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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1345296
審判番号 不服2017-17645  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-29 
確定日 2018-11-06 
事件の表示 特願2013-168019「期待された印刷出力と整合することを検証する機能を有するシステム、および検証する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月 6日出願公開、特開2014- 41608、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月13日(優先権主張 平成24年8月21日、米国)の出願であって、平成29年5月19日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月19日付けで手続補正がされ、同年8月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月29日に拒絶査定不服の審判請求がされたものである。

第2 原査定の概要
平成29年8月21日付け拒絶査定(原査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-20に係る発明は、引用文献1-4に記載された発明、引用文献5、6に記載された周知技術、及び引用文献2、5に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2007-89095号公報
2.特開2012-108854号公報
3.特開2012-106456号公報
4.特開2008-85707号公報
5.特開2000-82141号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
6.特開2004-199548号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 本願発明
本願の請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成29年7月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
印刷ジョブを受信し、前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正し、前記修正された印刷ジョブをプリンタ装置へと送信するように動作可能な制御ユニットであって、前記制御ユニットは、前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像を生成するようにさらに動作可能である、制御ユニット;および、
前記プリンタ装置から前記印刷ジョブの印刷ページを受信し、前記印刷ジョブの前記印刷ページの各々について、
前記印刷ページのタグを識別し、
前記印刷ページ上の前記タグと対応するターゲット画像を識別し、
前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して比較し、前記印刷ページの前記画像と前記ターゲット画像との間の不一致点を検出する
ように動作可能な比較ユニット;
を具備し、
前記比較ユニットは、前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成し、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す、システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、複数の印刷ページを互いに区別するためのタグを前記論理ページに対して追加するようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、各々が前記印刷ジョブの論理ページのビットマップ画像表現を具するターゲット画像を生成するようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記比較ユニットは、一群の印刷画素がターゲット画像中で定義されている期待される画素の一群とマッチしないような不一致点を印刷ページ上において検出するようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記プリンタ装置および前記比較ユニットと接続されたプリント・サーバを具備することを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
各論理ページ内において印刷処理の後に前記印刷ジョブの対応する印刷ページから取り除かれる部分の上に前記タグを追加するようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記不一致点を示している前記比較ユニットから情報を受信し、ユーザに対して前記検出された不一致点を通知するためのユーザ・インターフェース上にプロンプトを生成するようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
制御ユニットにおいて、印刷ジョブを受信するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記修正された印刷ジョブをプリンタ装置へと送信するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像を生成するステップ;
比較ユニットにおいて、前記プリンタ装置から前記印刷ジョブの印刷ページを受信するステップ;
前記比較ユニットにおいて、前記印刷ジョブの前記印刷ページの各々について、
前記印刷ページのタグを識別し、
前記印刷ページ上の前記タグと対応するターゲット画像を識別し、
前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して比較し、前記印刷ページの前記画像と前記ターゲット画像との間の不一致点を検出するステップ;
を具備し、
前記検出するステップは、前記比較ユニットにおいて、前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成するステップであって、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す、ステップを更に有する、方法。
【請求項9】
前記制御ユニットが前記印刷ジョブを前記修正するステップは、複数の印刷ページを互いに区別するためのタグを前記論理ページに対して追加する動作を具備することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記制御ユニットが前記ターゲット画像を前記生成するステップは、各々が前記印刷ジョブの論理ページのビットマップ画像表現を具備するターゲット画像を生成する動作を具備することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記比較ユニットが前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して前記比較するステップは、一群の印刷画素がターゲット画像中で定義されている期待される画素の一群とマッチしないような不一致点を印刷ページ上において検出する動作を具備することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記プリンタ装置および前記比較ユニットと接続されたプリント・サーバを具備することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記制御ユニットが前記印刷ジョブを前記修正するステップは、各論理ページ内において-印刷処理の後に前記印刷ジョブの対応する印刷ページから取り除かれる部分の上に前記タグを追加する動作を具備することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記不一致点を示している前記比較ユニットから情報を受信するステップ;
ユーザに対して前記検出された不一致点を通知するためのユーザ・インターフェース上にプロンプトを生成するステップをさらに具備する、請求項8記載の方法。
【請求項15】
プログラミングされた命令を具現化するコンピュータ可読の記録媒体であって、プロセッサによって実行される際に:
制御ユニットにおいて、印刷ジョブを受信するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記修正された印刷ジョブをプリンタ装置へと送信するステップ;
前記制御ユニットにおいて、前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像を生成するステップ;
比較ユニットにおいて、前記プリンタ装置から前記印刷ジョブの印刷ページを受信するステップ;
前記比較ユニットにおいて、前記印刷ジョブの前記印刷ページの各々について、
前記印刷ページのタグを識別し、
前記印刷ページ上の前記タグと対応するターゲット画像を識別し、
前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して比較し、前記印刷ページの前記画像と前記ターゲット画像との間の不一致点を検出するステップ;
を具備し、
前記検出するステップは、前記比較ユニットにおいて、前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成するステップであって、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す、ステップを更に有する、方法を実行するように構成された前記コンピュータ可読の記録媒体。
【請求項16】
前記制御ユニットが前記印刷ジョブを前記修正するステップは、複数の印刷ページを互いに区別するためのタグを前記論理ページに対して追加する動作を具備することを特徴とする、請求項15記載の記録媒体。
【請求項17】
前記制御ユニットが前記ターゲット画像を前記生成するステップは、各々が前記印刷ジョブの論理ページのビットマップ画像表現を具備するターゲット画像を生成する動作を具備することを特徴とする、請求項15記載の記録媒体。
【請求項18】
前記比較ユニットが前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して前記比較するステップは、一群の印刷画素がターゲット画像中で定義されている期待される画素の一群とマッチしないような不一致点を印刷ページ上において検出する動作を具備することを特徴とする、請求項15記載の記録媒体。
【請求項19】
前記制御ユニットは、前記プリンタ装置および前記比較ユニットと接続されたプリント・サーバを具備することを特徴とする、請求項15記載の記録媒体。
【請求項20】
前記制御ユニットが前記印刷ジョブを前記修正するステップは、各論理ページ内において印刷処理の後に前記印刷ジョブの対応する印刷ページから取り除かれる部分の上に前記タグを追加する動作を具備することを特徴とする、請求項15記載の記録媒体。」

第4 引用文献・引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により注目する点に付与した。以下、同様。)

「【0018】
複合機10は、コピー、ファクシミリ、スキャナ、プリンタ機能以外に、複合機10で印刷した用紙をスキャナ機能にて読取を行い、用紙に印刷する画像のページイメージのデータと、読み取った印刷画像のイメージとを、照合して印刷した画像における異常個所の有無を判断し、判断した結果を操作パネルの表示部に出力する印刷画像検査機能を有する。
【0019】
また、この検査機能には、以下の3つの検査方法がある。」

「【0023】
第2の検査方法として、「ページイメージ呼び出し検査モード」がある。
【0024】
この第2の方法は、複合機10にて印刷を行った際のページイメージに、印刷ジョブ、印刷ページ、出力日時などの情報を付加して記憶部19に蓄積し、同時に、印刷した用紙には、その蓄積したページイメージへのリンク情報となるバーコード、識別番号を用紙の余白に印刷する。その後、利用者から検査実施の操作として、操作パネルからの蓄積したページイメージを選択して、検査する用紙を画像読取部17にて読取り、呼び出したページイメージと、読み取った画像データとを照合して検査を行う方法である。」

「【0053】
図4は、「ページイメージ呼び出し検査モード」による印刷処理の動作を示すフローチャートである。
【0054】
メインコントローラ11は、ネットワーク20を介して接続されるPC30からネットワークインタフェース14を介して印刷ジョブを受信すると、プリンタコントローラ15に印刷ジョブのデータを出力し、プリンタコントローラ15は、ページ記述言語にて作成された印刷ジョブを解析し(S201)、解析結果に基づいて作成したラスタイメージとページイメージの識別情報となるバーコードイメージを合成したページイメージ152を作成してイメージバッファ151に出力し(S202)、プリンタコントローラ15は、イメージバッファ151に出力したページイメージ152を、ページイメージ152として記憶部19に保存し、照合用ページイメージデータ管理情報191に、保存したページイメージ152に関する識別、印刷ページの情報を追加して登録する(S203)。プリントエンジン16は、イメージバッファ151に出力されたページイメージ152に基づいて、例えば、図5に示した、バーコード印刷部41、イメージデータ識別情報印字部42を含む印刷画像40の印刷を行う(S204)。
【0055】
図6は、図4に示した印刷処理にて、複合機10の記憶部19に蓄積したページイメージ152を選択して呼び出し、印刷画像40の検査を行う処理の動作を示したフローチャートである。
【0056】
メインコントローラ11は、操作パネル12にて、図10の(D)に示すような、蓄積したページイメージ152の識別情報の一覧から検査対象を選択する操作を検知すると(S304にてYES)、選択されたページイメージ152による検査開始画面(図10の(A))に示した検査開始画面を表示する(S305)。
【0057】
画像読取部17によって、印刷画像40に印刷されたバーコード印刷部41の読取操作を検知すると(S301YES)、メインコントローラ11は、バーコードの読取情報に基づいて、照合用ページイメージデータ管理情報191のバーコードデータ1913を検索して該当レコードを特定し、特定した検査用マスタ画像管理情報192の記録内容を操作パネル12に出力する(S305)。
【0058】
ステップS305にて表示された検査開始確認画面において、検査開始を指示する操作を検知すると、メインコントローラ11は、操作パネル12に、図10(A)に示した印刷画像40の原稿読取操作を利用者に促す画面を表示する(S307)。
【0059】
メインコントローラ11は、印刷画像40の読取指示操作を操作パネル12にて検知し、スキャナコントローラ18に対して、画像読取部17による印刷画像40の読取処理を開始する(S308)。
【0060】
メインコントローラ11は、スキャナコントローラ18から出力される検査画像読取イメージ182を記憶部19に保存し(S309)、ステップS305の処理にて特定したページイメージ152を、検査用マスタ画像管理情報192のイメージ画像格納情報1914に基づいて記憶部19から読み出した、検査画像読取イメージ182と、ページイメージ152とを照合する画像処理を行って(S310)、検査結果を操作パネル12に出力する(S311)。」

上記記載(特に下線部の記載)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複合機10は、コピー、ファクシミリ、スキャナ、プリンタ機能以外に、複合機10で印刷した用紙をスキャナ機能にて読取を行い、用紙に印刷する画像のページイメージのデータと、読み取った印刷画像のイメージとを、照合して印刷した画像における異常個所の有無を判断し、判断した結果を操作パネルの表示部に出力する印刷画像検査機能を有し、
ページイメージ呼び出し検査モードでは、
メインコントローラ11は、ネットワーク20を介して接続されるPC30からネットワークインタフェース14を介して印刷ジョブを受信すると、プリンタコントローラ15に印刷ジョブのデータを出力し、
プリンタコントローラ15は、ページ記述言語にて作成された印刷ジョブを解析し(S201)、解析結果に基づいて作成したラスタイメージとページイメージの識別情報となるバーコードイメージを合成したページイメージ152を作成してイメージバッファ151に出力し(S202)、イメージバッファ151に出力したページイメージ152を、ページイメージ152として記憶部19に保存し、照合用ページイメージデータ管理情報191に、保存したページイメージ152に関する識別、印刷ページの情報を追加して登録し(S203)、
プリントエンジン16は、イメージバッファ151に出力されたページイメージ152に基づいて、バーコード印刷部41、イメージデータ識別情報印字部42を含む印刷画像40の印刷を行い(S204)、
画像読取部17によって、印刷画像40に印刷されたバーコード印刷部41の読取操作を検知すると(S301YES)、メインコントローラ11は、バーコードの読取情報に基づいて、照合用ページイメージデータ管理情報191のバーコードデータ1913を検索して該当レコードを特定し、特定した検査用マスタ画像管理情報192の記録内容を操作パネル12に出力し(S305)、
表示された検査開始確認画面において、検査開始を指示する操作を検知すると、メインコントローラ11は、操作パネル12に、印刷画像40の原稿読取操作を利用者に促す画面を表示し(S307)、
メインコントローラ11は、印刷画像40の読取指示操作を操作パネル12にて検知し、スキャナコントローラ18に対して、画像読取部17による印刷画像40の読取処理を開始し(S308)、
メインコントローラ11は、スキャナコントローラ18から出力される検査画像読取イメージ182を記憶部19に保存し(S309)、ステップS305の処理にて特定したページイメージ152を、検査用マスタ画像管理情報192のイメージ画像格納情報1914に基づいて記憶部19から読み出した、検査画像読取イメージ182と、ページイメージ152とを照合する画像処理を行って(S310)、検査結果を操作パネル12に出力する(S311)、複合機。」

2.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基準画像と検査対象画像とを比較する検査装置において、基準画像と検査対象画像との間にある撮像画像の幾何歪みの補正を行ってから比較を行うために、撮像画像幾何歪みを検出する技術の分野に属する。特に、画像を複数に分割した小さな補正対象領域の位置ずれ量を検出する場合であっても大きい位置ずれ量を検出することができる撮像画像幾何歪み検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば特公平1-47823号には、正常な印刷物が印刷された時点で走行印刷物の絵柄から読み取った画像データを基準画像データとして画像メモリに記憶しておき、その画像メモリから読み出した基準画像データを、印刷中の検査対象の印刷物から読み取った検査画像データと画素単位で比較して印刷物の良否判定を行う方式の検査装置に関する技術が記載されている。
【0003】このように基準画像データと検査対象画像データとを画素単位で比較する場合、不良検出の精度を高めると両データ間の位置ずれが僅かである場合でも位置ずれを不良と誤検出し、位置ずれを不良と誤検出しないようにするためには不良検出の精度を低下させることが必要である。したがって、ある程度の位置ずれを避け得ない場合には要求を満足するに十分な検査性能が得られない。そこで、たとえば特開平7-249122号には、基準画像データと検査対象画像データとの間の位置ずれを補正してから、両データを比較して検査するように構成した検査装置が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この検査装置は画像全体の平行移動に対しては位置ずれを補正することができる。ところが、印刷が行われ移送されるウェブの急激なテンション変動や蛇行、撮像カメラの振動、等が起きる場合には、撮像して得た画像は単純な平行移動の位置ずれだけではなく、平行移動、伸縮、スキュー、および、射影歪みやその他の幾何歪みを有している(図8参照)。この幾何歪みは、軟包装フィルムや建材化粧紙等に印刷が行われる場合に特に顕著である。この幾何歪みに対しては、従来の平行移動に対する位置ずれ補正によっては対応することができない。また、幾何歪みを検出するときに、画像を複数の小領域に分割し、その小領域ごとにそれぞれの移動ベクトル(位置ずれ量)を検出するテンプレート領域および探索領域を設定することが行われる。ところが、小領域を細かくするに連れてテンプレートと探索範囲を小さくしないと誤った移動ベクトルが検出されることがある。そのため、大きい変位を検出することが困難である。
【0005】そこで本発明の目的は、幾何歪みを補正するために必要とされる、歪み量を検出し、しかも、画像を分割した複数の小さな補正対象領域の位置ずれ量を検出する場合であっても大きい位置ずれ量を検出することができる撮像画像幾何歪み検出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的は下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明の第1の形態の撮像画像幾何歪み検出装置は、ラインセンサカメラによる主走査とウェブの移送による副走査とを組み合わせて前記ウェブを撮像し、得られる画像検査のための基準画像と検査対象画像について、テンプレートを用い前記基準画像と前記検査対象画像との位置ずれ量を検出するテンプレートマッチング手段を有する撮像画像伸縮歪み検出装置であって、前記テンプレートが前記基準画像または前記検査対象画像を複数に分割した補正対象領域に配置され、かつ、前記テンプレートが前記補正対象領域よりも大きいようにしたものである。
【0007】 本発明によれば、テンプレートは基準画像と検査対象画像を複数に分割した補正対象領域に配置され、かつ、補正対象領域よりも大きいテンプレートが用いられる。したがって、幾何歪みを補正するために必要とされる位置ずれ量を検出し、しかも、画像を複数に分割した小さな補正対象領域の位置ずれ量を検出する場合であっても大きい位置ずれ量を検出することができる撮像画像幾何歪み検出装置が提供される。」

「【0012】テンプレートデータ1は画像データの内の特定の領域のデータである。画像データとしては、それに限定されるものではないが、通常は基準画像データが用いられる。図2はテンプレートの一例を示す図である。図2において、2はイメージで示した画像データ(基準画像データ)、R0000?R0911は基準画像データ2を矩形の小領域に分割して得られる補正対象領域であり、T0101,T0110,T1801,T0810はそれらの補正対象領域よりも大きな領域に設けられたテンプレート(斜線で示した矩形部分)である。テンプレートデータ1は複数のテンプレートから構成され、図2に示す一例では4つのテンプレートT0101?T0810(テンプレートT0101,T0110,T1801,T0810)から構成される。図2においては、テンプレートT0101?T0810は矩形であるが、矩形に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。ただし、本発明においては、テンプレートT0101?T0810を任意の形状とした場合においても、その任意の形状の外接矩形は、図2において線分で区切って示す矩形の補正対象領域R0000?R0911の寸法よりも、大きい寸法とする。なお、R0911、T0810等における添字は前の2桁が行番号を表し、後の2桁が列番号を表す。また、矢印→はウェブの移送方向を示している。」

3.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の物体の外観検査や印刷物の画質ディフェクト(白抜け、汚れなど)の検査など、各種の検査工程において画像の照合を用いた検査方法が利用されてきている。画像の照合を行う場合、通常は正常な状態の照合の見本となる基準画像を用意しておき、照合の対象となる検査画像を取得して、両者を重畳して比較照合することによって不一致部分などを検出し、判定を行っている。
【0003】
しかし、検査画像を取得する際に検査画像に位置ずれや伸縮(倍率変動)などの幾何学的歪みが含まれてしまい、基準画像を検査画像へ単純に重畳しただけでは、高精度な照合が実現できないという問題がある。
【0004】
また、これら位置ずれや伸縮などは検査画像中に数多く散在しており、このような幾何学的歪みへの対策として、例えば特許文献1に記載されているように、基準画像と検査画像のうち、少なくとも一方の画像から複数の分割画像を作成し、分割単位毎に位置ずれ補正量を求める画像の位置ずれ補正方法が知られている。また、特許文献2に記載されているように、検査画像の幾何学的歪みが無視できる程度のサイズに分割し、そのサイズに合わせて基準画像も分割し、分割単位毎に画素以下の精度で位置ずれを検出し、また欠陥判定を行う技術が知られている。しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されている方法では、検査画像中に幾何学的歪みが不均一に散在している場合、分割画像を作成しても、分割画像内に幾何学的歪みが残存してしまう。そのため、結局、ブロック画像内にも幾何学的歪みが残存してしまい、照合精度が低下するという課題があった。
【0005】
このような従来の技術からも分かるように、基準画像と検査画像を画素単位で精確に照合するためには、検査画像中に散在する不均一な幾何学的歪みを残さず取り除く事が必要である。そのための従来の技術として、例えば特許文献3に記載されているように、位置関係が既知の複数の識別マークを持つ校正用の対象物を撮影し、画像に現れる幾何学的歪み成分を予め調べて幾何学的歪み校正データとして保持し、これを用いて検査画像の幾何学的歪み補正を実施してから画像照合を行う検査方法が知られている。この検査方法では、予め校正データを取得して保持しておくので、検査画像の幾何学的歪みの発生傾向が毎回の照合検査で等しければ問題ない。しかし、幾何学的歪みの発生傾向が毎回異なる場合には、幾何学的歪み校正データと実際の幾何学的歪みの傾向が異なることが考えられ、幾何学的歪みの影響を取り除けず、照合精度が低下する課題があった。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明では、「メインコントローラ11は、・・・印刷ジョブを受信すると、プリンタコントローラ15に印刷ジョブのデータを出力し、
プリンタコントローラ15は、・・・印刷ジョブを解析し・・・て作成したラスタイメージとページイメージの識別情報となるバーコードイメージを合成したページイメージ152を作成してイメージバッファ151に出力し・・・、
プリントエンジン16は、イメージバッファ151に出力されたページイメージ152に基づいて、・・・印刷画像40の印刷を行」うから、引用発明の‘メインコントローラ11及びプリンタコントローラ15’は、印刷ジョブを受信し、該印刷ジョブからページイメージの識別情報となるバーコードイメージを合成したページイメージ152を作成(本願発明1の「前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正」に相当)し、プリントエンジン16(本願発明1の「プリンタ装置」に相当)に送信して印刷を行う「制御ユニット」といえるものである。
また、引用発明では、「メインコントローラ11は、・・・検査画像読取イメージ182と、ページイメージ152とを照合する画像処理を行」うから、上記のように作成したページイメージ152は、プリントエンジン16に送信する以外に、検査画像読取イメージ182との照合にも用いるものであり、照合に用いるページイメージ152は、本願発明1の「前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「印刷ジョブを受信し、前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正し、前記修正された印刷ジョブをプリンタ装置へと送信するように動作可能な制御ユニットであって、前記制御ユニットは、前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像を生成するようにさらに動作可能である、制御ユニット;」を具備する点で一致する。

引用発明では、「画像読取部17によって、印刷画像40に印刷されたバーコード印刷部41の読取操作を検知すると(S301YES)、メインコントローラ11は、バーコードの読取情報に基づいて、照合用ページイメージデータ管理情報191のバーコードデータ1913を検索して該当レコードを特定し、特定した検査用マスタ画像管理情報192の記録内容を操作パネル12に出力し(S305)、
表示された検査開始確認画面において、検査開始を指示する操作を検知すると、メインコントローラ11は、操作パネル12に、印刷画像40の原稿読取操作を利用者に促す画面を表示し(S307)、メインコントローラ11は、印刷画像40の読取指示操作を操作パネル12にて検知し、スキャナコントローラ18に対して、画像読取部17による印刷画像40の読取処理を開始し(S308)、
メインコントローラ11は、スキャナコントローラ18から出力される検査画像読取イメージ182を記憶部19に保存し(S309)、ステップS305の処理にて特定したページイメージ152を、検査用マスタ画像管理情報192のイメージ画像格納情報1914に基づいて記憶部19から読み出した、検査画像読取イメージ182と、ページイメージ152とを照合する画像処理を行って(S310)、検査結果を操作パネル12に出力する(S311)」、すなわち、バーコードにより、印刷画像40を読み取った検査画像読取イメージ182に対応するページイメージ152を特定して検査画像読取イメージ182とページイメージ152とを照合・検査を行うから、引用発明のメインコントローラ11は、本願発明1の「前記プリンタ装置から前記印刷ジョブの印刷ページを受信し、前記印刷ジョブの前記印刷ページの各々について、前記印刷ページのタグを識別し、前記印刷ページ上の前記タグと対応するターゲット画像を識別し、前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して比較し、前記印刷ページの前記画像と前記ターゲット画像との間の不一致点を検出するように動作可能な比較ユニット」に相当するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、このような比較ユニットを具備する点で一致する。

引用発明の「複合機」は、「システム」といえるものである。

以上によれば、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「印刷ジョブを受信し、前記印刷ジョブの論理ページの各々に対してタグを追加することにより、前記印刷ジョブを修正し、前記修正された印刷ジョブをプリンタ装置へと送信するように動作可能な制御ユニットであって、前記制御ユニットは、前記印刷ジョブの前記論理ページについてのターゲット画像を生成するようにさらに動作可能である、制御ユニット;および、
前記プリンタ装置から前記印刷ジョブの印刷ページを受信し、前記印刷ジョブの前記印刷ページの各々について、
前記印刷ページのタグを識別し、
前記印刷ページ上の前記タグと対応するターゲット画像を識別し、
前記印刷ページの画像を前記ターゲット画像に対して比較し、前記印刷ページの前記画像と前記ターゲット画像との間の不一致点を検出する
ように動作可能な比較ユニット;
を具備する、システム。」

(相違点)
本願発明1は、「前記比較ユニットは、前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成し、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
相違点に係る本願発明1の「前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成し、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す」という技術事項は、引用文献2?6には記載されておらず、示唆されてもおらず、本願優先日前において周知技術であったともいえない。
引用文献5には、基準画像と検査対象画像とを比較する検査装置において、基準画像と検査対象画像との間にある撮像画像の幾何歪みの補正を行ってから比較を行うために、撮像画像幾何歪み(平行移動、伸縮、スキュー、および、射影歪みやその他の幾何歪み)を検出する技術が記載されているが、これは、正常な印刷物から読み取った基準画像データの内の特定の領域のデータであるテンプレートデータ1を検査対象画像データと比較して検出するものであって、本願発明1のような、「印刷ページ上のマークを分析して」行うものではない。
また、引用文献6には、位置関係が既知の複数の識別マークを持つ校正用の対象物を撮影し、画像に現れる幾何学的歪み成分を予め調べて幾何学的歪み校正データとして保持し、これを用いて検査画像の幾何学的歪み補正を実施してから画像照合を行う検査方法が記載されているが、これは、識別マークを持つ校正用の対象物から幾何学的歪み校正データを得て、それにより検査画像を補正するものであって、本願発明1のような、「印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正する」ものではない。
他に、引用発明において、「前記印刷ページ上のマークを分析して、ページ形状の変化を決定し、前記の決定したページ形状の変化に基づき前記印刷ページのカメラにより撮影された画像を修正することにより、前記印刷ページの画像を生成し、前記印刷ページ上の前記マークは、加熱及び物理応力に起因する前記印刷ページの拡大又は収縮を示す」ようにする動機付けとなる技術は見当たらない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3.本願発明8-14について
本願発明8は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備える方法の発明であり、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明9-14は、本願発明8の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明8と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4.本願発明15-20について
本願発明15は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるコンピュータ可読の記録媒体の発明であり、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明16-20は、本願発明15の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明15と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-22 
出願番号 特願2013-168019(P2013-168019)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 征矢 崇  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 期待された印刷出力と整合することを検証する機能を有するシステム、および検証する方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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