体とを有する光学測定器であって、
前記測定部においては、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケットを介して、前記測定用光が入射されると共に前記検出用光が出射され、
前記第2の導光路形成体が、光吸収性を有する材料より形成されており、
前記第2の導光路形成体の第2の導光路の径をd、長さをLとしたとき、下記関係式(1)を満足することを特徴とする光学測定器。
関係式(1):3≦L/d≦15
【請求項2】
前記第2の導光路形成体の第2の導光路は、前記第1の導光路形成体の第1の導光路と同軸上に位置されていることを特徴とする請求項1に記載の光学測定器。
【請求項3】
前記光吸収性を有する材料が、光吸収性を有する弾性体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学測定器。
【請求項4】
前記光吸収性を有する弾性体が、光吸収性物質が分散されたシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の光学測定器。
【請求項5】
前記試料ブラケットには、前記第1の導光路形成体および前記第2の導光路形成体を収容するための収容用凹所が形成されており、当該収容用凹所に前記第1の導光路形成体および前記第2の導光路形成体がそれぞれ圧入された状態で保持されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光学測定器。
【請求項6】
前記第1の導光路形成体が、光吸収性を有する材料より形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光学測定器。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第2の導光路形成体」について、「前記測定部と前記受光部との間の光路の全てが当該第2の導光路形成体によって覆われ」るとの限定を加えたものであるが、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲には、「第2の導光路形成体」がどこをどのように覆うかについての記載はなく、また、図7において、「第2の導光路形成体26」は、「受光部28」と「試料ブラケット25」に形成された受光部側の「光通過穴27B」の受光部側端部との間を覆っている点は見て取れるものの、「測定部20」と「受光部28」との間には、「第2の導光路形成体」以外に「試料ブラケット25」があるため、「前記測定部と前記受光部との間の光路の全てが当該第2の導光路形成体によって覆われ」る点は記載されていない。
そうすると、本件補正において限定された、「前記測定部と前記受光部との間の光路の全てが当該第2の導光路形成体によって覆われ」る点は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されていないから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年12月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年7月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1?6に係る発明(以下「本願発明1?6」という。)は、その請求項1?6に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?4及び6に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平10-073532号公報
引用文献2:特開2006-300741号公報
引用文献3:特開2015-83962号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3及びその記載事項は、以下に記載したとおりである。

(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された文献である、特開平10-073532号公報(平成10年3月17日出願公開。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様)

(引1a)「【0006】この発明に適用する透光性容器は少なくとも光学的検知に係る部分が透明になっていればよいが、通常、直径10?20mm,高さ50?100mmのガラス又は樹脂製の試験管が使用され、この容器に測定される液体試料(例えば血液試料)および試薬(例えば凝固用試薬)が投入される。また、この容器を離脱可能に収納する収納部材は、例えば、透明な有底筒状容器(試験管)を容器の軸が垂直になるように収納する部材であり、容器は収納部材に対して軸方向に着脱可能であることが好ましい。」

(引1b)「【0017】
【実施例】図1は血液凝固測定装置本体(以下、本体という)の上面図,図2は図1のA-A矢視断面図,図3は図1のB-B矢視断面図,図4,図5,図6はそれぞれ図3のC-C,D-D,E-E矢視断面図である。
【0018】図2に示すように、本体1は、透明な容器としての樹脂製サンプルチューブ2を離脱可能に収納する収納部材3と、収納部材3をゴム製等の弾性部材4を介して揺動可能に支持する支持部材5と、収納部材3の上部外面に巻回されたニクロム線コイルヒータ(加熱器)6と、収納部材3の下端に設置され収納部材3を揺動させる揺動手段としてのモータ7を備え、モータ7はその出力軸7aに重心が偏心した重り部材つまりアンバランサ8を備える。また、本体1は、支持部材5の上部を覆うためのフタ9を備え、フタ9の中央には試薬注入孔9aが設けられている。
【0019】さらに、本体1は、図3に示すように、支持部材5に設けられた第1および第2光源としてのLED10と11を備え、LED10と11はサンプルチューブ2の軸心つまり収納部材3の軸心に対して平行に上下に配列されている。
【0020】そして、支持部材5には、第1光検出器としてのフォトダイオード10a(図3)と、第2光検出器としてのフォトダイオード11a(図2)とがそれぞれ設けられ、フォトダイオード10aはLED10からの光をサンプルチューブ2を介して受光できるように、LED10に対向して配置され、フォトダイオード11aはLED11からの光がサンプルチューブ2の内容物によって散乱した光を受光するためにLED11とフォトダイオード11aの光軸がサンプルチューブ2の軸心で直交するように配置されている。
【0021】つまり、LED10から出た光は、図5に示すように、開口21,22を経てサンプルチューブ2を透過し、さらに開口23,24を経てフォトダイオード10aに受光され、LED11から出た光は、図6に示すように、開口25,26を経てサンプルチューブ2内の内容物によって散乱され、散乱された光が開口27,28を経てフォトダイオード11aに受光されるようになっている。」

(引1c)「図3



(引1d)「図5



(2)引用文献1に記載された発明
図3((引1b)参照)及び図5((引1c)参照)より「開口21」及び「開口24」は、支持部材5に、「開口22」及び「開口24」は、収納部材3にそれぞれ設けられている点が見て取れるから、上記(1)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「測定される液体試料が投入される透明な容器としての樹脂製サンプルチューブ2を離脱可能に収納する収納部材3と、
収納部材3を支持する支持部材5と、
支持部材5に設けられた第1光源としてのLED10を備え、
支持部材5には、第1光検出器としてのフォトダイオード10aが設けられ、
LED10から出た光は、支持部材5の開口21、収納部材3の開口22を経てサンプルチューブ2を透過し、さらに収納部材3の開口23、支持部材5の開口24を経てフォトダイオード10aに受光される
血液凝固測定装置。」

(3)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された文献である、特開2006-300741号公報(平成18年11月2日出願公開。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出射光の経路を制御し得る一対の開口が形成された遮光部材と、前記一対の開口の間に、一対の試料出入口を有する試料保持部が配置されるように、前記遮光部材と一体化された透明部材とから構成され、
前記遮光部材における一対の開口の一方の径(a)と他方の径(b)とが、a≦bを満たし、かつ
該他方の径(b)と入出射光に略直交する方向における試料保持部の径(c)とが、b≦c-300μmを満たすことを特徴とする光学測定用マイクロ流路。」

(4)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された文献である、特開2015-83962号公報(平成27年4月30日出願公開。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引3a)「【実施例1】
【0049】
図1に本発明の色素含有のシリコーン樹脂3(本願請求項における「色素分散部」の一例)を備える構造物1(本願請求項における「フィルタ部材」の一例)の断面図を示す。図1に示すように、本発明の構造物1は、例えばPDMSのようなシリコーン樹脂に色素
(本願請求項における「色素」の一例)を添加して当該色素を含有させた構造の成形体表面の少なくとも一部の領域に色素拡散抑制部材5(本願請求項における「色素拡散抑制部」及び「色素拡散抑制部材」の一例)が設けられる。図1は、上記成形体表面が全て色素拡散抑制部材5に覆われている例を示している。
色素拡散抑制部材5としては、高密度であって、所望の光に対して透過性が高く、また、内部において色素の移動が無視できるほど小さいか、全く移動しない材質からなる。
具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂(Poly methyl methacrylate:PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリカーボネート(polycarbonate)や無機ガラス等が用いられる。特に色素の移動を完全に防止するのであれば、色素拡散抑制部材5として無機ガラスを使用することが好ましい。
なお、色素拡散抑制部材5の材質を金属とすることも可能である。しかしながら、構造物1をフィルタ部材として使用する場合、色素を含有する形成体表面と接触する色素拡散抑制部材5の表面に入射した光は、この表面により反射・散乱されることになる。そのため、所望しない方向に光が進行する可能性もあるので、色素拡散抑制部材5の材質を金属とするのは、構造物1をフィルタ部材として使用する場合は好ましくない。」

4 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明における「血液凝固測定装置」は、「サンプルチューブ2を透過し」た「LED10から出た光」を、「フォトダイオード10a」で受光することにより血液の凝固を測定する装置であるから、本願発明1における「光学測定器」に相当する。また、引用発明の「測定される液体試料」、「LED10」及び「サンプルチューブ2」は、それぞれ、本願発明1の「測定試料」、「光源」及び「試料チューブ」に相当する。

(イ)引用発明は、「透明な容器としての」「サンプルチューブ2」に「測定される液体試料が投入され」、「LED10から出た光は、支持部材5の開口21、収納部材3の開口22を経てサンプルチューブ2を透過」するから、「サンプルチューブ2」内の「LED10から出た光」が透過する部分は、本願発明1における「測定試料が配置される測定部」に相当する。そして、引用発明の「支持部材5の開口21」は、本願発明1の「測定試料が配置される測定部に光源からの測定用光を入射させる」、「貫通孔よりなる第1の導光路」に相当し、引用発明の「LED10から出た光」は、「さらに収納部材3の開口23、支持部材5の開口24を経てフォトダイオード10aに受光される」から、引用発明の「支持部材5の開口24」は、本願発明1の「前記測定部から出射される検出用光を受光部に導光する」、「貫通孔よりなる第2の導光路」に相当する。また、引用発明の「開口21」及び「開口24」は「支持部材5」に設けられているから、引用発明の「支持部材5」は、本願発明1の「第1の導光路形成体」及び「第2の導光路形成体」に相当する。

(ウ)引用発明は、「透明な容器としての」「サンプルチューブ2」に「測定される液体試料が投入され」、「サンプルチューブ2」は、「収納部材3」に「離脱可能に収納」されており、図3((引1b)参照)及び図5((引1c)参照)より、「サンプルチューブ2」が「収納部材3」に形成された穴に収納されている点が見て取れるから、「測定される液体試料が投入され」た「サンプルチューブ2」を「離脱可能に収納」した「収納部材3」は、本願発明1の「測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケット」に相当する。そして、引用発明の「LED10から出た光」は、「収納部材3」に形成された「開口22」を経て「サンプルチューブ2を透過し」、さらに「収納部材3」に形成された「開口23」を経て「フォトダイオード10aに受光される」から、「サンプルチューブ2」内の「LED10から出た光」が透過する部分は、「収容部材3」を介して「LED10から出た光」が入射されると共に、「フォトダイオード10a」に入射する光が出射されているといえる。そうすると、引用発明の「LED10から出た光」は、「収納部材3」に形成された「開口22を経てサンプルチューブ2を透過し」、さらに「収納部材3」に形成された「開口23」を経て「フォトダイオード10aに受光され」は、本願発明1の「前記測定部においては、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケットを介して、前記測定用光が入射されると共に前記検出用光が出射され」に相当する。

(エ)以上(ア)から(ウ)より、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「測定試料が配置される測定部に光源からの測定用光を入射させる貫通孔よりなる第1の導光路が内部に形成された第1の導光路形成体と、前記測定部から出射される検出用光を受光部に導光する、貫通孔よりなる第2の導光路が内部に形成された第2の導光路形成体とを有する光学測定器であって、
前記測定部においては、測定試料が装填された試料チューブが挿入される試料チューブ受容穴が形成された試料ブラケットを介して、前記測定用光が入射されると共に前記検出用光が出射される光学測定器。」

(相違点)
(相違点1)第1及び第2の導光路が、本願発明1では「直線状に伸びる貫通孔よりな」り、「第2の導光路の径をd、長さをLとしたとき」、「関係式(1):3≦L/d≦15」を満足するものであるのに対し、引用発明は「開口21」及び「開口24」を備えているが、直線状に伸びるとはいえず、「開口24」の径及び長さが特定されていない点。

(相違点2)第2の導光路形成体が、本願発明1は「光吸収性を有する材料より形成され」ているのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、【発明が解決しようとする課題】として、以下の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、ライフサイエンス分野では、ポイントオブケア検査に用いることなどを目的に、吸光度測定器などの光学測定器について、持ち運びを容易にするために小型化の要請がある。
そして、上記のような吸光度測定器について小型化を図る場合は、例えば光源と測定試料が配置される測定部との間や、測定部と受光部との間の光学系を簡略化して光源と受光部とを接近配置させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、光源から放射される光は発散光であるため、導光路を包囲する壁面において測定試料を透過した検出用光以外の光の反射、散乱が生じてしまう。その結果、受光部に対して、測定試料を透過して直進する検出用光だけでなく、導光路を包囲する壁面において反射、散乱された光が照射されることとなり、測定誤差が生じて高い精度の測定結果を得ることができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、小型化が図られて容易に持ち運ぶことができ、かつ、検出用光以外の光が受光部に入射することを抑制することができて高い精度の測定結果を得ることができる光学測定器を提供することを目的とする。」

上記記載より、本願は、導光路を包囲する壁面において測定試料を透過した検出用光以外の光の反射、散乱が、測定誤差を生じさせるという課題を解決するために、本願発明1は、「第1及び第2の導光路」が「直線状に伸びる貫通孔よりな」り、「第2の導光路の径をd、長さをLとしたとき」、「関係式(1):3≦L/d≦15」を満足するものとしたものである。
これに対し、引用発明は、段落【0003】に

「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこのような装置では、撹拌装置を備えないため、試薬と液体試料を別途撹拌する必要があった。このため撹拌に手間がかかり、撹拌も不均一となり測定値が再現性に乏しいという問題点がある。この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、試薬と液体試料の撹拌の手間もかからずに再現性のよい測定結果をうることが可能な撹拌機能付きの液体試料測定装置を提供するものである。」

と記載されているように、試薬と液体試料の撹拌の手間もかからずに再現性のよい測定結果をうることが可能な撹拌機能付きの液体試料測定装置を提供するためのものであり、引用文献1には、検出用光以外の光の反射、散乱が問題となるといった記載も認められないことから、引用発明は、検出用光以外の光の反射、散乱が、測定誤差を生じさせるという課題を解決するためのものではなく、また、光学測定器内部の光の反射、散乱が、測定誤差を生じさせるという課題が、出願当時に当業者において周知であったという事実も認められない。そうすると、引用発明において、「支持部材5の開口21」及び「開口24」を直線状に伸びる貫通孔とし、「開口24」の壁面において、測定試料を透過した検出用光以外の光の反射、散乱を十分に吸収させるために、径と長さの関係を上記関係式(1)のごとく設定することの動機づけがあるとはいえない。また、引用文献2及び3には、導光路を直線状に伸びる貫通孔とし、その径と長さの関係を上記関係式(1)のごとく設定することは記載されていないし、光学測定器内部の光の反射、散乱を除去するための動機となる課題等の記載も認められない。そうすると、本願発明1は、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項から当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2?6について
本願発明2?6も、本願発明1の
「直線状に伸びる貫通孔よりなる第1の導光路」、
「直線状に伸びる貫通孔よりなる第2の導光路」、
「前記第2の導光路形成体が、光吸収性を有する材料より形成されており、前記第2の導光路形成体の第2の導光路の径をd、長さをLとしたとき、下記関係式(1)を満足すること」、
「関係式(1):3≦L/d≦15」
と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-16 
出願番号 特願2015-187762(P2015-187762)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚本 丈二  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 信田 昌男
福島 浩司
発明の名称 光学測定器  
代理人 大井 正彦  

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