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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1345401
審判番号 不服2017-9724  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-03 
確定日 2018-10-23 
事件の表示 特願2014-213738「ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂から残留物を除去するための膜分離法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月30日出願公開、特開2015- 83676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年9月18日を国際出願日とする特願2009-529206号(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2006年9月18日、米国)の一部を平成26年10月20日に新たに特許出願としたものであって、平成28年7月14日付け拒絶理由通知に応答して平成29年1月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、この手続補正を「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)平成29年1月18日提出の手続補正書により補正された(以下、「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1乃至4は、以下のとおりである。

【請求項1】
削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離することを含み、
前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であり、これにより(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む前記透過物が与えられ、
前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である方法。

【請求項2】
削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離し、ここで
前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であり、
前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含み;そして
(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含み、
前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である方法。

【請求項3】
削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;
(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、
前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であり、
前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含み、そして
前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である方法。

【請求項4】
(c)の少なくとも一種の塩基性剤で処理した濃縮物を、ゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む、請求項2記載の方法。

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至3(以下、「本願発明1乃至3」という。)は、以下のとおりである。

【請求項1】
削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離し、ここで
前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であり、
前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含み;そして
(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含み、
前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である方法。

【請求項2】
削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;
(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、
前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であり、
前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含み、そして
前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である方法。

【請求項3】
(c)の少なくとも一種の塩基性剤で処理した濃縮物を、ゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む、請求項1記載の方法。

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項1が削除され、本件補正前の請求項2乃至4を本件補正後の請求項1乃至3にしたものであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項1号に掲げる、同法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって、請求項1乃至3に係る本件補正は適法になされたものである 。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?4に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2002-201267号公報
引用文献2:国際公開第2004/106410号
引用文献3:特開2002-201266号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献2の記載
引用文献2には次の記載がある。(合議体訳は、特表2006-528997号公報を参照した。)。
(1)「1. A process for producing a composition comprising a polyamine-epihalohydrin resin that has a low level of CPD-producing species and good gelation stability, comprising the steps:
(A) preparing the resin with a ratio of epihalohydrin: amine of less than about 1.1:1.0;
(B) treating a composition comprising a polyamine-epihalohydrin resin which includes CPD forming species with at least one basic agent, under conditions to at least one of reduce and remove the CPD-forming species;
(C) subsequent to the base treatment, treating the composition comprising a polyamine- epihalohydrin resin with at least one acidic agent, under conditions to obtain a gelation storage stable composition; and wherein the resulting reduced CPD-forming, gelation storage stable resin composition produces less than about 250 ppm dry basis of CPD, when stored at pH 1 for 24 hours at 50℃ and measured at 24 hours.
・・・
19. The process of claim 1 further comprising treatment of the resin either prior to or subsequent to steps (B) and (C) wherein the further treatment is by ionic exchange, membrane separation, biodehalogenation or carbon absorption .」
(合議体訳:
【請求項1】
低濃度のCPD形成種、及び優れた耐ゲル化安定性を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を製造する方法であって:
(A)エピハロヒドリン:アミンの比率が、約1.1:1.0未満の樹脂を製造する工程;
(B)CPD形成種を減少させるか、除去するかのうちの少なくとも1つの条件下で、CPD形成種を含有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を、少なくとも1種の塩基性剤で処理する工程;
(C)塩基処理に続いて、ゲル化に対する貯蔵安定性を有する組成物が得られる条件下で、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を、少なくとも1種の酸性剤で処理する工程;
を含み、
得られた、CPD形成が減じられた、ゲル化に対する貯蔵安定性を有する樹脂組成物は、pH1で、50℃で24時間で保存し24時間目で測定した場合に、約250ppm未満(乾燥基準)のCPDを生じる
前記の方法。
・・・
【請求項19】
工程(B)および(C)の前、または、その後のいずれかに、前記樹脂を処理することをさらに含み、ここで前記処理は、イオン交換、膜分離、生物学的な脱ハロゲン化、または、炭素吸着による、請求項1に記載の方法。)

(2)
「[0001] This invention relates to resins and aqueous compositions containing resins, and processes of forming resin compositions, especially for the paper industry, including strength agents. The present invention also relates to resins, as well as processes for their production, wherein the resins, and compositions and products, such as paper products, containing the resins have reduced residuals, such as epihalohydrins and epihalohydrin hydrolysis products.」
(合議体訳:
本発明は、樹脂、および、樹脂を含む水性組成物、ならびに、特に製紙産業のための強力剤を含む樹脂組成物を形成する方法に関する。本発明はまた、樹脂、同様にそれらの製造方法に関し、本樹脂、ならびにその樹脂を含む組成物および製品(例えば紙製品)は、エピハロヒドリンおよびエピハロヒドリン加水分解産物のような残留物が減少している。さらにその上、本発明は、保存された場合に、エピハロヒドリンおよびエピハロヒドリン加水分解産物のような残留物を低濃度に維持する樹脂、ならびに組成物および製品(例えば紙製品)に関する。(後略))

(3)
「[0020] A polyamide-epihalohydrin resin is heated, treated with base, viscosity may decrease and then allowed to rebuild (crosslink) and then quenched with a mild acid treatment to provide a gelation stable resin. By careful selection of the ratio of the amount of resin and the amount of base, the resulting resin has very low levels of CPD-producing species (polymer-bound CPD). This base treatment process has a crosslink rate that is easily managed in a production environment to provide a consistent product with the specified viscosity. However, the base-treated resin with very low polymer-bound CPD has very poor gelation stability, even when acid is added to a relatively low pH. It has been surprisingly discovered that the gelation stability can be dramatically improved for a base-treated resin with very low polymer-bound CPD if a relatively mild acid stabilization is conducted.
(合議体訳:
ゲル化に対して安定な樹脂を提供するには、ポリアミド-エピハロヒドリン樹脂を加熱し、塩基で処理して、粘度を減少させ、続いて再構築(架橋)させ、次に、穏酸処理でクエンチする。樹脂の量と塩基の量の比率を慎重に選択することによって、生じた樹脂のCPDを形成する種(ポリマーに結合したCPD)のレベルは極めて低い。この塩基処理プロセスの架橋速度は、指定された粘度を有するばらつきのない製品を提供するために、製造環境において容易に管理できものである。しかしながら、塩基処理した樹脂は、ポリマーに結合したCPDは極めて少ないが、酸を比較的低いpHまで添加した場合でさえもゲル化に対する安定性が極めて劣っている。驚くべきことに、比較的穏やかな酸による安定化を行うと、ポリマーに結合したCPDが極めて低い塩基処理した樹脂のゲル化に対する安定性が劇的に改善できることが発見された。)

(4)
「[0025] The present invention comprises a base treatment of polyamine-epihalohydrin resin followed by an acid treatment of the resin. It has been surprisingly discovered that by balancing treatment conditions, including pH, temperature, starting viscosity and solids concentration of polyamine-epihalohydrin resin containing compositions, could be treated with a basic agent to reduce or remove CPD-forming species with desired viscosity characteristics and excellent CPD release.」
(合議体訳:
本発明は、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の塩基処理、それに続く樹脂の酸処理を含む。驚くべきことに、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物のpH、温度、開始時の粘度および固体濃度などの処理条件の釣り合いをとることによって、塩基性物質で処理して、望ましい粘度特性を有し、CPDを極めてよく解離させて、CPDを形成する種を減少または除去することが可能であることが発見された。)

(5)
「OTHER TREATMENTS [0052] ・・・For example, the resin can be treated by various processes, such as processes to remove low molecular weight epihalohydrin and epihalohydrin by-products, e.g., epichlorohydrin and epichlorohydrin by-products, for example, CPD in the resin solution. Without limiting the treatments or resins that can be utilized, it is noted that resins, could be treated prior to and/or subsequent to reduction or removal of CPD-forming species with a basic ion exchange column; with carbon adsorption; membrane separation, e.g., ultrafiltration; extraction, e.g, ethyl acetate; or biodehalogenation. Moreover, any combination of CPD-forming species reduction or removal can be utilized with the base treatment for reduction and/or removal of CPD-forming species.」
(合議体訳:
その他の処理
・・・例えば、樹脂は、低分子量のエピハロヒドリンおよびエピハロヒドリン副産物、例えばエピクロロヒドリンおよびエピクロロヒドリン副産物、例えば樹脂溶液中のCPDを除去する方法のような様々な方法によって処理することができる。利用可能な処理または樹脂に制限することなく、特筆すべきことは、樹脂は、CPDを形成する種の減少または除去の前に、および/または、その後に、塩基性イオン交換カラム;炭素吸着;膜分離、例えば限外ろ過;抽出、例えば、酢酸エチル;または生物学的な脱ハロゲン化で処理することができることである。その上、CPDを形成する種の減少または除去と、CPDを形成する種の減少および/または除去のための塩基処理とのあらゆる組み合わせが利用できる。)

2 引用文献1の記載
引用文献1には次の記載がある。
(1)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる重量平均分子量が3000以上であるポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂、重量平均分子量が30000以下であるポリアミドアミン樹脂、及び、エピクロロヒドリンの分解物を含有する水性混合液は、例えば、水性媒体中で、アルキレンジカルボン酸とアルキレンジアミンを反応させて得たポリアミドアミン樹脂(樹脂中間物)とエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られる。この反応により、エピクロロヒドリンの分解物が副生するが、分解物Cとしては、例えば、モノクロロヒドリン、1,3-ジクロロヒドリンや1,2-ジクロロヒドリンが挙げられる。上記反応により得た反応液を、分画分子量が約5000?約30000の範囲である限外濾過膜により処理すると、低分子量域の樹脂が除去されたポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を主成分とする樹脂(以下、有価物Aという)の濃厚液と、エピクロロヒドリンの分解物、高分子量域の樹脂が除去されたポリアミドアミン樹脂(以下、樹脂Bという)、及び、高分子量域の樹脂が除去されたポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む透過液aとが得られる。
【0008】工程(1)で得た透過液aは、工程(2)においてナノ濾過膜により処理される。このナノ濾過膜処理により、エピクロロヒドリンの分解物Cのみを含有する透過液bと、上記のポリアミドアミン樹脂B及び高分子量域の樹脂が除去されたポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂とを含む濃縮液cとが得られる。(後略)」

(2)「【0010】限外濾過膜(10)としては・・・芳香族系ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリイミド等が特に好ましい。(後略)」

(3)「【0011】・・・ナノ濾過膜(10')の濾過形式、形状及び膜材質は限外濾過膜(10)で例示したものと同様のものが挙げられる。」

(4)「【0020】<膜処理II>4.8%のp-トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液に対する阻止率が85.4%である芳香族ポリアミド製の高分子複合膜を装着したクロスフロー形式の濾過装置を用いて、507部の透過液aを室温、加圧(2.5MPa)下に、8.19倍濃縮して、30.5%のポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含有する濃縮液c約61部と、透過液b(約0.3%の分解物Cを含有)約44部を得た。」

3 引用文献3の記載
引用文献3には次の記載がある。
(1)「【0017】かくして得られたポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂などの水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液は、通常、重量平均分子量が100,000?2,000,000程度、数平均分子量5,000?50,000程度の水溶性熱硬化樹脂である。そして、該樹脂は分子量10,000以下の成分を、通常、20重量%より多く含有する。本発明における水溶性熱硬化樹脂の分子量10,000以下の成分であって、その含有量が20重量%以下である場合、該樹脂の粗水溶液をそのまま湿潤紙力増強剤として使用しても良い。また、水溶性熱硬化樹脂の分子量10,000以下の成分であって、その含有量が20重量%よりも多い場合、本発明の水溶性熱硬化樹脂を得る方法として、例えば、透析および浸透現象を利用した半透膜による膜分離する方法などが挙げられる。」

(2)「【0019】浸透現象を利用した膜分離としては、例えば、半透膜としてナノ濾過膜、逆浸透膜、限外濾過膜などを使用し、その膜の片側に加圧して低分子量成分を分離する逆浸透法や限外濾過法などが挙げられる。(後略)」

(3)「【0021】膜分離に使用される半透膜は・・・中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミドなどが好ましい。(後略)」

(4)「【0022】半透膜の分画分子量としては、具体的には処理される水溶性熱硬化樹脂の種類や分子量などに応じて異なるが、通常、2,000?100,000 程度であり、中でも3,000?50,000 程度が好ましく、とりわけ5,000?20,000 程度が好適である。半透膜の分画分子量が2,000未満の場合には、低分子量成分の除去に要する時間が増加する傾向にあることから好ましくなく、半透膜の分画分子量が100,000を超える場合には、水溶性熱硬化樹脂の収率が低下する傾向にあり好ましくない。」

(5)「【0024】膜分離して得られた透過液は、低分子量の水溶性熱硬化樹脂を含有していることから、該透過液を水溶性熱硬化樹脂の反応液に添加、反応せしめてなる水溶性熱硬化樹脂を粗水溶液としても良い。具体的には、水溶性熱硬化樹脂がポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂である場合には、膜分離して得られた透過液をポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応液および/またはアルキル化剤との反応液に添加し、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂と反応せしめてなるポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液などが例示される。また、再重合せしめる透過液は、蒸発濃縮、膜分離による濃縮などの方法により濃縮せしめてなる透過液が好適である。
【0025】ここで膜分離による濃縮についてさらに説明すると、膜分離に用いられる半透膜として、分画分子量が100?10,000程度、好ましくは100?5,000程度、とりわけ好ましくは150?1,000程度の半透膜を使用する以外は、前記のポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液を膜分離する方法と同様な方法により、水やエピハロヒドリンの加水分解物などを膜分離して濃縮する方法である。」

4 引用文献2に記載された発明
前記1(1)を基に、請求項1を引用する請求項19を独立項形式に表現し、請求項19で列挙された処理の中から膜分離を選択すると、引用文献2には、次の発明が記載されているといえる。
「低濃度のCPD形成種、及び優れた耐ゲル化安定性を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を製造する方法であって:
(A)エピハロヒドリン:アミンの比率が、約1.1:1.0未満の樹脂を製造する工程;
(B)CPD形成種を減少させるか、除去するかのうちの少なくとも1つの条件下で、CPD形成種を含有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を、少なくとも1種の塩基性剤で処理する工程;
(C)塩基処理に続いて、ゲル化に対する貯蔵安定性を有する組成物が得られる条件下で、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を、少なくとも1種の酸性剤で処理する工程;
を含み、
工程(B)および(C)の前、または、その後のいずれかに、前記樹脂を処理する膜分離をさらに含み、
得られた、CPD形成が減じられた、ゲル化に対する貯蔵安定性を有する樹脂組成物は、pH1で、50℃で24時間で保存し24時間目で測定した場合に、約250ppm未満(乾燥基準)のCPDを生じる前記の方法。」(以下、「引用発明」という。)

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
本願明細書の段落0035には、「本明細書中で言う残留物とは、AOX種、例えばエピハロヒドリン及びエピハロヒドリン副産物の1,3・・・(CPD)・・・を含む。」と記載されており、残留物には、1,3-DCP、2,3-DCP、CPDが含まれ、一方、引用発明の「CPD形成種」は、前記第4の1(3)によると、ポリマーに結合したCPDであるから、引用発明の「低濃度のCPD形成種、及び優れた耐ゲル化安定性を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を製造する方法」は、本願発明1の「削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法」に相当する。
引用発明の「膜分離」は、本願発明1の「膜分離装置の膜に通すこと」に相当する。
引用発明の「工程(B)および(C)の前、または、その後のいずれかに、前記樹脂を処理する膜分離をさらに含み、」は、塩基性剤で処理する工程(B)の前に膜分離を行うものを包含し、これによって分離される透過液と濃縮液のいずれかが工程(B)に供されるが、工程(B)は「CPD形成種を減少させるか、除去するかのうちの少なくとも1つの条件下で、CPD形成種を含有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物」を処理するのであるから、濃縮液であると解するのが自然である。そうすると、引用発明の「(B)CPD形成種を減少させるか、除去するかのうちの少なくとも1つの条件下で、CPD形成種を含有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を、少なくとも1種の塩基性剤で処理する工程」は、本願発明1の「(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理すること」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を装入し;
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記組成物を透過物と濃縮物に分離し、
(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含む方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明1では「前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であ」るのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

相違点2:本願発明1では「前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含」むのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点3:本願発明1では「前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含」むのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点4:本願発明1では「前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である」のに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点5:膜分離の対象物が、本願発明1では「水性組成物」であるのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点について、判断する。
ア 相違点1について
引用文献1の前記第4の2(1)には、重量平均分子量が3000以上であるポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂やエピクロロヒドリンの分解物であるモノクロロヒドリン、1,3-ジクロロヒドリン及び1,2-ジクロロヒドリンを含有する水性混合液を、分画分子量が5000?30000である限外濾過膜で処理し、その透過液をナノ濾過膜で処理することにより、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む濃厚液と、エピクロロヒドリンの分解物を含む透過液に分離できることが記載されており、前記第4の2(2)?(4)によると、上記ナノ濾過膜は芳香族系ポリアミド製である。
また、引用文献3の前記第4の3(1)及び(2)によると、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液をナノ濾過膜等の半透膜により膜分離して、低分子量成分を除去することができ、前記第4の3(3)によると、上記半透膜の好ましい材料はポリアミドであることが示されている。
引用発明も引用文献1及び3に記載された事項も、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む水性組成物から低分子量成分を膜分離する点で技術分野が共通し、引用文献1及び3には、好ましい分離膜としてポリアミド製のナノ濾過膜が示されているから、引用発明において、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む濃縮液を得るために、ポリアミド製のナノ濾過膜を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用文献3の前記第4の3(5)には、膜分離の透過液に含まれる低分子量のポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂を150?1000の分画分子量である半透膜で濃縮することが示唆されているし、前記第4の3(4)に示唆されるように、分離膜のカットオフ分子量は分離しようとする成分の分子量に応じて当業者が適宜設定するものであり、「150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフ」はナノ濾過膜のカットオフ分子量として特殊な範囲とも認められない。これらのことから、引用発明において、膜分離に用いるろ過膜を「150?1000ドルトンの公称分子量カットオフ」を有するものにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願の明細書等には、「150?1000ドルトンの公称分子量カットオフ」の範囲の内と外とで効果に顕著な差違があることは記載されていないし、それを裏付ける本願出願日の技術常識もない。

イ 相違点2について
本願発明1における「前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含」むとは、要するに、膜分離により得られた濃縮物は、膜分離前の水性組成物よりもポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量に対する残留物量が少なく、かつ、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物であるということであると解される。そして、引用発明も、残留物であるCPD形成種を減らし、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の量が多い組成物を製造することを目的とするものであるから、膜分離により残留物を透過させ、分離膜に残った組成物は、膜分離前の組成物よりも、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量が高まっていると解される。そうすると、相違点2は実質的なものではない。

ウ 相違点3について
本願発明1における「前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含」むとは、要するに、ナノ濾過膜の透過物は、膜分離前の水性組成物に含まれる残留物を含み、かつ、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂は5重量%未満しか含まないということであると解される。そして、上記「イ 相違点2について」で述べたように、引用発明も、膜分離により残留物を透過させ、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量を透過させないものであり、上記「ア 相違点1について」で述べたように、分離しようとする成分の分子量に応じて分離膜のカットオフ分子量を当業者が設定し、透過物に含まれるポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を5重量%未満にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について
本願発明1における「前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である」は、膜分離及び塩基性剤での処理後のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量を特定するものであると解される。そして、引用発明は、塩基性剤での処理により、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂に結合したCPDを解離させて、CPDを形成する種を減少・除去し(前記第4の1(3))、また、膜分離により、樹脂溶液中のCPDを除去する(前記第4の1(5))ことを目的とするものであるから、これらの工程によって達成するCPD含有量を設定することは当業者が適宜行うことであり、所望するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量に応じて、「少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ 相違点5について
前記第4の1(2)によると、引用発明も、樹脂を含む水性組成物におけるエピハロヒドリンおよびエピハロヒドリン加水分解産物のような残留物を減少するものであるから、上記相違点5は実質的なものではない。

カ 本願発明1の効果について
本願発明1によって奏される「本方法の結果、有効性が高く残留物量が低いポリアミン-エピハロヒドリン樹脂及びその組成物が得られる。それによって、性能安定性が改良され、樹脂又はそのような樹脂を含む組成物の腐食性が低減される。」(段落0030)という効果は、塩基性剤を用いた処理によるCPD形成種の削減又は除去、及び膜分離による残留物中の塩化物塩の除去などによるものであり、前記第4の1(2)?(5)の記載、具体的には、前記第4の1(4)の「塩基性物質で処理して・・・CPDを極めてよく解離させて、CPDを形成する種を減少または除去することが可能である」、及び、前記第4の1(5)の「低分子量のエピハロヒドリンおよびエピハロヒドリン副産物・・・を除去する方法のような様々な方法によって処理することができる。・・・膜分離、例えば限外ろ過・・・で処理する」などの記載から、当業者が予測し得ることである。なお、本願の明細書には、塩基性剤で処理する具体例は記載されていない。

(3)小括
そうすると、本願発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求人の主張について
請求人は審判請求書の「(D-2-2)」において、本願発明と引用文献2の公称分子量カットオフ値が重複しないから、本願発明の「前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であ」ることは、引用発明から当業者は容易に想到し得ない旨を主張するが、上記「ア 相違点1について」で述べたように、引用文献3の前記第4の3(4)及び(5)の記載などに基づき、当業者が容易に想到し得たことである。
また、請求人は、審判請求書の「(D-2-2)」において、引用発明はゲル化安定性および固形分の増加の問題に関係しているが、AOX成分を除去する問題と関係していないから、当業者は引用文献2から本願発明を誘導しない旨を主張するが、引用発明も、前記第4の1(4)に記載されるように、ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂からCPDを形成する種を減少または除去するものであり、本願発明1と解決しようとする課題が共通するから、上記主張は妥当でない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比する。
まず、上述のように、引用発明の「低濃度のCPD形成種、及び優れた耐ゲル化安定性を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む組成物を製造する方法」及び「膜分離」は、それぞれ、本願発明2の「削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法」及び「膜分離装置の膜に通すこと」に相当する。
そして、引用発明における「工程(B)および(C)の前、または、その後のいずれかに、前記樹脂を処理する膜分離をさらに含み」は、塩基性剤で処理する工程(B)後の樹脂溶液を膜分離するものを包含しており、これにより、樹脂溶液が透過物と濃縮物に分離されることは明らかであるから、本願発明2の「(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み」に相当する。

そうすると、本願発明2と引用発明とは、
「削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;
(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含」む方法である点で一致し、次の点で相違する。

相違点6:本願発明2では「前記膜は150ドルトン?1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するポリアミドナノろ過膜であ」るのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

相違点7:本願発明2では「前記濃縮物は、等しいポリアミン-エピハロヒドリン樹脂量基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含」むのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点8:本願発明2では「前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び5重量%未満の前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂を含」むのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点9:本願発明2では「前記削減された残留物量を有するポリアミン-エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン-エピハロヒドリン樹脂12.5重量%で50ppm未満である」のに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点10:膜分離の対象物が、本願発明2では「水性組成物」であるのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点6?10は、上記「1 本願発明1について」で述べた相違点1?5と同じものであり、上記相違点6?10は、上記1(2)で述べたように、当業者が容易に想到し得たことであるか、又は、実質的な相違点ではないから、本願発明2は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び3に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-30 
結審通知日 2018-05-31 
審決日 2018-06-13 
出願番号 特願2014-213738(P2014-213738)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井津 健太郎三原 健治  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 近野 光知
海老原 えい子
発明の名称 ポリアミン-エピハロヒドリン樹脂から残留物を除去するための膜分離法  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
代理人 中西 基晴  
代理人 山本 修  
代理人 野矢 宏彰  

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