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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1345288
審判番号 不服2017-9723  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-03 
確定日 2018-10-15 
事件の表示 特願2014-534764「2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの重合、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンから形成されるポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日国際公開、WO2013/052790、平成26年11月20日国内公表、特表2014-530922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年10月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年10月5日、2012年10月4日(2件)、いずれも米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年6月5日に手続補正書とともに上申書が提出され、平成27年6月10日に手続補正書が提出され、平成28年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月1日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、同年7月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年7月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年7月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年10月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、以下の補正を含むものである。
(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、 補正前の
「【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び少なくとも1つのコモノマーを、
懸濁安定剤を含まないか或いはモノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む水性懸濁液中、
(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)、K_(2)S_(2)O_(8)、Na_(2)S_(2)O_(8)、Fe_(2)(S_(2)O_(8))_(3)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/CuCl_(2)/Na_(2)S_(2)O_(5)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、1,1-ジアゼン-1,2-ジイルジシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、4-シアノ-4-(2-シアノ-5-ヒドロキシ-5-オキソペンタ-2-イル)ジアゼニルペンタン酸、ジ-tert-ブチルペルオキシド(tBuOOtBu)、ベンゾイルペルオキシド((PhCOO)_(2))、tert-ブチルペルオキシピバレート(TBPPi)、2-ヒドロペルオキシ-2-((2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ)ブタン(MEKP)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のラジカル開始剤の存在下で共重合する;
ことを含む、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーの製造方法。」
を、
「【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び少なくとも1つのコモノマーを、
懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中、
(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)、K_(2)S_(2)O_(8)、Na_(2)S_(2)O_(8)、Fe_(2)(S_(2)O_(8))_(3)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/CuCl_(2)/Na_(2)S_(2)O_(5)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、1,1-ジアゼン-1,2-ジイルジシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、4-シアノ-4-(2-シアノ-5-ヒドロキシ-5-オキソペンタ-2-イル)ジアゼニルペンタン酸、ジ-tert-ブチルペルオキシド(tBuOOtBu)、ベンゾイルペルオキシド((PhCOO)_(2))、tert-ブチルペルオキシピバレート(TBPPi)、2-ヒドロペルオキシ-2-((2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ)ブタン(MEKP)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のラジカル開始剤の存在下で共重合する;
ことを含む、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーの製造方法。」(なお、下線部は、当審で付した。)
とする補正。

(2)補正事項2
補正前の平成28年10月24日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項2ないし8を削除する補正。

2 補正の適否
補正事項1は、補正前の「懸濁安定剤を含まないか或いはモノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む水性懸濁液中」において、選択的事項であった一方を削除し、「懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中」と補正するものであり、当該補正は、特許法17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
また、補正事項2は、補正前の請求項2ないし8を削除するものであり、特許法17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものである。
そして、これらの補正事項は、特許法第17条の2第3項で規定する、いわゆる新規事項に追加にあたるものではなく、また、本件補正の前後により発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。

3 独立特許要件について
本件補正は、補正事項1に係る特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正を含むので、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、つまり、本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するものであるかどうか(いわゆる独立特許要件違反の違反の有無)について検討する。
そして、当審は、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、引用文献1(特表2010-514856号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、特許を受けることができない、と判断する。
以下、その理由を詳述する。

(1) 本願補正発明
本件補正により補正された本願補正発明は、以下のとおりであり、再掲する。

「【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び少なくとも1つのコモノマーを、
懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中、
(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)、K_(2)S_(2)O_(8)、Na_(2)S_(2)O_(8)、Fe_(2)(S_(2)O_(8))_(3)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/CuCl_(2)/Na_(2)S_(2)O_(5)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、1,1-ジアゼン-1,2-ジイルジシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、4-シアノ-4-(2-シアノ-5-ヒドロキシ-5-オキソペンタ-2-イル)ジアゼニルペンタン酸、ジ-tert-ブチルペルオキシド(tBuOOtBu)、ベンゾイルペルオキシド((PhCOO)_(2))、tert-ブチルペルオキシピバレート(TBPPi)、2-ヒドロペルオキシ-2-((2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ)ブタン(MEKP)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のラジカル開始剤の存在下で共重合する;
ことを含む、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーの製造方法。」

(2) 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の記載がある。
(ア) 「【請求項23】
コポリマーの総重量を基準として、約90重量%?約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレン;および
CF_(3)CF=CH_(2)、CF_(3)CF=CF_(2)、CF_(3)CH=CF_(2)、CF_(3)CF=CFH、シス-CF_(3)CH=CFH、トランス-CF_(3)CH=CFH、CF_(3)CH=CH_(2)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される約10重量%?約0.1重量%のフルオロモノマー;
を含む、水分バリアコポリマー。
【請求項29】
フルオロモノマーがCF_(3)CF=CH_(2)である、請求項23に記載のコポリマー。」(請求項23、29)

(イ) 「【0061】
CTFE-1234yfコポリマーの懸濁重合
3重量%の1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)および97重量%のCTFE(クロロテトラフルオロエチレン)を有するコポリマーを以下のように製造した。脱イオン水を窒素でパージし、系を真空に引いた。40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)(アンモニウムペルサルフェート)2.5g、40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)S_(2)O_(5)(メタサルファイトナトリウム)4.5g、緩衝溶液に溶解したCuCl_(2)(塩化第二銅)0.01g、それぞれ3/1.5gを400mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)緩衝液を、使用する直前に、固体を個別に量り分け、別々にそれぞれの固体を水中に完全に溶解することによって重合開始剤溶液を製造した。200mlの水/Na_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)/CuCl_(2)溶液を添加し、定量ポンプまたはシリンジを用いて500mlのオートクレーブ内に注ぎ込む。定量ポンプを用いて、15mlのNa_(2)S_(2)O_(5)溶液をオートクレーブに添加し、混合物を攪拌する。反応混合物の温度を20?21℃に保持する。定量ポンプを用いて、15mlの(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)溶液をオートクレーブに添加し、モノマーを添加している間、ゆっくりと混合物を攪拌する。-35℃で、95対5のモルパーセント比のCTFE/1234yfでISCOシリンジポンプを満たす。典型的には、系に使用されている水の重量を基準として約15%のモノマーを添加する。最初に圧力が100psig(6.9×10^(5)Pa)の系にCTFE/1234yf溶液を急速に添加し、全てのCFTE/1234yfを添加するまで、100ml/minの一定フローを持続する。Na_(2)S_(2)O_(5)溶液を0.01ml/minでゆっくりと量り入れることによって、回分式反応で重合を開始する。反応を持続させ、必要に応じて調整を行う。系の圧力を監視することによって反応を望ましい完了レベルに進める。約8時間で、約80%の固体ポリマーが形成される。」

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の摘記事項(ア)、(イ)、特に摘記事項(イ)の記載からみて、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。

「3重量%の1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)および97重量%のCTFE(クロロテトラフルオロエチレン)を有するコポリマーを懸濁重合により製造する方法であって、
脱イオン水を窒素でパージし、系を真空に引き、
40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)(アンモニウムペルサルフェート)2.5g、40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)S_(2)O_(5)(メタサルファイトナトリウム)4.5g、緩衝溶液に溶解したCuCl_(2)(塩化第二銅)0.01g、それぞれ3/1.5gを400mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)緩衝液を、使用する直前に、固体を個別に量り分け、別々にそれぞれの固体を水中に完全に溶解することによって重合開始剤溶液を製造し、
200mlの水/Na_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)/CuCl_(2)溶液を添加し、定量ポンプまたはシリンジを用いて500mlのオートクレーブ内に注ぎ込み、定量ポンプを用いて、15mlのNa_(2)S_(2)O_(5)溶液をオートクレーブに添加し、混合物を攪拌し、反応混合物の温度を20?21℃に保持し、定量ポンプを用いて、15mlの(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)溶液をオートクレーブに添加し、モノマーを添加している間、ゆっくりと混合物を攪拌し、-35℃で、95対5のモルパーセント比のCTFE/1234yfでISCOシリンジポンプを満たし、系に使用されている水の重量を基準として約15%のモノマーを添加し、最初に圧力が100psig(6.9×10^(5)Pa)の系にCTFE/1234yf溶液を急速に添加し、全てのCFTE/1234yfを添加するまで、100ml/minの一定フローを持続し、Na_(2)S_(2)O_(5)溶液を0.01ml/minでゆっくりと量り入れることによって、回分式反応で重合を開始し、反応を持続させ、必要に応じて調整を行い、系の圧力を監視することによって反応を望ましい完了レベルに進め、約8時間で、約80%の固体ポリマーが形成される方法。」(以下、「引用発明」という。)

(3) 対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)」、「CTFE(クロロテトラフルオロエチレン)」は、それぞれ本願補正発明の「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」、「少なくとも1つのコモノマー」に相当する。
また、引用発明の「40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)(アンモニウムペルサルフェート)2.5g、40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)S_(2)O_(5)(メタサルファイトナトリウム)4.5g、緩衝溶液に溶解したCuCl_(2)(塩化第二銅)0.01g、それぞれ3/1.5gを400mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)緩衝液を、使用する直前に、固体を個別に量り分け、別々にそれぞれの固体を水中に完全に溶解することによって重合開始剤溶液を製造」する場合の「重合開始剤」は、本願補正発明の「(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)、K_(2)S_(2)O_(8)、Na_(2)S_(2)O_(8)、Fe_(2)(S_(2)O_(8))_(3)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/CuCl_(2)/Na_(2)S_(2)O_(5)、・・・、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のラジカル開始剤」に相当する。
そして、引用発明の「200mlの水/Na_(2)HPO_(4)/NaH_(2)PO_(4)/CuCl_(2)溶液を添加し、定量ポンプまたはシリンジを用いて500mlのオートクレーブ内に注ぎ込み、定量ポンプを用いて、15mlのNa_(2)S_(2)O_(5)溶液をオートクレーブに添加し、混合物を攪拌し、反応混合物の温度を20?21℃に保持し、定量ポンプを用いて、15mlの(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)溶液をオートクレーブに添加し、モノマーを添加している間、ゆっくりと混合物を攪拌し、-35℃で、95対5のモルパーセント比のCTFE/1234yfでISCOシリンジポンプを満たし、系に使用されている水の重量を基準として約15%のモノマーを添加し、最初に圧力が100psig(6.9×10^(5)Pa)の系にCTFE/1234yf溶液を急速に添加し、全てのCFTE/1234yfを添加するまで、100ml/minの一定フローを持続し、Na_(2)S_(2)O_(5)溶液を0.01ml/minでゆっくりと量り入れることによって、回分式反応で重合を開始し、反応を持続させ、必要に応じて調整を行い、系の圧力を監視することによって反応を望ましい完了レベルに進め、約8時間で、約80%の固体ポリマーが形成される」は、その記載内容からみて、重合開始剤の存在下で「1234yf」と「CTFE」のモノマーが共重合されているから、本願補正発明の「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」及び「少なくとも1つのコモノマー」を、「ラジカル開始剤の存在下で共集合する」に相当する。
さらに、引用発明では、懸濁安定剤は用いていないことから、引用発明の「3重量%の1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)および97重量%のCTFE(クロロテトラフルオロエチレン)を有するコポリマーを懸濁重合により製造する方法」は、本願補正発明の「懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中、」において「2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーの製造方法。」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用発明において、相違するところはなく、 本願補正発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明である。

(4) 審判請求人の主張
審判請求人は平成29年7月3日提出の審判請求書において、
「本願発明は、懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中で2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーを製造する方法である。
このように懸濁安定剤を実質的に含まない場合において、モノマー液滴の凝集を引き起こさずに2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーを製造できることは本発明者らによって見出された新たな効果である。
引用文献1および2は水性エマルション中で2,3,3,3-テトラフルオロプロペン等を重合することを開示するが、当該引用文献は懸濁安定剤を実質的に含まない水性懸濁液中でモノマー液滴の凝集を引き起こさずに重合できたことは開示しない。
よって本願発明は懸濁安定剤を実質的に含まない水性懸濁液中で前記モノマーを重合する点において、引用文献1および2に記載の発明と相違する。当該引用文献には本願発明の前記構成にかかる示唆はないのであるから、当業者が本願発明の前記顕著な効果を予測することは困難である。」
と主張している。
しかしながら、この「懸濁安定剤を実質的に含まない場合において、モノマー液滴の凝集を引き起こさずに2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーを製造できること」に関し、本願明細書の段落【0043】には、「いかなる動作理論にも必ずしも限定されないが、幾つかの好ましい態様においては、懸濁安定剤によって、モノマー液滴の凝集及び形成されるポリマービーズの凝着が妨げられると考えられる。」と記載されているに止まり、本願明細書から、懸濁安定剤を含まない、あるいは懸濁安定剤を実質的に含まないといえる環境下において、当該ヘテロポリマーを製造した際に、モノマー液滴の凝集を引き起こさないと解釈できるような記載ないし示唆は見いだせない。また、そのような技術常識があるともいえない。
そして、上記(3)で検討したように、本願補正発明は、この引用発明と相違するものではなく、引用文献1に記載された発明である。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

(5) まとめ
本願補正発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、上記補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項に読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年7月3日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年10月24日に提出の手続補正書により補正された請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び少なくとも1つのコモノマーを、
懸濁安定剤を含まないか或いはモノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む水性懸濁液中、
(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)、K_(2)S_(2)O_(8)、Na_(2)S_(2)O_(8)、Fe_(2)(S_(2)O_(8))_(3)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/Na_(2)S_(2)O_(5)/FeSO_(4)、(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8)/CuCl_(2)/Na_(2)S_(2)O_(5)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、1,1-ジアゼン-1,2-ジイルジシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、4-シアノ-4-(2-シアノ-5-ヒドロキシ-5-オキソペンタ-2-イル)ジアゼニルペンタン酸、ジ-tert-ブチルペルオキシド(tBuOOtBu)、ベンゾイルペルオキシド((PhCOO)_(2))、tert-ブチルペルオキシピバレート(TBPPi)、2-ヒドロペルオキシ-2-((2-ヒドロペルオキシブタン-2-イル)ペルオキシ)ブタン(MEKP)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のラジカル開始剤の存在下で共重合する;
ことを含む、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのヘテロポリマーの製造方法。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由(理由2)を含むものである。

引用文献1:特表2010-514856号公報

3 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項は、第2 3(2)アのとおりであり、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、第2 3(2)イで認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明の対比については、上記第2 3(3)でした対比において、「本願補正発明」と、本願補正発明における「懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中」との発明特定事項を、「本願発明」と、本願発明の「懸濁安定剤を含まないか或いはモノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む水性懸濁液中」との発明特定事項に置き換えて対比した内容となり、同じく判断される。
つまり、上記第2 3(3)で検討したように、本願補正発明は、本願発明において選択的な発明特定事項であった、「懸濁安定剤を含まないか或いはモノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む水性懸濁液中」との事項から、一方の「モノマー液滴の凝集を妨げない量の懸濁安定剤を含む」との事項を削除し、もう一方の「懸濁安定剤を含まない水性懸濁液中」に限定したものであり、本願補正発明で限定された当該発明特定事項は、そのまま本願発明も備えている発明特定事項である。
そして、限定した発明特定事項を有する本願補正発明が、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、当該発明特定事項を含む本願発明も同様に判断され、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明、すなわち、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-24 
結審通知日 2018-05-25 
審決日 2018-06-05 
出願番号 特願2014-534764(P2014-534764)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 智之  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 近野 光知
岡崎 美穂
発明の名称 2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの重合、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンから形成されるポリマー  
代理人 山本 修  
代理人 新井 規之  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中西 基晴  
代理人 宮前 徹  
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