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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B61B
管理番号 1345362
審判番号 不服2017-10971  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-24 
確定日 2018-10-18 
事件の表示 特願2016-23872号「2段伸縮ホームドア装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月21日出願公開、特開2016-130128号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成25年11月6日を出願日とする特願2013-230099号(以下「原出願」という。)の一部を平成28年2月10日に新たな特許出願としたものであって、同年11月8日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月16日に意見書が提出され、同年4月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、平成29年7月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「戸袋に収納された二段伸縮の扉部を駆動機構によりスライドさせて乗降用の開口部を開閉する2段伸縮ホームドア装置において、
前記扉部は、第1段扉の内部に第2段扉がスライドして収納され、かつ、前記第1段扉が前記戸袋に対してスライド可能に支持されるとともに前記第2段扉が前記第1段扉に対してスライド可能に支持され、
前記駆動機構は、
前記戸袋に固定設置されて電動機により前記戸袋に対して前記第1段扉をスライドさせる第1段扉駆動部と、
前記戸袋内に固定設置されたラックギアに前記第1段扉に取り付けられたピニオンギアを噛合させ、前記第1段扉の移動に伴い前記ラックギアが前記ピニオンギアを回転させるラック&ピニオン機構、前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側シーブと、前記駆動側シーブの回転によって駆動されるタイミングベルトとを備えているタイミングベルト機構、前記第2段扉及び前記タイミングベルト機構の前記タイミングベルトに固定されて双方を連結する連結固定部材を備えている第2段扉駆動部と、を具備して構成されることを特徴とする2段伸縮ホームドア装置。」

第2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成28年11月8日付けの拒絶理由通知における理由であり、概略、本願発明は、その原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1:特開2000-108890号公報
引用文献2:特開2004-42841号公報

第3.引用文献
1.引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】鉄道のプラットホームに設置される衝立状の戸袋と、この戸袋に出入り自在に収納される引き戸式のドアとからなるプラットホーム用開閉柵において、
前記ドアを前記戸袋にスライド可能に支持させた後ドアと、この後ドアにスライド可能に支持させた前ドアとからなる2段式ドアとするとともに、前記戸袋内に設置した駆動源で前記後ドアを駆動して出入り動作させ、この後ドアの出入り動作に連動させて前記前ドアを出入り動作させるようにしたことを特徴とするプラットホーム用開閉柵。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、乗降客の線路上への転落や列車との接触を防止するために鉄道のプラットホームに装備される開閉可能な安全柵(開閉柵というものとする。)に関する。」

(1c)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図1?図4に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。ここで、図1は戸袋の側壁を破断して示した開閉柵のドア引き出し状態の正面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図、図3は同じく III-III 線に沿う断面図、図4は同じくIV-IV線に沿う断面図である。これらの図において、開閉柵は衝立状の戸袋1と、この戸袋1に出入り自在に収納される前後2枚の引き戸式のドア2(後ドア)及び3(前ドア)とからなり、戸袋1はプラットホーム4の床面に図示しないボルトにより固定されている。後ドア2及び前ドア3は、ドア開時は偏平な中空体からなる戸袋1内に引き入れられ、ドア閉時には図1及び図2の右端の開口5から図示の通り押し出される。ここで、後ドア2は戸袋1にスライド可能に支持され、前ドア3は後ドア2にスライド可能に支持されており、後ドア2は戸袋内に設置された駆動源で駆動されて出入り動作し、前ドア3は後ドア2の出入り動作に連動して出入り動作するようになっているが、以下、その機構について説明する。
【0012】まず、戸袋1の一方の側壁の内壁面上部に、後ドア2を案内支持するスライドレール6が固定され、これに対応して後ドア2の側面上部の後側に前後一対のスライド軸受7が固定されている。スライド軸受7は、図4に示すようにスライドレール6と嵌合し、その上を後ドア2を吊り下げながらスライドする。図示しないが、スライド軸受7は無限循環運動をする多数のボールを介してスライドレール6と転がり接触するもので、このようなスライドレール6及びスライド軸受7はいずれも公知である。スライド軸受7によりスライドレール6に吊り下げ支持された後ドア2は、底部に固定された前後一対の回転輪8が戸袋1の下部に固定されたU字断面のガイドレール9にスライド可能に嵌め込まれ、左右方向に振れ止めされている。
【0013】一方、後ドア2にはスライド軸受7のやや下に、前ドア3の出入り方向に沿ってボールねじ付きのスライドレール10が固定され、これに対応して前ドア2の対向側面に前後一対のスライド軸受11が固定されている。スライドレール10はその前面に平行に送りねじとしてのボールねじ12を有し、このボールねじ12はスライドレール10の両端の軸受けに回転自在に支持されている。めねじ部を内蔵するスライド軸受11は、このめねじ部を介してボールねじ12と螺合するとともに、スライドレール10と嵌合し、ボールねじ12が回転することによりスライドレール10上を前ドア3を吊り下げながらスライドする。スライド軸受11も無限循環する多数のボールを有し、このボールを介してボールねじ12及びスライドレール10と転がり接触するものである。ボールねじ付きスライドレール10を含めて、これらはすべて公知である。スライド軸受11によりスライドレール10に吊り下げ支持された前ドア3は、下部側面にL形金具を介して固定された前後一対の回転輪13(図4参照)が後ドア2の内側下部に固定された逆U字断面のガイドレール14にスライド可能に嵌め込まれることにより、左右方向に振れ止めされている。
【0014】次に、ボールねじ12の後部側の軸端には傘歯車15が取り付けられるとともに、一端に傘歯車15と噛み合う傘歯車16が取り付けられ、他端に平歯車17が取り付けられた歯車軸18がボールねじ12と直交するように設けられ、この歯車軸18は後ドア2に固着された支持アーム19に転がり軸受20(図3)を介して支持されている。平歯車17はスライドレール6が取り付けられた戸袋2(審決注:「戸袋1」の誤記)の側壁と反対側の側壁の内壁面に近接するとともに、この内壁面には後ドア2の開閉ストロークに相応する長さのラック21が固定され、平歯車17はこのラック21に噛み合っている。一方、戸袋1の上部には戸袋2(審決注:後ドア2の誤記)を駆動する駆動源としてのリニアモータ22が設けられている。このリニアモータ22は、戸袋1側の固定子23と後ドア2側の可動子24とからなり、固定子23は後ドア2の開閉ストロークに相応する長さに渡って戸袋1に配置されている。また、可動子24は連結金具25を介して後ドア2に固定され、間隙を介して固定子23と対向している。
【0015】上述した開閉柵の開閉動作は以下の通りである。図1の閉状態からリニアモータ22を起動し、後ドア2を左方向に駆動すると、後ドア2はスライド軸受7を介してスライドレール6上を摺動し、戸袋1内に引き入れられる。それと同時に、後ドア2と一体に移動する平歯車17は戸袋1に固定されたラック21との噛み合いにより回転し、同軸上の傘歯車16も一体に回転する。これにより、傘歯車16と噛み合う傘歯車15が回転し、ボールねじ12も回転する。その結果、ボールねじ12と螺合するスライド軸受11は左方向に送られ、これに支持された前ドア3は後ドア2と一緒に戸袋1内に引き込まれる。なお、ボールねじ12のつる巻方向は後ドア2と前ドア3とが同方向に移動するように設定されていることはいうまでもない。後ドア2は図1の2点鎖線位置に達すると移動が完了して停止し、同時に前ドア3も後ドア2と重なって同位置に停止する。この位置からリニアモータ22を逆方向に駆動すれば、後ドア2及び前ドア3は同様の動作で図1の閉状態まで引き出される。」

(1d)「【0017】また、前ドア3を駆動し、前ドア3が一定距離移動した時点で後ドア2を引っ張り(ドア閉時)あるいは押して(ドア開時)、後ドア2を移動させるような構成は開閉動作が逐次的となるのに対し、図示実施の形態においては、後ドア2が移動を始めると、前ドア3もこれに連動して直ちに移動を始めるので、後ドア2と前ドア3とは同時平行的に開閉動作を行う。従って、図示実施の形態によれば、上記逐次的な動作を行うものに比べてドアの開閉動作が迅速になる。後ドア2の駆動源としては、リニアモータ22に限らず回転式モータも勿論使用可能である。しかし、後ドア2は直線運動をするものであるため、リニアモータ22を用いれば回転式モータを使用する場合のように回転運動を直線運動に変換する機構が不要であり、その分、構造が簡単になる。」

(1e)以下の【図1】及び【図2】が図示されている。

(1f)記載事項(1a)【請求項1】の「前記戸袋内に設置した駆動源」に関し、記載事項(1c)段落【0014】には「戸袋1の上部には後ドア2を駆動する駆動源としてのリニアモータ22が設けられている。」と記載され、記載事項(1d)には「後ドア2の駆動源としては、リニアモータ22に限らず回転式モータも勿論使用可能である。」と記載されているから、上記「前記戸袋内に設置した駆動源」として「回転式モータ」である態様が開示されているといえる。

以上の記載事項、認定事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には以下の発明が開示されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「鉄道のプラットホーム4に設置される衝立状の戸袋1と、この戸袋1に出入り自在に収納される引き戸式のドア2、3とからなるプラットホーム用開閉柵において、
前記ドア2、3を前記戸袋1にスライド可能に支持させた後ドア2と、この後ドア2にスライド可能に支持させた前ドア3とからなる2段式ドアとするとともに、前記戸袋1内に設置した駆動源で前記後ドア2を駆動して出入り動作させ、この後ドア2の出入り動作に連動させて前記前ドア3を出入り動作させるようにした機構であって、
前記戸袋1内に設置した回転式モータで前記後ドア2を駆動して出入り動作させる機構と、
前記後ドア2には前記前ドア3の出入り方向に沿ってボールねじ付きのスライドレール10が固定され、これに対応して前記前ドア2の対向側面に前後一対のスライド軸受11が固定されており、前記スライドレール10はその前面に平行に送りねじとしてのボールねじ12を有し、このボールねじ12は前記スライドレール10の両端の軸受けに回転自在に支持されていて、前記スライド軸受11はめねじ部を内蔵し、このめねじ部を介して前記ボールねじ12と螺合するとともに、前記スライドレール10と嵌合しており、前記ボールねじ12の後部側の軸端には傘歯車15が取り付けられるとともに、一端に前記傘歯車15と噛み合う傘歯車16が取り付けられ、他端に平歯車17が取り付けられた歯車軸18が前記ボールねじ12と直交するように設けられ、この歯車軸18は前記後ドア2に固着された支持アーム19に転がり軸受20を介して支持されており、前記平歯車17はスライドレール6が取り付けられた前記戸袋1の側壁と反対側の側壁の内壁面に近接するとともに、この内壁面には前記後ドア2の開閉ストロークに相応する長さのラック21が固定され、前記後ドア2と一体に移動する前記平歯車17は前記戸袋1に固定された前記ラック21との噛み合いにより回転する機構を備える後ドア2の出入り動作に連動させて前記前ドア3を出入り動作させるようにした機構と、を具備して構成されるプラットホーム用開閉柵。」

(2)引用文献2は、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】
軌道のプラットホームに設置される衝立上の戸袋と、前記戸袋にスライド可能に支持させた後扉と、前記後扉にスライド可能に支持させた前扉とからなるプラットホーム用2枚扉式可動柵において、駆動モータ、ベルトまたはチェーン、プーリからなり、前記後扉に固定設置した駆動部によって前記後扉を駆動して出入り動作させ、前記後扉の出入り動作に連動させて同時に前記駆動部によって前記前扉を出入り動作させ、前記駆動部および前記後扉と前記前扉が一体となって移動し、開閉動作することを特徴とするプラットホーム用2枚扉式可動柵。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道車両の駅構内のプラットホームに設置され、乗降客の線路上への転落事故あるいは列車との接触事故を防止するプラットホーム用2枚扉式可動柵に関する。」

(2c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来方式では、後扉に連動して直ちに同時平行的に前扉も開閉動作させる機構にラック、平歯車、歯車軸、転がり軸受、傘歯車という歯車機構を使い、さらにボールねじ付きのスライドレールを使っているため、部品点数も多く、組立工数大であること、騒音および保守性の面でも問題があった。
リンク駆動においては、前扉に後扉が追従する機構のため、開閉動作が逐次的になり、開閉速度を迅速にする点において問題があった。
さらに、いずれの従来方式においても、標準駆動方式であるベルトあるいはボールねじによる簡単構造ではないため、駆動装置を2枚扉専用のものを設置する必要があり、1枚扉式と共通化できないという問題があった。」

(2d)「【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のプラットホーム用2枚扉式可動柵の一実施形態を示し、プラットホーム用2枚扉式可動柵(以下、単に可動柵と記すこともある。)の内部構造をホーム側から見た正面図である。図2は、本発明の扉開状態の動作図、図3は、図1の水平面のA-A断面の断面図、図4は、図1の垂直面のB-B断面の断面図である。
これらの図において、可動柵は、衝立状の戸袋1と、この戸袋1に出入り自在に収納される前後2枚の引き戸式の扉2(後扉)及び3(前扉)とからなり、戸袋1は、プラットホーム4の床面に図示しないボルトにより固定されている。後扉2及び前扉3は、扉閉時には図1の戸袋1の右端の開口1aから図示の通り押し出され、扉開時には図2の偏平な中空体からなる戸袋1内に引き入れられる。 ここで、後扉2は戸袋1にスライド可能に支持され、前扉3は後扉2にスライド可能に支持されており、後扉2はこの後扉自体に固定設置された駆動モータ9でベルト駆動されて出入り動作し、前扉3は後扉2の出入り動作に連動して出入り動作するようになっている。」

(2e)「【0007】
以下、その機構について説明する。
まず、戸袋1の一方の側壁の内壁面中央上部に、後扉2を案内支持するスライドレール5が固定され、これに対応して後扉2の側面中央上部の後側に前後一対のスライド軸受6が固定されている。スライド軸受6は、図4に示すように、スライドレール5と嵌合し、後扉2を支持しながらスライドする。図示しないが、スライド軸受6は、無限循環運動をする多数のボール等を介してスライドレール5と転がり接触するものであり、このようなスライドレール5及びスライド軸受6はいずれも公知である。スライド軸受6によりスライドレール5に支持された後扉2は、底部は逆U字断面のガイドレール18と戸袋1の下部に固定された回転輪17がスライド可能に嵌め込まれ、左右方向に振れ止めされている。一方、後扉2には、スライド軸受6のやや上に前扉3の出入り方向に沿ってスライドレール7が固定され、これに対応して前扉3の対向側面に前後一対のスライド軸受8が固定されている。後扉2と同方式でスライド軸受8は、図4に示すように、スライドレール7と嵌合し、前扉3を支持しながらスライドする。スライド軸受8によりスライドレール7に支持された前扉3は、前扉3の底部は逆U字断面のガイドレール20と後扉2の下部に固定された回転輪19がスライド可能に嵌め込まれ、左右方向に振れ止めされている。
一方、図3に示すように、後扉2の一方の側壁の内壁面には、前後扉を駆動する動源としての駆動モータ9、プーリ10を固定設置し、他方のアイドルプーリ12は、前扉3の収納に干渉しない位置に後扉2と一体となった駆動部取付ブラケット16に取付固定し、ベルト11を取付ける。扉閉時は、前扉3は後扉2の中に完全に収納される。図1に示すように、ベルト11の下部駆動モータ9側は、戸袋1から張り出したブラケット13に固定支持し、ベルト11の上部右側は前扉3から張り出したブラケット14に固定支持されている。後扉2、前扉3の長さは同一であり、各々のブラケットからの固定支持間隔は、この前後扉の長さと一致して取付けてある。キャタピラ15は駆動モータ9のリード線を保護し、追従可動するものである。
なお、図1において、ベルト11の下端に後扉2をブラケット13によって固定支持し、ベルト11の上端に前扉3をブラケット14によって固定支持することに代えて、ベルト11の上端に後扉2をブラケット13によって固定支持し、ベルト11の下端に前扉3をブラケット14によって固定支持するようにしてもよい。」

(2f)以下の【図1】及び【図3】が図示されている

第4.対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)後者の「戸袋1」は前者の「戸袋」に相当し、後者の「ドア2、3」は前者の「扉部」に相当し、後者の「前記戸袋1内に設置した駆動源で前記後ドア2を駆動して出入り動作させ、この後ドア2の出入り動作に連動させて前記前ドア3を出入り動作させるようにした機構」は前者の「駆動機構」に相当するといえる。また、後者は「前記ドア2、3を前記戸袋1にスライド可能に支持させた後ドア2と、この後ドア2にスライド可能に支持させた前ドア3とからなる2段式ドア」との構成を有すること、及び後者の「プラットホーム用開閉柵」は、「鉄道のプラットホーム4」の乗降用の開口部を開閉することは明らかであることを踏まえると、後者の「鉄道のプラットホーム4に設置される衝立状の戸袋1と、この戸袋1に出入り自在に収納される引き戸式のドア2、3とからなるプラットホーム用開閉柵」は、前者の「戸袋に収納された二段伸縮の扉部を駆動機構によりスライドさせて乗降用の開口部を開閉する2段伸縮ホームドア装置」に相当するといえる。

(2)後者の「後ドア2」及び「前ドア3」は前者の「第1段扉」及び「第2段扉」に相当するといえる。そして、後者の「前記ドア2、3を前記戸袋1にスライド可能に支持させた後ドア2と、この後ドア2にスライド可能に支持させた前ドア3とからなる2段式ドアとする」構成と、前者の「前記扉部は、第1段扉の内部に第2段扉がスライドして収納され、かつ、前記第1段扉が前記戸袋に対してスライド可能に支持されるとともに前記第2段扉が前記第1段扉に対してスライド可能に支持され」る構成とは、「前記扉部は、前記第1段扉が前記戸袋に対してスライド可能に支持されるとともに前記第2段扉が前記第1段扉に対してスライド可能に支持され」る構成の限度で共通するといえる。

(3)後者の「回転式モータ」と前者の「電動機」とは、「駆動装置」の限度で共通するといえるから、後者の「前記戸袋1内に設置した回転式モータで」「戸袋1にスライド可能に支持させた後ドア2」「を駆動して出入り動作させる機構」と、前者の「前記戸袋に固定設置されて電動機により前記戸袋に対して前記第1段扉をスライドさせる第1段扉駆動部」とは、「前記戸袋に固定設置されて駆動装置により前記戸袋に対して前記第1段扉をスライドさせる第1段扉駆動部」の限度で共通するといえる。

(4)後者の「前記戸袋2の内壁面に」「固定され」た「前記後ドア2の開閉ストロークに相応する長さのラック21」は、前者の「前記戸袋内に固定設置されたラックギア」に相当し、後者の「前記後ドア2に固着された支持アーム19に転がり軸受20を介して支持され」た「歯車軸18」に「取り付けられた」「平歯車17」は、後者の「前記第1段扉に取り付けられたピニオンギア」に相当し、後者の「前記後ドア2と一体に移動する前記平歯車17は前記戸袋1に固定された前記ラック21との噛み合いにより回転する機構」は、前者の「ラックギアに前記第1段扉に取り付けられたピニオンギアを噛合させ、前記第1段扉の移動に伴い前記ラックギアが前記ピニオンギアを回転させるラック&ピニオン機構」に相当するといえる。また、後者の「歯車軸18」の「他端に平歯車17が取り付けられ」、「歯車軸18」の「一端に取り付けられ前記傘歯車15と噛み合う傘歯車16」と前者の「前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側シーブ」とは、「前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側回転要素」の限度で共通し、後者の「前記ボールねじ12の後部側の軸端には傘歯車15が取り付けられるとともに、一端に前記傘歯車15と噛み合う傘歯車16が取り付けられ」る機構と前者の「前記駆動側シーブの回転によって駆動されるタイミングベルトとを備えているタイミングベルト機構」とは、「前記駆動側回転要素の回転運動を直線運動に変換する機構」の限度で共通し、後者の「後ドア2の出入り動作に連動させて前記前ドア3を出入り動作させるようにした機構」は前者の「第2段扉駆動部」に相当する。そうすると、後者の「前記後ドア2には前記前ドア3の出入り方向に沿ってボールねじ付きのスライドレール10が固定され、これに対応して前記前ドア2の対向側面に前後一対のスライド軸受11が固定されており、前記スライドレール10はその前面に平行に送りねじとしてのボールねじ12を有し、このボールねじ12は前記スライドレール10の両端の軸受けに回転自在に支持されていて、前記スライド軸受11はめねじ部を内蔵し、このめねじ部を介して前記ボールねじ12と螺合するとともに、前記スライドレール10と嵌合しており、前記ボールねじ12の後部側の軸端には傘歯車15が取り付けられるとともに、一端に前記傘歯車15と噛み合う傘歯車16が取り付けられ、他端に平歯車17が取り付けられた歯車軸18が前記ボールねじ12と直交するように設けられ、この歯車軸18は前記後ドア2に固着された支持アーム19に転がり軸受20を介して支持されており、前記平歯車17はスライドレール6が取り付けられた前記戸袋2の側壁と反対側の側壁の内壁面に近接するとともに、この内壁面には前記後ドア2の開閉ストロークに相応する長さのラック21が固定され、前記後ドア2と一体に移動する前記平歯車17は前記戸袋1に固定された前記ラック21との噛み合いにより回転する機構を備える構成」と、前者の「前記戸袋内に固定設置されたラックギアに前記第1段扉に取り付けられたピニオンギアを噛合させ、前記第1段扉の移動に伴い前記ラックギアが前記ピニオンギアを回転させるラック&ピニオン機構、前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側シーブと、前記駆動側シーブの回転によって駆動されるタイミングベルトとを備えているタイミングベルト機構、前記第2段扉及び前記タイミングベルト機構の前記タイミングベルトに固定されて双方を連結する連結固定部材を備えている第2段扉駆動部」とは、「前記戸袋内に固定設置されたラックギアに前記第1段扉に取り付けられたピニオンギアを噛合させ、前記第1段扉の移動に伴い前記ラックギアが前記ピニオンギアを回転させるラック&ピニオン機構、前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側回転要素と、前記駆動側回転要素の回転運動を直線運動に変換する機構を備えている第2段扉駆動部」である限度で共通する。

以上によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
戸袋に収納された二段伸縮の扉部を駆動機構によりスライドさせて乗降用の開口部を開閉する2段伸縮ホームドア装置において、
前記扉部は、前記第1段扉が前記戸袋に対してスライド可能に支持されるとともに前記第2段扉が前記第1段扉に対してスライド可能に支持され、
前記駆動機構は、
前記戸袋に固定設置されて電動機により前記戸袋に対して前記第1段扉をスライドさせる第1段扉駆動部と、
前記戸袋内に固定設置されたラックギアに前記第1段扉に取り付けられたピニオンギアを噛合させ、前記第1段扉の移動に伴い前記ラックギアが前記ピニオンギアを回転させるラック&ピニオン機構、前記ピニオンギアと同軸であり前記ピニオンギアと共に回転する駆動側回転要素と、前記駆動側回転要素の回転運動を直線運動に変換する機構を備えている第2段扉駆動部と、を具備して構成される2段伸縮ホームドア装置。

<相違点1>
本願発明は、「第1段扉の内部に第2段扉がスライドして収納され」るのに対し、
引用発明は、「後ドア2にスライド可能に支持させた前ドア3とからなる2段式ドア」であるが、後ドア2の内部に前ドア3が収納されているものではない点。

<相違点2>
「駆動装置」に関し、
本願発明は、「電動機」であるのに対し、
引用発明は、「回転式モータ」である点。

<相違点3>
「第2段扉駆動部」に関し、
本願発明は、「駆動側回転要素」が「駆動側シーブ」であり、「回転運動を直線運動に変換する機構」が「前記駆動側シーブの回転によって駆動されるタイミングベルトとを備えているタイミングベルト機構、前記第2段扉及び前記タイミングベルト機構の前記タイミングベルトに固定されて双方を連結する連結固定部材を備えている」のに対し、
引用発明は、「駆動側回転要素」が「傘歯車16」であり、「回転運動を直線運動に変換する機構」が「前記後ドア2には前記前ドア3の出入り方向に沿ってボールねじ付きのスライドレール10が固定され、これに対応して前記前ドア2の対向側面に前後一対のスライド軸受11が固定されており、前記スライドレール10はその前面に平行に送りねじとしてのボールねじ12を有し、このボールねじ12は前記スライドレール10の両端の軸受けに回転自在に支持されていて、前記スライド軸受11はめねじ部を内蔵し、このめねじ部を介して前記ボールねじ12と螺合するとともに、前記スライドレール10と嵌合しており、前記ボールねじ12の後部側の軸端には傘歯車15が取り付けられる」点。

2.相違点についての判断
(1)相違点1について
プラットホーム用開閉柵の分野において、2段式ドアを構成する場合に、本願発明のような後ドアの内部に前ドアを収納する手段と引用発明のような後ドアに対してオフセットして前ドアを配置する手段はいずれも従来からよく知られている。2つのよく知られた手段があるときに、いずれを採用するかは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして、引用文献2には、第2.1.(2)の記載事項(2d)の「前扉3は後扉2にスライド可能に支持されており」との記載及び記載事項(2e)の「扉閉時は、前扉3は後扉2の中に完全に収納される。」との記載から「後扉2の内部に前扉3がスライドして収納される構成」(以下「引用文献2に記載された技術的事項1」という。)が開示されているといえる。
したがって、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項1を参考にして、引用発明の「後ドア2にスライド可能に支持させた前ドア3とからなる2段式ドア」において、後ドア2の内部に前ドア3がスライドして収納される構成を採用することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用発明の「回転モータ」は、リニアモータの代替として用いられているものであるから、リニアモータと同様に電動型のもの、つまり電動回転モータを採用することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
相違点3は、「第2段扉駆動部」の構成において、ピニオンギアから得られた回転運動を直線運動に変換する機構に差異があり、本願発明では「駆動側シーブの回転によって駆動されるタイミングベルトとを備えているタイミングベルト機構」であるのに対し、引用発明は、いわゆるボールネジ・ナット機構を用いている点で相違することに集約されるものといえる。
まず、回転運動を直線運動に変換する機構として、ベルト機構を用いること、ボールネジ・ナット機構を用いることは、いずれも機械工学の一般的技
術として従来からよく知られている。2つのよく知られた手段があるときに、いずれを採用するかは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして、引用文献2には、第2.1.(2)の記載事項(2a)?(2c)によれば、「プラットホーム用2枚扉式可動柵における前扉の駆動機構として、プーリ10と、前記プーリ10の回転によって駆動されるベルト11とを備えているベルト機構、前扉及び前記ベルト機構の前記ベルト11に固定されて双方を連結するブラケット14を備えている構成を用いること。」(以下「引用文献2に記載された技術的事項2」という。)が開示されているといえる。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項2とは、2段式ドアによるプラットホーム用開閉柵という技術分野でも共通し、しかも、引用文献2には記載事項(2c)に「上述の従来方式では、後扉に連動して直ちに同時平行的に前扉も開閉動作させる機構にラック、平歯車、歯車軸、転がり軸受、傘歯車という歯車機構を使い、さらにボールねじ付きのスライドレールを使っているため、部品点数も多く、組立工数大であること、騒音および保守性の面でも問題があった。」との知見が示されているから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項2を参考とする動機付けは充分存在するものといえる。
そして、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項2を参考にして、引用発明の「後ドア2の出入り動作に連動させて前記前ドア3を出入り動作させるようにした機構」において、「傘歯車16」をプーリ(本願発明の「駆動側シーブ」に対応)に変更し、その後の機構として、プーリと、前記プーリの回転によって駆動されるベルトとを備えているベルト機構、前ドア3及び前記ベルト機構の前記ベルトに固定されて双方を連結するブラケット(本願発明の「連結固定部材」に対応)を備えている構成にすることは当業者であれば適宜になし得ることである。また、ベルトとしてタイミングベルトを用いることも設計的事項の範囲である。
よって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)そして、本願発明の効果についても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項1、2から予測し得る程度のものであり、格別のものとはいえない。

3.小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。

したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-17 
結審通知日 2018-08-21 
審決日 2018-09-03 
出願番号 特願2016-23872(P2016-23872)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前原 義明  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 中田 善邦
島田 信一
発明の名称 2段伸縮ホームドア装置  
代理人 長田 大輔  
代理人 藤田 考晴  
代理人 川上 美紀  
代理人 三苫 貴織  
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