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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1345257
審判番号 不服2017-7777  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-30 
確定日 2018-10-10 
事件の表示 特願2015- 62796「高品質インクジェット印刷用の光学増白剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-147421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-62796号(以下「本件出願」という。)は、2009年(平成21年)11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年(平成20年)11月27日 欧州特許庁、2009年(平成21年)7月2日 欧州特許庁)にされたものとみなされた特願2011-537879号の一部を、平成27年3月25日に新たな外国語書面出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 1月25日付け:拒絶理由通知書
平成28年 8月 2日付け:意見書、手続補正書
平成29年 1月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 5月30日付け:審判請求書、手続補正書
平成30年 1月30日付け:上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年5月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 インクジェット印刷用基材を光学増白させるサイジング組成物であって、
(a)少なくとも1つのバインダー
(b)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸マグネシウム、および前記化合物の混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの2価金属塩と;
(c)水、および
(d)少なくとも1つの式(1)の光学増白剤を含むサイジング組成物。
【化1】

(式中、
MおよびXは、互いに同一でも異なっていても良く、互いに独立に、水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、C1?C4直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で一置換、二置換、若しくは三置換されたアンモニウム、C1?C4直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル基で一置換、二置換、若しくは三置換されたアンモニウム、または前記化合物の混合物からなる群から選択され、
nは0?6である。)」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は、当合議体が付したものであり、補正箇所を示す。
「 インクジェット印刷用基材を光学増白させるサイジング組成物であって、
(a)少なくとも1つのバインダー
(b)塩化カルシウム;
(c)水、および
(d)少なくとも1つの式(1)の光学増白剤を含むサイジング組成物。
【化1】

(式中、
MはNaであり、
XはK又はトリエタノールアミンであり、
nは0?5.5である。)」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)のサイジング組成物における「(b)」、「M」及び「X」が取り得る選択肢を減じるとともに、「n」が取り得る数値範囲を狭めて、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)とするものである。そうしてみると、本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する補正である。また、本件出願の発明の詳細な説明の【0001】及び【0010】の記載からみて、本願発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるといえる。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)補正補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である、特開2002-348494号公報(平成14年12月4日出願公開。以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【請求項2】遊離酸の形で下記式(2)
【化2】

(式中、スルホン酸基に対するカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属のカチオン又はアンモニウムイオンである)で表される蛍光増白剤を10?40質量%含有し、無機塩の含有量が1.1?10質量%であることを特徴とする水性液状組成物。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は蛍光増白剤の水性液状組成物及び水溶液状組成物とその使用方法に関する。更に詳しくは特定の構造を有する蛍光増白剤を含有する低温貯蔵安定性及び高温貯蔵安定性に優れる水性液状組成物及び水溶液状組成物とそれを用いる蛍光増白方法に関する。」

ウ 「【0005】また、水溶性の色素を用いたインクジェットプリンターのインクにはアニオン性の色素が用いられている為、高品位のインクジェットプリンター用の記録用紙では、用紙上でのインクのにじみをおさえるために記録用紙製造時にカチオン性のインク定着剤や耐水化剤等を用いることが多い。更に記録用紙には画像の鮮明な発色性が求められるため高品位の白色度も要求される。このため、各種の蛍光増白剤を用いて高白度に染色された記録用紙が製造される。このとき用いられる蛍光増白剤は、製造過程の特性上アニオン性の水溶性蛍光増白剤が多く用いられる。しかしながら、前述したカチオン性定着剤とアニオン性の蛍光増白剤を同時に用いると、溶液中でインク定着剤と蛍光増白剤が結合するため水に不溶化し、結晶が析出したり、また、染色時に要求される高白度が得られない現象が起きるという欠点があった。
【0006】上記したように、紙、パルプ、木綿等のセルロースを蛍光増白剤増白するのに使用されるスチルベン誘導体を、蛍光増白剤として含む安定な濃厚水溶液は何れも脱塩などのために余計な工程を含まなければ得ることができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】紙、パルプ、木綿等のセルロースの蛍光増白剤による染色において、低温及び高温での貯蔵安定性に優れ、且つ増白効果に優れた液状組成物の開発及び、インクの定着性、耐水性、白色度に優れたインクジェットプリンター用の記録用紙の蛍光増白方法が望まれていた。」

エ 「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物につき詳細に説明する。化合物式(1)及び化合物式(2)の蛍光増白剤はすでにベルギー特許第719065号公報にその構造が開示されている。
【0015】しかしながら、前記式(1)及び(2)で表される蛍光増白剤は水溶液中での安定性が高く、他の類似する構造の蛍光増白剤を用いて水性液状組成物を調製するにあたって必要となる無機塩の除去、アルカノールアミン類、4級アンモニウム塩類等の添加をすることなく安定な水性液状組成物及び水溶液状組成物に調製することができる。前記式(1)及び(2)において、スルホン酸基に対応するカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属のカチオン又はアンモニウムイオンを表すが、リチウムイオン、ナトリウムイオンが好ましい。
【0016】本発明の水性液状組成物中の前記式(1)で表される蛍光増白剤濃度は、10?40質量%、好ましくは10?20質量%程度である。」

オ 「【0019】これらの方法によって得られた式(1)の蛍光増白剤の反応液は、塩酸、硫酸、硝酸等によって、酸析し遊離酸の結晶として取り出したり、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類によって塩析することによって、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の結晶として取り出すことができる。
【0020】得られた式(1)で表される蛍光増白剤の遊離酸を所望の量の水酸化ナトリウムとともに水に溶解するか、得られた式(1)で表される蛍光増白剤のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を水に溶解することによって本発明の蛍光増白剤の水性液状組成物及び水溶液状組成物が得られる。または、得られた反応液をそのまま、もしくは濃縮することによっても本発明の蛍光増白剤の水性液状組成物及び水溶液状組成物が得られる。
【0021】また、本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物中の塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩の含有量は、1.1?10質量%である。無機塩の含有量の目安は塩化ナトリウム,硫酸ナトリウムの総含有量で表す。塩化ナトリウムの含有量は塩素アニオンを硝酸銀による滴定、もしくは、イオンクロマトグラフィーによって測定し、塩化ナトリウムに換算した量である。硫酸ナトリウムの含有量は硫酸アニオンをイオンクロマトグラフィーによって測定し、硫酸ナトリウムに換算した量である。水性液状組成物及び水溶液状組成物中の無機塩含有量が10質量%を越えると染料の結晶が析出してくる為、貯蔵安定性が悪くなるので好ましくないが、本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物は、上記範囲の無機塩含有量であれば、組成物中に無機塩が存在していても安定性が高く、結晶を析出することがない。
【0022】本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物はセルロース系材料の染色に適している。セルロース系材料としては、紙、パルプ、木綿等が挙げられるが、そのうち、紙、パルプの着色法としては、パルプの叩解後、抄紙されるまでの工程で蛍光増白剤を添加して着色する内添法と、抄紙後のサイズプレス工程でサイズプレス液に蛍光増白剤を添加する外添法に大別されるが、その他紙の表面に蛍光増白剤、無機白色顔料、バインダー等から調整された塗工液をオーバーコーティングする方法等もある。本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物はいずれの方法にも適用可能である。」

カ 「【0024】外添法のサイズプレスにおいては、まずパルプをパルパー、リファイナー等によって所定の叩解度に叩解してパルプスラリーとなし、通常の填料、サイズ剤、硫酸バンド、定着剤等を適宜添加したあと常法により抄紙を行う。その後、シリンダードライヤーで乾燥を行う工程において多数(通常20?60本)配置されたシリンダードライヤーの中間部に配置されたサイズプレス機により、本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物を含有したサイズプレス塗工液を塗工し、以下乾燥することによって蛍光増白された紙が得られる。前述におけるサイズプレス塗工液は本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物と澱粉、PVA、CMC、表面サイズ剤、水等を適宜混合して調整されるものであり、サイズプレス塗工液中のこの水性液状組成物及び水溶液状組成物の含有量は通常0.01?6.0%(純分量)であり、サイズプレス塗工液の塗工量は通常乾燥乾燥抄造紙あたり0.5?3g/m^(2)(乾燥質量)である。
【0025】外添法のオーバーコーティングにおいては、まずパルプをパルパー、リファイナー等によって所定の叩解度に叩解してパルプスラリーとなし、通常の填料、サイズ剤、硫酸バンド、定着剤等を適宜添加したあと常法により抄紙を行う。作製された紙の表面に通常白色無機顔料100質量部に対して通常接着剤5?30質量部、本発明の水性液状組成物及び水溶液状組成物0.05?10質量部、分散剤0.1?0.5質量部からなる混合物中の固形物が40?70質量%になるように水を加えてコート液(塗工液)を調製し、これをコーターやゲートロールで通常5?40g/m^(2)(乾燥質量)になるように塗工し通常90?130℃で例えば熱風乾燥機で乾燥して蛍光増白された紙を得る。この場合、コート液に所望によりポリアミド-尿素系樹脂、メラミン系樹脂の耐水化剤、防腐剤、消泡剤を加えることができる。又接着剤としては通常変性澱粉(酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉等が例示される)とスチレン-ブタジエン共重合物との混合物(例えば変性澱粉、スチレン-ブタジエン共重合物=1?6:4?9(質量比)の混合物)、ポリビニルアルコール等が用いられる。又白色無機顔料としてはクレー、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、無定形シリカゲル等が例示されこれらは併用して用いてもよい。更に分散剤としてはアクリル系重合物、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が常法により使用される。」

キ 「【0027】用いうるカチオン性のインク定着剤としては高級脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩型の化合物、第2級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、カチオン性ポリマー化合物、表面がカチオン性を帯びた無機粒子などが挙げられる。高級脂肪族アミンとしては1級?3級アミン塩型の化合物、具体的にはラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等があげられ、第4級アンモニウム塩型の化合物としてはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等があり、さらにはピリジニウム塩型の化合物、具体的にはセチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等があげられ、イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2-ヘプタデセニル-ヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。第2級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物としてはジヒドロキシエチルステアリルアミンが挙げられる。」

ク 「【0030】本発明の水性液状組成物は、無機塩の除去、溶液安定性を高める低級アルカノールアミンや低級アルキル4級アンモニウム塩への変換、尿素などの可溶化剤の添加などをすることなく、合成時生成した無機塩の共存下でかつ合成されたナトリウム塩などのままで低温および高温での貯蔵安定性に優れている、また、本発明の水性液状組成物によって蛍光増白された紙はクエンティング現象を起こさず又、紙質やサイズプレス液、コート液の組成変化の影響を受け難く優れた白度を示す。更にインクジェットプリンター用の記録用紙に通常用いられるカチオン性のインク定着剤や耐水化剤と併用しても優れた白色度が得られる。」

ケ 「【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】(合成例及び水性液状組成物の貯蔵安定性試験)
実施例1
20質量部の塩化シアヌールを80質量部の水と40質量部の氷と0.1質量部のノニオン系の分散剤を用いて分散する。この分散液に32.7質量部のアニリン-2,5-ジスルホン酸を加える。温度を5℃まで氷を加えて冷却し、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ちながら温度を5.0から25℃に3時間かけて上げていった。この溶液に19.5質量部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を水酸化ナトリウムによってpHを9.5から10.5になるように溶解した水溶液(130質量部)を3時間かけて滴下した。その間、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ち、温度は35から50℃に徐々に上げていった。この溶液に18質量部のジ-2-プロパノールアミンを加え水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを8.5から9.0に保ちながら80℃にて3時間反応した。得られた反応液に塩酸を加えてpH0.6とし、沈殿してきた結晶を濾過して前記式(2)で表される化合物の遊離酸(M=H)を得た。この水を含む結晶50質量部に水を加え、水酸化ナトリウムによってpHを8.5に調整し、前記式(2)で表される化合物のナトリウム塩を15質量%含有する本発明の水性液状組成物を得た。この組成物中には無機塩を1.8質量%含有していたが、このものを-5℃、40℃にて2ヶ月間貯蔵した後、蛍光増白剤の結晶を析出することなく安定な溶解状態を保った。(水中のλmax=348nm)
【0033】実施例2
実施例1にて得られた反応液を50℃に冷却し、塩化ナトリウムを80質量部を加えて沈殿してきた結晶を濾過して前記式(2)で表される化合物のナトリウム塩(M=Na)を得た。この水を含む結晶50質量部に水を加え、前記式(2)で表される化合物のナトリウム塩を20質量%含有する本発明の水性液状組成物を得た。この組成物中には無機塩を2.0質量%含有していたが、このものを-5℃、40℃にて2ヶ月間貯蔵した後、蛍光増白剤の結晶を析出することなく安定な溶解状態を保った。
【0034】実施例3
実施例1にて得られた反応液中には、式(2)で表される化合物のナトリウム塩(M=Na)を15質量%含有している。この反応液中には無機塩を4.5質量%含有していたが、このものを-5℃、40℃にて2ヶ月間貯蔵した後、蛍光増白剤の結晶を析出することなく安定な溶解状態を保った。」

コ 「【0040】(染色例:外添法オーバーコーティング)
実施例4
実施例1で得られた水性液状組成物20部にクレー800部、重質炭酸カルシウム200部、アクリル系分散剤(Kayacryl Resin C-220N、日本化薬株式会社製)3部、リン酸エステル化澱粉(MS-4600 日本食品加工株式会社製)50部、ラテックス(スチレン-ブタジエン共重合物 L-1622 旭化成工業株式会社製)120部、耐水化剤(Sumirez Resin 636、住友化学株式会社製)4部からなる混合物に、水を加えて固形物が55%になるように調整したコート液を作製し、上質紙に塗布し、120℃で乾燥して分光白色度測色計(SC-10W:スガ試験機株式会社製)を用いて測色した結果を表-1に示す。尚、白色度は、JIS P 8148に準じて求めた。」

サ 「【0045】(染色例:外添法サイズプレス)
実施例5
実施例1で得られた水性液状組成物20部と3%酸化澱粉(MS-3800日本食品加工株式会社製)976部とからなる水溶液にアニオン系表面サイズ剤(ポリマロン382 荒川化学工業製)4部を加えた液をサイズ塗工液とする。この液をサイズプレス機に送り、ステキヒトサイズ度7秒の弱サイズ紙に塗布し、65℃から70℃で乾燥して蛍光増白された紙を分光白色度測色計(SC-10W:スガ試験機株式会社製)を用いて測色した結果を表-2に示す。」

シ 「【0056】
【発明の効果】式(1)で表される蛍光増白剤の水性液状組成物は、無機塩の除去及び溶液安定性を高める低級アルカノールアミンや低級アルキル4級アンモニウム塩への変換、尿素などの可溶化剤の添加などをすることなく低温および高温での貯蔵安定性に優れている。即ち、本発明の水性液状組成物は、合成時生成した無機塩の共存下においても式(1)の化合物を高濃度に含む安定な水性液状組成物であり、長期間に渡って安定である。従来のスチルベン誘導体を高濃度で含む蛍光増白剤に比して、容易に製造することができ、また、紙、パルプ、木綿等のセルロースの蛍光増白方法において、優れた増白効果を示し、特にインク受容紙に用いられるインク定着剤の、ポリマーの第4級アンモニウム塩等と併用しても蛍光増白力が優れており、蛍光増白剤として極めて有用である。従って工業的価値は極めて高い。」

(3)引用発明
上記(2)から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明A」及び「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

ア 引用発明A
引用文献の段落【0032】には、【請求項2】に記載された水性液状組成物の実施例として、実施例1が開示されている。また、引用文献の段落【0045】には、実施例1の水性液状組成物を含むサイズ塗工液を用いた、外添法サイズプレスの実施例として、実施例5が開示されている。
ここで、実施例1における「下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩」とは、式中のスルホン酸基に対するカチオンがナトリウムイオンであることを意味することは明らかである。
そうしてみると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されている。
「 20質量部の塩化シアヌールを80質量部の水と40質量部の氷と0.1質量部のノニオン系の分散剤を用いて分散し、この分散液に32.7質量部のアニリン-2,5-ジスルホン酸を加え、温度を5℃まで氷を加えて冷却し、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ちながら温度を5.0から25℃に3時間かけて上げていき、この溶液に19.5質量部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を水酸化ナトリウムによってpHを9.5から10.5になるように溶解した水溶液(130質量部)を3時間かけて滴下し、その間、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ち、温度は35から50℃に徐々に上げていき、この溶液に18質量部のジ-2-プロパノールアミンを加え水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを8.5から9.0に保ちながら80℃にて3時間反応し、得られた反応液に塩酸を加えてpH0.6とし、沈殿してきた結晶を濾過して下記式(2)で表される化合物の遊離酸(M=H)を得、この水を含む結晶50質量部に水を加え、水酸化ナトリウムによってpHを8.5に調整し、下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩を含有する水性液状組成物を得、
前記水性液状組成物20部と3%酸化澱粉(MS-3800日本食品加工株式会社製)976部とからなる水溶液にアニオン系表面サイズ剤(ポリマロン382 荒川化学工業製)4部を加えて得られる、外添法サイズプレスに用いるサイズ塗工液。
【化2】

(式中、スルホン酸基に対するカチオンは、ナトリウムイオンである)」

イ 引用発明B
引用文献の段落【0032】には、【請求項2】に記載された水性液状組成物の実施例として、実施例1が開示されている。また、引用文献の段落【0040】には、実施例1の水性液状組成物を含むコート液を用いた、外添法オーバーコーティングの実施例として、実施例4が開示されている。
ここで、実施例1における「下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩」とは、式中のスルホン酸基に対するカチオンがナトリウムイオンであることを意味することは明らかである。
そうしてみると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されている。
「 20質量部の塩化シアヌールを80質量部の水と40質量部の氷と0.1質量部のノニオン系の分散剤を用いて分散し、この分散液に32.7質量部のアニリン-2,5-ジスルホン酸を加え、温度を5℃まで氷を加えて冷却し、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ちながら温度を5.0から25℃に3時間かけて上げていき、この溶液に19.5質量部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を水酸化ナトリウムによってpHを9.5から10.5になるように溶解した水溶液(130質量部)を3時間かけて滴下し、その間、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ち、温度は35から50℃に徐々に上げていき、この溶液に18質量部のジ-2-プロパノールアミンを加え水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを8.5から9.0に保ちながら80℃にて3時間反応し、得られた反応液に塩酸を加えてpH0.6とし、沈殿してきた結晶を濾過して下記式(2)で表される化合物の遊離酸(M=H)を得、この水を含む結晶50質量部に水を加え、水酸化ナトリウムによってpHを8.5に調整し、下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩を含有する水性液状組成物を得、
前記水性液状組成物20部にクレー800部、重質炭酸カルシウム200部、アクリル系分散剤(Kayacryl Resin C-220N、日本化薬株式会社製)3部、リン酸エステル化澱粉(MS-4600 日本食品加工株式会社製)50部、ラテックス(スチレン-ブタジエン共重合物 L-1622 旭化成工業株式会社製)120部、耐水化剤(Sumirez Resin 636、住友化学株式会社製)4部からなる混合物に、水を加えて固形物が55%になるように調整して得られる、外添法オーバーコーティングに用いられるコート液。
【化2】

(式中、スルホン酸基に対するカチオンは、ナトリウムイオンである)」

(4)引用発明Aとの対比及び判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明Aを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)基材を光学増白させるサイジング組成物
引用発明Aは、「水性液状組成物20部と3%酸化澱粉(MS-3800日本食品加工株式会社製)976部とからなる水溶液にアニオン系表面サイズ剤(ポリマロン382 荒川化学工業製)4部を加えて得られる、外添法サイズプレスに用いるサイズ塗工液」である。また、引用発明Aは、「式(2)で表される化合物のナトリウム塩を含有する」。ここで、「式(2)で表される化合物」が、紙を光学増白させることは、技術的にみて明らかである(引用文献の【0045】?【0048】の記載からみても、明らかである)。
そうしてみると、引用発明Aの「サイズ塗工液」は、紙を光学増白させるサイズ用組成物ということができる。また、本件補正発明でいう「基材」は、事実上、「紙」である。
したがって、引用発明Aの「サイズ塗工液」は、本件補正発明の「サイジング組成物」に相当する。また、引用発明Aの「サイズ塗工液」は、本件補正発明の「サイジング組成物」における「インクジェット印刷用基材を光学増白させる」という構成のうち、「基材を光学増白させる」という構成を満たすものである。

(イ)バインダー
引用発明Aの「サイズ塗工液」は、「酸化澱粉」を含み、技術常識を考慮すると、これは、本件補正発明の「(a)少なくとも1つのバインダー」に相当する。

(ウ)水
引用発明Aの「サイズ塗工液」は、「水性液状組成物20部と3%酸化澱粉(MS-3800日本食品加工株式会社製)976部とからなる水溶液にアニオン系表面サイズ剤(ポリマロン382 荒川化学工業製)4部を加えた」ものであるから、本件補正発明と同様に、「(c)水」を含む。

(エ)式(1)の光学増白剤
引用発明Aの「式(2)で表される化合物」は、上記(ア)で述べたとおり、「光学増白剤」であり、引用発明Aの「式(2)で表される化合物」と本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は「光学増白剤」である点で一致する。
また、引用発明Aの「式(2)で表される化合物」は、「スルホン酸基に対するカチオンは、ナトリウムのカチオンであ」って、下記式(1’)において、nを6としたものに該当する。

(式中、MはNaであり、XはK又はトリエタノールアミンである。)
一方、本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、前記式(1’)において、nを0?5.5としたものに相当する。
そうしてみると、引用発明Aと「式(2)ので表される化合物」と本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、前記式(1’)の化学構造を有する点で共通する。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。

(ア)本件補正発明と引用発明Aは、次の構成で一致する。
【一致点】
「 基材を光学増白させるサイジング組成物であって、
(a)少なくとも1つのバインダー
(c)水、および
(d)少なくとも1つの式(1’)の光学増白剤を含むサイジング組成物。


(式中、MはNaであり、XはK又はトリエタノールアミンである。)

(イ)本件補正発明と引用発明Aは、次の点で相違する。
【相違点1】
本件補正発明の「サイジング組成物」は、「インクジェット印刷用」基材を光学増白させるものであるのに対し、引用発明Aの「サイズ塗工液」は、「インジェット印刷用」であることが特定されていない点。

【相違点2】
本件補正発明は、「(b)塩化カルシウム」を含むのに対し、引用発明Aは「(b)塩化カルシウム」を含まない点。

【相違点3】
本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、式(1’)中、「nは0?5.5である」のに対し、引用発明Aの「式(2)で表される化合物」は、式(1’)中、nは6である点。

ウ 判断
以下、相違点1-3について検討する。

(ア)相違点1について
引用文献の【0007】には、「インクジェットプリンター用の記録用紙の蛍光増白剤が望まれていた」ことが記載されており、また【0056】には「従来のスチルベン誘導体を高濃度で含む蛍光増白剤に比して、容易に製造することができ、また、紙、パルプ、木綿等のセルロースの蛍光増白方法において、優れた増白効果を示し、特にインク受容紙に用いられるインク定着剤の、ポリマーの第4級アンモニウム塩等と併用しても蛍光増白力が優れており、蛍光増白剤として極めて有用である。従って工業的価値は極めて高い。」ことが記載されている。
ここで、上記「インクジェットプリンター用の記録用紙」は技術的にみて本件補正発明の「インクジェット印刷用基材」に相当する。
そうしてみると、「インクジェット印刷用」の点は、本件補正発明の「サイジング組成物」と引用発明Aの「サイズ塗工液」の間に物としての相違をもたらすものではないから、相違点1は、相違点ではない。少なくとも、当業者が、引用発明Aの「サイズ塗工液」を「インクジェット印刷用」の用途のものとすることは、引用文献の上記記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

(イ)相違点2について
上記(ア)に記載したように、「インクジェット印刷用」の点は、本件補正発明の「サイジング組成物」と引用発明A「サイズ塗工液」の間に物としての相違をもたらすものではないか、あるいは、少なくとも、当業者が、引用発明Aの「サイズ塗工液」を「インクジェット印刷用」の用途のものとすることは、引用文献の上記記載が示唆する範囲内の事項にすぎないところ、インクジェット記録用紙の塗工液に、定着剤としての機能を期待して塩化カルシウムを加えることは、以下に示すとおり、周知である。
a 特開2004-195721号公報(拒絶査定で提示された文献)
「【0046】
上記色材定着剤としては、水溶性の金属塩やカチオンポリマーなどが挙げられる。
水溶性金属塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸銅、臭化カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化鉄(III)、塩化マグネシウム、臭化銅(II)、ヨウ化バリウム、塩化銅(II)、臭化マグネシウム、臭化鉄(II)塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、クロム酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄(III)、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、臭化バリウム、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等があげられる。インク成分との反応性を高めるために、水への溶解度が高いものを選択するのが好ましい。また、これら金属塩の中でも、2価以上のものを用いることが好ましい。」

「【0136】
<記録用紙2>
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、上記パルプ100重量部に対して、カオリン填料を3重量部、軽質炭酸カルシウム填料を6重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2重量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水85重量部、水溶性樹脂としてカチオン変性ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)、ゴーセファイマー)を5重量部、色材定着剤として塩化カルシウムを5重量部、保湿剤として1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(保湿率3.5)を3重量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に塩化カルシウムが2.0g/m^(2)保湿剤が1.0g/m^(2)塗工された記録用紙を得た。」

b 特開2005-171471号公報
「【0075】
本発明の記録用紙は、その表面にカチオン性樹脂及び/または多価金属塩を含んでいることが好ましい。記録用紙の表面が、カチオン性樹脂や多価金属塩を含むことにより、インクジェット用インク中がアニオン高分子含む場合、これを架橋させることにより、色材の極めて早い凝集を可能にすると共に、優れた印字画質を得、かつ、インク溶媒の用紙内部への浸透を抑制すると考えられることから、印字直後に発生するカール及び波打ち、さらに、放置乾燥後のカール及び波打ちの発生を更に改善することができる。
【0076】
前記多価金属塩としては、カリウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、錫、マンガン、アルミニウムの他の多価金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等が使用でき、具体的には、塩化バリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、ギ酸亜鉛、塩化錫、硝酸錫、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、ギ酸マンガン、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム等が例示でき、これらは単独または2種以上併用して利用できる。これら多価金属塩のうち、水への溶解度が高く、価数の高い金属塩が好ましい。さらに多価金属塩の対イオンが強酸であると、塗布後の用紙黄変が発生するため、好ましくは、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム等がよい。」

「【0178】
<記録用紙(22)>
記録用紙(11)と同様にして得られた坪量69g/m^(2)の原紙に、表面サイズ剤としての酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、エースA、水との接触角:39度)50質量部及びポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA102、けん化度:99、重合度:200、水との接触角:64度)50質量部と、ぼう硝10質量部、エステル系ノニオン界面活性剤(日本エマルジョン株式会社製、EMALEX TSG-10、HLB:8)50質量部と、多価金属塩として塩化カルシウム75質量部とを含む5質量%濃度の水溶液(表面サイズ液)を、原紙への処理量が1.5g/m^(2)になるように(界面活性剤付与量は0.4g/m^(2))、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で110℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量が71g/m^(2)の記録用紙(22)を得た。」

c 特開2006-28667号公報
「【0054】
また、インクジェット画質および電子写真の転写性を改善するためには、前記金属塩の中でも2価以上の水溶性金属塩を使用することが好ましい。
【0055】
2価以上の水溶性金属塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸銅、臭化カルシウム、塩化カルシウム、チオシアン酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化鉄、塩化マグネシウム、塩化銅、臭化マグネシウム、臭化鉄、塩化鉄、硝酸鉄、クロム酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硫酸亜鉛、臭化バリウム、酢酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸鉄、塩化バリウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、水酸化バリウム、クロム酸カルシウム等があげられる。」

「【0146】
<記録用紙6>
水89質量部、PVA(クラレ製 PVA110)5質量部、モノエポキシ化合物の高級アルコールグリシジルエーテル(阪本薬品工業製 SY-25L)1質量部、二価の水溶性金属塩(CaCl_(2))5質量部を含む処理液を調整し、前記で得られた原紙に熊谷理機製試験用サイズプレス機でサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し記録用紙(6)を得た。
なお、原紙に処理した処理液の塗布量は乾燥質量で片面あたりそれぞれ1.0g/m^(2)である。」

また、引用文献の【0030】には、「インクジェットプリンター用の記録用紙に通常用いられるカチオン性のインク定着剤や耐水化剤と併用しても優れた白色度が得られる」ことが記載されている。
以上勘案すると、引用発明Aにおいて、インクの定着性の向上を図るために、定着剤として周知の塩化カルシウムを「サイズ塗工液」に加えることは当業者が容易に想到するものである。

(ウ)相違点3について
引用文献の【0019】には、「これらの方法によって得られた式(1)の蛍光増白剤の反応液は、塩酸、硫酸、硝酸等によって、酸析し遊離酸の結晶として取り出したり、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類によって塩析することによって、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の結晶として取り出すことができる。」と記載されている。
そうしてみると、引用発明Aにおいて、当該記載に基づき、水性液状組成物を得る際に「水酸化ナトリウム」に換えて水酸化カリウムを用い、「式(2)で表される化合物」の カリウム塩を得ること、即ち、本件補正発明の1)」において「X」がKで「n」が0である構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

エ 本件補正発明の効果について
本件出願の発明の詳細な説明には、本件補正発明の効果とされる明示的な記載はないが、本件出願の発明の詳細な説明には以下のとおり記載されている。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、2価金属塩を含有するサイジング組成物との良好な適合性を有する、水溶性光学増白剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くことに式(1)の光学増白剤が、2価金属塩を含有するサイジング組成物との良好な適合性を有することが今回分かった。」

(イ)「【0064】
表1の結果は、本発明の組成物による卓越した白色度効果を明確に示している。」

(ウ)「【0068】
表2の結果によれば、本発明の組成物はインク印刷濃度において不利な効果を示さない。」

引用文献の【従来の技術】(【0002】-【0006】)、【発明が解決しようとする課題】(【0007】)及び【課題を解決するための手段】(【0008】-【0013】)の記載からみて、上記(ア)の課題及び解決手段は、引用文献にも開示されている事項にすぎない。
また、引用文献の段落【0030】には、「本発明の水性液状組成物は、無機塩の除去、溶液安定性を高める低級アルカノールアミンや低級アルキル4級アンモニウム塩への変換、尿素などの可溶化剤の添加などをすることなく、合成時生成した無機塩の共存下でかつ合成されたナトリウム塩などのままで低温および高温での貯蔵安定性に優れている、また、本発明の水性液状組成物によって蛍光増白された紙はクエンティング現象を起こさず又、紙質やサイズプレス液、コート液の組成変化の影響を受け難く優れた白度を示す。更にインクジェットプリンター用の記録用紙に通常用いられるカチオン性のインク定着剤や耐水化剤と併用しても優れた白色度が得られる。」と記載されているから、上記(イ)及び(ウ)の効果は、引用発明Aが奏する効果にすぎないか、少なくとも、引用文献に接した当業者が期待する効果にすぎない。

オ 小括
本件補正発明は、引用発明A及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)引用発明Bとの対比及び判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明Bを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア) 基材を光学増白させるサイジング組成物
本件補正発明の「サイジング組成物」は、「インクジェット印刷用基板」に「塗工」するものであり(本件出願の発明の詳細な説明の【0029】)、また、引用発明Bの「コート液」も「上質紙に塗布」するものである(【0040】)。
そうしてみると、引用発明Bの「コート液」と本件補正発明の「サイジング組成物」は、技術的にみて「組成物」である点で共通する。
また、引用発明Aは、「式(2)で表される化合物のナトリウム塩を含有する」。ここで、「式(2)で表される化合物」が、紙を光学増白させることは、技術的にみて明らかである(引用文献の【0045】?【0048】の記載からみても、明らかである)。
そうしてみると、引用発明Bの「コート液」は、紙を光学増白させる組成物ということができる。また、本件補正発明でいう「基材」は、事実上、「紙」である。
したがって、引用発明Bの「コート液」は本件補正発明の「サイジング組成物」における「インクジェット印刷用基材を光学増白させる」という構成のうち、「基材を光学増白させる」という構成を満たすものである。

(イ)バインダー
引用発明Bの「コート液」は、「リン酸エステル化澱粉」を含み、技術常識を考慮すると、これは、本件補正発明の「(a)少なくとも1つのバインダー」に相当する。

(ウ)水
引用発明Bの「コート液」は、「水性液状組成物20部」を含む「混合物に、水を加えて固形物が55%になるように調整した」ものであるから、本件補正発明と同様に、「(c)水」を含む。

(エ)式(1)の光学増白剤
引用発明Bの「式(2)で表される化合物」は、上記(ア)で述べたとおり、「光学増白剤」であり、引用発明Bの「式(2)で表される化合物」と本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は「光学増白剤」である点で一致する。
また、引用発明Bの「式(2)で表される化合物」は、「スルホン酸基に対するカチオンは、ナトリウムのカチオンであ」って、下記式(1’)において、nを6としたものに該当する。

(式中、MはNaであり、XはK又はトリエタノールアミンである。)
一方、本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、前記式(1’)において、nを0?5.5としたものに相当する。
そうしてみると、引用発明Bと「式(2)で表される化合物」と本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、前記式(1’)の化学構造を有する点で共通する。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明Bとの一致点及び相違点は、次のとおりである。

(ア)本件補正発明と引用発明Bは、次の構成で一致する。
「 基材を光学増白させる組成物であって、
(a)少なくとも1つのバインダー
(c)水、および
(d)少なくとも1つの式(1’)の光学増白剤を含む組成物。


(式中、MはNaであり、XはK又はトリエタノールアミンである。)

(イ)本件補正発明と引用発明Bは、次の点で相違する。

【相違点4】
本件補正発明の「サイジング組成物」は、「インクジェット印刷用」基材を光学増白させるものであるのに対し、引用発明Bの「コート液」は、インジェット印刷用に用いることが特定されていない点。

【相違点5】
本件補正発明は「サイジング組成物」であるのに対し、引用発明Bの「コート液」は、「サイジング組成物」であることが特定されていない点。

【相違点6】
本件補正発明は、「(b)塩化カルシウム」を含むのに対し、引用発明Bは「(b)塩化カルシウム」を含まない点。

【相違点7】
本件補正発明の「式(1)の光学増白剤」は、式(1’)中、「nは0?5.5である」のに対し、引用発明Bの「式(2)で表される化合物」は、式(1’)中、nは6である点。

ウ 判断
以下、相違点4-7について検討する。

(ア)相違点4について
相違点1の判断(前記(4))ウ(ア))と同様である(ただし、前記(4)ウ(ア)における「引用発明A」及び「サイズ塗工液」をそれぞれ「引用発明B」及び「コート液」と読み替えるものとする。以下同様。)。

(イ)相違点5について
引用発明Bの「コート液」は、「上質紙に塗布」するものであるところ(【0040】)本件出願の発明の詳細な説明の【0060】には、塗工例1?8として「サイジング組成物」を「市販の75g/m^(2)AKD(アルキルケテンダイマー)のサイズ処理された、漂白済みの紙基材シートに塗布する」ことが記載されている。
また、引用発明Bの「コート液」は、上記【一致点】に記載のとおり、組成物としては「(b)塩化カルシウム」を除き、本件補正発明において特定される成分を含むものである。ここで、一般に「塩化カルシウム」は定着剤として用いられるものであってサイジングとしての機能を有するものではないものと認められる。
そうしてみると、引用発明Bの「コート液」と本件補正発明の「サイジング組成物」は、紙の表面に塗工するという用法が一致し、その組成は、定着剤を含有していない点を除き、本件補正発明の「サイジング組成物」と一致することから、引用発明Bの「コート液」は、本件補正発明の「サイジング組成物」に相当するものと認められる。
したがって、相違点5は、実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点6について
相違点2の判断(前記(4)ウ(イ))と同様である。

(エ)相違点7について
相違点3の判断(前記(4)ウ(ウ))と同様である。

エ 本件補正発明の効果について
前記(4)エと同様である。

オ 小括
本件補正発明は、引用発明B及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成30年1月30日付け上申書において、「本願出願時の技術常識として、水溶性光学増白剤は高カルシウム濃度において沈殿する傾向があることが良く知られておりました(明細書段落[0007])。
したがって、カルシウム塩と組み合わせた場合に、どの光学増白剤が沈殿を引き起こすことなくサイジング組成物を製造し得るかについては、引用文献2、3、5、6に接した当業者といえども全く予測できなかったはずです。したがって、引用文献2から出発して、当業者が引用文献2に記載の組成物に塩化カルシウムを添加しようとする動機づけがありません。」と主張している(当合議体注:上記「引用文献2」は、本審決における「引用文献」である。)。
しかしながら、引用文献の【0005】における「前述したカチオン性定着剤とアニオン性の蛍光増白剤を同時に用いると、溶液中でインク定着剤と蛍光増白剤が結合するため水に不溶化し、結晶が析出したり、また、染色時に要求される高白度が得られない現象が起きるという欠点があった。」との記載や【0007】における「紙、パルプ、木綿等のセルロースの蛍光増白剤による染色において、低温及び高温での貯蔵安定性に優れ、且つ増白効果に優れた液状組成物の開発及び、インクの定着性、耐水性、白色度に優れたインクジェットプリンター用の記録用紙の蛍光増白方法が望まれていた。」との記載に基づけば、引用発明A及びBは、従来技術におけるカチオン性定着剤と蛍光増白剤を同時に用いると両者が結合するため水に不溶化するなどの欠点を克服し、貯蔵安定性やインクの定着性等に優れたインクジェットプリンター用の記録用紙の蛍光増白方法を提供することを解決しようとするものであると認められる。
そうしてみると、引用発明A及びBの「式(2)で表される化合物」は、従来周知の定着剤等とともに用いることができるものであって、引用発明A及びBにおいて塩化カルシウムを添加しようとする動機がないとは認められない。

また、審判請求人は、平成30年1月30日付け上申書において、2つのカウンターカチオンを含む塗工例2、3、4、7及び8と、カウンターカチオンがNa^(+)のみである塗工例1とでは、最大で1.1?2.7のCIE白色度の差異がある旨主張している。
上記主張は、本件補正発明が2つのカウンターカチオンを含む構成であるとの前提によるものと認められるが、本件補正発明は、nが0であってカウンターカチオンがカリウム又はトリエタノールアミンのいずれか一方のみである構成を包含することから、当該主張は請求項に係る発明に基づくものではない。
さらに、例えば塗工例1と塗工例2のCIE白色度の差異の最小値は0.03(濃度30g/l)であるなど、本件補正発明の全範囲でカウンターカチオンがNa^(+)のみである構成やK^(+)のみである構成に比して顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年5月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成28年8月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明(請求項1に係る発明)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本件出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献3及び4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:特開2002-348494号公報
引用文献3:特開2004-195721号公報
引用文献4:特開2004-313454号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、サイジング組成物における「(b)」、「M」及び「X」が取り得る選択肢を増やすとともに、「n」が取り得る数値範囲を広めたものである。
そうすると、本願発明の構成を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-09 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2015-62796(P2015-62796)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41M)
P 1 8・ 572- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮澤 浩野田 定文  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
清水 康司
発明の名称 高品質インクジェット印刷用の光学増白剤組成物  
代理人 佐々木 貴英  
代理人 古賀 哲次  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 福本 積  
代理人 佐々木 貴英  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 武居 良太郎  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 武居 良太郎  
代理人 石田 敬  
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