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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24D
管理番号 1345397
審判番号 不服2017-4538  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-31 
確定日 2018-10-23 
事件の表示 特願2014-540350「可視内容物を含む喫煙物品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日国際公開、WO2013/068100、平成26年12月 8日国内公表、特表2014-532433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年11月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年11月7日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月28日に最後の拒絶理由が通知され、これに対して平成28年9月28日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成28年11月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年3月31日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、少なくとも、この出願の請求項1?14に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例2に記載された発明及び引用例1?8に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1.国際公開第2011/077141号
引用例2.国際公開第2011/118001号
引用例3.米国特許第4984589号明細書
引用例4.中国実用新案第201667985号明細書
引用例5.実願昭63-021881号(実開平01-127495号)のマイクロフィルム
引用例6.国際公開第2011/117743号
引用例7.特表2006-517106号公報
引用例8.国際公開第2009/106374号


第3 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明は、平成28年9月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「喫煙可能材料及びマウスピースを含む喫煙物品であって、該マウスピースは、軸方向に整列した少なくとも3つのセグメントを含み、1つのセグメントは、他の2つのセグメント間に配置された、破壊可能な流体含有カプセルが内部に配置されたキャビティを定め、該キャビティの少なくとも一部の上に重なり合う実質的に滑らかな透明部分を含む、透明ワニスを塗布された1又はそれ以上の層を有する第1のラッパーが、該第1のラッパーを通して前記カプセルが少なくとも部分的に見えるように少なくとも前記キャビティを取り囲み、前記カプセルの流体は、添加物又は香味で形成され、又はこれらを含む
ことを特徴とする喫煙物品。」

2 引用例
(1)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開2011/118001号(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(「・・・」は省略を意味する。以下同じ。)
(ア)「[0020]図1に示すように、本発明に係るシガレットフィルタ1は、複数(図では2個)のフィルタ材2と、カプセル3と、成形紙4と、密着手段5で形成されている。フィルタ材2は、間隔を存して一方向に並べられている。フィルタ材2の間には空洞6が形成され、ここにカプセル3が配設されている。カプセル3には、液体からなる付香剤や吸着剤が封入されている。付香剤としては、例えば、メンソール等の香料等がある。吸着剤としては、例えば、ハイドロタルサイト等がある。カプセル3は、例えばゼラチンで形成されている。したがって、カプセル3を潰すことにより、内容液たる付香剤や吸着剤が放出される。複数のフィルタ材2及びカプセル3は、1枚の成形紙4で包み込まれている。フィルタ材2と成形紙4との間には、これらを密着させるための密着手段5が配設されている。この密着手段5の詳細については後述する。
[0021]フィルタ材2は、フィルタ繊維(トウ)が表面に露出しているものである。具体的には、フィルタ繊維を加熱成形して、巻取紙を用いずに中実の円柱状としたものである。すなわち、上述したNWAである。成形紙4は、カプセル3に封入された内容液の浸透を防止するための浸透防止材料を含んでいる。この浸透防止材料の含め方の詳細については後述する。
[0022]以上のような構成により、成形紙4がカプセル3に封入された内容液の浸透を防止するため、将来カプセルフィルタシガレット7(図5参照)として用いた場合に、内容液がチップペーパ8(図5参照)に染み出すことを防止できる。さらに、複数のフィルタ材2と成形紙4との間に密着手段5が備わるため、カプセル3に封入された内容液がフィルタ材2と成形紙4との間から浸透していくことはない。したがって、将来カプセルフィルタシガレット7として用いた場合に、内容液がたばこロッド9(図5参照)の巻紙10(図5参照)に染み出すことを防止できる。」

(イ)「[0023]成形紙4を通して内容液が浸透することを確実に防止するため、成形紙4は、耐水性能を有する耐水紙、又は耐油性能を有する耐油紙、又は耐水及び耐油性能を有する耐水耐油紙を用いることができる。すなわち、成形紙4自体の材料として耐水耐油性能を有する浸透防止材料を用いる。これにより、カプセル3内に封入された内容液である液体が成形紙4を浸透することを確実に防止できる。なお、成形紙4に表面改質を施して耐油又は耐水性を付与してもよい。
[0024]又は、図2に示すように、浸透防止材料として、耐水又は耐油性能を有するワックス12を用いてもよい。この場合は、当該ワックス12を成形紙4とフィルタ材2との密着する全面に塗布する。そして、成形紙4をラッピングする際、ワックス12を溶解する。これにより、カプセル3内に封入された内容液である液体が成形紙4を浸透することを確実に防止できる。さらには、フィルタ材2と成形紙4との間の密着手段5としても用いることができるので、内容液がフィルタ材2と成形紙4との間を伝って浸透していくことも抑制できる。したがって、将来カプセルフィルタシガレット7として用いた場合に、内容液がチップペーパ8に染み出すことを防止できるとともに、内容液がたばこロッド9の巻紙10に染み出すことも併せて防止できる。このワックス12を用いれば、成形紙4を通過する内容液の浸透と、成形紙4の内側を伝う内容液の浸透の両方を防止できるので効率的である。」

(ウ)「[0027]図5は上述したシガレットフィルタを用いたカプセルフィルタシガレットの概略断面図である。カプセルフィルタシガレット7は、シガレットフィルタ1と、たばこロッド9と、チップペーパ8からなる。たばこロッド9とシガレットフィルタ1は、チップペーパ8を介して接続されている。すなわち、チップペーパ8は、シガレットフィルタ1の全周を包み込み、それとともにたばこロッド9の端部をラッピングして保持している。たばこロッド9は、刻たばこ11とこれを包み込む巻紙10からなる。これにより、カプセル3を破砕した後もカプセル3に封入された内容液が指に付着したり、巻紙10に浸透したりすることを防止でき、カプセルフィルタシガレット7として品質の向上を図ることができる。」

(エ)引用例2に記載された発明
上記記載事項を総合すると引用例2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「シガレットフィルタ1と、たばこロッド9と、チップペーパ8からなるカプセルフィルタシガレット7であって、
シガレットフィルタ1は、フィルタ材2が間隔を存して一方向に並べられ、フィルタ材2の間に空洞6が形成され、ここに、潰すことにより、内容液たる付香剤や吸着剤が放出されるカプセル3が配設されており、
複数のフィルタ材2及びカプセル3は、カプセル3に封入された内容液の浸透を防止するため、耐水又は耐油性能を有するワックス12を成形紙4とフィルタ材2との密着する全面に塗布した1枚の成形紙4で包み込まれており、
カプセル3には、液体からなる付香剤や吸着剤が封入された
カプセルフィルタシガレット7」

(2)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4984589号(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「Smoking articles, such as cigarettes, where the wrapper is a paper layer coated on the side facing the tobacco with a material for preventing the penetration of condensate or tar and the resultant formation of brown spots, is known from the Patent Document GB-A-21 43 150. Ethylene vinyl acetate (EVA), polyvinyl acetate (PVA), polyvinyl alcohol (PVOH), carboxymethylcellulose (CMC), starch and nitrocellulose lacquer are suggested as the coating.」(第2欄4?12行、当審訳:タバコのような喫煙物において、ラッパーは、凝縮物又はタールの侵入を防止するための材料をタバコに面する側で被覆した紙層である。そして、結果として褐色斑の形成が、特許文献GB-A-21 43 150で知られている。エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリビニルアルコール(PVOH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ニトロセルロース・ラッカーが上記被覆として提案されている。)

3 本願発明と引用発明の対比
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「シガレットフィルタ1」は、その作用及び構造から本願発明の「マウスピース」に相当し、同様に「たばこロッド9」は「喫煙可能材料」に、「カプセルフィルタシガレット7」は「喫煙物品」に、「空洞6」は「キャビティ」に、「カプセル3」は「カプセル」に、「成形紙4」は「第1のラッパー」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「フィルタ材2が間隔を存して一方向に並べられ、フィルタ材2の間に空洞6が形成され」る態様は、軸方向に、フィルタ材2、空洞6、フィルタ材2の順に配置されていることであり、それぞれが1つのセグメントと表現できるから、本願発明の「軸方向に整列した少なくとも3つのセグメントを含」む態様に相当する。

(ウ)そして、引用発明の「ここに、潰すことにより、内容液たる付香剤や吸着剤が放出されるカプセル3が配設されて」いることは、カプセル3が内容液を含有し、破壊可能なものであり、フィルタ材2の間に形成される空洞6に配設されていることであるから、本願発明の「1つのセグメントは、他の2つのセグメント間に配置された、破壊可能な流体含有カプセルが内部に配置されたキャビティを定め」ていることに相当する。

(エ)引用発明の「複数のフィルタ材2及びカプセル3は、カプセル3に封入された内容液の浸透を防止するため、耐水又は耐油性能を有するワックス12を成形紙4とフィルタ材2との密着する全面に塗布した1枚の成形紙4で包み込まれて」いることと、本願発明の「該キャビティの少なくとも一部の上に重なり合う実質的に滑らかな透明部分を含む、透明ワニスを塗布された1又はそれ以上の層を有する第1のラッパーが、該第1のラッパーを通して前記カプセルが少なくとも部分的に見えるように少なくとも前記キャビティを取り囲」むこととは、「第1のラッパーが、少なくとも前記キャビティを取り囲むこと」の限りで一致する。

(オ)引用発明の「カプセル3には、液体からなる付香剤や吸着剤が封入された」態様は、本願発明の「前記カプセルの流体は、添加物又は香味で形成され、又はこれらを含む」態様に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で一応相違する。

<一致点>
「喫煙可能材料及びマウスピースを含む喫煙物品であって、
該マウスピースは、軸方向に整列した少なくとも3つのセグメントを含み、1つのセグメントは、他の2つのセグメント間に配置された、破壊可能な流体含有カプセルが内部に配置されたキャビティを定め、
第1のラッパーが、少なくとも前記キャビティを取り囲み、
前記カプセルの流体は、添加物又は香味で形成され、又はこれらを含む
喫煙物品。」

<相違点>
本願発明では、「該キャビティの少なくとも一部の上に重なり合う実質的に滑らかな透明部分を含む、透明ワニスを塗布された1又はそれ以上の層を有する第1のラッパーが、該第1のラッパーを通して前記カプセルが少なくとも部分的に見えるように少なくとも前記キャビティを取り囲」むのに対して、引用発明は、複数のフィルタ材2及びカプセル3が、カプセル3に封入された内容液の浸透を防止するため、耐水又は耐油性能を有するワックス12を成形紙4とフィルタ材2との密着する全面に塗布した1枚の成形紙4で包み込まれており、透明部分を含むかどうか不明である点。

(2)当審の判断
上記相違点について検討する。
香料粒子や香料ビーズを内蔵したシガレットのフィルターにおいて、香料粒子や香料ビーズを視認するために、フィルター巻紙、チップペーパー、成型紙を透明部分を含むものとすることは、本願優先日前に周知の技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-21881号(実開平1-127495号)のマイクロフィルム、中国実用新案第201667985号明細書参照。)である。
そして、引用発明は、カプセル3を潰すことにより、内容液たる付香剤や吸着剤が放出するものであるから、利便性向上のため、前記周知技術を適用し、成形紙4に透明部分を設けて、カプセル3を視認可能とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明は、カプセル3に封入された内容液の浸透を防止するために、耐水又は耐油性能を有するワックス12を成形紙4とフィルタ材2との密着する全面に塗布した1枚の成形紙4で包み込むものであるところ、ワックス12以外の浸透防止材料を用い得ることは、引用例2の記載から明らかである。そして、ワニスが耐水耐油性を有することは周知であって、引用例3には、タバコに用いるラッパーを、凝縮物やタールの浸入を防止することを目的に、ニトロセルロースラッカー(本願発明の「ワニス」に相当。本願明細書の【0023】、【0024】参照。)で被覆することが記載されていることも参照すると、引用発明において、ワックスに換えてワニスを用いることは、上記周知の事項や引用例3に記載の事項を踏まえて、当業者が容易に想到し得たことであり、上記のとおりカプセル3を視認することを考慮すると、透明なワニスを選択することは当然のことである。

したがって、引用発明において、カプセル3に封入された内容液の浸透防止を維持しつつ、カプセル3を視認可能とするために、前記周知技術を適用して、成形紙4に透明部分を設けるとともに、周知ないし引用例3に記載の事項を踏まえて、浸透防止材料として、ワックス12に代えて透明ワニスを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願発明の奏する効果について>
本願発明の奏する効果は当業者が引用発明、周知技術、及び引用例3に記載の事項から予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術、及び引用例3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-22 
結審通知日 2018-05-28 
審決日 2018-06-13 
出願番号 特願2014-540350(P2014-540350)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 佐々木 正章
莊司 英史
発明の名称 可視内容物を含む喫煙物品  
代理人 須田 洋之  
代理人 上杉 浩  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 近藤 直樹  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  

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