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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
管理番号 1345304
審判番号 不服2016-16663  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2018-10-17 
事件の表示 特願2015-503551「カチオン性界面活性剤及び付着ポリマーを含むヘアコンディショニング組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開、WO2013/148905、平成27年4月27日国内公表、特表2015-512415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成25年3月28日(パリ条約に基づく優先権主張 平成24年3月30日,アメリカ合衆国)にされたとみなされる特許出願であって,平成28年6月29日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年11月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正され,平成30年1月9日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知されたものである。

第2 本願発明及び本件拒絶理由について
本願の請求項1?5に係る発明は,平成28年11月7日に補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
また,本件拒絶理由の内容は,本審決末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
請求人は,本件拒絶理由に対して,指定期間内に特許法159条2項で準用する同法50条所定の意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして,本件拒絶理由を覆すに足りる根拠は見いだせず,本願は本件拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

以下,本件拒絶理由の内容を掲記する。

【理由1】 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
【理由2】 この出願は,特許請求の範囲の記載が,下記の点で特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

請求項: 1?5
引用文献等:
・ 特開2007-137830号公報(査定の理由で引用された引用文献1。以下「引用文献1」という。)
・ 特開2006-28509号公報(査定の理由で引用された引用文献2。以下「引用文献2」という。)
・ 特表2008-543952号公報(以下「引用文献3」という。)

[備考]
第1 理由1について
1 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は,平成28年11月7日に補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。(以下,順に「本願発明1」?「本願発明5」という。)
「【請求項1】
(a)0.1重量%?8重量%のカチオン性界面活性剤,
(b)1重量%?15重量%の高融点脂肪族化合物,
(c)構造中にカルボキシル基を有するビニルモノマー(A),及び次式(1)により表されるビニルモノマー(B):
CH_(2)=C(R^(1))-CO-X-(Q-O)r-R^(2) (1)
(式中,R^(1)は水素原子又はメチル基を表し,R^(2)は水素原子,又は1?5個の炭素原子を有するアルキル基を表し,このアルキル基は置換基を有してもよく,Qは2?4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し,このアルキレン基は置換基を有してもよく,rは2?15の整数を表し,Xは酸素原子又はNH基を表し,次の構造-(Q-O)r-R^(2)中,直鎖に結合している原子の数は70個以下であり,前記ビニルモノマー(A)は,10質量%?50質量%の濃度で含有され,かつ前記ビニルモノマー(B)は50質量%?90質量%の濃度で含有される)を含みかつ重量平均分子量10,000?50,000を有するコポリマーである,0.05重量%?6重量%の付着ポリマー,
(d)水性基材,
を含み,前記カチオン性界面活性剤が,炭素原子22個の長さのアルキル基又はアルケニル基を1つ有するモノアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤であるか,あるいは該界面活性剤と,炭素原子12?30個のアルキル長鎖を2つ有するジアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤との組み合わせであり,前記カチオン性界面活性剤及び前記高融点脂肪族化合物の合計に対する前記カチオン性界面活性剤のモル%が25%?35%である,ヘアコンディショニング組成物。
【請求項2】
前記式(1)中,rが3?12を表す,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)中,Xが酸素原子を表す,請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビニルモノマー(A)が,次式(2)又は次式(3):
CH_(2)=C(R^(3))-CO-(O-(CH_(2))m-CO)n-OH (2)
(式中,R^(3)は水素原子又はメチル基を表し,mは1?4の整数を表し,及びnは0?4の整数を表す),
CH_(2)=C(R^(4))-COO-(CH_(2))p-OOC-(CH_(2))q-COOH (3)
(式中,R^(4)は水素原子又はメチル基を表し,p及びqは独立して2?6の整数を表す),により表される,請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記付着ポリマーがアニオン性である,請求項1に記載の組成物。」

2 引用文献等に記載された発明
(1) 引用文献1には,特に【請求項1】,【請求項6】,【請求項7】,【0030】及び【0068】の記載からみて,次のとおりの発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「親水性ノニオン性単量体(A)に相当する構成単位及びアニオン性単量体(B)に相当する構成単位を主成分とするコポリマー0.1?5質量%,カチオン界面活性剤0.1?10質量%,高級アルコール0.1?20質量%,シリコーン油0.1?10質量%,及び水55?99.6質量%を含む毛髪用コンディショニング組成物であって,
前記コポリマーの全重量に対して,親水性ノニオン性単量体(A)に相当する構成単位の割合が50?99質量%であり,アニオン性単量体(B)に相当する構成単位の割合が1?50質量%であり,
前記コポリマーの重量平均分子量は10,000?50,000である毛髪用コンディショニング組成物。」

(2) また,引用文献3には,特に【請求項1】,【請求項3】,【請求項4】,【0028】,【0029】,【0037】,【0038】及び実施例(例えば,カチオン性界面活性剤-3を用いたもの。)の記載からみて,次のとおりの発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認める。
「(a)約0.1重量%?約10重量%のカチオン性界面活性剤と,(b)水溶性アニオン性ポリマー,水溶性両性ポリマー,及びこれらの混合物から成る群から選択される約0.05重量%?約10重量%の水溶性ポリマーと,(c)約1.0重量%?約10重量%の高融点脂肪族化合物と,(d)水性キャリアとを含み,
該カチオン性界面活性剤及び該ポリマーは水不溶性複合体を形成し,該カチオン性界面活性剤及び該高融点脂肪族化合物はゲルマトリックスを形成し,
ゲルマトリックス内では,カチオン性界面活性剤及び高融点脂肪族化合物は,カチオン性界面活性剤対高融点脂肪族化合物のモル比が約1:2?約1:6の範囲内であるような濃度で含有され,
前記カチオン性界面活性剤がベヘニルトリメチル塩化アンモニウムであるか,あるいは該界面活性剤と親水性置換されたジ長鎖アルキル四級アンモニウム塩類との組み合わせであり,
前記水溶性ポリマーは1,000AMU(原子質量単位)以上の分子量を有するヘアコンディショニング組成物。」

3 本願発明と引用発明1との対比,判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「高級アルコール」は本願発明1の「高融点脂肪族化合物」に,「水」は「水性基材」にそれぞれ相当し,また引用発明1の「コポリマー」は本願発明1の「付着ポリマー」に対応するものであるといえる。
よって,上記両発明の相違点は次のとおりであると認める。
・ 相違点1
付着ポリマー(コポリマー)について,本願発明1は「構造中にカルボキシル基を有するビニルモノマー(A),及び次式(1)により表されるビニルモノマー(B)を含」むと特定するのに対し(当審注:式(1)の構造式の記載を省略する。以下同じ。),引用発明1は「親水性ノニオン性単量体(A)に相当する構成単位及びアニオン性単量体(B)に相当する構成単位を主成分とする」と特定するものではあるが,本願発明1のような特定の構造を有していない点。
・ 相違点2
カチオン性界面活性剤(カチオン界面活性剤)について,本願発明1は「炭素原子22個の長さのアルキル基又はアルケニル基を1つ有するモノアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤であるか,あるいは該界面活性剤と,炭素原子12?30個のアルキル長鎖を2つ有するジアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤との組み合わせであ」ると特定するのに対し,引用発明1はそのような特定を有しない点。
・ 相違点3
カチオン性界面活性剤と高融点脂肪族化合物(高級アルコール)との関係について,本願発明1は「前記カチオン性界面活性剤及び前記高融点脂肪族化合物の合計に対する前記カチオン性界面活性剤のモル%が25%?35%である」と特定するのに対し,引用発明1はそのような特定を有しない点。
イ 相違点についての検討
(ア) 相違点1について
ヘアコンディショニング組成物に配合され,その構造中に親水性ノニオン性単量体に相当する構成単位とアニオン性単量体に相当する構成単位とを含むコポリマーとして相違点1に係る構成を有するものは,引用文献2に開示されているとおり(特に請求項1,請求項23,段落0022?0027を参照。),本願の優先日前に公知である。
さすれば,引用発明1のコポリマーとして引用文献2に開示のコポリマーを採用する程度のことは,当業者であれば想到容易である。
そして,本願明細書には,本願発明1が相違点1に係る構成を有することで格別顕著な効果を奏する旨の記載はなく,しかも相違点1に係る特定の構造を有する付着ポリマー(コポリマー)を含む本願発明1が,構造中に親水性ノニオン性単量体に相当する構成単位とアニオン性単量体に相当する構成単位とを含むコポリマーを含む引用発明1に比し,課題解決の点で有利な効果を奏するものと認めるに足りる根拠もない。
なお,請求人は,相違点1に関連して,本願発明1が奏する効果について,平成28年2月16日付け意見書(特に2頁21行?同下から7行)において縷々主張するが,ここで主張する内容は本願明細書に記載されていないなど根拠がないものであって,採用できない。
(イ) 相違点2について
ヘアコンディショニング組成物に配合されるカチオン性界面活性剤として,相違点2に係る構成を有するものを用いることは,引用文献1(例えば,【0070】参照。),引用文献3(例えば,カチオン性界面活性剤-3を用いた実施例について参照。)にも開示されているように,本願の優先日前において周知の技術である。
そして,引用発明1の「カチオン界面活性剤」について,これを「炭素原子22個の長さのアルキル基又はアルケニル基を1つ有するモノアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤であるか,あるいは該界面活性剤と,炭素原子12?30個のアルキル長鎖を2つ有するジアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤との組み合わせ」とすることは,当業者であれば格別困難なくなし得ることである。
(ウ) 相違点3について
本願発明1が相違点3に係る構成を有することの意義について,本願明細書には,濡れた毛髪に対する摩擦低減性を改良できる旨の記載がある(例えば【0016】,【0019】,実施例と比較例との対比。)。
ところで,カチオン性界面活性剤及び高融点脂肪族化合物が配合されたヘアコンディショニング組成物について,カチオン性界面活性剤と高融点脂肪族化合物とのモル比に着目し,この値を調整することで,本願発明1と同様の課題を解決しようとする技術思想は,引用文献3(特に【0038】参照)に開示されているように当業者に公知である。
そして,引用文献3に接した当業者であれば,引用発明1において,カチオン界面活性剤(カチオン性界面活性剤)と高級アルコール(高融点脂肪族化合物)とのモル比に着目し,この値を適当に調整して濡れた毛髪に対する摩擦低減性を改良しようとすることは,容易に想到しうることである。その際,上記モル比を,カチオン性界面活性剤及び高融点脂肪族化合物の合計に対するカチオン性界面活性剤のモル%に置き換え,その値を25%?35%とする程度のことは,単なる設計事項にすぎない。
しかも,「25%?35%」という数値範囲の上限値,下限値に臨界的意義を見いだすことができず,本願発明1の解決課題である,濡れた毛髪に対する摩擦低減性の改良という効果は,特に引用文献1及び3の記載から予測の範囲内であるといえる。また,そもそも本願発明1の「モル%」は,高融点脂肪族化合物と「炭素原子22個の長さのアルキル基又はアルケニル基を1つ有するモノアルキル四級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤であるか,あるいは該界面活性剤と…との組み合わせ」といった特定のカチオン性界面活性剤との関係におけるものとして特定されてはいるが,本願発明1は上記特定のカチオン性界面活性剤以外のカチオン性界面活性剤を含むことを排除しておらず,しかも本願明細書(例えば【0016】)には,カチオン性界面活性剤(上記特定のカチオン性界面活性剤に限定されない。)のモル%が「25%?35%」を満たさないとき,上記効果を奏するものとはならない旨記載されていることからすれば,その意味においても,本願発明1の相違点3に係る構成によって奏する効果は何ら格別なものではないといえる。(当審注:因みに,引用文献1の実施例で使用されるカチオン界面活性剤(ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド)は本願発明1の特定のカチオン性界面活性剤ではないが,そのモル%は約27%と計算から導出され,この値は本願発明1の数値範囲を満足する。)
ウ 小括
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明1に対し,いわゆる進歩性を有しないといえる。

(2) 本願発明2?5について
本願の請求項2?5に記載されている特定事項は,引用文献2に記載されている。
よって,本願発明2?5についても,上記(1)で検討したことと同様の理由により,進歩性を有しないといえる。

4 本願発明と引用発明3との対比,判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明3とを対比すると,引用発明3の「カチオン性界面活性剤」は「ベヘニルトリメチル塩化アンモニウムであるか,あるいは該界面活性剤と親水性置換されたジ長鎖アルキル四級アンモニウム塩類との組み合わせ」であるから,本願発明1の「カチオン性界面活性剤」に相当し,また引用発明3の「水溶性ポリマー」は本願発明1の「付着ポリマー」に対応するものであるといえる。
よって,上記両発明の相違点は次のとおりであると認める。
・ 相違点4
付着ポリマー(水溶性ポリマー)について,本願発明1は「構造中にカルボキシル基を有するビニルモノマー(A),及び次式(1)により表されるビニルモノマー(B)を含」むと特定するのに対し,引用発明3は「(b)水溶性アニオン性ポリマー,水溶性両性ポリマー,及びこれらの混合物から成る群から選択される…水溶性ポリマー」と特定するものではあるが,本願発明1のような特定の構造を有していない点。
・ 相違点5
カチオン性界面活性剤と高融点脂肪族化合物との関係について,本願発明1は「前記カチオン性界面活性剤及び前記高融点脂肪族化合物の合計に対する前記カチオン性界面活性剤のモル%が25%?35%である」と特定するのに対し,引用発明3は「カチオン性界面活性剤対高融点脂肪族化合物のモル比が約1:2?約1:6の範囲内」と特定されるものである点。
イ 相違点についての検討
(ア) 相違点4について
上記相違点1について検討したことと同旨である。すなわち,引用文献3は,引用発明3の「水溶性ポリマー」の例として,水溶性アニオン性ポリマーやアクリレートコポリマー類を挙げているところ(例えば【請求項2】,【0029】),引用発明3の水溶性ポリマーとして引用文献2に開示のコポリマーを採用する程度のことは,当業者であれば想到容易である。
(イ) 相違点5について
上記相違点3について検討したことと同旨である。
ウ 小括
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明3に対し,進歩性を有しないといえる。

(2) 本願発明2?5について
本願発明2?5についても,上記(1)で検討したことと同様の理由により,進歩性を有しない。

第2 理由2について
本願発明1?5の特定事項である「高融点脂肪族化合物」の技術的意味が,本願明細書の【0031】?【0039】の記載を参酌しても,明確でない。
すなわち,「高融点」とあるが,どの程度の融点を持つ脂肪族化合物を指して高融点脂肪族化合物というか明らかでない。また,【0033】には,例として,脂肪族アルコール誘導体,脂肪族誘導体を挙げているところ,どのような構造の「誘導体」までを高融点脂肪族化合物というかについても明らかでない。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-18 
結審通知日 2018-05-22 
審決日 2018-06-05 
出願番号 特願2015-503551(P2015-503551)
審決分類 P 1 8・ 537- WZF (A61K)
P 1 8・ 121- WZF (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 團野 克也小出 直也  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 安川 聡
関 美祝
発明の名称 カチオン性界面活性剤及び付着ポリマーを含むヘアコンディショニング組成物  
代理人 大宅 一宏  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  

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