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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1345247
審判番号 不服2016-15784  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2018-10-10 
事件の表示 特願2013-106288「送信時間間隔ごとに複数のハイブリッド自動再送要求プロセスをサポートする方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-169008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年2月3日 米国、2006年8月23日 米国)を国際出願日とする特願2008-553357号の一部を、平成23年11月11日に新たな特許出願とした特願2011-247517号の一部を、平成25年5月20日に更に新たな特許出願としたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成27年 1月16日付け:拒絶理由通知書
平成27年 5月20日: 意見書、手続補正書の提出
平成27年10月19日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成28年 4月27日: 意見書、手続補正書の提出
平成28年 6月16日付け:平成28年4月27日の手続補正についての 補正の却下の決定、拒絶査定
平成28年10月21日: 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成29年10月17日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月23日: 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
平成30年2月23日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、
直交周波数分割多元(OFDM)信号上でロングタームエヴォルーション(LTE)物理層サブフレームを受信するように構成された回路であり、前記LTE物理層サブフレームは複数の時間領域単位および複数の周波数領域単位に分割されており、前記LTE物理層サブフレームは、複数の時間領域および周波数領域単位を含むデータ部と、複数の時間領域および周波数領域単位を含む制御部と、前記制御部の時間領域および周波数領域単位および前記データ部の時間領域および周波数領域単位に点在された参照信号とを含み、1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介して複数の伝送ブロック(TB)が同時に受信される、前記回路を備え、
前記制御部は、前記複数の時間領域単位のうちの少なくとも1つの第1の時間領域単位を含み、複数のTBの各TBのための制御情報を搬送し、
前記制御情報は、各TBについての変調および符号化方式(MCS)並びにHARQ情報を含み、各TBについての前記HARQ情報は重複バージョンを含み、
前記データ部は、前記複数の時間領域単位のうちの他の時間領域単位を含み、前記複数のTBと、各TBについての巡回冗長検査(CRC)とを搬送し、
前記制御情報を使用して前記複数のTBを処理するように構成された回路を備えた、
WTRU。」

第3 拒絶の理由
平成29年10月17日付けの当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうちの理由2の概要は、次のとおりのものである。
「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」であるところ、請求項1に対して下記引用例1、3、7-10が引用されており、主引用例は引用例7である。

引用例1.国際公開第2004/102863号
引用例3.特開2005-57758号公報
引用例7.Nokia, OFDMA Downlink L1/L2 control signaling - text proposal, [online],3GPP TSG RAN WG1 LTE Ad Hoc Meeting R1-060186, インターネット<URL;http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_0601/Docs/R1-060186.zip>,2006年1月19日アップロード
引用例8.Haitao Zheng et al., "Multiple ARQ Processes for MIMO Systems", EURASIP Journal on Applied Signal Processing, Hindawi Publishing co., Cuyahoga falls, OH, US, vol. 5, 2004年5月1日
引用例9.Lucent Technologies, "Signalling Support for Multiple Simultaneous Transmissions to a UE within a TTI", [online], 3GPP TSG-RAN WG1 and WG2 Adhoc on HSDPA, 12A010055, インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/HSDPA_Ad_hoc/R1-R2_Joint_session/Docs/12A010055.zip>,2002年1月28日アップロード
引用例10.Texas Instruments, "Multiplexing of UE Identities in the Shared Control Channel of EUTRA Downlink", [online], 3GPP TSG RAN WG1 Ad Hoc on LTE, R1-060064, インターネット<URL;http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_0601/Docs/R1-060064.zip>、2006年1月19日アップロード

第4 引用例の記載及び引用発明
1 引用例7の記載
当審拒絶理由で引用した「引用例7.Nokia, OFDMA Downlink L1/L2 control signaling - text proposal, [online],3GPP TSG RAN WG1 LTE Ad Hoc Meeting R1-060186, インターネット<URL;http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_0601/Docs/R1-060186.zip>,2006年1月19日アップロード 」(以下「引用例7」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(1) 「Introduction
At the TSG-RAN #30 meeting OFDMA was selected as the downlink multiple access scheme for UTRA LTE. At this stage the lower layer control signalling details for OFDMA DL interface are open apart from some general principles addressed during the RAN WG1 meetings. Some of the aspects considered are:
・ Lower layer control signalling should be located towards the beginning of the subframe to permit fast access to the information and reduced buffering needs. Additionally some benefits from microsleep could be acquired in this case.
・ Lower layer control signalling should be located in the vicinity of downlink common pilot, both temporally and in frequency dimension
・ The overhead of lower layer control signalling must not become exceedingly big so as to seriously impact potential system capacity
RAN WG1 has also discussed the types of L1/L2 control information that would be transmitted in downlink. Table 1 shows one exemplary list from [1].
This document considers the multiplexing of downlink L1/L2 control information, particularly with the general principles stated above in mind.」(1ページ?2ページ2行)
当審訳:
前書き
TSG-RAN#30会議では、OFDMAがUTRA LTEのダウンリンク多元接続方式として選択された。この段階で、OFDMA DLインタフェースのための下位層制御シグナリングの詳細は、RAN WG1会議中に取り上げられたいくつかの一般原則とは別に、決定されていない。考慮されるいくつかの側面は次のとおりである。
・下位層制御シグナリングは、情報への高速アクセスとバッファリングの必要性を低減するために、サブフレームの先頭に配置する必要がある。さらに、この場合、マイクロスリープによるいくつかの利点を得ることができる。
・下位層制御シグナリングは、時間的及び周波数的ディメンションにおいて、ダウンリンク共通パイロットの近くに配置する必要がある。
・下位層制御シグナリングのオーバーヘッドは、潜在的なシステム能力に深刻な影響を与えるように、非常に大きくなってはならない。
RAN WG1は、ダウンリンクで送信されるL1/L2制御情報のタイプについても議論している。表1は[1]からの1つの例示的なリストを示す。
この文書は、ダウンリンクL1/L2制御情報の多重化、特に上記の一般原則を念頭において検討する。

(2) 「7.1.1.2.1 Downlink data multiplexing
Both TDM and FDM are employed to map channel-coded, interleaved, and data-modulated information [Layer 3 information] onto OFDM time/frequency symbols. The OFDM symbols can be organized into a number of resource blocks consisting of a number(M) of consecutive sub-carriers for a number(N) of consecutive OFDM symbols. The granularity of the resource allocation should be able to be matched to the expected minimum payload. It also needs to take channel adaptation in the frequency domain into account.

The frequency and time allocations to map information for a certain UE to resource blocks is determined by the Node B scheduler and may e.g. depend on the frequency-selective CQI(channel-quality indication) reported by the UE to the Node B, see Section 7.1.2.1(time/frequency-domain channel-dependent scheduling). The channel-coding rate and the modulation scheme(possibly different for different resource blocks) are also determined by the Node B scheduler and may also depend on the reported CQI(time/frequency-domain link adaptation).

In addition to block-wise transmission, transmission on non-consecutive(scattered) sub-carriers is also to be supported as a means to maximize frequency diversity.」(3ページ3?15行)
当審訳:
7.1.1.2.1 ダウンリンクデータ多重化
チャネル符号化、インターリーブ及びデータ変調された情報[レイヤ3情報]をOFDM時間/周波数シンボルにマッピングするために、TDM及びFDMの両方が使用される。OFDMシンボルは、N個の連続するOFDMシンボルにわたる、M個の連続するサブキャリアからなる、多数のリソースブロックにまとめることができる。リソース割り当ての粒度は、予想される最小ペイロードに一致させることができるべきである。また、周波数ドメインでのチャネル適応を考慮する必要がある。

特定のUEのための情報をリソースブロックにマッピングするための周波数及び時間の割り当ては、ノードBスケジューラによって決定され、例えば、UEによってノードBに報告される周波数選択性CQI(チャネル品質指示)に依存する(セクション7.1.2.1(時間/周波数ドメインチャネル依存スケジューリング)参照)。チャネル符号化率及び変調方式(おそらく、異なるリソースブロックに対して異なる)も、ノードBスケジューラによって決定され、同様に報告されたCQI(時間/周波数ドメインリンク適応)に依存する。

ブロック単位の送信に加えて、非連続的な(拡散した)サブキャリア上の送信もまた、周波数ダイバーシティを最大にする手段としてサポートされるべきである。

(3) 「7.1.1.2.2 Downlink reference-signal structure
The downlink reference signal(s) can be used for at least
- Downlink-channel-quality measurements
- Downlink channel estimation for coherent demodulation/detection at the UE
- Cell search and initial acquisition
The basic downlink reference-signal structure, consisting of known reference symbols, is illustrated in Figure 7.1.1.2.2-1.

Reference symbols(a.k.a. "First reference symbols") are located in the first or second OFDM symbol of a sub-frame.
Additional reference symbols(a.k.a. "Second reference symbols") may be located in a second OFDM symbol of the sub-frame

」(3ページ16?25行)
当審訳:
7.1.1.2.2 ダウンリンク参照信号構造
ダウンリンク参照信号は、少なくとも以下の目的のために用いられる。
-ダウンリンクチャネル品質測定
-UEにおけるコヒーレントな復調/検出のためのダウンリンクチャネル推定
-セルサーチと初期取得

既知の参照シンボルからなる基本的なダウンリンク参照信号構造を図7.1.1.2.2-1に示す。

参照シンボル(”第1の参照シンボル”)は、サブフレームの第1又は第2のOFDMシンボル内に配置される。
追加の参照シンボル(”第2の参照シンボル”)は、サブフレームの第2のOFDMシンボル内に配置されてもよい。

(図中の説明)
- 周波数ドメインの詳細な参照シンボル密度は将来決定する。(この図では50%)
- 周波数ドメインの第1と第2の参照シンボル間のずれは将来決定する。
- 第1の参照シンボルは代替的にサブフレームの第1のOFDMシンボルに配置されてもよい。
- 第2の参照シンボルの詳細な時間ドメインの位置は将来決定される。

図7.1.1.2.2-1 ベーシック ダウンリンク 参照信号構造(図はサブフレームごとに7OFDMシンボルを仮定している)

(4) 「In the case that Layer 1 downlink control signaling(more specifically signaling or part of the signaling related to downlink and uplink scheduling) is located at the beginning of the corresponding sub-frame(still TBD if this will be the case or if the Layer 1 signaling is to be spread over the sub-frame), it is currently assumed that demodulation of this information could be carried out without using the second reference symbols of the corresponding sub-frame(however, second reference symbols of previous sub-frames may be used if available).

Possible transmission of additional UE-specific downlink reference symbols are to be considered for dynamic beam forming or MIMO

It sould be possible to create multiple mutually orthogonal downlink reference signals.
- To support transmission using multiple TX antennas within one cell
- To allow for orthogonal reference signals between sectors and fixed beams of the same Node B.

Mutual orthogonality between reference signals may be achieved in either the frequency domain(reference symbols of different antennas/sectors/beams transmitted on different OFDM sub carriers within a given OFDM symbol) or in the code domain(reference symbols of different antenna/sectors/beams modulated by mutually orthogonal patterns). Both alternatives are to be considered.

Means to have good correlation properties also between reference signals of cells of different Node B sould be considered.」(4ページ19行?34行)
当審訳:
対応するサブフレームの先頭にレイヤ1ダウンリンク制御シグナリング(特に、ダウンリンク及びアップリンクスケジューリングに関連するシグナリング、又はシグナリングの一部)が配置される場合(このようになるか、又は、レイヤ1シグナリングがサブフレームにわたって分散されるかはいまだ未決定)、現在、この情報の復調は、対応するサブフレームの第2の参照シンボルを使用せずに実行することができると仮定されている(ただし、前のサブフレームでの第2の参照シンボルは、利用可能であれば使用できる)。

動的ビームフォーミング又はMIMOのための、追加のUE特有のダウンリンク参照シンボルの、予測される送信が検討される。

互いに直交する複数のダウンリンク参照信号を生成することが可能でなければならない。
-1つのセル内で複数のTXアンテナを使用する送信をサポートする。
-同じノードBの固定ビーム間、及びセクタ間の直交参照信号を可能にする。

参照信号間の相互直交性は、周波数ドメイン(異なるアンテナ/セクタ/ビームの参照シンボルが、所与のOFDMシンボル内の異なるOFDMサブキャリア上で、送信される)又は、符号ドメイン(異なるアンテナ/セクタ/ビームの参照シンボルが、相互に直交するパターンによって変調される)により達成される。両方の選択肢を考慮する必要がある。

異なるノードBのセルの参照信号間についても、良好な相関特性を得る手段が考慮されるべきである。

(5) 「7.1.1.2.3 Multiplexing of L1/L2 control signaling
There are two types of L1 and L2 control signalling information:
・ Data associated signalling(e.g. shared channel resource allocation, transport format and hybrid ARQ information), which is associated with downlink data transmissions, and
・ Data-non-associated signalling(e.g. ACK/NACK due to uplink transmissions)
Both downlink and uplink resource allocations are indicated by downlink control signalling.

The L1/L2 control signalling channel is located in the first OFDM [and possibly second] symbol of the subframe. This signalling channel is distributed across a pre-determined bandwidth.

Figure 7.1.1.2.3-1 depicts a multiplexing scheme for L1/L2 control signalling, data and pilot.

」(4ページ35行?5ページ)
当審訳:
7.1.1.2.3 L1/L2制御シグナリングの多重化
L1及びL2制御シグナリング情報には2つのタイプがある。
・ダウンリンクデータ送信に関連するデータ関連シグナリング(例えば、共有チャネルリソース割り当て、トランスポートフォーマット及びハイブリッドARQ情報)、及び
・データ非関連シグナリング(例えば、アップリンク送信の結果であるACK/NACK)
ダウンリンク及びアップリングの両方のリソース割り当ては、ダウンリンク制御シグナリングによって示される。

L1/L2制御シグナリングチャネルは、サブフレームの第1のOFDM[場合により、第2の]シンボルに位置する。このシグナリングチャネルは、所定の帯域幅にわたって分布される。
図7.1.1.2.3-1に、L1/L2制御シグナリング、データ、パイロットの多重化方式を示す。

図7.1.1.2.3-1 L1/L2制御シグナリング、データ、パイロットの多重化方式

2 引用発明
(1) 上記1(1)に記載されているように、引用例7は、LTEのダウンリンク多元接続方式として選択されたOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)のダウンリンクL1/L2制御シグナリングについての提案文書であり、OFDMAは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術を用いた多元接続を意味することは技術常識といえる。
そして、上記1(2)の第1段落の記載、上記1(3)の図7.1.1.2.2-1、及び上記1(5)の図7.1.1.2.3-1に示されるように、OFDM技術において、情報は、時間(time)方向及び周波数(frequency)方向に並べられる物理リソースといえる時間/周波数シンボルにマッピングされて伝送される。
また、上記1(5)図7.1.1.2.3-1には、時間(time)方向の長さがサブフレーム(subframe)分の物理リソースを単位として、User A?Eに対して、L1/L2制御シグナリング、データ、パイロットを多重化して伝送する事項が示されている。
そして、ダウンリンクが、ノードBから送信される信号をUEが受信する事項を意味すること、及びUEがダウンリンク信号を受信するための回路を備えることはいずれも技術常識であるから、
引用例7には、「LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソースを受信する回路を備えるUE」が記載されているといえる。

(2) 上記1(1)の「・下位層制御シグナリングは、情報への高速アクセスとバッファリングの必要性を低減するために、サブフレームの先頭に配置する必要がある。」との記載、上記1(4)の「対応するサブフレームの先頭にレイヤ1ダウンリンク制御シグナリング(特に、ダウンリンク及びアップリンクスケジューリングに関連するシグナリング、又はシグナリングの一部)が配置される」との記載、及び、上記1(5)の「L1/L2制御シグナリングチャネルは、サブフレームの第1のOFDM[場合により、第2の]シンボルに位置する。このシグナリングチャネルは、所定の帯域幅にわたって分布される。」との記載、並びに、上記1(5)の図7.1.1.2.3-1を踏まえると、引用例7には、「時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分が、L1/L2制御シグナリングに割り当てられ、また、先頭以外の部分が、L1/L2制御シグナリング以外の情報に割り当てられる」事項が記載されているといえる。

(3) 上記1(3)図7.1.1.2.2-1には、時間(横)方向、及び周波数(縦)方向に並べられた物理リソースにおいて、第1の参照シンボル「R_(1)」及び第2の参照シンボル「R_(2)」が点在するように配置されている事項が示されている。
また、前記図7.1.1.2.2-1の(図中の説明)の「- 第1の参照シンボルは代替的にサブフレームの第1のOFDMシンボルに配置されてもよい。」との記載から、引用例7には、サブフレームの第1のOFDMシンボル、すなわち、サブフレームの先頭部分に第1の参照シンボルが配置される事項が記載されているといえるから、引用例7には、「L1/L2制御シグナリングに割り当てられる、時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分において、第1の参照シンボルが点在し、また、L1/L2制御シグナリング以外の情報に割り当てられる前記物理リソースの先頭以外の部分において、第2の参照シンボルが点在する」事項が記載されているといえる。

(4) 上記1(5)のL1/L2制御シグナリングについての「・ダウンリンクデータ送信に関連するデータ関連シグナリング(例えば、共有チャネルリソース割り当て、トランスポートフォーマット及びハイブリッドARQ情報)」との記載から、UEの回路は「L1/L2制御シグナリングとしてハイブリッドARQ情報を受信し」ているといえる。

(5) 上記1(4)の「動的ビームフォーミング又はMIMOのための、追加のUE特有のダウンリンク基準シンボルの、予測される送信が検討される。」との記載から、UEは、「MIMOを前提としている」といえる。

(6) 上記1(2)の第2段落の記載によると、UEが受信するダウンリンクデータは、報告されたCQIに基づいて、ノードBスケジューラによって決定されたチャネル符号化率及び変調方式により符号化・変調されたものであるから、引用例7には、「受信するダウンリンクデータのチャネル符号化率及び変調方式がノードBスケジューラによって決定される」事項が記載されているといえる。

以上を踏まえると、引用例7には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)と認める。
「MIMOを前提とし、
LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソースを受信する回路を備えるUEであって、
前記時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分が、L1/L2制御シグナリングに割り当てられ、また、先頭以外の部分がL1/L2制御シグナリング以外の情報に割り当てられ、
L1/L2制御シグナリングに割り当てられる、前記時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分において、第1の参照シンボルが点在し、また、L1/L2制御シグナリング以外の情報に割り当てられる前記時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭以外の部分において、第2の参照シンボルが点在し、
前記回路が、L1/L2制御シグナリングとしてハイブリッドARQ情報を受信し、
受信するダウンリンクデータのチャネル符号化率及び変調方式がノードBスケジューラによって決定される
UE。」

3 公知技術
(1) 当審拒絶理由で引用した「引用例1.国際公開第2004/102863号」(以下「引用例1」という。)には以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
ア 「Further, a HS-DSCH (High-Speed Downlink Shared Channel) is preferably operated over a MIMO environment. Assuming each data stream is transmitted through a MIMO transmitter, the MIMO system can be considered as a spatial multiplexing system. In other words, multiple different data streams are simultaneously transmitted via multiple transmit antennas during one TTI (Transmission Time Interval). Currently, HS-DSCH does not consider spatial multiplexing so that a single data stream can be transmitted during one TTI.」(6ページ2?8行)
当審訳:
さらに、HS-DSCH(High-Speed Downlink Shared Channel)が、MIMO環境上で動作することが望ましい。各データストリームがMIMO送信器を通じて伝送されると仮定すると、MIMOシステムは空間多重システムとして考えられる。言い換えれば、多数の異なるデータストリームが1つのTTI(Transmission Time Interval)の期間、多数の伝送アンテナを介して同時に伝送される。現在、HS-DSCHは空間多重を考慮していないため、単一データストリームが1つのTTIの間に伝送できる。

イ 「Further, each transmitter antenna has an independent modulation and coding scheme (mcs). 」
当審訳:
さらに、各送信器アンテナは独立的な変調及びコーディングスキーム(mcs)を有する。

ウ 「Turning next to FIG. 6, which illustrates an alternative arrangement of the process in FIG 3. In this alternative, N transport blocks arrive at the multiplexing chain every TTI, where Ν denotes the number of simultaneously transmitted data streams. Thus, each segmented block has a separate attached CRC, which enables independent retransmission control. Then, a spatial distribution block 310 distributes the received segmented blocks into the N branches, and each segmented block goes through the same multiplexing chain for HS-DSCH as in FIG 3. Further, because only the erroneous segmented block of the transport block (rather than all of the segmented blocks) has to be retransmitted, the retransmission process is efficiently performed. However, the uplink ACK/NACK signal per stream is needed for the retransmission process. From the viewpoint of the CQI definition, a same CQI mapping table can be used for each data stream. In addition, after the spatial distribution block 310, the multiplexing chain can be used in multiple without modifications. However, the amount of information required for the HS-DSCH transmission is increased N times.」(21ページ18行?22ページ7行)
当審訳:
次の図6には、図3のプロセスの代案的な仕組みが図示されている。このような代案において、N伝送ブロックはTTI毎にマルチプレキシングチェーンに到達する。ここで、Nは同時に伝送されたデータストリームの数を表す。したがって、各分割されたブロックは独立な再送制御を可能にする別個の付加CRCを備える。その後、空間分配ブロック310は受信された分割ブロックをNブランチに分配し、各分割されたブロックは図3のように、HS-DSCHに対する同一のマルチプレキシングチェーンを通過する。さらに、伝送ブロックのエラー分割ブロックのみ(全ての分割ブロックではなく)を再送させればよいので、再送プロセスは効率的に遂行される。しかしながら、ストリームごとにアップリンクACK/NACK信号が再送プロセスに必要である。CQI定義の観点において、同一CQIマッピングテーブルを各データストリームに用いることができる。また、空間分配ブロック310の後で、マルチプレキシングチェーンは修正せずに多数回使用できる。しかしながら、HS-DSCH伝送に要求される情報量はN倍増加する。

エ FIG. 6(図6)



(2) 当審拒絶理由で引用した「引用例8.Haitao Zheng et al., "Multiple ARQ Processes for MIMO Systems", EURASIP Journal on Applied Signal Processing, Hindawi Publishing co., Cuyahoga falls, OH, US, vol. 5, 2004年5月1日」(以下「引用例8」という。)には以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
ア 「For per-antenna MIMO encoding architectures, we herein propose to employ multiple ARQ processes, 1 for each substream radiated from 1 transmit antenna or group of antennas. This scheme is independent of the receiver-processing algorithm and only requires that the receiver decodes substreams independently. We refer to this scheme as MIMO multiple ARQ(MMARQ). As shown in Figure 3b, a CRC symbol is appended to each substream. At the receiver, each such substream is decoded and the associated CRC is used to validate the content.」(774ページ右欄11?20行)
当審訳:
アンテナ毎のMIMOエンコーディングアーキテクチャのために、我々は、ここで、1つが、1つの送信アンテナ又はアンテナのグループから放射される、それぞれのサブストリームに対応する、多重ARQプロセスを採用することを提案する。この方式は、受信機が実行するアルゴリズムとは独立し、受信機にサブストリームを独立にデコードすることのみを要求する。我々は、この方式をMIMO多重ARQ(MMARQ)と呼ぶ。図3bに示されるように、CRCシンボルは各サブストリームに付加される。受信機では、それぞれの、そのようなサブストリームが復号され、関連するCRCがコンテンツを検証するために使用される。



当審訳:
(a) MSARQ送信機。 (b)MMARQ送信機。
図3:MSARQとMMARQの送信機構造



当審訳:
図5:MMARQ受信器フローチャート

(3) 引用例1の上記(1)ア、ウ、エの記載、引用例8の上記(2)ア?ウの記載、及び、伝送される多数のデータストリームが受信側の機器によって受信されることが技術常識であることによれば、以下の技術事項は公知技術と認められる。
「MIMO環境上で動作し、1つのTTIの間、多数の伝送アンテナを介して同時に伝送される、各伝送ブロックにCRCが付加された複数の伝送ブロックの各伝送ブロックに対応した複数のストリームを受信する受信側の機器。」

4 周知事項
(1) 当審拒絶理由で引用した「引用例3.特開2005-57758号公報 」(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「【0055】
以下、例として、添付図面を参照しながら本発明が説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明の実施例を説明する前に、HSDPAシステムにおける通信を説明するための概略図である図9が参照される。
【0057】
ダウンリンク伝送に関し、3つのチャネルが使用される。共通パイロットチャネル(CPICH)は、その基地局により取り扱われるセル内の全てのユーザに信号をブロードキャストするために使用され、各ユーザがCPICH信号に基づいてダウンリンクチャネルの品質を測定できるようにする。高速ダウンリンク共用チャネルHS-DSCHは、パケットデータをUEに送信するために使用される。高速共用制御チャネルHS-SCCHは、伝送フォーマット及びリソース関連情報(TFIR)を搬送するために使用される。このIFIRは、例えば8ビットであり、チャネリゼーションコード、MCSレベル及び/又は送信ブロックサイズに関する情報を含む。また、HS-SCCHはHARQ関連情報も搬送する。このHARQ情報は、例えば12ビットであり、HARQプロセス番号、冗長性バージョン、新規データインジケータ及びユーザIDを含む。
【0058】
アップリンク伝送は、高速専用物理制御チャネル(フィードバックチャネル)HS-DPCCHを用いて行なわれる。このチャネルは、チャネル品質インジケータ(CQI)値及びHARQ確認応答(ACK/NACK)を送信するために使用される。」

(2) 当審拒絶理由で引用した「引用例9.Lucent Technologies, "Signalling Support for Multiple Simultaneous Transmissions to a UE within a TTI", [online], 3GPP TSG-RAN WG1 and WG2 Adhoc on HSDPA, 12A010055, インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/HSDPA_Ad_hoc/R1-R2_Joint_session/Docs/12A010055.zip>,2002年1月28日アップロード」(以下「引用例9」という。)には次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「Proposed Changes to TR 25.858
5.1 Transport block concatenation and code block segmentation
(省略)
5.2 CRC Attachment
(省略)
7.2 Physical layer aspects of Hybrid ARQ
The following signalling is needed to support Hybrid ARQ. The details of signalling are described in Section 9.

Downlink Signaling

The HARQ information includes the Hybrid ARQ process identifier in the corresponding HS-DSCH TTI. The HARQ information also includes information about the redundancy version of the transmission in the corresponding HS-DSCH TTI」(3ページ下から5行?4ページ9行)
当審訳:
TR 25.858への提案された変更
5.1 伝送ブロック連結とコードブロック・セグメンテーション
(省略)
5.2 CRCアタッチメント
(省略)
7.2 ハイブリッドARQの物理層側面
次のシグナリングがハイブリッドARQをサポートするために必要となる。シグナリングの詳細はセクション9で説明される。

ダウンリンク・シグナリング

HARQ情報は、関連するHS-DSCH TTI中のハイブリッドARQプロセス識別子を含む。HARQ情報は、関連するHS-DSH TTI中の、伝送の重複バージョンも含む。


(3) 当審拒絶理由で引用した「引用例10.Texas Instruments, "Multiplexing of UE Identities in the Shared Control Channel of EUTRA Downlink", [online], 3GPP TSG RAN WG1 Ad Hoc on LTE, R1-060064, インターネット<URL;http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_0601/Docs/R1-060064.zip>、2006年1月19日アップロード 」(以下「引用例10」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「Similarly to HSDPA, for both EUTRA DL and UL scheduling, the SCCH may comprise of two parts for each UE. For example, one part can be for the channel dependent scheduling and the modulation scheme and the other for the transport block size and the HARQ.
(中略)
The second part is expected to have very similar signaling bits requirements as the corresponding SCCH part in HSDPA where 6 bits are needed for the transport block size, 3 bits for the HARQ process, 3 bits for the redundancy version and 1 bit for the new data indicator. 」(2ページ6?16行)
当審訳:
HSDPAと同様に、EUTRA DLとULスケジューリング両方のために、SCCHはそれぞれのUEのための2つの部分から構成されてもよい。例えば、一の部分はチャネル依存スケジューリングと変調方式のためのもので、他は伝送ブロックサイズとHARQのためのものにできる。
(中略)
2番目の部分は、トランスポートブロックサイズに6ビット、HARQプロセスに3ビット、重複バージョンに3ビット、新しいデータの指示子として1ビットが必要である、HSDPAのSCCH部分に対応したような、同様のシグナリングビット要求を持つことが期待される。

(4)「3GPP TR25.848 V4.0.0(2001-03)、3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Physical layer aspects of UTRA High Speed Downlink Packet Access (Release 4)、[online] インターネット<URL;http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.848/25848-400.zip>、18ページ、2001年4月5日アップロード」には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「6.6.2 Associated Downlink signaling
Associated downlink physical signalling may include, but may not be restricted to:
- identifying the UE(s) to which HSDPA data is transmitted in a given HSDPA TTI.
- identifying which HSDPA codes are assigned to a UE in a given HSDPA TTI(if sharing in the code domain, i.e. code multiplexing is to be supported for HSDPA transmission)
- identifying modulation and coding scheme used for HSDPA transmission in a given HSDPA TTI.」(18ページ15?20行)
当審訳:
6.2.2 関連ダウンリンクシグナリング
関連するダウンリンク物理シグナリングは、以下を含むことができるが、これに限定されない。
- 所与のHSDPA TTIにおいて、HSDPAデータが送信されるUEを識別する。
- 所与のHSDPA TTIにおいて、どのHSDPAコードがUEに割り当てられているかを識別する(コードドメイン内で共有する場合、例えば、HSDPA送信のためにコード多重化がサポートされる場合)
- 所与のHSDPA TTIにおけるHSDPA送信に使用される変調及び符号化方式を識別する。

(5) 上記3(1)イ、上記(1)、(4)の記載、及び上記(1)?(3)の記載から、「制御情報に変調及び符号化方式(MCS)を含めること」、及び「制御情報のHARQ情報として重複バージョンを含めること」はいずれも周知事項と認める。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
1 LTEの属する無線通信の技術分野において、UEは、ダウンリンクデータを受信し、アップリンクデータを送信する機能を有しているから、引用発明の「UE」は、「無線送信/受信ユニット(WTRU)」といえる。
また、引用発明の「LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソース」は、直交周波数分割多元(OFDM)信号上の「ロングタームエヴォルーション(LTE)物理層サブフレーム」といえるから、引用発明の「LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソースを受信する回路を備える」UEは、「直交周波数分割多元(OFDM)信号上でロングタームエヴォルーション(LTE)物理層サブフレームを受信するように構成された回路」を備えたWTRUである点で本願発明と一致する。

2 引用発明の「LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソース」は、上記第4 1(3)の図7.1.1.2.2-1から明らかなように、時間(横)方向及び周波数(縦)方向に並べられた単位物理リソースから構成されているから、「複数の時間領域単位および複数の周波数領域単位に分割されて」いるといえる点で本願発明と一致する。

3 引用発明の「LTEに選択された、時間方向の長さがサブフレーム分のOFDM技術における物理リソース」はLTE物理層サブフレームといえ、時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分は、L1/L2制御シグナリングに割り当てられているから、制御部といえ、また、先頭以外の部分はデータ部といえるから、引用発明は、「LTE物理層サブフレームは、複数の時間領域および周波数領域単位を含むデータ部と、複数の時間領域および周波数領域単位を含む制御部と、前記制御部の時間領域および周波数領域単位および前記データ部の時間領域および周波数領域単位に点在された参照信号とを含む」といえる点で本願発明と一致する。

4 MIMOは、所定の送信時間間隔において、複数の空間ストリームを介してデータを同時に送受信する技術であるから、MIMOを前提とした引用発明のUEが備える回路は、受信するデータが複数の伝送ブロックであるとは特定されていないものの、「1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介してデータが同時に受信される」点で本願発明と共通する。」

5 引用発明の、制御部といえる、L1/L2制御シグナリングに割り当てられた前記時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分は、「複数の時間領域単位のうちの少なくとも1つの第1の時間領域単位」といえ、また、データ部といえる先頭以外の部分は、「複数の時間領域単位のうちの他の時間領域単位」といえるから、引用発明は「制御部は、複数の時間領域単位のうちの少なくとも1つの第1の時間領域単位を含み、」また、「データ部は、前記複数の時間領域単位のうちの他の時間領域単位を含み、」といえる点で本願発明と一致する。

6 引用発明のUEが備える回路が受信する「L1/L2制御シグナリングとしてハイブリッドARQ情報」は、受信したデータに対してHARQ処理を行うためのHARQ情報といえるから、引用発明の、制御部といえる、L1/L2制御シグナリングに割り当てられた前記時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭部分は、受信するデータが複数のTBの各TBとは特定されておらず、またHARQ情報が重複バージョンを含む点が特定されていないものの、「データのための制御情報を搬送し、前記制御情報は、データのためのHARQ情報を含」む点で本願発明と共通し、また、引用発明のUEが備える回路は、処理の対象となるデータが複数のTBと特定されていないものの、「前記制御情報を使用して前記データを処理するように構成され」ている点で本願発明と共通する。

7 ハイブリッドARQ処理において、伝送されるデータにCRCが付加される必要があることは技術常識であるから、「回路が、L1/L2制御シグナリングとしてハイブリッドARQ情報を受信」する引用発明において、伝送されるデータにはCRCが付加されたものといえ、引用発明のデータ部といえる、L1/L2制御シグナリング以外の情報に割り当てられた時間方向の長さがサブフレーム分の物理リソースの先頭以外の部分は、データが複数のTBと特定されていないものの、「データと、データについての巡回冗長検査(CRC)とを搬送し、」といえる点で本願発明と共通する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、
直交周波数分割多元(OFDM)信号上でロングタームエヴォルーション(LTE)物理層サブフレームを受信するように構成された回路であり、前記LTE物理層サブフレームは複数の時間領域単位および複数の周波数領域単位に分割されており、前記LTE物理層サブフレームは、複数の時間領域および周波数領域単位を含むデータ部と、複数の時間領域および周波数領域単位を含む制御部と、前記制御部の時間領域および周波数領域単位および前記データ部の時間領域および周波数領域単位に点在された参照信号とを含み、1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介してデータが同時に受信される、前記回路を備え、
前記制御部は、前記複数の時間領域単位のうちの少なくとも1つの第1の時間領域単位を含み、データのための制御情報を搬送し、
前記制御情報は、データについてのHARQ情報を含み、
前記データ部は、前記複数の時間領域単位のうちの他の時間領域単位を含み、前記データと、データについての巡回冗長検査(CRC)とを搬送し、
前記制御情報を使用して前記データを処理するように構成された回路を備えた、
WTRU。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願発明が備える回路は、1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介して同時に受信するデータが「複数の伝送ブロック(TB)」であり、
制御部で搬送される制御情報が「複数のTBの各TB」のためのものであり、「各TBについての変調および符号化方式(MCS)」を含み、
制御情報が含むHARQ情報について、「各TBについてのHARQ情報は重複バージョン」を含み、
データ部で搬送されるデータと、データについての巡回情報検査(CRC)が「複数のTB」と「各TBについての巡回冗長検査(CRC)」であり、
制御情報を使用した処理の対象が「複数のTB」であるように構成された回路であるのに対し、
引用発明が備える回路は、MIMOを前提としているものの、受信するダウンリンクデータについてMIMOに関連する事項が明示されておらず、本願発明の複数のTBに係る上記発明特定事項を有さず、また、引用発明において、受信するダウンリンクデータのチャネル符号化率及び変調方式がノードBスケジューラによって決定されるものの、L1/L2制御シグナリングが「変調および符号化方式(MCS)」を含むと明示されておらず、また、引用発明においてL1/L2制御シグナリングとしてハイブリッドARQ情報を受信しているものの、HARQ情報に「重複バージョン」を含むと明示されていない点。

第6 判断
MIMOを前提とする引用発明に対して、MIMO環境上で動作し、1つのTTIの間、多数の伝送アンテナを介して同時に伝送される、複数のストリームを受信する上記第4 3(3)で認定した公知技術は、共通する技術分野に属するといえる。
してみると、引用発明に、共通する技術分野に属する「各伝送ブロックにCRCが付加された複数の伝送ブロックの各伝送ブロックに対応した複数のストリームを受信する」公知技術を適用し、
引用発明が備える回路が、1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介して同時に受信するデータを「複数の伝送ブロック(TB)」とし、
制御部で搬送される制御情報を「複数のTBの各TB」のためのものとし、
データ部で搬送されるデータと、データについての巡回情報検査(CRC)を「複数のTB」と「各TBについての巡回冗長検査(CRC)」とし、
制御情報を使用した処理の対象を「複数のTB」とするように構成された回路とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。

また、上記第4 4(5)で認定したように、制御情報に変調及び符号化方式(MCS)を含めること、及び、制御情報のHARQ情報として重複バージョンを含めることはいずれも当業者が任意に採用し得る周知事項であるから、引用発明に公知技術を適用し、1つの送信時間間隔(TTI)において複数の空間ストリームを介して複数の伝送ブロック(TB)が同時に受信されるようにする際に、制御部で搬送される制御情報に「各TBについての変調および符号化方式(MCS)」を含め、制御情報が含むHARQ情報について、「各TBについてのHARQ情報は重複バージョン」を含むようにすることは、当業者が適宜なし得る事項といえる。

したがって、本願発明は、引用発明、並びに、公知技術、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-08 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2013-106288(P2013-106288)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 松永 稔
山本 章裕
発明の名称 送信時間間隔ごとに複数のハイブリッド自動再送要求プロセスをサポートする方法およびシステム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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